(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804670
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】光ファイバによって拡張されたPoEネットワーク
(51)【国際特許分類】
H04L 12/40 20060101AFI20201214BHJP
H04L 29/00 20060101ALI20201214BHJP
H04L 12/10 20060101ALI20201214BHJP
H04B 10/27 20130101ALI20201214BHJP
【FI】
H04L12/40 Z
H04L13/00 T
H04L12/10
H04B10/27
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-570876(P2019-570876)
(86)(22)【出願日】2018年6月12日
(65)【公表番号】特表2020-524465(P2020-524465A)
(43)【公表日】2020年8月13日
(86)【国際出願番号】EP2018065497
(87)【国際公開番号】WO2018234101
(87)【国際公開日】20181227
【審査請求日】2019年12月20日
(31)【優先権主張番号】17177343.5
(32)【優先日】2017年6月22日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】SIGNIFY HOLDING B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】ゾンダグ エドゥアルド ゲルハルド
(72)【発明者】
【氏名】ラデルマシェル ハラルド ヨセフ ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツ マッティアス
(72)【発明者】
【氏名】ボエケ ウルリヒ
【審査官】
野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0078740(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0258742(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/107015(WO,A1)
【文献】
国際公開第2016/116690(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/40
H04B 10/27
H04L 12/10
H04L 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー・オーバー・イーサネット(登録商標)システムにおいて使用するための受電デバイスであり、
電線を介する伝送を受け取る第1ポートであって、前記第1ポートを介して受け取られる前記伝送が、電力及び/又はデータ伝送である第1ポートと、
光信号を受信する第2ポートと、
光信号で受信されるコマンドを処理する回路とを有する受電デバイスであって、
前記受電デバイスが、低電力状態で動作し、前記光信号で受信される前記コマンドが、ウェイクアップ信号であり、前記回路が、前記ウェイクアップ信号の受信時に、前記受電デバイスの電力ネゴシエーションを開始するよう、前記受電デバイスの電力状態を変更し、電力要求を送信するよう構成される受電デバイス。
【請求項2】
前記ウェイクアップ信号の受信時及び電力ネゴシエーション中に前記受電デバイスに電力を供給するバッテリを更に有する請求項1に記載の受電デバイス。
【請求項3】
パワー・オーバー・イーサネット(登録商標)システムのための電力供給デバイスを含む、光及び電気信号伝送をサポートするネットワークシステムであり、前記電力供給デバイスが、
前記電線を介する伝送を受け取る第1ポートであって、前記第1ポートを介して受け取られる前記伝送が、電力及び/又はデータ伝送である第1ポートと、
前記電線を介する伝送を送る第2ポートと、
光信号を受信する第3ポートと、
光信号を送信する第4ポートとを有するネットワークシステムであって、
前記第3ポートと前記第4ポートとが互いに直接接続され、前記ネットワークシステムが、請求項1に記載の受電デバイスを更に含み、前記電力供給デバイスが、前記光信号を前記受電デバイスに中継するよう適合されるネットワークシステム。
【請求項4】
