【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は液晶高分子膜を提供する。これは相対する第1表面および第2表面を有し、該第1表面における最大高さ(maximum height、Ry)に対する十点平均粗さ(ten−point mean roughness、Rz)の比率(略称Rz/Ry)は0.30から0.62である。
【0008】
液晶高分子膜の1つの表面(第1表面)におけるRz/Ryの特性を制御することにより、液晶高分子膜を金属箔上に重ね合わせる付着性を高めることができ、液晶高分子膜および金属箔の間の引き剥がし強さを高める。これにより、積層板に後続の加工で回路が脱落するような問題が発生するのを防止する。
【0009】
本発明によると、液晶高分子膜の第2表面についても、そのRz/Ryが0.30から0.62でよい。これによって、本発明の液晶高分子膜は第1表面、第2表面またはその両者に関わらず、それぞれ少なくとも1枚の金属箔と重なり合い、良好な付着性を得ることができ、これにより液晶高分子膜および少なくとも1枚の金属箔の間の引き剥がし強さを高める。好ましくは、本発明の液晶高分子膜の第1表面および/または第2表面のRz/Ryは0.36から0.61でもよい。一実施態様において、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRz/Ryおよび第2表面のRz/Ryは同じまたは異なっていてよい。一実施態様において、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRz/Ryおよび第2表面のRz/Ryはいずれも前記範囲にある。
【0010】
本発明によると、液晶高分子膜の第1表面のRzは2マイクロメートル(μm)以下である。好ましくは、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRzは1.5μm以下であり、より好ましくは、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRzは0.3μm以上1.5μm以下でよく、さらに好ましくは、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRzは0.3μm以上1.4μm以下でよく、さらに好ましくは、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRzは0.3μm以上1.3μm以下でよく、さらに好ましくは、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRzは0.35μm以上1.2μm以下でよく、さらに好ましくは、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRzは0.39μm以上1.2μm以下でよい。一実施態様において、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRzおよび第2表面のRzは同じまたは異なっていてよい。一実施態様において、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRzおよび第2表面のRzはいずれも前記範囲にある。
【0011】
本発明によると、液晶高分子膜の第1表面のRyは2.2μm以下でよい。一実施態様において、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRyは2.0μm以下でよく、より好ましくは、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRyは0.5μm以上1.8μm以下でよく、さらに好ましくは、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRyは0.6μm以上1.6μm以下でよい。一実施態様において、本発明の液晶高分子における第1表面のRyおよび第2表面のRyは同じまたは異なっていてよい。一実施態様において、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRyおよび第2表面のRyはいずれも前記範囲にある。
【0012】
好ましくは、本発明の液晶高分子膜における第1表面の算術平均粗さ(arithmetic average roughness、Ra)は0.09μm以下でよい。これにより、前記液晶高分子膜は積層板に応用されて、その信号損失の低下に有利であり、ハイレベルの5G製品により適する。
【0013】
