特許第6804791号(P6804791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804791フッ素化化合物を有する有機溶媒中の導電性ポリマー
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  • 特許6804791-フッ素化化合物を有する有機溶媒中の導電性ポリマー 図000013
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804791
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】フッ素化化合物を有する有機溶媒中の導電性ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20201214BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20201214BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C08L65/00
   C08L53/02
   C08K5/5419
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
   H01L27/32
【請求項の数】13
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-544753(P2017-544753)
(86)(22)【出願日】2016年3月9日
(65)【公表番号】特表2018-510936(P2018-510936A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】EP2016055057
(87)【国際公開番号】WO2016142437
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2019年2月14日
(31)【優先権主張番号】15158257.4
(32)【優先日】2015年3月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】シュマン シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】カウシュ−ブジーズ ニーナ
(72)【発明者】
【氏名】レーベニッヒ ヴィルフリート
(72)【発明者】
【氏名】ゼウリング ヤン
(72)【発明者】
【氏名】エルシュナー アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シール アルヌルフ
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−327058(JP,A)
【文献】 特開2010−159365(JP,A)
【文献】 特表2014−502288(JP,A)
【文献】 再公表特許第2012/029618(JP,A1)
【文献】 特開2010−146726(JP,A)
【文献】 特開2013−125316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
H05B 33/00− 33/28
H01L 27/00− 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)70〜99.5wt%の少なくとも1種の有機溶媒と、
b)0.05〜4wt%の少なくとも1種の導電性ポリマーと、
c)0.05〜10wt%の少なくとも1種のフッ素化化合物と、
d)0.05〜13wt%の少なくとも1種の高分子アニオンと
e)0〜6wt%の少なくとも1種の添加剤と
を含み、
前記成分a)〜e)の合計が100wt%であり、
前記組成物の含水量が、組成物の全重量に基づいて2wt%以下であり、
前記少なくとも1種の導電性ポリマーb)がポリチオフェンであり、
前記少なくとも1種のフッ素化化合物c)が非イオン性化合物であり、
前記少なくとも1種の高分子アニオンd)が、イオン性および非イオン性反復単位を含むコポリマーである、組成物。
【請求項2】
コポリマーが、重合スチレンモノマー単位を含み、前記重合スチレンモノマー単位の少なくとも一部がスルホン化モノマー単位および重合された非スルホン化モノマー単位であり、前記非スルホン化モノマー単位のモル比は、前記コポリマーにおけるモノマー単位の全量に基づいて少なくとも5%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コポリマーが、構造A−B−C−B−Aを有する水素化スチレン−イソプレンブロックコポリマーであり、ブロックAがtert−ブチル基で少なくとも部分的に置換されているポリスチレンブロックに対応し、ブロックBが交互共重合エチレン−プロピレン単位のブロックに対応し、ブロックCがスルホン化ポリスチレンブロックに対応する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の有機溶媒a)が、非プロトン性有機溶媒、極性有機溶媒、非極性有機溶媒および非極性、非プロトン性有機溶媒またはこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、前記少なくとも1種のフッ素化化合物c)として、水素原子の少なくとも10%がフッ素原子によって置換されている少なくとも1つの脂肪族残基または芳香族残基を含む化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、前記少なくとも1種のフッ素化化合物c)として、2,100g/mol未満の分子量を有するフッ素化化合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種のフッ素化化合物c)が、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシランまたはトリアルコキシシランであり、少なくとも1つのフッ素化脂肪族基またはフッ素化芳香族基がSi原子に結合している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のフッ素化化合物c)が高分子フッ素化化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のフッ素化化合物c)が、100℃で40mbar未満の蒸気圧(1barの圧力で決定した)を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の導電性ポリマーb)がカチオン性ポリチオフェンである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記カチオン性ポリチオフェンおよび前記少なくとも1種の高分子アニオンd)が、ポリチオフェン:高分子アニオン錯体の形態で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
I)第1の面を有する基板を準備する工程と、
II)前記基板の第1の面上に請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を少なくとも部分的に重ね合わせる工程と、
III)前記組成物から少なくとも1種の有機溶媒a)を少なくとも部分的に除去し、それによって前記基板上に重ね合わされた導電層を得る工程と
を含む、層状構造を製造する方法。
【請求項13】
OLED、ディスプレイ、有機太陽電池、ハイブリッド太陽電池、電界効果トランジスタ、タッチスクリーンもしくは熱電発電装置またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されるデバイスにおける導電層を作製するための請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の有機溶媒a)と、少なくとも1種の導電性ポリマーb)と、少なくとも1種のフッ素化化合物c)と、コポリマーを含む少なくとも1種の高分子アニオンd)とを含む組成物に関する。さらに、本発明は、組成物を生成する方法、組成物を含む層状構造、層状構造を製造する方法、層状構造を含むデバイス、特にOLED、および層状構造における組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、加工性、重量および化学修飾による特性の選択的調節に関して金属よりも利点を与えるので、導電性ポリマーは経済的重要性がますます増加している。公知のπ共役ポリマーの例は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンおよびポリ(p−フェニレンビニレン)である。導電性ポリマーの層は、例えば、コンデンサにおける高分子対電極として、またはプリント基板におけるスルーホールめっきのために技術的に広範に使用されている。導電性ポリマーは、単量体前駆体、例えば置換されていてもよいチオフェン、ピロールおよびアニリンならびに任意にそれらのオリゴマー誘導体から化学的または電気化学的酸化によって生成される。化学的酸化重合が、液体媒質中または多様な基板上で実施することが技術的に簡単であるために特に普及している。
【0003】
技術的に使用される特に重要なポリチオフェンは、例えば、特許文献1に記載されているポリ(エチレン−3,4−ジオキシチオフェン)(PEDOTまたはPEDT)であり、これは、エチレン−3,4−ジオキシチオフェン(EDOTまたはEDT)の化学重合によって生成され、その酸化形態において非常に高い導電率の値を示す。多くのポリ(アルキレン−3,4−ジオキシチオフェン)誘導体、特にポリ(エチレン−3,4−ジオキシチオフェン)誘導体、それらのモノマー単位、合成および適用は、非特許文献1によって提供されている。
【0004】
例えば、特許文献2に開示されているポリスチレンスルホン酸(PSS)などのポリアニオンとのPEDOTの分散系は産業界において特に重要性を獲得している。これらの分散系は、例えば、特許文献3に示されている有機発光ダイオード(OLED)における帯電防止塗料としてまたは正孔注入層として多くの用途が見出されている透明な導電性フィルムを生成するために使用され得る。
【0005】
EDOTの重合は高分子電解質錯体を形成するためにポリアニオンの水溶液中で行われる。電荷補償の目的のために対イオンとして高分子アニオンを含む、カチオン性ポリチオフェンはまた、多くの場合、専門家によってポリチオフェン/ポリアニオン錯体と称されている。ポリカチオンとしてPEDOTおよびポリアニオンとしてPSSの高分子電解質特性によって、この錯体は完全な溶液ではなく、むしろ分散系である。ポリマーまたはポリマーの部分が溶解または分散する程度は、ポリカチオンとポリアニオンの質量比、ポリマーの電荷密度、環境の塩濃度および周囲媒質の性質に依存する(非特許文献2)。
【0006】
上記のように、PEDOTおよびPSSの錯体は広範な用途が見出されている。しかしながら、ポリアニオンとしてPSSを使用する不都合な点は、それが水および水混和性有機溶媒、例えば、エタノールまたはメタノールなどの低級アルコールに溶解するが、水非混和性有機溶媒には溶解しないことである。しかしながら、水非混和性溶媒中のPEDOTなどの導電性ポリマーの分散は一部の場合において望ましい。なぜなら、第1にこのような溶媒は蒸発によって比較的容易に除去でき、このような溶媒系は特に良好なフィルム形成特性によって識別されるからである。第2に、PEDOTを含む分散系は塗装系と組み合わせて頻繁に使用されるが、それは多くの場合、水非混和性溶媒または溶媒系に基づく。
【0007】
さらに、水性PEDOT/PSS分散系は、これらの分散系から生成された正孔注入層を有するOLEDの効率および寿命が、多くの場合、不十分であるという不都合な点を有する。特に、PEDOT/PSS分散系がOLEDにおける正孔注入層を生成するために使用される場合、OLEDの輝度はいくつかの状況において比較的急速に減少する。
【0008】
特許文献4は、水非混和性有機溶媒ならびにポリチオフェンおよびスルホン化合成ゴムに基づいた錯体を含む組成物を開示している。これらの非水溶性組成物はOLEDにおける正孔注入層の形成のために使用され得る。このようなOLEDの寿命は、正孔注入層が、特許文献3に開示されている水性PEDOT/PSS分散系によって作製されているOLEDの寿命より顕著に長い。しかしながら、正孔注入層がポリチオフェンなどの導電性ポリマーに基づいているOLEDの寿命および効率をさらに改良する必要性が依然として存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第0339340 A2号