前記電力供給デバイスが、前記第3ポートを介して受信される光信号を分割し、前記第4ポート及び第5ポートを介して前記信号を送信する回路を更に有する請求項3に記載のネットワークシステム。
【請求項5】
前記電力供給デバイスが、光信号を受信する第5ポートと、前記第3ポート及び前記第5ポートを介して受信される光信号を結合し、結合された前記信号を前記第4ポートを介して送信する回路とを更に有する請求項3に記載のネットワークシステム。
【請求項6】
前記回路が、前記電線を介する又は光リンクを介するデータ通信を介して接続される遠隔デバイスによって、プログラム、制御又はモニタされる請求項3又は5に記載のネットワークシステム。
【請求項7】
前記受電デバイスが、低電力モードにおいて前記光信号を介して制御情報を受信するよう適合され、前記制御情報が、ウェイクアップ信号を含み、前記受電デバイスが、前記ウェイクアップ信号を処理し、前記電力供給デバイスとの電力ネゴシエーションを開始する回路を有する請求項3に記載のネットワークシステム。
【請求項8】
電力ネゴシエーション中に前記受電デバイスに電力を供給するローカルバッテリを更に有する請求項7に記載のネットワークシステム。
【請求項9】
前記システムが、前記受電デバイスを含む複数の受電デバイスと、前記電力供給デバイスを含む複数の電力供給デバイスとを有し、前記複数の受電デバイスと前記複数の電力供給デバイスとが、第1ネットワークトポロジに従った電気接続を介して接続されると共に、第2ネットワークトポロジに従った光接続を介して接続される請求項3に記載のネットワークシステム。
【請求項10】
前記システムが、前記受電デバイスを含む複数の受電デバイスを有し、前記制御情報が、前記光接続を介して前記複数の受電デバイスに同時に供給される請求項3に記載のネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー・オーバー・イーサネット(登録商標)(登録商標)(PoE)システム、データ及び制御情報の伝送のためにそこで使用されるケーブル及びデバイスに関する。より詳細には、本発明は、光通信を可能にするPoEシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
PoE回線に沿って又は別の方法で様々な電源オプションを入力、伝送及び出力し得るPoEシステムは、とりわけ照明ネットワークであるが、これに限定されない多くのアプリケーションネットワークのために使用される。PoEは、IEEE802.3af/at規格に記述されており、現在、IEEE Task Force P802.3btにおいて4ペア電源に拡張されている。PoEは、制御及び通信用途のためのデータ回線と一緒に、給電機器(PSE)から受電デバイス(PD)へ40V乃至48Vの電圧レベルを供給することを目的としている。PSEデバイスは、PoEスイッチとも呼ばれる。
【0003】
PoE照明システムにおいては、PDは、光源、ユーザインターフェースデバイス及びセンサであり得る。PSEは、一般に、IEC/TR 60083規格に従うような主電源から給電される。
【0004】
従来のPoEシステムは、ネットワーク及びそのエンドポイントを通じて、従って、PSE及びPDの間で、データ及び電力を伝送する。PoEシステムは、データしか伝送せず、電力を伝送しないときには、低いエネルギ効率を有する。
【0005】
公共電力(utility electricity)が利用可能ではない場合の非常用電源に基づくPoEシステムの非常時動作は、建物における分散PoE PSEが複雑な非常用電力インフラを必要とすることから、高価である。
【0006】
更に、電線を介した及び複数の中継デバイスを通じたデータ信号の送信は、状況によっては、遅すぎ、エラーが発生しやすくなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、効率的且つロバストな信号伝送を供給する光及び電気信号伝送並びに電力供給をサポートする、受電デバイス、電力供給デバイス、ケーブルコネクタ及びネットワークシステムを提供することである。
【0008】
