【実施例1】
【0011】
図1は、車内の自車周辺情報管理装置01とその内部機能および情報取得装置、情報提供先の構成を示している。自車周辺情報管理装置01は、情報取得装置である自車挙動認識センサ02から取得した自車の挙動を表す情報、外界認識センサ03から取得した外界の物体/障害物および道路標識等の情報、地
図04から取得した道路形状および道路標識等の情報、GPS05から取得した自車位置情報を入力通信網12から受け取り、統括的に管理する。自車周辺情報管理装置01で管理する情報は、情報提供先である自動運転制御ECU06およびアクチュエーションECU07、表示ECU08等が目的とする処理をするための必要最低限の情報にデータを絞り込み、出力通信網13を介して伝送する。
【0012】
自車挙動認識センサ02は、例えば、車両に搭載されるジャイロセンサや車輪速度センサ、舵角センサ、加速度センサ等を含み、それぞれ、自車の挙動を表すヨーレートや車輪速度、舵角、加速度等を取得することが可能である。
【0013】
外界認識センサ03は、カメラやレーダ等のセンサを含み、自車周辺の物体や障害物、道路標識等の相対位置およびその状態を取得することが可能である。
【0014】
図2に示されるように、自車F01は後方レーダF02、全周囲カメラF03、前方カメラF04、前方レーダF05を搭載しており、全周囲の情報を検知することが可能な検知システムの構成になっている。
【0015】
外界認識センサ03を多く搭載すればするほど取得できる情報量が多くなり、ネットワークに送信するデータの削減効果が高くなるが、全周囲に外界認識センサを搭載しない構成であってもよい。例えば、前方カメラF04単体の構成においても、認識する物体が多くなるほど取得できるデータ量は増加するため、前方のみの走行可能領域を判断し、ネットワークに送信するデータ量を削減できる。また、外界認識センサ03の他にも車車間通信および路車間通信も構成に含めてもよい。車車間通信では、他車の挙動を表すヨーレート、舵角、速度、加速度、ブレーキランプ状態、ウィンカ状態等を無線で取得できる。また、路車間通信では、道路上に設置された路側器により、道路標識や信号機、近くを通過した他車等の位置およびその状態等を無線で取得できる。
【0016】
地
図04は、自車周辺の数キロメートルの範囲にある道路情報を配信する。配信される道路情報の例として、速度制限情報、道路曲率や勾配、道路幅、車線数等の道路情報、分岐の位置、合流の位置、料金所の位置等がある。
【0017】
GPS05は、上空にある衛星からの信号を受け取るGPS受信機を表し、自車の位置を取得できる。他にも付属情報として、自車の向き、速度、高度等を取得できる。
【0018】
入力通信網12および出力通信網13は、車載システムで一般的に使用されているネットワークであるCAN(Controller Area Network)やCPU間のシリアル通信や今後車載に普及が予想されるEthernet(登録商標)、無線通信等により、情報をやり取りする。
【0019】
自動運転制御ECU06は、自動で車両のステアリングやブレーキ、アクセルを操作し、目的の位置に到達する機能を持つ。自動運転制御はドライバが全く操作しない全自動であっても、一部の操作を自動制御する半自動であってもよい。
【0020】
アクチュエーションECU07は、トラクションコントロールやアンチロックブレーキシステムのように、車両の走行安定性を維持する制御をする。
【0021】
表示ECU08は、ナビゲーションシステムやメータパネル等に、自車周辺の情報を表示するためのECUである。本発明では、自車周辺情報管理装置01の情報の利用者として、自動運転制御ECU06とアクチュエーションECU07、表示ECU08の3つのECUを例として挙げたが、利用目的や車両の構成に応じて変わってもよい。
【0022】
