特許第6804784号(P6804784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ふじわらの特許一覧

<>
  • 特許6804784-取付金具 図000002
  • 特許6804784-取付金具 図000003
  • 特許6804784-取付金具 図000004
  • 特許6804784-取付金具 図000005
  • 特許6804784-取付金具 図000006
  • 特許6804784-取付金具 図000007
  • 特許6804784-取付金具 図000008
  • 特許6804784-取付金具 図000009
  • 特許6804784-取付金具 図000010
  • 特許6804784-取付金具 図000011
  • 特許6804784-取付金具 図000012
  • 特許6804784-取付金具 図000013
  • 特許6804784-取付金具 図000014
  • 特許6804784-取付金具 図000015
  • 特許6804784-取付金具 図000016
  • 特許6804784-取付金具 図000017
  • 特許6804784-取付金具 図000018
  • 特許6804784-取付金具 図000019
  • 特許6804784-取付金具 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6804784
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】取付金具
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/08 20060101AFI20201214BHJP
   F16B 2/06 20060101ALI20201214BHJP
   E04F 11/18 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   F16B2/08 Z
   F16B2/06 Z
   E04F11/18
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-5381(P2020-5381)
(22)【出願日】2020年1月16日
【審査請求日】2020年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】598038197
【氏名又は名称】株式会社ふじわら
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康治
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−044838(JP,U)
【文献】 特開2017−006221(JP,A)
【文献】 特開2007−225102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/08
E04F 11/18
F16B 2/06
E04G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体(2)に外嵌装着される抱持体(4)と、構造体(2)に外嵌装着された抱持体(4)に着脱可能に装着される連結体(5)とを備えており、
抱持体(4)は、可撓性を有し構造体(2)に巻回される有端環状の抱持壁(8)と、抱持壁(8)の環端部からそれぞれ構造体(2)から離れる向きに連設される一対の締付壁(9)とを備え、
締付壁(9)に、同壁(9)を厚み方向に貫通する第1通孔(16)と、該第1通孔(16)の周縁から締付壁(9)の周縁にわたって形成される第1スリット(17)とがそれぞれ設けられており、
連結体(5)は、隙間を介して対向配置される一対の挟持壁(21)と、両挟持壁(21)を橋絡する橋絡壁(22)とを備えており、
抱持体(4)に、一対の挟持壁(21)で一対の締付壁(9)を挟み込むように連結体(5)を装着することにより、構造体(2)と抱持体(4)とが圧嵌係合され、さらに締付壁(9)と挟持壁(21)とで取付対象(3)の連結部(28)が形成されるように構成されており、
抱持体(4)に連結体(5)が装着される過程で、締付壁(9)に形成された第1スリット(17)に連結体(5)の挟持壁(21)が重畳して、連結部(28)に第1通孔(16)を含んで構成される貫通状の連結孔(29)が形成されるようになっていることを特徴とする取付金具。
【請求項2】
