(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スロットルバルブをバイパスするISCバルブを有するエンジンと、前記エンジンにより駆動される磁石式交流発電機と、前記発電機の出力端と前記発電機の負荷が接続される一対の出力端子との間に設けられて前記発電機の交流出力の整流と電圧調整とを行うレギュレータと、少なくとも前記エンジンを制御対象として該制御対象を制御する電子制御ユニットとを備えたエンジン駆動システムであって、
前記レギュレータは、前記出力端子間の電圧が設定値以下のときに前記発電機の交流出力を整流して前記出力端子を通して出力させ、前記出力端子間の電圧が設定値を超えたときに前記発電機の出力端と前記出力端子との間を電気的に切り離すことにより前記出力端子に設定値を超える電圧が印加されるのを防ぐように構成されたオープン式のレギュレータからなり、
前記電子制御ユニットは、
前記ISCバルブの開度を与えられた目標開度とするように前記ISCバルブを操作するバルブ操作手段と、
前記エンジンのアイドル運転時に生じる前記発電機の負荷変動を検出する負荷変動検出手段と、
前記負荷変動検出手段が負荷変動を検出していないときには前記エンジンのアイドル回転速度を目標値に保つようにフィードバック制御する際の前記ISCバルブの目標開度であるアイドル制御時目標開度を前記ISCバルブの目標開度として前記バルブ操作手段に与え、前記負荷変動検出手段が負荷変動を検出したときには、その負荷変動により生じる前記アイドル回転速度の変動を抑制するための補正量だけ前記アイドル制御時目標開度を補正した補正後目標開度を前記ISCバルブの目標開度として前記バルブ操作手段に制限された時間の間だけ与えた後、前記バルブ操作手段に与える目標開度を前記アイドル制御時目標開度に戻すように構成された目標開度設定手段と、
前記発電機の負荷のうち、前記エンジンのアイドル運転時に前記出力端子に接続されることがある少なくとも一つの負荷を被制御負荷として、該被制御負荷の投入及び遮断を制御する負荷投入・遮断制御手段とを具備し、
前記負荷変動検出手段は、前記負荷投入・遮断制御手段から前記負荷が投入されることの情報及び負荷が遮断されることの情報を取得して前記負荷の変動を検出するように構成されていること、
を特徴とするエンジン駆動システム。
前記目標開度設定手段は、前記負荷変動検出手段が前記負荷投入・遮断制御手段から前記負荷が投入されることの情報を取得して負荷変動を検出したときに、投入される負荷の大きさに応じて設定した補正量だけ前記バルブ操作手段に与える目標開度を前記アイドル制御時目標開度よりも増大させるように構成され、
前記負荷投入・遮断制御手段は、前記負荷を投入することの情報を前記負荷変動検出手段に与えた後、前記バルブ操作手段に与える目標開度を増大させたことにより前記アイドル回転速度が設定された負荷投入許可回転速度まで上昇したことを確認した時に当該負荷の投入を行うように構成されている請求項1に記載のエンジン駆動システム。
前記目標開度設定手段は、前記負荷変動検出手段が前記負荷投入・遮断制御手段から前記負荷が遮断されることの情報を取得して負荷変動を検出したときに、遮断される負荷の大きさに応じて設定した補正量だけ前記バルブ操作手段に与える目標開度を前記アイドル制御時目標開度よりも減少させるように構成され、
前記負荷投入・遮断制御手段は、前記負荷を遮断することの情報を前記負荷変動検出手段に与えた後、前記バルブ操作手段に与える目標開度を減少させたことにより前記アイドル回転速度が設定された負荷遮断許可回転速度まで低下したことを確認した時に当該負荷の遮断を行うように構成されている請求項1又は2に記載のエンジン駆動システム。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下添付図面を参照して本発明の実施形態につき詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施形態を示したものである。本実施形態に係るエンジン駆動システムは、エンジン1と、永久磁石からなる界磁を有する回転子及び電機子コイルを有する固定子を備えて回転子がエンジン1のクランク軸に結合された磁石式交流発電機2と、磁石式交流発電機2の電気負荷L1〜Ln及びLA〜LNが接続される負荷接続用出力端子3と、磁石式交流発電機2の出力端(電機子コイルの出力端)2aと出力端子3との間に設けられて、発電機2の交流出力の整流と電圧調整とを行うレギュレータ4と、少なくともエンジン1を制御対象として該制御対象を制御する電子制御ユニット(ECU)5とを備えている。
図1においては、負荷接続用出力端子3が一つしか図示されていないが、実際には、直流電気負荷が接続されるプラス側の出力端子とマイナス側の出力端子との1対の出力端子3が設けられている。
【0038】
本実施形態のエンジン駆動システムは、エンジン1を駆動源として電気負荷を駆動するための直流電力を得るエンジン発電機であるため、エンジン1には磁石式交流発電機2以外の負荷が接続されていないが、本発明は、エンジン1に磁石式交流発電機2以外の他の機械的負荷が接続されるエンジン駆動システム、例えば自動車などの乗り物や、農業機械等にも適用できる。
【0039】
一対の出力端子3間には、電気負荷L1〜Lnがそれぞれ負荷投入用スイッチSW1〜SWnを介して接続され、電気負荷LA〜LNがそれぞれ負荷投入用スイッチSWA〜SWNを介して接続されている。
【0040】
本実施形態においては、発電機2の電気負荷のうち、エンジンのアイドル運転時に出力端子に接続されることがある少なくとも一つの電気負荷を、発電機への投入(出力端子3への接続)及び発電機からの遮断(出力端子3からの切り離し)が電子制御ユニット5により制御される被制御負荷として、これらの被制御負荷の接続及び切り離しを、電子制御ユニットにより制御する。
【0041】
本実施形態では、負荷L1〜Lnを被制御負荷として、これらの負荷と出力端子3との間にそれぞれ設けられたスイッチSW1〜SWnのオンオフを電子制御ユニット5により制御する。
【0042】
スイッチSWA〜SWNは、電子制御ユニットにより制御されることがないスイッチで、操作員の操作などにより適宜にオンオフさせられるスイッチや、特定の対象物の温度が設定値を超えたときにオン状態になるサーモスイッチや、特定の可動部材が限界位置に達した時に動作するリミットスイッチ等である。
【0043】
エンジン1には、アイドル回転を制御するために、スロットルバルブ(図示せず。)をバイパスするISCバルブ7が設けられている。ISCバルブ7には、そのバルブを電気的に操作するために、ステップモータや、ソレノイドなどの駆動源を備えたバルブ操作部が設けられていて、このバルブ操作部に所定の目標開度を電気信号により与えることによりISCバルブ7の開度を目標開度とするように操作することができるようになっている。
【0044】
本実施形態で用いるレギュレータ4は、負荷接続用出力端子3間の電圧が設定値以下のときに発電機2の出力電圧を整流して出力端子3を通して出力させ、出力端子3間の電圧が設定値を超えたときに発電機2の出力端2aを出力端子3から電気的に切り離すことにより出力端3間の電圧が設定値を超えるのを防ぐように構成されたオープン式のレギュレータからなっている。
【0045】
オープン式のレギュレータ4は、例えば
図7に示すように構成される。
図7に示したレギュレータ4は、磁石式交流発電機2の出力電圧を整流する整流器401と、整流器401の直流出力端子と出力端子3との間に挿入されたスイッチ手段402と、出力端子3,3間の電圧を検出する電圧検出手段403と、電圧検出手段403により検出された出力端子3,3間の電圧が設定値以下のときにスイッチ手段402に駆動信号を与えてこのスイッチ手段をオン状態にし、電圧検出手段403により検出された出力端子3,3間の電圧が設定値を超えたときにスイッチ手段402への駆動信号の供給を停止してスイッチ手段402をオフ状態にするドライバ回路404とにより構成されている。スイッチ手段402は、バイポーラトランジスタやMOSFETなどのオンオフ制御が可能な半導体スイッチ素子により構成される。
【0046】
図7に示されたレギュレータ4は、発電機2の電気負荷が接続される出力端子3,3間の電圧が設定値以下のときに、スイッチ手段402をオン状態にして、発電機2の出力電圧を整流して得た直流電圧を出力端子3,3を通して出力させ、出力端子3,3間の電圧が設定値を超えたときに、スイッチ手段402をオフ状態にして、発電機の出力端2aを出力端子3,3から電気的に切り離すことにより、出力端子3,3間の電圧が設定値を超えるのを防ぐ。
【0047】
なお
図7に示した例では、整流器401の外部にスイッチ手段402を設けているが、スイッチ手段402を整流器401の内部に設けることもできる。例えば、整流器401としてフルブリッジ形の全波整流器を用いる場合には、整流器401を構成するブリッジの上辺及び下辺の一方をダイオードにより、他方をMOSFETのようなオンオフ制御が可能なスイッチ手段によりそれぞれ構成して、電圧検出手段403により検出された出力端子3,3間の電圧が設定値以下のときに当該スイッチ手段をオン状態にし、電圧検出手段403により検出された出力端子3,3間の電圧が設定値を超えたときに当該スイッチ手段をオフ状態にすることにより電圧調整動作を行わせるようにレギュレータ4を構成することもできる。
【0048】