自車周辺情報管理装置01は、データ統合部(あるいは、データ取得部と称す。以下同様とする。)09およびデータ選択部14から構成される。また、データ選択部14は、フィルタパラメータ判定部10および出力データフィルタ部11から構成される。フィルタパラメータ判定部10および出力データ部11、データ統合部09は、入力通信網12を経由して、自車挙動認識センサ02および外界認識センサ03および地
図04およびGPS05等から得られる自車挙動情報および外界認識情報、地図情報、自車位置情報をそれぞれ取得する。データ統合部09では、様々な情報取得装置からの情報を取得しているため、情報取得装置毎の特性を鑑みて、自車情報および自車周辺情報に統合する。データ統合部09は、フィルタパラメータ判定部10および出力データフィルタ部11を実施するための前処理となっており、複数の非同期で動作する情報取得装置からのデータの整合性をとり、出力データフィルタ部でデータ量を削減する処理をするため、前提となる構成要素である。フィルタパラメータ判定部10では、統合された自車周辺情報をどのようにフィルタリングして、送信するデータをどのように削減するかのパラメータを算出する。出力データフィルタ部11では、フィルタパラメータ判定部10で算出されたフィルタパラメータを元に、自車周辺情報にフィルタを掛け、送信するデータを削減したフィルタ後自車周辺情報を出力通信網13に送信する。
【0023】
図3にデータ統合部09の処理ブロックの一例を示す。
【0024】
データ統合部09は、座標変換処理部20、同期処理部21、物体グルーピング処理部22、物体トラッキング処理部23および物体車線位置判定部24から構成される。データ統合部09への入力としては、自車挙動認識センサ02および外界認識センサ03、地
図04、GPS05からの情報を扱う。座標変換処理部20と同期処理部21は、複数の情報取得装置から入力された各々の情報の整合性がとれた自車情報および自車周辺情報とするために必要である。また、物体グルーピング処理部22および物体トラッキング処理部23は、複数の情報取得装置から得られる別々の物体の情報を現実世界と遜色のない一貫性の取れた情報とするために必要である。物体車線位置判定部24は、物体と地図からの車線情報から整合性の取れた物体位置を算出するために必要である。
【0025】
データ統合部09が対象とする入力は、情報取得装置毎に扱う座標系が異なることが考えられる。例えば、自車挙動認識センサ02の1つとして、車輪速センサを挙げると、扱う座標系が各四輪の位置を中心とした直交座標系であることが予想され、外界認識センサ03の1つとして、前方衝突回避用のミリ波レーダを挙げると、扱う座標系が車頭位置を中心とし、車両進行方向を向いた直交座標系である場合が予想される。また、地
図04では、扱う座標系として、測地座標系が使われ、地球上の位置を緯度、経度で表す場合が予想される。座標変換処理20では、これらの座標系の違いを吸収するために、代表とする1つの座標系に変換し、変換された情報を後段の処理で扱うようにする。例えば、車両中心を基準とした直交座標系を代表とする座標系としてもよい。代表とする1つの座標系に変換することにより、後段の処理において、外界認識センサ03と地
図04の情報を連携しようとした際に、その都度、情報取得装置の特徴に応じて座標変換処理をしなくても済む。
【0026】
次に同期処理部21では、各情報取得装置から取得したデータの取得時刻のずれを補正し、同期をとる。車載システムにおいては、各情報取得装置は、非同期で動作しており、データの送信周期等に違いがある。そのため、例えば、各情報取得装置から取得した物体の位置情報等をそのまま利用すると、各情報取得装置で検知した物体間に相対的な位置のずれが発生し、自車周辺情報管理装置が持つ情報と現実世界の物体の相対的な位置関係が異なる状態となる。それにより、複数車両の位置関係を判断して制御する自動運転においては、衝突する可能性が高まり、危険である。
【0027】