連結体(5)の各挟持壁(21)には、厚み方向に貫通する第2通孔(23)と、該第2通孔(23)の周縁から締付壁(9)の周縁にわたって形成される第2スリット(24)とがそれぞれ設けられており、
抱持体(4)に対する連結体(5)の装着姿勢を変更することにより、連結部(28)の形態が、第1スリット(17)と挟持壁(21)、および第1通孔(16)と第2通孔(23)とが重畳して、連結部(28)に貫通状の連結孔(29)が形成される貫通孔形態と、第1スリット(17)と第2スリット(24)、および第1通孔(16)と第2通孔(23)とが重畳して、連結部(28)に切欠き状のフック溝(30)が形成されるフック形態とに、選択的に切換え可能に構成されている請求項1に記載の取付金具。
【請求項3】
構造体(2)の断面は矩形状に構成されており、
構造体(2)の断面中心から構造体(2)に外嵌装着された抱持体(4)の締付壁(9)を見た方向を前方向と規定するとき、抱持壁(8)は、後壁(10)と、後壁(10)の各端部にそれぞれ連設される左右壁(11・12)と、該左右壁(11・12)の端部にそれぞれ連設される一対の前壁(13・13)とを備え、左右壁(11・12)の少なくとも一方が内凹み湾曲状に形成されており、
抱持体(4)に連結体(5)を装着したとき、内凹み湾曲状に形成された左右壁(11・12)が、その曲率が小さくなるように弾性変形した状態で構造体(2)と抱持壁(8)とが圧嵌係合されるようになっている請求項1または2に記載の取付金具。
【請求項4】
構造体(2)の断面は円状に構成されており、
構造体(2)の断面中心から構造体(2)に外嵌装着された抱持体(4)の締付壁(9)を見た方向を前方向と規定するとき、抱持壁(8)は、前方に切欠き部(34)を有する円環状に形成され、抱持壁(8)の左円環壁(35)および右円環壁(36)の少なくとも一方が、構造体(2)の外周面の曲率よりも小さい曲率の緩曲円環状に形成されており、
抱持体(4)に連結体(5)を装着したとき、緩曲円環状に形成された左右の円環壁(35・36)が、構造体(2)の外周面に沿うように弾性変形した状態で構造体(2)と抱持壁(8)とが圧嵌係合されるようになっている請求項1または2に記載の取付金具。
【請求項5】
締付壁(9)に保持突起(18)が形成され、挟持壁(21)に保持突起(18)と係合する係合孔(25)が形成されている請求項1から4のいずれかひとつに記載の取付金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の手摺りや防護柵などの構造体に、規制チェーンやガードワイヤーなどの取付対象を後付けするのに好適な取付金具に関し、とくに構造体に外嵌状に固定される取付金具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば通路用の間隙が設けられた既設の手摺りに、該間隙の通行を規制する規制チェーン(取付対象)を後付けするためには、規制チェーンの端部を支柱(構造体)に連結する必要がある。しかし、既設の支柱に電動工具などを使用して孔開け加工を施すことは困難であり、また、支柱がパイプなどの中空体である場合、支柱に孔を開設すると支柱内に水分が侵入し腐食の要因となるおそれがある。そこで、支柱に孔開けを施さず規制チェーンを連結するためには、支柱に外嵌状に固定される取付金具が有用である。
【0003】
上記固定形態の取付金具は、例えば特許文献1に公知である。特許文献1の取付金具では、半円板状の基端部と直線板状の先端部とで構成される一対の取付金具と、両取付金具の基端部の一端どうしを接続するヒンジとで金具本体が構成されている。ヒンジにはコイルスプリングが設けられており、該コイルスプリングで一対の取付金具が閉じ姿勢に付勢されている。各取付金具の先端部にはそれぞれ貫通孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−225102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の取付金具は、コイルスプリングの付勢力に抗して一対の取付金具を拡開姿勢にし、両基端部間に配管(構造体)が位置する状態でコイルスプリングの付勢力で取付金具を閉じ姿勢とすることにより、配管に取付金具を固定できる。これにより、配管に孔開けを施すことなく取付対象を連結するための孔を容易に設けることができる。