(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
往復移動を繰り返すことに伴って被縫製物(30)に対し刺入又は離脱する針(20a、20b)と、前記被縫製物(30)を間にして前記針(20a、20b)に対向するルーパー(22a、22b)とを備え、前記針(20a、20b)と前記ルーパー(22a、22b)で前記被縫製物(30)に縫い目(32)を形成する縫製機構(12)を備える単環縫い式縫製装置(10)であって、
前記縫製機構(12)は、
前記ルーパー(22a、22b)を回転させると同時に、前記針(20a、20b)を往復移動させる動力源(24)と、
前記動力源(24)の動力を前記針(20a、20b)に伝達するクランク(50)と、
少なくとも一部がポストベッド(104)内に収容され、前記動力源(24)の動力を前記ルーパー(22a、22b)に伝達する動力伝達機構(64)と、
前記ポストベッド(104)内に設けられて前記動力伝達機構(64)を構成するとともに、互いに噛合した第1歯車(88)及び第2歯車(90)と、
をさらに備え、
前記ルーパー(22a、22b)が、前記第2歯車(90)と一体的に回転するとともに、前記ポストベッド(104)の、前記針(20a、20b)に臨む側の先端に設けられ、
前記針(20a、20b)及び前記ルーパー(22a、22b)を2個ずつ備え、前記2個のルーパー(22a、22b)同士の間に前記第2歯車(90)が介在することを特徴とする単環縫い式縫製装置(10)。
往復移動を繰り返すことに伴って被縫製物(30)に対し刺入又は離脱する針(20a、20b)と、前記被縫製物(30)を間にして前記針(20a、20b)に対向するルーパー(22a、22b)とを備え、前記針(20a、20b)と前記ルーパー(22a、22b)で前記被縫製物(30)に縫い目(32)を形成する縫製機構(12)を備える単環縫い式縫製装置(10)であって、
前記縫製機構(12)は、
前記ルーパー(22a、22b)を回転させると同時に、前記針(20a、20b)を往復移動させる動力源(24)と、
前記動力源(24)の動力を前記針(20a、20b)に伝達するクランク(50)と、
前記針(20a、20b)の延在方向に沿って延在し、且つ前記針(20a、20b)に対向する位置に、前記針(20a、20b)が進入する開口(105)が形成された中空のポストベッド(104)と、
少なくとも一部が前記ポストベッド(104)内に収容され、前記動力源(24)の動力を前記ルーパー(22a、22b)に伝達する動力伝達機構(64)と、
前記ポストベッド(104)内に設けられて前記動力伝達機構(64)を構成するとともに、前記ポストベッド(104)の延在方向に沿って並列配置され且つ互いに噛合した第1歯車(88)及び第2歯車(90)と、
前記第2歯車(90)と前記ルーパー(22a、22b)とが設けられた軸部材(74)と、
をさらに備え、
前記ルーパー(22a、22b)が、前記軸部材(74)及び前記第2歯車(90)と一体的に回転する([0029])とともに、前記ポストベッド(104)の、前記針(20a、20b)に臨む側の先端に設けられていることを特徴とする単環縫い式縫製装置(10)。
【発明の概要】
【0004】
インストルメントパネルには、メータバイザ装着部周辺等、隙間が小さい箇所が存在する。このようなインストルメントパネルの形状に合わせて成形された表皮の、前記隙間に対応する箇所に、特開平6−126679号公報に記載されるような幅広のポストベッドが進入することは困難である。
【0005】
本発明の主たる目的は、インテリア基材に貼付可能な状態に成形された表皮等に対して縫製を施すことが可能な単環縫い式縫製装置を提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、狭小スペースに対して縫製を施すことが可能な単環縫い式縫製装置を提供することにある。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、往復移動を繰り返すことに伴って被縫製物に対し刺入又は離脱する針と、前記被縫製物を間にして前記針に対向するルーパーとを備え、前記針と前記ルーパーで前記被縫製物に縫い目を形成する縫製機構を備える単環縫い式縫製装置であって、
前記縫製機構は、
