【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会名 :CEATEC JAPAN 2018 開催場所 :幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区中瀬2丁目1) 展示日 :2018年10月16日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や2では体重以外の生体情報を得ることができなかった。
【0007】
又、特許文献3や4は、生体情報のセンサとして光ファイバを用いており、ロードセルや歪ゲージは用いてなかった。
【0008】
又、特許文献5では、生体情報のセンサとして圧電素子、静電容量センサ、光ファイバを列挙しているが、やはりロードセルや歪ゲージは使っていなかった。
【0009】
更に、特許文献6も、生体情報を得るセンサとして、ヘッドホンに取り付けた電極を用いており、ロードセルや歪ゲージは使っていなかった。
【0010】
又、いずれの文献も、一つのセンサの出力から体重および心拍波形、呼吸波形を含む生体情報を同時に得ることは考えられていなかった。
【0011】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、センサとして市販の安価なロードセルや歪ゲージ
を用いた極めて簡単な機械的構成で、着席者の体重信号、心拍波形、呼吸波形を含む生体信号
及び重心位置を同時に得ることが可能な、汎用性の高い椅子型生体情報システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、椅子と、該椅子の
支柱毎に配設され
たロードセル又は歪ゲージと、該ロードセル又は歪ゲージの出力を処理して、着席者の体重信号、心拍波形、呼吸波形
及び重心位置を同時に取得する信号処理ユニットと、該信号処理ユニットの処理結果である体重、心拍数、呼吸数
及び重心位置を表示する表示手段と、を備えた椅子型生体情報システムであって、前記信号処理ユニットが、前記ロードセル又は歪ゲージの出力を増幅する荷重信号増幅部と、該荷重信号に重畳している心拍波形及び呼吸波形を抽出するための、アナログの呼吸フィルタ部、心拍フィルタ部、生体オフセット追従部及び生体信号増幅部と、該生体信号増幅部の出力をA/D変換して生体AD値を得るA/D変換部と、該生体AD値が生体フルスケール範囲の中心に近い値となり、且つ、振幅が所定範囲内に入るように前記荷重信号のオフセットとゲインを動的に制御する、デジタルの生体オフセット追従処理部と
、重心検出部とを含み、前記呼吸フィルタ部及び心拍フィルタ部のフィルタの時定数が可変とされて、心拍と認識したパルスの幅が所定値以上となるように調整され、前記表示手段に初めに表示される心拍数又は呼吸数が、測定開始直後の複数の心拍波形又は呼吸波形から推定されたものであることを特徴とする椅子型生体情報システムにより、前記課題を解決するものである。
【0020】
ここで、前記ロードセル又は歪ゲージを車両の運転席に配設し、運転者の生体情報
及び重心位置を得るようにすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、センサとしてロードセルや歪ゲージという安価なセンサ
を用いるだけの極めて簡単な機械的構成により、着席者の体重信号、心拍波形、呼吸波形を含む生体信号
及び重心位置を同時に取得することが可能となり、安価で且つ簡便な、汎用性の高い椅子型生体情報システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0024】
参考形態は、
図1に示す如く、支柱12が1本の回転型の椅子10と、該椅子10の着座シート14に着席する着席者の体重を検出可能な位置に配設されたロードセル20と、該ロードセル20の出力を処理して、着席者の体重信号、心拍波形、呼吸波形を同時に取得する信号処理ユニット100と、該信号処理ユニット100の処理結果である体重、心拍数、呼吸数を表示する表示部120と、を備えている。
【0025】
前記ロードセル20は、前記椅子10の着座シート14とベース16の間に設けられた支柱12の間に挿入された、いわゆるZ型ロードセルとされている。
【0026】
前記ロードセル20の出力は、