しかし、取付金具の基端部に形成されているのは貫通孔であるため、カラビナ等に代表される開閉ゲートを備える取付対象であれば連結できるが、取付対象が鎖の単位コマ等の無端環状のものであると取付金具に直接連結することができず、連結可能な取付対象が限られる点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、構造体に外嵌状に固定される取付金具において、構造物に簡便に固定でき、しかも無端環状の取付対象であっても直接連結できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の取付金具1は、構造体2に外嵌装着される抱持体4と、構造体2に外嵌装着された抱持体4に着脱可能に装着される連結体5とを備えている。抱持体4は、可撓性を有し構造体2に巻回される有端環状の抱持壁8と、抱持壁8の環端部からそれぞれ構造体2から離れる向きに連設される一対の締付壁9とを備える。締付壁9には、同壁9を厚み方向に貫通する第1通孔16と、該第1通孔16の周縁から締付壁9の周縁にわたって形成される第1スリット17とがそれぞれ設けられている。連結体5は、隙間を介して対向配置される一対の挟持壁21と、両挟持壁21を橋絡する橋絡壁22とを備えている。抱持体4に、一対の挟持壁21で一対の締付壁9を挟み込むように連結体5を装着することにより、構造体2と抱持体4とが圧嵌係合され、さらに締付壁9と挟持壁21とで取付対象3の連結部28が形成されるように構成されている。そして、抱持体4に連結体5が装着される過程で、締付壁9に形成された第1スリット17に連結体5の挟持壁21が重畳して、連結部28に第1通孔16を含んで構成される貫通状の連結孔29が形成されるようになっていることを特徴とする。
【0008】
連結体5の各挟持壁21には、厚み方向に貫通する第2通孔23と、該第2通孔23の周縁から締付壁9の周縁にわたって形成される第2スリット24とがそれぞれ設けられている。抱持体4に対する連結体5の装着姿勢を変更することにより、連結部28の形態が、第1スリット17と挟持壁21、および第1通孔16と第2通孔23とが重畳して、連結部28に貫通状の連結孔29が形成される貫通孔形態と、第1スリット17と第2スリット24、および第1通孔16と第2通孔23とが重畳して、連結部28に切欠き状のフック溝30が形成されるフック形態とに、選択的に切換え可能に構成されている。
【0009】
構造体2の断面は矩形状に構成されている。構造体2の断面中心から構造体2に外嵌装着された抱持体4の締付壁9を見た方向を前方向と規定するとき、抱持壁8は、後壁10と、後壁10の各端部にそれぞれ連設される左右壁11・12と、該左右壁11・12の端部にそれぞれ連設される一対の前壁13・13とを備え、左右壁11・12の少なくとも一方が内凹み湾曲状に形成されている。抱持体4に連結体5を装着したとき、内凹み湾曲状に形成された左右壁11・12が、その曲率が小さくなるように弾性変形した状態で構造体2と抱持壁8とが圧嵌係合されるようになっている。
【0010】
構造体2の断面は円状に構成されている。構造体2の断面中心から構造体2に外嵌装着された抱持体4の締付壁9を見た方向を前方向と規定するとき、抱持壁8は、前方に切欠き部34を有する円環状に形成され、抱持壁8の左円環壁35および右円環壁36の少なくとも一方が、構造体2の外周面の曲率よりも小さい曲率の緩曲円環状に形成されている。抱持体4に連結体5を装着したとき、緩曲円環状に形成された左右の円環壁35・36が、構造体2の外周面に沿うように弾性変形した状態で構造体2と抱持壁8とが圧嵌係合されるようになっている。
【0011】
締付壁9に保持突起18が形成され、挟持壁21に保持突起18と係合する係合孔25が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の取付金具1においては、抱持体4に連結体5を装着することにより、構造体2と抱持壁8とが圧嵌係合されるように構成した。これによれば、抱持体4に連結体5を装着するだけの簡単な動作で、構造体2に取付金具1を固定することができる。また、抱持体4に連結体5を装着したとき、締付壁9に形成された第1スリット17に連結体5の挟持壁21が重畳して、連結部28に第1通孔16を含んで構成される貫通状の連結孔29が形成されるように構成した。これによれば、無端環状の取付対象3の一部を第1スリット17を介して第1通孔16に位置させ、この状態で抱持体4に連結体5を装着することにより、連結部28の連結孔29に無端環状の取付対象3を連結することができる。以上のように本発明によれば、抱持体4への連結体5の装着動作によって、構造物2に簡便に固定でき、さらに無端環状の取付対象3を直接連結することができる取付金具1を得ることができる。
【0013】
