特許第6804773号(P6804773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804773
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】被験対象可視化装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20201214BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G01N21/65
   A61B3/10 100
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-524032(P2018-524032)
(86)(22)【出願日】2017年6月16日
(86)【国際出願番号】JP2017022295
(87)【国際公開番号】WO2017217534
(87)【国際公開日】20171221
【審査請求日】2020年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-121108(P2016-121108)
(32)【優先日】2016年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】戸井田 昌宏
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−141282(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0128538(US,A1)
【文献】 特開2011−170212(JP,A)
【文献】 特開平9−145619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/65
A61B 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験対象の検査箇所毎に、同一光軸上で発生させたポンプ光及びストークス光の少なくともいずれかの波長を可変させ、前記ポンプ光及び前記ストークス光を前記被験対象に照射する光照射部と、
前記ポンプ光及び前記ストークス光の波長差に応じて前記被験対象から生じるアンチストークス光を検出し、前記アンチストークス光に基づいて分子分布イメージ画像を生成する分子分布イメージ画像生成部と、
前記ポンプ光を照射したときの前記被験対象からの反射光、及び、前記ストークス光を照射したときの前記被験対象からの反射光の少なくともいずれかを検出し、検出した前記反射光に基づいて前記被験対象の断層画像を生成する断層画像生成部と、
生成された前記分子分布イメージ画像及び前記断層画像の少なくともいずれかを表示する画像表示部とを有することを特徴とする被験対象可視化装置。
【請求項2】
前記光照射部が、前記ポンプ光の波長及び前記ストークス光の波長を可変させた範囲において、前記ポンプ光及び前記ストークス光の波長差が0となるように、前記ポンプ光及び前記ストークス光を前記被験対象に照射し、
前記断層画像生成部が、前記ポンプ光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光に基づくデータと、前記ストークス光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光に基づくデータとを、前記波長差が0となる波長において結合させたデータに基づいて前記断層画像を生成する請求項1に記載の被験対象可視化装置。
【請求項3】
前記分子分布イメージ画像生成部が、前記アンチストークス光を干渉光とし、前記干渉光を分光したスペクトル干渉信号に対してフーリエ逆変換の演算処理を行う請求項1から2のいずれかに記載の被験対象可視化装置。
【請求項4】
前記断層画像生成部が、前記ポンプ光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光、及び、前記ストークス光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光の少なくともいずれかを干渉光とし、前記干渉光を分光したスペクトル干渉信号に対してフーリエ逆変換の演算処理を行う請求項1から3のいずれかに記載の被験対象可視化装置。
【請求項5】
前記光照射部が、
光の入射角度に応じて前記光の波長を変換する光パラメトリック結晶を有し、前記光を閉じ込める光閉じ込め器と、
前記光パラメトリック結晶を前記光閉じ込め器と共有し、前記光パラメトリック結晶により波長が変換された光を増幅させる光共振器とを備える請求項1から4のいずれかに記載の被験対象可視化装置。
【請求項6】
前記光照射部が、前記被験対象が有する分子における振動バンドが前記波長差と一致するように、前記ポンプ光の波長及び前記ストークス光の波長を可変させる請求項1から5のいずれかに記載の被験対象可視化装置。
【請求項7】
