特許第6804548号(P6804548)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804548緑色発光量子ドット及び赤色KSF蛍光体を含むディスプレイデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804548
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】緑色発光量子ドット及び赤色KSF蛍光体を含むディスプレイデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20201214BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20201214BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20201214BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20201214BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20201214BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20201214BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20201214BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20201214BHJP
   F21V 9/38 20180101ALI20201214BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20201214BHJP
【FI】
   H01L33/50
   B82Y20/00
   C09K11/08 G
   C09K11/08 J
   C09K11/61
   G02B5/20
   G02F1/13357
   F21S2/00 439
   F21V9/32
   F21V9/38
   F21Y115:10
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-541575(P2018-541575)
(86)(22)【出願日】2016年11月2日
(65)【公表番号】特表2019-502272(P2019-502272A)
(43)【公表日】2019年1月24日
(86)【国際出願番号】GB2016053394
(87)【国際公開番号】WO2017077290
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2018年7月6日
(31)【優先権主張番号】62/249,595
(32)【優先日】2015年11月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/337,557
(32)【優先日】2016年10月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509295262
【氏名又は名称】ナノコ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピケット,ナイジェル エル.
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】グレスティ,ナタリー シー.
【審査官】 大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0221843(US,A1)
【文献】 特表2013−505346(JP,A)
【文献】 特表2008−544553(JP,A)
【文献】 特開2006−291064(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/064537(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0019098(US,A1)
【文献】 特開2008−050603(JP,A)
【文献】 特開2015−153844(JP,A)
【文献】 特開2015−065236(JP,A)
【文献】 特表2014−531762(JP,A)
【文献】 特表2014−508818(JP,A)
【文献】 特表2013−505347(JP,A)
【文献】 特開2007−197612(JP,A)
【文献】 特開2006−282996(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/177943(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0022779(US,A1)
【文献】 Feng Zhang, et al.,“Brightly Luminescent and Color-Tunable Colloidal CH3NH3PbX3(X=Br,I,Cl) Quantum Dots: Potential Alternatives for Display Technology”,ACS Nano,2015年 3月30日,Vol.9,No.4,p.4533-4542