US 2015/078740 A1は、電力挿入デバイスと、ハイブリッドファイバ/電力ケーブルと、パワー・オーバー・イーサネット(登録商標)(PoE)準拠接続を介してエンドデバイスに接続するためのインターフェースを供給すると共に、ハイブリッドファイバ/電力ケーブル及びPoE準拠接続を介して電力挿入デバイスからエンドデバイスへ送信されるデータのために光から電気への媒体変換を供給するよう構成される接続インターフェースデバイスとを有する光ファイバをベースにした通信ネットワークを開示している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的は、独立請求項による、受電デバイス、電力供給デバイス、ケーブルコネクタ及びネットワークシステムによって解決される。
【0010】
PoEネットワークインフラを介した光通信を可能にするよう、イーサネット(登録商標)又はPoEケーブル及び各々のPSE/PD回路に沿って同一場所に設置される光ファイバを設けることは、場合により1つ以上の中間PSEに給電することなしに(直接光学経路)、ネットワーク内の効率的な通信を可能にする。光ファイバを通じた通信及び同期は、PoE通信から独立していてもよく、このことは、タイミング動作の改善及び追加の通信経路に加えて、エネルギ、材料、設置コストの節約を提供する。
【0011】
本発明の第1態様においては、パワー・オーバー・イーサネット(登録商標)システムのための受電デバイスであって、 電線を介する伝送を受け取る第1ポートと、光信号を受信する第2ポートと、光信号で受信されるコマンドを処理する回路とを有する受電デバイスが提供される。前記第1ポートを介して受け取られる前記伝送は、電力及び/又はデータ伝送であり得る。前記第1ポート及び前記第2ポートは、別々のハードウェアポート、例えば、別々の雌コネクタとして供給され得る。このような設計は、前記ネットワークにおいて利用可能なファイバによって拡張されたケーブルがない場合に、前記受電デバイスが従来の信号方式で使用されることができるという利点を供給する。他の例においては、単一の雌コネクタが、電力及び/又はデータ伝送のための幾つかのピンと、前記光信号のための少なくとも1つの更なるピンとが存在し得る両方の電気伝送を受け取り得る。
【0012】
実施形態においては、前記受電デバイスは、低電力状態で動作し、前記光信号で受信される前記コマンドは、ウェイクアップ信号であり、前記回路は、前記ウェイクアップ信号の受信時に、前記受電デバイスの電力ネゴシエーションを開始するよう、前記受電デバイスの電力状態を変更し、電力要求を送信するよう構成される。前記低電力状態においては、前記受電デバイスは、前記電線を介する電気信号方式のための通信インターフェースを給電されたままにする必要はない。それは、光信号を介してトリガされるときにだけ、各々の回路をアクティブにし得る。従って、前記受電デバイスの低電力モード中のエネルギ節約が改善され得る。
【0013】
実施形態においては、前記受電デバイスは、前記ウェイクアップ信号の受信時及び電力ネゴシエーション中に前記受電デバイスに電力を供給するバッテリを更に有する。前記光ファイバを介してトリガ信号を受信した後に即座にフィードバックを供給することができるように、前記受電デバイスは、供給PSE(serving PSE)とのネゴシエーションが終わり、前記受電デバイスが前記電線を介して給電されるまで、バッテリ、好ましくは、再充電可能バッテリを介して給電され得る。これは、起動反応の改善を提供する。例えば、前記受電デバイスが照明デバイスであり、前記トリガが照明をオンに切り替えることを示す場合には、前記照明デバイスは、電力ネゴシエーションがまだ終わっていなくても、即座にオンに切り替わり得る。
【0014】
本発明の他の態様においては、パワー・オーバー・イーサネット(登録商標)システムのための電力供給デバイスであり、前記電線を介する伝送を受け取る第1ポートと、前記電線を介する伝送を送る第2ポートと、光信号を受信する第3ポートと、光信号を送信する第4ポートとを有する電力供給デバイスであって、前記第3ポートと前記第4ポートとが互いに直接接続される電力供給デバイスが提供される。前記第3ポートと前記第4ポートとの間に直接光学経路を設けることによって、前記電力供給デバイスは、給電される回路を全く必要とせずに光信号を中継し得る。従って、前記電力供給デバイスの電力消費は削減され得る。
【0015】
実施形態においては、前記電力供給デバイスは、前記第1光ポートを介して受信される光信号を分割し、第2及び第3光ポートを介して前記信号を送信する回路を更に有する。そのようにして、光信号は、複数のエンドノードに、例えばブロードキャスト方式で、効率的に供給されることができる。前記回路は、前記電線を介する又は前記光リンクを介するデータ通信を介して接続される遠隔デバイスによって、プログラム、制御又はモニタされ得る。