図1に示した実施形態において、電子制御ユニット5は、点火装置や燃料噴射装置などの、エンジンを動作させるために必要な電装品を駆動するために必要な回路の少なくとも一部と、マイクロコンピュータとを共通のパッケージ内に収容してユニット化したものである。マイクロコンピュータは、CPUと、RAMやROMなどの記憶装置と、各種のインターフェース等とを備えていて、ROMに記憶された所定のプログラムをCPUに実行させることにより、各種の機能を実現する手段を構成する。
【0049】
図示の電子制御ユニット5は、点火回路501及びインジェクタ駆動回路502と、点火制御手段503及び燃料噴射制御手段504と、ISCバルブ7の開度を与えられた目標開度とするようにISCバルブの操作部を駆動するバルブ操作手段505と、エンジンのアイドル運転時に生じる発電機2の負荷変動を検出する負荷変動検出手段506と、バルブ操作手段505に与えるISCバルブの目標開度を設定する目標開度設定手段507と、被制御負荷L1〜Lnの投入及び遮断を制御するべくスイッチSW1〜SWnをオンオフ制御する負荷投入・遮断制御手段508と、発電機2の電気負荷が接続される出力端子3間の電圧を検出する出力電圧検出手段509とを備えている。
【0050】
電子制御ユニット5の構成要素のうち、点火回路501及びインジェクタ駆動回路502はハードウェア回路からなり、点火制御手段503、燃料噴射制御手段504、バルブ操作手段505、負荷変動検出手段506、目標開度設定手段507、負荷投入・遮断制御手段508及び出力電圧検出手段509は、それぞれの少なくとも一部がマイクロコンピュータのCPUに所定のプログラムを実行させることにより構成される。
【0051】
更に各部を詳細に説明すると、点火回路501は、図示しない点火コイルの一次電流を制御する回路で、点火コイルと、エンジンの気筒に取り付けられて該点火コイルの二次コイルに接続された点火プラグとともにエンジンの点火装置を構成する。点火回路501は、エンジンの点火時期に点火指令信号が与えられたときに図示しない点火コイルの一次電流に急激な変化を生じさせて点火コイルの二次コイルに高電圧を誘起させる回路で、種々の構成を有するものが知られている。
【0052】
点火制御手段503は、点火回路501に点火指令信号を与えるタイミングを、エンジンの回転速度などの種々の制御条件に対して制御して、エンジンの点火時期を制御する手段である。
【0053】
インジェクタ駆動回路502は、噴射指令信号が与えられたときに、インジェクタ(燃料噴射弁)に駆動パルスを供給する回路である。インジェクタは、例えば、先端に燃料噴射口を有し、内部に燃料が一定の圧力で供給されるインジェクタボディと、燃料噴射口を開閉するバルブと、該バルブを閉位置側に付勢するバネと、励磁された際にこのバネの付勢力に抗してバルブを開側に駆動するソレノイドとを備えていて、ソレノイドに駆動パルスが与えられたときに、バルブを開いてエンジンの吸気管内やシリンダ内などの燃料噴射空間に燃料を噴射する。
【0054】
燃料噴射制御手段504は、インジェクタ駆動回路502に駆動パルスを与えるタイミングと、駆動パルスの幅とを制御することにより、インジェクタから燃料を噴射するタイミングと燃料噴射量とを制御する手段である。
【0055】
バルブ操作手段505は、ISCバルブ7の開度を、目標開度設定手段507から与えられた目標開度とするようにISCバルブの操作部に操作信号を与えて、ISCバルブ7の開度を目標開度とするように操作する手段である。
【0056】
負荷投入・遮断制御手段508は、被制御負荷L1〜Lnのうち、何れかの負荷を投入する(出力端子3に接続する)ための条件が成立したとき、又は操作員が何れかの負荷を投入する指令を電子制御ユニットのCPUに与えたときに、スイッチSW1〜SWnのうち、投入すべき負荷に対応するスイッチに駆動信号を与えて、当該スイッチをオン状態にする。負荷投入・遮断制御手段508はまた、被制御負荷L1〜Lnのうち投入していた負荷を遮断する(出力端子3から切り離す)条件が成立したとき、又は操作員が駆動していた被制御負荷の駆動を停止する指令をCPUに与えたときに、スイッチSW1〜SWnのうち、駆動を停止する被制御負荷に対応するスイッチに与えていた駆動信号を除去して該スイッチをオフ状態にすることにより、当該被制御負荷を発電機から遮断する。
【0057】
負荷投入・遮断制御手段508はまた、負荷L1〜Lnを投入する際又は投入する直前に、投入する負荷が何れの負荷であるかを告知する負荷投入告知情報を出力し、投入していた負荷を発電機から遮断する際又は遮断する直前に、遮断する負荷が何れの負荷であるかを告知する負荷遮断告知情報を出力するように構成されており、これらの情報が負荷変動検出手段506に与えられている。
【0058】
負荷変動検出手段506は、負荷投入・遮断制御手段508から特定の負荷を投入することを示す負荷投入告知情報を取得したときに、当該負荷投入告知情報により投入されることが告知された負荷の大きさだけ発電機2の負荷が増加する負荷変動が起こることを検出し、負荷投入・遮断制御手段508から特定の負荷を遮断することを告知する負荷遮断告知情報を取得したときに、当該負荷遮断告知情報により遮断されることが告知された負荷の大きさだけ発電機2の負荷が減少する負荷変動が起こることを検出する。
【0059】
また本実施形態で用いる負荷変動検出手段506は、出力端子3間の電圧変化(電圧低下又は電圧上昇)を検出したときにも発電機2の負荷に変動が生じたことを検出するように構成されている。出力端子3間にバッテリ6が接続されている場合に、出力端子間に負荷が接続されると、出力端子間の電圧が低下し、出力端子3に接続されていた負荷が該出力端子から切り離されると、出力端子間の電圧が上昇するため、出力電圧検出手段509により検出される電圧を監視することにより、発電機2に負荷が投入されたこと及び投入されていた負荷が発電機2から遮断されたことを検出することができる。
【0060】
目標開度設定手段507は、負荷変動検出手段506が負荷変動を検出していないときにはアイドル回転速度を目標値に保つようにフィードバック制御する際のISCバルブ7の目標開度であるアイドル制御時目標開度をISCバルブの目標開度としてバルブ操作手段505に与え、負荷変動検出手段が負荷変動を検出したときには、その負荷変動により生じるアイドル回転速度の変動を抑制するための補正量だけアイドル制御時目標開度を補正した補正後目標開度をISCバルブの目標開度としてバルブ操作手段505に制限された時間の間だけ与えた後、バルブ操作手段505に与える目標開度をアイドル制御時目標開度に戻すように構成された手段である。
【0061】
これらの機能を実現するため、本実施形態で用いる目標開度設定手段507は、回転速度検出手段510と、目標回転速度設定手段511と、アイドル制御時目標開度演算手段512と、補正量演算手段513と、補正後目標開度演算手段514とを備えている。
【0062】
上記回転速度検出手段510は、エンジン1の回転速度の情報を含む信号に基づいてエンジンの回転速度を検出する手段である。エンジンの回転速度の情報を含む信号としては例えば、エンジン1を点火する際に、点火装置を構成する点火コイルの一次側に誘起するパルス電圧を用いることができる。またエンジンの回転に同期して予め定められたクランク角位置でパルス信号を発生するピックアップコイルが設けられている場合には、このピックアップコイルの出力パルスの発生周期からエンジンの回転速度を検出するように回転速度検出手段510を構成することもできる。
【0063】
またアイドル制御時目標開度演算手段512は、回転速度検出手段510により検出されたアイドル回転速度の検出値と目標回転速度設定手段511により設定されたアイドル回転速度の目標値との偏差を演算して、演算した偏差を零にするために必要なISCバルブ7の開度をアイドル制御時目標開度θiscfとして演算するように構成される。
【0064】
補正量演算手段513は、負荷変動検出手段506が負荷変動を検出したときに、その負荷変動により生じるアイドル回転速度の変動を抑制するために必要なアイドル制御時目標開度の補正量を、検出された負荷変動の度合いに応じて演算する手段である。負荷変動により生じるアイドル回転速度の変動を抑制するために必要なアイドル制御時目標開度の補正量は、例えば、発電機2の負荷変動量ΔRとアイドル回転速度Nとアイドル制御時目標開度の補正量Δθiscとの間の関係を与える補正量演算用マップを実験結果に基づいて作成しておいて、負荷変動検出手段506により検出された負荷の変動量ΔRと、回転速度検出手段510により検出されているアイドル回転速度Nとに対してこのマップを検索することにより演算される。
【0065】
負荷変動に伴って生じるアイドル回転速度の変動を抑制するために必要なISCバルブの開度の補正量Δθiscは、アイドル回転速度が高い場合ほど大きく、負荷変動量が多い場合ほど大きくなるため、上記補正量演算用マップは、負荷変動量が大きい場合ほど、補正量Δθiscを大きくし、かつアイドル回転速度が高い場合ほど補正量Δθiscを大きくするように作成しておくことが好ましい。本実施形態では補正量Δθiscを、アイドル制御時目標開度θiscfに加算又は減算する量として演算するものとし、ISCバルブの開度を増加させるようにアイドル制御時目標開度を補正する際の補正量Δθiscを正の符号を持つ量として演算し、ISCバルブの開度を減少させるようにアイドル制御時目標開度を補正する際の補正量Δiscを負の符号を持つ量として演算するものとする。
【0066】