【文献】 Nigel L. Pickett, et al.,“Heavy Metal-Free Quantum Dots for Display Applications”,Society for Information Display 2015 International Symposium Digest of Technical Papers,2015年 6月,Vol.46,No.1,p.168-169
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
B82Y 5/00 − 99/00
C09K 11/00 − 11/89
F21K 9/00 − 9/90
F21S 2/00 − 45/70
F21V 1/00 − 15/04
F21Y 101/00 −115/30
G02B 5/20 − 5/28
G02F 1/13357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光デバイスであって、
磁放射線源に光学的に結合された複数のSiF:Mn4+(KSF)蛍光体粒子と、
前記電磁放射線源に光学的に結合された複数の量子ドットと、を含んでおり
前記複数のKSF蛍光体粒子及び前記複数の量子ドットは、ポリマービーズに含まれており、前記ポリマービーズは、第1の材料を含むコアと、前記コアを取り囲んでおり、第2の材料を含むシェルとを有しており、
前記複数のKSF蛍光体粒子及び前記複数の量子ドットの一方が前記ポリマービーズのコアに含まれており、前記複数のKSF蛍光体粒子及び前記複数の量子ドットの他方が前記ポリマービーズのシェルに含まれている、発光デバイス。
【請求項2】
前記電磁放射線源は、青色発光ダイオード(LED)である、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記複数のKSF蛍光体粒子が前記ポリマービーズのコアの中に含まれており前記複数の量子ドットが前記ポリマービーズのシェルの中に含まれている、請求項1又は2に記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記複数の量子ドットが前記ポリマービーズのコアの中に含まれており前記複数のKSF蛍光体粒子が前記ポリマービーズのシェルの中に含まれている、請求項1又は2に記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記ポリマービーズは、アクリレート、シリコーン及びエポキシからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項1又は2に記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記複数の量子ドットは、緑色発光量子ドットである、請求項1乃至の何れかに記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記複数の量子ドットは、重金属を含まない量子ドットである、請求項1乃至の何れかに記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記LEDはカップ型パッケージ収容され、前記ポリマービーズ、LEDパッケージのカップのマトリックスの中に含まれる、請求項に記載の発光デバイス。
【請求項9】
前記ポリマービーズ、LEDから離れたフィルムの中にある、請求項に記載の発光デバイス。
【請求項10】
白色光を発生させる方法であって、
スペクトルの青色部分電磁放射線源を配備することと、
前記電磁放射線源に光学的に結合された複数のSiF:Mn4+(KSF)粒子を供給することと、
前記電磁放射線源に光学的に結合された複数の緑色発光量子ドットを供給することと、を含んでおり
前記複数のKSF蛍光体粒子及び前記複数の量子ドットは、ポリマービーズに含まれており、前記ポリマービーズは、第1の材料を含むコアと、前記コアを取り囲んでおり、第2の材料を含むシェルとを有しており、
前記複数のKSF蛍光体粒子及び前記複数の量子ドットの一方が前記ポリマービーズのコアに含まれており、前記複数のKSF蛍光体粒子及び前記複数の量子ドットの他方が前記ポリマービーズのシェルに含まれている、方法。
【請求項11】
電磁放射線源は、青色発光ダイオード(LED)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
液晶ディスプレイ用のバックライトユニットにおいて
スペクトルの青色部分電磁放射線源と、
前記電磁放射線源に光学的に結合されておりポリマービーズを含むポリマーフィルムであって、前記ポリマービーズは、複数のSiF:Mn4+(KSF)蛍光体粒子及び複数の量子ドットを含むポリマーフィルムと、
を含んでおり、
前記ポリマービーズは、第1の材料を含むコアと、前記コアを取り囲んでおり、第2の材料を含むシェルとを有しており、
前記複数のKSF蛍光体粒子及び前記複数の量子ドットの一方が前記ポリマービーズのコアに含まれており、前記複数のKSF蛍光体粒子及び前記複数の量子ドットの他方が前記ポリマービーズのシェルに含まれている、バックライトユニット。
【請求項13】
電磁放射線源は青色発光ダイオード(LED)である、請求項12に記載のバックライトユニット。
【請求項14】
前記複数のKSF蛍光体粒子が前記ポリマービーズのコアの中に含まれており前記複数の量子ドットが前記ポリマービーズのシェルの中に含まれている、請求項12に記載のバックライトユニット。