前記被験対象が有する分子が、グルコース、ルチノール、及びルテインの少なくともいずれかである請求項6に記載の被験対象可視化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験対象の分子分布イメージ及び断面を可視化する被験対象可視化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、遺伝子診断が長足の進歩を遂げ、遺伝的にどのような疾病リスクがあるか否かは個々に判る時代になってきた。ただし、疾病の発生の時期までは判らないため、疾病の発生をより侵襲の少ない方法で早期に発見し、より侵襲の少ない治療を実現していくことが重要となっている。
【0003】
疾病の早期発見には、被験対象の形態変化に至る前段階の機能変化を捉えることが肝要である。機能変化を捉えるためには、組織構造を生きたままで(in vivo)細胞内あるいは組織内の特定タンパク質などの分子の分布を可視化できる分子分布イメージング技術が有効である。
【0004】
光を用いた前記分子分布イメージング技術としては、蛍光標識薬などを用いるプローブ法と、生体内在物質の特質を活用したノンプローブ法とに大別される。前記ノンプローブ法の中でも、CARS(Coherent Anti−Stokes Raman Scattering)を用いた前記分子分布イメージング技術について研究されている。
また、各種疾病の発症機構やその進展メカニズムの解明において、前記被験対象の形態変化を捉えるために、前記被験対象の分子の詳細な空間位置情報は必須である。このため、前記空間位置情報に応じた前記分子分布イメージング技術が求められている。
【0005】
前記空間位置情報を得られ、非侵襲な生体の形態イメージング技術としてOCT(Optical Coherence Tomography)が発展してきている。そこで、前記CARSを用いた前記分子分布イメージング技術と前記OCTによる形態イメージング技術の複合化について検討されており、本発明者も提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−141282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、被験対象の分子分布イメージ画像及び断層画像を同時に取得可能な被験対象可視化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 被験対象の検査箇所毎に、同一光路で発生させたポンプ光及びストークス光の少なくともいずれかの波長を可変させ、前記ポンプ光及び前記ストークス光を前記被験対象に照射する光照射部と、
前記ポンプ光及び前記ストークス光の波長差に応じて前記被験対象から生じるアンチストークス光を検出し、前記アンチストークス光に基づいて分子分布イメージ画像を生成する分子分布イメージ画像生成部と、
前記ポンプ光を照射したときの前記被験対象からの反射光、及び、前記ストークス光を照射したときの前記被験対象からの反射光の少なくともいずれかを検出し、検出した前記反射光に基づいて前記被験対象の断層画像を生成する断層画像生成部と、
生成された前記分子分布イメージ画像及び前記断層画像の少なくともいずれかを表示する画像表示部とを有することを特徴とする被験対象可視化装置である。
【0009】
前記<1>に記載の被験対象可視化装置において、被験対象の検査箇所毎に、前記光照射部は、同一光路で発生させた前記ポンプ光及び前記ストークス光の少なくともいずれかの波長を可変させ、前記ポンプ光及び前記ストークス光を前記被験対象に照射する。前記分子分布イメージ画像生成部は、前記ポンプ光及び前記ストークス光の波長差に応じて前記被験対象から生じる前記アンチストークス光を検出し、前記アンチストークス光に基づいて分子分布イメージ画像を生成する。前記断層画像生成部は、前記ポンプ光を照射したときの前記被験対象からの反射光、及び、前記ストークス光を照射したときの前記被験対象からの反射光の少なくともいずれかを検出し、検出した前記反射光に基づいて前記被験対象の断層画像を生成する。前記画像表示部は、検出した前記反射光に基づいて前記被験対象の断層画像を生成する断層画像生成部と、生成された前記分子分布イメージ画像及び前記断層画像の少なくともいずれかを表示する。
【0010】
前記光照射部が、前記ポンプ光及び前記ストークス光を同一光路で発生させることにより、前記ポンプ光及び前記ストークス光を別個の光路で発生させる場合と比較すると、出射口から前記被験対象までの光路長の調整のためのミラーや空間が不要となり、被験対象可視化装置を小型化することができる。
また、前記被験対象可視化装置が、前記被験対象の検査箇所毎に、同一光路で発生させた前記ポンプ光及び前記ストークス光の少なくともいずれかの波長を可変させて照射させることにより、前記被験対象に前記ポンプ光を照射したときの前記被験対象からの反射光、及び、前記ストークス光を照射したときの前記被験対象からの反射光の少なくともいずれかに基づいて前記被験対象の断層画像を生成するとともに、前記アンチストークス光に基づいて分子分布イメージ画像を生成するため、前記分子分布イメージ画像及び前記断層画像を同時に取得することができる。なお、前記ポンプ光及び前記ストークス光をXY走査させることにより、3次元の前記分子分布イメージ画像及び前記断層画像を取得することができる。
【0011】