【特許文献2】欧州特許第0440957 A2号
【特許文献3】欧州特許第1227529 A2号
【特許文献4】国際公開第2012/059215 A1号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】L.Groenendaal、F.Jonas、D.Freitag、H.Pielartzik & J.R.Reynolds、Adv.Mater.12、(2000)p.481−494
【非特許文献2】V.Kabanov、Russian Chemical Reviews 74、2005、3−20
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、有機電子デバイス、特に、正孔注入層がPEDOTなどの導電性ポリマーに基づいているOLED、または導電性ポリマー層を含む太陽電池の分野における従来技術の不都合な点の少なくとも1つを克服することである。
【0012】
特に、本発明の目的は、基本的に水を含まず、OLEDにおける正孔注入層または太陽電池における導電層を作製するために使用され得、従来技術から公知の組成物と比較して、性能、特にこれらのデバイスの寿命および効率を改良するのに役立つ、PEDOTなどの導電性ポリマーを含む組成物を提供することである。
【0013】
また、本発明の目的は、このような組成物を生成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的の少なくとも1つの解決策に対する寄与は、カテゴリーを形成する独立請求項の主題によって提供され、その従属請求項は本発明の好ましい実施形態を表し、その主題は同様に少なくとも1つの目的を解決するのに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は標準的な構造および封入を有するOLEDを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】

a)少なくとも1種の有機溶媒と、
b)少なくとも1種の導電性ポリマー、好ましくはカチオン性ポリマーと、
c)少なくとも1種のフッ素化化合物と、
d)イオン性および非イオン性反復単位を含むコポリマーである少なくとも1種の高分子アニオンと
を含む、組成物。
【0017】

イオン性反復単位の数が非イオン性反復単位の数より少ない、実施形態1に記載の組成物。
【0018】

イオン性反復単位が、好ましくは、カルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩またはそれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される酸性基、好ましくはスルホン酸塩を含む、実施形態1または2に記載の組成物。
【0019】

イオン性反復単位が、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、マレイン酸アクリル酸塩(maleic acrylate)、スチレンスルホン酸塩、スチレンジスルホン酸塩、ビニルスルホン酸塩またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されるモノマーに由来し、それらの基は置換されていてもよい、実施形態1〜3のいずれかに記載の組成物。
【0020】

非イオン性反復単位が、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、シロキサンまたはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されるモノマーに由来する、実施形態1〜4のいずれかに記載の組成物。
【0021】

アルキレン基が分枝であってもよく、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、実施形態5に記載の組成物。
【0022】

アリーレン基が置換されていてもよく、フェニルエテン基(スチレン)、フェニルプロペン基、フェニルブテン基、フェニルペンテン基またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、実施形態5に記載の組成物。
【0023】

コポリマーが、統計コポリマー、交互コポリマー、ジブロックコポリマー、マルチブロックコポリマー、グラフトコポリマー、グラジエントコポリマーまたはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択され、ブロックコポリマーが好ましい、実施形態1〜7のいずれかに記載の組成物。
【0024】

コポリマーが、一般式(Ia)または(Ib)または(Ic)による構造を有し、
【化1】
式中、
Aはイオン性反復単位を表し、
Bは非イオン性反復単位を表し、
Cは反復単位Bと異なるさらなる非イオン性単位を表し、
a、b、c、d、eまたはfの少なくとも1つは、1から100から独立して選択される整数である、実施形態1〜8のいずれかに記載の組成物。
【0025】
10
高分子アニオンd)が、式(Ib)による少なくとも3つのブロックA、BおよびCを有する水素化スチレンブロックコポリマーであり、
I1.ブロックAは少なくとも部分的にスルホン化されたポリスチレンブロックに対応し、
I2.ブロックBは、nが10から1000である水素化されたcis−ポリイソプレンのブロック
【化2】
もしくはnが10から1000である水素化されたtransポリイソプレンのブロック
【化3】
またはそれらの混合物に対応し、
I3.ブロックCは、tert−ブチル基で少なくとも部分的に置換されているポリスチレンブロックに対応する、
実施形態9に記載の組成物。
【0026】
11
ブロックCを表すポリスチレンブロックが、スチレン基のフェニル単位の量に基づいて、1〜70%の程度、または好ましくは5〜60%の程度、または好ましくは10〜50%の程度で好ましくはtert−ブチル基で置換されている、実施形態9または10に記載の組成物。
【0027】
12
コポリマーが、その端部で非イオン性反復単位を含む、実施形態1〜11のいずれかに記載の組成物。
【0028】
13
高分子アニオンd)が、重合されたスルホン化モノマー単位および重合された非スルホン化モノマー単位を含み、非スルホン化単位のモル比が、各場合、コポリマーにおけるモノマー単位の全量に基づいて、少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも40%である、実施形態1〜12のいずれかに記載の組成物。
【0029】
14
高分子アニオンd)が、重合されたスルホン化単位および重合された非スルホン化単位を含むブロックコポリマーであり、非スルホン化単位のモル比が、各場合、コポリマーにおけるモノマー単位の全量に基づいて、少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも40%である、実施形態13に記載の組成物。
【0030】
15
高分子アニオンd)が、重合されたスルホン化ポリスチレン単位および重合された非スルホン化単位を含むブロックコポリマーであり、非スルホン化単位のモル比が、各場合、コポリマーにおけるモノマー単位の全量に基づいて、少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも40%である、実施形態14に記載の組成物。
【0031】
16
高分子アニオンd)が、構造C−B−A−B−Cを有する、水素化または非水素化、好ましくは水素化スチレン−イソプレンブロックコポリマーであり、ブロックCが、tert−ブチル基で少なくとも部分的に置換されているポリスチレンブロックに対応する、実施形態1〜15のいずれかに記載の組成物。
【0032】
17
少なくとも1種の高分子アニオンd)の分子量が、1,000〜2,000,000g/molの範囲、好ましくは5,000〜600,000g/molの範囲、または好ましくは10,000〜400,000g/molの範囲である、実施形態1〜16のいずれかに記載の組成物。
【0033】
18
組成物の含水量が、組成物の全重量に基づいて、2wt%以下、好ましくは0.5wt%以下、または好ましくは0.3wt%以下である、実施形態1〜17のいずれかに記載の組成物。
【0034】
19
少なくとも1種の有機溶媒a)が、非プロトン性有機溶媒、極性有機溶媒、非極性有機溶媒および非極性、非プロトン性有機溶媒またはこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される、実施形態1〜18のいずれかに記載の組成物。
【0035】
20
少なくとも1種の有機溶媒a)が、20未満の比誘電率を有する、実施形態1〜19のいずれかに記載の組成物。
【0036】
21
少なくとも1種の有機溶媒a)が、第1の有機溶媒a1)および第2の有機溶媒a2)である、少なくとも2種の異なる有機溶媒の混合物である、実施形態1〜20のいずれかに記載の組成物。
【0037】
22
第1の有機溶媒a1)が、非プロトン性、極性有機溶媒または溶媒系である、実施形態21に記載の組成物。
【0038】
23
第2の有機溶媒a2)が、非プロトン性、非極性有機溶媒または溶媒系である、実施形態21または22に記載の組成物。
【0039】
24
第1の有機溶媒a1)が、エーテル、エステル、シロキサン、ハロゲン化芳香族炭化水素、パーフルオロ化溶媒またはそれらの少なくとも2つの混合物を含む群から選択される、実施形態21〜23のいずれかに記載の組成物。
【0040】
25
第2の有機溶媒a2)が、環状有機溶媒および直鎖状有機溶媒の混合物である、実施形態21〜24のいずれかに記載の組成物。
【0041】
26
第1の有機溶媒a1)対第2の有機溶媒a2)の比が、2:1から10:1の範囲、好ましくは2.5:1から9:1の範囲、または好ましくは3:1から8:1の範囲である、実施形態21〜25のいずれかに記載の組成物。
【0042】
27
組成物が、少なくとも1種のフッ素化化合物c)として、2,100g/mol未満の分子量を有するフッ素化化合物を含む、実施形態1〜26のいずれかに記載の組成物。
【0043】
28
少なくとも1種のフッ素化化合物c)が、40mbar未満、好ましくは20mbar未満、より好ましくは10mbar未満の蒸気圧(各場合、100℃の温度で決定した)を有する、実施形態1〜27のいずれかに記載の組成物。
【0044】
29
少なくとも1種のフッ素化化合物c)が少なくとも1つのフッ素化炭素原子を含む、実施形態1〜28のいずれかに記載の組成物。
【0045】
30
少なくとも1種のフッ素化化合物が、水素原子の少なくとも10%がフッ素原子によって置換されている、少なくとも1つの脂肪族残基または芳香族残基を含む、実施形態1〜29のいずれかに記載の組成物。
【0046】
31
少なくとも1種のフッ素化化合物c)が、式(IIa)または(IIb)による構造:
【化4】
(式中、
Xは、CまたはSiから選択され、
Yは、NまたはPから選択され、
は、少なくとも1つのF原子を含む脂肪族残基または芳香族残基であり、
a、b、c、dは、独立してまたは等しく0または1であり得、Y=Nの場合、a、bおよびcは0であり、
b、c、dが0である場合、部分R、R、Rは、独立してまたは等しく、水素、ヒドロキシル、炭化水素、ハロゲン、硫酸塩、−NH、硝酸塩、リン酸塩またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択され、
b、c、dが1である場合、部分R、R、Rは、独立してまたは等しく、水素、炭化水素またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される)
を有する、実施形態1〜30のいずれかに記載の組成物。
【0047】
32
aが0であり、b、c、dが1である、実施形態31に記載の組成物。
【0048】
33