物体グルーピング処理部22では、各情報取得装置で検知した物体が現実世界で同じ物体である場合は、同一の物体として判断する。車両に搭載する外界認識センサ03が増加すると、別々の外界認識センサ03が同じ領域を検知する可能性がある。例えば、
図2の外界認識の範囲の例では、後方レーダF02、全周囲カメラF03、前方カメラF04、前方レーダF05がそれぞれ重複する領域F06にある物体を検知する。このような構成の場合は、現実世界は同一の物体であるのに、自車周辺情報管理装置が別々の物体として自動運転制御ECU06に送信してしまうと、本来は1つの物体に対して動作を予測し、制御すればよいところ、複数の物体の動作を予測しなければならず、無駄な処理が発生する。そのため、別々の外界認識センサで検知した物体が同一物体であるならば、同一物体としてグルーピングし、同一物体として制御に送信する必要がある。
【0028】
物体トラッキング処理部23は、ある物体が各情報取得装置の認識範囲の境界を通過しても同じ物体として認識し続けるための処理である。
図2の外界認識の範囲の例で説明すると、自車F01の右後方から他車両が追い抜きするシチュエーションにおいて、まず後方レーダF02の右後方で他車両を検知し、自車の右側方に他車が移動するに伴い、後方レーダF02の右後方から全周囲カメラF03右側方での認識に切り換わっていく。この時、最初に検知している後方レーダF02から見ると他車が後方レーダF02の右後方の認識範囲から外れると後方レーダF02の他車の情報は途切れる。その代わり全周囲カメラF03右側方に他車が移動してくるため全周囲カメラF03は後方レーダF02で途切れた他車の情報が出力される。このように1つ1つの情報取得装置から見ると途切れてしまう物体の情報でも物体トラッキング処理23において同一の物体として扱う。この処理がないと、現実世界では同一の物体であるが、自車周辺情報管理装置が全周囲カメラF03に切り換わり、別物体として認識してしまうと、データ上は、これまで意識していた物体がいなくなり、あたかも新たに物体が現れたように見えてしまう。そのため、制御側では、同一の物体に対して制御を継続できず、物体の挙動予測の精度が下がり、制御の信頼性が低下する恐れがある。また、本実施例においても、物体/障害物のデータの継続性が失われると、物体/障害物との位置関係から算出する走行可能領域の判定制度が低下し、データ削減効果の低減につながる可能性がある。そのため、別々の外界認識センサで検知していても、トラッキング処理において同一物体とし、制御に送信してもよい。
【0029】
物体車線位置判定部24では、各情報取得装置で検知した物体/障害物が、道路上のどの車線にいるかを判定する。本実施例では、以降の記述で車線毎に走行可能領域を算出する処理を想定しているため、各情報取得装置で検知した物体/障害物が、どの車線に存在するかを算出する必要がある。
【0030】
以上の処理を実施し、最終的に自車情報および自車周辺情報を出力する。ここでの自車情報とは、自車位置情報および自車速度、ヨーレート、舵角、加速度、ウィンカ情報、ブレーキランプ情報等を含む。また、自車周辺情報とは、自車の周辺に存在する車両、歩行者、二輪車両等の相対位置、相対速度、走行車線位置等を含む。また、自車の周辺に存在する道路情報、標識情報、信号情報等を含む。
【0031】
図4にフィルタパラメータ判定部10の処理ブロックの一例を示す。
【0032】
フィルタパラメータ判定部10は、走行可能領域判定部30および走行可能領域隣接周辺情報判定部31、走行可能領域隣接周辺情報以外の周辺情報判定部32、フィルタパラメータ統合部33から構成される。まず、データ統合部09からの自車周辺情報を入力とし、走行可能領域判定部30で走行可能領域を算出する。走行可能領域判定部30は、自車周辺情報を元に自車が走行可能な領域を算出する機能であり、自車がその領域に移動可能であるかどうかを判定する。本実施例では、移動可能かどうかの判断は、基本的には、自車が移動する領域に他物体/障害物等の自車の進行を阻む事象が存在しない場合に移動可能と判断する。