(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記速度判定部は、前記今回判定距離をLpx2とし、前記過去判定距離をLpx1とし、前記過去判定角度と前記今回判定角度との角度差をθLxとし、前記移動距離をLxとし、
Lx={Lpx12+Lpx22−2×Lpx1×Lpx2×cos(θLx)}1/2
の算出式を用いて、前記移動距離を算出する請求項2に記載のレーザ距離測定装置。
前記速度判定部は、同じ照射角度において検出した前記2つの受光信号の差が、予め設定された停止判定値以下である場合は、前記移動体が停止していると判定し、それ以外の場合は、前記移動体が停止していないと判定する請求項6に記載のレーザ距離測定装置。
前記平均パワー制御部は、前記レーザ光発生部から出射される前記レーザ光のパルス幅を短くさせることによって、前記レーザ光の前記平均パワーを低下させる請求項1から12のいずれか一項に記載のレーザ距離測定装置。
前記平均パワー制御部は、前記レーザ光発生部から出射される前記レーザ光のピークパワーを低下させることによって、前記レーザ光の前記平均パワーを低下させる請求項1から13のいずれか一項に記載のレーザ距離測定装置。
前記平均パワー制御部は、前記レーザ光発生部から出射される前記レーザ光の出射周期を長くさせることによって、前記レーザ光の前記平均パワーを低下させる請求項1から14のいずれか一項に記載のレーザ距離測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施の形態1
実施の形態1に係るレーザ距離測定装置10について図面を参照して説明する。
図1は、レーザ距離測定装置10の概略構成を示すブロック図である。
図2は、レーザ距離測定装置10の光学系の概略配置構成を示す模式図である。レーザ距離測定装置10は、LiDAR又はレーザレーダとも呼ばれる。レーザ距離測定装置10は、移動体としての車両に搭載され、移動体の前方にレーザ光L1を2次元走査して照射し、レーザ距離測定装置10(移動体1)から移動体1の前方に存在する物体までの距離を測定する。
【0014】
レーザ距離測定装置10は、レーザ光発生部11、走査機構12、受光部13、走査制御部14、距離算出部15、送受光制御部16、速度判定部17、平均パワー制御部18等を備えている。後述するように、走査制御部14から平均パワー制御部18は、制御装置20に備えられている。レーザ光発生部11は、レーザ光L1を出射する。走査機構12は、レーザ光L1の照射角度を変化させる機構である。走査制御部14は、走査機構12を制御してレーザ光の照射角度を周期的に走査させる。受光部13は、物体に反射したレーザ光の反射光L2を受光し、受光信号を出力する。距離算出部15は、出射したレーザ光L1及び受光信号に基づいて物体までの距離である物体距離を算出する。
【0015】
1−1.レーザ光発生部11
レーザ光発生部11は、レーザ光L1を出射する。レーザ光発生部11は、レーザ光源111、及びレーザ光源駆動回路112を備えている。レーザ光源駆動回路112は、
図8に示すように、出射周期Tpでオンになるパルス状の出力信号(光源信号)を生成する。レーザ光源駆動回路112は、後述する送受光制御部16からの指令信号に基づいて、パルス状の出力信号を生成する。レーザ光源111は、レーザ光源駆動回路112から伝達された出力信号がオンになったときに、近赤外波長のレーザ光L1を発生し、走査機構12に向かって出射する。なお、レーザ光源111から出射されたレーザ光L1は、レーザ光源111と走査機構12との間に配置された集光ミラー133を透過する。
【0016】
1−2.走査機構12
走査機構12は、レーザ光L1の照射角度を変化させる。走査機構12は、レーザ光L1の照射角度を、第1方向X、及び第1方向に直交する第2方向Yに変化させる。本実施の形態では、レーザ光L1は、移動体1の前方に照射され、第1方向Xは、移動体1の進行方向に対する左右方向に設定され、第2方向Yは、移動体1の進行方向に対する上下方向に設定されている。走査機構12は、可動ミラー121、及びミラー駆動回路122を備えている。
図2に示すように、レーザ光源111から出射したレーザ光L1は、集光ミラー133を透過した後、可動ミラー121に反射し、筐体9に設けられた透過窓19を透過して、可動ミラー121の角度に応じた照射角度で移動体1の前方に照射される。
【0017】
本実施の形態では、可動ミラー121は、MEMSミラー121(Micro Electro Mechanical Systems)とされている。
図3に示すように、MEMSミラー121は、互いに直交する第1軸C1と第2軸C2の回りにミラー121aを回転させる回転機構を備えている。MEMSミラー121は、ミラー121aが設けられた矩形板状の内側フレーム121bと、内側フレーム121bの外側に配置された矩形環板状の中間フレーム121cと、中間フレーム121cの外側に配置され矩形板状の外側フレーム121dと、を備えている。外側フレーム121dは、MEMSミラー121の本体に固定されている。
【0018】
外側フレーム121dと中間フレーム121cとは、ねじり弾性を有する左右2つの第1トーションバー121eにより連結されている。中間フレーム121cは、外側フレーム121dに対して、2つの第1トーションバー121eを結ぶ第1軸C1回りに捩れる。第1軸C1回りに一方側又は他方側に捩れると、レーザ光L1の照射角度が上側又は下側に変化する。中間フレーム121cと内側フレーム121bとは、弾性を有する上下2つの第2トーションバー121fにより連結されている。内側フレーム121bは、中間フレーム121cに対して、2つの第2トーションバー121fを結ぶ第2軸C2回りに捩れる。第2軸C2回りに一方側又は他方側に捩れると、レーザ光L1の照射角度が左側又は右側に変化する。
【0019】
中間フレーム121cには、フレームに沿った環状の第1コイル121gが設けられており、第1コイル121gに接続された第1電極パット121hが、外側フレーム121dに設けられている。内側フレーム121bには、フレームに沿った環状の第2コイル121iが設けられており、第2コイル121iに接続された第2電極パット121jが、外側フレーム121dに設けられている。MEMSミラー121には、不図示の永久磁石が設けられている。第1コイル121gに正側又は負側の電流が流れると、中間フレーム121cを第1軸C1回りに一方側又は他方側にねじるローレンツ力が生じ、捩れ角度は、電流の大きさに比例する。第2コイル121iに正側又は負側の電流が流れると、内側フレーム121bを第2軸C2回りに一方側又は他方側にねじるローレンツ力が生じ、捩れ角度は、電流の大きさに比例する。
【0020】