【0016】
実施形態においては、前記電力供給デバイスは、光信号を受信する第3光ポートと、前記第1ポート及び前記第3ポートを介して受信される光信号を結合し、結合された前記信号を前記第2光ポートを介して送信する回路とを更に有する。ち好ましくは、前記第1ポートを介して光信号が受信され、前記信号は第1周波数又は第1パターンを有する。前記第2ポートを介して受信される光信号は、第2周波数又は第2パターンを有してもよく、前記第1及び第2周波数/パターンは、同じであってもよく、又は異なっていてもよい。両方の信号が、結合され、第3周波数又は第3パターンで前記第3ポートを介して同時に出力されることができ、前記第3周波数又は第3パターンは、前記第1及び/若しくは第2周波数若しくはパターンであってもよく、又はそれらの如何なる組み合わせであってもよい。前記回路は、前記電線を介する又は前記光リンクを介するデータ通信を介して接続される遠隔デバイスによって、プログラム、制御又はモニタされ得る。
【0017】
本発明の他の態様においては、光及び電気信号伝送をサポートするネットワークシステムであり、本発明の前述の態様による電力供給デバイス及び受電デバイスを有するネットワークシステムであって、前記電力供給デバイスが、前記受電デバイスへ光信号を中継するよう適合されるネットワークシステムが提供される。
【0018】
実施形態においては、前記システムは、前記受電デバイスを含む複数の受電デバイスと、前記電力供給デバイスを含む複数の電力供給デバイスとを有し、前記複数の受電デバイスと前記複数の電力供給デバイスとが、第1ネットワークトポロジに従った電気接続を介して接続されると共に、第2ネットワークトポロジに従った光接続を介して接続される。前記第2ネットワークトポロジは、好ましくは、前記第1ネットワークトポロジとは異なっていてもよい。前記ネットワーク全体にわたって冗長経路を設けることによって、前記ネットワークのロバスト性が改善され得る。例えば、ツリーのような構造における単一の故障ノードは、全ての従属ノードを遮断し得る。それでも、前記光通信のための第2ネットワークトポロジを使用することによって、前記従属ノードに到達され得る。
【0019】
実施形態においては、前記システムは、前記受電デバイスを含む複数の受電デバイスを有し、前記制御情報は、前記光ファイバを介して前記複数の受電デバイスに同時に供給される。光通信は、電気信号通信よりも損失が少ないことから、光信号は、より長い距離にわたって供給され得る。更に、ファイバは電磁干渉の影響を受けない。従って、光信号は、広いエリアに広がる複数の受電デバイス、例えば、同時にオン/オフに切り替えられるべきある建物内の照明デバイスへのより良好な信号伝送を供給し得る。
【0020】
本発明の他の態様においては、電力及びデータ通信のための電線と、データ通信のための光ファイバとを含むケーブルのためのケーブルコネクタであり、前記電線に接続可能なピンの第1セットと、前記光ファイバに接続される第2ピンとを有するケーブルコネクタであって、前記第2ピンが透明な材料で作成されるケーブルコネクタが提供される。
【0021】
実施形態においては、前記ピンの第1セット及び前記第2ピンは、単一の透明プラグに含まれる。
【0022】
実施形態においては、前記ピンの第1セットは、RJ45形式に準拠する第1プラグに含まれ、前記第2ピンは、第2プラグに含まれる。
【0023】
請求項1の受電デバイス、請求項4の電力供給デバイス、請求項8のネットワークシステム、及び請求項13のケーブルコネクタは、とりわけ、従属請求項において規定されているような、同様の及び/又は同じ好ましい実施形態を有することは理解されるだろう。
【0024】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態と、各々の独立請求項の如何なる組み合わせでもあり得ることは理解されるだろう。
【0025】
下記の実施形態を参照して、本発明のこれら及び他の態様を説明し、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態による照明システムのアプリケーション構成要素を例示的且つ概略的に示す。
【
図2】本発明の実施形態によるファイバによって拡張されたケーブルコネクタを例示的且つ概略的に示す。
【