補正後目標開度演算手段514は、補正量演算手段513により演算された補正量Δθiscを用いてアイドル制御時目標開度演算手段512が演算したアイドル制御時目標開度に補正演算を施すことにより補正後目標開度θiscを演算して、演算した補正後目標開度θiscをISCバルブ7の目標開度としてバルブ操作手段505に与える手段である。アイドル制御時目標開度θiscfに補正量を加算又は減算することにより補正後目標開度を求める構成をとる場合、本実施形態で用いる補正後目標開度演算手段514は、θisc=θiscf+Δθiscの演算式により補正後目標開度θiscを演算する。
【0067】
なお上記補正量を、アイドル制御時目標開度に対する百分率Δθ%の形で与えるようにすることもできる。この場合には、θisc=θiscf×Δθ(%)/100の演算式により補正後目標開度θiscを演算する。
【0068】
アイドル回転速度のフィードバック制御に与える影響を少なくするため、発電機の負荷変動により生じるアイドル回転速度の変動を抑制するためにISCバルブの開度を補正する処理は、アイドル回転速度の変動を抑制するために必要最小限の時間の間だけ行うのが好ましい。そのため、目標開度設定手段507は、負荷変動検出手段506が発電機2の負荷が変動したことを検出していないときに、アイドル制御時目標開度演算手段510が演算したアイドル制御時目標開度をISCバルブ7の目標開度としてバルブ操作手段505に与え、負荷変動検出手段506が発電機の負荷が変動したことを検出したときには、補正後目標開度演算手段512により演算された補正後目標開度をISCバルブの目標開度としてバルブ操作手段505に制限された時間の間だけ与えた後、バルブ操作手段505に与える目標開度をアイドル制御時目標開度に戻すように構成される。
【0069】
ISCバルブの目標開度を補正する処理を制限された時間の間だけ行わせるためには、例えば、発電機の負荷変動が検出されたときに設定された時間の間だけ補正後目標開度をバルブ操作手段に目標開度として与えた後、バルブ操作手段に与える目標開をアイドル制御時目標開度に戻すように目標開度設定手段を構成しておけば良い。
【0070】
上記のように、本実施形態で用いる目標開度設定手段507は、負荷変動検出手段506が、負荷投入・遮断制御手段508から負荷が投入されることを告知する情報を取得して負荷変動を検出したときに、投入される負荷の大きさ(負荷変動の度合い)に応じて設定した補正量だけバルブ操作手段505に与える目標開度をアイドル制御時目標開度よりも増大させ、負荷変動検出手段506が、負荷投入・遮断制御手段508から負荷が遮断されることを告知する情報を取得して負荷変動を検出したときに、遮断される負荷の大きさ(負荷変動の度合い)に応じて設定した補正量だけバルブ操作手段505に与える目標開度をアイドル制御時目標開度θiscfよりも減少させるように構成される。
【0071】
このように目標開度設定手段507を構成する場合、負荷投入・遮断制御手段508は、負荷を投入することの情報を負荷変動検出手段506に与えた後、バルブ操作手段505に与える目標開度を増大させたことによりアイドル回転速度が設定された負荷投入許可回転速度Nonまで上昇したことを確認した時に当該負荷の投入を行い、発電機2の負荷を遮断することの情報を負荷変動検出手段506に与えた後、バルブ操作手段505に与える目標開度を減少させたことによりアイドル回転速度が設定された負荷遮断許可回転速度Noffまで低下したことを確認した時に当該負荷の遮断を行うように構成するのが好ましい。
【0072】
図8を参照すると、上記のように目標開度設定手段507及び負荷投入・遮断制御手段508を構成した場合に、発電機の負荷が増大したことが検出された際及び負荷が減少した際に行われる各部の動作を時系列的に示したタイムチャートが示されている。
図8に示された例では、同図(A)に示すように、時刻t1 で負荷駆動指令が与えられたため、負荷投入・遮断制御手段508から負荷変動検出手段506に、負荷L1を投入することを告知する負荷投入告知情報が与えられている。負荷変動検出手段506はこの負荷投入告知情報から負荷L1が投入されることの情報を得て、発電機の負荷が負荷L1分だけ増加することを検出するため、
図8(B)に示すように、目標開度設定手段507が、バルブ操作手段505に与える目標開度を、負荷の増加量に応じて演算した補正量Δθiscだけアイドル制御時目標開度θiscfよりも増大させる。これによりバルブ操作手段505が、ISCバルブ7の開度を補正後目標開度θiscf+Δθiscまで増大させるため、
図8(C)に示すようにアイドル回転速度Nが、時刻t1から一定時間遅れた時刻t2 から目標回転速度Noよりも上昇していく。
【0073】
負荷投入・遮断検出手段508は、時刻t3 でアイドル回転速度Nが設定された負荷投入許可回転速度Nonまで上昇したことを確認したときにスイッチSW1に駆動信号を与えて、このスイッチをオン状態にすることにより負荷L1を発電機に投入する。この負荷の投入により発電機2からエンジン1にかかる機械的負荷が増加するため、アイドル回転速度が低下していくが、ISCバルブ7の開度が開側に補正されたことによりエンジンのトルクが増大しているため、時刻t3で負荷が投入されてもアイドル回転速度Nは、目標アイドル回転速度No よりも大きく低下することなく、短時間で目標回転速度No に収束する。時刻t1でISCバルブの開度を補正量Δθiscだけ増加させる処理を開始した後、設定された時間Ts が経過して時刻t4 になった時にISCバルブの目標開度を補正する処理を終了して、ISCバルブの開度をアイドル制御時目標開度θiscfに戻す。
【0074】
図8(A)に示すように、負荷投入・遮断制御手段508に与えられていた負荷駆動指令が時刻t5 で消滅すると、負荷投入・遮断制御手段508から負荷変動検出手段506に負荷が遮断されることを告知する負荷遮断告知情報が与えられる。負荷変動検出手段506はこの負荷遮断告知情報から負荷L1が遮断されることの情報を得て、発電機の負荷が負荷L1分だけ減少することを検出するため、
図8(B)に示すように、目標開度設定手段507が、バルブ操作手段505に与える目標開度を、負荷の減少量に応じて演算した補正量Δθiscだけアイドル制御時目標開度θiscfよりも減少させる。これによりバルブ操作手段505が、ISCバルブ7の開度を補正後目標開度θiscf−Δθiscまで減少させるため、
図8(C)に示すようにアイドル回転速度Nが、時刻t6 から目標回転速度Noよりも低下していく。
【0075】
負荷投入・遮断検出手段508は、時刻t7 でアイドル回転速度Nが設定された負荷遮断許可回転速度Noffまで低下したことを確認したときにスイッチSW1に与えていた駆動信号を消滅させて、このスイッチをオフ状態にすることにより負荷L1を遮断する。この負荷の遮断により発電機2からエンジン1にかかる機械的負荷が軽くなるため、時刻t7 からアイドル回転速度が上昇していくが、ISCバルブ7の開度が閉側に補正されたことによりエンジンのトルクが減少しているため、アイドル回転速度Nは、目標アイドル回転速度No よりも大きく上昇することなく、短時間で目標回転速度No に収束する。時刻t5 でISCバルブの開度を補正量Δiscだけ減少させる処理を開始した後、設定された時間Tsが経過して時刻t8 になった時にISCバルブの目標開度を補正する処理を終了して、ISCバルブの開度をアイドル制御時目標開度θiscfに戻す。
【0076】
なお、ISCバルブ7の開度の補正量Δθiscの大きさ及びISCバルブの開度を補正する処理を行う時間(補正時間)Ts は、発電機の負荷が増大した場合と減少した場合とで異ならせても良く、発電機の負荷が増大した場合も減少した場合も、補正量Δθiscの大きさ及び(又は)補正処理を行う時間Ts を同じにしても良い。補正量及び補正処理を行う時間は、実験結果に基づいて適宜に設定する。
【0077】
上記の説明では、発電機の負荷変動が検出されたときに設定された時間の間だけ補正後目標開度をバルブ操作手段に目標開度として与えた後、バルブ操作手段に与える目標開をアイドル制御時目標開度に戻すように目標開度設定手段507を構成するとしたが、ISCバルブ7の目標開度を補正する処理を制限された時間の間だけ行わせるために、負荷変動が検出されたときに補正後目標開度をバルブ操作手段に目標開度として与えた後、アイドル回転速度が目標値に収束したとみなされる状態になったときにバルブ操作手段に与える目標開度をアイドル制御時目標開度に戻すように目標開度設定手段507を構成しても良い。
【0078】
図9を参照するとこのように目標開度設定手段507を構成した場合に行われるISCバルブの制御動作を示したタイムチャートが示されている。
図9に示された例では、同図(A)に示すように、時刻t1 で負荷投入・遮断制御手段508に、負荷駆動指令が与えられたため、負荷投入・遮断制御手段508から負荷変動検出手段506に負荷L1を投入することを告知する負荷投入告知情報が与えられている。負荷変動検出手段506はこの情報から負荷L1が投入されることの情報を得て、発電機の負荷が負荷L1分だけ増加することを検出するため、
図9(B)に示すように、目標開度設定手段507が、バルブ操作手段505に与える目標開度を、負荷の増加量に応じて演算した補正量Δθiscだけアイドル制御時目標開度θiscfよりも増大させる。これによりバルブ操作手段505が、ISCバルブ7の開度を補正後目標開度θiscf+Δθiscまで増大させるため、
図9(C)に示すようにアイドル回転速度Nが、時刻t1から一定時間遅れた時刻t2 から目標回転速度Noよりも上昇していく。