より好ましくは、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRaは0.02μm以上0.08μm以下でよく、さらに好ましくは、第1表面のRaは0.02μm以上0.07μm以下でよく、さらに好ましくは、第1表面のRaは0.02μm以上0.06μm以下でよい。液晶高分子膜の第1表面のRaを低下させる技術手段により、液晶高分子膜を含む積層板の信号損失をさらに低下させることができ、ハイレベルの5G製品により適する。一実施態様において、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRaおよび第2表面のRaは同じまたは異なっていてよい。一実施態様において、本発明の液晶高分子膜における第1表面のRaおよび第2表面のRaはいずれも前記範囲にある。
【0014】
本発明によると、前記液晶高分子膜は市販の液晶高分子樹脂を使用して製造することも、既知の原料を使用して調製することもでき、本発明で特に制限されない。
例を挙げると、芳香族または脂肪族ヒドロキシ化合物(例えば、ヒドロキノン(hydroquinone)、レゾルシノール(resorcin)、2,6−ナフタレンジオール(2,6−naphthalenediol)、エチレングリコール(ethanediol)、1,4−ブタンジオール(1,4−butanediol)、1,6−ヘキサンジオール(1,6−hexanediol))、芳香族または脂肪族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸(terephthalic acid)、イソフタル酸(isophthalic acid)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(2,6−naphthalenedicarboxylic acid)、2−クロロテレフタル酸(2−chloroterephthalic acid)、アジピン酸(adipic acid))、芳香族ヒドロキシカルボン酸(例えば、3−ヒドロキシ安息香酸(3−hydroxybenzoic acid)、4−ヒドロキシ安息香酸(4−hydroxybenzoic acid)、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸(6−hydroxy−2−naphthalene carboxylic acid)、4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸(4’−hydroxy−4−biphenylcarboxylic acid))、芳香族アミン化合物(例えば、p−フェニレンジアミン(p−phenylenediamine)、4,4’−ジアミノビフェニル(4,4’−diaminobiphenyl)、2,6−ナフタレンジアミン(naphthalene−2,6−diamine)、4−アミノフェノール(4−aminophenol)、4−アミノ−3−メチルフェノール(4−amino−3−methyl phenol)、4−アミノ安息香酸(4−aminobenzoic acid))を原料として使用し、液晶高分子樹脂を調製でき、さらにこの液晶高分子樹脂を利用して本発明の液晶高分子膜を製造する。
本発明の一実施態様において、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸および無水酢酸(acetyl anhydride)を用いて、本発明の液晶高分子膜を調製する液晶高分子樹脂を得ることができる。一実施態様において、液晶高分子樹脂の融点は約250℃から360℃である。
【0015】
一実施態様において、当業者は様々な需要に応じて、本発明の液晶高分子膜を調製するとき、添加剤を添加できる。これは、例えば潤滑剤、抗酸化剤、電気絶縁剤または充填剤であるが、これに限定されない。例を挙げると、用いることができる添加剤はポリカーボナート、ポリアミド、ポリフェニレンスルファイドまたはポリエーテルエーテルケトンなどであるが、これに限定されない。
【0016】
本発明によると、前記液晶高分子膜の厚さは特に制限されない。例を挙げると、前記液晶高分子膜の厚さは10μmから500μmでよく、好ましくは、本発明の液晶高分子膜の厚さは10μmから300μmでよく、より好ましくは、本発明の液晶高分子膜の厚さは15μmから250μmでよく、さらに好ましくは、本発明の液晶高分子膜の厚さは20μmから200μmでよい。
【0017】
前記目的を達成するため、本発明は他に積層板を提供する。これは第1金属箔および前記液晶高分子膜を含み、該第1金属箔は該液晶高分子膜の第1表面上に設けられる。
【0018】
一実施態様において、本発明の積層板は第2金属箔をさらに含むことができ、該第2金属箔は該液晶高分子膜の第2表面上に設けられる。すなわち、本発明の液晶高分子膜は前記第1金属箔および第2金属箔の間に挟まれる。この実施態様において、液晶高分子膜の第1表面および第2表面のRz/Ry特性を同時に制御するとき、液晶高分子膜を第1、第2金属箔に重ね合わせる付着性を同時に高めることができ、液晶高分子膜および第1、第2金属箔の間の引き剥がし強さを高める。