<2> 前記光照射部が、前記ポンプ光の波長及び前記ストークス光の波長を可変させた範囲において、前記ポンプ光及び前記ストークス光の波長差が0となるように、前記ポンプ光及び前記ストークス光を前記被験対象に照射し、
前記断層画像生成部が、前記ポンプ光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光に基づくデータと、前記ストークス光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光に基づくデータとを、前記波長差が0となる波長において結合させたデータに基づいて前記断層画像を生成する前記<1>に記載の被験対象可視化装置である。
【0012】
前記<2>に記載の被験対象可視化装置において、前記光照射部は、前記ポンプ光の波長及び前記ストークス光の波長を可変させた範囲において、前記ポンプ光及び前記ストークス光の波長差が0となるように、前記ポンプ光及び前記ストークス光を前記被験対象に照射する。これにより、前記断層画像生成部が、前記ポンプ光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光に基づくデータと、前記ストークス光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光に基づくデータとを、前記波長差が0となる波長において結合させたデータに基づいて前記断層画像を生成することにより、前記断層画像の深度方向におけるデータを増加させることができ、前記断層画像の高分解能化することができる。
【0013】
<3> 前記分子分布イメージ画像生成部が、前記アンチストークス光を干渉光とし、前記干渉光を分光したスペクトル干渉信号に対してフーリエ逆変換の演算処理を行う前記<1>から<2>のいずれかに記載の被験対象可視化装置である。
【0014】
前記<3>に記載の被験対象可視化装置において、前記分子分布イメージ画像生成部が、前記アンチストークス光を干渉光とし、前記干渉光を分光したスペクトル干渉信号に対してフーリエ逆変換の演算処理を行うことにより、ウィナー・ヒンチンの定理から前記分子分布イメージ画像を生成することができる。
【0015】
<4> 前記断層画像生成部が、前記ポンプ光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光、及び、前記ストークス光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光の少なくともいずれかを干渉光とし、前記干渉光を分光したスペクトル干渉信号に対してフーリエ逆変換の演算処理を行う前記<1>から<3>のいずれかに記載の被験対象可視化装置である。
【0016】
前記<4>に記載の被験対象可視化装置において、前記断層画像生成部が、前記ポンプ光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光、及び、前記ストークス光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光の少なくともいずれかを干渉光とし、前記干渉光を分光したスペクトル干渉信号に対してフーリエ逆変換の演算処理を行うことにより、ウィナー・ヒンチンの定理から前記断層画像を生成することができる。
【0017】
<5> 前記光照射部が、
光の入射角度に応じて前記光の波長を変換する光パラメトリック結晶を有し、前記光を閉じ込める光閉じ込め器と、
前記光パラメトリック結晶を前記光閉じ込め器と共有し、前記光パラメトリック結晶により波長が変換された光を増幅させる光共振器とを備える前記<1>から<4>のいずれかに記載の被験対象可視化装置である。
【0018】
前記<5>に記載の被験対象可視化装置の前記光照射部において、前記光閉じ込め器は、光の入射角度に応じて前記光の波長を変換する光パラメトリック結晶を有し、前記光を閉じ込める。前記光共振器は、前記光パラメトリック結晶を前記光閉じ込め器と共有し、前記光パラメトリック結晶により波長が変換された光を増幅させる。これにより、前記光の光軸方向に対する前記光パラメトリック結晶の角度をそれぞれ変化させ、2種類の波長に変換された前記光は、前記光共振器により増幅されて、前記ポンプ光及び前記ストークス光として出射させることができる。また、前記ポンプ光の波長及び前記ストークス光の波長は、前記光パラメトリック結晶の角度を変化させることにより、それぞれ可変させることができる。
【0019】
<6> 前記光照射部が、前記被験対象が有する分子における振動バンドが前記波長差と一致するように、前記ポンプ光の波長及び前記ストークス光の波長を可変させる前記<1>から<5>のいずれかに記載の被験対象可視化装置である。
【0020】
前記<6>に記載の被験対象可視化装置において、前記光照射部が、前記被験対象が有する分子における振動バンドが前記波長差と一致するように、前記ポンプ光の波長及び前記ストークス光の波長を可変させることにより、前記被験対象が有する分子から前記アンチストークス光を生じさせることができるため、検出した前記アンチストークス光に基づいて前記分子分布イメージ画像を生成することができる。また、前記被験対象が有する分子は、複数であってもよい。
【0021】