抱持体4に対する連結体5の装着姿勢を変更することにより、連結部28の形態を、連結部28に貫通状の連結孔29が形成される貫通孔形態と、連結部28に切欠き状のフック溝30が形成されるフック形態とに、選択的に切換え可能に構成した。これによれば、一組の抱持体4と連結体5とからなる取付金具1で、連結部28を貫通孔形態とフック形態のいずれかに切換えることができるので、取付金具1の利便性を向上し、また各形態毎に取付金具1を用意するコストを削減することができる。
【0014】
断面矩形状の構造体2に抱持体4を外嵌装着し、さらに外嵌装着した抱持体4に連結体5を装着したとき、内凹み湾曲状に形成された左右壁11・12が、その曲率が小さくなるように弾性変形した状態で構造体2と抱持壁8とが圧嵌係合されるようにした。これによれば、内凹み湾曲状に形成された左右壁11・12の弾性復元力で抱持壁8と構造体2との間の摩擦力を増大させることができるので、構造体2に対して取付金具1をより強固に固定することができる。
【0015】
断面円状の構造体2に抱持体4を外嵌装着し、さらに外嵌装着した抱持体4に連結体5を装着したとき、緩曲円環状に形成された左右の円環壁35・36が、構造体2の外周面に沿うように弾性変形した状態で構造体2と抱持壁8とが圧嵌係合されるようにした。これによれば、上記と同様に、緩曲円環状に形成された左右の円環壁35・36の弾性復元力で抱持壁8と構造体2との間の摩擦力を増大させることができるので、構造体2に対して取付金具1をより強固に固定することができる。
【0016】
締付壁9に保持突起18が形成され、挟持壁21に保持突起18と係合する係合孔25が形成されていると、連結体5が抱持体4から不用意に分離されることを回避して、構造体2から取付金具1が脱落するのを防止できる。また、保持突起18が係合孔25に嵌り込む際の節度感で、抱持体4の適正位置に連結体5が装着されたことを目視することなく認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る取付金具の斜視図である。
図2】取付金具の分解斜視図である。
図3】連結部を示す部分側面図であり、(a)は、連結部を貫通孔形態にした状態を示しており、(b)は連結部をフック形態にした状態を示している。
図4】取付金具の縦断正面図であり、図3におけるA−A線断面図である。
図5】連結部が貫通孔形態であるときの取付金具の横断平面図である。
図6】抱持体の正面図、背面図、平面図、底面図、および右側面図である。
図7】連結体の正面図、背面図、平面図、底面図、および右側面図である。
図8】取付金具の正面図、背面図、平面図、底面図、および右側面図である。
図9】取付金具の装着方法を説明するための図である。
図10】取付金具の使用形態を示す図である。
図11】連結体および締付壁の変形例を示す分解側面図である。
図12】取付金具の装着方法を説明するための図である。
図13】抱持体の正面図、背面図、平面図、底面図、および右側面図である。
図14】連結体の正面図、背面図、平面図、底面図、および右側面図である。
図15】取付金具の正面図、背面図、平面図、底面図、および右側面図である。
図16】連結体および締付壁の別の変形例を示す分解側面図である。
図17】連結体および締付壁のさらに別の変形例を示す分解側面図である。
図18】構造体が角パイプであるとき取付金具を示す変形例である。
図19】構造体が丸パイプであるとき取付金具を示す変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施例) 図1から図10に本発明に係る取付金具の実施例を示す。本実施例における前後、左右、上下は、図2および図4に示す交差矢印と、矢印の近傍の前後、左右、上下の表記に従う。本実施例の取付金具1は、前後方向に長い長方形断面のフラットバーからなる構造体2に固定されて、取付対象3を構造体2に連結できるようにするものである。図2において、符号4は抱持体を符号5は連結体を示しており、構造体2に抱持体4を装着し、さらに抱持体4に連結体5を装着して一体化することで、図1に示す取付金具1が構成される。
【0019】
図2に示すように抱持体4は構造体2に外嵌装着される。抱持体4は可撓性を有しており、構造体2に巻回される有端環状の抱持壁8と、抱持壁8の各端部からそれぞれ外向きに連設される一対の締付壁9とを備えている。具体的には、抱持壁8は、後壁10と、後壁10の左右端(両端部)からそれぞれ前向きに連設される左右壁11・12と、左右壁11・12の前端(端部)からそれぞれ内向きに連設される一対の前壁13・13とを備える有端四角環状に形成されている。各締付壁9は各前壁13の先端(端部)からそれぞれ前向きに連設されている。締付壁9、後壁10、および前壁13はそれぞれ平坦壁で構成され、左右壁11・12は内凹み状の湾曲壁で構成されている(図6参照)。構造体2に対して抱持体4を外嵌装着した状態において、後壁10は構造体2の後側面と正対し、左壁11は構造体2の左側面と正対し、右壁12は構造体2の右側面と正対し、両前壁13は構造体2の前側面と正対する。