部分R、RおよびRが、C−C−アルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基であり、部分Rが、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C10、C、C、C、C、C、C、C、C、C12、C11、C10、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C14、C13、C12、C11、C10、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C16、C15、C14、C13、C12、C11、C10、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C18、C17、C16、C15、C14、C13、C12、C11、C10、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C1020、C1019、C1018、C1017、C1016、C1015、C1014、C1013、C1012、C101110、C101011、C1012、C1013、C1014、C1015、C1016、C1017、C1018、C1019からなる群から選択される分枝されていてもよいアルキル基である、実施形態32に記載の組成物。
【0049】
34
少なくとも1種のフッ素化化合物c)が非イオン性化合物である、実施形態1〜33のいずれかに記載の組成物。
【0050】
35
少なくとも1種のフッ素化化合物c)が、2,100g/mol未満、好ましくは1,600g/mol未満、さらにより好ましくは1,000g/mol未満の分子量を有する、実施形態1〜34のいずれかに記載の組成物。
【0051】
36
フッ素化化合物c)が、2〜20個のフッ素原子、好ましくは2〜15個のフッ素原子、さらにより好ましくは3〜10個のフッ素原子を含む、実施形態35に記載の組成物。
【0052】
37
少なくとも1種のフッ素化化合物c)が、5,000g/mol超、好ましくは10,000g/mol超、より好ましくは50,000g/mol超の分子量を有する、実施形態1〜34のいずれかに記載の組成物。
【0053】
38
フッ素化化合物c)が、20個より多いフッ素原子、好ましくは40個より多いフッ素原子、より好ましくは60個より多いフッ素原子を含む、実施形態37に記載の組成物。
【0054】
39
少なくとも1種の導電性ポリマーb)がポリチオフェンである、実施形態1〜38のいずれか1つに記載の組成物。
【0055】
40
ポリチオフェンおよび少なくとも1種の高分子アニオンd)が、ポリチオフェン:高分子アニオン錯体の形態で存在する、実施形態39に記載の組成物。
【0056】
41
少なくとも1種の導電性ポリマーb)が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、実施形態1〜40のいずれかに記載の組成物。
【0057】
42
組成物が以下の特性:
a.0.1〜1,000mPa・sの範囲、好ましくは0.5〜800mPa・sの範囲、より好ましくは1〜500mPa・sの範囲の粘度、
b.2wt%以下、好ましくは0.5wt%以下、より好ましくは0.3wt%以下の含水量、
c.700nm未満、好ましくは600nm未満、より好ましくは500nm未満の粒径(d50)を有する組成物の粒子
のうちの少なくとも1つを与える、実施形態1〜41のいずれかに記載の組成物。
【0058】
43
組成物が、
a)70〜99.5wt%の少なくとも1種の有機溶媒と、
b)0.05〜4wt%の少なくとも1種の導電性ポリマーと、
c)0.05〜10wt%の少なくとも1種のフッ素化化合物と、
d)0.05〜13wt%の少なくとも1種の高分子アニオンと、
e)0〜6wt%の少なくとも1種のさらなる添加剤と
を含み、成分a)〜e)の合計が100wt%である、実施形態1〜42のいずれかに記載の組成物。
【0059】
44
以下の層:
i.第1の面を有する基板と、
ii.基板の面の少なくとも一部と重なる第1の層と
を含む、層状構造であって、
第1の層は、
b)少なくとも1種の導電性ポリマーと、
c)少なくとも1種のフッ素化化合物と、
d)イオン性および非イオン性反復単位を含むコポリマーである少なくとも1種の高分子アニオンと
を含む、層状構造。
【0060】
45
高分子アニオンd)が実施形態2〜17に定義されている通りである、実施形態44に記載の層状構造。
【0061】
46
フッ素化化合物c)が実施形態27〜38に定義されている通りである、実施形態44または45に記載の層状構造。
【0062】
47
導電性ポリマーb)が実施形態39〜41に定義されている通りである、実施形態44〜46のいずれか1つに記載の層状構造。
【0063】
48
有機溶媒a)が実施形態19〜26に定義されている通りである、実施形態44〜48のいずれか1つに記載の層状構造。
【0064】
49
I)第1の面を有する基板を準備する工程と、
II)基板の第1の面上に実施形態1〜43のいずれか1つに記載の組成物を少なくとも部分的に重ね合わせる工程と、
III)組成物から少なくとも1種の有機溶媒a)を少なくとも部分的に除去し、それによって基板上に重ね合わされた導電層を得る工程と
を含む、層状構造を製造する方法。
【0065】
50
実施形態49に記載の方法によって得られる層状構造。
【0066】
51
実施形態44〜48または50のいずれかに記載の層状構造を含むデバイス。
【0067】
52
デバイスが、OLED、ディスプレイ、有機太陽電池、ハイブリッド太陽電池、電界効果トランジスタ、タッチスクリーンもしくは熱電発電装置またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、実施形態51に記載のデバイス。
【0068】
53
実施形態52に定義されるデバイスにおける導電層を作製するための実施形態1〜43のいずれかに記載の組成物の使用。
【0069】
54
OLEDの正孔注入層を作製するための実施形態1〜43のいずれかに記載の組成物の使用。
【0070】
本発明は、
a)少なくとも1種の有機溶媒と、
b)少なくとも1種の導電性ポリマー、好ましくはカチオン性ポリマーと、
c)少なくとも1種のフッ素化化合物と、
d)イオン性および非イオン性反復単位を含むコポリマーである少なくとも1種の高分子アニオンと
を含む組成物に関する。
【0071】
本発明による組成物は、好ましくは、液体組成物であり、その組成物は、化学的性質およびそれに含まれる成分の相対量に応じて、溶液、分散系またはエマルションであってもよい。
【0072】
有機溶媒a)
組成物の好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の有機溶媒a)は、非プロトン性有機溶媒、極性有機溶媒、非極性有機溶媒および非極性、非プロトン性有機溶媒またはこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される。
【0073】
好ましくは、少なくとも1種の有機溶媒a)は、20未満、好ましくは15未満、最も好ましくは10未満の比誘電率を有する。溶媒についての誘電率の値は、「Handbook of Chemistry and Physics」、第95版、2014年、CRC press、ISBN 9781482208672などの標準的なハンドブックに見出され得る。
【0074】
適切な有機溶媒a)は以下である:
− ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンまたはビフェニルなどの芳香族炭化水素、
− フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、4−クロロトルエン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンまたは1,2,3−トリクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素、
− パーフルオロ化溶媒、特にパーフルオロ化アルカン、アルカン、エーテル、アレーン、アルカレン(alkarene)、アラルカン(aralkane)、アルケン、およびアルキン、パーフルオロ化芳香族化合物、パーフルオロ化エーテルまたはパーフルオロ化アミン、
− エーテル、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルテトラブチルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソールおよびエチレングリコールエーテル、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルまたはエチレングリコールジブチルエーテル、
− シロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルジシロキサン、デカメチルジシロキサン、オリゴメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ポリメチルジシロキサン、ポリシロキサン、またはそれらの誘導体、
− エステル、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルまたは酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート
またはこれらの少なくとも2つの混合物。
【0075】
好ましくは、本発明による組成物は、2種以上の有機溶媒a)、特に2種の異なる種類の有機溶媒、すなわち第1の溶媒a1)および第2の溶媒a2)を含む溶媒混合物を含む。好ましくは、第1の有機溶媒a1)は、非プロトン性、極性の有機溶媒または溶媒系である。好ましくは、第2の有機溶媒a2)は、非プロトン性、非極性の有機溶媒または溶媒系である。好ましくは、第1の有機溶媒a1)は、エーテル(好ましくは上述のエーテルの1つ)、エステル(好ましくは上述のエステルの1つ)、シロキサン(好ましくは上述のシロキサンの1つ)、ハロゲン化芳香族炭化水素(好ましくは上述のハロゲン化芳香族炭化水素の1つ)、パーフルオロ化溶媒(好ましくは上述のパーフルオロ化溶媒の1つ)、またはそれらの少なくとも2つの組み合わせを含む群から選択される。好ましくは、第2の有機溶媒a2)は、環状有機溶媒、好ましくは環状炭化水素、例えばシクロヘキサン、および直鎖有機溶媒、好ましくは直鎖炭化水素、例えばヘプタンの混合物である。好ましくは、環状有機溶媒対直鎖有機溶媒の重量比は、0.5:1.5〜1.5:0.5の範囲、好ましくは0.6:1.4〜1.4:0.6の範囲、より好ましくは0.7:1.3〜1.3:0.7の範囲である。この文脈において、第1の有機溶媒a1)対第2の有機溶媒a2)の重量比は、2:1〜10:1の範囲、または好ましくは2.5:1〜9:1の範囲、または好ましくは3:1〜8:1の範囲であることもまた、好ましい。第1の有機溶媒a1)対環状有機溶媒および直鎖有機溶媒の重量比は、5:1:1〜20:1:1、または好ましくは7:1:1〜15:1:1の範囲である。
【0076】
好ましくは、組成物は、各場合、組成物の全重量に基づいて、70〜99.5wt%の量、または好ましくは75〜99wt%の量、または好ましくは80〜97.5wt%の量で少なくとも1種の有機溶媒a)を含む。2種以上の有機溶媒の溶媒混合物の場合、それらの量は有機溶媒の全量を指す。
【0077】
導電性ポリマーb)
導電性ポリマーb)として、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレンまたはポリフェニレンなどの共役ポリマーが使用されてもよい。好ましくは、少なくとも1種の導電性ポリマーb)はポリチオフェンを含む。
【0078】
したがって、本発明による組成物の好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の導電性ポリマーb)はポリチオフェンを含む。好ましいポリチオフェンは、一般式(III)または(IV)の反復単位または一般式(III)および(IV)の単位の組み合わせ、好ましくは一般式(IV)の反復単位を有するポリチオフェンを有するものである:
【化5】
式中、
Aは、置換されていてもよいC−C−アルキレン基を表し、
Rは、直鎖または分枝の置換されていてもよいC−C18−脂肪族またはヘテロ脂肪族基、置換されていてもよいC−C12−シクロ脂肪族またはシクロヘテロ脂肪族アルキル基、置換されていてもよいC−C14−アリールまたはヘテロアリール基、置換されていてもよいC−C18−アラルキルまたはヘテロアラルキル基、置換されていてもよいC−C−ヒドロキシ脂肪族またはヒドロキシヘテロ脂肪族基あるいはヒドロキシル基を表し、