<7> 前記被験対象が有する分子が、グルコース、ルチノール、及びルテインの少なくともいずれかである前記<6>に記載の被験対象可視化装置である。
【0022】
前記<7>に記載の被験対象可視化装置において、前記被験対象が有する分子が、グルコース、ルチノール、及びルテインの少なくともいずれかであることにより、加齢黄斑変性の発症に関わる分子の眼底網膜内分布が判り、加齢黄斑変性疾患を早期に診断することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、被験対象の分子分布イメージ画像及び断層画像を同時に取得可能な被験対象可視化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A図1Aは、CARSにおいてアンチストークス光が生じるまでのエネルギー準位過程を示す説明図である。
図1B図1Bは、ポンプ光、ストークス光、及びアンチストークス光の角周波数の関係を示す説明図である。
図2A図2Aは、分子振動の励起準位V=1を経たときに共鳴アンチストークス光となる共鳴過程を示す説明図である。
図2B図2Bは、分子振動の励起準位V=1を経ないときに非共鳴アンチストークス光となる非共鳴過程を示す説明図である。
図3図3は、グルコース溶液にポンプ光及びストークス光を同時に照射したときの、アンチストークス光の信号強度におけるストークス光の波長に対する依存性を示すグラフである。
図4図4は、実施例における被験対象可視化装置を示す説明図である。
図5図5は、ポンプ光及びストークス光の波長可変範囲、被験対象の分子における振動バンド、及びアンチストークス光の波長との関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(被験対象可視化装置)
前記被験対象可視化装置は、光照射部と、分子分布イメージ画像生成部と、断層画像生成部と、画像表示部とを有し、更に必要に応じてその他の部を有する。
【0026】
<光照射部>
前記光照射部は、被験対象の検査箇所毎に、同一光路で発生させたポンプ光及びストークス光の少なくともいずれかの波長を可変させ、前記ポンプ光及び前記ストークス光を前記被験対象に照射する。
【0027】
前記被験対象は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、眼底などが挙げられる。
前記検査箇所とは、前記被験対象の前記分子分布イメージ画像及び前記断層画像を取得したい箇所を意味する。前記検査箇所には、前記ポンプ光及び前記ストークス光が同時に照射される。前記ポンプ光及び前記ストークス光が同時に照射され、前記ポンプ光及び前記ストークス光の波長差に応じてアンチストークス光が生じ、検出した前記アンチストークス光に基づいて前記分子分布イメージ画像を生成することができる。
前記波長差とは、前記ポンプ光の波長と前記ストークス光の波長との差分を意味する。
また、前記検査箇所を前記被験対象のX方向に複数設定すると2次元の前記分子分布イメージ画像及び前記断層画像が得られ、前記検査箇所を前記被験対象のXY方向に複数設定すると3次元の前記分子分布イメージ画像及び前記断層画像を得ることができる。
前記同一光路とは、光の通る道が同一であり、同一の光学系を通過することを意味する。
前記ポンプ光及び前記ストークス光を同一光路で発生させる方法としては、例えば、光パラメトリック発振による方法などが挙げられる。
前記光パラメトリック発振による方法としては、例えば、所定の波長のレーザー光を光パラメトリック結晶などの非線形媒質に照射して異なる波長のレーザー光を発生させる方法などが挙げられる。
【0028】
前記ポンプ光は、前記被験対象が有する分子からアンチストークス光を生じさせるために、前記被験対象が有する分子のエネルギー準位が上がるように前記被験対象に照射される光であり、光パラメトリック発振においては「シグナル光」と称されることがある。
前記ストークス光は、前記被験対象が有する分子から前記アンチストークス光を生じさせるために、前記ポンプ光を照射されて上がった前記分子のエネルギー準位を所定のエネルギー準位に誘導するように前記被験対象に照射される光であり、光パラメトリック発振においては「アイドラ光」と称されることがある。
なお、前記被験対象の前記検査箇所に対して、前記ポンプ光と前記ストークス光を同時に照射することにより、前記被験対象が有する分子から前記アンチストークス光を生じさせる原理については後述する。
前記ポンプ光及び前記ストークス光の少なくともいずれかの波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、980nm以上1,150nm以下が好ましい。前記波長が前記好ましい範囲内であると、眼底網膜下の深部における前記分子分布イメージ画像及び前記断層画像が得られやすい点で有利である。
【0029】
前記光照射部は、前記ポンプ光の波長及び前記ストークス光の波長を可変させた範囲において、前記ポンプ光及び前記ストークス光の波長差が0となるように、前記ポンプ光及び前記ストークス光を前記被験対象に照射することが好ましい。
【0030】