図2に示す如く、信号処理ユニット100の荷重信号増幅部102に入力される。該荷重信号増幅部102で増幅されたロードセル20の出力は呼吸フィルタ部103Aと心拍フィルタ部103Bを経て生体オフセット追従部104に入力される。
【0027】
前記呼吸フィルタ部103A及び心拍フィルタ部103Bのフィルタは、それぞれ呼吸波形及び心拍波形の抽出に適した時定数でフィルタリングを行って、ロードセル20の違いや、ロードセル20よりも上の部分の椅子10の重量によって変化する外来ノイズの影響を低減している。
【0028】
本
参考形態においては、後出
図5(B)中に示す、例えば上下の振幅が所定値以上の心拍と認識したパルスPの振幅Wが所定値以上になるようにフィルタ時定数を調整している。フィルタ時定数の調整は、基板上のスイッチを切り換えたり、経験に基づいて予め作成した定数テーブルからソフトウェアで選択したり、生体信号検出部110の心拍検出部110Bの出力に応じてフィードバック制御したりすることができる。このようにして時定数を変えることで、1本の脚で支えるためベッドよりも外来ノイズに敏感と考えられる1本脚の椅子においても、ロードセル20の違いや、ロードセル20より上の部分の椅子10の重量の変化に関わらず良好な生体信号を得ることができる。
【0029】
前記生体オフセット追従部104の出力は、時定数が固定されたフィルタを含む生体信号増幅部106に入力される。該生体信号増幅部106の出力は、生体用A/D変換部108A、108Bでデジタル信号に変換された後、呼吸検出部110A、心拍検出部110B、生体オフセット追従処理部110Cを含む生体信号検出部110に入力される。
【0030】
ロードセル出力信号の荷重値全体の変化範囲に対する生体信号の変化範囲は、
図3(A)に例示する如く非常に小さい。そこで、生体オフセット追従処理部110Cにおいて、
図3(B)及び
図4に示すような追従処理を行って、生体信号を見つける。
【0031】
具体的には、まず
図4のステップ1100で、ロードセル20の出力信号を荷重信号増幅部102及び生体信号増幅部106により増幅する。
【0032】
次いでステップ1110で、生体用A/D変換部108A、108Bに入力して、生体AD値を取得する。ここで取得した信号を時系列に並べた波形が生体信号となる。
【0033】
この生体信号に対して、まず生体オフセットレンジ設定処理を行う。
【0034】
具体的には、ステップ1120に進み、生体信号が生体ADフルスケール範囲に入っているか否かを判定する。
【0035】
判定結果がNoであるときには、ステップ1130に進み、生体オフセットを大きく変化させ、生体AD値が生体ADフルスケール範囲の中心に最も近い状態となるように調整する。
【0036】
ステップ1120の判定結果がYesとなったときには、ステップ1140に進み、生体オフセット粗調整処理を行う。
【0037】
具体的には、ステップ1140で生体オフセットレンジ処理よりも細かく生体オフセットを中程度に変化させ、生体AD値が生体ADフルスケール範囲の中心に近い値となるように調整する。
【0038】
ステップ1150の判定結果がYesとなったときには、生体オフセット微調整処理を行う。
【0039】
具体的には、ステップ1160で生体信号用のゲインを微調整用に設定し、信号を増幅する。そしてステップ1170で生体信号のオフセットを細かく調整し、生体信号の振幅全体が微調上限から微調下限の微調範囲内に入るように調整する。
【0040】
ステップ1180で、生体信号の振幅全体が微調上限から微調下限の微調範囲内に入ったと判定されば、生体信号を見つける処理は終了する。
【0041】
一方、前記ロードセル20の出力信号は、荷重信号増幅部102により増幅した後、荷重用A/D変換部112に入力してA/D変換し、荷重用AD値を取得する。
【0042】
椅子上荷重値の検出は以下の流れで行う。
【0043】
まず、1.電源投入直後及びリセット直後の荷重用AD値を0オフセット値とする。
【0044】
次いで、2.椅子上に荷重を加えた際の荷重用AD値から0オフセット値を減算した値に、ロードセルの感度の違いを補正するための感度補正係数を乗じる。
【0045】
このようにして椅子上のリアルタイムで得られる荷重値が、荷重検出部114に入力される。
【0046】
この際、電気信号に重畳する床や、空気の振動による外来ノイズをキャンセルし、生体検出精度を向上することもできる。