xは、0〜8の整数を表し、
各場合、いくつかの基RはAに結合し、それらは同一であっても、異なっていてもよい。
【0079】
一般式(III)および(IV)は、x置換基Rがアルキレン基Aに結合できることを意味すると理解される。
【0080】
Aが置換されていてもよいC−C−アルキレン基を表し、xが0または1を表す、一般式(IV)の反復単位を有するポリチオフェンが特に好ましい。
【0081】
本発明の文脈において、接頭辞「ポリ」は、ポリマーまたはポリチオフェンが一般式(III)および(IV)の1つより多い同一または異なる反復単位を含むことを意味すると理解される。一般式(III)および/または(IV)の反復単位に加えて、ポリチオフェンは任意に他の反復単位も含んでもよいが、ポリチオフェンの全ての反復単位のうちの好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%が、一般式(III)および/または(IV)、好ましくは一般式(IV)を有する。上記に述べたパーセントの数字はここで、異種ドープ(foreign−doped)導電性ポリマーにおけるモノマー単位の総数において、構造式(III)および(IV)の単位の数値的な含有量を表すことを意図する。ポリチオフェンは、合計n回の一般式(III)および/または(IV)、好ましくは一般式(IV)の反復単位を含み、nは2〜2,000、好ましくは2〜100の整数である。一般式(III)および/または(IV)、好ましくは一般式(IV)の反復単位は、各場合、ポリチオフェン内で同一であっても、異なっていてもよい。各場合、一般式(IV)の同一の反復単位を有するポリチオフェンが好ましい。
【0082】
ポリチオフェンの全ての反復単位の好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%は、3,4−エチレンジオキシチオフェン単位である。
【0083】
本発明による組成物の特に好ましい実施形態によれば、したがって少なくとも1種の導電性ポリマーb)は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である。
【0084】
ポリチオフェンは、各場合、好ましくは末端基にHを有する。
【0085】
本発明の文脈において、C−C−アルキレン基Aは、好ましくは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、n−ブチレンまたはn−ペンチレンである。C−C18−アルキル基Rは、好ましくは、メチル、エチル、n−もしくはiso−プロピル、n−、iso−、sec−、もしくはtert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、またはn−オクタデシルなどの、直鎖状もしくは分枝状のC−C18−アルキル基を表し、C−C12−シクロアルキル基Rは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシルを表し、C−C14−アリール基Rは、例えば、フェニルまたはナフチルを表し、C−C18−アラルキル基Rは、例えば、ベンジル、o−、m−、p−トリル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−キシリルまたはメシチルを表す。上記は、例として本発明を説明するのに役立ち、全てを網羅しているわけではない。
【0086】
本発明の文脈において、多くの有機基が、式(III)または(IV)の基Aおよび/または基Rの任意選択のさらなる置換基として可能であり、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、カーボネート、カルボキシレート、シアノ、アルキルシラン、およびアルコキシシラン基、ならびにカルボキシアミド基がある。
【0087】
ポリチオフェンは、好ましくはカチオン性であり、ポリチオフェン主鎖の電荷のみに係る「カチオン性」である。それらの正確な数および位置は完全に決定できないため、その式において正電荷を示さない。しかしながら、正電荷の数は、少なくとも1および最大でnであり、nはポリチオフェン内の全ての反復単位(同一または異なる)の総数である。
【0088】
正電荷を補うため、カチオン性ポリチオフェンは対イオンとしてアニオンを必要とする。これに関して、組成物中の少なくとも1種の導電性ポリマーb)は、カチオン性ポリチオフェンを含むことが好ましく、それは、カチオン性ポリチオフェンおよび対イオンの塩または錯体の形態、好ましくはポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)および対イオンの塩または錯体の形態で存在し、モノマーおよび少なくとも1種の高分子アニオンd)が対イオンとして使用され得る。本発明による組成物の最も好ましい実施形態によれば、以下により詳細に記載される高分子アニオンd)はカチオン性ポリチオフェンについての対イオンであり、カチオン性ポリチオフェンおよび高分子アニオンd)はポリチオフェン:高分子アニオン錯体の形態で存在する。
【0089】
好ましくは、組成物は、組成物の全重量に基づいて、0.1〜4wt%、または好ましくは0.2〜3.9wt%、または好ましくは0.5〜3.5wt%の量で少なくとも1種の導電性ポリマーb)を含む。組成物が2種以上の導電性ポリマーb)を含む場合、それらの量は導電性ポリマーの全量を指す。
【0090】
フッ素化化合物c)
本発明による組成物は少なくとも1種のフッ素化化合物c)を含む。組成物は1種より多いフッ素化化合物を含んでもよいが、2種以上の異なるフッ素化化合物を加えることも可能である。本発明によれば、「フッ素化化合物」という語句が使用される場合、全てのフッ素化化合物の合計を意味する。
【0091】
本発明の文脈において、フッ素化化合物は、フッ素化炭素とも呼ばれる、F原子に結合している少なくとも1つの炭素原子を有する任意の化合物である。好ましくは、少なくとも1種のフッ素化化合物c)は、2〜20個の範囲、または好ましくは3〜18個の範囲、または好ましくは5〜15個の範囲のF原子を含む。好ましくは、フッ素化炭素は互いに結合している。好ましくは、フッ素化炭素は少なくとも1種のフッ素化化合物c)の一端にある。好ましくは、少なくとも1種のフッ素化化合物c)はフッ素化炭素ではない少なくとも1つの炭素原子を含む。好ましくは、少なくとも1種のフッ素化化合物c)は、水素原子の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも50%がフッ素原子によって置換されている、少なくとも1つの脂肪族残基または芳香族残基を含む。
【0092】
本発明による組成物の第1の特定の実施形態によれば、少なくとも1種のフッ素化化合物c)は、2,100g/mol未満、好ましくは1,600g/mol未満、さらにより好ましくは1,000g/mol未満の分子量を有する。本発明による組成物のこの第1の特定の実施形態に関する文脈において、このような低分子量フッ素化化合物c)が、2〜20個のフッ素原子、好ましくは2〜15個のフッ素原子、さらにより好ましくは3〜10個のフッ素原子を含むこともまた、好ましい。
【0093】
本発明による組成物の第2の特定の実施形態によれば、少なくとも1種のフッ素化化合物c)は、5,000g/mol超、好ましくは10,000g/mol超、より好ましくは50,000g/mol超の分子量を有する。本発明による組成物のこの第2の特定の実施形態に関する文脈において、このような高分子量フッ素化化合物c)が、20個超のフッ素原子、好ましくは40個超のフッ素原子、より好ましくは60個超のフッ素原子を含むこともまた、好ましい。
【0094】
少なくとも1種のフッ素化化合物c)は、好ましくは、40mbar未満、好ましくは20mbar未満、より好ましくは10mbar未満の蒸気圧(各場合、100℃の温度にて決定した)を有する。少なくとも1種のフッ素化化合物c)は、20未満の誘電率の値を有する有機溶媒中、好ましくはメチル−tert−ブチルエーテル(MTBEとしても知られている)中に可溶性であることがさらに好ましい。この文脈において「可溶性」とは、少なくとも1種のフッ素化化合物c)の少なくとも0.05g、好ましくは少なくとも0.1g、より好ましくは少なくとも0.5gが、20未満の誘電率の値を有する有機溶媒中、好ましくはメチル−tert−ブチルエーテル中に可溶性であることを意味する。
【0095】
フッ素化化合物c)が非イオン性化合物であることがさらに好ましい。
【0096】
本発明による組成物の特定の実施形態によれば、少なくとも1種のフッ素化化合物c)は、式(IIa)または(IIb)による構造を有する:
【化6】
式中、
Xは、CまたはSiから選択され、
Yは、NまたはPから選択され、
は、少なくとも1つのF原子を含む脂肪族残基または芳香族残基であり、
a、b、c、dは、独立してまたは等しく0または1であってもよく、Y=Nの場合、a、bおよびcは0であり、
b、c、dが0である場合、部分R、R、Rは、独立してまたは等しく、水素、ヒドロキシル、炭化水素、ハロゲン、硫酸塩、−NH、硝酸塩、リン酸塩またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択され、
b、c、dが1である場合、部分R、R、Rは、独立してまたは等しく、水素、炭化水素またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0097】
この文脈において、フッ素化化合物は、少なくとも1つのフッ素化脂肪族またはフッ素化芳香族基がSi原子に結合している、モノ−、ジ−またはトリ−アルコキシシランであることが特に好ましい。式(IIa)を参照して、部分Rは、好ましくは少なくとも1つのF原子を有する直鎖アルキル基である。好ましくは、直鎖アルキル基は6〜12の範囲の炭素原子を含む。好ましくは、部分Rの炭素原子の少なくとも半分はフッ素化炭素である。好ましくは、R、R、RおよびRは直鎖炭化水素を含む。さらに式(IIa)または(IIb)を参照すると、好ましくは、Rは、水素原子の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%が、フッ素原子によって置換されている脂肪族基または芳香族基である。好ましくは、Rは、水素原子の少なくとも10%がフッ素原子によって置換されているC−C18アルキル基である。
【0098】
構造(IIa)を有するフッ素化化合物の好ましい実施形態によれば、aは0であり、b、cおよびdは1である。この文脈において、部分R、RおよびRは、C−C−アルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基であることが特に好ましく、部分Rは、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C、−C10、C、C、C、C、C、C、C、C、C12、C11、C10、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C14、C13、C12、C11、C10、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C16、C15、C14、C13、C12、C11、C10、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C18、C17、C16、C15、C14、C13、C12、C11、C10、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C1020、C1019、C1018、C1017、C1016、C1015、C1014、C1013、C1012、C101110、C101011、C1012、C1013、C1014、C1015、C1016、C1017、C1018、C1019からなる群から選択される分枝されていてもよいアルキル基である。
【0099】
式(IIa)のフッ素化化合物の適切な例は、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシランである。
【0100】