前記光照射部は、前記被験対象が有する分子における振動バンドが前記波長差と一致するように、前記ポンプ光の波長及び前記ストークス光の波長を可変させることが好ましい。これにより、前記被験対象が有する分子から前記アンチストークス光を生じさせ、前記アンチストークス光を検出して、前記分子分布イメージ画像を生成することができる。
なお、前記被験対象が有する分子は、複数であってもよい。
前記被験対象が有する分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜疾患にかかわる分子などを選択することができるが、加齢黄斑変性疾患に関与することが公知である点で、グルコース、ルチノール、及びルテインの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0031】
前記光照射部としては、光の入射角度に応じて前記光の波長を変換する光パラメトリック結晶を有し、前記光を閉じ込める光閉じ込め器と、前記光パラメトリック結晶を前記光閉じ込め器と共有し、前記光パラメトリック結晶により波長が変換された光を増幅させる光共振器とを備えることが好ましい。
これにより、前記光の光軸方向に対する前記光パラメトリック結晶の角度をそれぞれ変化させ、同一光路で2種類の波長に変換された前記光は、前記光共振器により増幅されて、前記ポンプ光及び前記ストークス光として出射される。
また、前記光パラメトリック結晶の角度を変化させることにより、前記ポンプ光の波長及び前記ストークス光の波長をそれぞれ可変させることができる。また、このような光パラメトリック発振の高効率化、経時安定性、波長変化に対する前記ポンプ光及び前記ストークス光の出射位置の安定性を確保するとともに、ナノ秒パルス、ピコ秒パルス、及びフェムト秒パルスのいずれの前記光にも対応することができる。
【0032】
前記光パラメトリック発振の高効率化は、前記光閉じ込め器により前記光を閉じ込め、前記光パラメトリック結晶を複数回通過させ、前記光から前記ポンプ光及び前記ストークス光へのエネルギー変換の作用長を確保することにより実現する。
前記光パラメトリック発振の経時安定性は、光パラメトリック発振の共振器長を短くすることにより実現する。また、前記光閉じ込め器における光路長と、前記光共振器における光路長とを一致させることにより、ナノ秒パルス、ピコ秒パルス、及びフェムト秒パルスのいずれの前記光にも対応可能な光パラメトリック発振を実現する。
更に、前記光共振器内の前記ポンプ光及び前記ストークス光は、前記光パラメトリック結晶を往復させているため、前記光の光軸方向に対する前記光パラメトリック結晶の角度を変化させ、往路で前記光の光軸の位置がズレても復路で光軸の位置が戻るため、前記ポンプ光及び前記ストークス光の出射位置を不変とすることができる。
前記光パラメトリック結晶としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カリウムチタンリン酸塩(KTP)などが挙げられる。
【0033】
<分子分布イメージ画像生成部>
前記分子分布イメージ画像生成部は、前記ポンプ光及び前記ストークス光の波長差に応じて前記被験対象が有する分子から生じる前記アンチストークス光を検出し、前記アンチストークス光に基づいて前記分子分布イメージ画像を生成する。
前記分子分布イメージ画像生成部は、前記アンチストークス光を干渉光とし、前記干渉光を分光したスペクトル干渉信号に対してフーリエ逆変換の演算処理を行うことが好ましい。
【0034】
前記アンチストークス光は、例えば、CARS(Coherent Anti−Stokes Raman Scattering)により前記被験対象が有する分子から生じさせることが好ましい。
次に、前記CARSについて図1A図1B図2A、及び図2Bを参照しながら説明する。
【0035】
図1Aは、CARSにおいてアンチストークス光が生じるまでのエネルギー準位過程を示す説明図である。
図1Aに示すように、パルス発振させたポンプ光(角周波数ω)と、パルス発振させたストークス光(角周波数ω)とを、前記被験対象に時空間的に同時に照射する。このとき、前記ポンプ光と前記ストークス光との角周波数差(Δω=ω−ω)が被験対象の分子における振動バンドであると、前記分子のエネルギー準位は、前記ポンプ光により基底準位V=0から上準位へ上がるとともに、前記ストークス光により励起準位V=1に誘導される。その後、前記ポンプ光を前記被験対象に照射すると、より上準位へ上がった後、基底準位V=0に下がる過程でアンチストークス光を生じる。
前記ポンプ光における前記パルスの幅、及び、前記ストークス光における前記パルスの幅としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ピコ秒間オーダーが好ましい。これにより、前記被験対象に対して非侵襲になるとともに、前記非共鳴信号に対する前記共鳴信号の比(以下、「共鳴信号/非共鳴信号比」と称することもある)が確保しやすい。
【0036】
図1Bは、ポンプ光、ストークス光、及びアンチストークス光の角周波数の関係を示す説明図である。
図1Bに示すように、前記ストークス光の角周波数ω及び前記アンチストークス光の角周波数ωasは、エネルギー準位の関係から、前記ポンプ光の角周波数ωを中心にそれぞれ±Δω離れて存在する。即ち、前記ストークス光の角周波数は、次式、ω=ω−Δωと表すことができる。また、前記アンチストークス光の角周波数は、次式、ωas=2ω−ω=ω+Δωと表すことができる。