前記ルーパーを回転させると同時に、前記針を往復移動させる動力源と、
前記動力源の動力を前記針に伝達するクランクと、
少なくとも一部がポストベッド内に収容され、前記動力源の動力を前記ルーパーに伝達する動力伝達機構と、
前記ポストベッド内に設けられて前記動力伝達機構を構成するとともに、互いに噛合した第1歯車及び第2歯車と、
をさらに備え、
前記ルーパーが、前記第2歯車と一体的に回転するとともに、前記ポストベッドの、前記針に臨む側の先端に設けられている単環縫い式縫製装置が提供される。
【0008】
このように、本発明では、動力源からの動力によって、針を往復移動させると同時にルーパーを回転させるようにしている。針に引っ掛けられた糸がルーパーに引っ張られることでループ部が形成されるので、動力源から動力を継続して針及びルーパーに伝達することによりループ部が連なる。その結果として、縫い目を自動的且つ連続的に形成することができる。
【0009】
また、ポストベッドの先端にルーパーを配設するようにしているので、ポストベッドを幅狭のものとして構成することができる。従って、ポストベッドを被縫製物の狭小スペースに進入させることが容易である。このことから諒解されるように、被縫製物が、例えば、インストルメントパネル等のインテリア基材の形状に合うように成形された表皮であっても、隙間等の狭小スペースが形成された部位の縫製を自動的且つ連続的に行うことが可能となる。
【0010】
また、本縫いではなく単環縫いであるため、下糸のボビン等が不要である。このことも相俟って、ポストベッドを一層の幅狭とすることができる。
【0011】
なお、クランクと動力源との間に動力伝達軸を介装することが好ましい。この場合、針と動力源との間が比較的大きく離間する。従って、狭小スペースにポストベッド(ルーパー)を進入させる際に動力源が被縫製物等に干渉することを回避することができる。
【0012】
針とルーパーの個数を2個としてもよい。この場合、美観に優れる平行縫い目を形成することができる。なお、この構成では、2個のルーパー同士の間に前記第2歯車を介装すればよい。これにより2個のルーパー同士の離間距離を小さくすることができるので、2個のルーパーと第2歯車を含む組立体を小型なものとして構成することができる。
【0013】
2個の針を、針溝同士が同一方向を向くように並列した場合、2個のルーパー中の1個の糸掛止部が内方を臨む。このため、2個のルーパー間に歯車等を介在させることが困難となる可能性がある。この構成では、ルーパーの外方に歯車等を配置することが想起されるが、この場合にはポストベッドが幅広となるので、狭小の隙間にポストベッドを挿入することが容易でなくなる。その結果として、縫製を行う被縫製物が制限されてしまう。
【0014】
このような不具合を回避するべく、2個の針の各々に針溝が設けられているときには、針溝の背面同士を対向させるとともに、回転する2個のルーパーのそれぞれの糸掛止部を針溝に通過させることが好ましい。この場合、2個のルーパーは、糸掛止部同士が外方を向いた鏡面対象の関係となる。針溝は針の側壁の一部を切り欠いたような形状をなし、且つ厚みが大きな糸掛止部が外方を向くので、ルーパー同士の間に歯車等を配設することが可能となる。また、針溝に各ルーパーの糸掛止部を通過させることにより、2個のルーパー同士を一層近接させることが可能となる。以上のような理由から、ポストベッドをさらに狭小化することができる。
【0015】
前記動力伝達機構は、例えば、タイミングベルトとギヤトレインとを含んで構成することができる。これにより、ルーパーと動力源との間の距離を比較的大きくすることが可能となる。すなわち、ポストベッドを狭小スペースに進入させるときに動力源が被縫製物に干渉することを回避することが一層容易となる。
【0016】
以上の構成において、縫製機構を搬送する搬送機構を設けることが好ましい。この場合、縫製の最中に被縫製物を針に対して相対的に移動させることが容易となる。従って、縫製を自動的且つ連続的に行うことが一層容易となる。また、搬送機構の作用下に縫製機構の姿勢を変化させることで、様々な形状の被縫製物に対して縫製を行うことが容易となる。
【0017】
本発明によれば、動力源の作用下に、針を往復移動させると同時にルーパーを回転させるようにしているので、動力源からの動力を針及びルーパーに継続して伝達することにより、縫い目を自動的且つ連続的に形成することができる。
