特許第6804703号(P6804703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6804703
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20201214BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-539018(P2020-539018)
(86)(22)【出願日】2020年2月4日
(86)【国際出願番号】JP2020004181
【審査請求日】2020年7月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】飯田 祥貴
(72)【発明者】
【氏名】多田 圭佑
【審査官】 山崎 雄司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−041363(JP,A)
【文献】 特開2016−093018(JP,A)
【文献】 特開2016−226132(JP,A)
【文献】 特開2010−206909(JP,A)
【文献】 特開平06−115836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
H02M 1/00−1/44
H02M 7/42−7/98
H02P 3/00−3/26
H02P 21/00−25/03
H02P 25/04
H02P 25/10−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された交流を直流に変換するコンバータ部と、
変換された前記直流を平滑する平滑コンデンサと、
平滑された前記直流を交流に変換して負荷に出力するインバータ部と、
前記平滑コンデンサに充電された電荷を前記負荷の停止時に、放電抵抗によって放電する放電回路と、
前記平滑コンデンサが接続された母線間の電圧を母線電圧値として計測する電圧計測部と、
前記放電回路による放電を制御する放電制御装置と、
を備え、
前記放電制御装置は、
前記母線電圧値に基づいて前記放電が異常状態であるか否かを判定し、前記放電が正常状態であると判定している間は、前記放電回路に第1の時間だけ放電させる処理と前記第1の時間よりも長い第2の時間毎に前記放電が異常状態であるか否かを判定する処理とを繰り返し、前記母線電圧値が目標値に到達した場合、または前記放電が異常状態であると判定した場合には、前記放電回路に前記放電を終了させる、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記第1の時間は、前記第1の時間だけ前記放電が実施されても前記放電回路を破壊しない時間である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1の時間は、前記放電回路の特性と、前記放電回路が備える放電抵抗に印加される電流とに基づいて設定された時間である、
ことを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記放電制御装置は、前記第2の時間毎に計測された母線電圧値が、当該母線電圧値に対応する基準値以下となっていない場合に、前記放電が異常状態であると判定する、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1つに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記基準値は、前記第2の時間毎に計測された母線電圧値の予測値である電圧予測値に、特定値を加えた値である、
ことを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
交流電源と、
交流によって駆動される負荷と、
前記交流電源から供給される電力を用いて前記負荷に交流を供給する電力変換装置と、
前記交流電源から前記電力変換装置に供給される電力の開放または遮断を行う開閉器と、
を有し、
前記電力変換装置は、
入力された交流を直流に変換するコンバータ部と、
変換された前記直流を平滑する平滑コンデンサと、
平滑された前記直流を交流に変換して負荷に出力するインバータ部と、
前記平滑コンデンサに充電された電荷を前記負荷の停止時に、放電抵抗によって放電する放電回路と、
前記平滑コンデンサが接続された母線間の電圧を母線電圧値として計測する電圧計測部と、
前記放電回路による放電を制御する放電制御装置と、
を備え、
前記放電制御装置は、
前記母線電圧値に基づいて前記放電が異常状態であるか否かを判定し、前記放電が正常状態であると判定している間は、前記放電回路に第1の時間だけ放電させる処理と前記第1の時間よりも長い第2の時間毎に前記放電が異常状態であるか否かを判定する処理とを繰り返し、前記母線電圧値が目標値に到達した場合、または前記放電が異常状態であると判定した場合には、前記放電回路に前記放電を終了させる、