走行可能領域判定部30から出力された走行可能領域とデータ統合部09からの自車周辺情報を用いて、走行可能領域隣接周辺情報判定部31で走行可能領域隣接情報リストを算出する。走行可能領域隣接情報リストとは、走行可能領域に直ぐに進入できる物体/障害物等をリスト化した情報である。すなわち、直ぐに自車に接近可能な情報を表しており、安全面から情報としての優先度が高い。走行可能領域隣接周辺情報判定部31から出力された走行可能領域隣接情報リストとデータ統合部09からの自車周辺情報を用いて、走行可能領域隣接周辺情報以外の周辺情報判定部32でフィルタ対象情報リストを算出する。フィルタ対象情報リストとは、走行可能領域隣接情報リストには、登録されていないが、外界認識センサや地図で認識できている物体/障害物、標識等をリスト化した情報である。すなわち、直ぐに自車に接近不可能な情報を表しており、安全面から情報としての優先度は低い。走行可能領域隣接周辺情報以外の周辺情報判定部32から出力されたフィルタ対象情報リストと周辺情報毎フィルタ周期リスト34と周辺情報毎フィルタ対象データリスト35を用いて、フィルタパラメータ統合部で、パラメータを統合し、出力データフィルタ部へ出力する。算出されたフィルタパラメータは、出力データフィルタ部11でのフィルタ処理に使用される。周辺情報毎フィルタ周期リスト34および周辺情報毎フィルタ対象データリスト35は予めシステム設計者によって静的に決めてもよいし、動的にパラメータとして外部から受信して設定してもよい。例えば、外部から受信する場合は、
図1の自動運転制御ECU06およびアクチュエーションECU07および表示ECU08から別々にパラメータを集めるという方法等が考えられる。
【0033】
図5に走行可能領域判定部30の処理ブロックの一例を示す。
【0034】
走行可能領域判定部30は、探索対象走行領域算出部40と走行可能領域算出部41から構成される。探索対象走行領域算出部40は、予め設定される前方最大検知距離42と後方最大検知距離43と対象車線数44を入力とし、探索対象走行領域を走行可能領域算出部41に出力する。探索対象走行領域は、以降の走行可能領域を算出する上で周辺物体/障害物の探索対象となる領域となり、ここでは一例として、外界認識センサが検知する領域を探索対象とする。そのため、入力として前方最大検知距離42と後方最大検知距離43を用いる。対象車線数44は、自車が直近に移動できる車線数はそれほど多くないため、固定値で設定している。走行可能領域算出部41は、探索対象走行領域算出部40で算出した探索対象走行領域と自車周辺車線情報と自車から周辺物体/障害物までの距離と周辺物体/障害物の車線位置を入力とし、走行可能領域を出力する。
図7に探索対象走行領域を説明する図を示す。
図7は、自車F10と車線F11と外界認識センサで検知できた自車周辺の物体/障害物F12(自車F10以外の車両)と外界認識センサ検知領域F13と探索対象走行領域F14で構成される。外界認識センサ検知領域F13で検知できる前方最大検知距離F15および後方最大検知距離F16、予め設定された対象車線数F17を用いて探索対象走行領域F14を算出する。ここでは一例として、対象車線数F17を自車が直近に移動できる左車線、右車線と自車の走行車線の3車線で表現している。自車F10を中心とし、前方は前方最大検知距離F15までの対象車線数F17の3車線を探索対象とし、後方は、後方最大検知距離F16までの対象車線数F17の3車線を探索対象とする。自車が一番右の車線にいる場合は、自車走行車線と自車の左車線の2車線を検索対象とすればよい。
【0035】
走行可能領域算出部41のフローチャートの一例を
図6に示す。
【0036】
まず、
図5に示した探索対象走行領域算出部40により、探索対象走行領域を算出S01する。
次に、探索対象走行領域内の車線から1車線を選択するS02。