本発明による組成物のさらなる実施形態によれば、少なくとも1種のフッ素化化合物c)は高分子フッ素化化合物である。適切な高分子フッ素化化合物は、フッ素化モノマー単位を含むホモポリマーまたはフッ素化および非フッ素化モノマー単位を含むコポリマーであり、これらのホモポリマーまたはコポリマーは、好ましくは、5,000g/mol超、好ましくは10,000g/mol超、より好ましくは50,000g/mol超の分子量を有する。これらの高分子量化合物において、水素原子の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも40%が、フッ素原子によって置換されていることがさらに好ましい。モノマー(フッ素化ホモポリマーまたはコポリマーはこのモノマーに基づき得る)の例として、以下のモノマーが挙げられ得る:フルオロアルキル(メタ)クリレート、フルオロアルキルスルホアミドエチル(メタ)クリレート、フルオロアルキルアミドエチル(メタ)クリレート、フルオロアルキル(メタ)クリルアミド、フルオロアルキルプロピル(メタ)クリレート、フルオロアルキルエチルポリ(アルキレンオキシド)(メタ)クリレート、フルオロアルキルスルホエチル(メタ)クリレート、フルオロアルキルエチルビニルエーテル、フルオロアルキルエチルポリ(エチレンオキシド)ビニルエーテル、ペンタフルオロスチレン、フルオロアルキルスチレン、フッ素化α−オレフィン、パーフルオロブタジエン、1−フルオロアルキルパーフルオロブタジエン、αH,αH,ωH,ωH−パーフルオロアルカンジオールジ(メタ)クリレートおよびβ−置換フルオロアルキル(メタ)クリレート。少なくとも1種のフッ素化化合物c)がフッ素化高分子化合物である、本発明による組成物の特に好ましい実施形態によれば、フッ素化高分子化合物は高分子フッ素化芳香族化合物である。高分子フッ素化芳香族化合物として特に適切なものは、ポリペンタフルオロスチレンまたはペンタフルオロスチレン/tert−ブチルスチレン−コポリマーであり、例えば、90:10のペンタフルオロスチレン/tert−ブチルスチレン比を有するものである。
【0101】
好ましくは、組成物は、組成物の全重量に基づいて、0.05〜10wt%の範囲、または好ましくは0.2〜9wt%の範囲、または好ましくは0.5〜8wt%の範囲の量で少なくとも1種のフッ素化化合物c)を含む。組成物が2種以上のフッ素化化合物を含む場合、これらの量はフッ素化化合物の全量を指す。
【0102】
高分子アニオンd)
成分d)として、本発明による組成物は高分子アニオンを含み、少なくとも1種の高分子アニオンは、イオン性および非イオン性反復単位を含むコポリマーである。コポリマーは、統計コポリマー、交互コポリマー、ジブロックコポリマー、マルチブロックコポリマー、グラフトコポリマー、グラジエントコポリマーまたはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されてもよく、ブロックコポリマーが特に好ましい。
【0103】
好ましくは、コポリマーのイオン性および非イオン性反復単位の数および配列は、少なくとも1種の導電性ポリマーb)との対部分を構築する少なくとも1種の高分子アニオンd)の機能が保証される限りは、限定されない。コポリマーは、好ましくは、少なくとも1つのイオン性反復単位および少なくとも2つの非イオン性反復単位を含む。イオン性反復単位および非イオン性反復単位はコポリマーにわたってランダムまたは均一に分布してもよい。異なるイオン性反復単位および非イオン性反復単位の様々な配列がコポリマーにおいて可能である。例えば、コポリマーは一般式(Ia)または(Ib)または(Ic)による構造を有してもよい:
【化7】
式中、
Aは、イオン性反復単位を表し、
Bは、非イオン性反復単位を表し、
Cは、反復単位Bと異なる、さらなる非イオン性単位を表し、
a、b、c、d、eまたはfの少なくとも1つは、1〜100から独立して選択される整数である。
【0104】
式(Ia)はイオン性反復単位Aおよび非イオン性反復単位Bの1つの可能な配列を示し、コポリマーの構造において、イオン性反復単位Aおよび非イオン性反復単位Bは各々、ポリマー鎖の異なる部分において様々な数で存在してもよい。式(Ia)の構造に対する代替は式(Ib)の構造であり、BおよびCは、異なる種類のイオン性反復単位または式(Ic)の構造を表す。好ましくは、式(Ib)における数字dは1である。好ましくは、式(Ib)における数字aおよびdは1である。好ましくは、式(Ib)の数字a、b、cおよびdは1である。好ましくは、式(Ia)における数字dは1である。好ましくは、式(Ia)における数字aおよびdは1である。好ましくは、式(Ia)の数字a、bおよびdは1である。好ましくは、式(Ic)における数字dは1である。好ましくは、式(Ic)における数字aおよびdは1である。好ましくは、式(Ic)の数字a、b、eおよびdは1である。あるいは、反復単位A、BまたはCの数は、コポリマー鎖の異なる位置において変化してもよい。
【0105】
さらに、コポリマーにおけるイオン性反復単位は異なる種類のイオン性反復単位によって表され得る。イオン性反復単位または非イオン性反復単位の種類はコポリマー鎖の異なる位置において変化してもよい。式(Ia)に関して、Aはイオン性反復単位の任意の組み合わせを表してもよく、および/またはBは非イオン性反復単位の任意の組み合わせを表してもよい。組成物の好ましい実施形態において、コポリマーは少なくとも2つの異なる種類のイオン性反復単位を含み、少なくとも2つの異なる種類のイオン性反復単位はコポリマー鎖にわたってランダムに分散している。組成物のさらに好ましい実施形態において、コポリマーは少なくとも2種の非イオン性反復単位を含み、少なくとも2つの異なる種類の非イオン性反復単位はコポリマー鎖にわたってランダムに分散している。高分子アニオンd)の特定の実施形態によれば、コポリマーはその末端に非イオン性反復単位を含む。
【0106】
本発明による組成物の好ましい実施形態によれば、イオン性反復単位の数は非イオン性反復単位の数より少ない。好ましくは、イオン性反復単位の数は1〜10の範囲、好ましくは1〜8の範囲、または好ましくは1〜5の範囲である。好ましくは、非イオン性反復単位の数は1〜100の範囲、好ましくは1〜50の範囲、または好ましくは1〜20の範囲である。
【0107】
本発明による組成物の好ましい実施形態によれば、イオン性反復単位の数対非イオン性反復単位の数の比は、1:2〜1:20の範囲、または好ましくは1:2.5〜1:15の範囲、または好ましくは1:3〜1:12の範囲である。
【0108】
本発明による組成物の好ましい実施形態によれば、イオン性反復単位は、好ましくは、カルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩またはそれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される酸性基を含む。好ましくは、イオン性反復単位は官能基としてスルホン酸塩を含む。好ましくは、イオン性反復単位は、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、マレイン酸アクリル酸塩(maleic acrylate)、スチレンスルホン酸塩、スチレンジスルホン酸塩、ビニルスルホン酸塩またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されるモノマーに由来する。特に好ましくは、モノマーはスチレンスルホン酸塩である。イオン性単位のスルホン化は少なくとも1種の高分子アニオンd)の重合の前または後に実施されてもよい。好ましくは、スルホン化は少なくとも1種の高分子アニオンd)の重合の後に実施される。
【0109】
本発明による組成物の好ましい実施形態によれば、非イオン性反復単位は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、シロキサンまたはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されるモノマーに由来し、それらの基は置換されていてもよい。非イオン性反復単位が由来するモノマーは分枝炭化水素基を含んでもよい。さらにまたはあるいは、非イオン性反復単位が由来するモノマーは置換炭化水素を含んでもよい。好ましくは、置換炭化水素は、N、P、S、Si、O、Cl、F、J、Brまたはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する炭化水素である。
【0110】
アルキレン基は、当業者が組成物を選択する任意のアルキル基であってもよい。好ましくは、アルキレン基は、分枝されていてもよく、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0111】
アリーレン基は、当業者が組成物を選択する任意のアリール基であってもよい。好ましくは、アリーレン基は、置換されていてもよく、フェニルエテン基(スチレン)、フェニルプロペン基、フェニルブテン基、フェニルペンテン基またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、アリーレン基は置換フェニレン基であり、置換基は、tert−ブチル基、メチル基、エチル基またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0112】
本発明による組成物の特に好ましい実施形態によれば、高分子アニオンd)は重合スルホン化モノマー単位および重合非スルホン化モノマー単位を含み、非スルホン化単位のモル比は、各場合、コポリマーにおけるモノマー単位の全量に基づいて、少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも40%である。少なくとも一部がスルホン化されている重合スチレンモノマー単位および重合非スルホン化単位を含む適切なコポリマーは、例えば、独国特許出願公開第10 2008 023008 A1号に開示されている。独国特許出願公開第10 2008 023008 A1号の実施例7において得られる高分子アニオンは、本発明において特に適切な高分子アニオンd)とみなされ得る。
【0113】
本発明による組成物のより好ましい実施形態によれば、高分子アニオンd)は重合スルホン化単位および重合非スルホン化単位を含むブロックコポリマーであり、非スルホン化単位のモル比は、各場合、コポリマーにおけるモノマー単位の全量に基づいて、少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも40%である。
【0114】
本発明による組成物のさらにより好ましい実施形態によれば、高分子アニオンd)は重合スルホン化ポリスチレン単位および重合非スルホン化単位を含むブロックコポリマーであり、非スルホン化単位のモル比は、各場合、コポリマーにおけるモノマー単位の全量に基づいて、少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも40%である。
【0115】
本発明による組成物のさらに好ましい実施形態によれば、高分子アニオンd)は、式(Ib)による、少なくとも3つのブロックA、BおよびCを有する水素化スチレンブロックコポリマーであり、
I1.ブロックAは少なくとも部分的にスルホン化されたポリスチレンブロックに対応し、
I2.ブロックBは、nが100〜1000である水素化cis−ポリイソプレンのブロック
【化8】
もしくはnが10〜1000である水素化transポリイソプレンのブロック
【化9】
またはそれらの混合物に対応する。
I3.ブロックCは、tert−ブチル基で少なくとも部分的に置換されているポリスチレンブロックに対応する。
【0116】
好ましくは、ブロックCを表すポリスチレンブロックは、スチレン基のフェニル単位の量に基づいて、1〜70%の程度まで、好ましくは5〜60%の程度まで、または好ましくは10〜50%の程度までtert−ブチル基で置換されており、各フェニル単位は好ましくは1つの位置においてのみ置換されている。好ましくは、ポリスチレンのフェニル単位は、tertブチル基がフェニル単位のp位置に存在するように置換されている。
【0117】
特に好ましい高分子アニオンd)は、水素化されているか、または水素化されておらず、好ましくは構造C−B−A−B−Cを有する水素化されたスチレン−イソプレンブロックコポリマーであり、ブロックCはtert−ブチル基で少なくとも部分的に置換されているポリスチレンブロックに対応し、ブロックBは水素化されているか、または水素化されておらず、しかし好ましくは水素化されたポリイソプレンブロックに対応し(完全に水素化されたポリイソプレンブロックは交互共重合エチレン−プロピレン単位のブロックに化学的に対応する)、ブロックAは少なくとも部分的にスルホン化されたポリスチレンブロックに対応する。ブロックA、BおよびCの長さは、好ましくは、少なくとも5個のモノマー単位、特に好ましくは少なくとも10個の単位、最も好ましくは少なくとも20個の単位である。このようなコポリマーは、例えば、製品名NEXAR(登録商標)としてKraton Polymers、ヒューストン、USAから得られる。