【0018】
また、ポストベッドの先端にルーパーを配設するようにしているので、ポストベッドを幅狭のものとして構成することができる。従って、ポストベッドを狭小スペースに進入させることが容易である。このために該狭小スペースが形成された部位の縫製を行うことが可能であるので、被縫製物が、幅狭の隙間等が形成されたものであっても、自動的且つ連続的な縫製を行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る単環縫い式縫製装置につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下における「下」、「上」、「左」及び「右」は図面における下方、上方、左方及び右方にそれぞれ対応するが、これは理解を容易にするために便宜的に方向を示したものであり、単環縫い式縫製装置を実使用する際の方向を定義するものではない。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る単環縫い式縫製装置(以下、単に「縫製装置」とも表記する)10の要部の構成を説明する模式図である。この縫製装置10は、縫製機構12と、該縫製機構12を搬送する搬送機構としての搬送用ロボット14とを有する。縫製機構12は、搬送用ロボット14の先端アーム16に設けられる。なお、
図1では、縫製機構12を拡大誇張して示している。
【0022】
縫製機構12につき、主に
図1を参照して詳述する。この場合、縫製機構12は、2本のミシン針20a、20b(針)と、該ミシン針20a、20bに対向して配設される2個のルーパー22a、22bと、これらミシン針20a、20b及びルーパー22a、22bに動力を付与する動力源としての縫製用モータ24とを有する。ミシン針20a、20bには挿通孔26(
図2参照)がそれぞれ形成されており、各挿通孔26に縫製用糸28a、28bが挿通される。ミシン針20a、20bとルーパー22a、22bの間に挿入される被縫製物30には、縫製用糸28a、28bによって平行縫い目32(
図8参照)が形成される。
【0023】
縫製用モータ24の動力は、第1動力伝達機構40を介してミシン針20a、20bに伝達される。すなわち、縫製用モータ24の駆動軸42には、長尺な第1従動軸44(動力伝達軸)の右端が連結される。この第1従動軸44の左端には、クランクを構成する回転盤46が外嵌される。
【0024】
回転盤46には、中心から径方向に沿って外縁に至る途中に略円柱形状をなす第1柄48が突出形成される。第1柄48は、クランクアーム50を構成する第2柄52の中空内部に挿入される。ここで、クランクアーム50は、前記第2柄52の他、該第2柄52の側壁から突出した平板形状の連結アーム部54と、該連結アーム部54に連結されて第2柄52に対して平行に延在する第3柄56とを有する。第3柄56は、第2柄52に対して平行に延在する。
【0025】
一方、ミシン針20a、20bは、鉛直方向に沿って延在する往復移動軸58の下端に設けられた針ホルダ59に保持される。また、往復移動軸58の上端部には柄付リング60が外嵌されるとともに、該柄付リング60の第4柄62が、前記第3柄56の中空内部に挿入される。これにより、クランクアーム50(クランク)、往復移動軸58及び針ホルダ59を介してミシン針20a、20bが第1従動軸44に連結される。従って、縫製用モータ24が付勢されて第1従動軸44が従動回転すると、クランクアーム50の作用下に回転運動が直進運動に変換され、ミシン針20a、20bが鉛直方向に沿って往復移動する。
【0026】
その一方で、縫製用モータ24の動力は、第2動力伝達機構64を介してルーパー22a、22bに伝達される。第2動力伝達機構64は、第1タイミングベルト66の作用下に第1従動軸44の従動回転に追従して従動回転する第2従動軸68、第3従動軸70、第4従動軸72及び第5従動軸74と、第2従動軸68から第5従動軸74にわたって設けられたギヤトレイン76とを有する。このことから諒解されるように、第1従動軸44は、第1動力伝達機構40と第2動力伝達機構64の双方を構成する。
【0027】