【請求項15】
前記複数の量子ドットが前記ポリマービーズのコアの中に含まれており前記複数のKSF蛍光体粒子が前記ポリマービーズのシェルの中に含まれている、請求項12に記載のバックライトユニット。
【請求項16】
前記ポリマービーズは、アクリレート、シリコーン及びエポキシからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項12乃至15の何れかに記載のバックライトユニット。
【請求項17】
前記複数の量子ドットは、緑色発光量子ドットである、請求項12乃至15の何れかに記載のバックライトユニット。
【請求項18】
前記複数の量子ドットは、重金属を含まない量子ドットである、請求項12乃至15の何れかに記載のバックライトユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年11月2日に出願された米国仮特許出願第62/249,595号の利益を主張し、その内容は、参照により全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、ディスプレイデバイス製造のための材料及び方法に関する。より具体的には、本発明は、量子ドット及びKSiF:Mn4+(KSF)蛍光体を含むディスプレイデバイス用のバックライトユニットに関する。
【背景技術】
【0003】
量子ドット(QD)は、青色LED及び従来の希土類蛍光体を含む従来のLCDバックライトユニットと比べて改善された色域を達成するために、液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトユニット(BLU)に使用されている。色域は、Commission Internationale de I’Eclairage(CIE)1931色空間の標準と比較される。このような標準には、National Television System Committee 1953(NTSC1953)及びDigital Cinema Initiative−P3(DCI−P3)の色三角形が含まれる。2012年、International Telecommunications Union(国際電気通信連合)は、Rec.2020として知られる超高精細テレビ(UHDTV)に対して新たな標準を勧告した。Rec.2020の色三角形は、NTSC1953及びDCI−P3色三角形よりも有意に大きく、人間の目で見える色空間の76%を網羅する。
【0004】
QDは、NTSC1953及びDCI−P3の色空間と良好な重なり(overlap)を有するBLUを生成するために使用されてきた。しかし、Rec.2020と良好な重なりを達成するには課題があり、その一部は、QDのスペクトル放射ピークの半値全幅(FWHM)にある。
【0005】
最近の発表では、Rec.2020色空間で90%を超える重なりを達成するために、30nmのFWHMでは526nmで発光する緑色QD、30nmのFWHMでは640nmで発光する赤色発光QDが必要である[J. Hartolve, J.Chen, S.Kan, E.Lee and S. Gensler, Bringing Better Pixels to UHD with Qunatum Dots. 2015年3月18日、サンフランシスコの量子ドットフォーラムで発表]。この領域でのFWHM値は、CdSeなどのカドミウムベースのQDを用いて達成されることができる。但し、EUでは、特定の有害物質使用制限(RoHS)指令により、電気機器及び電子機器に使用されるカドミウム(及びその他の重金属)の量が制限される。同様の法律が世界中で採用されている。それゆえ、重金属を含まないQD、即ちPb、Hg又はCdなどの毒性元素を含まないQD(例えば、III族−V族ベースのQD)、即ち、RoHS及び他の健康及び安全に関する法律に適合するQDを含むディスプレイデバイスを開発する必要がある。このような重金属を含まないQDには、III族−V族ベースの材料(例えば、InP)の他に、III族−V族材料が他の元素と合金化された合金、例えば、InPZnS(米国出願公開第2014/0264172号に記載)が挙げられる。III族−V族ベースの材料では、量子閉じ込め効果は、III族−V族材料(CdSeを含む)よりも強い。これは、粒子サイズにおける所与の変化による発光波長の変化が大きく、その結果、III族−V族材料によって表示されるFWHMは、II族−V族材料よりも広い。一般的に、FWHM値は、重金属を含まない赤色放出QDに対するものが、重金属を含まない緑色放出QDに対するものより広い。
【0006】