図3】本発明の実施形態によるネットワークシステムを例示的且つ概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の実施形態による照明システムのアプリケーション構成要素(application component)を例示的且つ概略的に示している。本願明細書においては以下で給電機器PSEとも呼ばれる電力供給デバイス2は、一般に、ケーブル29を介して主電源から給電される。ケーブル6を介してそれに接続されるのは、光源31乃至32などの複数の受電デバイスPD31乃至34、起動及び調光のための制御パネルなどであるが、これに限定されないユーザインターフェースデバイス33、並びに受動型赤外線センサなどであるが、これに限定されないセンサ34である。従来のPoEシステムは、ケーブル6を通じて各々のエンドポイントにデータ及び電力を伝送する。従って、それらは電気信号によるデータの伝送に限定されている。本発明のこの実施形態においては、ケーブルは、制御、同期及びデータ通信のために光信号伝送を活用するために、イーサネット(登録商標)ケーブルに沿って付加的な光ファイバを具備する。
【0028】
図2は、データ通信のための光の伝送をサポートする少なくとも1つの光ファイバで拡張されたイーサネット(登録商標)ケーブルのためのケーブルコネクタを例示的且つ概略的に示している。光ファイバを介した光通信をサポートするネットワークにおいて使用されるPSE及び/又はPDにおける全て又は一部のポートは、PSEにおける高度なスイッチング動作を容易にし得る回路を備えている。
【0029】
図2は、2つの拡張ケーブル末端を示している。光ファイバは、ケーブル外被40内でイーサネット(登録商標)ワイヤと位置合わせされていると仮定される。透明なRJ45プラグ41が、光信号を透明なPSE又はPDポートに伝達するために使用されます。この実施形態においては、プラグの透明なハウジングが光リンクとして使用される。加えて、イーサネット(登録商標)コネクタ41の隣の別の光コネクタ42が使用されることができ、イーサネット(登録商標)コネクタ40及びポートの設計を変更されないままにする。しかしながら、別個の光コネクタ42が必要とされるだろう。一般に、ケーブル内に単一のファイバがある場合には、
図2において示されている2つのコネクタタイプのうちの1つしか存在しないだろう。
【0030】
このような光学的に拡張されたケーブルに接続されるPSEは、光データを処理し、且つ/又はそのポートにおいてこのようなデータを中継する回路を含む。このやり方においては、光は、PSEによる中間処理もなしに、複数のリンクを介して送信元から送信先へネットワークを通って進むことができる。ネットワーク上の様々な送信先に光をマルチキャストすること、又はネットワーク内の様々な送信元からの光を1つの送信先に集約することが可能である。
【0031】
光は、光ファイバを通る方向と、サポートするデバイス、例えば、中継するPSE及び/又はPDを通る方向との両方において進み得る。様々な波長又は信号レベルの光が同時に使用され得る。光は、ケーブル内の単一のファイバ又は複数のファイバを通じて進み得る。
【0032】
図3は、本発明の実施形態によるネットワークシステム100を例示的且つ概略的に示しており、s1乃至s7は、PSEデバイス(スイッチ)であり、d1乃至d4は、PDであり、eiは、接続のイーサネット(登録商標)/PoE部分であり、fjは、接続の光学的部分であり、
図3におけるe及びiのインデックスは、PSE間の接続が、それらが接続するデバイスの各々のインデックス番号でラベル表示される、例えば、s3とs5との間の概念はe35/e53又はf35/f53とラベル表示されるように選ばれる。PSEとPDとの間の接続は、PSE側においては、間に0が入れられる、接続されるデバイスのインデックスでラベル表示され、PD側においては、単にPDのインデックスでラベル表示され、例えば、PSE s1とPD d1との間の接続は、PSE側においては、e/f101とラベル表示され、PD側においては、e/f1トラベル表示される。
【0033】
PSE s1乃至s6には付加的な光回路が設けられ、s7は従来のPoEスイッチである。PD d1乃至3には付加的な光回路が設けられ、d4は従来のPoE PDである。
【0034】
PSE s2は、本発明の実施形態による電力供給デバイスの第1の例示的な実施形態を示している。PSE s2は、PSE内の更なる回路なしに互いに直接光学的に接続される2つのポートf21及びf24を有する。一般に、複数のポートが(ペアで)内部で互いに接続され得る。他のポートは、光学的に接続されずに、従来のPoE機能を供給するだろう。これは、中間PSE s2に給電せずに、ネットワークを通して光データを送ることを可能にする。データはまた、高いパフォーマンスを伴って進み、PoE回路を通して達成可能な精度よりも高い精度でのリアルタイムアプリケーションを可能にする。