第1従動軸44の、駆動軸42側端部(右端部)の近傍には第1プーリ80が外嵌され、長尺な第2従動軸68の右端には第2プーリ82が外嵌される。前記第1タイミングベルト66は、第1プーリ80と第2プーリ82に掛け渡されている。また、第2従動軸68の左端には第1従動歯車84が外嵌されている。第1従動歯車84は、比較的短尺な第3従動軸70の左端に外嵌された第2従動歯車86に噛合する。これら第1従動歯車84、第2従動歯車86と、後述する第3従動歯車88及び第4従動歯車90とでギヤトレイン76が構成されている。
【0028】
第3従動軸70において、第2従動歯車86よりも右方には第3プーリ92が配設される。また、第3従動軸70の上方に位置して長さが該第3従動軸70と略同程度である第4従動軸72には、左端近傍に第4プーリ94が外嵌される。第3プーリ92と第4プーリ94には、第1タイミングベルト66に比して短尺な第2タイミングベルト96が掛け渡される。
【0029】
第4従動軸72の長手方向略中腹には、第3従動歯車88(第1歯車)が配設される。さらに、第3従動歯車88には、第4従動歯車90(第2歯車)が噛合する。この第4従動歯車90は、ルーパー22a、22b同士の間に介在している。換言すれば、ルーパー22a、22bは、第4従動歯車90を挟む位置にある。ルーパー22a、第4従動歯車90及びルーパー22bは第5従動軸74に支持されており、従って、第5従動軸74が回転することに追従して一体的に回転する。
【0030】
以上の構成において、第1従動歯車84と第2従動歯車86の直径は等しい。また、第3プーリ92と第4プーリ94の直径も等しく、さらに、第3従動歯車88と第4従動歯車90の直径も等しい。そして、
図3に示すように、第1従動歯車84と第2従動歯車86の直径をD1、第3プーリ92と第4プーリ94の直径をD2、第3従動歯車88と第4従動歯車90の直径をD3としたとき、D1>D2>D3の関係が成り立つ。
【0031】
図1に示すように、第1動力伝達機構40はケーシング100に収容される。該ケーシング100に前記縫製用モータ24が位置決め固定されるとともに、前記第2従動軸68及び前記第3従動軸70が回転可能に軸支されている。また、ケーシング100の上端にはボビン102a、102bが回転可能に支持されており、縫製用糸28a、28bは、各ボビン102a、102bから引き出されてミシン針20a、20bの挿通孔26にそれぞれ挿通される(
図2参照)。
【0032】
ケーシング100の左端、すなわち、第1従動歯車84及び第2従動歯車86の上方には、縦長に立ち上がった幅狭且つ中空のポストベッド104が設けられる。このポストベッド104内には、第2動力伝達機構64、すなわち、第2タイミングベルト96の大部分、第4従動軸72、第4プーリ94、第3従動歯車88、第5従動軸74及び第4従動歯車90と、ルーパー22a、22bとが収容される。
図2〜
図4に示すように、ポストベッド104の上端部はやや絞られるように湾曲し、最上部は平坦な載置部となっている。この載置部には、ミシン針20a、20bがポストベッド104の中空内部に進入ないし離脱することが可能な開口105(
図4参照)が形成されている。
【0033】
第2タイミングベルト96は、第3プーリ92に巻回された部位がケーシング100に覆われる一方で、それ以外の部位がポストベッド104に覆われる。また、第4従動軸72はポストベッド104に回転可能に軸支され、第5従動軸74は、ポストベッド104の内壁と一体化した一対の軸受106a、106bに回転可能に軸支されている。また、第4従動歯車90は、
図2及び
図4に示すように一対の軸受106a、106b同士の間に配設されている。なお、ルーパー22a、22bは、第5従動軸74に支持されているのみであり、第4従動歯車90、ポストベッド104の内壁のいずれにも当接していない。
【0034】
ルーパー22a、22bは、該ルーパー22a、22bの幅方向外方に、回転方向に沿って突出するように設けられた尖鋭な爪部98(糸掛止部)を有する。ルーパー22a、22bは、爪部98を先頭として回転する。この回転の際、被縫製物30の一端面から刺入されたミシン針20a、20bの先端が他端面側から突出したとき、該爪部98が縫製用糸28a、28bに引っ掛かる。
【0035】
ポストベッド104の図示を省略した