【0047】
前記荷重検出部114の出力は、着座検出部116に入力され、着席又は離席が検出される。
【0048】
前記着座検出部116の出力は、通信部118に入力され、体重表示部120A、呼吸数表示部120C及び心拍数表示部120Dを備えた表示部120に入力され表示される。
【0049】
本
参考形態における離席時(A)及び着席時(B)の表示例を
図5に示す。離席時は
図5(A)の表示だったものが、着席するだけで
図5(B)のように心拍数、呼吸数、体重が表示される。
【0050】
本
参考形態においては、心拍検出部110Bにおける心拍数演算を早めるため、
図5(B)に示す最初の2つの心拍波形P
1、P
2から、表示用の例えば1分当たりの心拍数を予測している。これにより数秒で心拍数を表示することができる。そして時間経過とともに実測する心拍数を少しずつ増やし、1分経過後は実測した心拍数を正確に表示するようにしている。
【0051】
呼吸数についても、同様に最初の所定時間、例えば10秒間の呼吸数を計数し、所定された例えば1分間の値を推測して表示することにより迅速な表示が可能である。この場合も、時間経過とともに実測値に近づけ、1分経過後は実測値を表示することで正確な呼吸数を表示することができる。
【0052】
次にロードセルを複数、実施形態では4個設けて着席者の重心位置も検出するようにした本発明
の実施形態を説明する。
【0053】
本実施形態では、
図6に例示するような、4本脚の回転しない椅子30の4本の脚32A〜32Dのそれぞれにロードセル40A〜40Dが配設されている。図において34は着座シートである。
【0054】
本実施形態の信号処理ユニットを
図7に示す。本実施形態においては、
図8に示す如く、椅子30に4つのロードセル40A〜40Dが設けられ、これに対応してA/D変換部が112A〜112Dの4つ設けられ、荷重検出部114の代わりに荷重/重心検出部115が設けられ、該荷重/重心検出部115に荷重/重心テーブル115A、荷重検出部115B、重心検出部115Cが設けられ、表示部120に重心表示部120Bが設けられている点が前記
参考形態と異なる。他の構成及び重心検出以外の処理は、
参考形態と同様であるので説明は省略する。
【0055】
本実施形態における重心検出は次のようにして行う。
【0056】
前記ロードセル40A〜40Dの出力は、
図7に示す如く、信号処理ユニット100の荷重信号増幅部102に入力される。該荷重信号増幅部102で増幅されたロードセル出力のうち、例えばロードセル40Aと40Dの出力は呼吸フィルタ部103Aと心拍フィルタ部103Bを経て生体オフセット追従部104に入力される。生体用信号の以下の処理は
参考実施形態と同様である。
【0057】
一方、前記4つのロードセル40A〜40Dの出力信号は、荷重信号増幅部102により増幅した後、荷重用A/D変換部112A、112B、112C、112Dにそれぞれ入力してA/D変換し、荷重用AD値を取得する。
【0058】
椅子上荷重値の検出は以下の流れで行う。
【0059】
まず、1.電源投入直後及びリセット直後の荷重用AD値を0オフセット値とする。
【0060】
次いで、2.椅子上に荷重を加えた際の荷重用AD値から0オフセット値を減算した値に、ロードセルごとの感度の違いを補正するための感度補正係数を乗じる。これがロードセルごとの荷重値となる。
【0061】
次いで、3.ロードセルごとの荷重値を合計することで、椅子上荷重値を検出することができる。
【0062】
このようにして椅子上のリアルタイムで得られる荷重値が、荷重/重心テーブル115A、荷重検出部115B及び重心検出部115Cを備えた荷重/重心検出部115に入力される。
【0063】
この際、片側のロードセル40A、40Bの出力信号に反対側のロードセル40C、40Dの出力信号の逆相を加えて、電気信号に重畳する床や、空気の振動による外来ノイズをキャンセルし、生体検出精度を向上することができる。反対側のロードセル40C、40Dにも生体の振動が存在するため、生体信号も減衰するが、床や、空気の振動による外来ノイズの減衰効果が高いため、S/N比は向上する。実施例では、振動ノイズが約50%減少するが生体信号は約30%の減少で済み、S/N比は1.4倍以上向上することが確認できた。
【0064】