広い色域を提供するための1つの可能な手段は、緑色発光QDを、狭帯域発光赤色蛍光体(KSiF:Mn4+(KSF))と組み合わせることである。KSFは、613nm、631nm、636nm及び648nmで4つの発光極大を有し、各々はFWHMが5nmより小さい[P.Pust, P.J.Schmidt and W.Schnick, Nat. Mater., 2015, 14, 454]。Zhangらは、青色GaN LEDと、緑色発光CHNHPbX(X= Br、I、Cl)QDと赤色発光KSF蛍光体とを含む白色LEDを最近報告した[F.Zhang, H.Zhong, C.Chen, X.G.Wu, X.Hu, H.Huang, J.Han, B.Zhou and Y.Dong, ACS Nano, 2015, 9, 4533]。このデバイスは、NTSC色空間の約130%をカバーし、重なりは96%である。LEDデバイスを形成するために、KSF粉末をシリコーンゲルとブレンドし、30分間かけて硬化させた。CHNHPbBr QDを、ポリメチルメタクリレートを含むクロロメチルホルム中で溶解した。KSFを含むシリコーンゲルの層を、青色GaN LEDチップの表面に塗布した後、PMMA内でQDの層をキャスティングした。この研究では、緑色のQDを赤色のKSF蛍光体を組み合わせることによって大きな色域が得られることを示しているが、CHNHPbX量子ドットは現在商業的に入手することができず、RoHSの規制対象となる他の重金属である鉛が含まれている。さらに、オンチップ構造は、QDがLEDチップに近接していることから熱安定性に問題があり、その結果、デバイスの寿命が短くなる。
【0007】
マンガンで活性化されたフッ化物錯体蛍光体は、活性剤としてMn4+を有し、ベース結晶としてアルカリ金属、アミン又はアルカリ土類金属のフッ化物錯塩を有する蛍光体である。ベース結晶を形成するフッ化物錯体中の配位中心(coordination center)は、三価金属(B、Al、Ga、In、Y、Sc又はランタノイド)、4価金属(Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Re、Hf)又は配位中心の周りに5〜7個のフッ素原子が配位された五価金属(V、P、Nb又はTa)である。
【0008】
Mn4+で活性化された好ましいフッ化物錯体蛍光体は、ベース結晶としてアルカリ金属のヘキサフルオロ錯塩を有するAMF:Mn(Aは、Li、Na、K、Rb、Cs及びNHからなる群から選択され、Mは、Ge、Si、Sn、Ti及びZrからなる群から選択される)である。Mn4+で活性化されたフッ化物錯体蛍光体で特に好ましいものは、AがK(カリウム)又はNa(ナトリウム)であり、MがSi(シリコン)又はTi(チタン)であり、例えば、KSiF:Mn4+(KSF)である。
【0009】
前述の技術分野では、重金属を含まないQD及びKSF蛍光体をディスプレイデバイスに組み込むことにより、QDの光学的安定性を維持する手段が要請されている。
【発明の概要】
【0010】
本明細書は、青色発光LED、緑色発光QD、及び赤色発光KSF蛍光体を組み合わせて、QDの光学特性を熱に曝露されて低下させることなく、広い色域を有する白色光を生成する方法を開示するものである。青色発光LEDチップ、緑色発光QD及び赤色発光KSF蛍光体を含むLEDデバイスについても開示する。
【0011】
幾つかの実施形態において、QD及び/又はKSF蛍光体はポリマービーズに組み込まれる。幾つかの実施形態において、QD及びKSF蛍光体は同じビーズに組み込まれる。別の実施形態では、QD及びKSF蛍光体は別々のビーズに組み込まれる。他の実施形態では、QD及びKSF蛍光体は、第2の材料を含むシェルによって取り囲まれた第1の材料を含む中心コアを有する「コア/シェルビーズ」に組み込まれる。KSF蛍光体はビーズのコアに組み込まれ、QDはビーズのシェルに組み込まれることができる。或いはまた、QDはビーズのコアに組み込まれ、KSF蛍光体はビーズのシェルに組み込まれることができる。
【0012】
幾つかの実施形態では、QD及び/又はKSF蛍光体は、LEDパッケージのカップ部分に堆積される。
【0013】
幾つかの実施形態では、QD及び/又はKSF蛍光体は、LEDチップから離間して配置されたフィルムに組み込まれる。
【0014】
本発明の第1の態様は、発光デバイスであって、スペクトルの青色部分の電磁放射線源と、電磁放射線源に光学的に結合されたKSiF:Mn4+(KSF)蛍光体の1又は2以上の粒子と、電磁放射線源に光学的に結合された複数の量子ドットと、を含む。電磁放射線源は、青色発光ダイオード(LED)であってよい。KSF蛍光体の1又は2以上の粒子は、少なくとも1つのポリマービーズ内に含まれることができる。量子ドットは、少なくとも1つのポリマービーズ内に含まれることができる。一実施形態では、量子ドットは、少なくとも1つの第1の種類のポリマービーズ内に含まれ、KSF蛍光体の1又は2以上の粒子は、少なくとも1つの第2の種類のポリマービーズ内に含まれる。量子ドットが複数のポリマービーズに含まれることができ、各ポリマービーズは、KSF蛍光体の1又は2以上の粒子と、複数の量子ドットとを含む。前記ビーズは、アクリレート、シリコーン及びエポキシからなる群から選択されるポリマーを含むことができる。前記量子ドットは、緑色発光量子ドットであってよく、任意的に、量子ドットは、重金属を含まない量子ドットであってよい。
【0015】
一実施形態において、LEDはカップ型パッケージの中に収容され、KSF蛍光体はポリマーマトリックスの中にあり、ポリマーマトリックス中のKSF蛍光体と量子ドットを有する少なくとも1つのポリマービーズとはカップ内の中に含まれる。LEDがカップ型パッケージに収容される場合、KSF蛍光体はカップ内に入れられ、複数の量子ドットはLEDパッケージから離れたフィルム内にあってよい。さらなる実施形態では、LEDはカップ型パッケージに収容され、第1の種類の1つのポリマービーズと第2の種類の1つのポリマービーズとは、LEDパッケージのカップ内のマトリックスの中に含まれる。LEDがカップ型パッケージに収容される場合、LEDパッケージのカップには、KSF蛍光体の1又は2以上の粒子及び複数の量子ドットを含むポリマービーズが含まれることができる。
