【実施例】
【0027】
以下、本発明による複合めっき材およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0028】
[実施例1]
炭素粒子として平均粒径5μmの鱗片状黒鉛粒子6重量%を3Lの純水中に添加し、この混合溶液を攪拌しながら50℃に昇温させた。次に、この混合溶液に酸化剤として0.1モル/Lの過硫酸カリウム水溶液1.2Lを徐々に滴下した後、2時間攪拌して酸化処理を行い、その後、ろ紙によりろ別を行ない、水洗を行った。
【0029】
この酸化処理の前後の炭素粒子について、パージ・アンド・トラップ・ガスクロマトグラフ質量分析装置(日本分析工業JHS−100)(島津製作所製のGCMAS QP−5050A)を使用して、300℃加熱発生ガスの分析を行ったところ、上記の酸化処理により、炭素粒子に付着していた(ノナン、デカン、3−メチル−2−ヘプテンなどの)親油性脂肪族炭化水素や、(キシレンなどの)親油性芳香族炭化水素が除去されているのがわかった。
【0030】
また、素材として厚さ0.2mmのCu−Ni−Sn−P合金からなる板材(1.0質量%のNiと0.9質量%のSnと0.05質量%のPを含み、残部がCuである銅合金の板材)(DOWAメタルテック株式会社製のNB109EH)を用意し、この素材をカソード、(チタンのメッシュ素材を白金めっきした)チタン白金メッシュ電極板をアノードとして使用して、錯化剤としてスルホン酸を含むスルホン酸系Agストライクめっき液(大和化成株式会社製のダインシルバーGPE−ST)中において、電流密度5A/dm
2で30秒間電気めっき(Agストライクめっき)を行った。
【0031】
また、錯化剤としてスルホン酸を含むAg濃度30g/Lのスルホン酸系銀めっき液(大和化成株式会社製のダインシルバーGPE−PL(無光沢))に、上記の酸化処理を行った炭素粒子(黒鉛粒子)を添加して、30g/Lの炭素粒子と30g/LのAgを含むスルホン酸系銀めっき液を用意した。
【0032】
次に、上記のAgストライクめっきした素材をカソード、Ag電極板をアノードとして使用して、上記の炭素粒子を添加したスルホン酸系銀めっき液中において、スターラにより500rpmで撹拌しながら、温度25℃、電流密度3A/dm
2で250秒間電気めっき(電流効率95%)を行い、銀めっき層中に炭素粒子を含有する複合めっき皮膜(Ag−Cめっき皮膜)を素材上に形成した。この複合めっき皮膜(の中央部分の直径1.0mmの範囲)の厚さを蛍光X線膜厚計(株式会社日立ハイテクサイエンス製のFT9450)で測定したところ、5.2μmであった。
【0033】
次に、この複合めっき皮膜を超音波洗浄器(アズワン株式会社製のUSK−5)により純水中において38kHzで5秒間超音波洗浄して、表面の炭素の一部を除去する処理を行った後、純水で洗浄し、エアブローで乾燥して、複合めっき材を作製した。
【0034】
このようにして得られた複合めっき材から切り出した試験片の表面を観察することにより、複合めっき皮膜の表面の炭素粒子が占める面積の割合(面積率(面積%))を算出した。この複合めっき皮膜の表面の炭素粒子の面積率は、試験片の表面に卓上電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製のTM4000Plus)により加速電圧5kVで電子線を照射して反射電子検出器から得られた(倍率1000倍の)反射電子組成(COMPO)像を、画像解析アプリケーション(画像編集・加工ソフトGIMP2.10.6)を使用して、(全ピクセルのうち最も高い輝度を255、最も低い輝度を0とすると、輝度が127以下のピクセルが黒、輝度が127を超えるピクセルが白になるように)階調を二値化し、銀の部分(白い部分)と炭素粒子の部分(黒い部分)に分離して、画像全体のピクセル数Xに対する炭素粒子の部分のピクセル数Yの比Y/Xとして算出した。その結果、複合めっき皮膜の表面の炭素粒子が占める面積の割合(面積率)は、32面積%であった。なお、表面の炭素の一部を除去する処理を行う前の複合めっき材について、同様の方法により、複合めっき皮膜の表面の炭素粒子が占める面積の割合(面積率)を算出したところ、64面積%であり、表面の炭素の一部を除去する処理による面積率の変化は、32面積%(=64面積%−32面積%)、その面積率の変化率(表面の炭素の一部を除去する処理による炭素粒子の除去率)は、50面積%(=(64−32)面積%×100/64面積%)であった。
【0035】
また、得られた複合めっき材について、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製のVK−X1000)により倍率100倍で撮影した複合めっき皮膜の表面の画像を解析アプリケーション(株式会社キーエンス製のVK−HIXAバージョン3.8.0.0)によりJIS B0601(2001年)に基づいて(銅合金板材の圧延方向に垂直な方向における)表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaを算出したところ、0.75μmであった。
【0036】
また、この複合めっき材から2枚の試験片を切り出して、一方の試験片を平板状試験片(評価試料)とするとともに、他方の試験片をインデント加工(内側R=1.0mmの半球状の打ち出し加工)してインデント付き試験片(圧子)とし、摺動摩耗試験機(株式会社山崎精機研究所製)により、平板状試験片にインデント付き試験片を一定の加重(2N)で押し当てながら、素材が露出するまで往復摺動動作(摺動距離10mm、摺動速度3mm/s)を継続して、平板状試験片の磨耗状態を確認する磨耗試験を行うことにより、耐摩耗性の評価を行った。その結果、500回の往復摺動動作後に、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製のVHX−1000)により平板状試験片の摺動痕の中心部を倍率200倍で観察したところ、(茶色の)素材が露出していないことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、上記の往復摺動動作中に水平方向にかかる力を測定してその平均値Fを算出し、平板状試験片とインデント付き試験片との間の動摩擦係数(μ)をμ=F/Nから算出したところ、動摩擦係数は0.24であった。
【0037】
また、得られた複合めっき材から切出した試料片の表面に粘着テープ(ニチバン株式会社製のセロテープ(登録商標)CT−18(粘着力4.02N/10mm))を貼り付けた後に粘着テープを剥して、複合めっき皮膜の密着性の評価を行ったところ、複合めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。また、剥がした粘着テープに付着した炭素粒子をレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製のVKX−160)により1000倍で観察して、粘着テープに付着した炭素粒子(複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子)を数えたところ、9600個/mm
2であった。
【0038】
[実施例2]
超音波洗浄時間を250秒間とした以外は、実施例1と同様の方法により、複合めっき材を作製した。
【0039】
得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の表面の炭素粒子が占める面積の割合(面積率)を算出した。その結果、面積率は26面積%、表面の炭素の一部を除去する処理を行う前の複合めっき材の面積率は64面積%であり、表面の炭素の一部を除去する処理による面積率の変化は38面積%(=64面積%−26面積%)、その面積率の変化率は59面積%(=(64−26)面積%×100/64面積%)であった。
【0040】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、0.55μmであった。
【0041】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行い、動摩擦係数を算出した。その結果、500回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していないことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、動摩擦係数は0.52であった。