【0037】
図2Aは、分子振動の励起準位V=1を経たときに共鳴アンチストークス光となる共鳴過程を示す説明図である。図2Bは、分子振動の励起準位V=1を経ないときに非共鳴アンチストークス光となる非共鳴過程を示す説明図である。
図2A及び図2Bに示すように、前記アンチストークス光には、前記共鳴アンチストークス光(以下、「共鳴信号」又は単に「アンチストークス光」と称することもある)及び前記非共鳴アンチストークス光(以下、「非共鳴信号」と称することもある)の2種類がある。
前記共鳴過程を経て生じた前記共鳴アンチストークス光は、前記被験対象が有する分子から生じたものであり、前記分子分布イメージ画像を生成する際に用いられる。
前記非共鳴過程を経て生じた前記非共鳴アンチストークス光は、前記波長差にほとんど依存せず、水の電子励起が関与した応答である。
【0038】
<断層画像生成部>
前記断層画像生成部は、前記ポンプ光を照射したときの前記被験対象からの反射光、及び、前記ストークス光を照射したときの前記被験対象からの反射光の少なくともいずれかを検出し、検出した前記反射光に基づいて前記被験対象の断層画像を生成する。
前記断層画像は、例えば、OCT(Optical Coherence Tomography)などにより取得することができるが、SS−OCT(Swept Source Optical Coherence Tomography)が好ましい。
前記断層画像生成部は、前記ポンプ光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光、及び、前記ストークス光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光の少なくともいずれかを干渉光とし、前記干渉光を分光したスペクトル干渉信号に対してフーリエ逆変換の演算処理を行うことが好ましい。
【0039】
<画像表示部>
前記画像表示部は、生成された前記分子分布イメージ画像及び前記断層画像の少なくともいずれかを表示する。
前記画像表示部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液晶モニターなどが挙げられる。
【0040】
<その他の部>
前記その他の部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、信号処理部を有することが好ましい。
前記信号処理部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポンプ光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光に基づくデータと、前記ストークス光を照射したときの前記被験対象からの前記反射光に基づくデータとを、前記波長差が0となる波長において結合させることが好ましい。
【0041】
図3は、グルコース溶液に前記ポンプ光及び前記ストークス光を同時に照射したときの、前記アンチストークス光の信号強度におけるストークス光の波長に対する依存性を示すグラフであり、縦軸が前記アンチストークス光の信号強度(mV)、横軸が前記ストークス光の波長(nm)である。図3では、前記ポンプ光の波長を1,064nmに固定し、前記ストークス光の波長を変化させ、前記グルコース溶液からの前記アンチストークス光の信号強度をプロットしたものである。
図3に示すように、前記ストークス光の波長において1,209nmを中心とした±6nmの範囲では、前記アンチストークス光の信号強度が低下していないことが確認できる。このことから、前記ストークス光の波長を掃引しながら前記アンチストークス光を10nm程度の範囲で前記スペクトル干渉信号として検出することにより、前記アンチストークス光の光軸方向における分解能を確保することができる。また、前記ストークス光の波長を掃引しながら前記ストークス光の反射光を前記スペクトル干渉信号として検出することにより、SS−OCT(Swept Source Optical Coherence Tomography)における深度方向のスペクトル干渉信号(以下、「Aライン信号」と称することもある)の取得を行ったこととなり、前記断層画像を生成することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
図4は、実施例における被験対象可視化装置を示す説明図である。
図4に示すように、被験対象可視化装置10は、光照射部100と、分子分布イメージ画像生成部200と、断層画像生成部300と、信号処理部400と、画像表示部500と、を有する。
光照射部100の基本波レーザー101は、波長が1,064nmのレーザービームをダイクロイックミラー102に出射する。前記レーザービームは、ピコ秒あるいはフェムト秒のモードを同期させたモードロックレーザービームである。
【0044】
ダイクロイックミラー102は、S1面において、波長が1,064nmの光に対して非反射特性を有する。また、ダイクロイックミラー102は、S2面において、波長が1,064nmの光に対して非反射特性を有し、かつ波長が532nmの光に対して全反射特性を有する。