【0016】
さらなる実施形態では、LEDはカップ型パッケージ内に収容され、KSF蛍光体の1又は2以上の粒子を含むポリマービーズはカップ又はLEDパッケージの中に入れられ、複数の量子ドットは、LEDパッケージから離れたフィルムの中にある。幾つかの実施形態では、量子ドットは、第1の種類の少なくとも1つのポリマービーズの中に含まれ、第2の種類の少なくとも1つのポリマービーズの中に含まれるKSF蛍光体の1又は2以上の粒子は、LEDから離れたフィルムの中にある。さらなる選択肢では、KSF蛍光体の1又は2以上の粒子を含む複数のポリマービーズ及び複数の量子ドットは、LEDから離れたフィルムの中にある。他の可能性のある実施形態では、KSF蛍光体の1又は2以上の粒子及び複数の量子ドットは両方ともLEDから離れたフィルムの中に含まれる。
【0017】
本発明の第2の態様は、光学的に透明な樹脂と、前記樹脂の中に埋め込まれた複数のKSF蛍光体粒子とを含むビーズである。このようなビーズは、樹脂に埋め込まれた複数の量子ドットをさらに含むことができる。
【0018】
本発明の第3の態様は、光透過性樹脂からなるシェル部によって囲まれた中央コア部と、前記シェル部の樹脂に埋め込まれた複数のKSF蛍光体粒子とを含むビーズである。このようなビーズは、コア部に複数の量子ドットをさらに含むことができる。
【0019】
本発明の第4の態様は、光透過性樹脂からなりシェル部によって囲まれた中央コア部と、前記中央コア部の樹脂に埋め込まれた複数のKSF蛍光体粒子とを含むビーズである。このようなビーズは、シェル部に複数の量子ドットをさらに含むことができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、白色光を発生させる方法に関するもので、スペクトルの青色部分に電磁放射線源を配備することと、前記電磁放射線源に光学的に結合されたKSiF:Mn4+(KSF)の1又は2以上の粒子を供給することと、前記電磁放射線源に光学的に結合された複数の量子ドットを供給することと、を含む。電磁放射線源は、青色発光ダイオード(LED)であってよい。
【0021】
本発明の第6の態様は、液晶ディスプレイ用のバックライトユニットであって、スペクトルの青色部分に電磁放射線源と、前記電磁放射線源に光学的に結合され、KSiF:Mn4+(KSF)の1又は2以上の粒子を含むポリマーフィルムと、複数の量子ドットと、を含む。電磁放射線源は、青色発光ダイオード(LED)であってよい。KSF蛍光体の1又は2以上の粒子は、少なくとも1つのポリマービーズ内に含まれることができる。量子ドットは、少なくとも1つのポリマービーズ内に含まれることができる。一実施形態では、量子ドットは、少なくとも1つの第1の種類のポリマービーズ内に含まれ、KSF蛍光体の1又は2以上の粒子は、少なくとも1つの第2の種類のポリマービーズ内に含まれる。或いはまた、量子ドットは、複数のポリマービーズに含まれ、前記ポリマービーズは各々がKSF蛍光体の1又は2以上の粒子及び複数の量子ドットを含む。前記ビーズは、アクリレート、シリコーン及びエポキシからなる群から選択されるポリマーを含むことができる。前記量子ドットは、緑色発光量子ドットであってよい。さらに、量子ドットは、重金属を含まない量子ドットであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、緑色量子ドットとKSF蛍光体粒子とを含むポリマービーズの断面図である。
【0023】
図2図2は、2つのポリマービーズの断面図であって、一方がKSF蛍光体を含むビーズであり、他方が緑色量子ドットを含むビーズである。
【0024】
図3図3は、KSF蛍光体粒子を含むコアと、緑色量子ドットを含むシェルとを含むコア/シェルポリマービーズの断面図である。
【0025】
図4図4は、緑色量子ドットを含むコアと、KSF蛍光体粒子を含むシェルとを含むコア/シェルポリマービーズの断面図である。
【0026】
図5図5は、LEDチップと、KSF蛍光体が充填されたポリマービーズ及び緑色量子ドットポリマービーズが充填されたLEDカップと、を含むLEDの断面図である。
【0027】
図6図6は、LEDチップと、KSF蛍光体が充填されたLEDカップと、緑色量子ドットを含む遠隔フィルムと、を含むLEDの断面図である。
【0028】
図7図7は、LEDチップと、KSF蛍光体ポリマービーズ及び緑色量子ドットポリマービーズが充填されたLEDカップと、を含むLEDの断面図である。
【0029】
図8図8は、LEDチップと、KSF蛍光体及び緑色量子ドットを含むポリマービーズが充填されたLEDカップと、を含むLEDの断面図である。
【0030】
図9図9は、LEDチップと、KSF蛍光体を含むポリマービーズが充填されたLEDカップと、緑色量子ドットを含む遠隔フィルムと、を含むLEDの断面図である。
【0031】
図10図10は、LEDと、KSF蛍光体を含むポリマービーズ並びに緑色量子ドットを含むポリマービーズを含む遠隔フィルムとの断面図である。
【0032】
図11図11は、LEDと、KSF蛍光体及び緑色量子ドットを含むポリマービーズを含む遠隔フィルムとの断面図である。
【0033】
図12図12は、LEDと、KSF蛍光体粒子及び緑色量子ドットを含む遠隔フィルムとの断面図である。
【0034】
図13図13は、緑色発光量子ドットとKSF蛍光体とを含むフィルムのスペクトルシミュレーション結果である。
【0035】