【0042】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の密着性の評価を行い、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子を数えた。その結果、複合めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。また、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子は4800個/mm
2であった。
【0043】
[実施例3]
実施例1と同様の素材をカソード、Ni電極板をアノードとして使用して、80g/Lのスルファミン酸ニッケルと45g/Lのホウ酸からなるニッケルめっき浴中において、液温45℃、電流密度4A/dm
2で攪拌しながら30秒間電気めっき(Niめっき)を行って、素材上に厚さ0.3μmのNiめっき皮膜を形成した後にAgストライクめっきを行った以外は、実施例1と同様の方法により、複合めっき材を作製した。
【0044】
得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の表面の炭素粒子が占める面積の割合(面積率)を算出した。その結果、面積率は32面積%、表面の炭素の一部を除去する処理を行う前の複合めっき材の面積率は64面積%であり、表面の炭素の一部を除去する処理による面積率の変化は32面積%(=64面積%−32面積%)、その面積率の変化率は50面積%(=(64−50)面積%×100/64面積%)であった。
【0045】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、0.75μmであった。
【0046】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行い、動摩擦係数を算出した。その結果、500回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していないことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、動摩擦係数は0.24であった。
【0047】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の密着性の評価を行い、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子を数えた。その結果、複合めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。また、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子は9600個/mm
2であった。
【0048】
[実施例4]
炭素粒子として平均粒径2μmの鱗片状黒鉛粒子を使用し、複合めっき皮膜を形成する際の電気めっき時間を25秒間とした以外は、実施例1と同様の方法により、複合めっき材を作製した。この複合めっき材の表面の炭素の一部を除去する処理を行う前の複合めっき皮膜の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、0.5μmであった。
【0049】
得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の表面の炭素粒子が占める面積の割合(面積率)を算出した。その結果、面積率は2面積%、表面の炭素の一部を除去する処理を行う前の複合めっき材の面積率は5面積%であり、表面の炭素の一部を除去する処理による面積率の変化は3面積%(=5面積%−2面積%)、その面積率の変化率は60面積%(=(5−2)面積%×100/5面積%)であった。
【0050】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、0.23μmであった。
【0051】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行い、動摩擦係数を算出した。その結果、500回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していないことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、動摩擦係数は0.13であった。
【0052】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の密着性の評価を行い、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子を数えた。その結果、複合めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。また、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子は8400個/mm
2であった。
【0053】
[実施例5]
炭素粒子として平均粒径10μmの鱗片状黒鉛粒子を使用し、複合めっき皮膜を形成する際の電気めっき時間を500秒間とした以外は、実施例1と同様の方法により、複合めっき材を作製した。この複合めっき材の表面の炭素の一部を除去する処理を行う前の複合めっき皮膜の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、10.6μmであった。
【0054】
得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の表面の炭素粒子が占める面積の割合(面積率)を算出した。その結果、面積率は34面積%、表面の炭素の一部を除去する処理を行う前の複合めっき材の面積率は62面積%であり、表面の炭素の一部を除去する処理による面積率の変化は28面積%(=62面積%−34面積%)、その面積率の変化率は45面積%(=(62−34)面積%×100/62面積%)であった。
【0055】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、1.28μmであった。
【0056】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行い、動摩擦係数を算出した。その結果、500回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していないことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、動摩擦係数は0.47であった。
【0057】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の密着性の評価を行い、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子を数えた。その結果、複合めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。また、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子は7600個/mm
2であった。
【0058】
[実施例6]
超音波洗浄機(アズワン株式会社製のVS−100III)を使用して28kHzで30秒間超音波洗浄した以外は、実施例1と同様の方法により、複合めっき材を作製した。
【0059】
得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の表面の炭素粒子が占める面積の割合(面積率)を算出した。その結果、面積率は19面積%、表面の炭素の一部を除去する処理を行う前の複合めっき材の面積率は64面積%であり、表面の炭素の一部を除去する処理による面積率の変化は45面積%(=64面積%−19面積%)、その面積率の変化率は70面積%(=(64−19)面積%×100/64面積%)であった。
【0060】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、0.37μmであった。