図4の上段のタイムチャートに示すように、ミラー駆動回路122は、走査制御部14の指令信号に従って、正の第1最大電流値Imx1と負の第1最小電流値Imn1との間を、第1周期T1で振動する電流を、第1電極パット121hを介して第1コイル121gに供給する。第1周期T1は、2次元走査の1フレーム分の周期となる。電流の振動波形は、のこぎり波又は三角波等とされる。
図5に示すように、レーザ光は、正の第1最大電流値Imx1に対応する第2方向Yの最大照射角度θUDmxと、負の第1最小電流値Imn1に対応する第2方向Yの最小照射角度θUDmnとの間を、第1周期T1で振動する。第1最大電流値Imx1及び第1最小電流値Imn1は、運転条件に応じて変化されてもよい。
【0021】
図4の下段グラフに示すように、ミラー駆動回路122は、走査制御部14の指令信号に従って、正の第2最大電流値Imx2と負の第2最小電流値Imn2との間を、第2周期T2で振動する電流を、第2電極パット121jを介して第2コイル121iに供給する。第2周期T2は、第1周期T1よりも短い値に設定されており、第1周期T1を、1フレームにおける第1方向Xの往復走査回数で除算した値に設定される。電流の振動波形は、正弦波又は矩形波等とされる。
図5に示すように、レーザ光は、正の第2最大電流値Imx2に対応する第1方向Xの最大照射角度θLRmxと、負の第2最小電流値Imn2に対応する第1方向Xの最小照射角度θLRmnとの間を、第2周期T2で振動する。第2最大電流値Imx2及び第2最小電流値Imn2は、運転条件に応じて変化されてもよい。
【0022】
1−3.受光部13
受光部13は、移動体1の前方の物体に反射したレーザ光の反射光L2を受光する。受光部13は、光検出器131、光検出器制御回路132、及び集光ミラー133を備えている。
図2に示すように、移動体1の前方にある物体40に反射した反射光L2は、透過窓19を透過し、可動ミラー121に反射した後、集光ミラー133に反射し、光検出器131に入射する。
【0023】
光検出器131は、APD(Avalanche Photo Diode)等を受光素子として備え、受光した反射光L2に応じた受光信号を出力する。光検出器制御回路132は、送受光制御部16からの指令信号に基づいて、光検出器131の動作を制御する。光検出器131が出力した受光信号は、制御装置20(距離算出部15、速度判定部17)に入力される。
【0024】
1−4.制御装置20
レーザ距離測定装置10は、制御装置20を備えている。制御装置20は、走査制御部14、距離算出部15、送受光制御部16、速度判定部17、及び平均パワー制御部18等の機能部を備えている。制御装置20の各機能は、制御装置20が備えた処理回路により実現される。具体的には、制御装置20は、
図6に示すように、処理回路として、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置90(コンピュータ)、演算処理装置90とデータのやり取りをする記憶装置91、演算処理装置90に外部の信号を入出力する入出力装置92、及びレーザ距離測定装置10の外部の外部装置とデータ通信を行う外部通信装置93等を備えている。
【0025】
演算処理装置90として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、各種の論理回路、及び各種の信号処理回路等が備えられてもよい。また、演算処理装置90として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。記憶装置91として、演算処理装置90からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(Random Access Memory)、演算処理装置90からデータを読み出し可能に構成されたROM(Read Only Memory)等が備えられている。なお、記憶装置91として、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の各種の記憶装置が用いられてもよい。
【0026】
入出力装置92は、レーザ光源駆動回路112、ミラー駆動回路122、光検出器131、及び光検出器制御回路132等が接続され、これらと演算処理装置90との間でデータ及び制御指令の送受信を行う通信回路、A/D変換器、D/A変換器、及び入出力ポート等を備えている。また、入出力装置92は、各回路を制御する演算処理装置を備えている。外部通信装置93は、自動運転装置等の外部装置30と通信を行う。
【0027】
そして、制御装置20が備える各機能部14〜18等の各機能は、演算処理装置90が、ROM等の記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、記憶装置91、入出力装置92、及び外部通信装置93等の制御装置20の他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、各機能部14〜18等が用いる判定速度等の設定データは、ソフトウェア(プログラム)の一部として、ROM等の記憶装置91に記憶されている。以下、制御装置20の各機能について詳細に説明する。
【0028】
<送受光制御部16>
送受光制御部16は、レーザ光源駆動回路112に指令信号を伝達し、出射周期Tpで、パルス幅PWを有するパルス状のレーザ光を出力させる。本実施の形態では、送受光制御部16は、後述する平均パワー制御部18から指令されたパルス幅PW及び出射周期Tpに基づいて、レーザ光を出力させる。また、送受光制御部16は、光検出器制御回路132に指令信号を伝達し、光検出器131に受光信号を出力させる。
【0029】
<走査制御部14>
走査制御部14は、走査機構12を制御してレーザ光の照射角度を走査させる。本実施の形態では、走査制御部14は、第1方向Xの照射角度範囲でレーザ光を走査させると共に、第1方向Xに直交する第2方向Yの照射角度範囲でレーザ光L1を走査させる2次元走査を行う。レーザ光L1は、移動体1の前方に照射され、第1方向Xは、移動体1の進行方向に対する左右方向に設定され、第2方向Yは、移動体1の進行方向に対する上下方向に設定される。走査制御部14は、後述する平均パワー制御部18から指令された第1方向X及び第2方向Yの照射角度範囲、及び走査周期に基づいて、走査機構12を制御する。
【0030】
走査制御部14は、レーザ光の照射角度を、第2方向Yの照射角度範囲及び第1周期T1で走査させる指令信号を、ミラー駆動回路122に伝達する。具体的には、走査制御部14は、第1コイル121gに供給する電流の正の第1最大電流値Imx1及び負の第1最小電流値Imn1、及び第1周期T1の指令信号を、ミラー駆動回路122に伝達する。
【0031】