【0118】
本発明による組成物の好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の高分子アニオンd)の分子量は、1,000〜2,000,000g/molの範囲、好ましくは5,000〜600,000g/molの範囲、または好ましくは10,000〜400,000g/molの範囲である。分子量は、定義された分子量のポリマーを使用して、特に水非混和性溶媒中の溶液の場合、ポリスチレンを使用して、または水混和性溶媒の場合、ポリスチレンスルホン酸を使用してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。
【0119】
好ましくは、本発明による組成物は、各場合、組成物の全量に基づいて、0.05〜13wt%、好ましくは0.2〜12wt%、最も好ましくは0.5〜10wt%の量で少なくとも1種の高分子アニオンd)を含む。組成物が2種以上の高分子アニオンd)を含む場合、それらの量は高分子アニオンの全量を指す。
【0120】
添加剤e)
本発明による組成物は、少なくとも1種のさらなる添加剤e)を含んでもよい。少なくとも1種の添加剤e)は、好ましくは、結合剤、架橋剤、粘度調整剤、pH調節剤、導電性を増加させる添加剤、酸化防止剤、仕事関数を変化させる添加剤、例えば、個々の成分の均質な混合のために必要とされる補助溶媒、またはこれらの添加剤の2つ以上の混合物からなる群から選択される。
【0121】
好ましくは、上述の添加剤は、各場合、組成物の全量に基づいて、0〜6wt%の量、好ましくは0.01〜2.5wt%の量、最も好ましくは0.1〜2wt%の量で組成物中に存在する。組成物が2種以上の添加剤e)を含む場合、これらの量は添加剤の全量を指す。
【0122】
本発明による組成物、特に導電性ポリマーb)および高分子アニオンd)としてポリチオフェンの塩または錯体を含む組成物は、異なる調製方法で調製されてもよい。第1の手法によれば、塩または錯体は、少なくとも1種の有機溶媒a)中の高分子アニオンd)のイオンの存在下で、モノマー(導電性ポリマーbはそのモノマーに基づく)、特に好ましくは3,4−エチレンジオキシチオフェンを酸化的に重合することによって調製される。第2の手法によれば、モノマーは、プロトン性溶媒、特に好ましくは水中の高分子アニオンd)の存在下で酸化的に重合され、次いでプロトン性溶媒は少なくとも1種の有機溶媒a)と置換される。このような溶媒置換プロセスは、例えば、米国特許第6,692,662 B2号に開示されている。両方の手法において、少なくとも1種のフッ素化化合物c)が、モノマー(導電性ポリマーbはそのモノマーに基づく)が、高分子アニオンd)の存在下で酸化的に重合される前、間または後に加えられてもよい。このプロセスの特に好ましい実施形態によれば、モノマー(ポリチオフェンはそのモノマーに基づく)、特に好ましくは3,4−エチレンジオキシチオフェンは、少なくとも1種の有機溶媒a)中の高分子アニオンd)のイオンの存在下で酸化的に重合され、少なくとも1種のフッ素化化合物c)は、導電性ポリマー:高分子アニオン錯体の形成後に加えられる。
【0123】
導電性ポリマーb)および高分子アニオンd)としてポリチオフェンの塩または錯体を含む組成物を生成するための最も有益なプロセス条件は、もちろん、特に選択された有機溶媒a)中の高分子アニオンd)の溶解度に依存する。
【0124】
モノマー(共役ポリマーはそのモノマーに基づく)の酸化重合に適した酸化剤が、酸化剤として使用され得る。実務的理由のために、安価で扱いやすい酸化剤、例えば、FeCl、Fe(ClOなどの鉄(III)塩ならびに有機基を含む有機酸および無機酸の鉄(III)塩が好ましい。C−C20アルカノールの硫酸ヘミエステルの鉄(III)塩、例えば、ラウリル硫酸の鉄(III)塩が、有機基を含む無機酸の鉄(III)塩の例として挙げられる。以下が、有機酸の鉄(III)塩としての例として挙げられる:メタン−およびドデカン−スルホン酸などのC−C20アルキルスルホン酸のFe(III)塩;2−エチルヘキシルカルボン酸などの脂肪族C−C20カルボン酸;トリフルオロ酢酸およびパーフルオロ酢酸などの脂肪族パーフルオロカルボン酸;シュウ酸などの脂肪族ジカルボン酸ならびにベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびドデシルベンゼンスルホン酸などの、C−C20アルキル基で置換されていてもよい芳香族スルホン酸の上記の全て。有機酸の鉄(III)塩は、それらが有機溶媒中および特に水非混和性有機溶媒中に部分的または完全に溶解する大きな応用の利点を有する。例えば、tert−ブチルペルオキシド、ジイソブチリルペルオキシド、ジ−n−プロピルペルオキシジカルボネート、ジデカノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−tert−アミルペルオキシドなどの有機過酸化物もまた、酸化剤として使用されてもよい。好ましい酸化剤はまた、有機溶媒a)中の酸化剤の溶解度に依存する。
【0125】
少なくとも1種の有機溶媒a)、少なくとも1種の導電性ポリマーb)、少なくとも1種のフッ素化化合物c)および少なくとも1種の高分子アニオンd)に関する上記の特性、量および構造はまた、層状構造、デバイス、組成物を生成する方法および層状構造を生成する方法に有効である。
【0126】
本発明による組成物の好ましい実施形態によれば、組成物は以下の特性の少なくとも1つを提供する:
a.0.1〜1,000mPa・sの範囲、好ましくは0.5〜800mPa・sの範囲、より好ましくは1〜500mPa・sの範囲の粘度、
b.2wt%以下、好ましくは0.5wt%以下、より好ましくは0.3wt%以下の含水量、
c.700nm未満の粒径(d50)を有する、または好ましくは600nm未満の粒径(d50)を有する、または好ましくは500nm未満の粒径(d50)を有する組成物の粒子。
【0127】
本発明による組成物の好ましい実施形態によれば、組成物は、
a)70〜99.5wt%、好ましくは75〜96wt%、より好ましくは80〜95wt%の少なくとも1種の有機溶媒、
b)0.05〜4wt%、好ましくは0.2〜3.9wt%、より好ましくは0.5〜3.5wt%の少なくとも1種の導電性ポリマー、
c)0.05〜10wt%、好ましくは0.2〜9wt%、より好ましくは0.5〜8wt%の少なくとも1種のフッ素化化合物、
d)0.05〜13wt%、好ましくは0.2〜12wt%、より好ましくは0.5〜10wt%の少なくとも1種の高分子アニオン、
e)0〜6wt%、好ましくは0.01〜2.5wt%、より好ましくは0.1〜2wt%の少なくとも1種のさらなる添加剤
を含み、組成物a)〜e)の合計は100wt%である。
【0128】
組成物中の少なくとも1種の導電性ポリマーb)、好ましくはポリチオフェン対少なくとも1種の高分子アニオンd)の重量比(ポリチオフェン:高分子アニオン)は、好ましくは1:0.1〜1:100の範囲、または好ましくは1:0.2〜1:20の範囲、特に好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
【0129】
好ましくは、本発明による組成物の含水量は、組成物の全重量に基づいて、2wt%以下、好ましくは0.5wt%以下、または好ましくは0.3wt%以下である。含水量は本明細書に開示される試験方法によって決定される(その試験方法は「Karl−Fischer滴定による含水測定」である)。
【0130】
層状構造
上述の目的の少なくとも一部を解決することに対する寄与はまた、以下の層:
i.第1の面を有する基板と、
ii.基板の第1の面の少なくとも一部と重ね合わせられる第1の層であって、
b)少なくとも1種の導電性ポリマー、
c)少なくとも1種のフッ素化化合物、
d)イオン性および非イオン性反復単位を含むコポリマーである、少なくとも1種の高分子アニオン
を含む、第1の層と
を含む層状構造によってなされる。
【0131】
好ましい導電性ポリマーb)、高分子アニオンd)およびフッ素化化合物c)は、本発明による組成物に関して好ましい導電性ポリマーb)、高分子アニオンd)およびフッ素化化合物c)として既に述べられているそれらのポリマー、アニオンおよび化合物である。
【0132】
特にプラスチックフィルムがこの文脈における基板として好ましく、最も特に好ましくは透明プラスチックフィルムであり、それは慣例的に、5〜5000μmの範囲、特に好ましくは10〜2500μmの範囲、最も好ましくは100〜1000μmの範囲の厚さを有する。このようなプラスチックフィルムは、例えば、ポリカーボネートなどのポリマー、例えば、PETおよびPEN(ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレンジカルボキシレート)などのポリエステル、コポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンまたは環状ポリオレフィンまたは環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、水素化スチレンポリマーまたは水素化スチレンコポリマーに基づき得る。プラスチック材料に加えて、特に金属または金属酸化物に基づいた基板もまた、例えば、ITO層(インジウム−スズ−酸化物層)などの基板として適している。ガラスもまた、基板として使用されてもよい。
【0133】
ガラス基板を本発明による組成物と重ね合わせ、それにより得られた層構造をホットプレート上で200℃にて3分間乾燥させることによって得られる層状構造の導電率は、好ましくは少なくとも10−6S/cm、より好ましくは少なくとも10−4S/cm、最も好ましくは少なくとも10−3S/cmである。
【0134】
好ましくは、層状構造の第1の層は、組成物の全重量に基づいて、5〜80wt%の範囲の量、または好ましくは10〜60wt%の範囲、または好ましくは20〜50wt%の範囲の少なくとも1種のフッ素化化合物c)を含む。
【0135】
本発明による層状構造の好ましい実施形態によれば、層状構造は、以下の特性:
(α1)10−6S/cm〜10,000S/cm、好ましくは10−4S/cm〜1,000S/cm、最も好ましくは10−3S/cm〜100S/cmの範囲の導電率、
(α2)550nmにおいて70%超、好ましくは80%超、最も好ましくは90%超の透過率、
(α3)10%未満、好ましくは8%未満、最も好ましくは6%未満の曇価、
(α4)100nm未満、好ましくは50nm未満、最も好ましくは30nm未満の表面粗さRa
の少なくとも1つ、好ましくは全てを示す。
【0136】
層状構造を製造する方法
上述の目的の少なくとも一部を解決することに対する寄与はまた、層状構造を製造する方法であって、
I)第1の面を有する基板を準備する工程と、
II)基板の第1の面上に本発明による組成物を少なくとも部分的に重ね合わせる工程と、
III)組成物から少なくとも1種の有機溶媒a)を少なくとも部分的に除去し、それによって基板上に重ね合わされた導電層を得る工程と
を含む、方法によってなされる。
【0137】
好ましい基板は、本発明による層状構造に関して述べられている基板である。
【0138】
工程II)において基板の面の少なくとも一部を本発明による組成物と重ね合わせる工程は、公知の方法、例えば、0.1μm〜250μmの湿潤フィルム厚さ、好ましくは0.5μm〜50μmの湿潤フィルム厚さにおいて、スピンコーティング、浸漬、鋳込み、滴下(dropping on)、注入、噴霧、フィルム移動適用、へら付け、拡散または印刷、例えばインクジェト、スクリーン、インタリオ、オフセットまたはパッド印刷によって達成され得る。
【0139】
任意に、本発明による組成物は基板に直接塗布されない。この特定の実施形態において、基板は、工程II)において組成物と重ね合わせる前に1つまたは2つのさらなる層で少なくとも部分的に覆われてもよい。
【0140】