【0020】
各締付壁9の中央には、同壁9を厚み方向に貫通するように第1通孔16が開設されており、さらに第1通孔16の上周縁と締付壁9の上周縁とに跨る第1スリット17が形成されている。これら第1通孔16および第1スリット17により、各締付壁9には上周縁で開口する切欠きが形成される。第1通孔16の直径寸法は、第1スリット17の幅寸法より僅かに大きく形成されている。締付壁9の上下寸法H1は、抱持壁8の上下寸法と同寸法に設定されている。
【0021】
本実施例の抱持体4はばね鋼からなる板材を素材として構成されており、所定形状に打ち抜き加工を施したのち、曲げ加工を施して形成される。図2において符号18は、連結体5を位置保持するための保持突起であり、プレス加工を施すことにより形成される。自由状態における抱持体4は、有端環状の切れ目部分、すなわち一対の前壁13の間が拡開しており、一対の締付壁9は前側に行くに従って広がるテーパー状に設けられている。また、左右壁11・12間の最狭部の間隙寸法W1は、構造体2の左右の幅寸法W2よりも小さく設定されている(図9参照)。図6は抱持体4を正面、背面、平面、底面、および右側面から見た形状を示している。
【0022】
図2に示すように連結体5は、構造体2に外嵌装着された抱持体4に装着されるものであり、隙間を介して対向配置される一対の挟持壁21と、両挟持壁21の前縁どうしを橋絡する半円弧状の橋絡壁22とを備えている。各挟持壁21の中央には、同壁22を厚み方向に貫通する第2通孔23と、第2通孔23の下周縁と挟持壁21の下周縁とに跨る第2スリット24とがそれぞれ形成されている。これら第2通孔23および第2スリット24により、各挟持壁21には下周縁で開口する切欠きが形成される。第2通孔23の直径寸法は、第2スリット24の幅寸法より僅かに大きく形成されている。各挟持壁21の後端寄りには、先の保持突起18が係合する係合孔25が、同突起18に対応する位置に開設されている。挟持壁21の上下寸法H2は、締付壁9の上下寸法H1よりも大きく設定されている。
【0023】
本実施例の連結体5は先の抱持体4と同様にばね鋼からなる板材を素材として構成されており、所定形状に打ち抜き加工を施したのち、曲げ加工を施して形成される。一対の挟持壁21は略平行に配置されており、一対の挟持壁21の内法寸法は、自由状態における抱持体4の一対の締付壁9の最大外法寸法よりも小さく、かつ一対の締付壁9の合計厚み寸法よりも大きく設定されている。図7は連結体5を正面、背面、平面、底面、および右側面から見た形状を示している。連結体5は、その一対の挟持壁21が一対の締付壁9を挟持するように抱持体4に対して装着される。抱持体4に連結体5が装着されることにより、締付壁9と挟持壁21とで取付対象3の連結部28が形成される。
【0024】
連結体5は、第2スリット24の開放部分が下向きに指向する状態(正姿勢)、または第2スリット24の開放部分が上向きに指向する状態(逆姿勢)のいずれかの姿勢で抱持体4に装着できる。前者の状態で抱持体4に対して連結体5を装着すると、図3(a)に示すように、第1スリット17と挟持壁21、および第1通孔16と第2通孔23とが重畳して、連結部28に第1通孔16と第2通孔23とで構成される左右貫通状の連結孔29が形成される貫通孔形態とすることができる。また、後者の状態で抱持体4に対して連結体5を装着すると、図3(b)に示すように、第1スリット17と第2スリット24、および第1通孔16と第2通孔23とが重畳して、連結部28に切欠き状のフック溝30が形成されるフック形態とすることができる。このように、抱持体4に対する連結体5の装着姿勢を変更することで、連結部28の形態が貫通孔形態またはフック形態に選択的に切換え可能に構成されている。抱持体4に装着された連結体5は、保持突起18と係合孔25とが係合されることで分離が阻止され、これにより抱持体4と連結体5とは一体化される。図8は連結部28を貫通孔形態とした状態の取付金具1を正面、背面、平面、底面、および右側面から見た形状を示している。
【0025】