また、走査制御部14は、レーザ光の照射角度を、第1方向Xの照射角度範囲及び第2周期T2で走査させる指令信号を、ミラー駆動回路122に伝達する。具体的には、走査制御部14は、第2コイル121iに供給する電流の正の第2最大電流値Imx2及び負の第2最小電流値Imn2、及び第2周期T2の指令信号を、ミラー駆動回路122に伝達する。走査制御部14は、第1周期T1を、1フレームにおける第1方向Xの往復走査回数で除算した値を、第2周期T2に設定する。
【0032】
図5に示すように、第1周期T1で、レーザ光L1の照射角度を、矩形状の2次元の走査範囲を1回走査させることができる。この2次元の走査範囲の1回の走査を、1フレームという。第1周期T1が、走査周期になる。
【0033】
走査制御部14は、第1方向X及び第2方向Yの照射角度の情報を距離算出部15及び速度判定部17等に伝達する。本実施の形態では、第1コイル121gの供給電流が第1方向の照射角度に対応し、第2コイル121iの供給電流が第2方向の照射角度に対応する。
【0034】
<距離算出部15>
距離算出部15は、出射したレーザ光及び受光信号に基づいて、照射角度に存在する物体までの距離を算出する。
図7に示すように、レーザ光源111から出射したレーザ光L1は、距離Lだけ前方にある物体40に反射し、反射光L2は、距離Lだけ後方にある光検出器131に入射する。
図8は、レーザ光源111から出射したレーザ光L1の光源信号と、光検出器131で受光した反射光L2の受光信号との関係を示している。光源信号の立ち上がりから受光信号のピークまで時間Tcntは、レーザ光源111及び光検出器131と物体40との間の距離Lをレーザ光が往復する時間である。よって、時間Tcntに光速を乗算し、2で除算すれば、物体40までの距離Lを算出することができる。
【0035】
距離算出部15には、レーザ光源駆動回路112からレーザ光源111への出力信号(光源信号)が入力されており、レーザ光発生部11がパルス状のレーザ光を出射し始めた時点を検出できる。距離算出部15は、レーザ光が出射された時点から、受光信号が閾値を超えた時点までの時間を受光時間Tcntとして計測する。受光時間Tcntの計測には、時間測定器が用いられてもよい。時間測定器は、リング発振器とカウンタと備えたタイプとされてもよく、或いは、複数の遅延回路及びフリップフロップ、及びカウンタとを備えたタイプとされてもよい。
【0036】
そして、距離算出部15は、受光時間Tcntに光速c0を乗算し、2で除算した値を、レーザ光の発光時点の照射角度に存在する物体までの距離Lとして算出する(L=Tcnt×c0/2)。なお、距離算出部15は、受光部13が受光信号を出力していない場合は、その時点の照射角度に存在する物体を検出できないと判定して、距離Lを算出しない。距離算出部15は、各照射角度における物体の距離の算出結果を外部装置30に伝達する。
【0037】
<速度判定部17>
速度判定部17は、同じ照射角度において2つの時点で検出した受光信号を比較し、移動体1が停止しているか否かを判定する。
【0038】
移動体1が停止している場合は、同じ照射角度において2つの時点で照射されたレーザ光は、同じ静止物体の部分に照射される。同じ静止物体の部分であれば、レーザ光の反射率は同じであるので、2つの時点の反射光の強度は同等になり、距離も同じであるので、2つの時点の受光信号は同等になる。よって、2つの時点で検出した受光信号を比較することで、移動体1が停止しているか否かを判定することができる。
【0039】
本実施の形態では、2次元走査が行われるように構成されており、速度判定部17は、同じ照射角度において今回及び過去の2つの走査周期で検出した受光信号を比較し、移動体1が停止しているか否かを判定する。
【0040】
なお、速度判定部17には、光検出器131が出力した受光信号が入力され、レーザ光源駆動回路112が出力した光源信号が入力され、走査制御部14が出力した照射角度の情報が入力される。そして、速度判定部17は、これらの入力情報をRAM等の記憶装置に記憶する。なお、速度判定部17は、判定用に事前処理を行った情報のみを記憶装置に記憶してもよい。例えば、速度判定部17は、レーザ光を出射した時点(光源信号がオンになった時点)をゼロにした受光信号の時間軸波形及び対応する照射角度を記憶装置に記憶する。或いは、速度判定部17は、レーザ光を出射した時点から受光信号が閾値を超えた時点までの受光時間Tcnt、受光信号のピーク値Rmax、受光信号が閾値を超えている時間間隔である受光信号のパルス幅Rw等を記憶装置に記憶してもよい。
【0041】
図9に、移動体1が停止している場合に、所定の照射角度に設定された判定照射角度Pxにおいて今回の走査周期及び前回の走査周期で検出した受光信号を示す。
図9の左側に、今回及び前回の走査周期の照射角度範囲と、照射角度範囲における判定照射角度Pxの設定角度を示し、
図9の右側に今回及び前回の走査周期の判定照射角度Pxにおいて取得した受光信号のピーク値付近の波形を示す。なお、各照射角度において取得した受光信号の波形の時間軸は、レーザ光を出射した時点(本例では、光源信号がオンになった時点)が基準(ゼロ)にされる。
【0042】
図9に示すように、同じ判定照射角度Pxにおいて2つの時点で検出した受光信号は同等になっており、速度判定部17は、移動体1が停止していると判定する。
【0043】
速度判定部17は、同じ照射角度において検出した2つの受光信号の差(絶対値)が、予め設定された停止判定値以下である場合は、移動体1が停止していると判定し、それ以外の場合は、移動体1が停止していないと判定する。
【0044】
例えば、速度判定部17は、レーザ光を出射した時点の時間をゼロにした2つの受光信号の時間軸波形を用い、波形の各時点において2つの受光信号の偏差(絶対値)を算出し、偏差の積算値が停止判定値以下である場合は、移動体1が停止していると判定し、それ以外の場合は、移動体1が停止していないと判定する。
【0045】
或いは、速度判定部17は、同じ照射角度において検出した2つの受光信号のピーク値Rmax及びパルス幅Rwの一方又は双方の差が、各差について予め設定された停止判定値以下である場合は、移動体1が停止していると判定し、それ以外の場合は、移動体1が停止していないと判定してもよい。或いは、速度判定部17は、ピーク値Rmax及びパルス幅Rwの一方又は双方の差に加えて、2つの受光信号の受光時間Tcntの差が、各差について予め設定された停止判定値以下である場合は、移動体1が停止していると判定し、それ以外の場合は、移動体1が停止していないと判定してもよい。受光時間Tcntの代わりに、受光時間Tcntに基づいて算出された距離が用いられてもよい。
【0046】