ことを特徴とする電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放電機能を有した電力変換装置および電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電源から供給される電力を用いて負荷に交流電力を供給する電力変換装置は、例えば、負荷が大容量のモータを備えたサーボ機構である場合、サーボ機構の運転を停止した後、モータ駆動回路内の平滑コンデンサが充電状態であれば、放電を実施する必要がある。このため、電力変換装置には、放電回路が設けられている。この電力変換装置において、電力変換装置が異常な状態で放電を継続してしまうと、放電回路が破壊されてしまう恐れがあるので、異常な状態での放電を検知し、放電回路を保護することが望まれる。
【0003】
特許文献1に記載の電力変換装置は、コンタクタを介して高電圧バッテリに接続されている。この電力変換装置は、平滑コンデンサの電荷を放電する放電回路と、放電回路が備えるスイッチング素子のオンおよびオフを制御する制御回路とを備えている。この制御回路は、平滑コンデンサの電荷を放電する前に、短時間だけスイッチング素子をオンし、オン前後の平滑コンデンサの端子間電圧に基づいて、コンタクタのオンまたはオフを判定している。制御回路は、コンタクタがオンであると判定した場合には、特定時間待機した後にコンタクタのオンまたはオフを判定する処理を繰り返し、コンタクタがオフであると判定した場合には、放電可能と判断して連続放電を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−031329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、一度放電可能と判断した後は、連続放電を行っているので、放電中に異常放電となってしまった場合を検知できず、放電中に異常放電となった場合には放電回路を破壊してしまう恐れがあった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、放電中に異常放電となった場合であっても放電中の異常放電を検知して放電回路を保護することができる電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の電力変換装置は、入力された交流を直流に変換するコンバータ部と、変換された直流を平滑する平滑コンデンサと、平滑された直流を交流に変換して負荷に出力するインバータ部とを備える。また、本開示の電力変換装置は、平滑コンデンサに充電された電荷を負荷の停止時に、放電抵抗によって放電する放電回路と、平滑コンデンサが接続された母線間の電圧を母線電圧値として計測する電圧計測部と、放電回路による放電を制御する放電制御装置と、を備える。放電制御装置は、母線電圧値に基づいて放電が異常状態であるか否かを判定する。放電制御装置は、放電が正常状態であると判定している間は、放電回路に第1の時間だけ放電させる処理と第1の時間よりも長い第2の時間毎に放電が異常状態であるか否かを判定する処理とを繰り返す。放電制御装置は、母線電圧値が目標値に到達した場合、または放電が異常状態であると判定した場合には、放電回路に放電を終了させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる電力変換装置は、放電中に異常放電となった場合であっても放電中の異常放電を検知して放電回路を保護することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態にかかる電力変換装置を備えた電力変換システムの構成を示す図
図2】実施の形態にかかる電力変換装置が備える放電制御装置の構成を示す図
図3】実施の形態にかかる電力変換システムによる放電処理の処理手順を示すフローチャート
図4】実施の形態にかかる電力変換装置が、正常状態で放電を実施する場合の母線電圧値の変化を示すタイミングチャート
図5】実施の形態にかかる電力変換装置が、異常状態で放電を開始する場合の母線電圧値の変化を示すタイミングチャート
図6】実施の形態にかかる電力変換装置が、正常状態で放電を開始した後に異常状態に変化した場合の母線電圧値の変化を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態にかかる電力変換装置および電力変換システムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの開示が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態.
図1は、実施の形態にかかる電力変換装置を備えた電力変換システムの構成を示す図である。電力変換システム1は、電力変換装置10と、交流電源100と、電磁開閉器101と、負荷の一例であるモータ108とを備えている。電力変換装置10は、交流電源100から供給される電力を、任意の周波数および任意の電圧に変換してモータ108に供給する。負荷がモータ108である場合、電力変換装置10は、交流によってモータ108を駆動するモータ駆動装置として機能する。
【0012】
電力変換システム1は、電力変換装置10による1回の放電時間を、電力変換システム1の異常時でも放電回路111が破壊されない時間とし、周期的に放電と非放電とを繰り返す。電力変換システム1は、放電が正常状態であると判定している間は、放電回路111に放電させる処理と放電が異常状態であるか否かを判定する処理とを繰り返し、放電が目標まで完了した場合、または放電が異常状態であると判定した場合には、放電を終了させる。