図14図14は、緑色発光量子ドットと赤色発光量子ドットとをフィルムのスペクトルシミュレーション結果である。
【0036】
図15図15は、KSF蛍光体を含むポリマービーズの正規化された発光スペクトルである。
【0037】
図16図16は、緑色発光量子ドットを含むポリマービーズの正規化された発光スペクトルである。
【0038】
図17図17は、緑色発光量子ドットとKSF蛍光体の両方を含むビーズの正規化された発光スペクトルである。
【0039】
図18図18は、量子ドットバックライトユニットを備えた液晶ディスプレイ(LCD)の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
青色発光LEDは、緑色発光QDと赤色発光KSF蛍光体とを組み合わせて、QDの光学特性が熱への曝露による悪影響を受けないように広い色域を有する白色光を生成することができる。
【0041】
シミュレーションにおいて、緑色発光量子ドットとKSF蛍光体の組合せは、DCI及びRec.2000標準の両方に関する色性能(color performance)が、緑色発光量子ドットと赤色発光量子ドットの組合せと同様であった。しかしながら、緑色発光量子ドットとKSF蛍光体との組合せの方は、光度が明るかった。シミュレーションデータを表1に示す。
【表1】
【0042】
青色LEDに光学的に結合された緑色発光量子ドット及びKSF蛍光体を含むフィルムのスペクトルのシミュレーション結果を図13に示す。青色LEDに光学的に結合された緑色発光量子ドット及び赤色発光量子ドットを含むフィルムのスペクトルのシミュレーション結果を図14に示す。図13及び図14には、典型的なLCDテレビジョンセットに使用される赤、緑及び青色フィルタの透過スペクトルも示されている。
【0043】
幾つかの実施形態において、QD及び/又はKSF蛍光体は、ポリマービーズに組み込まれる(incorporated)。ポリマービーズへのQDの組込みは、米国特許第7,544,725号「Labelled Beads」、第8,859,442号「Encapsulated Nanoparticles」、第8,847,197号「Semiconductor Nanoparticle-Based Materials」、第8,957,401号「Semiconductor Nanoparticle-Based Materials」、並びに、米国特許出願公開第2014/0264192号「Preparation of Quantum Dot Beads Having a Silyl Surface Shell」及び第2014/0264196号「Multi-Layer-Coated Quantum Dot Beads」に記載されており、これらの開示は、参照を以てその全体が本願に組み入れられる。蛍光体粒子をポリマービーズに組み込むのに、同様な技術を用いられることができる。KSF蛍光体粒子などの蛍光体粒子の取込みは、米国特許第7,323,696号「Phosphor Particle Coded Beads」に記載されている。
【0044】
幾つかの実施形態では、図1に示されるように、緑色発光QDと赤色発光KSF蛍光体とが同じビーズに組み込まれることができる。QDとKSF蛍光体を同じビーズの中に組み込むことは、加工を容易にする上で有利であり得る。
【0045】
別の実施形態では、図2に示されるように、緑色発光QDと赤色発光KSF蛍光体は別々のビーズに組み込まれることができる。QDとKSF蛍光体を別々のビーズに組み込むと、効果的な色混合手段を提供することができ、緑色発光ビーズと赤色発光ビーズを適切な比率で組み合わせることによって、CIE1931色空間における所望の白色点を生成することができる。
【0046】
さらに他の実施形態では、緑色発光QDと赤色発光KSF蛍光体は、コア/シェルビーズの中、即ち第2の材料を含むシェルで囲まれた第1の材料を含む中心コアを有するビーズの中に組み込まれることができる。図3に示されるように、KSF蛍光体がビーズのコアの中に組み込まれ、緑色発光QDがビーズのシェルの中に組み込まれることができるし、又は、図4に示されるように、緑色発光QDがビーズのコアの中に組み込まれ、KSF蛍光体がビーズのシェルの中に組み込まれることもできる。
【0047】
幾つかの実施形態において、QD及び/又はKSF蛍光体は、LEDパッケージのカップ部の中に堆積される。QDと蛍光体粒子をLEDカップの中に堆積させる技術は、当該技術分野において公知であり、粒子を光学的に透明な樹脂と混合すること、LEDカップの中に樹脂を堆積させること、樹脂を硬化させることを含むことができる。例えば、QDをアクリレート樹脂の中に組み込み、その後にLEDカップの中へ堆積することは、米国特許出願公開第2013/0105839号「Acrylate Resin for QD-LED」に記載されており、その開示の内容全体は参照によって本明細書に組み込まれる。適当な樹脂の例として、アクリレート、シリコーン及びエポキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