【0061】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行い、動摩擦係数を算出した。その結果、算500回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していないことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、動摩擦係数は0.31であった。
【0062】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の密着性の評価を行い、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子を数えた。その結果、複合めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。また、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子は3200個/mm
2であった。
【0063】
[実施例7]
超音波洗浄の代わりに、(弱アルカリ性の液状のスプレー用)洗浄防錆剤(ヘンケルジャパン株式会社製のBONDERITE C−AK PZ)10質量%を純水に溶かした電解液中において、SUS304からなるアノード板を使用し、複合めっき皮膜を形成した素材をカソード板として使用し、4A/dm
2で30秒間電解洗浄して、表面の炭素の一部を除去する処理を行った以外は、実施例1と同様の方法により、複合めっき材を作製した。
【0064】
得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の表面の炭素粒子が占める面積の割合(面積率)を算出した。その結果、面積率は47面積%、表面の炭素の一部を除去する処理を行う前の複合めっき材の面積率は64面積%であり、表面の炭素の一部を除去する処理による面積率の変化は17面積%(=64面積%−47面積%)、その面積率の変化率は27面積%(=(64−47)面積%×100/64面積%)であった。
【0065】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、0.79μmであった。
【0066】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行った。その結果、500回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していないことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。
【0067】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の密着性の評価を行い、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子を数えた。その結果、複合めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。また、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子は28000個/mm
2であった。
【0068】
[実施例8]
電解洗浄時間を250秒間とした以外は、実施例7と同様の方法により、複合めっき材を作製した。
【0069】
得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の表面の炭素粒子が占める面積の割合(面積率)を算出した。その結果、面積率は44面積%、表面の炭素の一部を除去する処理を行う前の複合めっき材の面積率は64面積%であり、表面の炭素の一部を除去する処理による面積率の変化は20面積%(=64面積%−44面積%)、その面積率の変化率は31面積%(=(64−44)面積%×100/64面積%)であった。
【0070】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、0.72μmであった。
【0071】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行った。その結果、500回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していないことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。
【0072】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の密着性の評価を行い、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子を数えた。その結果、複合めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。また、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子は19600個/mm
2であった。
【0073】
[実施例9]
電解洗浄を20A/dm
2で行った以外は、実施例7と同様の方法により、複合めっき材を作製した。
【0074】
得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の表面の炭素粒子が占める面積の割合(面積率)を算出した。その結果、面積率は43面積%、表面の炭素の一部を除去する処理を行う前の複合めっき材の面積率は64面積%であり、表面の炭素の一部を除去する処理による面積率の変化は21面積%(=64面積%−43面積%)、その面積率の変化率は33面積%(=(64−43)面積%×100/64面積%)であった。
【0075】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、0.74μmであった。
【0076】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行った。その結果、500回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していないことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。
【0077】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の密着性の評価を行い、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子を数えた。その結果、複合めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。また、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子は23600個/mm
2であった。
【0078】
[実施例10]
電解洗浄を20A/dm
2で行った以外は、実施例8と同様の方法により、複合めっき材を作製した。
【0079】
得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の表面の炭素粒子が占める面積の割合(面積率)を算出した。その結果、面積率は39面積%、表面の炭素の一部を除去する処理を行う前の複合めっき材の面積率は64面積%であり、表面の炭素の一部を除去する処理による面積率の変化は25面積%(=64面積%−39面積%)、その面積率の変化率は39面積%(=(64−39)面積%×100/64面積%)であった。
【0080】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、0.63μmであった。
【0081】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行った。その結果、算術平均粗さRaは0.63μmであった。また、500回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していないことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。
【0082】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の密着性の評価を行い、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子を数えた。その結果、複合めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。また、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子は14000個/mm