【0013】
交流電源100は、電力変換装置10に交流を入力する電源である。電磁開閉器101は、交流電源100から電力変換装置10に供給される電力の開放または遮断を行う開閉器の一例である。
【0014】
電力変換装置10は、コンバータ部102と、電圧計測部103と、平滑コンデンサ104と、回生抵抗である放電抵抗105と、スイッチ素子106と、インバータ部107と、放電制御装置20とを有している。なお、図1で説明する平滑コンデンサ104、スイッチ素子106などは、一例であり、同様の機能を有した他の部品で代用されてもよい。
【0015】
電力変換システム1では、平滑コンデンサ104、放電抵抗105、およびスイッチ素子106によって放電回路111が構成されている。放電回路111は、平滑コンデンサ104に充電された電荷を放電する回路である。放電回路111は、モータ108の停止時に、放電を実施する。なお、平滑コンデンサ104は、放電回路111の外部に設けられてもよい。この場合、平滑コンデンサ104および放電抵抗105によって放電回路111が構成される。
【0016】
コンバータ部102は、交流電源100から印加される交流電圧を整流して直流電圧に変換する。コンバータ部102の一例は、ダイオードブリッジで構成された全波整流回路である。コンバータ部102の出力端には、インバータ部107が接続される。コンバータ部102とインバータ部107とは、高電位側の直流母線11Aと低電位側の直流母線11Bとによって接続される。直流母線11Aと直流母線11Bとの間には、電圧計測部103と、平滑コンデンサ104と、放電抵抗105と、スイッチ素子106とが配置されている。
【0017】
直流母線11A上には、接続点13A,14A,15Aが配置されており、直流母線11B上には、接続点13B,14B,15Bが配置されている。接続点13Aは、コンバータ部102に接続され、接続点15Aは、インバータ部107の一端に接続され、接続点14Aは、接続点13A,15Aに接続されている。接続点13Bは、コンバータ部102に接続され、接続点15Bは、インバータ部107の他端に接続され、接続点14Bは、接続点13B,15Bに接続されている。
【0018】
電圧計測部103は、接続点13Aおよび接続点13Bに接続されている。平滑コンデンサ104は、接続点14Aおよび接続点14Bに接続されている。放電抵抗105は接続点15Aに接続され、スイッチ素子106は接続点15Bに接続され、放電抵抗105とスイッチ素子106とが直列接続されている。
【0019】
スイッチ素子106は、コレクタが放電抵抗105に接続されている。これにより、スイッチ素子106のコレクタは、放電抵抗105を介して平滑コンデンサ104の正極に接続されている。また、スイッチ素子106では、ベースが放電制御装置20に接続され、エミッタが接続点15Bに接続されている。
【0020】
このように、電力変換装置10では、コンバータ部102と、電圧計測部103と、平滑コンデンサ104と、直列接続された放電抵抗105およびスイッチ素子106と、インバータ部107と、が並列に接続されている。
【0021】
直流母線11Aと直流母線11Bとの間の電圧は、母線電圧と呼ばれる。平滑コンデンサ104は、直流電圧である母線電圧を平滑して、母線電圧を安定化する。このように、平滑コンデンサ104は、コンバータ部102で交流から変換された直流を平滑する。
【0022】
電圧計測部103は、母線電圧の電圧値である母線電圧値を計測する計測器である。電圧計測部103は、放電制御装置20からの指示に従って母線電圧値を計測してもよいし、特定の時間毎に母線電圧値を計測してもよい。電圧計測部103は、計測した母線電圧値を放電制御装置20に送る。
【0023】
スイッチ素子106は、放電制御装置20から放電指令の信号である放電指令信号を受信するとオンになり、平滑コンデンサ104と放電抵抗105とが電気的に接続される。これにより、平滑コンデンサ104に充電された電荷が、放電抵抗105によって熱エネルギーへ変換されて放電される。
【0024】
インバータ部107は、直流電力を交流電力に変換してモータ108に供給するインバータ回路を有している。インバータ部107は、例えば6つのスイッチ素子を用いて構成されている。インバータ部107は、平滑コンデンサ104で平滑された直流を交流に変換してモータ108に出力する。
【0025】
電力変換システム1は、モータ108を駆動する際に電磁開閉器101を開放する。これにより、電力変換システム1は、交流電源100の電力を電力変換装置10に入力し、平滑コンデンサ104を充電する。
【0026】
また、電力変換システム1は、モータ108の駆動を終了する際に電磁開閉器101を遮断する。これにより、電力変換システム1では、交流電源100の電力が電力変換装置10に入力されない状態となる。その後、電力変換システム1は、スイッチ素子106の開閉(オンまたはオフ)によって、平滑コンデンサ104の放電、すなわちコンデンサ放電を実施する。
【0027】
放電制御装置20は、放電回路111による放電を制御するコンピュータである。ここで、放電制御装置20の構成について説明する。図2は、実施の形態にかかる電力変換装置が備える放電制御装置の構成を示す図である。放電制御装置20は、異常判定部32および放電指令生成部33を備えている。放電制御装置20は、制御部であるプロセッサ21、記憶部であるメモリ22、入力装置23、および出力装置24により実現することができる。