幾つかの実施形態では、QD及び/又はKSF蛍光体は、LEDチップから離れて配置されたフィルムの中に組み込まれる。これは、QDをLEDチップから分離するのに特に有利であり、LEDから放出される熱によるQDの熱劣化を防止する。QDを樹脂マトリックスに組み入れる技術は公知であり、例えば、米国特許出願公開第2015/0047765号「Quantum Dot Films Utilizing Multi-Phase Resins」;米国特許出願公開第2015/0275078号「Quantum Dot Compositions」;及び米国特許出願公開第2015/0255690号「Methods for Fabricating High Quality Quantum Dot Polymer Films」に記載されている。また、他の同様な技術を用いて、KSF蛍光体粒子を樹脂マトリックスに組み込むこともできる。
【0049】
幾つかの実施形態では、QD及び/又はKSF蛍光体は、最初にポリマービーズに組み込まれ、その後ポリマーフィルムに組み込まれる。QDビーズが組み込まれたポリマーフィルムの形成は、米国特許出願第2013/0075692号「Semiconductor Nanoparticle-Based Light-Emitting Materials」に記載されており、その全体が引用を以て本明細書に組み込まれる。
【0050】
別の実施形態において、QD及び/又はKSF蛍光体は、ポリマー又は樹脂マトリックスの中に直接組み込まれ、フィルムに加工される。
【0051】
1つの特定の実施形態では、図5に示されるように、白色発光LEDは、青色LEDチップと、KSF蛍光体及び緑色発光量子ドットポリマービーズが充填されたLEDカップとを含む。QDをビーズに組み込むことにより、QDは、LEDチップによって発生する熱に起因する熱劣化から保護される。
【0052】
別の実施形態では、図6に示されるように、白色発光LEDは、青色発光LEDチップと、赤色発光KSF蛍光体が充填されたLEDカップと、緑色発光QDを含む遠隔ポリマー膜とを含む。QDフィルムが遠隔位置にあるのは、LEDチップと直接接触しないようにして、LEDによる熱劣化からQDを保護するためである。
【0053】
さらなる実施形態では、図7に示されるように、白色発光LEDは、青色発光LEDチップと、赤色発光KSF蛍光体ポリマービーズ及び緑色発光QDポリマービーズが充填されたLEDカップとを含む。
【0054】
さらなる実施形態では、図8に示されるように、白色発光LEDは、青色発光LEDチップと、赤色発光KSF蛍光体及び緑色発光QDを含むポリマービーズが充填されたLEDカップとを含む。KSF蛍光体とQDは、図1に示されるように、ビーズ全体にランダムに分布されることができるし、図3及び図4に示されるように、コア/シェルビーズの中に形成されることもできる。
【0055】
別の実施形態では、図9に示されるように、白色発光LEDは、青色発光LEDチップと、赤色発光KSF蛍光体を含むポリマービーズが充填されたLEDカップと、緑色発光量子ドットを含む「遠隔フィルム」、即ち、LEDパッケージから物理的に離間したフィルムとを含む。
【0056】
さらなる実施形態では、図10に示されるように、白色発光LEDは、青色発光LEDチップと、ポリマービーズの中に含まれる赤色発光KSF蛍光体及び緑色量子ドットを含むポリマービーズを含む遠隔ポリマーフィルムと、を含む。
【0057】
さらなる実施形態では、図11に示されるように、白色発光LEDは、青色発光LEDチップと、赤色発光KSF蛍光体及び緑色発光QDを含むポリマービーズを含む遠隔ポリマーフィルムとを含む。KSF蛍光体及とQDは、図1に示されるように、ビーズ全体にランダムに分布されてもよいし、図3及び図4に示されるように、コア/シェルビーズの中に形成されることもできる。
【0058】
さらなる実施形態では、図12に示されるように、白色発光LEDは、青色発光LEDチップと、赤色発光KSF蛍光体粒子及び緑色発光QDを含む遠隔ポリマーフィルムとを含む。
【0059】
別の実施形態において、KSF蛍光体の代わりに他の狭帯域蛍光体を用いられることができる。
【0060】
本発明は、特に、液晶ディスプレイに用いられるバックライトユニットへの用途を有する。液晶ディスプレイは、光源(バックライト)又はリフレクタの前面に配列された液晶の層を制御する任意の数のセグメントから構成された電子的変調光デバイスであり、カラー又はモノクロの画像を生成する。バックライトは、液晶ディスプレイ(LCD)に用いられる照明の一形態である。LCDはそれ自体が光を生成しない(例えばCRTディスプレイ及びLEDディスプレイとは異なる)ので、可視画像を生成するために照明源(周囲光又は特殊光源)を必要とする。バックライトは、ディスプレイパネルの側面又は背面からLCDを照明することができる。
【0061】
例示的なQDベースのバックライトユニットが図18に示されている。図示のBLUは、輝度向上フィルム(BEF)と液晶マトリックス(LCM)とを含む。QD含有層は、LEDの視覚化を可能にするために、その実際の位置から横方向に変位して示されている。本発明の一実施形態において、「QD」層は、緑色発光量子ドット及びKSF蛍光体を含むポリマーフィルムである。量子ドット及び/又はKSF蛍光体は、熱、酸素及び/又は水分から保護するビーズ内に含まれることができる。
【実施例】
【0062】
QD/ポリマー及びKSFを含有するビーズの製造方法
【0063】
ポリビニルアルコール(PVOH)溶液の調製:
【0064】
PVOH水溶液の調製は、PVOHを蒸留水に溶解し、一晩撹拌することにより行なった。未溶解のPVOH部分をさらに溶解させるために、溶液全体を70℃で3〜4時間加熱した。ビーズを合成するために、PVOH溶液を濾過して、あらゆる未溶解のポリビニルアセテート及び/又はダスト粒子を除去した。
【0065】