図7の例では、最大で3車線があるため、このうち、1車線を選択し、以降の処理S03〜S15を実施する。S03〜S15の処理を3車線全て処理するまで繰り返す。S03〜S15までの処理は、2つの処理から構成され、S05〜S09までの処理は自車前方の走行可能領域を算出する処理であり、S10〜14までは、自車後方の走行可能領域を算出する処理である。
【0037】
次に、選択した車線が自車の隣車線(左車線あるいは右車線)の場合、自車が隣車線に移動可能かどうかS03を判定する。自車が隣車線に移動可能かの判定は、
図8の隣車線移動可否判定を例に説明する。
図8(a)の自車F20が右車線に移動可能かは、移動可否領域F25に他車F21が少しでも属するかどうかを判定し、少しでも属する場合は移動不可とする。
図8(a)の場合は、他車F21が移動可否領域F25に属するため、移動不可とする。
図8(b)の場合は、他車F22が移動可否領域F25に属さないため、移動可とする。移動可否領域F25の縦幅は、
図8(a)で示す自車F20の自車全長F23に対して、前方/後方のマージン距離F24を追加した領域で表している。移動可否領域F25の横幅は、車線幅を用いる。この隣接移動可否判定は、実際には、自車全長F23とぴったりのサイズの領域が空いていても移動することはできず、ある程度の車間を空ける必要があるため、前方と後方のマージン距離F24を定義している。自車が隣車線に移動不可であれば、選択した車線には走行可能領域はなしと判断するS04。
図9の走行可能領域シーン1を例にとると、自車の右車線に他車両が存在するため、S04により、探索対象走行領域F14の車線F30は走行可能領域から除外する。このように、自車が直近に移動不可な車線に対して、走行可能領域から除外する理由は、自車が直近に移動できない車線を走行可能領域に含めると移動できないはずの領域が走行可能領域となってしまい、送信データ量の削減効果が低減してしまうためである。
【0038】
次に自車が隣車線に移動可能な場合は、選択した車線内の前方に他物体/障害物が存在するかS05を判定する。存在しない場合は、選択した車線の隣車線に存在する他物体/障害物との距離までを走行可能領域とするS06。
図11の走行可能領域シーン2を例にすると、自車の右車線前方には、車両が存在しないため、単純に考えると走行可能な領域が右車線の前方最大検知距離までとなる。但し、これでは、直近に移動できないはずの領域が走行可能領域となってしまい、送信データ量の削減効果が低減してしまうため、本実施例では、選択した右車線前方に他物体/障害物が存在しない場合は、左隣車線に存在する他物体/障害物F50(自車前方の他物体/障害物)から自車までの距離を用いて、F51の走行可能領域を設定する。前方に他物体/障害物が存在する場合は、選択した車線内の前方で最も近い物体/障害物までの距離を取得するS07。
【0039】
次にS07で取得した距離と自車に最も近い隣車線に存在する他物体/障害物の距離の差が一定値以下かS08を判定する。一定値より大きい場合は、S06により選択した車線の隣車線に存在する他物体/障害物との距離までを走行可能領域とする。これは、
図13の走行可能領域隣接情報シーン3の例に示すように自車の右車線の前方に存在する他物体/障害物F70と自車前方に存在する他物体/障害物F71との距離の差F73が大きい場合、自車の右車線の走行可能領域が実際には直近に移動できない走行可能領域となるため、この場合においては、自車前方の他物体/障害物F71までの距離を使い、走行可能領域F72を設定する。距離F73が一定値以下の場合は、自車から前方の他物体/障害物の距離までを走行可能領域とするS09。
図9の走行可能領域シーン1の自車の左車線を例にとると、自車前方の物体/障害物と左車線前方の物体/障害物の距離F34が近いため、左車線前方で最も近い物体/障害物までを左車線走行可能領域F31と設定する。また、自車の走行車線を例にとると、前方で最も近い物体/障害物までを走行車線走行可能領域F32と設定する。