【0028】
プロセッサ21の例は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)またはシステムLSI(Large Scale Integration)である。メモリ22の例は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)である。
【0029】
放電制御装置20は、プロセッサ21が、メモリ22で記憶されている放電制御装置20の動作を実行するための、コンピュータで実行可能な、制御プログラムを読み出して実行することにより実現される。放電制御装置20の動作を実行するためのプログラムである制御プログラムは、放電制御装置20の手順または方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
【0030】
放電制御装置20で実行される制御プログラムは、異常判定部32と、放電指令生成部33とを含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
【0031】
異常判定部32は、放電をn回(nは自然数)実施した時の母線電圧の予測値(後述する電圧予測値)を算出する。また、異常判定部32は、放電をn回実施した時の母線電圧値が、放電をn回実施した時の電圧予測値以下であるか否かを判定する。異常判定部32は、異常状態でないと判定した場合に、放電指令生成部33に放電指示を送る。
【0032】
放電指令生成部33は、異常判定部32が異常状態でないと判定した場合に、スイッチ素子106に放電指令信号を送ることで、平滑コンデンサ104の放電を実施する。
【0033】
入力装置23は、電圧計測部103から送られてくる母線電圧値を受け付けてプロセッサ21に送る。メモリ22は、プロセッサ21が各種処理を実行する際の一時メモリに使用される。また、メモリ22は、プロセッサ21から送られてくる母線電圧値および電圧予測値を記憶する。また、メモリ22は、数式として、後述する式(1)から(3)を記憶しておく。式(1)から(3)は、放電制御に用いられる数式である。出力装置24は、プロセッサ21から送られてくる放電指令信号を、スイッチ素子106に出力する。
【0034】
放電制御装置20が用いる制御プログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルで、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されてもよい。また、制御プログラムは、インターネットなどのネットワーク経由で放電制御装置20に提供されてもよい。なお、放電制御装置20の機能について、一部を専用回路などの専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0035】
また、異常判定部32の処理を実行するプロセッサと、放電指令生成部33の処理を実行するプロセッサとは、別々のプロセッサであってもよい。この場合、異常判定部32の処理を実行する際に用いられるプログラムと、放電指令生成部33の処理を実行する際に用いられるプログラムとは、別々のプログラムとなる。
【0036】
図3は、実施の形態にかかる電力変換システムによる放電処理の処理手順を示すフローチャートである。本実施の形態では、電力変換システム1は、放電抵抗105を特定時間ずつ駆動させて平滑コンデンサ104の放電を特定時間ずつ実施する。
【0037】
電力変換装置10の電圧計測部103は、平滑コンデンサ104の放電を実施する前に放電前の母線電圧値である母線電圧値realV0を計測する。すなわち、電圧計測部103は、放電回路111内の電圧である母線電圧値realV0を計測する(ステップS10)。なお、本実施の形態では、放電前の母線電圧値を母線電圧値realV0といい、n回の放電が終了した後の母線電圧値を母線電圧値realVnという。電圧計測部103は、計測した母線電圧値realV0を放電制御装置20の異常判定部32に送る。
【0038】
異常判定部32は、母線電圧値realV0をメモリ22に記憶させる。異常判定部32は、放電後の母線電圧の予測値である電圧予測値virtualV1を算出する(ステップS20)。なお、本実施の形態では、放電をn回実施した時の電圧予測値を電圧予測値virtualVnという。異常判定部32は、以下の式(1)によって電圧予測値virtualVnを算出する。
【0039】
【数1】
【0040】
式(1)におけるexpは、自然指数関数であり、xは、1回の放電時間である。本実施の形態では、xの単位が秒である場合について説明する。1回の放電時間は、異常時に放電が行われても放電回路111が破壊されない時間である。すなわち、x秒の間、異常時に放電が行われても放電回路111は破壊されない。xの値は、放電抵抗105の特性、放電時に放電抵抗105に印加される電流値などに基づいて設定される。Cは、平滑コンデンサ104の静電容量であり、Rは、放電抵抗105の抵抗値であり、Toleranceは、母線電圧の許容誤差である。
【0041】