図10に示すように、判定照射角度Pxは、レーザ光が路面に照射される照射角度範囲に設定されてもよい。路面は静止物体であり、凹凸があるので、路面の各部分によって反射率が異なり、移動体1が静止しているか否かを精度よく判定できる。
【0047】
例えば、判定照射角度Pxは、通常の移動体1の走行において、レーザ光が路面に照射される照射角度に予め設定されてもよい。或いは、速度判定部17は、各照射角度と各照射角度で検出された距離とに基づいて、路面に対応する照射角度範囲を判定し、判定した路面に対応する照射角度範囲に判定照射角度Pxを設定してもよい。検出物体が路面である場合は、各照射角度と各照射角度で検出された距離との関係は、照射角度が上側に変化するに従って、距離が長くなる所定の関係になるので、実際の関係が、路面の関係に対応している照射角度範囲が、路面に対応する照射角度範囲と判定されるとよい。
【0048】
或いは、判定照射角度Pxは、レーザ光が路面以外の静止物体に照射される照射角度範囲に設定されてもよい。例えば、実施の形態6と同様に、公知の処理技術を用い、各照射角度及び各照射角度の距離に基づいて、検出物体の形状及び相対速度が認識され、検出物体の形状及び相対速度に基づいて、路面及び路面以外の静止物体が認識される。
【0049】
また、速度判定部17は、複数の判定照射角度を設定し、各判定照射角度において2つの時点で検出した受光信号を比較し、移動体1が停止しているか否かを判定し、移動体1が停止していると判定された判定照射角度の数が、予め設定された停止判定数以上である場合に、移動体1が停止していると最終的に判定し、それ以外の場合は、移動体1が停止していないと判定してもよい。また、複数の判定照射角度は、路面に対応する照射角度の範囲に設定されてもよい。
【0050】
<平均パワー制御部18>
平均パワー制御部18は、速度判定部17により移動体1が停止していると判定された場合は、停止していないと判定されている場合よりも、レーザ光発生部11から出射されるレーザ光の単位面積及び単位時間当たりの平均パワーを低下させる。
【0051】
平均パワー制御部18は、1)レーザ光発生部11から出射されるレーザ光のパルス幅PWを短くさせるパルス幅短縮、2)レーザ光発生部11から出射されるレーザ光のピークパワーを低下させるピークパワー低下、3)レーザ光発生部11から出射されるレーザ光の出射周期Tpを長くさせる出射周期延長、のいずれか1つ以上を実行することによって、平均パワーを低下させる。2)ピークパワー低下は、レーザ光源に供給される供給電圧をDC/DCコンバータ等により低下させることで行われる。
【0052】
例えば、平均パワー制御部18は、レーザ光のパルス幅PW、レーザ光源への供給電圧、及び出射周期Tpの指令を送受光制御部16に送信する。送受光制御部16は、指令されたパルス幅PW、供給電圧、出射周期Tpに基づいて、レーザ光発生部11からレーザ光を出射させる。例えば、パルス幅を変化させる場合は、平均パワー制御部18は、移動体1が停止していないと判定されている場合は、通常時のパルス幅を送受光制御部16に指令し、移動体1が停止していると判定されている場合は、通常時のパルス幅よりも短い停止時のパルス幅を送受光制御部16に指令する。供給電圧を変化させる場合は、平均パワー制御部18は、移動体1が停止していないと判定されている場合は、通常時の供給電圧を送受光制御部16に指令し、移動体1が停止していると判定されている場合は、通常時の供給電圧よりも低い停止時の供給電圧を送受光制御部16に指令する。出射周期を変化させる場合は、平均パワー制御部18は、移動体1が停止していないと判定されている場合は、通常時の出射周期を送受光制御部16に指令し、移動体1が停止していると判定されている場合は、通常時の出射周期よりも長い停止時の出射周期を送受光制御部16に指令する。
【0053】
<フローチャート>
図11に、速度判定部17及び平均パワー制御部18の処理を説明するフローチャートを示す。
図11の処理は、走査周期毎に実行される。ステップS01で、速度判定部17は、上述したように、同じ照射角度において今回及び過去の2つの走査周期で検出した受光信号を比較し、移動体1が停止しているか否かを判定し、移動体1が停止していると判定した場合は、ステップS02に進み、移動体1が停止していないと判定した場合は、ステップS03に進む。
【0054】
ステップS02で、平均パワー制御部18は、レーザ光発生部11に、通常時の平均パワーよりも低い平均パワーのレーザ光を出射させる。一方、ステップS03で、平均パワー制御部18は、レーザ光発生部11に、通常時の平均パワーのレーザ光を出射させる。
【0055】
2.実施の形態2
次に、実施の形態2に係るレーザ距離測定装置10について説明する。上記の実施の形態1と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係るレーザ距離測定装置10の基本的な構成は実施の形態1と同様であるが、移動体1の停止判定に加えて、移動体1の低速度判定を行い、低速度であると判定された場合も、レーザ光の平均パワーを低下させる点が実施の形態1と異なる。
【0056】
本実施の形態でも、実施の形態1と同様に、速度判定部17は、同じ照射角度において2つの時点で検出した受光信号を比較し、移動体1が停止しているか否かを判定する。
【0057】
<受光強度が対応する2つの照射角度の判定>
本実施の形態では、速度判定部17は、移動体1が停止していると判定されなかった場合は、移動体の速度を算出し、移動体の速度が予め設定された判定速度以下であるか否かを判定する。具体的には、速度判定部17は、今回の走査周期において検出した受光信号と、過去の走査周期において検出した受光信号との間で、受光信号の受光強度が互いに対応する今回の走査周期の照射角度である今回判定角度Px2と過去の走査周期の照射角度である過去判定角度Px1とを判定する。
【0058】
例えば、
図12の上段に示すように、速度判定部17は、前回の走査周期において所定の照射角度に設定された過去判定角度Px1で検出した受光信号を比較元に設定する。そして、
図12の下段に示すように、速度判定部17は、今回の走査周期で検出した複数の照射角度の受光信号から、前回の走査周期において過去判定角度Px1で検出した受光信号の受光強度と対応する受光強度を有する受光信号を探索し、対応する受光信号があった場合は、その受光信号の照射角度を今回判定角度Px2として判定する。対応する照射角度が複数ある場合は、対応度合いの最も高い照射角度が、今回判定角度Px2として判定されてもよい。
【0059】
本実施の形態では、