【0045】
ダイクロイックミラー105は、S3面において、波長が532nmの光に対して非反射特性を有する。また、ダイクロイックミラー105は、S4面において、波長が900nm〜1,200nmの光に対して全反射特性を有し、かつ波長が532nmの光に対して非反射特性を有する。
【0046】
全反射ミラー109は、S5面において、波長が900nm〜1,200nmの光に対して全反射特性を有する。
【0047】
出力ミラー111は、S6面において、波長が900nm〜1,200nmの光に対して70%PR(Partial Reflection)特性を有し、かつ波長が532nmの光に対して全反射特性を有する。また、出力ミラー111は、S7面において、波長が900nm〜1,200nmの光に対して非反射特性を有する。
【0048】
ダイクロイックミラー102と全反射ミラー109との間の空間は、波長が532nmの光を閉じ込める光閉じ込め器(Cavity)を形成している。
なお、ダイクロイックミラー102が移動ステージ103に設けられていることにより、前記光閉じ込め器の光路長を制御することができる。
【0049】
全反射ミラー109、ダイクロイックミラー105及び出力ミラー111によるL型の空間は、光共振器(Optical Parametric Oscillation Cavity)を形成している。
前記光共振器では、波長が532nmの光が光パラメトリック結晶106を同一光路で通過する毎に前記シグナル光及び前記アイドラ光が増幅し、出力ミラー111の閾値を超えた前記シグナル光及び前記アイドラ光が、前記ポンプ光(図4中、点線矢印で示す)及び前記ストークス光(図4中、破線矢印で示す)として出力ミラー111から出射される。
なお、前記光閉じ込め器と前記光共振器とが光パラメトリック結晶106を共有している。また、全反射ミラー109が移動ステージ110に設けられていることにより、前記光共振器の光路長を制御することができる。また、同一光路で発生させた前記ポンプ光の波長及び前記ストークス光の波長は、ガルバノ電源108からガルバノ駆動信号を入力されたガルバノモーター107を用いて、光パラメトリック結晶106の角度を変化させることにより、それぞれ可変させることができる。
【0050】
移動ステージ103及び110により、波長が532nmの光が前記光閉じ込め器を往復する時間と、前記光共振器を往復する時間とを一致させ、前記光の1パルス周期内で光パラメトリック結晶106を複数回通過させて励起させる。
【0051】
前記光パラメトリック発振により、出力ミラー111から前記ポンプ光及び前記ストークス光が、直交した偏光方向で空間的にも時間的にも重なりあった状態で出射される。
直交偏光2周波の前記ポンプ光及び前記ストークス光は、光軸方向を直交軸に対し45°傾けた偏光子112を通過させることにより、45°方向に偏光方向が一致した前記ポンプ光及び前記ストークス光となる。
【0052】
次に、断層画像の取得動作について説明する。
45°方向に偏光方向が一致した前記ポンプ光と前記ストークス光は、それぞれハーフミラー113により分光される。
【0053】
ハーフミラー113により二分された一方の前記ポンプ光と前記ストークス光は、ガルバノミラー115及び116を介して前記被験対象としての眼球部20の眼底に入射して、眼球部20の屈折率境界部において反射し、前記ポンプ光の反射光及び前記ストークス光の反射光として再びハーフミラー113に入射する。
【0054】
ハーフミラー113により二分された他方の前記ポンプ光と前記ストークス光は、反射ミラー301において反射し、干渉光を得るための参照光としてハーフミラー113上で、前記被験対象からの前記ポンプ光の反射光及び前記ストークス光の反射光と重なり合う。
重なり合った前記参照光と前記反射光は、波長が1,064nm以上の光を反射するロングパスダイクロイックミラー302により、前記ポンプ光の前記干渉光及び前記ストークス光の前記干渉光とに分離され、それぞれ光検出器303及び304に入射する。
【0055】
図5は、ポンプ光及びストークス光の波長可変範囲、被験対象の分子における振動バンド、及びアンチストークス光の波長との関係の一例を示す説明図である。
図5に示すように、前記波長差を可変させる範囲における最小値δmin及び最大値δmaxは、複数の被験対象の分子における振動バンドをδとすると、次式、0=δmin<δ<δmaxとする。
例えば、被験対象の分子における振動バンドとして、512cm−1のグルコースの骨格振動バンドδ、1,050cm−1のルチノールのC−O振動バンドδ、及び1,159cm−1のルテインのC−C振動バンドδとする。この場合、前記波長差を可変させる範囲は、0cm−1<δ<1,400cm−1とする。また、前記ポンプ光の波長は、990nm≦λpump≦1,064nmの範囲を、前記ストークス光の波長は、1,150nm≧λstokes≧1,064nmの範囲を変化させる。
これにより、前記ストークス光を検出する光検出器303は、1,064nm≦λstokes≦1,150nmのスペクトル干渉信号を出力し、前記ポンプ光を検出する光検出器304は、1,064nm≧λpump≧990nmのスペクトル干渉信号を出力する。