図4および図5に示すように、連結体5が装着された抱持体4の前壁13および後壁10は、それぞれ構造体2の前面および後面に密着しており、取付金具1の前後移動は規制されている。また、抱持体4は、その前側が自由状態のときに比べて左右方向に収縮された状態であり、抱持体4の拡開変形は連結体5により規制されている。先に説明したように、自由状態における抱持体4の左右壁11・12間の間隙寸法W1は、構造体2の左右幅寸法W2よりも小さく設定されているので、湾曲壁からなる左右壁11・12は、図5に示す二点鎖線の形状(自由状態の左右壁11・12の形状)からその曲率が小さくなる方向へ弾性変形されている。これにより、抱持壁8の左右壁11・12はその弾性復元力で構造体2を挟持している。また、左右壁11・12の弾性復元力により、抱持体4の締付壁9は、連結体5の挟持壁21に押付けられており、従って、保持突起18と係合孔25との係合状態がより解除されにくくなり、両者4・5を強固に一体化できる。
【0026】
ここで、構造体2への取付金具1の固定方法の一例を説明する。図9(a)に示すように、まず、第1スリット17の開放部分を上向きにした状態で、自由状態の抱持体4の締付壁9のそれぞれを左右方向へ引張り、一対の締付壁9の前端どうしの距離が、構造体2の左右幅寸法W2を超える程度まで拡開させて、一対の締付壁9で構造体2の後部を挟み込む(図9(a)の二点鎖線参照)。この状態から、一対の前壁13が構造体2の左右側面前端を乗り越えるように抱持体4を前方へ押し込むことにより、図2に示す状態に抱持体4を構造体2に外嵌装着できる。このとき、左右壁11・12間の間隙寸法W1と構造体2の左右幅寸法W2との寸法関係により左右壁11・12は拡開状に弾性変形しており、その弾性復元力で抱持体4は仮保持される。
【0027】
次いで、一対の締付壁9を密着させるように抱持体4の前側を左右方向に収縮させ、この状態で一対の挟持壁21で一対の締付壁9を挟み込むように連結体5を装着し、保持突起18と係合孔25とを係合させることにより、抱持体4と連結体5とを一体化することができる。これにより、構造体2と抱持体4とが圧嵌係合され、構造体2に取付金具1を固定することができる。このとき、連結部28を貫通孔形態にする場合には、第2スリット24の開放部分が下向きになるように連結体5を装着し、フック形態にする場合には、第2スリット24の開放部分が上向きになるように連結体5を装着する。また、貫通孔形態の連結部28に無端環状の取付対象3を連結したい場合には、仮保持状態の抱持体4に対して第1スリット17を介して第1通孔16に取付対象3を引っ掛け、この状態で第2スリット24の開放部分を下向きにした連結体5を上方から抱持体4に装着する。
【0028】
構造体2から取付金具1を取り外したいときは、抱持体4から連結体5を分離し、構造体2から抱持体4を分離すればよい。抱持体4から連結体5を分離させるとき、締付壁9の上下寸法H1よりも挟持壁21の上下寸法H2が大きく形成されているので、連結体5を上方から下方へ、または下方から上方へ移動操作するとき、連結体5のみに操作力を作用させることができる。従って、締付壁9の上下寸法H1よりも挟持壁21の上下寸法H2が小さく形成されている場合、または締付壁9の上下寸法H1と挟持壁21の上下寸法H2とは同寸法に形成されている場合に比べて、分離操作を容易に行うことができる。
【0029】
本実施例の抱持体4はばね鋼で形成されている。厚み寸法が同一の場合、ばね鋼の弾性限界は一般構造用の鋼のそれよりも高く、そのため抱持体4を大きく拡開変形させることができるので、構造体2に抱持体4を装着する際、あるいは構造体2から抱持体4を分離する際に、抱持体4が弾性限界を超えて破損するのを可及的に阻止することができる。
【0030】
図10は、本実施例に係る取付金具1の使用形態を示しており、階段手摺100と防護柵101との間の通路用間隙102に、取付金具1を用いて規制チェーン105を設けている。また、階段手摺100および防護柵101の高さ方向の中途部に、取付金具1を用いてガードワイヤー106を設けている。規制チェーン105は、チェーン本体110と、チェーン本体110の一端に設けられるカラビナ111と、カラビナ111が掛止されるリング体112とで構成されている。また、ガードワイヤー106は、ワイヤー体113と、ワイヤー体113の両端にそれぞれ設けられて、ワイヤー体113にテンションを付与した状態で保持するテンショナー114とで構成されている。
【0031】
リング体112は、階段手摺100の端部の支柱120(構造体2)に、連結部28を貫通孔形態にした取付金具1を用いて連結されており、チェーン本体110の他端は、防護柵101の端部の支柱121(構造体2)に、連結部28を貫通孔形態にした取付金具1を用いて連結されている。開閉ゲートを操作してカラビナ111をリング体112に係止することにより、チェーン本体110を支柱120・121間に掛け渡して通路用間隙102の通行を規制できる。