【0079】
負荷投入・遮断検出手段508は、時刻t3 でアイドル回転速度Nが設定された負荷投入許可回転速度Nonまで上昇したことを確認したときにスイッチSW1に投入指令を与えて、このスイッチをオン状態にすることにより負荷L1を投入する。この負荷の投入により発電機2からエンジン1にかかる機械的負荷が増加するため、アイドル回転速度が低下していくが、ISCバルブ7の開度が開側に補正されたことによりエンジンのトルクが増大しているため、時刻t3で負荷が投入されてもアイドル回転速度Nは、目標アイドル回転速度No よりも大きく低下することなく、短時間で目標回転速度No に収束する。目標開度設定手段507は、時刻t4 で、アイドル回転速度が目標回転速度Noに収束したとみなされたときに、ISCバルブの目標開度を補正する処理を終了して、ISCバルブの開度をアイドル制御時目標開度θiscfに戻す。
【0080】
図9(A)に示すように、時刻t5 で負荷投入・遮断制御手段508に与えられていた負荷駆動指令が消滅すると、負荷投入・遮断制御手段508から負荷変動検出手段506に負荷L1を遮断することを告知する負荷遮断告知情報が与えられる。負荷変動検出手段506はこの負荷遮断告知情報から負荷L1が遮断されることの情報を得て、発電機の負荷が負荷L1分だけ減少することを検出するため、
図9(B)に示すように、目標開度設定手段507が、バルブ操作手段505に与える目標開度を、負荷の減少量に応じて演算した補正量Δθiscだけアイドル制御時目標開度θiscfよりも減少させる。これによりバルブ操作手段505が、ISCバルブ7の開度を補正後目標開度θiscf−Δθiscまで減少させるため、
図9(C)に示すようにアイドル回転速度Nが、時刻t5 から一定時間遅れた時刻t6 から目標回転速度Noよりも低下していく。
【0081】
負荷投入・遮断検出手段508は、時刻t7 でアイドル回転速度Nが設定された負荷遮断許可回転速度Noffまで低下したことを確認したときにスイッチSW1に与えていた駆動信号を消滅させて、このスイッチをオフ状態にすることにより負荷L1を遮断する。この負荷の遮断により発電機2からエンジン1にかかる機械的負荷が軽くなるため、時刻t7 からアイドル回転速度が上昇していくが、ISCバルブ7の開度が閉側に補正されたことによりエンジンのトルクが減少しているため、時刻t7 で負荷が遮断されてもアイドル回転速度Nは、目標アイドル回転速度No よりも大きく上昇することなく、短時間で目標回転速度No に収束する。目標開度設定手段507は、時刻t8 でアイドル回転速度が目標値に収束したとみなされたときにISCバルブの目標開度を補正する処理を終了して、ISCバルブの開度をアイドル制御時目標開度θiscfに戻す。
【0082】
上記の説明では、負荷変動検出手段506が、負荷投入・遮断制御手段508から負荷が投入されることの情報及び負荷が遮断されることの情報を取得して、発電機の負荷の変動を検出するとしたが、本実施形態では、出力端子3間の電圧が設定された電圧低下を示したことを検出したとき及び出力端子3間の電圧が設定された電圧上昇を示したことを検出したときにも発電機の負荷が変動したことを検出するように負荷変動検出手段506が構成されている。
【0083】
出力端子3間にバッテリが接続されている場合には、アイドル運転時に出力端子間に電気負荷が接続されると、バッテリから電気負荷に電流が流れることによりバッテリ電圧が急峻な電圧低下を示し、また出力端子間から電気負荷が切り離されると、バッテリ電圧が急峻な電圧上昇を示す。従って、出力端子3間にバッテリが接続されている場合には、出力端子間の電圧を監視して、出力端子間の電圧に所定の電圧低下が生じたことから発電機に電気的負荷が投入されたことを検出することができ、出力端子間の電圧に所定の電圧上昇が生じたことから、電気負荷が発電機から遮断されたことを検出することができる。
【0084】
発電機2の負荷の投入により出力端子3間の電圧が低下した後、エンジンのアイドル回転速度が低下し始めるまでの間には遅れがあり、また負荷の遮断により出力端子3間の電圧が上昇した後、アイドル回転速度が上昇し始めるまでの間には遅れがあるため、出力端子間の電圧の変化から発電機の負荷の変動を検出したときに、ISCバルブの開度を補正を行うことによっても、アイドル回転速度の変動が開始される前にアイドル回転速度の変動を抑制するべくエンジンのトルクを増加又は減少させて、アイドル回転速度の変動を効果的に抑制することができる。
【0085】
負荷変動検出手段506は、出力端子間の電圧の変化から発電機の負荷変動を検出するために、出力端子3間の電圧を設定されたサンプリング周期でサンプリングするサンプリング手段と、このサンプリング手段が新たにサンプリングした電圧と前回サンプリングした電圧との差を求めることにより出力端子間の電圧の変化量を検出する電圧変化量検出手段とを備えていて、この電圧変化量検出手段が検出した電圧変化量が設定値以上であるときに、発電機の負荷に、ISCバルブの開度の補正を必要とする変動が生じたことを検出するように構成されている。補正量演算手段513は、負荷変動検出手段506が出力電圧の変化から発電機の負荷変動を検出したときに、電圧の変化量(変化の度合い)に応じてISCバルブの開度の補正量を演算する。目標開度設定手段507は、アイドル制御時目標開度演算手段512が演算したアイドル制御時目標開度を補正量演算手段513が演算した補正量だけ補正することにより補正後目標開度を演算して、演算した補正後目標開度をバルブ操作手段505に目標開度として与える。
【0086】
図11は、出力端子3間の電圧の低下又は上昇を検出したときに発電機の負荷の変動を検出するようにした場合のISCバルブの制御動作を示したタイムチャートである。
図11に示した例では、同図(A)に示すように、時刻t1で
図1のスイッチSWAがオン状態にされて、負荷LAが投入されたため、
図11(B)に示すように出力端子3間の電圧が低下している。負荷変動検出手段506は、時刻t2で、出力端子間の電圧の低下量から、発電機2の負荷にISCバルブの開度の補正を必要とする変動が生じたことを検出したため、補正量演算手段513が、この負荷変動により生じるアイドル回転速度の変動を抑制するために必要なISCバルブの開度の補正量を演算している。目標開度設定手段507は、アイドル制御時目標開度を演算された補正量だけ補正した補正後目標開度をバルブ操作手段505に目標開度として与えるため、
図11(C)に示すように、時刻t2でISCバルブの開度が補正されている。また
図11に示した例では、負荷変動検出手段506が、出力端子間の電圧の低下量から、時刻t3で、発電機2の負荷にISCバルブの開度の補正を更に必要とする変動が生じたことを検出したため、時刻t3でISCバルブの開度が更に補正されている。
【0087】
図11に示した例ではまた、時刻t5でスイッチSWAが開かれて負荷LAが発電機2から遮断されたため、出力端子間の電圧が上昇している。負荷変動検出手段506は、この出力端子間の電圧の上昇量から、時刻t6で、発電機2の負荷にISCバルブの開度の補正を必要とする変動が生じたことを検出して、この負荷変動により生じるアイドル回転速度の変動を抑制するために必要なISCバルブの開度の補正量を補正量演算手段513に演算させたため、
図11(C)に示すように、時刻t6でISCバルブの開度が補正されている。また負荷変動検出手段506が、時刻t7で、出力端子間の電圧の低下量から、発電機2の負荷にISCバルブの開度の補正を更に必要とする変動が生じたことを検出したため、時刻t7でISCバルブの開度が更に補正されている。
【0088】
本実施形態に示した負荷変動検出手段506が、出力端子間の電圧をサンプリングして負荷変動を検出し、検出した負荷変動に対してISCバルブの開度が補正される過程の動作の一例を示すタイミングチャートを
図12及び
図13に示した。
【0089】
図12は、スイッチSWA〜SWNの何れかが投入されて発電機2の負荷が増加した際に行われる動作を示したものである。この例では、サンプリング手段が、時刻ta1,ta2,…で出力端子3間の電圧をサンプリングしている。時刻ta1でサンプリングした電圧値と時刻ta2でサンプリングした電圧値との差ΔV1は、設定値に達していないため、負荷変動検出手段506は、この電圧変化によっては、ISCバルブの開度の補正が必要な負荷変動が生じたとは判定していない。次のサンプリング時刻ta3では、前回サンプリング時刻ta2でサンプリングした電圧からの変化量ΔV2が設定値以上であると判定されたため、負荷変動検出手段506は、ISCバルブの開度の補正が必要な負荷変動が生じたと判定し、補正量演算手段513に、負荷変動により生じるアイドル回転速度の変動を抑制するために必要なISCバルブの開度の補正量を演算させている。これにより、時刻ta3でISCバルブの開度がΔθ1%補正されている。またサンプリング時刻ta4でも、サンプリング時刻ta3で前回サンプリングした電圧からの変化量ΔV3が設定値以上であると判定されたため、負荷変動検出手段506は、ISCバルブの開度の補正が必要な負荷変動が生じたと判定し、補正量演算手段513に、負荷変動により生じるアイドル回転速度の変動を抑制するために必要なISCバルブの開度の補正量を演算させている。これにより、時刻ta4でISCバルブの開度がΔθ2%補正されている。
【0090】
また