図12に示すように、レーザ光の走査方向は、移動体1の前方から移動体1に近づく方向に設定されている。速度判定部17は、実施の形態1と同様に、前回の走査周期において過去判定角度Px1で検出した受光信号と、今回の走査周期において過去判定角度Px1と同じ照射角度で検出した受光信号とを比較し、移動体1が停止しているか否かを判定する。そして、速度判定部17は、移動体1が停止していないと判定した場合は、前回の走査周期において過去判定角度Px1で検出した受光信号の受光強度と、今回の走査周期において過去判定角度Px1よりも後の各照射角度で検出した受光信号の受光強度と、が対応しているか否かを、走査順に比較する。そして、速度判定部17は、受光強度が対応していると判定した場合に、その照射角度を今回判定角度Px2として判定し、走査順の比較を終了する。
【0060】
或いは、比較元と比較先を逆にしてもよい。すなわち、速度判定部17は、今回の走査周期において所定の照射角度に設定された今回判定角度Px2で検出した受光信号を比較元に設定してもよい。そして、速度判定部17は、前回の走査周期で検出した複数の照射角度の受光信号から、今回の走査周期において今回判定角度Px2で検出した受光信号の受光強度と対応する受光強度を有する受光信号を探索し、対応する受光信号があった場合は、その受光信号の照射角度を過去判定角度Px1として判定してもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、移動体1が前方に移動している場合は、受光強度が相互に対応する過去判定角度Px1と今回判定角度Px2との間で、第2方向Y(上下方向Y)は異なるが、第1方向X(左右方向X)は同等になる。よって、速度判定部17は、今回の走査周期と前回の走査周期との間で受光強度を比較する左右方向Xの照射角度の範囲を、所定の範囲に制限してもよい。この構成によれば、左右方向Xが大きく異なる過去判定角度Px1の受光強度と今回判定角度Px2の受光強度とが対応していると誤判定されることがなくなり、判定精度を向上させることできる。また、比較する左右方向の範囲を狭くし、処理負荷を低減できる。
【0062】
2つの受光信号の受光強度の比較として、例えば、速度判定部17は、受光信号が閾値を超えた時点の時間をゼロにした2つの受光信号の時間軸波形を用い、時間ゼロ以降の各時点において2つの受光信号の偏差(絶対値)を算出し、偏差の積算値が強度判定値以下である場合は、2つの受光信号の受光強度が対応していると判定し、それ以外の場合は、2つの受光信号の受光強度が対応していないと判定する。
【0063】
或いは、速度判定部17は、2つの受光信号のピーク値Rmax及びパルス幅Rwの一方又は双方の差が、各差について予め設定された強度判定値以下である場合は、2つの受光信号の受光強度が対応していると判定し、それ以外の場合は、2つの受光信号の受光強度が対応していないと判定してもよい。
【0064】
<移動体の速度の算出>
図12に示す例では、移動体1が移動しており、受光強度が互いに対応する今回の走査周期の今回判定角度Px2と、前回の走査周期の過去判定角度Px1とが異なっている。また、今回判定角度Px2と過去判定角度Px1との間で、左右方向Xの照射角度は同等になるが、上下方向Yの照射角度が異なる。
図13に、
図12の例を左右方向Xの一方側から見た模式図をしめす。
図13の上段が、前回の走査周期に対応し、
図13の下段が、今回の走査周期に対応している。
図14に、
図13の上段と下段とを重ねた図を示す。
【0065】
図14に示すように、過去判定角度Px1の照射時点から今回判定角度Px2の照射時点までの移動体1の移動距離Lxは、過去判定角度Px1、過去判定角度Px1において算出された距離(以下、過去判定距離Lpx1と称す)、今回判定角度Px2、及び今回判定角度Px2において算出された距離(以下、今回判定距離Lpx2と称す)に基づく幾何学的な関係により算出できる。
【0066】
具体的には、移動距離Lxは、次式で算出できる。
Lx={Lpx1
2+Lpx2
2−2×Lpx1×Lpx2×cos(θLx)}
1/2
・・・(1)
ここで、θLxは、過去判定角度Px1の上下方向Yの照射角度と今回判定角度Px2の上下方向Yの照射角度との角度差である。なお、角度差θLxは、上下方向Y及び左右方向Xを考慮した角度差とされてもよい。
【0067】
過去判定角度Px1と今回判定角度Px2との角度差θLxが、小さいので、ゼロに近似すると、移動距離Lxは、次式で算出できる。すなわち、移動距離Lxは、過去判定距離Lpx1と今回判定距離Lpx2との差により近似計算できる。
Lx≒Lpx1−Lpx2 ・・・(2)
【0068】
そして、次式に示すように、移動距離Lxを、今回判定角度の照射時点と過去判定角度の照射時点との時間差Txで除算することにより、移動体の速度Vxを算出できる。
Vx=Lx/Tx ・・・(3)
【0069】
そこで、速度判定部17は、距離算出部15により今回判定角度Px2において算出された距離である今回判定距離Lpx2、及び距離算出部15により過去判定角度Px1において算出された距離である過去判定距離Lpx1に基づいて、過去判定角度Px1の照射時点から今回判定角度Px2の照射時点までの移動体1の移動距離Lxを算出する。この移動距離Lxの算出には、例えば、式(2)を用いることができる。
【0070】
移動距離Lxの算出精度を高めるために、速度判定部17は、今回判定距離Lpx2及び過去判定距離Lpx1に加えて、過去判定角度Px1及び今回判定角度Px2に基づいて、移動距離Lxを算出してもよい。この場合は、例えば、式(1)を用いることができる。
【0071】
速度判定部17は、移動距離Lx、及び今回判定角度Px2の照射時点と過去判定角度Px1の照射時点との時間差Txに基づいて、移動体の速度Vxを算出する。この速度Vxの算出には、例えば、式(3)が用いられる。時間差Txは、例えば、過去判定角度Px1と今回判定角度Px2との間のレーザ光の発光回数を算出し、発光回数に発光時間間隔を算出することにより、算出される。或いは、過去判定角度Px1の照射時点から今回判定角度Px2の照射時点までが、タイマーにより計測されてもよい。
【0072】
そして、速度判定部17は、移動体の速度Vxが予め設定された判定速度以下であるか否かを判定する。
【0073】
<平均パワー制御部18>
平均パワー制御部18は、速度判定部17により移動体1が停止している、又は移動体の速度Vxが判定速度以下であると判定された場合は、それ以外の場合よりも、レーザ光の平均パワーを低下させる。平均パワーを低下させる方法は、実施の形態1と同様であるので、説明は省略する。
【0074】
<フローチャート>
図15に、速度判定部17及び平均パワー制御部18の処理を説明するフローチャートを示す。ステップS11で、速度判定部17は、上述したように、同じ照射角度において今回及び過去の2つの走査周期で検出した受光信号を比較し、移動体1が停止しているか否かを判定し、移動体1が停止していると判定した場合は、ステップS12に進み、移動体1が停止していないと判定した場合は、ステップS13に進む。