【0032】
ガードワイヤー106の各テンショナー114は、階段手摺100の直線部、および傾斜部の両端部の支柱120・120に、連結部28を貫通孔形態にした取付金具1を用いて連結されている。各テンショナー114は連結孔29を介してねじ込まれたボルトにより取付金具1に締結固定される。階段手摺100の直線部、および傾斜部の中間部分の支柱120には、連結部28をフック形態にした取付金具1を固定して、ワイヤー体113の垂れ下がりや移動を規制している。
【0033】
上記のように、本実施例の取付金具1においては、既存の階段手摺100や防護柵101に孔開け加工を施すことなく、規制チェーン105やガードワイヤー106を後付けするため取付金具1を簡便に設けることが可能となる。また、規制チェーン105やガードワイヤー106が必要なくなったときには、抱持体4から連結体5を分離するだけで、階段手摺100や防護柵101から取付金具1を取り外すことができるので、取付用の孔などが残ることなく現状回復が容易な点でも有利である。
【0034】
以上のように、本実施例の取付金具1によれば、抱持体4に連結体5を装着することにより、構造体2と抱持体4とが圧嵌係合されるように構成したので、抱持体4に連結体5を装着するだけの簡単な動作で、構造体2に取付金具1を固定することができる。また、抱持体4に連結体5を装着したとき、締付壁9に形成された第1スリット17に連結体5の挟持壁21が重畳して、連結部28に貫通状の連結孔29が形成されるようにしたので、無端環状の取付対象3の一部を第1スリット17を介して第1通孔16に位置させ、この状態で抱持体4に連結体5を装着することにより、連結部28の連結孔29に無端環状の取付対象3を連結することができる。従って、抱持体4への連結体5の装着動作によって、構造物2に取付金具1を簡便に固定でき、さらに取付金具1に無端環状の取付対象3を直接連結することができる。
【0035】
加えて、断面矩形状の構造体2に抱持体4を外嵌装着し、さらに外嵌装着した抱持体4に連結体5を装着したとき、内凹み湾曲状に形成された左右壁11・12が、その曲率が小さくなるように弾性変形した状態で構造体2と抱持壁8とが圧嵌係合されるようにしたので、左右壁11・12の弾性復元力で抱持壁8と構造体2との間の摩擦力を増大させることができる。従って、構造体2に対して取付金具1をより強固に固定することができる。
【0036】
締付壁9に保持突起18を形成し、挟持壁21に保持突起18と係合する係合孔25を形成したので、連結体5が抱持体4から不用意に分離されることを回避して、構造体2から取付金具1が脱落するのを防止できる。また、保持突起18が係合孔25に嵌り込む際の節度感で、抱持体4の適正位置に連結体5が装着されたことを目視することなく認識することができる。
【0037】
抱持体4に対する連結体5の装着姿勢を変更することにより、連結部28の形態を、連結孔29が形成される貫通孔形態と、フック溝30が形成されるフック形態とに、選択的に切換え可能に構成したので、一組の抱持体4と連結体5とからなる取付金具1で、連結部28を貫通孔形態とフック形態のいずれかに切換えることができ、従って、取付金具1の利便性を向上し、また各形態毎に取付金具1を用意するコストを削減することができる。
【0038】
図11から図15は、連結体5および締付壁9の変形例を示しており、本変形例の連結体5は、連結部28を貫通孔形態とするとき、橋絡壁22が下側に位置する状態で締付壁9に装着され、連結部28をフック形態とするとき、橋絡壁22が前側に位置する状態で締付壁9に装着される。すなわち、上記実施例とは、締付壁9に対する連結体5の装着姿勢が異なる。装着姿勢における橋絡壁22の位置が異なるので、係合孔25は挟持壁31の前端側(橋絡壁22側)にも設けられている。第1通孔16の直径寸法と、第1スリット17の幅寸法とは同一に形成され、第2通孔23の直径寸法と、第2スリット24の幅寸法とは同一に形成されている。他は上記実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の変形例においても同じとする。図13は抱持体4を正面、背面、平面、底面、および右側面から見た形状を示しており、図14は連結体5を正面、背面、平面、底面、および右側面から見た形状を示しており、図15は連結部28を貫通孔形態とした状態の取付金具1を正面、背面、平面、底面、および右側面から見た形状を示している。
【0039】