図5に示すように、ミシン針20a、20bには、1個の針溝108がそれぞれ形成される。ミシン針20a、20bは、針溝108の背面同士が対向するように針ホルダ59に保持されている。すなわち、ミシン針20a、20bがポストベッド104内に進入したとき、針溝108は、ポストベッド104の幅方向外方を臨む。ルーパー22a、22bが回転するとき、爪部98は、針溝108を通る。
【0036】
以上の構成において、搬送用ロボット14及び縫製用モータ24は、図示しない制御回路の制御作用下に動作する。
【0037】
本実施の形態に係る縫製装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、縫製装置10の動作との関係で説明する。
【0038】
被縫製物30に対して縫製を行うに際しては、制御回路の制御作用下に搬送用ロボット14が適宜動作し、その先端アーム16が被縫製物30に接近して、該被縫製物30をポストベッド104(ルーパー22a、22b)とミシン針20a、20bとで挟まれる位置とする。すなわち、ルーパー22a、22bとミシン針20a、20bは、被縫製物30を介して対向する。このように、縫製機構12を搬送する搬送用ロボット14を設けたことにより、縫製機構12を被縫製物30の近傍に搬送することが容易となる。なお、縫製用糸28a、28bはミシン針20a、20bの挿通孔26に予め通されている。
【0039】
図6に示すように、被縫製物30に鋭角をなす屈曲部110が存在する場合があるが、このような屈曲部110の先端には、仮想線で示すような幅広のポストベッド112は進入することができない。これに対し、本実施の形態では、上記したように、2個のルーパー22a、22b間に第4従動歯車90を挟み、且つこれらを1本の第5従動軸74で支持するようにしているので、ルーパー22a、22b、第4従動歯車90及び第5従動軸74を含む組立体を小型なものとして得ることができる。従って、該組立体を先端に設けたポストベッド104を縦長で幅狭なものとして構成することができるので、該ポストベッド104が、鋭角な屈曲部110の奥深くまで進入することが可能となる。
【0040】
また、縫製用モータ24とミシン針20a、20bとの間に第1従動軸44やクランクアーム50等が介在しているため、縫製用モータ24がミシン針20a、20bから比較的大きく離間している。このため、ポストベッド104を屈曲部110等の狭小スペースに進入させる際に縫製用モータ24が被縫製物30に干渉することが回避される。
【0041】
すなわち、本実施の形態によれば、狭小スペースであってもポストベッド104及びルーパー22a、22bを進入させることが可能である。従って、被縫製物30に鋭角な屈曲部110や段差等が形成されている場合、すなわち、例えば、被縫製物30が自動車用インストルメントパネルのインテリア基材の形状に対応する形状の表皮である場合においても、縫製が可能となる。
【0042】
次に、前記制御回路は縫製用モータ24を付勢する。これにより駆動軸42及び第1従動軸44が回転することに追従し、回転盤46が回転するとともに、該回転盤46に設けられた第1柄48が旋回する。その結果としてクランクアーム50が一体的に旋回し、これに伴って柄付リング60の第4柄62がクランクアーム50の第3柄56に引っ張られる。このため、回転盤46が1回転することに同期して往復移動軸58が上下に1往復する。勿論、針ホルダ59に保持されたミシン針20a、20bも往復移動軸58と同時に上下に1往復する。
【0043】
また、駆動軸42及び第1従動軸44が回転すると同時に第1プーリ80が回転する。このため、第1プーリ80と第2プーリ82に掛け渡された第1タイミングベルト66が周回動作し、その結果、第2従動軸68及び第1従動歯車84が従動回転する。さらに、第1従動歯車84に噛合した第2従動歯車86、該第2従動歯車86が外嵌された第3従動軸70、及び第3プーリ92が従動回転するとともに、これに追従して、第3プーリ92と第4プーリ94に掛け渡された第2タイミングベルト96が周回動作する。
【0044】
これに伴い、第4プーリ94、第4従動軸72及び第3従動歯車88が従動回転する。第3従動歯車88が第4従動歯車90に噛合しているので、第4従動歯車90が従動回転する。従って、第5従動軸74及びルーパー22a、22bが一体的に回転するに至る。ルーパー22a、22b同士が同期して回転することは勿論である。ルーパー22a、22bは、ミシン針20a、20bが1往復する間に1回転する。