【0035】
PSE s3は、本発明の実施形態による電力供給デバイスの第1の例示的な実施形態を示している。PSE s3は、互いに光学的に接続される1つ以上のポート(f31、f35、f36)を有する。PSE s3は、光信号の結合又は分割(光増幅、スペクトルマッピングなど)を供給するために光学的及び/又は電気的手段(図示せず)を更に有する。スイッチング手段(図示せず)が、光信号が或るポートから別のポートへ配信されることを許可又は防止し得る。PSE s3は、随意に、光信号の高度な使用、処理又はスケジューリングを制御する内部コントローラ及び/又はソフトウェアプログラミング手段を更に含み得る。PSE s3は、とりわけコンフィギュレーションプロシージャ後に、給電されずに、高いパフォーマンスの特性を伴って光データをネットワークを通して送ることも可能にし得る。
【0036】
PSE s3の光学的構成要素は、PoEリンク又は光リンクを通して、例えばネットワーク内の集中制御ユニット又は複数の分散制御ユニットを介して、交互に、遠隔でプログラム、制御又はモニタされ得る。
【0037】
PD d2は、本発明の実施形態による受電デバイスの例示的な実施形態である。PD d2は、コネクタf2を介して光信号を受信して、PDをアクティブにするなどの或る特定の動作をトリガすることができる。これは、PoE回路がウェイクアップ信号をリッスンする必要がないことから、スタンバイ中のPDの低電力消費を可能にする、且つ/又は機能がPoE回路から独立して動作されることを可能にする。
【0038】
PSE及びPDにおける付加的なファイバ接続及び各々の通信回路は、同じ効果を達成するためにPSE及び/又はPDがアクティブにされる必要があるソリューションと比較してエネルギを節約し得るが、PoEを超える機能も可能にし得る。
【0039】
図3において示されているようなネットワークシステムは、正確なタイミングを管理するために、及び/又はPoE使用に依存しない動作モードの設定などの特別な動作を実行するために、1つ以上の接続されるPD d1乃至d3へのPD/PSEを介する光通信を活用し得る。ネットワーク内の特定のPD/PSEデバイスは、何らかの制御回路を有すると考えられる。このPD/PSEデバイスは、PD d1乃至d3及びPSE s1乃至s6のうちのいずれかであってもよく、本願明細書においては以下で制御PD/PSEと呼ばれる。可能なユースケースは以下の通りである。
− 制御PD/PSEは、接続されたPD/PSEを光信号によってスタンバイからウェイクアップする。その結果、PD/PSEは、スタンバイ中、それらのPoE通信ポート及び関連回路の電源を切ることができることから、より低い電力のモードで動作することができる。PD/PSEは、光信号を受信すると、電力ネゴシエーションを開始し得る。電力ネゴシエーション中、PD/PSEは、迅速な起動動作を供給し、即時応答を可能にするよう、ローカルバッテリによって給電されてもよい。
− 制御PD/PSEは、接続されたPDにおけるメンテナンス又は自己診断モードをアクティブにすることもできる。照明アプリケーションをサポートするネットワークシステムにおいては、緊急性又は特別な状態の概念が光信号プロトコルによって実装され得る。このようなプロトコルは、PoE通信とは無関係に、新しい検出期間、ソフトウェアの更新、又はメンテナンスの期限に近づいていることを示し得る。このようなプロトコルは、増加又は減少する光パルス、光レベル又は色シフトを使し得る。例えば、パルス列の周波数が連続光が放出されているポイントまで増加するとき、期限が過ぎたことが示され得る。このような光パターンはまた、PDがオフ又はスタンバイ中である場合でも、直接、ユーザ又はオペレータの目に見え得る。制御PD/PSEは、ソフトウェアクラッシュ又は未知の状態によりPoE回路がこれ以上動作しない場合でも、接続されたPDを光信号によってリセットすることすらできる。光回路は、イーサネット(登録商標)通信とは独立して動作し、手動操作をエミュレートし得る。特別なケースとして、PoEをベースにしたネットワークシステムにおいてリアルタイム試験状態を引き起こすことによって、検証セットアップが作成され得る。光学経路は、被試験システムにおけるイーサネット(登録商標)動作又は他の処理には影響を及ぼさずに、PD又はPDのグループに対するエラー又は環境状態をシミュレートし得る。PDがこのような状態自体(例えば、ファイバを通じての試験光の検出)に対処することができる、又はPDの環境をシミュレートするために付加的なPD試験デバイスが光学的に制御される。