電力変換システム1における異常状態の例は、モータ108の駆動を停止させたにもかかわらず、電磁開閉器101が開状態となっている場合である。この場合に電力変換装置10が放電を実施すると、異常放電となる。また、モータ108の駆動を停止させた後に電磁開閉器101が閉状態となっていても、電力変換装置10による放電の実施中に電磁開閉器101が開状態になると、電力変換システム1は、異常状態となり、以後の放電は異常放電となる。
【0042】
異常判定部32は、電圧予測値virtualV1をメモリ22に記憶させる。また、電圧計測部103が母線電圧値である母線電圧値realV0を計測した後、放電指令生成部33は、スイッチ素子106に放電指令信号を送り平滑コンデンサ104の放電を実施する。放電指令信号は、スイッチ素子106にx秒だけ平滑コンデンサ104の放電を実施させる信号である。これにより、平滑コンデンサ104は、x秒だけ放電を実施する(ステップS30)。
【0043】
平滑コンデンサ104がx秒の放電を実施した後、電圧計測部103は、再度母線電圧値を計測する。ここでの電圧計測部103は、1回の放電が完了した後なので、母線電圧値realV1を計測する(ステップS40)。電圧計測部103は、計測した母線電圧値realV1を放電制御装置20の異常判定部32に送る。
【0044】
異常判定部32は、母線電圧値realV1をメモリ22に記憶させる。異常判定部32は、1回分の放電が完了するたびに、以下の式(2)を満たすか否かを判定する(ステップS50)。換言すると、異常判定部32は、1回分の放電が完了するたびに、母線電圧値realVnが、目標とする母線電圧値である目標電圧値finV以下であるか否かを判定する。すなわち、異常判定部32は、1回分の放電が完了するたびに、放電が正常に完了したか否かを判定する。
【0045】
【数2】
【0046】
目標電圧値finVは、放電が正常に完了したか否かの判定に用いられる判定の基準値である。ここでの異常判定部32は、母線電圧値realV1が目標電圧値finV以下であるか否かを判定する。
【0047】
異常判定部32は、母線電圧値realVnが目標電圧値finVになると、すなわち式(2)を満たす場合(ステップS50、Yes)、正常な放電完了とみなし、これにより、電力変換システム1は、放電を終了する。
【0048】
異常判定部32は、式(2)を満たさない場合(ステップS50、No)、異常放電であるか否かを判定する。異常判定部32は、母線電圧値realVnおよび電圧予測値virtualVnが以下の式(3)を満たすか否かを判定する(ステップS60)。換言すると、異常判定部32は、母線電圧値realVnが電圧予測値virtualVn以下となっているか否かを判定する。すなわち、異常判定部32は、異常放電が発生しているか否かを判定する。
【0049】
【数3】
【0050】
ここでの異常判定部32は、母線電圧値realV1が電圧予測値virtualV1以下となっているか否かを判定する。電圧予測値virtualVnは、式(1)に示したように、特定値であるToleranceを含んでいる。したがって、電力変換システム1に異常が発生していなければ、電圧予測値virtualVnは、母線電圧値realVnよりもTolerance分だけ大きくなっているはずである。このため、母線電圧値realVnが電圧予測値virtualVn以下となっていれば、電力変換システム1は正常であると考えられる。なお、Toleranceは、(母線電圧値realVn)−(母線電圧値realVn+1)の値よりも小さな値である。
【0051】
式(3)を満たさない場合(ステップS60、No)、異常判定部32は、異常放電であるとみなし、これにより、電力変換システム1は、放電を終了する。
【0052】
一方、式(3)を満たす場合(ステップS60、Yes)、異常判定部32は、放電の継続が可能であると判断する。放電の継続が可能である場合、電力変換システム1は、放電の終了条件となるまで上述した放電と判定とを繰り返す。換言すると、電力変換システム1は、放電が正常状態であると判定している間は、上述した放電と判定とを繰り返す。この場合、電力変換システム1では、異常判定部32が、放電後の母線電圧の予測値である電圧予測値virtualVn+1を算出する(ステップS70)。この場合も、異常判定部32は、上述の式(1)によって電圧予測値virtualVn+1を算出する。
【0053】
異常判定部32は、電圧予測値virtualVn+1をメモリ22に記憶させる。異常判定部32が電圧予測値virtualVn+1を算出した後、放電指令生成部33は、スイッチ素子106に放電指令信号を送り平滑コンデンサ104の放電を実施する。これにより、平滑コンデンサ104は、x秒だけ放電を実施する(ステップS80)。そして、電圧計測部103は、母線電圧値realVn+1を計測する(ステップS90)。
【0054】
この後、電力変換システム1は、ステップS50の処理に戻る。そして、電力変換システム1は、式(2)の母線電圧値realVnを母線電圧値realVn+1に置き換えて母線電圧値realVn+1および目標電圧値finVが式(2)を満たすか否かを判定する。満たさない場合、電力変換システム1は、式(3)の母線電圧値realVnを母線電圧値realVn+1に置き換え、電圧予測値virtualVnを電圧予測値virtualVn+1に置き換えて、母線電圧値realVn+1および電圧予測値virtualVn+1が式(3)を満たすか否かを判定する。