図13は、スイッチSWA〜SWNの何れかが投入状態から遮断状態にされて発電機2の負荷が減少した際に行われる動作を示したものである。この例では、サンプリング手段が、時刻tb1,tb2,…で出力端子3間の電圧をサンプリングしている。時刻tb1でサンプリングした電圧値と時刻tb2でサンプリングした電圧値との差ΔV1は、設定値に達していないため、負荷変動検出手段506は、この電圧変化によっては、ISCバルブの開度の補正が必要な負荷変動が生じたとは判定しない。時刻tb3では、前回時刻tb2でサンプリングした電圧からの変化量ΔV2が設定値以上であると判定されたため、負荷変動検出手段506は、ISCバルブの開度の補正が必要な負荷変動が生じたと判定し、補正量演算手段513に、負荷変動により生じるアイドル回転速度の変動を抑制するために必要なISCバルブの開度の補正量を演算させる。これにより、時刻tb3でISCバルブの開度がΔθ1%補正される。またtb4でも、前回時刻tb3でサンプリングした電圧からの変化量ΔV3が設定値以上であると判定されたため、負荷変動検出手段506は、ISCバルブの開度の補正が必要な負荷変動が生じたと判定し、補正量演算手段513に、負荷変動により生じるアイドル回転速度の変動を抑制するために必要なISCバルブの開度の補正量を演算させている。これにより、時刻tb4でISCバルブの開度がΔθ2%補正されている。
【0091】
上記のように、出力端子間の電圧の変化から発電機の負荷変動を検出するようにしておくと、アイドル運転時に、電子制御ユニット5により投入・遮断が制御されることがない負荷の投入・遮断が行われた際にも、発電機に負荷が投入されたこと及び負荷が発電機から遮断されたことを検出することができるため、電子制御ユニットにより投入・遮断が制御されることがない負荷の投入・遮断が行われた際にも、アイドル回転速度の変動を抑制するためのISCバルブの開度の補正処理を行うことができる。
【0092】
上記のように、本実施形態のエンジン駆動システムにおいては、エンジン1のアイドル運転時に、負荷変動検出手段506が、発電機2の負荷の変動(負荷の投入又は遮断)を検出したときに、発電機2の負荷の変動に伴って生じるアイドル回転の変動を抑制するべく、ISCバルブの開度を補正する処理を行うが、発電機2の負荷が変動した後、アイドル回転速度の変動が開始されるまでの間には必ず遅れがあるため、発電機2の負荷変動を検出したときにISCバルブの開度を補正する措置を講じるようにすると、アイドル回転速度をフィードバック制御のみにより制御する場合に比べて、アイドル回転速度の変動をより効果的に抑制することができる。
【0093】
上記のエンジン駆動システムにおいて、発電機2の負荷が投入された際及び遮断された際に、負荷変動の度合いに応じてISCバルブの開度を補正する処理を行わなかったとした場合には、
図10(A)に示すように、時刻ta でアイドル運転時に発電機の負荷が投入された際及び時刻tb で負荷が遮断された際に、同図(B)に示すようにアイドル回転速度が大きく変動し、最悪の場合には、負荷が投入された際にエンジンがストールすることがあったが、本実施形態によれば、アイドル運転時に発電機2に電気負荷が接続された際に、アイドル回転速度が大きく変動したり、エンジン1がストールしたりするといった問題を生じさせることなく、オープン式のレギュレータ4を用いて電圧調整を行うことができる。
【0094】
オープン式のレギュレータを用いると、発電機に電気負荷が接続されていない状態でアイドル運転が行われているときに、発電機からエンジンに機械的負荷が殆どかからないようにすることができる。また発電機に電気負荷が接続されている状態でも、出力端子間の電圧が設定値を超えている間は電機子コイルと出力端子との間が電気的に切り離されて、電機子コイルに電流が流れないので、短絡式のレギュレータを用いる場合に比べて、電圧調整時に発電機からエンジンにかかる機械的負荷を小さくすることができる。従って、オープン式のレギュレータを用いると、アイドル運転時にエンジンが消費する燃料の量を、短絡式のレギュレータを用いる場合に比べて少なくして、エンジンの燃費を改善することができる。
【0095】
上記実施形態のように、発電機2の電気負荷のうち、エンジン1のアイドル運転時に出力端子に接続されることがある少なくとも一つの電気負荷を、出力端子への接続及び出力端子からの切り離しが電子制御ユニットにより制御される被制御負荷L1〜Lnとする場合、これらの被制御負荷としては、エンジンのアイドル運転が行われていて発電機が無負荷の状態にあるときに出力端子に接続されるとエンジンの回転速度を設定回転速度以上低下させるか、又はエンジンをストールさせるおそれがある電気負荷を選定するのが好ましい。
【0096】
このように被制御負荷L1〜Lnを選定しておくと、エンジンのアイドル運転時に発電機に接続されるとエンジンの回転速度を大きく低下させるか、又はエンジンをストールさせるおそれがある電気負荷が接続されたことを確実に検知して、アイドル回転速度が低下することを確実にしかも早期に知ることができるため、ISCバルブの開度を増大させる補正処理を早期に行わせて、電気負荷の接続によりアイドル回転速度が大きく低下したりエンジンがストールしたりするのを確実に防ぐことができる。
【0097】
図1に示した実施形態では、目標開度設定手段507が、アイドル制御時目標開度を演算するアイドル制御時目標開度演算手段502と、負荷変動が検出されたときにその負荷変動の度合いに応じてISCバルブの開度の補正量を演算する補正量演算手段513とを備えて、補正量演算手段513により演算された補正量を用いてアイドル制御時目標開度演算手段512が演算したアイドル制御時目標開度に補正演算を施すことにより補正後目標開度を演算するように構成されているが、目標開度設定手段507は、発電機の負荷変動が検出されたときに、アイドル回転速度をフィードバック制御する際の目標アイドル回転速度を補正することにより、アイドル回転速度の変動を抑制するべく、ISCバルブの開度を補正するように構成しても良い。
【0098】
図2は、発電機2の負荷変動が検出されたときに、アイドル回転速度をフィードバック制御する際の目標アイドル回転速度を補正することにより、ISCバルブ7の開度を補正するようする場合のシステムの構成を示したブロック図である。
図2に示した例では、負荷変動検出手段506が発電機2の負荷変動を検出したときに、アイドル回転速度をフィードバック制御する際の目標アイドル回転速度を補正することにより、アイドル回転速度の変動を抑制するべく、ISCバルブの開度を補正するように構成される。即ち、本実施形態において用いる目標開度設定手段507は、アイドル回転速度の目標値と検出値とを入力としてアイドル回転速度を目標値に保つために必要なアイドル制御時目標開度を演算するアイドル制御時目標開度演算手段512と、負荷変動が検出されたときにアイドル制御時目標開度演算手段に補正後目標開度を演算させるために必要なアイドル回転速度の目標値の補正量を演算する目標回転速度補正量演算手段515と、目標回転速度設定手段511が設定する目標回転速度を目標回転速度補正量演算手段515により演算された補正量だけ補正する目標回転速度補正手段516とを備えて、負荷変動が検出されたときにアイドル制御時目標開度演算手段512に与える目標回転速度を目標回転速度補正量演算手段515により演算された補正量だけ補正することにより、アイドル制御時目標開度演算手段512に補正後目標開度を演算させるように構成される。
図2に示した実施形態のその他の構成は
図1に示した実施形態の構成と同様である。
【0099】
図3は、
図1の実施形態の構成の一部を変更した本発明の第3の実施形態を示したもので、本実施形態においては、
図1に示した負荷LA〜LNが設けられておらず、負荷投入・遮断制御手段508により投入・遮断が制御される被制御負荷L1〜Lnのみが設けられている。
図3に示した実施形態においては、
図1の実施形態で設けられた出力電圧検出手段509が省略され、負荷変動検出手段506は、負荷投入・遮断制御手段508から与えられる負荷投入告知情報及び負荷遮断告知情報のみから発電機2の負荷の投入及び遮断を検出するように構成されている。
図3に示した実施形態のその他の構成は
図1に示した実施形態の構成と同様である。
【0100】
図4は、
図2に示された実施形態の構成の一部を変更した本発明の第4の実施形態を示したものである。本実施形態においては、
図2に示されたた負荷LA〜LNが設けられておらず、発電機2に投入される負荷としては、負荷投入・遮断制御手段508により投入・遮断が制御される被制御負荷L1〜Lnのみが設けられている。
図3に示した実施形態においては、
図1の実施形態で設けられた出力電圧検出手段509が省略され、負荷変動検出手段506は、負荷投入・遮断制御手段508から与えられる負荷投入告知情報及び負荷遮断告知情報のみから発電機2の負荷の投入及び遮断を検出するように構成されている。
図3に示した実施形態のその他の構成は
図1に示した実施形態の構成と同様である。
【0101】
図5は、
図1に示された実施形態の構成の一部を変更した本発明の第5の実施形態を示したものである。本実施形態においては、
図1に示されたた被制御負荷L1〜Lnが設けられておらず、発電機2に投入される負荷としては、電子制御ユニットによっては制御されない負荷LA〜LNのみが設けられている。
図5に示した実施形態においては、
図1の実施形態で設けられた負荷投入・遮断制御手段508が省略され、負荷変動検出手段506は、出力電圧検出手段509により出力端子3間の電圧に設定された電圧低下が生じたことが検出されたとき及び設定された電圧上昇が生じたことが検出されたときにそれぞれ発電機2の負荷が投入されたこと及び遮断されたことを検出するように構成されている。