この文脈において述べられ得る適切なさらなる層は、光活性層またはニッケル酸化物、モリブデン酸化物もしくはウォルフラム酸化物を含む層などの無機正孔輸送層、スピロ−OMeTAD(2,2’,7,7’−テトラ−キス−(N,N−ジ−pメトキシフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレン))、P3HT(ポリ(3−ヘキシルチオフェン))、PCPDTBT(ポリ[2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル[4,4−ビス(2−エチルヘキシル)−4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン−2,6−ジイル]])、PVK(ポリ(N−ビニルカルバゾール))、HTM−TFSI(1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)、Li−TFSI(リチウムビス(トリフルオロ−メタンスルホニル)イミド)、tBP(tert−ブチルピリジン)またはPTTA(ポリ[ビス(4−フェニル)(2,4,6−トリメチルフェニル)アミン])を含む層などの有機正孔輸送層、励起子遮断層または薄い絶縁層を含む。さらなる層はまた、CuI(ヨウ化銅)、ポリアニリン、CuSCN(チオシアン酸銅(I))、4,4’,4’’−トリス[フェニル(m−トイル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポリ−およびオリゴ−トリアリールアミン(PTAA)およびカルバゾール系小分子からなる群から選択される材料に基づいてもよい。
【0141】
本発明による方法の工程III)において、少なくとも1種の有機溶媒a)は、工程II)において重ね合わされた組成物から少なくとも部分的に除去され、それによって基板に重ね合わされた導電層が得られる。少なくとも1種の有機溶媒a)の部分的除去は、重ね合わせた層を単に乾燥させることによって、好ましくは基板および/または任意のさらなる層を10〜230℃の範囲の温度に加熱することによって達成され得、乾燥条件はもちろん少なくとも1種の有機溶媒a)の沸点に依存する。好ましくは、温度は20〜200℃の範囲で選択される。しかしながら、少なくとも1種の有機溶媒a)をIR−または真空乾燥によって少なくとも部分的に除去することも可能である。
【0142】
上述の目的の少なくとも一部を解決することに対する寄与はまた、本発明による層状構造を製造する方法によって得られる層状構造によってなされる。
【0143】
デバイス
上述の目的の少なくとも一部を解決することに対する寄与はまた、本発明による層状構造を含むデバイスによってなされる。好ましくは、デバイスは、電子デバイス、特にエレクトロルミネセントデバイスである。エレクトロルミネセントデバイスは、OLEDもしくはタッチスクリーンのようなディスプレイの主要部分、または有機太陽電池もしくはハイブリッド太陽電池のような太陽電池を形成することができる。
【0144】
本発明の好ましい実施形態によれば、デバイスは、OLED、ディスプレイ、有機太陽電池、ハイブリッド太陽電池、電界効果トランジスタ、タッチスクリーンもしくは熱電発電装置またはそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0145】
本発明によるデバイスの一例として、OLEDが詳細に記載される。本発明による組成物を使用して製造されているOLED、その正孔注入層は、例えば、以下の層構造(a)〜(h)のいずれかを示し得る:
(a)陽極/
正孔注入層/
少なくとも1つのエミッタ層/
陰極;
(b)陽極/
正孔注入層/
正孔輸送層/
少なくとも1つのエミッタ層/
陰極;
(c)陽極/
正孔注入層/
少なくとも1つのエミッタ層/
電子注入層/
陰極;
(d)陽極/
正孔注入層/
正孔輸送層/
少なくとも1つのエミッタ層/
電子注入層/
陰極;
(e)陽極/
正孔注入層/
少なくとも1つのエミッタ層/
電子輸送層/
陰極;
(f)陽極/
正孔注入層/
正孔輸送層/
少なくとも1つのエミッタ層/
電子輸送層/
陰極;
(g)陽極/
正孔注入層/
少なくとも1つのエミッタ層/
電子輸送層/
電子注入層/
陰極;
(h)陽極/
正孔注入層/
正孔輸送層/
少なくとも1つのエミッタ層/
電子輸送層/
電子注入層/
陰極。
【0146】
層構造(a)〜(h)は、基板(その基板は例えばガラスまたは透明プラスチックフィルムである)の隣に位置する陽極、または基板の隣に位置する陰極のいずれかと共に実現され得る。
【0147】
陽極層は、好ましくは、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、フッ素ドープスズ酸化物、三酸化タングステン、二酸化チタン、三酸化モリブデン、アルミニウム亜鉛酸化物、ガリウムインジウムスズ酸化物、アルミニウム、銀、パラジウム、銅、金、白金およびそれらの合金、例えば、銀−パラジウム−銅およびモリブデン−クロムに基づく。
【0148】
エミッタ層についての適切な材料は、ポリフェニレンビニレンおよび/もしくはポリフルオレン、例えば、国際公開WO−A−90/13148号に記載されているポリパラフェニレンビニレン誘導体およびポリフルオレン誘導体などの共役ポリマー、またはアルミニウム錯体など、例えば、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)、蛍光色素、例えば、キナクリドンなどの、技術分野において「小分子」と呼ばれている、低分子エミッタのクラスからのエミッタ、または例えば、Ir(ppy)などのリン光エミッタである。エミッタ層についてのさらに適切な材料は、例えば、独国特許DE−A−19627071号に記載されている。本発明によるエミッタ層として特に好ましいのは、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)である。
【0149】
単一のCa層またはCa層および別の層からなる積層構造が注入層として好ましく、その別の層は、Caを除く、1.5〜3.0eVの仕事関数を示す、周期表のIA族およびIIA族の金属、ならびにそれらの酸化物、ハロゲン化物および炭酸塩から選択される1つ以上の材料からなる。1.5〜3.0eVの仕事関数を示す周期表のIA族の金属、その酸化物、ハロゲン化物および炭酸塩の例は、リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、酸化リチウムおよび炭酸リチウムである。Caを除く、1.5〜3.0eVの仕事関数を示す、周期表のIIA族の金属、ならびにその酸化物、ハロゲン化物、および炭酸塩の例は、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウムおよび炭酸マグネシウムである。
【0150】
電子輸送層は、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンまたはその誘導体、ベンゾキノンまたはその誘導体、ナフトキノンまたはその誘導体、アントラキノンまたはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタンまたはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンまたはその誘導体、ジフェノキノン誘導体および8−ヒドロキシキノリンの金属錯体またはその誘導体、ポリキノリンまたはその誘導体、ポリキノキサリンまたはその誘導体、あるいはポリフルオレンまたはその誘導体などの材料からなってもよい。
【0151】
陰極層についての特に適切な材料は、比較的低い仕事関数(好ましくは4.0eV未満)を有する透明または半透明材料である。この種類の材料の例は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、Be、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、Zn、イットリウム(Y)、インジウム(In)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、Eu、Tbおよびイッテルビウム(Yb)などの金属;これらの金属の2つ以上からなる合金;これらの金属の1つ以上およびAu、Ag、Pt、Cu、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ウォルフラム(W)およびスズ(Sn)から選択される1つ以上の金属からなる合金;グラファイトまたはグラファイト層間化合物;ならびに例えばITOおよび酸化スズなどの金属酸化物である。陰極層としてアルミニウムの使用が特に好ましい。
【0152】
エミッタ層、電子注入層および陰極注入層の適用は、当業者に公知の手段で、好ましくは、例えば国際公開WO−A−2009/0170244号に記載されているような蒸着被覆によって実施され得る。
【0153】
組成物の使用
上述の目的の少なくとも一部を解決することに対する寄与はまた、デバイス使用の寿命を増加させるために本発明による層状構造の導電層における本発明による組成物の使用によってなされる。本発明に関してデバイス使用の寿命は、その最後の製造工程の後のデバイスの寿命と定義される。
【0154】
上述の目的の少なくとも一部を解決することに対する寄与はまた、OLEDの正孔注入層を製造するための本発明による組成物の使用によってなされる。
【0155】
試験方法および非限定的な図面および実施例により、本発明をここでより詳細に説明する。
【0156】
図1は標準的な構造および封入を有するOLEDを示す。その構造は以下の通りである:
ガラス基板(1)
ITO底面電極(2)
PEDOT正孔注入層(3)
NPB正孔輸送層(60nm)(4)
Alq3エミッタ層(50nm)(5)
LiF上面電極(0.3nm)(6)
Al層(水分トラップ)(200nm)(7)
カバーガラス(8)
シーラント(接着剤)(9)
【0157】
PEDOT正孔注入層(3)は本発明による組成物で製造され得る。
【0158】
試験方法
層状構造またはデバイスに関する本発明による方法において利用される組成物の層の機能的挙動を評価するために、以下の手順を行う:
粘度
レオメータ(Haake RV1)を使用して粘度を測定する。レオメータは、サーモスタット、DG43ビーカー(Haake)およびDG43ロータリー(Haake)を備える。12mlの分散系をビーカー内に満たす。サーモスタットを使用して温度を20℃に固定する。温度を平衡化するために、液体を240秒間、50s−1のせん断速度に維持する。続いて、せん断速度を100s−1または700s−1(各測定を参照のこと)に増加させる。次いで液体をこのせん断速度で30秒間維持する。次の30秒にわたって、30回の粘度測定を上述のせん断速度(1回の測定/秒)で行う。これらの30回の測定の平均が最終的な粘度の値である。
【0159】
固体含有量:
精密スケール(Mettler AE240)を使用して固体含有量を重量測定により決定した。最初に蓋を含む空の秤量瓶の重量を量る(重量A)。次いで分析する約3gの分散系を迅速に瓶に満たし、蓋で閉じ、再び重量を量り、正確な合計重量Bを決定する。次いで瓶を、約3時間、蓋をせずにドラフト内に入れて、室温にて揮発性溶剤の蒸発を可能にする。第2の工程において、瓶を100℃にて16時間、換気をしている乾燥オーブン(Memmert UNB200)内に入れる。試料瓶をオーブンから取り出すとき、ガラスの蓋によって即座に覆うことは、乾燥分散材料の吸湿性のために重要である。冷却期間の10〜15分後、蓋を含む瓶を再び秤量して重量Cを決定する。常に2つの試料を繰り返して決定する。
固体含有量の計算:固体含有量wt%=100×(C−A)/(B−A)
【0160】
Karl−Fischer滴定による含水量の測定:
含水量をKarl Fischer滴定によって決定する。703滴定スタンドを備えるMetrohm 787 KF Titrinoをこの目的のために使用する。滴定容器を、約1cmの白金電極が浸水するように分析グレードのメタノールで満たす。次いで約5mlのHydranal緩衝酸をピペットで入れる。KFTプログラムを開始することによって滴定セルを自動的に乾燥させる。「KFT調整済み」というメッセージが現れると準備が完了する。次いで分析する約5mlの分散系を、シリンジを使用して滴定容器に導入し、使用した分散系の正確な質量を、シリンジを戻し秤量(back−weighing)することによって決定する。次いで滴定を開始する。測定した値を、3回の個々の測定の平均として決定する。