【0055】
電力変換システム1は、放電回数が1回増える毎に、nに1ずつ加算していく。電力変換システム1は、母線電圧値および目標電圧値finVが式(2)を満たす(ステップS50、Yes)か、母線電圧値および電圧予測値が式(3)を満たす(ステップS60、Yes)まで、ステップS50からS90の処理を繰り返す。
【0056】
なお、ステップS20の処理は、ステップS30の処理以降、またはステップS40の処理以降に実行されてもよい。また、ステップS70の処理は、ステップS80の処理以降、またはステップS90の処理以降に実行されてもよい。
【0057】
図4は、実施の形態にかかる電力変換装置が、正常状態で放電を実施する場合の母線電圧値の変化を示すタイミングチャートである。図4では、平滑コンデンサ104の放電が正常に実施された場合の母線電圧値の変化と、スイッチ素子106による放電または非放電のタイミングとを示している。電力変換システム1では、電磁開閉器101が遮断状態である場合に、平滑コンデンサ104の放電が正常に実施される。
【0058】
図4の上段に示すグラフは、母線電圧値の変化を示すグラフであり、図4の下段に示すグラフは、放電または非放電のタイミングを示すグラフである。図4の上段に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸は母線電圧値である。
【0059】
電力変換システム1は、例えば、時間T(T>x)の周期で、母線電圧値realVnが電圧予測値virtualVn以下となるかを判定する。したがって、電力変換システム1は、時間Tの間に放電と非放電とを1回ずつ実施する。すなわち、電力変換システム1は、放電と非放電との実施を、時間Tの周期で実施する。第1の時間であるxは、1回の放電時間であるので、T−xが、1回の非放電時間となる。第2の時間である時間Tは、プロセッサ21が問題なく動作する周期と同じ時間とする。
【0060】
電圧計測部103は、平滑コンデンサ104の放電を実施する前に、母線電圧値realV0を計測する。異常判定部32は、母線電圧値realV0を計測した後、母線電圧値realV0を用いて電圧予測値virtualV1を算出する。
【0061】
また、放電指令生成部33は、スイッチ素子106に放電指令信号を送り平滑コンデンサ104の放電を実施する。これにより、平滑コンデンサ104は、x秒だけ放電を実施する。
【0062】
電圧計測部103は、母線電圧値realV0を計測した後、時間Tの経過後に、母線電圧値realV1を計測する。異常判定部32は、母線電圧値realV1が目標電圧値finV以下でなければ、母線電圧値realV1が電圧予測値virtualV1以下であるか否かを判定する。
【0063】
電力変換システム1に異常が発生していなければ、母線電圧値realV1は、電圧予測値virtualV1以下である。この場合、異常判定部32は、母線電圧値realV0を用いて電圧予測値virtualV2を算出する。
【0064】
また、放電指令生成部33は、スイッチ素子106に放電指令信号を送り平滑コンデンサ104の放電を実施する。これにより、平滑コンデンサ104は、x秒だけ放電を実施する。
【0065】
電圧計測部103は、母線電圧値realV1を計測した後、時間Tの経過後に、母線電圧値realV2を計測する。異常判定部32は、母線電圧値realV2が目標電圧値finV以下でなければ、母線電圧値realV2が電圧予測値virtualV2以下であるか否かを判定する。
【0066】
このように、電力変換システム1は、電力変換システム1に異常が発生していなければ、時間T毎に、電圧予測値virtualVnの算出と、x秒の放電と、母線電圧値realVnの計測と、母線電圧値realVnが電圧予測値virtualVn以下であるか否かの判定とを実施する。
【0067】
電力変換システム1は、電力変換システム1に異常が発生していなければ、平滑コンデンサ104の放電を繰り返し、電圧計測部103にて測定される母線電圧値realVnが、目標電圧値finV以下となった時に、平滑コンデンサ104の正常な放電完了とみなし、放電処理を終了する。これにより、複数回に渡って放電抵抗105を短時間駆動する放電が完了する。
【0068】
このように、電力変換システム1は、電力変換システム1に異常が発生しているか否かを確認しながら、放電抵抗105を複数回に渡って短時間駆動することで放電を実施する。これにより、電力変換システム1は、電磁開閉器101が遮断状態であり交流電源100からの電力が電力変換装置10に入力されない正常状態では、放電回路111の破壊を防止しながら、平滑コンデンサ104の放電を実施することができる。
【0069】
図5は、実施の形態にかかる電力変換装置が、異常状態で放電を開始する場合の母線電圧値の変化を示すタイミングチャートである。図5では、異常状態が原因で平滑コンデンサ104の放電が終了される場合の母線電圧値の変化と、スイッチ素子106による放電または非放電のタイミングとを示している。電力変換システム1では、電磁開閉器101が開放状態である場合に、平滑コンデンサ104の放電は終了となる。
【0070】