図16は、連結体5および締付壁9の別の変形例を示しており、本変形例の連結体5は、第2通孔23および第2スリット24で形成される切欠きが、橋絡壁22の対辺部(後周縁)に開放されている点と、係合孔25が締付壁9の保持突起18に対応するように挟持壁21の対角位置に形成される点が先の実施例の連結体5と異なる。このように第2スリット24の形成位置を変更した場合でも、連結部28を貫通孔形態とフック形態とに選択的に切換えることができる。なお、第2スリット24の形成位置の変更にともない保持突起18と係合孔25の形成位置も変更することが好ましい。
【0040】
図17は、連結体5および締付壁9のさらに別の変形例を示しており、本変形例の連結体5は、先の変形例同様、第2通孔23および第2スリット24で形成される切欠きが、橋絡壁22の対辺部(後周縁)に開放されている。また、第1通孔16および第1スリット17で形成される切欠きが、締付壁9の前周縁に開放されている。この変形例においては、貫通孔形態の連結部28にすることができる。連結体5は、抱持体4に対して上方、下方、あるいは前方から装着できるので、締付壁9の上方、下方、あるいは前方のうち、いずれか一方に障害物がなければ構造体2に取付金具1を固定することができる。
【0041】
図18は構造体2が角パイプであり、その断面が正方形である場合の抱持体4の変形例を示している。図18に示す抱持体4は先の実施例の抱持壁8の各壁10〜13の寸法が異なるだけで構成は同一である。
【0042】
図19は構造体2が丸パイプであり、その断面が円形である場合の抱持体4の変形例を示している。本変形例の抱持壁8は、前方に切欠き部34を有する左右の円環壁35・36からなる円環状に形成される点が上記の実施例と異なる。抱持壁8の左円環壁35および右円環壁36は、構造体2の外周面の曲率よりも小さい曲率の緩曲円環状に形成されており、自由状態における抱持壁8は、前後方向に長軸、左右方向に短軸を持つ略楕円状に形成されている(図19の二点鎖線参照)。抱持体4に連結体5を装着したとき、緩曲円環状に形成された左右の円環壁35・36は、構造体2の外周面に沿うように弾性変形されている。
【0043】
上記のように、緩曲円環状に形成された左右の円環壁35・36が、構造体2の外周面に沿うように弾性変形した状態で構造体2と抱持壁8とが圧嵌係合されるようにしたので、上記の実施例と同様に、緩曲円環状に形成された左右の円環壁35・36の弾性復元力で抱持壁8と構造体2との間の摩擦力を増大させることができるので、構造体2に対して取付金具1をより強固に固定することができる。
【0044】
上記の実施例では、締付壁9の上下寸法H1は、抱持壁8の上下寸法と同寸法に設定したが、大きくあるいは小さく設定することもできる。抱持壁8は上下寸法が一定の帯状に形成したが、必ずしも上下寸法は一定である必要はない。また、抱持壁8に開口や突起を設けることもできる。上記の抱持体4は1個のパーツで構成したが、例えば左右2個に分割した半割体を一体化して構成することもできる。この場合には、一対の半割体を例えば締結体などの接続構造で一体にすればよい。連結体5の挟持壁21は少なくとも締付壁9の第1スリット17に重畳できる形状であればよく、上記実施例の締付壁9の構成に限られない。
【符号の説明】
【0045】
1 取付金具
2 構造体
3 取付対象
4 抱持体
5 連結体
8 抱持壁
9 締付壁
10 後壁
11 左壁
12 右壁
13 前壁
16 第1通孔
17 第1スリット
18 保持突起
21 挟持壁
22 橋絡壁
23 第2通孔
24 第2スリット
25 係合孔
28 連結部
29 連結孔
30 フック溝
34 切欠き部
35 左円環壁
36 右円環壁
【要約】
【課題】構造体に外嵌状に固定される取付金具において、構造物に簡便に固定でき、しかも無端環状の取付対象であっても直接連結できるようにする。
【解決手段】構造体2に外嵌装着される抱持体4は、有端環状の抱持壁8と一対の締付壁9とを備えるものとし、締付壁9に厚み方向に貫通する第1通孔16と、第1通孔16の周縁から締付壁9の周縁にわたって形成される第1スリット17とをそれぞれ設ける。抱持体4に着脱可能に装着される連結体5は、一対の挟持壁21と橋絡壁22とを備えるものとする。抱持体4に連結体5を装着することにより、構造体2と抱持壁8とが圧嵌係合され、さらに締付壁9と挟持壁21とで取付対象3の連結部28が形成されるように構成する。そして、抱持体4に連結体5が装着される過程で、第1スリット17に挟持壁21が重畳して、連結部28に第1通孔16を含んで構成される貫通状の連結孔29が形成されるようにする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19