【0019】
本発明によると、「重ね合わせる」は直接接触に限定されず、「間接接触」をさらに含む。例を挙げると、本発明の一実施態様において、前記積層板の第1金属箔および液晶高分子膜は直接接触の方式で相互に重ね合わせられる。すなわち、第1金属箔は該液晶高分子膜の第1表面上に設けられ、さらに該液晶高分子膜の第1表面と直接接触する。本発明の別の実施態様において、前記積層板の第1金属箔および液晶高分子膜は間接接触の方式で相互に重ね合わせられる。すなわち、第1金属箔は液晶高分子膜上に設けられ、さらに間接接触の方式で相互に重ね合わせられる。例を挙げると、様々な需要に応じて、第1金属箔および液晶高分子膜の間に連結層を設け、第1金属箔および液晶高分子膜の第1表面を、該連結層を介して相互に接触させることができる。前記連結層の材料は様々な需要に基づいて調整でき、これにより相応の機能を提供する。例を挙げると、前記連結層の材料は、ニッケル、コバルト、クロムまたはその合金を含むことができ、これにより耐熱性、耐化学性、または電気抵抗性の作用を提供する。同様に、前記積層板の第2金属箔および液晶高分子膜も直接接触または間接接触の方式で相互に重ね合わせることを選択できる。一実施態様において、液晶高分子膜および第1金属箔を重ね合わせる方式と、液晶高分子膜および第2金属箔を重ね合わせる方式とは、同じまたは異なっていてよい。
【0020】
本発明によると、前記第1金属箔および/または第2金属箔は銅箔、金箔、銀箔、ニッケル箔、アルミニウム箔またはステンレス箔などでよいが、これに限定されない。一実施態様において、前記第1金属箔および第2金属箔は異なる材質を用いる。好ましくは、第1金属箔および/または第2金属箔は銅箔でよく、銅箔および液晶高分子膜が重なり合って銅箔積層板(copper clad laminate、略称CCL)が形成される。このほか、前記第1金属箔および/または第2金属箔の調製方法は特に制限されず、本発明の目的を逸脱しなければよい。例を挙げると、圧延法または電解法を用いて調製できるが、これに限定されない。
【0021】
本発明によると、前記第1金属箔および/または第2金属箔の厚さは特に制限されず、当業者は様々な需要に応じて、相応の調整を行うことができる。例を挙げると、一実施態様において、第1金属箔および/または第2金属箔の厚さはそれぞれ独立して1μmから200μmでよく、好ましくは、前記第1金属箔および/または第2金属箔の厚さはそれぞれ独立して1μmから40μmでよく、より好ましくは、前記第1金属箔および/または第2金属箔の厚さはそれぞれ独立して1μmから20μmでよく、さらに好ましくは、前記第1金属箔および/または第2金属箔の厚さはそれぞれ独立して3μmから20μmでよい。
【0022】
本発明によると、当業者は様々な需要に応じて、本発明の第1金属箔および/または第2金属箔に表面処理を行うことができる。例を挙げると、粗化処理、酸塩基処理、加熱処理、脱脂処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー塗布処理などを用いることができるが、これに限定されない。
【0023】
本発明によると、前記第1金属箔および/または第2金属箔の粗さは特に制限されず、当業者は様々な需要に基づいて、相応の調整を行うことができる。一実施態様において、前記第1金属箔および/または第2金属箔のRzはそれぞれ独立して0.1μm以上2.0μm以下でよい。好ましくは、前記第1金属箔および/または第2金属箔のRzはそれぞれ独立して0.1μm以上1.5μm以下でよい。一実施態様において、第1金属箔および第2金属箔のRzは同じまたは異なっていてよい。一実施態様において、第1金属箔のRzおよび第2金属箔のRzはいずれも前記範囲にある。
【0024】
一実施態様において、当業者は様々な需要に応じて、第3金属箔を追加で設けることができ、前記第3金属箔は第1金属箔および/または第2金属箔と同じまたは異なっていてよい。一実施態様において、前記第3金属箔のRzは前記第1金属箔および/または第2金属箔のRzの範囲にあってよい。
【0025】
一実施態様において、前記積層板は複数の液晶高分子膜を含むことができる。本発明の主旨を逸脱しない前提で、当業者は様々な需要に応じて、複数の本発明の液晶高分子膜および複数の金属箔(例えば、前記第1金属箔、第2金属箔および/または第3金属箔)を重ね合わせ、複数の液晶高分子膜および複数の金属箔を重ね合わせた積層板を製造できる。
【0026】
本明細書において、前記「十点平均粗さ」、「最大高さ」および「算術平均粗さ」は、いずれもJIS B 0601:1994の方法、定義に基づく。