【0075】
ステップS13で、速度判定部17は、今回の走査周期において検出した受光信号と、過去の走査周期において検出した受光信号との間で、受光信号の受光強度が互いに対応する今回の走査周期の照射角度である今回判定角度Px2と過去の走査周期の照射角度である過去判定角度Px1とを判定し、受光強度が互いに対応する今回判定角度Px2と過去判定角度Px1とが有った場合は、ステップS14に進み、無かった場合は、ステップS16に進む。
【0076】
ステップS14で、速度判定部17は、上述したように、距離算出部15により今回判定角度Px2において算出された今回判定距離Lpx2、及び距離算出部15により過去判定角度Px1において算出された過去判定距離Lpx1に基づいて、過去判定角度Px1の照射時点から今回判定角度Px2の照射時点までの移動体1の移動距離Lxを算出し、移動距離Lx、及び今回判定角度Px2の照射時点と過去判定角度Px1の照射時点との時間差Txに基づいて、移動体の速度Vxを算出する。その後、ステップS15で、速度判定部17は、移動体の速度Vxが判定速度以下であるか否かを判定し、判定速度以下であった場合は、ステップS12に進み、判定速度以下でなかった場合は、ステップS16に進む。
【0077】
ステップS12で、平均パワー制御部18は、レーザ光発生部11に、通常時の平均パワーよりも低い平均パワーのレーザ光を出射させる。一方、ステップS16で、平均パワー制御部18は、レーザ光発生部11に、通常時の平均パワーのレーザ光を出射させる。
【0078】
3.実施の形態3
次に、実施の形態3に係るレーザ距離測定装置10について説明する。上記の実施の形態1、2と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係るレーザ距離測定装置10の基本的な構成は実施の形態1、2と同様であるが、複数の照射角度について受光信号を比較し、移動体の速度情報を判定する点が実施の形態1、2と異なる。
【0079】
本実施の形態でも、実施の形態1と同様に、速度判定部17は、同じ照射角度において2つの時点で検出した受光信号を比較し、移動体1が停止しているか否かを判定する。また、速度判定部17は、複数の照射角度のそれぞれにおいて、2つの時点で検出した受光信号を比較し、移動体1が停止しているか否かを判定する。
【0080】
速度判定部17は、今回の走査周期において検出した受光信号と、過去の走査周期において検出した受光信号との間で、受光信号の受光強度が互いに対応する今回の走査周期の複数の照射角度である今回判定角度Px2と過去の走査周期の複数の照射角度である過去判定角度Px1とを判定する。
【0081】
例えば、
図16及び
図17の上段に示すように、速度判定部17は、前回の走査周期において互いに異なる所定の照射角度に設定された複数の過去判定角度Px11、Px12、・・・で検出した受光信号を比較元に設定する。そして、
図16及び
図17の下段に示すように、速度判定部17は、今回の走査周期で検出した複数の照射角度の受光信号から、前回の走査周期において複数の過去判定角度Px11、Px12、・・・のそれぞれで検出した受光信号の受光強度と対応する受光強度を有する受光信号を探索し、対応する受光信号があった場合は、その受光信号の照射角度を、複数の過去判定角度Px11、Px12、・・・のそれぞれに対応する今回判定角度Px21、Px22、・・・として判定する。
【0082】
本実施の形態でも、
図16及び
図17に示すように、レーザ光の走査方向は、移動体1の前方から移動体1に近づく方向に設定されている。速度判定部17は、実施の形態1と同様に、前回の走査周期において複数の過去判定角度Px11、Px12、・・・のそれぞれで検出した受光信号と、今回の走査周期において複数の過去判定角度Px11、Px12、・・・のそれぞれと同じ照射角度で検出した受光信号とを比較し、移動体1が停止しているか否かを判定する。
図16及び
図17の例では、路面に対応する照射角度の範囲に、互いに異なる4つの過去判定角度Px11、Px12、Px13、Px14が設定されている。例えば、速度判定部17は、移動体1が停止していると判定された照射角度が、判定数以上(例えば過半数)ある場合に、移動体1が停止していると最終的に判定し、判定数以上ない場合に、移動体1が停止していないと最終的に判定する。
図16及び
図17の例では、移動体1が停止していると判定された照射角度がないため、移動体1が停止していないと最終的に判定されている。
【0083】
そして、速度判定部17は、移動体1が停止していないと判定した場合は、前回の走査周期において複数の過去判定角度Px11、Px12、・・・のそれぞれで検出した受光信号の受光強度と、今回の走査周期において複数の過去判定角度Px1のそれぞれよりも後の各照射角度で検出した受光信号の受光強度と、が対応しているか否かを、走査順に比較する。そして、速度判定部17は、受光強度が対応していると判定した場合に、その照射角度をその過去判定角度に対応する今回判定角度として判定する。対応する照射角度が複数ある場合は、対応度合いの最も高い照射角度が、今回判定角度として判定されてもよい。速度判定部17は、複数の過去判定角度Px11、Px12、・・・に対応すると判定された今回判定角度の数が、判定数以上(例えば、過半数)ある場合に、移動体の速度を算出可能であると判定し、判定数以上ない場合に、移動体の速度を算出可能でないと判定してもよい。
図16の例では、4つ全ての過去判定角度Px11〜Px14について、対応する今回判定角度Px21、Px22、Px23、Px24があると判定されており、過半数の2以上であるため、移動体の速度が算出可能であると判定される。
図17の例では、3つの過去判定角度Px11〜Px13について、対応する今回判定角度Px21、Px22、Px23があると判定されており、過半数の2以上であるため、移動体の速度が算出可能であると判定される。
【0084】
速度判定部17は、受光強度が互いに対応すると判定された過去判定角度及び今回判定角度のそれぞれについて、実施の形態2と同様の方法により、移動体の速度Vxを算出する。そして、速度判定部17は、移動体の速度Vxの平均値が、予め設定された判定速度以下であるか否かを判定する。このように、複数の照射角度について受光信号を比較し、移動体の速度情報を判定するので、判定精度を向上させることができる。
【0085】
4.実施の形態4
次に、実施の形態4に係るレーザ距離測定装置10について説明する。上記の実施の形態1、2と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係るレーザ距離測定装置10の基本的な構成は実施の形態1、2と同様であるが、照射角度の領域について受光信号を比較し、移動体の速度情報を判定する点が実施の形態1、2と異なる。