2であった。
【0083】
[比較例1]
表面の炭素の一部を除去する処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、複合めっき材を作製した。
【0084】
得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、1.78μmであった。
【0085】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行い、動摩擦係数を算出した。その結果、500回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していないことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、動摩擦係数は0.19であった。
【0086】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の密着性の評価を行い、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子を数えた。その結果、複合めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。また、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子は51200個/mm
2であった。
【0087】
[比較例2]
表面の炭素の一部を除去する処理を行わなかった以外は、実施例4と同様の方法により、複合めっき材を作製した。
【0088】
得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、0.34μmであった。
【0089】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行い、動摩擦係数を算出した。その結果、500回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していないことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、動摩擦係数は0.12であった。
【0090】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の密着性の評価を行い、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子を数えた。その結果、複合めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。また、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子は35600個/mm
2であった。
【0091】
[比較例3]
複合めっき皮膜を形成した後、この複合めっき皮膜上に銀めっき皮膜を形成し、表面の炭素の一部を除去する処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、複合めっき材を作製した。なお、銀めっき皮膜は、錯化剤としてスルホン酸を含むAg濃度30g/Lのスルホン酸系銀めっき液(大和化成株式会社製のダインシルバーGPE−PL(無光沢))を使用して、液温25℃、電流密度3A/dm
2で60秒間電気めっきを行うことにより形成した。
【0092】
得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の表面の炭素粒子が占める面積の割合(面積率)を算出した。その結果、面積率は36面積%であり、銀めっき皮膜を形成した後の面積率は64面積%であった。
【0093】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、0.76μmであった。
【0094】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行い、動摩擦係数を算出した。その結果、500回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していないことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、動摩擦係数は0.19であった。
【0095】
また、得られた複合めっき材について、実施例1と同様の方法により、複合めっき皮膜の密着性の評価を行い、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子を数えた。その結果、複合めっき皮膜上に形成した銀めっき皮膜が剥がれ、密着性は良好でなかった。また、複合めっき皮膜から脱落した炭素粒子は21200個/mm
2であった。
【0096】
[比較例4]
複合めっき皮膜に代えて、銀めっき皮膜を形成し、表面の炭素の一部を除去する処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、銀めっき皮膜は、錯化剤としてスルホン酸を含むAg濃度30g/Lのスルホン酸系銀めっき液(大和化成株式会社製のダインシルバーGPE−PL(無光沢))を使用して、液温25℃、電流密度3A/dm
2で250秒間電気めっきを行うことにより形成した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5.6μmであった。
【0097】
得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、0.19μmであった。
【0098】
また、得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行い、動摩擦係数を算出した。その結果、57回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していることが確認され、耐摩耗性が良好でないことがわかった。また、動摩擦係数は1.85であった。
【0099】
また、得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜の密着性の評価を行ったところ、銀めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。
【0100】
[比較例5]
Agストライクめっきを電流密度3A/dm
2で10秒間を行い、複合めっき皮膜に代えて、アンチモンを含む銀めっき皮膜を形成し、表面の炭素の一部を除去する処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、アンチモンを含む銀めっき皮膜は、アンチモンを含む銀めっき液(日進化成株式会社製)を使用して、液温25℃、電流密度1A/dm
2で400秒間電気めっきを行うことにより形成した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5.3μmであった。
【0101】
得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaを算出したところ、0.10μmであった。
【0102】
また、得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価を行い、動摩擦係数を算出した。その結果、370回の往復摺動動作後に、(茶色の)素材が露出していることが確認され、耐摩耗性が良好でないことがわかった。また、動摩擦係数は0.82であった。
【0103】
また、得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜の密着性の評価を行ったところ、銀めっき皮膜の剥がれはなく、密着性は良好であった。
【0104】
これらの実施例および比較例のめっき材の製造条件および特性について表1〜表3に示す。なお、表3において、めっき皮膜の密着性が良好であった場合を○、良好でなかった場合を×で示している。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】