図5に示した実施形態のその他の構成は
図1に示した実施形態の構成と同様である。
【0102】
図6は、
図2に示された実施形態の構成の一部を変更した本発明の第6の実施形態を示したものである。本実施形態においては、
図2に示されたた負荷L1〜Lnが設けられておらず、発電機2に投入される負荷としては、負荷投入・遮断制御手段508により投入・遮断が制御されることがない被制御負荷LA〜LNのみが設けられている。
図6に示した実施形態においては、
図2の実施形態で設けられた負荷投入・遮断制御手段508が省略され、負荷変動検出手段506は、出力電圧検出手段509により出力端子3間の電圧に設定された電圧低下が生じたことが検出されたとき及び設定された電圧上昇が生じたことが検出されたときにそれぞれ発電機2の負荷が投入されたこと及び遮断されたことを検出するように構成されている。
図6に示した実施形態のその他の構成は、
図2に示した実施形態の構成と同様である。
【0103】
上記の説明では、アイドル運転時に発電機に負荷が投入された際に生じるアイドル回転速度の低下と、アイドル運転時に発電機に投入されていた負荷が発電機から遮断された際に生じるアイドル回転速度の上昇との双方を抑制するとしたが、本発明に係るシステムは、必ずしもこれらのアイドル回転速度の変動の双方を抑制するように構成する必要はなく、例えば、オープン式のレギュレータを採用したエンジン駆動システムにおいて、アイドル運転時に生じる最も重大な問題である、エンジンのストールを防止することを主眼にして、アイドル運転時に発電機に負荷が投入された際に生じるアイドル回転速度の低下のみを抑制するようにシステムを構成することもできる。
【0104】
上記の説明では、電子制御ユニットにより投入・遮断が制御されない負荷LA〜LNの投入・遮断を、出力端子3間の電圧の変化から検出するとしたが、負荷LA〜LNの投入・遮断を検出するセンサ(例えばスイッチSWA〜SWNのオンオフの状態を検出するセンサ)を設けて、これらのセンサにより、負荷LA〜LNが投入されたか否かを検出することにより、発電機の負荷が投入されたか遮断されたかを検出するように負荷変動検出手段506を構成することもできる。
【0105】
図14ないし
図17を参照すると、
図1に示した実施形態において、アイドル運転時に発電機に負荷が投入された際に生じるアイドル回転速度の低下やエンジンのストールを防止することに目的を絞ってシステムを構成する場合に、電子制御ユニット5のCPUに実行させるプログラムのアルゴリズムの一例を示したフローチャートが示されている。これらの図のうち、
図14は、プログラムの全体的な流れを示すゼネラルフローチャートであり、
図15は、発電機の負荷の増加量を検出する負荷増加量検出ルーチンのアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。また
図16は、ISCバルブの目標開度の補正量と、補正後目標開度とを演算するISCバルブ開度演算ルーチンのアルゴリズムの一例を示すフローチャートであり、
図17は、ISCバルブ開度の補正量(増加分)を演算するISCバルブ開度補正量演算ルーチンのアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。本実施形態では、負荷LA〜LNの投入、遮断を検出するセンサ(スイッチSWA〜SWNの状態を検出するセンサ)が設けられていて、負荷LA〜LNが投入されたこと及び遮断されたことを個別に検出できるようになっているものとする。
【0106】
アイドル運転時に発電機に負荷が投入された際に生じるアイドル回転速度の低下やエンジンのストールを防止することに目的を絞ってシステムを構成する場合には、
図14に示したように、ステップS01でアイドル運転時に新たに生じた発電機の負荷の増加量を検出した後、ステップS02でISCバルブの補正後目標開度を演算し、次いでステップS03でバルブ操作部505に与えるISCバルブ操作信号を出力する。
【0107】
図14のステップS01では、
図15に示した負荷増加量検出ルーチンを実行することにより、アイドル運転時に生じた発電機の負荷の増加量を検出する。
図15に示した負荷増加量検出ルーチンでは、先ずステップS101で、今回のルーチンで負荷LA〜LNの何れかが投入されたか否か(負荷投入用スイッチSWA〜SWNの何れかが投入されたか否か)を判定する。その結果、負荷LA〜LNの何れかが投入されたと判定された場合には、ステップS102に進んで負荷LA〜LNのうち、投入された負荷に対応する負荷投入フラグF1をセットする。
【0108】
ステップS101で負荷LA〜LNの何れも投入されていないと判定されたときには、ステップS103に進んでフラグF1をリセットする。ステップS102又はS103を実行した後、ステップS104に進んで今回のルーチンで出力電圧(出力端子間の電圧)が所定値以上低下したか否かを判定し、所定値以上低下していると判定された時にはステップS105に進んで、出力電圧低下フラグF2をセットする。
【0109】
ステップS104で今回のルーチンで出力電圧が所定値以上の低下を示さなかったと判定された場合には、ステップS106に進んで出力電圧低下フラグをリセットする。ステップS105又はS106を実行した後、ステップS107に進んで、今回のルーチンで電子制御ユニット(ECU)の負荷投入・遮断制御手段508から負荷投入通知があったか否かを判定し、負荷投入通知があった場合には、ステップS108に進んで、被制御負荷L1 〜Lnのうち投入することが通知された負荷に対応する負荷投入通知フラグF3をセットする。
【0110】
ステップS107で負荷投入通知がなかったと判定された場合には、ステップS109に進んで負荷投入通知フラグをリセットする。ステップS109を実行した後、ステップS110に進んでフラグF1,F2又はF3のいずれかがセットされているか否かを判定し、セットされている場合には、ステップS111に進んで、セットされているフラグに応じて負荷増加量を演算する。ステップS110で何れのフラグもセットされていないと判定された場合には、ステップS112で負荷増加量を零としてこのルーチンを終了し、
図14のステップS02に進む。
【0111】
フラグF1は、負荷LA 〜LNの少なくとも一つが投入されたときにセットされ、負荷LA〜LNが投入されていないときにリセットされる。フラグF2は、負荷LA〜LN及び負荷L1〜Lnの何れかが投入されて、出力端子3間の電圧が所定値以上低下したときにセットされ、負荷LA〜LN及び負荷L1〜Lnの何れかが投入されても、出力端子間の電圧が所定値以上低下しない場合にはリセットされる。またフラグF3は、負荷L1〜Lnの何れかが投入された場合にセットされ、負荷L1〜Lnが投入されていない場合にはリセットされる。
【0112】
図15のステップS111では、セットされているフラグから何れの負荷が投入されているかを判定して、投入されていると判定された負荷を加算することにより負荷増加量を演算する。例えば、フラグF1のみがセットされ、フラグF2がセットされていないときには、負荷LA 〜LNの少なくとも一つがこれから投入されると判定して、負荷LA 〜LNのうち、セットされたフラグF1に対応する負荷の大きさを負荷の増加量とする。またフラグF1,F2の双方がセットされ、フラグF3はセットされていないときには、負荷LA〜LNの何れかが投入されて、発電機に実際に負荷電流が流れていると判定し、出力電圧の低下の度合いから投入された負荷が負荷LA 〜LNのうちセットされたフラグF1に対応する負荷であると判定されたときは、セットされたフラグF1に対応する負荷の大きさを負荷の増加量とする。また出力電圧の低下の度合い(例えば単位時間当たりの低下量)から、負荷LA 〜LNのうちセットされたフラグF1に対応する負荷の他にも、投入された負荷があると判定された場合には、負荷LA 〜LNのうちセットされたフラグF1に対応する負荷の大きさと、出力電圧の低下の度合いに応じてマップ演算した負荷の推定値との合計を負荷の増加量とする。
【0113】
またフラグF2のみがセットされている場合には、負荷LA〜LN及びL1〜Ln以外の投入、遮断を直接検出する手段が設けられていない負荷が投入されたことにより、出力電圧が低下したと判定して、出力電圧の低下の度合いに応じてマップ演算した負荷の推定値を負荷増加量とする。フラグF3のみがセットされたときには、負荷L1〜Lnの何れかがこれから投入されると判定して、負荷L1〜Lnのうち、セットされたフラグF3に対応する負荷の大きさを負荷増加量とする。
【0114】
またフラグF1,F3の双方がセットされた場合には、負荷LA〜LNのうち、セットされたフラグF1に対応する負荷の大きさと、負荷L1〜Lnのうち、セットされたフラグF3に対応する負荷の大きさとの合計値を負荷増加量とする。
【0115】
図15のステップS111で負荷の増加量を演算した後、
図14のステップS02に進んで、ISCバルブの目標開度とする補正後目標開度を演算する。
図14のステップS02では、
図16に示したISCバルブ開度演算ルーチンを実行することにより、ISCバルブの目標開度とする補正後目標開度を演算する。
【0116】