【0040】
上記のS05〜S09までは、自車の前方に対する処理であるのに対し、S10〜S14までの処理は、自車の後方に対する処理となっており、選択した車線内の自車後方に物体/障害物が存在するかS10を判定する。存在しない場合は、選択した車線の隣車線に存在する物体/障害物の距離までを走行可能領域とするS11。存在する場合は、選択した車線内の自車後方で最も近い他物体/障害物までの距離を取得するS12。次に、取得した距離と自車に最も近い隣車線に存在する他物体/障害物の距離の差が一定値以下かS13を判定する。一定値より大きい場合は、S11により走行可能領域を設定する。一定値以下であれば、自車から後方の他物体/障害物の距離までを走行可能領域とするS14。
【0041】
次に、上記処理S02〜S14が全ての車線の走行可能領域を算出したかS15を判定し、算出していなければ、S02から処理を繰り返す。算出していれば、走行可能領域を算出する処理は終了とする。
【0042】
図6に示す走行可能領域算出フローチャートを処理した結果、
図9の走行可能領域シーン1を例にとると走行可能領域F33が算出される。また、
図11の走行可能領域シーン2を例にとると、走行可能領域F52が算出される。
【0043】
図4の走行可能領域隣接周辺情報判定部31について説明する。
【0044】
図4の走行可能領域判定部30に
図9の走行可能領域シーン1を適用すると走行可能領域F33が得られる。走行可能領域隣接周辺情報とは、
図9の走行可能領域F33に隣接している領域のことを表しており、
図10の走行可能領域隣接情報シーン1の領域F40を指す。この走行可能領域隣接領域の最低縦幅F43は、他物体/障害物F41の全長を用いてもよいし、他物体/障害物F41の車速度に応じて変更してもよい。また、最低横幅F44は、他物体/障害物F41の全幅を用いてもよいし、地図やカメラから得た車線幅を用いてもよい。走行可能領域隣接領域F40の上に位置する他物体/障害物F41のことを走行可能領域隣接周辺情報と定義する。これらの複数の他物体/障害物をリスト化した走行可能領域隣接情報リストを走行可能領域隣接周辺情報判定部31の出力とする。
図11の走行可能領域シーン2に示す走行可能領域F52に対し、
図12の走行可能領域隣接情報シーン2の走行可能領域隣接の領域は、F60となる。
図10の例と同様に、この領域F60の上に位置する他物体/障害物F61を走行可能領域隣接周辺情報とし、これらの複数の他物体/障害物をリスト化して、走行可能領域隣接周辺情報以外の周辺情報判定部32に出力する。上記のように、走行可能領域隣接周辺情報に割り当てられる他物体/障害物は、自車の走行可能領域に隣接しているため直近に自車の走行可能領域に移動してくる可能性が高く、提供する情報の優先度が高く、物体/障害物の位置および挙動等の情報を細かく利用者に提供することが求められる。
【0045】
図4の走行可能領域隣接周辺情報以外の周辺情報判定部32について説明する。
【0046】
走行可能領域隣接周辺情報以外の周辺情報判定部32では、
図10に示した走行可能領域隣接情報リストに含まれる他物体/障害物F41以外の外界認識センサで検知した他物体/障害物F42をフィルタ対象情報リストとして、フィルタパラメータ統合部33に出力する。また、
図12の場合も同様に、走行可能領域隣接情報リストに含まれる他物体/障害物F61以外の外界認識センサで検知した他物体/障害物F62をフィルタ対象情報リストとして、フィルタパラメータ統合部33に出力する。ここで選択されたフィルタ対象情報リストは、走行可能領域に隣接している優先度の高い物体/障害物とは異なり、直近に自車の走行可能領域には、移動してこない物体/障害物を指しており、優先度が低い。そのため、フィルタ対象情報リストに登録されている物体/障害物に対しては、利用者に提供するデータを削減しても大きな影響はないことが予想できる。
【0047】