標準的な樹脂の調製
【0066】
一般的手順
【0067】
最初に、所定量のQDドット溶液を不活性雰囲気下で攪拌棒の入ったガラスバイアルに移した。トルエンを、減圧下で連続的に攪拌しながらQDドット溶液から除去した。微量の可視溶媒全てを除去した後、残留物を真空下にて40℃の温度で45分間加熱して微量の残留溶媒全てを除去した。脱気されたラウリルメタクリレート(LMA)及び架橋剤トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTM)を、脱気された光開始剤に加え、暗所で攪拌して光開始剤を完全に溶解することにより、ストック溶液(stock solution)を調製した。次いで、所定量のストック溶液を、不活性雰囲気の暗条件下で、乾燥QD残留物に添加した。樹脂溶液全体を一晩攪拌して、QDを完全に分散させた。
【0068】
ビーズの合成
【0069】
一般的手順
【0070】
最初に、ノニオン性ソルビタンエステル界面活性剤であるTWEEN(登録商標)80[Croda Americas LLC, Wilmington, Delaware 19801]の所定量を、反応容器に加え、続いて所定量のPVOH溶液を加えた後、少なくとも30分間攪拌して、界面活性剤をPVOH溶液の中に完全に溶解させた。溶液混合物全体は、真空/窒素サイクルにより、数時間脱気した。脱気処理の完了後、反応容器を、4つのUV−LEDヘッドが配備されたリグの中に入れた。次に、所定量のQD樹脂溶液を、絶えず攪拌しながら、PVOH/界面活性剤溶液の中に注入した。所定の撹拌時間の後、UV光源を数分間(反応条件に応じて)活性化させることにより、ビーズ重合が開始した。重合後、ビーズを冷蒸留水で2回洗浄した後、水/アセトニトリル(50/50体積比)混合物で1回、次いでアセトニトリルのみで2回洗浄した。通常、ビーズの洗浄は遠心分離機の中で行われる。洗浄後、ビーズを真空下で数時間乃至一晩乾燥させた。
【0071】
典型的なビーズの合成は以下のように行った:
【0072】
KSFビーズ
【0073】
最初に、0.4gの界面活性剤TWEEN80を10mLの4%PVOH溶液に添加し、30分間攪拌して、界面活性剤をPVOH溶液に完全に溶解させた後、真空/窒素サイクルを施すことによる脱気を数時間行なった。KSF樹脂を調製するために、最初に、必要な量のKSFを脱気し、次いで脱気したLMA/TMPTM樹脂(体積比が1:0.154で、光開始剤IRGACURE819(登録商標)[BASF SE Company, Carl-Bosch-Str.38 Lugwigshafen, Germany 67056]を1%含む)を、LMA/TMPTMストック溶液から加えた。KSF樹脂溶液を不活性雰囲気の暗条件下で一晩攪拌した。次の日、クロス磁気攪拌バーを用いて、窒素雰囲気下にて、800rpmで絶え間なく撹拌しながら、KSF樹脂溶液0.5mLを、脱気された10mLのPVOH/界面活性剤溶液の中に注入した。10分間撹拌した後、UV光源を10分間活性化することによってビーズ重合を開始させた。得られたビーズを上記した方法で洗浄し、真空下で数時間乾燥させた。
【0074】
緑色QDビーズ
【0075】
最初に、0.4gの界面活性剤TWEEN80を10mLの4%PVOH溶液に添加し、30分間攪拌して、界面活性剤をPVOH溶液に完全に溶解させた後、真空/窒素サイクルを施すことによる脱気を数時間行なった。緑色QD樹脂を調製するために、最初に、QD溶液を真空下で乾燥させた。次に、脱気した3gのLMA/TMPTM樹脂(体積比が1:0.154で、IRGACURE819を1%含む)をLMA/TMPTMから加えて、不活性雰囲気の暗条件下で一晩攪拌した。QD樹脂溶液全体を一晩攪拌して、QDを完全に分散させた。次の日、クロス磁気攪拌バーを用いて、窒素雰囲気下にて、800rpmで絶え間なく撹拌しながら、KSF樹脂溶液0.5mLを、脱気された10mLのPVOH/界面活性剤溶液の中に注入した。10分間撹拌した後、UV光源を10分間活性化することによってビーズ重合を開始させた。得られたビーズを上記した方法で洗浄し、真空下で数時間乾燥させた。
【0076】
QD/KSF白色ビーズ
【0077】
最初に、0.4gの界面活性剤TWEEN80を10mLの4%PVOH溶液に添加し、30分間攪拌して、界面活性剤をPVOH溶液に完全に溶解させた後、真空/窒素サイクルを施すことによる脱気を数時間行なった。QD/KSF白色ビーズを合成するために、最初に、KSFと緑色QD樹脂を上記と同じ手順に従って別々に調製した。次いで、所定量のKSFと緑色QD樹脂とを2時間混合し、「白色」KSF/QDビーズを製造した。このビーズは、青色光によって励起され、青色光と混合された時に白色光を発するビーズである。
【0078】
本発明のこれら及び他の利点は、当業者には前述の明細書から明らかであろう。それゆえ、当業者であれば、本発明の広範な概念から逸脱することなく、上述の実施形態に変更又は修正を加えられることは認識されるべきである。本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されず、本発明の文字通り記載された範囲及びその等価範囲から逸脱することなく、様々な変更又は修正をなし得ることは理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
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