【0056】
それぞれの前記スペクトル干渉信号は、信号処理部400により、前記波長差が0となる波長1,064nmにおいて結合され、990nm≦λ≦1,150nmのスペクトル干渉信号となる。前記スペクトル干渉信号をフーリエ逆変換すると、深度分解能が、次式、Δz=(2ln2)/π・(λ/Δλ)=3.16μmである、前記断層画像を生成するための前記Aライン信号となる。前記Aライン信号の計測をX方向に走査することにより、前記断層画像を得ることができる。なお、lnは、自然対数であり、λは、前記アンチストークス光の波長であり、Δλは、前記ポンプ光及び前記ストークス光の波長を掃引する際の前記ステップである。
【0057】
次に、分子分布イメージ画像の取得動作について図4を参照して説明する。
ハーフミラー113により分光された一方の前記ポンプ光及び前記ストークス光は、更にハーフミラー201により分光される。
【0058】
ハーフミラー201により分光された一方の前記ポンプ光及び前記ストークス光は、前記非共鳴アンチストークス光の参照光を発生させるために、アンチストークス光発生用試料としての水202及び反射ミラー203を介してレンズ213で集束される。集束点で誘起された前記非共鳴アンチストークス光は、反射ミラー203により反射し、レンズ213で集光されて平行光として再びハーフミラー201に入射する。
【0059】
ハーフミラー201により二分された他方の前記ポンプ光及び前記ストークス光は、ガルバノミラー115及び116を介して、前記被験対象としての眼球部20に入射し、眼球部20の水晶体で集束され眼底網膜に達する。前記ポンプ光及び前記ストークス光を照射された前記眼底網膜内に存在する被験対象の分子から、前記共鳴アンチストークス光が生じる。生じた前記共鳴アンチストークス光は、前記水晶体で集光され、平行光としてハーフミラー201上において、干渉光を得るための参照光としての前記非共鳴アンチストークス光と重なり合う。
【0060】
波長が990nm以上の光を反射するロングパスダイクロイックミラー204は、重なり合った前記共鳴アンチストークス光及び前記非共鳴アンチストークス光と、同一の光軸方向である前記ポンプ光及び前記ストークス光とを分離する。
分離された前記共鳴アンチストークス光と前記非共鳴アンチストークス光は、波長が950nm以上の光を反射するロングパスダイクロイックミラー205により分離され、グルコース骨格の振動モードにおけるアンチストークス光(984nm光)がグルコース共鳴信号として光検出器206に入射する。
ロングパスダイクロイックミラー205が反射したルチノールC−O振動モードのアンチストークス光(911nm光)とルテインC−C振動モードのアンチストークス光(898nm光)は、波長が905nm以上の光を反射するロングパスダイクロイックミラー208により分離され、それぞれルチノール共鳴信号、ルテイン共鳴信号として光検出器209及び211に入射する。
【0061】
図5に示すように、波長差δの可変範囲0cm−1<δ<1,400cm−1においては、グルコース骨格振動の512cm−1に対応した前記共鳴アンチストークス光(波長984nm)が、ルチノールのC−O振動の1,050cm−1に対応した前記共鳴アンチストークス光(波長911nm)が、ルテインのC−C振動の1,525cm−1に対応した前記共鳴アンチストークス光(波長898nm)が、それぞれの中心波長から±5nm程度の範囲で生じる。
これらの前記共鳴アンチストークス光は、前記参照光としての前記非共鳴アンチストークス光とハーフミラー201上で重ね合わされ、光検出器206、209、及び211で検出される。
【0062】
光検出器206、209、及び211からの出力は、ハイパスフィルター207、210、及び212により直流成分が除かれ、スペクトル干渉信号となる。
前記スペクトル干渉信号をフーリエ逆変換すると、深度分解能が、次式、Δz=(2ln2)/π・(λ/Δλ)=(2ln2)/π・(0.9/0.01)=35μmである、前記分子分布イメージ画像を生成するための前記Aライン信号となる。前記Aライン信号の計測をX方向に走査することにより、前記分子分布イメージ画像を得ることができる。
従来の前記CARSを用いた前記分子分布イメージング技術では、高開口数とした光学系を用いて光軸方向への走査が必要であったが、前記アンチストークス光(CARS光)のスペクトル干渉信号をフーリエ逆変換することにより、光軸方向へ走査するための機構を不要にすることができる。
【0063】
以上のような動作により、前記被験対象における前記分子分布イメージ画像及び前記断層画像を同時に取得することができる。
なお、X方向のみならずY方向に光走査を行うことにより、前記被験対象における分子分布イメージの3次元画像、及び形態の3次元画像を同時に取得することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 被験対象可視化装置
20 眼球部(被験対象)
100 光照射部
200 分子分布イメージ画像生成部
300 断層画像生成部
400 信号処理部
500 画像表示部
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5