前記荷重検出部115Bにおける椅子上重心位置検出は、例えば次のようにして行うことができる。
【0065】
ここでは、先に求めたロードセルごとの椅子上荷重値を用いて、4点のロードセルごとの荷重値の割合により重心位置の検出を行う。
【0066】
まず、1)ロードセルごとの椅子上荷重値、および表1のような荷重テーブルより、4点のロードセル40A〜40Dの中の以下の2点の組合せに対して、それぞれ2点間の重心位置を検出する。
・右奥ロードセル40A上と左奥ロードセル40B上の2点
・右奥ロードセル40A上と右手前ロードセル40C上の2点
・左奥ロードセル40B上と左手前ロードセル40D上の2点
・右手前ロードセル40C上と左手前ロードセル40D上の2点
【0067】
例えば、右奥ロードセル40A上と左奥ロードセル40B上の2点から重心位置を算出する場合は、次のようにする。
【0068】
まず、4点の荷重の合計に対する右奥荷重、左奥荷重の割合をそれぞれ算出する。荷重割合を算出するために表1のような荷重テーブルを用いる。
【0070】
表1は
図9の各サンプル点において荷重を加えた際に4つのロードセルに加わる荷重の割合を表す。
【0071】
1A)椅子上で4点の合計に対して右奥荷重割合となる可能性のある重心位置を、
図10に例示する如く、荷重テーブルから線形補間により算出する。
図10では右奥荷重割合が10%となる位置の線形補間の例を示している。
1B)椅子上で4点の合計に対して左奥荷重割合となる可能性のある重心位置を、荷重テーブルから線形補間により算出する。
図10では左奥荷重割合が10%となる位置の線形補間の例を示している。
1C)右奥荷重割合10%の線形補間ラインと左奥荷重割合10%の線形補間ラインの交点を算出する。これが右奥ロードセル40A上と左奥ロードセル40Bの2点間の重心位置となる(
図10参照)。
【0072】
2)次いで、4点のロードセル40A〜40D中の「2点に対する重心位置」から椅子上重心位置を検出する。即ち、1)の処理で以下の4つの「2点に対する重心位置」が検出される。
・右奥ロードセル40A上と左奥ロードセル40B上の2点
・右奥ロードセル40A上と右手前ロードセル40C上の2点
・左奥ロードセル40B上と左手前ロードセル40D上の2点
・右手前ロードセル40C上と左手前ロードセル40D上の2点
【0073】
そこで、
図11に例示する如く、これら4つの「2点に対する重心位置」の交点から椅子上重心位置を検出する。
【0074】
前記荷重/重心検出部115及び前記生体信号検出部110の出力は、着座検出部116に入力され、着席/離席が検出される。
【0075】
該着座検出部116の出力は、通信部118に入力され、体重表示部120A、重心表示部120B、呼吸数表示部120C及び心拍数表示部120Dを備えた表示部120に入力され表示される。
【0076】
前記
参考形態及び実施形態においては、いずれも、時定数可変の呼吸フィルタ部及び心拍フィルタ部を設けることで、汎用的な色々な種類の市販ロードセルや椅子に、システムを変えることなく、そのまま対応できる。
【0077】
なお、前記
参考形態及び実施形態では、Z型ロードセルが用いられていたが、ロードセルの種類は、これに限定されず、更に歪ゲージを用いたセンサであればロードセルにも限定されない。
【0078】
また、ロードセルや歪ゲージを用いた着座センサを備えた車両においては、該着座センサの出力を利用して、運転者の生体情報を得ることが可能である。したがって、生体信号に異常が発見された運転者の場合は、例えばエンジンがかからないようにして、安全性を高めることが可能である。
【0079】
又、事故発生時の運転者の生体情報(特に生死)を知ることは、今後の自動運転との関係で自動車保険上、極めて重要である。
【課題】市販の安価なロードセルや歪ゲージのみを用いて、着席者の体重信号、心拍波形、呼吸波形を含む生体信号を同時に得ることが可能な椅子型生体情報システムを提供する。
【解決手段】椅子10、30と、該椅子10、30の着席者の体重を検出可能な位置に配設されたロードセル20、40A〜40D又は歪ゲージと、該ロードセル20、40A〜40D又は歪ゲージの出力を処理して、着席者の体重信号、心拍波形、呼吸波形を同時に取得する信号処理ユニット100と、前記信号処理ユニット100の処理結果である体重、心拍数、呼吸数を表示する表示手段(表示部120)とを備える。