【0161】
Kelvinプローブ:
分散系をオゾン化ITO上でスピンコーティングし、200℃にて15分間乾燥させ、仕事関数を、Kelvinプローブ力顕微鏡法によって決定した。
【0162】
OLEDの製造:
A)基板洗浄
ITOをプレコートし、(8個の個々に接続したダイオード、OPTREXを許容するようにエッチング、パターン:2×4平行ITOストライプ、2mm幅によって)プレパターン処理したガラス基板(5cm×5cm)を使用前に以下のプロセスによって洗浄する:
1.アセトン、イソプロパノールおよび水でのリンスによる、
2.0.3%強度のMucasol溶液(Merz)入りの70℃の浴の15分間の超音波処理、
3.水でのリンスによる、
4.遠心分離でのスピンオフによる乾燥、
5.使用直前の15分間のUV/オゾン処理(PR−100、UVP Inc.、Cambridge、GB)。
【0163】
B)正孔注入層(HIL):PEDOT:対イオン層の適用
PEDOT:対イオン層HILの製造のために、組成物を最初に0.45μmのPVDFシリンジフィルターによって濾過し、次いで上述の基板または電極層(層順序ガラス基板/ITO)上に塗布した。コーティング組成物を、領域を完全に覆うためにピペットによって電極上に塗布した。過剰な分散系をスピンコーティングによって振り落とした。その後、ホットプレート上で乾燥プロセスを一工程:空気中で200℃にて5分で実施した。これにより、約50nmの厚さの均質な層が得られた。層厚さを表面形状測定装置(Tencor、Alphastep 500)によって測定した。
【0164】
C)正孔輸送およびエミッタ層の適用
以前の工程における本発明の分散系によってコーティングされたITO基板をここで真空蒸着チャンバ(Univex 350、Leypold)に移した。ここに60nmの厚さを有する正孔輸送層N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(NPB)、続いて50nmの厚さのトリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)を堆積させた。堆積の間の圧力は、<5×10−6mbarである。堆積速度は1Å/sである。速度および層厚さは水晶振動子マイクロバランス(QCM)によってモニターする。
【0165】
D)金属陰極のセル適用
次いで層の系を、窒素および一体化された真空蒸着システム(Edwards)を有するグローブボックスに移し、金属電極で金属化する。この目的のために、層の系が下を向いている状態で基板をシャドーマスク上に置く。シャドーマスクは、直角でITOストリップと交差する、2mm幅の矩形スロットから構成される。<5×10−6mbarの圧力下で、0.3nmの厚さのLiF層、続いて200nmの厚さのアルミニウム層を2つの蒸着用ボートから連続して堆積させる。堆積速度はLiFについて1Å/sであり、Alについて10Å/sである。個々のOLEDの表面積は4.0mmである。次いでデバイスを、内側に空隙が設けられた特殊なカバーガラスで封入する。この空隙内に、水分ゲッター(SAES、DFX/SS−30−A/F/10X18X0.14)を置く。カバーガラスを、2成分接着剤を使用して窒素下でデバイスに接着する。ここで装置を空気中でのOLED特徴付けのために準備をした。
【0166】
この標準的な構造を有するOLEDの概要
ガラス//ITO//PEDOT HIL//NPB(60nm)//Alq3(50nm)//LiF(0.3nm)//Al(200nm)
図1に見ることができる。
【0167】
E)OLED特徴付け
OLEDの2つの電極を、電線および接続ピンを使用して電源と接続する(接触させる)。陽極をITO電極と接続し、陰極を金属電極と接続する。OLED電流およびエレクトロルミネセンス強度を電圧に対してプロットする。エレクトロルミネセンスを、輝度計(Minolta LS−100)を用いて絶対輝度に較正したフォトダイオード(EG&G C30809)を用いて検出する。次いで活動時間を、I=1.92mA(48mA/cm)の定電流を構成に適用し、時間の関数として電圧および光強度をモニターすることによって決定する。
【0168】
導電率:
導電率は比抵抗の逆数を意味する。比抵抗は導電性ポリマー層の表面抵抗と層厚さの積から算出する。表面抵抗は、DIN EN ISO3915に従って導電性ポリマーについて決定する。具体的には、調べるポリマーを、上述の基板洗浄プロセスによって完全に洗浄されたガラス基板50mm×50mmサイズにスピンコーターによって均質のフィルムとして適用する。この手順において、コーティング組成物を、領域を完全に覆うためにピペットによって電極上に適用する。過剰な分散系は、「正孔注入層(HIL):PEDOT:対イオン層の適用」の段落と同じ条件を使用してスピンコーティングによって振り落とした。これにより、全ての物質について約50nm厚さの均質な層が得られる。
【0169】
全ての場合、2.0cmの距離において2.0cmの長さの銀電極を、シャドーマスクを介してポリマー層上に蒸着させる。次いで電極間の層の正方形領域を、メスで2つの線を擦ることによって層の残りから電気的に分離する。オーム計(Keithley 614)を用いてAg電極間の表面抵抗を測定する。擦り取った場所においてStylus Profilometer(Dektac 150、Veeco)を用いてポリマー層の厚さを決定する。
【0170】
本発明をここで試験方法および非限定的な実施例を用いてより詳細に説明する。
【実施例】
【0171】
実施例1:フッ素化化合物を有さないMTBE中のPEDOT:対イオン錯体(比較例)
機械的スターラーを備えた1Lの3つ口丸底フラスコ中で、7.9gの3,4−エチレンジオキシチオフェン(Heraeus Deutschland GmbH & Co KG、ドイツ)を、130gのメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、シクロヘキサン/ヘプタン混合物(Kraton Nexar MD 9150、11.0%固体)中の215gのスルホン化ブロックコポリマーの溶液および9gのpara−トルエンスルホン酸(Aldrich)の混合物に加え、30分間撹拌した。15gのジベンゾイルペルオキシド(Aldrich)を加え、混合物を加熱還流した。6時間後、混合物を室温に冷却し、1175gのメチルtert−ブチルエーテルで希釈した。2日後、残留固体を濾過し、50nm未満の低分子量不純物を除去するために濾液を透析濾過(セラミック膜フィルター(Pall Schumasiv)、孔経50nm、部品番号88519721)によって精製した。
【0172】
分析:
固体含有量:2.1%(重量測定)
含水量:0.2%(Karl−Fischer滴定)
溶媒組成:88%メチルtert−ブチルエーテル、6%シクロヘキサン、6%n−ヘプタン
PEDOT:対イオン比:1:3(w/w)
仕事関数:4.87eV(ケルビンプローブ)
【0173】
実施例2:フッ素化化合物を有さないMTBE中のPEDOT:対イオン錯体(比較例)
100gの実施例1を200gのメチルtert−ブチルエーテルと混合する。物質を0.45μmで濾過する。
【0174】
分析:
溶媒組成:96%メチルtert−ブチルエーテル、2%シクロヘキサン、2%n−ヘプタン;
導電率:2.1×10−4S/cm
【0175】
実施例3:フッ素化化合物を有するMTBE中のPEDOT:対イオン錯体(本発明の実施例)
0.5gの1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシランを実施例1において得られた55gの分散系に加え、10時間超音波処理し、0.45μmの孔経を有するフィルターで濾過した。50gのこの混合物を100gのtert−ブチルメチルエーテルと混合する。この物質を0.45μmで濾過する。
【0176】
分析
含水量:<0.1%(Karl−Fischer滴定)
溶媒組成:96%メチルtert−ブチルエーテル、2%シクロヘキサン、2%n−ヘプタン
仕事関数:5.70eV(ケルビンプローブ)
導電率:9×10−5S/cm
【0177】
実施例4:フッ素化添加剤を有さない安息香酸ブチル中のPEDOT:対イオン錯体(比較例)
機械的スターラーを備えた1Lの3つ口丸底フラスコ中で、401gの安息香酸ブチル(ABCR GmbH)、233gの安息香酸ブチル中のスルホン化ブロックコポリマーの溶液(Kraton Nexar MD 9150、11.8%の固体)および24gの過酸化ジベンゾイルの混合物を撹拌し、窒素で30分間パージした。混合物を60℃に加熱し、12.5gの3,4−エチレンジオキシチオフェン(Heraeus Deutschland GmbH & Co KG、ドイツ)および45gの安息香酸ブチルをシリンジにより加えた。60℃にて6時間および130℃にて1時間撹拌した後、混合物を室温に冷却した。732gの分散系を1320gの安息香酸ブチルで希釈した。得られた分散系を8時間超音波処理し、濾過した(孔経0.2μm)。
【0178】
分析
溶媒組成:100%安息香酸ブチル
導電率:2.0×10−3S/cm
【0179】
実施例5:フッ素化化合物を有する安息香酸ブチル中のPEDOT:対イオン錯体(本発明の実施例)
0.05gのペンタフルオロスチレン/tert−ブチルスチレンコポリマー(モノマー比90/10;ABCR GmbH、Karlsruhe、ドイツ)を9.95gの実施例3の分散系に加え、ポリマーが完全に溶解するまで混合物を60℃にて1時間撹拌した。
【0180】
溶媒組成:100%安息香酸ブチル
導電率:2.3×10−3S/cm
【0181】
実施例6:正孔注入層としての実施例2および3のOLED−デバイス試験
実施例2および3からの分散系を使用してOLEDを製造した。本発明による層の膜厚さは50nmであった。電圧に対して電流およびエレクトロルミネセンスをプロットしたグラフならびにOLEDについての寿命測定を比較する。寿命測定におけるOLEDダイオードの特徴について、電圧および輝度についての値を定電流48mA/cmにて抽出する(順方向バイアス)。t=0hにおける電圧および輝度はそれぞれUおよびLである。Uにおける有効性をL/電流Iの商として算出する。安定性の測定として、U150h、L150hを含むt=150hにおける電圧および輝度、初期輝度のパーセンテージ(L/L150h×00)および電圧増加U150h−Uを、変化を示して記載する。
【0182】
【表1】
【0183】
表1:0時間および寿命測定として150時間後の48mA/cmの定電流において電圧および輝度を比較した本発明による小分子フッ素化化合物を含有する実施例3および基準物としての実施例2についてのOLEDの特徴。
(初期電圧U;初期輝度L;初期電圧における有効性;150時間後の電圧U150h;150時間後の輝度L150h;輝度減少L150h/L0h;電圧増加U150h−U
【0184】
この実施例は、実施例3による分散系が、実施例2と比較して、低い初期電圧、経時的な低い電圧増加および改良された寿命安定性を有する正孔注入として大きな改良を示すことを実証する。
【0185】
実施例7:実施例4および5のOLEDデバイス試験
実施例4および5からの分散系を使用してOLEDを製造した。本発明による層のフィルム厚さは50nmであった。
【0186】
電圧に対する電流およびエレクトロルミネセンスをプロットしたグラフならびにOLEDについての寿命測定を比較する。寿命測定におけるOLEDダイオードの特徴について、電圧および輝度についての値を定電流48mA/cmにて抽出する(順方向バイアス)。t=0hにおける電圧および輝度はそれぞれUおよびLである。Uにおける有効性をL/電流Iの商として算出する。安定性の測定として、U150h、L150hを含むt=150hにおける電圧および輝度、初期輝度のパーセンテージ(L/L150h*100)および電圧増加U150h−Uを、変化を示して記載する。
【0187】
【表2】
【0188】
表2:0時間および寿命時間測定として150時間後の48mA/cmの定電流において電圧および輝度を比較した実施例4および5についてのOLEDの特徴。
(初期電圧U;初期輝度L;初期電圧における有効性;150時間後の電圧U150h;150時間後の輝度L150h;輝度減少L150h/L0h;電圧増加U150h−U
【0189】
この実施例は、実施例5による分散系が、実施例4と比較して、低い初期電圧、経時的な低い電圧増加および改良された寿命安定性を有する正孔注入として大きな改良を示すことを実証する。
図1