【0045】
ここで、第1従動歯車84及び第2従動歯車86の直径D1、第3プーリ92及び第4プーリ94の直径D2、第3従動歯車88及び第4従動歯車90の直径D3との間には、D1>D2>D3の関係が成り立っている。すなわち、ミシン針20a、20bに近接するにつれて回転体の直径が小さくなる。このことも、ポストベッド104の先端の狭小化に寄与する。
【0046】
また、本実施の形態では、ミシン針20a、20bが上記のように往復動作する際、回転するルーパー22a、22bの各爪部98が針溝108を通過するようにしている(
図5参照)。この分、ルーパー22a、22b同士の距離を小さくすることができるので、ポストベッド104の先端の一層の狭小化を図ることができる。
【0047】
ミシン針20a、20bは、後進端(上死点)から下方に向かう往路を進行する最中、被縫製物30の上端面側から刺入され、前進端(下死点)に到達したときには、その先端が被縫製物30の下端面から突出するとともに、前記開口105を介してポストベッド104の中空内部に進入する。これに伴い、縫製用糸28a、28bが被縫製物30を貫通する。その後、ミシン針20a、20bは、下死点から上死点に向かう復路を進行し、その最中にポストベッド104及び被縫製物30から離脱する。
【0048】
縫製用糸28a、28bが被縫製物30を貫通した際には、ルーパー22a、22bの爪部98が上死点に到達している。被縫製物30を貫通した縫製用糸28a、28bは該爪部98に引っ掛かり、ルーパー22a、22bが回転することに伴って
図1及び
図2の下方に引っ張られて、被縫製物30の下端面側で
図7に示すループ部120を形成する。ループ部120には、縫製用糸28a、28bの、次回のミシン針20a、20bの刺入時(ルーパー22a、22bの回転時)に引っ張られた部位が挿入される。搬送用ロボット14が適宜動作することで縫製機構12を被縫製物30に対して相対的に平行移動させながらミシン針20a、20bの往復動作及びルーパー22a、22bの回転を繰り返すことにより、
図7に示すようにループ部120同士が連なって縫製がなされる。なお、
図7では縫製用糸28aのみを例示しているが、残余の縫製用糸28bにおいても同様にループ部120同士が連なることは勿論である。
【0049】
一方、被縫製物30の上端面側では、
図8、及び
図9に示すように直線状に連なる平行縫い目32が形成される。本実施の形態では、2本のミシン針20a、20bを同期して往復動作させるようにしているので、美観に優れる平行縫い目32を得ることができる。なお、平行縫い目32を形成する縫製用糸28a、28bは、成形ライン130を間に挟むようにして離間する。
【0050】
このように、本実施の形態によれば、縫製用モータ24の作用下にミシン針20a、20bを往復動作させると同時にルーパー22a、22bを回転させるようにしている。しかも、被縫製物30が縫製機構12に対して相対的に移動するので、平行縫い目32を自動的に且つ連続的に形成することが可能となる。
【0051】
前記制御回路により、所定長さの平行縫い目32が形成されたことが検知されると、該制御回路の制御作用下に縫製用モータ24が滅勢される。従って、ミシン針20a、20bの往復動作、及びルーパー22a、22bの回転が停止する。縫製用糸28a、28bの、被縫製物30とミシン針20a、20bとの間の部位が切断された後、搬送用ロボット14が適宜動作し、縫製機構12が被縫製物30から離間する。この際にも、搬送用ロボット14の作用下に縫製機構12を被縫製物30の近傍から搬送するので、縫製機構12の搬送が容易である。
【0052】
被縫製物30と形状が相違する被縫製物に縫製を行うときには、該被縫製物の形状に対応して動作するように搬送用ロボット14のティーチングを行えばよい。このように、搬送用ロボット14を設けたことにより、様々な形状の被縫製物に対して縫製を行うことが可能となる。
【0053】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0054】
例えば、ミシン針20a、20b及びルーパー22a、22bを1個としてもよい。
【0055】
また、被縫製物30は自動車用インストルメントパネルのインテリア基材と表皮に限定されるものでなく、ミシン針20a、20bが刺入可能なものであればよい。