図4のフィルタパラメータ統合部33のフィルタ対象情報リストに対して実行するフィルタのパラメータを算出する方法について説明する。
【0048】
フィルタパラメータ統合部33では、走行可能領域隣接周辺情報以外の周辺情報判定部からのフィルタ対象情報リストを用いて、周辺情報毎フィルタ周期リスト34と周辺情報毎フィルタ対象データリスト35からフィルタするパラメータを選択する処理をする。周辺情報毎フィルタ周期リスト34はデータの時間的間引きにより、データ量を削減するためのリストである。また、周辺情報毎フィルタ対象データリスト35は、データの量的間引きにより、データ量を削減するためのリストである。
【0049】
まずは、周辺情報毎フィルタ周期リストの一例を
図14で説明する。
図14の周辺情報毎フィルタ周期リストでは、自車周辺情報対象種別に周辺立体物および周辺路面情報を持つ。周辺立体物には、物体、信号機、標識、路端等が含まれる。さらに、物体には、物体IDや相対位置、相対速度、幅、高さ等の情報が含まれる。また、信号機には、信号機IDや種別、相対位置、状態等の情報が含まれる。他にも標識および路端も細かい情報に分かれる。周辺路面情報は、レーンマーカ、その他ペイント等の情報が含まれる。さらに、レーンマーカには、レーンIDやレーン種別、相対位置、ヨー角等の情報が含まれる。また、その他ペイントには、ペイントIDや相対位置、種別等が含まれる。これらの内容ごとに送信する周期を本リストで定義する。ここでは、デフォルトで送信する周期とフィルタする際の周期を定義している。基本的には、デフォルトで送信する周期はフィルタする際の周期より早い値を設定しており、走行可能領域隣接周辺情報リストにある情報に対しては、デフォルトの送信周期を割り当てる。それに対し、送信データを削減したい対象であるフィルタ対象情報リストには、フィルタする際の周期を割り当て、一定期間内に送信するデータ量を抑える。例えば、周辺立体物の物体の相対位置を例にとると、
図10の物体/障害物F41に対しては、デフォルト周期である60msを適用する。物体/障害物F42に対しては、フィルタ周期である100msを適用する。これにより、優先度の低い物体/障害物F42に関しては、優先度の高い物体/障害物F41と比べて一定期間内のデータ量を抑えて利用者に情報を提供できる。
【0050】
次に周辺情報毎フィルタ対象データリストの一例を
図15で説明する。
図15の周辺情報毎フィルタ対象データリストにおいても、
図14の周辺情報毎フィルタ周期リストと同様の自車周辺情報対象種別を持つ。ここでは、デフォルトで送信する内容とフィルタ後の送信する内容を定義する。基本的には、デフォルトで送信する内容は、フィルタ後の送信する内容より多くの内容を設定しており、走行可能領域隣接周辺情報リストにある情報に対しては、デフォルトの送信内容を割り当てる。それに対し、送信データを削減したい対象であるフィルタ対象情報リストには、フィルタ後の送信内容を割り当て、送信する内容を間引いて、データ量を抑える。例えば、周辺立体物の物体の幅を例にとると、
図10の物体/障害物F41に対しては、デフォルト送信内容に従い、幅のデータを送信する。物体/障害物F42に対しては、フィルタ後送信内容に従い、幅のデータは送信しない。これにより、優先度の低い物体/障害物F42に関しては、優先度の高い物体/障害物F41と比べてデータ量を抑えて利用者に情報を提供できる。
図15の周辺情報毎フィルタ対象データリストの例では、内容自体を間引いて送信データ量を削減する方法を示したが、データを圧縮して送信する方法を使ってもよい。
【0051】
また、
図10の走行可能領域隣接情報シーン1に示すように、自車周辺の走行可能領域である領域F45と、走行可能領域に隣接する領域である領域F40と、それ以外の領域ごとに優先度を設け、それぞれの領域ごとに決められた優先度でフィルタパラメータを算出してもよい。例えば、自車周辺の走行可能領域である領域F45を優先度高とし、走行可能領域に隣接する領域である領域F40を優先度中とし、それ以外の領域を優先度低と設定する。この場合、それぞれに属する他物体/障害物等に対するフィルタパラメータを優先度に応じて変更してもよい。