図16のルーチンでは、先ずステップS201で現在の制御モードがアイドルフィードバック制御モードであるか否かを判定する。エンジンを始動した後、アイドル回転が安定するまでの間(例えばエンジンが冷えていて、暖機運転が行われている間)は通常オープンループでISCバルブの開度が制御される。オープンループ制御では、エンジンの温度などに対してISCバルブの目標開度を設定して、ISCバルブの開度を設定した目標開度とするようにバルブ操作手段505に操作信号を与える。エンジンの温度が設定値に達し、アイドル回転が安定した後は、フィードバック制御に移行して、アイドル回転速度を目標速度に保つように、ISCバルブの開度をフィードバック制御する。
【0117】
図16のルーチンのステップS201で現在の制御モードがアイドルフィードバック制御モードであると判定されたときには、ステップS202に進んで、発電機の負荷の増加に伴うISCバルブの開度θiscの、フィードバック制御時のISCバルブの目標開度であるアイドル制御時目標開度θiscfからの増加量(補正量)Δθiscを演算した後、ステップS203に進んで補正後目標開度θisc=θiscf+Δθisc を演算する。
【0118】
図16のルーチンのステップS201で現在の制御モードがアイドルフィードバック制御モードではなく、オープンループ制御モードであると判定された場合には、ステップS204に進んで、オープンループ制御を行う際のISCバルブの目標開度θiscoをマップを用いて演算する。この演算に用いるマップは、例えば、エンジンの回転速度とエンジンの温度とISCバルブの目標開度との間の関係を与えるマップである。
【0119】
図16のルーチンのステップS202では、
図17に示したISCバルブ開度補正量演算ルーチンを実行することにより、ISCバルブの目標開度のアイドル制御時目標開度θiscfからの増加量(補正量)を演算する。
図17に示したISCバルブ開度増加量演算ルーチンでは、先ずステップS301において、発電機2の負荷が増加したか否かを判定し、負荷が増加しなかったと判定されたときには何もしないでこの処理を終了する。ステップS301で負荷が増加したと判定されたときには、ステップS302に進んで、発電機2の負荷の増加に伴ってISCバルブの開度を補正する処理を行う時間であるISCバルブ開度補正時間を設定し、設定した補正時間を補正時間計測カウンタにセットしてその計測を開始させる。その後ステップS303に進んで補正時間計測カウンタの計測値が設定された補正時間以上であるか否かを判定し、その結果、補正時間計測カウンタの計測値が設定された補正時間未満であると判定されたときには、ステップS304に進んで、増加した負荷が電子制御ユニット5により投入・遮断が制御される負荷であるか否かを判定する。
【0120】
ステップS304で増加した負荷が電子制御ユニット5により投入・遮断が制御される負荷であると判定されたときには、ステップS305に進んでその負荷の投入の準備がされているか否かを判定する。その結果、投入の準備がされていると判定されたときには、ステップS306に進んでアイドル回転速度が負荷投入許可速度以上であるか否かを判定し、アイドル回転速度が負荷投入許可速度以上であると判定されたときにステップS307に進んで負荷投入許可フラグをセットすることにより、電子制御ユニットの負荷投入・遮断制御手段508が負荷を投入することを許可してこのルーチンを終了する。
【0121】
図17のルーチンのステップS306で、アイドル回転速度が負荷投入許可速度以上でないと判定されたときには、ステップS308に進んで負荷の増加に伴うISCバルブ開度の補正量をISC補正量演算マップIを用いて演算した後このルーチンを終了して
図16のルーチンのステップS203に進む。ステップS308で用いるマップIは、エンジンの回転速度Nと、発電機の負荷の増加量ΔRとISCバルブの開度の補正量(増加量)Δθiscとの間の関係を与えるマップである。
【0122】
図17のルーチンのステップ304で、増加した負荷が電子制御ユニットにより投入・遮断が制御される負荷ではないと判定されたときには、ステップS309に進んで、負荷の増加に伴うISCバルブ開度の補正量Δθisc をISCバルブ補正量演算マップIIを用いて演算する。このマップIIは、エンジンの回転速度Nと発電機の負荷増加量ΔRと補正量Δθiscとの間の関係を与えるマップで、ステップS308で用いるマップとは異なる特性を持たせて作成されている。
【0123】
図17のルーチンのステップS303で補正時間計測カウンタの計測値が設定された補正時間以上であると判定されたときには、ステップS310に進んで補正時間(ISCバルブの目標開度の補正を行う時間)を0とする。次いでステップS311でISCバルブの目標開度の補正量を0としてこのルーチンを終了し、
図16のルーチンのステップS203に移行する。
【0124】
図16のステップS204で
図17のルーチンを実行してISCバルブの目標開度の補正量Δθiscを演算した後、
図16のルーチンのステップS203で、補正後目標開度θisc=θiscf+Δθiscを演算し、
図14のステップS03で、ISCバルブ7の開度を補正後目標開度θiscとするようにバルブ操作部505にISCバルブ操作信号を与える。
【0125】
図14ないし
図17に示したアルゴリズムによる場合には、
図15の負荷増加量検出ルーチンにより負荷変動検出手段506が構成され、
図17のISCバルブ開度補正量演算ルーチンにより補正量演算手段513が構成されている。また
図16のISCバルブ開度演算ルーチンのステップS203により補正後目標開度演算手段514が構成されている。
【0126】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本願明細書及び図面に開示された発明をまとめて記載すると下記の通りである。
【0127】
(1)第1の発明
本発明は、スロットルバルブをバイパスするISCバルブ7を有するエンジン1と、前記エンジン1により駆動される磁石式交流発電機2と、前記発電機2の出力端と前記発電機の負荷が接続される一対の出力端子3との間に設けられて前記発電機の交流出力の整流と電圧調整とを行うレギュレータ4と、少なくとも前記エンジンを制御対象として該制御対象を制御する電子制御ユニット5とを備えたエンジン駆動システムを対象とする。
【0128】
本発明に係るシステムで用いるレギュレータ4は、発電機2の電気負荷が接続される出力端子3間の電圧が設定値以下のときに当該発電機の電機子コイルの誘起電圧を整流して出力端子を通して出力させ、出力端子3間の電圧が設定値を超えたときに前記電機子コイルを出力端子から電気的に切り離すことにより出力端子間の電圧が設定値を超えるのを防ぐように構成されたオープン式のレギュレータからなっている。
【0129】
また本発明に係るシステムで用いる電子制御ユニット5は、ISCバルブの開度を与えられた目標開度とするようにISCバルブを操作するバルブ操作手段505と、エンジンのアイドル運転時に生じる発電機2の負荷変動を検出する負荷変動検出手段506と、負荷変動検出手段506が負荷変動を検出していないときにはアイドル回転速度を目標値に保つようにフィードバック制御する際のISCバルブの目標開度であるアイドル制御時目標開度をISCバルブの目標開度としてバルブ操作手段505に与え、負荷変動検出手段506が負荷変動を検出したときには、その負荷変動により生じるアイドル回転速度の変動を抑制するための補正量だけアイドル制御時目標開度を補正した補正後目標開度をISCバルブの目標開度としてバルブ操作手段に制限された時間の間だけ与えた後、バルブ操作手段に与える目標開度をアイドル制御時目標開度に戻すように構成された目標開度設定手段507とを備える。
【0130】
エンジン1により駆動される発電機2の出力を調整するレギュレータ4としてオープン式のレギュレータが用いられている場合には、発電機が無負荷の状態でエンジン1のアイドル運転が行われているときに、発電機2からエンジン1に機械的負荷が殆どかからず、エンジンの出力トルクが小さい状態にあるため、発電機2の電気負荷が投入されると、エンジンの回転速度が大きく低下し、最悪の場合にはエンジンがストールすることがある。またアイドル運転時に発電機2の負荷が遮断されると、アイドル回転速度が大きく上昇する。しかし、発電機2の負荷が変動した時に直ちにエンジンのアイドル回転速度の変動が生じるのではなく、発電機の負荷が変動してからアイドル回転速度が変動を開始するまでの間には必ず遅れがある。
【0131】
本発明のように、エンジン1のアイドル運転時に発電機2の電気負荷の変動を検出したときに、その負荷変動により生じるアイドル回転速度を抑制するための補正量だけアイドル制御時目標開度を補正した補正後目標開度をISCバルブの目標開度としてバルブ操作手段505に制限された時間の間だけ与えた後、バルブ操作手段に与える目標開度をアイドル制御時目標開度に戻すように構成しておくと、アイドル回転速度の低下が始まる前に、又は少なくともアイドル回転速度が大きく低下する前にISCバルブの開度を補正して、アイドル回転速度の変動を抑えるようにエンジンの出力トルクを調整することができるため、アイドル回転速度の変動幅が大きくなったり、アイドル運転時にエンジンがストールしたりするのを防ぐことができる。
【0132】
(2)第2の発明
第2の発明は、第1の発明で用いる目標開度設定手段507の構成に係るもので、本発明で用いる目標開度設定手段507は、発電機の負荷変動が検出されたときに設定された時間の間だけ補正後目標開度をバルブ操作手段505に目標開度として与えた後、バルブ操作手段に与える目標開をアイドル制御時目標開度に戻すように構成される。
【0133】
(3)第3の発明