【0086】
本実施の形態でも、実施の形態1と同様に、速度判定部17は、同じ照射角度において2つの時点で検出した受光信号を比較し、移動体1が停止しているか否かを判定する。また、速度判定部17は、予め設定された照射角度の領域に含まれる複数の照射角度のそれぞれにおいて、2つの時点で検出した受光信号を比較し、移動体1が停止しているか否かを判定する。
【0087】
速度判定部17は、今回の走査周期において検出した受光信号と、過去の走査周期において検出した受光信号との間で、受光信号の受光強度が互いに対応する今回の走査周期の照射角度の領域である今回判定領域Pr2と過去の走査周期の照射角度の領域である過去判定領域Pr1とを判定する。
【0088】
例えば、
図18の上段に示すように、速度判定部17は、前回の走査周期において予め設定された過去判定領域Pr1に含まれる各照射角度で検出した受光信号を比較元に設定する。そして、
図18の下段に示すように、速度判定部17は、今回の走査周期で検出した複数の照射角度の受光信号から、前回の走査周期において過去判定領域Pr1に含まれる複数の照射角度のそれぞれで検出した受光信号の受光強度と対応する受光強度を有する照射角度の領域を探索し、対応する照射角度の領域があった場合は、その照射角度の領域を、今回判定領域Pr2として判定する。
【0089】
本実施の形態でも、
図18に示すように、レーザ光の走査方向は、移動体1の前方から移動体1に近づく方向に設定されている。速度判定部17は、実施の形態1と同様に、前回の走査周期において過去判定領域Pr1内の各照射角度で検出した受光信号と、今回の走査周期において過去判定領域Pr1と同じ領域内の各照射角度で検出した受光信号とを比較し、移動体1が停止しているか否かを判定する。例えば、速度判定部17は、移動体1が停止していると判定された領域内の照射角度が、判定数以上(例えば過半数)ある場合に、移動体1が停止していると最終的に判定し、判定数以上ない場合に、移動体1が停止していないと最終的に判定する。
図18の例では、同じ領域内において、移動体1が停止していると判定された照射角度がないため、移動体1が停止していないと最終的に判定されている。
【0090】
そして、速度判定部17は、移動体1が停止していないと判定した場合は、前回の走査周期において過去判定領域Pr1内の各照射角度で検出した受光信号の受光強度及び領域内の配置と、受光強度及び領域内の配置が対応する今回の走査周期の照射角度の領域を判定する。そして、速度判定部17は、受光強度及び領域内の配置が対応する領域があると判定した場合に、その照射角度の領域を今回判定領域Pr2として判定する。例えば、速度判定部17は、今回の走査周期の照射角度の範囲において、過去判定領域Pr1と同等の範囲の領域を少しずつずらしながら設定し、設定した領域内の各照射角度の受光強度について、過去判定領域Pr1内の配置が対応する各照射角度の受光強度と対応するか判定し、受光強度が対応すると判定された照射角度の数が、判定数以上(例えば、過半数)ある場合に、その領域を今回判定領域Pr2として判定する。対応する領域が複数ある場合は、対応度合いの最も高い領域が、今回判定領域Pr2として判定されてもよい。
【0091】
図18の例では、今回の走査周期の領域において、図に示す領域内の各照射角度の受光強度が、過去判定領域Pr1内の対応する各照射角度の受光強度と対応すると判定され、今回判定領域Pr2と判定されている。
【0092】
速度判定部17は、受光強度が互いに対応すると判定された過去判定領域Pr1及び今回判定領域Pr2における、領域内の配置が互いに対応する各照射角度について、実施の形態2と同様の方法により、移動体の速度Vxを算出する。そして、速度判定部17は、移動体の速度Vxの平均値が、予め設定された判定速度以下であるか否かを判定する。或いは、領域内の代表の照射角度について、移動体の速度Vxが算出されてもよい。このように、領域内の各照射角度の配置を考慮して領域内の各受光信号を比較し、移動体の速度情報を判定するので、判定精度を向上させることができる。
【0093】
5.実施の形態5
次に、実施の形態5に係るレーザ距離測定装置10について説明する。上記の実施の形態1、2と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係るレーザ距離測定装置10の基本的な構成は実施の形態1、2と同様であるが、レーザ光発生部が2つ設けられており、第1のレーザ光発生部による受光信号と、第2のレーザ光発生部による受光信号とが比較される点が実施の形態1、2と異なる。
【0094】
例えば、角度差が設けられた2つのレーザ光源のレーザ光を1つのMEMSミラーに反射させてもよいし、2つのレーザ光源のそれぞれに、1つずつMEMSミラーが設けられてもよい。
【0095】
本実施の形態では、
図19及び
図20に示すように、第1のレーザ光発生部のレーザ光の照射範囲と、第2のレーザ光発生部のレーザ光の照射範囲とが、重複している。
図19及び
図20に示す例では、左右方向Xの一部分が重複している。また、第1のレーザ光発生部のレーザ光による2次元走査と、第2のレーザ光発生部のレーザ光による2次元走査とが、時間差を設けて交互に行われる。
【0096】
速度判定部17は、第1のレーザ光発生部のレーザ光の照射角度の範囲と第2のレーザ光発生部のレーザ光の照射角度の範囲が重複している領域(以下、照射角度の重複領域と称す)において、第1のレーザ光発生部による受光信号と、第2のレーザ光発生部による受光信号とを比較して、移動体の速度情報を判定する。
【0097】
速度判定部17は、照射角度の重複領域内の同じ照射角度において、第1のレーザ光発生部の走査周期で検出した受光信号と、第2のレーザ光発生部の走査周期で検出した受光信号とを比較し、移動体1が停止しているか否かを判定する。
【0098】
速度判定部17は、照射角度の重複領域内の同じ照射角度において、第1のレーザ光発生部の走査周期において検出した受光信号と、第2のレーザ光発生部の走査周期において検出した受光信号との間で、受光信号の受光強度が互いに対応する第1のレーザ光発生部の走査周期の照射角度である第1判定角度Px1と第2のレーザ光発生部の走査周期の照射角度である第2判定角度Px2とを判定する。
【0099】
例えば、
図19に示すように、速度判定部17は、前回の第1のレーザ光発生部の走査周期において、照射角度の重複領域内の所定の照射角度に設定された第1判定角度Px1で検出した受光信号を比較元に設定する。そして、