図14の周辺情報毎フィルタ周期リストを例にとると、
図14ではデフォルト周期、フィルタ周期の2つを定義しているが、優先度を使う場合は、優先度高フィルタ周期と優先度中フィルタ周期と優先度低フィルタ周期を別々に定義し、それぞれ優先度の高いものから送信周期が速い値を設定する。
図15の周辺情報毎フィルタ対象データリストに対しても同様に優先度毎に別々に削減する情報を定義する。
【0052】
次にフィルタパラメータ統合部33から出力するフィルタパラメータを算出するフィルタパラメータ算出フローチャートの一例を
図16で説明する。まず、フィルタ対象情報リストを取得するS21。次に、取得したフィルタ対象情報リストから対象情報を1つ選択するS22。選択した情報の対象種別が
図14の周辺情報毎フィルタ周期リストに登録されているかS23を確認する。
図14の例では、対象種別として、周辺立体物および周辺路面情報を挙げている。登録されていない場合は、選択した対象情報のフィルタパラメータを更新する処理はスキップする。登録されている場合は、フィルタパラメータに選択した対象の各内容に応じたフィルタ周期を保存するS24。ここでの各内容とは、
図14の物体の物体IDや相対位置、レーンマーカのレーンIDやレーン種別を指す。次に、選択した対象種別が
図15の周辺情報毎フィルタ対象データリストに登録されているかS25を確認する。登録されていない場合は、選択した対象情報のフィルタパラメータを更新する処理はスキップする。登録されている場合は、フィルタパラメータに選択した対象の各内容に応じたフィルタ後送信内容を保存するS26。次に、全ての対象情報を選択したかS27を判断し、選択されていなければ、S22〜S26を繰り返し実行する。選択されていれば、フィルタパラメータを算出する処理は完了とする。
【0053】
図4に示したように、
図16のフローチャートで算出したフィルタパラメータは、出力データフィルタ部11に出力される。出力データフィルタ部11では、データ統合部09から出力された自車周辺情報毎にフィルタパラメータに登録されている対象かどうかを判定し、登録されていれば、フィルタパラメータを用いてデータを削減し、それ以外の対象については、デフォルトの設定でデータを送信する。
【0054】
図17の渋滞走行時と通常走行時の比較を用いて、本発明の効果を示す。
図17の(a)は渋滞走行時を表し、(b)は通常走行時を表す。
図17の(b)の通常走行時は、渋滞走行時と比べて、自車前方に存在する車両と車間距離をある程度空けて走行するため、通常走行時の走行可能領域F83は、
図6に示したフローチャートを用いると、車間が空くほど範囲は広がる。そのため、通常走行時の走行可能領域F83の領域が外界認識センサの認識領域F82の大部分を占めるため、自車前方のフィルタ対象の領域F84が狭まり、フィルタ対象の物体/障害物が限定される。但し、そもそもの物体/障害物間の車間は広いため、提供するデータ量は、膨大ではない。それに対して、
図17の(a)の渋滞走行時は、自車前方の複数車両が低速で狭い車間距離で走行しており、走行可能領域F80の範囲は狭くなる。通常走行時と比べ、走行可能領域F80の領域は、外界認識センサの認識領域F82の一部分に過ぎないため、自車前方のフィルタ対象の領域F81が通常走行時よりも広がる。それにより、外界認識センサで検知される車両が増加する可能性があり、従来の処理では、提供する情報量が増加する。本発明では、フィルタ対象の領域F81に含まれる物体/障害物はフィルタ処理し、提供するデータ量を削減できる。従って、渋滞走行時のように、外界認識センサで多くの車両を検知できる状況においても、情報提供によるネットワーク負荷を平滑化できる。また、情報を取得する側の処理負荷も低減できる。