図5の上段に示すグラフは、母線電圧値の変化を示すグラフであり、図5の下段に示すグラフは、放電または非放電のタイミングを示すグラフである。図5の上段に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸は母線電圧値である。
【0071】
平滑コンデンサ104が放電される際に、電磁開閉器101が何らかの原因で遮断(オフ)されておらず、交流電源100からの電力が電力変換装置10に入力されている状態となる場合がある。
【0072】
電力変換システム1の電圧計測部103は、正常時と同様に、平滑コンデンサ104の放電を実施する前に、放電前の母線電圧値realV0を計測する。異常判定部32は、母線電圧値realV0を計測した後、母線電圧値realV0を用いて電圧予測値virtualV1を算出する。
【0073】
また、放電指令生成部33は、スイッチ素子106に放電指令信号を送り平滑コンデンサ104の放電を実施する。これにより、平滑コンデンサ104は、x秒だけ放電を実施する。
【0074】
電圧計測部103は、母線電圧値realV0を計測した後、時間Tの経過後に、母線電圧値realV1を計測する。異常判定部32は、母線電圧値realV1が目標電圧値finV以下でなければ、母線電圧値realV1が電圧予測値virtualV1以下であるか否かを判定する。
【0075】
電磁開閉器101が遮断されていない場合、平滑コンデンサ104は放電をしても、交流電源100からの電力によって充電される。したがって、母線電圧値realV0は、電圧予測値virtualV1以下にならない。この場合、異常判定部32は、異常放電であるとみなす。これにより、電力変換システム1は、放電を終了することで、放電回路111を保護する。
【0076】
このように、電力変換システム1は、電磁開閉器101が開放状態で交流電源100の電力が電力変換装置10に入力された状態では、放電を終了することで、放電抵抗105の破壊を防止することができる。
【0077】
図6は、実施の形態にかかる電力変換装置が、正常状態で放電を開始した後に異常状態に変化した場合の母線電圧値の変化を示すタイミングチャートである。図6では、平滑コンデンサ104の放電が正常に開始された後に異常が原因で平滑コンデンサ104の放電が終了される場合の母線電圧値の変化と、スイッチ素子106による放電または非放電のタイミングとを示している。電力変換システム1では、電磁開閉器101が遮断状態から開放状態に変化した場合に、平滑コンデンサ104の放電は終了となる。
【0078】
図6の上段に示すグラフは、母線電圧値の変化を示すグラフであり、図6の下段に示すグラフは、放電または非放電のタイミングを示すグラフである。図6の上段に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸は母線電圧値である。
【0079】
電圧計測部103は、平滑コンデンサ104の放電を実施する前に、母線電圧値realV0を計測する。異常判定部32は、母線電圧値realV0を計測した後、母線電圧値realV0を用いて電圧予測値virtualV1を算出する。
【0080】
また、放電指令生成部33は、スイッチ素子106に放電指令信号を送り平滑コンデンサ104の放電を実施する。これにより、平滑コンデンサ104は、x秒だけ放電を実施する。
【0081】
電圧計測部103は、母線電圧値realV0を計測した後、時間Tの経過後に、母線電圧値realV1を計測する。異常判定部32は、母線電圧値realV1が目標電圧値finV以下でなければ、母線電圧値realV1が電圧予測値virtualV1以下であるか否かを判定する。
【0082】
電力変換システム1に異常が発生していなければ、母線電圧値realV1は、電圧予測値virtualV1以下である。この場合、異常判定部32は、母線電圧値realV0を用いて電圧予測値virtualV2を算出する。
【0083】
また、放電指令生成部33は、スイッチ素子106に放電指令信号を送り平滑コンデンサ104の放電を実施する。これにより、平滑コンデンサ104は、x秒だけ放電を実施する。
【0084】
電圧計測部103は、母線電圧値realV1を計測した後、時間Tの経過後に、母線電圧値realV2を計測する。異常判定部32は、母線電圧値realV2が目標電圧値finV以下でなければ、母線電圧値realV2が電圧予測値virtualV2以下であるか否かを判定する。
【0085】
この後、母線電圧値realVm(mは、2からnの何れかの自然数)が目標電圧値finV以下となる前に、電磁開閉器101が開放されると、平滑コンデンサ104は、交流電源100からの電力によって充電される。すなわち、(m−1)回目からm回目の放電の実施中に何らかの原因で電磁開閉器101が開放となった場合、母線電圧値realVmは、1回目の放電が開始される前の母線電圧値realV0と同等の電圧値になる。
【0086】
このように、放電中に電力変換システム1に異常が発生すると、母線電圧値realVmは、電圧予測値virtualVm以下にならない。この場合、異常判定部32は、異常放電であるとみなす。これにより、電力変換システム1は、放電を終了することで、放電回路111を保護する。電力変換システム1は、電磁開閉器101が遮断された正常状態で放電を開始し、複数回に渡る放電の途中で電磁開閉器101が開放された異常状態になった場合、放電を終了させるので、放電抵抗105の破壊を防止することができる。