【0040】
従って、自律光通信は、更なるセキュリティ及び/又はメンテナンス機能を供給することもでき、従って、ネットワークのロバスト性を向上させることもできる。
− 制御PD/PSEは、全ての接続されたPD d1乃至d3に向けてリアルタイムの制御コマンド又は通知を発する。直接光学経路は、正確に同期されたエンドポイント動作を保証するだろう。接続されたPD d1乃至d3は、同じ又は異なる機能を持ち得る。PD d1乃至d3は、光ファイバを介して受信される対応するコマンドを受信すると、分散センサ読み取りセッションを開始/停止する異なる位置のセンサであり得る。ネットワークシステムが照明アプリケーションをサポートする場合には、多くの照明ポイントを備える大きな領域又は大きな建物にわたっての正確な分散照明動作が実現され得る。PDとして接続された全ての光源が、ユーザによって知覚されると同時に、オンに切り替えられてもよく、オフに切り替えられてもよく、又は(調光レベル、シーンカラーを)変更されてもよい。この目的のために、長距離にわたって動作する、又は多くのPSEリンクを介して到達される必要があるPSEは、直接光学経路を介して光コントローラの近くのPSEに接続される。反応時間において顕著な遅延をもたらさない場合、ローカル(より近い)PSE接続は依然としてPoE経路を通じて動作され得る。PDは必ずしも拡張される必要はなく、通常のPoEリンクを通じて動作し得る。
− 制御PD/PSEは、接続されたPD d1乃至d3からのリアルタイム情報を記録する。接続されたPDから制御PDへの多くのPSEリンクを介する直接光学経路は、正確なタイムスタンプ付きの分散センシング又はイベント検出を可能にする。このようなイベントに属する付加的なデータは、PoE経路を介して送られ、ID又は送信元アドレスによってイベント又はログにバインドされることができる。
− 制御PD/PSEは、光タイミング信号によって接続されたPDにおけるローカルクロックのずれを防止する。例として、センサは、ローカルバッテリを有し、数分に1回、前記センサ自体をオンにして、(電線を通じて)タイムスタンプが付加された測定値を報告する。タイミング信号は、単に、光強度(例えば、午前4時から午前6時までの間は10%、午前6時から午前8時までの間は20%)又はビットパターンであり得る。(センサのバッテリはPoEリンクによって充電され得る。)
【0041】
図3において示されている例示的なネットワークシステムにおいては、さもなければ循環経路は可能にならないだろう冗長経路がネットワークにおいて作成され得る。これは、PSE/PD間の通信が、ネットワークに一般的であるよりもロバストであるべきである状況において、有用である。通常のケーブル及び/又は拡張ケーブルにおけるPoEリンクとは別に拡張ケーブルにおける光リンクを使用することによって、(ネットワークの一部のための)別のツリートポロジネットワークにおいてハイブリッドトポロジが作成され得る。拡張PSEは、一部のポートが、光論理しかサポートしない、場合によってはPoE電力伝送部分しかサポートしないように構成されることができ、それによって、ネットワーク内の循環経路によるイーサネット(登録商標)プロトコル競合を防止することができる。
【0042】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示及び説明されているが、このような図示及び説明は、限定のためのものではなく、説明又は例示のためのものであるとみなされるべきであり、本発明は、開示されている実施形態に限定されない。当業者は、請求項に記載の発明を実施する際に、図面、明細及び添付の請求項の研究から、開示されている実施形態に対する他の変形を、理解し、達成し得る。請求項において、「有する」という用語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形表記は、複数の存在を除外しない。単に、特定の手段が、互いに異なる従属請求項において挙げられているという事実は、これらの手段の組み合わせが有利になるように用いられることができないことを示すものではない。請求項における如何なる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されてはならない。