第3の発明も第1の発明で用いる目標開度設定手段の構成に係るもので、本発明で用いる目標開度設定手段507は、負荷変動が検出されたときに補正後目標開度をバルブ操作手段に目標開度として与えた後、アイドル回転速度が目標値に収束したとみなされる状態になったときにバルブ操作手段に与える目標開度をアイドル制御時目標開度に戻すように構成される。
【0134】
(4)第4の発明
第4の発明は、第1の発明ないし第3の発明のいずれかの発明の構成をとる場合に用いる目標開度設定手段507の構成に係るもので、本発明で用いる目標開度設定手段507は、アイドル制御時目標開度を演算するアイドル制御時目標開度演算手段512と、負荷変動が検出されたときにその負荷変動の度合いに応じて前記補正量を演算する補正量演算手段513とを備えて、補正量演算手段513により演算された補正量を用いてアイドル制御時目標開度演算手段512が演算したアイドル制御時目標開度に補正演算を施すことにより補正後目標開度を演算するように構成される。
【0135】
(5)第5の発明
第5の発明も第1の発明ないし第3の発明のいずれかの発明の構成をとる場合に用いる目標開度設定手段507の構成に係るもので、本発明においては、発電機2の負荷変動が検出されたときに、アイドル回転速度をフィードバック制御する際の目標アイドル回転速度を補正することにより、アイドル回転速度の変動を抑制するべく、ISCバルブの開度を補正するように構成される。即ち、本発明において用いる目標開度設定手段507は、アイドル回転速度の目標値と検出値とを入力としてアイドル回転速度を目標値に保つために必要なアイドル制御時目標開度を演算するアイドル制御時目標開度演算手段512と、負荷変動が検出されたときにアイドル制御時目標開度演算手段512に補正後目標開度を演算させるために必要なアイドル回転速度の目標値の補正量を演算する目標回転速度補正量演算手段515とを備えて、負荷変動が検出されたときにアイドル制御時目標開度演算手段512に与える目標回転速度を前記目標回転速度補正量演算手段515により演算された補正量だけ補正することにより、アイドル制御時目標開度演算手段512に補正後目標開度を演算させるように構成される。
【0136】
(6)第6の発明
第6の発明は、第1の発明ないし第5の発明の何れかの発明の構成をとる場合に用いる電子制御ユニット5及び負荷変動検出手段506の構成に係るものである。本発明で用いる電子制御ユニットは、発電機2の負荷のうち、エンジンのアイドル運転時に出力端子3に接続されることがある少なくとも一つの負荷を被制御負荷として、該被制御負荷の投入及び遮断を制御する負荷投入・遮断制御手段508を更に備えている。この場合、負荷変動検出手段506は、負荷投入・遮断制御手段508から負荷が投入されることの情報及び負荷が遮断されることの情報を取得して負荷の変動を検出するように構成される。
【0137】
上記のように構成すると、アイドル回転速度が実際に変動を開始する前に、被制御負荷の接続によりアイドル回転速度が変動することを知ることができるため、アイドル運転時に発電機の電気負荷が変動したときにアイドル回転速度の変動を抑えるための措置(ISCバルブの開度の補正)を迅速に講じて、電気負荷の投入、遮断により生じるアイドル回転速度の変動を確実に抑制することができる。
【0138】
(7)第7の発明
第7の発明は、第6の発明の構成をとる場合に用いる目標開度設定手段507及び負荷投入・遮断制御手段508の構成に係るもので、本発明で用いる目標開度設定手段507は、負荷変動検出手段506が負荷投入・遮断制御手段508から負荷が投入されることの情報を取得して負荷変動を検出したときに、投入される負荷の大きさに応じて設定した補正量だけバルブ操作手段505に与える目標開度をアイドル制御時目標開度よりも増大させるように構成される。また負荷投入・遮断制御手段508は、負荷を投入することの情報を負荷変動検出手段506に与えた後、バルブ操作手段505に与える目標開度を増大させたことによりアイドル回転速度が設定された負荷投入許可回転速度まで上昇したことを確認した時に当該負荷の投入を行うように構成される。
【0139】
上記のように構成すると、アイドル運転時に発電機の負荷が投入されるとの情報が得られたときに、直ちにISCバルブの開度を増加させた後、アイドル回転速度が負荷接続許可速度まで上昇するのを待って電気負荷を接続することになるため、電気負荷が接続された際にアイドル回転速度が大きく低下するのを確実に防ぐことができ、電気負荷が接続された際にエンジンがストールするのを確実に防ぐことができる。
【0140】
(8)第8の発明
第8の発明は、第6の発明又は第7の発明の構成をとる場合に用いる目標開度設定手段507及び負荷投入・遮断制御手段508の構成に係るものである。本発明で用いる目標開度設定手段507は、負荷変動検出手段506が前記負荷投入・遮断制御手段508から負荷が遮断されることの情報を取得して負荷変動を検出したときに、遮断される負荷の大きさに応じて設定した補正量だけバルブ操作手段に与える目標開度をアイドル制御時目標開度よりも減少させるように構成される。また負荷投入・遮断制御手段508は、発電機の負荷を遮断することの情報を負荷変動検出手段506に与えた後、バルブ操作手段505に与える目標開度を減少させたことによりアイドル回転速度が設定された負荷遮断許可回転速度まで低下したことを確認した時に当該負荷の遮断を行うように構成される。
【0141】
上記のように構成すると、アイドル運転時に発電機の負荷が遮断されるとの情報が得られたときに、直ちにISCバルブの開度を減少させた後、アイドル回転速度が負荷接続許可速度まで低下するのを待って電気負荷を遮断することになるため、電気負荷が遮断する際にアイドル回転速度が大きく上昇するのを確実に防ぐことができる。
【0142】
(9)第9の発明
第9の発明は、発電機の負荷が接続される出力端子間にバッテリが接続されるエンジン駆動システムにおいて、第1の発明ないし第6の発明の構成をとる場合に用いる負荷変動検出変動手段506及び目標開度設定手段507がとり得る構成を示したものである。本発明においては、負荷変動検出手段506が、前記出力端子3間の電圧変化を検出したときに発電機の負荷変動を検出するように構成され、目標開度設定手段507は、前記負荷変動が検出されたときに前記出力端子間の電圧変化の度合いに応じて前記ISCバルブ7の目標開度の補正量を求めるように構成される。
【0143】
出力端子3間にバッテリ6が接続されている場合には、アイドル運転時に出力端子3間に電気負荷が接続されると、バッテリから電気負荷に電流が流れることにより先ずバッテリ電圧が低下し、次いでバッテリ電圧が充電開始電圧まで低下したときに発電機の電機子コイルからレギュレータを通してバッテリに充電電流が流れて、発電機からエンジンにかかる機械的負荷が増加し始める。このように、出力端子間にバッテリが接続されている場合には、電気負荷が接続された後、発電機からエンジンにかかる負荷が増加するまでの間に多かれ少なかれ遅れが生じるため、このバッテリ電圧の低下を適確に検出することにより、アイドル回転速度の低下が始まる前に電気的負荷の接続により発電機からエンジンにかかる負荷が増加してアイドル回転速度が低下することを早期に検出して、ISCバルブの開度を増大させることができ、アイドル回転速度の低下を抑制することができる。
【0144】
(10)第10の発明
第10の発明は、第1の発明ないし第6の発明の何れかの構成をとる場合に用いる負荷変動検出手段の好ましい構成を示したもので、本発明においては、目標開度設定手段507が、発電機2の負荷変動が検出されたときに発電機の負荷が接続される出力端子間の電圧変化の度合いに応じて前記ISCバルブの目標開度の補正量を求めるように構成される。
【0145】
(11)第11の発明
第11の発明は、第9の発明又は第10の発明の構成をとる場合にとり得る構成を示したもので、本発明においては、出力端子3間の電圧を設定されたサンプリング周期でサンプリングするサンプリング手段が設けられる。この場合目標開度設定手段507は、サンプリング手段が新たにサンプリングした電圧が前回サンプリングした電圧よりも設定値以上低下しているときに、バルブ操作手段に与える目標開度をその低下量に応じて設定した補正量だけアイドル制御時目標開度よりも増加させるように構成される。
【0146】
(12)第12の発明
第12の発明も第9の発明又は第10の発明の構成をとる場合にとり得る構成を示したもので、本発明においても、出力端子間の電圧を設定されたサンプリング周期でサンプリングするサンプリング手段が設けられ、目標開度設定手段507は、サンプリング手段が新たにサンプリングした電圧が前回サンプリングした電圧よりも設定値以上上昇しているときに、バルブ操作手段505に与える目標開度をその上昇量に応じて設定した補正量だけ前記アイドル制御時目標開度よりも減少させるように構成される。
【0147】
(13)第13の発明
第13の発明は、第1の発明ないし第5の発明の構成をとる場合に用いる負荷変動検出手段506がとり得る更に他の構成を示したもので、本発明においては、発電機の負荷の投入及び遮断を検出する負荷投入・遮断検出手段508が設けられ、負荷変動検出手段506は、負荷投入・遮断検出手段508から負荷が投入されることの情報を取得したとき及び負荷が遮断されることの情報を取得したときに発電機の負荷変動を検出するように構成される。発電機の負荷の投入及び遮断は、例えば、出力端子と各負荷との間に設ける負荷投入用スイッチがオン状態にあるかオフ状態にあるかを検出するセンサを各負荷投入用スイッチに対して設けることにより検出することができる。