【0087】
ところで、1回の放電処理で、平滑コンデンサが持っている電位を目標値に落とす電力変換システムがある。この電力変換システムでは、平滑コンデンサが持っている電位を目標値に落とすまでに必要な放電時間よりも、異常時の放電で放電回路が破壊されるまでの時間のほうが短くなる場合がある。この場合、電力変換システムは、平滑コンデンサの電位を目標値まで下げる前に、異常時の放電で放電回路を破壊させてしまう。
【0088】
本実施の形態の電力変換システム1における1回分の放電時間であるxは、異常時に放電が行われても放電回路111が破壊されない時間である。そして、電力変換システム1は、1回分の放電が完了するたびに、母線電圧値realVnが電圧予測値virtualVn以下であるか否かを判定する。すなわち、電力変換システム1は、1回分の放電が完了するたびに、異常な状態で放電が行われていないかを判定し、異常な状態で放電が行われている場合は放電を終了させている。したがって、電力変換システム1は、異常時の放電で放電回路111を破壊させてしまうことはない。また、電力変換システム1は、コンデンサの電位を安全なレベルに落とすまでの放電時間よりも、異常時の放電で放電回路が破壊されるまでの時間の方が短いシステムに対しても適用可能である。また、電力変換システム1は、母線電圧の監視周期が長い場合であっても、放電回路111を破壊させることなく安全な放電が可能である。
【0089】
また、電力変換システム1は、母線電圧値realVnが電圧予測値virtualVn以下であるか否かに基づいて、電力変換システム1が異常な状態であるか否かを判定しているので、コンバータ部102に電力が供給されているか否かを監視する機能が無い場合であっても、異常な状態であるか否かを判定できる。
【0090】
コンバータ部とインバータ部とが一体となった電力変換システムでは、コンバータ部に電力が供給されているか否かを監視する機能があれば、電力変換システムが異常な状態であるか否かの判定は容易である。一方、コンバータ部とインバータ部とが分かれている電力変換システムでは、コンバータ部に電力が供給されているか否かを監視する機能があっても、電力変換システムが異常な状態であるか否かの判定は困難であった。本実施の形態の電力変換システム1は、コンバータ部102とインバータ部107とが分かれているが、母線電圧値realVnが電圧予測値virtualVn以下であるか否かに基づいて、電力変換システム1が異常な状態であるか否かを判定しているので、異常状態の判定が容易である。
【0091】
コンバータ部に電力が供給されているか否かを監視する機能を有した電力変換システムであっても、監視周期が長い場合には、放電回路を破壊させてしまう場合がある。本実施の形態の電力変換システム1は、監視周期に関わらず、母線電圧値realVnが電圧予測値virtualVn以下であるか否かに基づいて、電力変換システム1が異常な状態であるか否かを判定しているので、放電回路111の破壊を防止することができる。
【0092】
このように実施の形態では、電力変換装置10が、母線電圧値realVnに基づいて放電が異常状態であるか否かを判定し、放電が正常状態であると判定している間は、放電回路111にx秒だけ放電させる処理と時間T毎に放電が異常状態であるか否かを判定する処理とを繰り返している。そして、電力変換装置10は、母線電圧値realVnが目標電圧値finVに到達した場合、または放電が異常状態であると判定した場合には、放電回路111に放電を終了させている。したがって、電力変換装置10は、放電中に異常放電となった場合であっても放電中の異常放電を検知して放電回路111を保護することができる。
【0093】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 電力変換システム、10 電力変換装置、11A,11B 直流母線、13A,13B,14A,14B,15A,15B 接続点、20 放電制御装置、21 プロセッサ、22 メモリ、23 入力装置、24 出力装置、32 異常判定部、33 放電指令生成部、100 交流電源、101 電磁開閉器、102 コンバータ部、103 電圧計測部、104 平滑コンデンサ、105 放電抵抗、106 スイッチ素子、107 インバータ部、108 モータ、111 放電回路。
【要約】
電力変換装置(10)が、コンバータ部(102)と、平滑コンデンサ(104)と、インバータ部(107)と、平滑コンデンサ(104)に充電された電荷をモータ(108)の停止時に放電する放電回路(111)と、平滑コンデンサ(104)が接続された母線間の電圧を母線電圧値として計測する電圧計測部(103)と、放電回路(111)による放電を制御する放電制御装置(20)と、を備え、放電制御装置(20)は、母線電圧値に基づいて放電が異常状態であるか否かを判定し、放電が正常状態であると判定している間は、放電回路(111)にx秒だけ放電させる処理と、時間T毎に放電が異常状態であるか否かを判定する処理とを繰り返し、母線電圧値が目標値に到達した場合、または放電が異常状態であると判定した場合には、放電回路(111)に放電を終了させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6