図20に示すように、速度判定部17は、今回の第2のレーザ光発生部の走査周期における照射角度の重複領域内で検出した複数の照射角度の受光信号から、前回の走査周期において第1判定角度Px1で検出した受光信号の受光強度と対応する受光強度を有する受光信号を探索し、対応する受光信号があった場合は、その受光信号の照射角度を第2判定角度Px2として判定する。対応する照射角度が複数ある場合は、対応度合いの最も高い照射角度が、第2判定角度Px2として判定されてもよい。なお、速度判定部17は、実施の形態3のように、複数の照射角度について受光信号を比較してもよく、実施の形態4のように、照射角度の領域について受光信号を比較してもよい。
【0100】
速度判定部17は、受光強度が互いに対応すると判定された第1判定角度Px1及び第2判定角度Px2について、実施の形態2と同様の方法により、移動体の速度Vxを算出する。そして、速度判定部17は、移動体の速度Vxが、予め設定された判定速度以下であるか否かを判定する。このように、2つのレーザ光発生部が設けられている場合において、照射範囲の重複領域を利用して、速度情報を判定することができる。
【0101】
6.実施の形態6
次に、実施の形態6に係るレーザ距離測定装置10について説明する。上記の実施の形態1、2と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係るレーザ距離測定装置10の基本的な構成は実施の形態1と同様であるが、速度判定部17がレーザ光により検出された物体の速度情報に基づいて、移動体の速度情報を判定する点が実施の形態1と異なる。
【0102】
本実施の形態では、速度判定部17は、距離算出部15により算出された検出物体の距離に基づいて物体(本例では、路面以外の静止物体)を検出し、2つの時点で検出した受光信号に基づいて算出された物体の距離の変化に基づいて、移動体の速度情報を判定する。
【0103】
速度判定部17は、各照射角度及び各照射角度において算出された検出物体の距離に基づいて、検出物体の形状及び相対速度を認識し、検出物体の形状及び相対速度に基づいて、路面及び路面以外の静止物体を認識する。この静止物体の認識には、公知の技術、例えば、ニューラルネットワークを用いたAI技術が用いられる。
【0104】
図21を用いて説明する。
図21の上段に示すように、前回の走査周期において、移動体1の前方にポールにより支えられた道路標識が存在し、レーザ光が照射された道路標識の各部Px101、Px102、Px103、Px104、Px105の距離が算出される。道路標識の各部の距離は、同等の距離になり、その同等の距離が算出された照射角度の領域から棒状の形状であるとわかるため、認識処理により、路面以外の静止物体と認識され、その静止物体の各部の距離も算出されている。
【0105】
そして、
図21の下段に示すように、今回の走査周期においても、道路標識が路面以外の静止物体として認識され、その静止物体の各部Px201、Px202、Px203、Px204、Px205、Px206、Px207の距離も算出される。そして、速度判定部17は、前回の走査周期において検出した静止物体の距離と、今回の走査周期において検出した静止物体の距離との差を、今回の走査周期と前回の走査周期との時間差で除算して、移動体の速度を算出し、移動体1が停止しているか、移動体の速度が判定速度以下であるかを判定する。なお、路面以外の静止物体が複数検出される場合は、複数の静止物体について移動体の速度が算出され、移動体の速度の平均値が算出されてもよい。そして、実施の形態1、2と同様に、平均パワー制御部18は、移動体1が停止している、又は移動体の速度が判定速度以下であると判定された場合は、それ以外の場合よりも、レーザ光の平均パワーを低下させる。
【0106】
〔その他の実施の形態〕
最後に、本願のその他の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する各実施の形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施の形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0107】
(1)上記の各実施の形態においては、走査機構12は、MEMSミラー121を備えている場合を例に説明した。しかし、走査機構12は、MEMSミラー121以外の走査機構を備えてもよい。例えば、走査機構12は、可動ミラーとして回転ポリゴンミラーを備え、上下方向の照射角度範囲が上側又は下側に移動するように、回転ポリゴンミラーの回転軸を傾ける機構等を備えていてもよい。
【0108】
(2)上記の各実施の形態においては、微小ミラーは、ローレンツ力により可動される場合を例に説明した。しかし、微小ミラーの可動機構は、ローレンツ力のような電磁方式に限られるものではなく、圧電素子を利用した圧電方式、又はミラーと電極間の電位差による静電力を利用した静電方式とされてもよい。
【0109】
(3)上記の各実施の形態においては、MEMSミラー121を用い、
図5に示すような走査を行って2次元走査を行う場合を例に説明した。しかし、MEMSミラー121を用い、リサージュ走査又はラスタ走査を行って、2次元走査を行ってもよく、球面ミラーを用いて、歳差走査を行ってもよい。
【0110】
(4)上記の各実施の形態においては、2つの回転軸回りにミラーを回転させるMEMSミラー121を用いて2次元走査させる場合を例に説明した。しかし、1つの回転軸回りにミラーを回転させるMEMSミラーを2つ用いて、2次元走査させるように構成されてもよい。
【0111】
(5)上記の各実施の形態においては、光検出器131は、MEMSミラー121及び集光ミラー133に反射した反射光L2を受光する場合を例に説明した。しかし、光検出器131は、物体に反射した反射光L2を直接受光するように構成されてもよい。
【0112】
(6)上記の各実施の形態においては、インコヒーレント検波方式を用いてパルス光を送受するタイプであったが、コヒーレント検波方式を用いてパルス光を送受するタイプであってもよい。また、正弦波で強度変調されたレーザ光を送受するタイプであってもよく、インコヒーレントFMCW(Frequency Modulated Continuous Waves)方式であっても、コヒーレントFMCW方式であってもよい。
【0113】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【課題】外部装置から伝達される外部環境情報に依存することなく、自律的に移動体が停止しているかを判定し、レーザ光の平均パワーを低下させることができるレーザ距離測定装置を提供する。
【解決手段】同じ照射角度において2つの時点で検出した受光信号を比較し、移動体が停止しているか否かを判定し、移動体が停止していると判定した場合は、停止していないと判定した場合よりも、出射されるレーザ光の単位面積及び単位時間当たりの平均パワーを低下させるレーザ距離測定装置(10)。