【文献】
YI, Rongnan et al.,A Rapid and Highly Efficient Method for the Synthesis of Benzofulvenes via CsOH-Catalyzed Condensation of Inden and Aldehydes,European Journal of Organic Chemistry,2018年 1月26日,1347-1351,DOI:10.1002/ejoc.201701710
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、優れた耐熱性と電気特性を示し、良好な硬化性を有する硬化性樹脂混合物、硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、シクロペンタジエン構造を硬化性官能基として含有する硬化性樹脂混合物が良好な硬化性を示し、かつその硬化物が耐熱性、電気特性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の[1]〜[13]に関する。
[1]
下記式(1)〜式(4)で表されるシクロペンタジエン構造のうち少なくとも1種以上を有する硬化性樹脂混合物。
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、複数存在するAは水素原子又は任意の有機基を表す。複数存在するR
1はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、−NR
22基、−SR
2基、−OSiR
23基又は−PR
22基を表す。複数存在するR
2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。aは1〜3の自然数を表す。)
【0012】
【化2】
【0013】
(式(2)中、A、R
1は前記と同じ意味を表す。bは1〜4の自然数を表す。)
【0014】
【化3】
【0015】
(式(3)中、A、R
1は前記と同じ意味を表す。c、dは1〜4の自然数を表す。)
【0016】
【化4】
【0017】
(式(4)中、複数存在するBは水素原子又は任意の有機基を表す。複数存在するR
1、a、bは前記と同じ意味を表す。nは1以上の自然数を表し、点線は結合が存在していても、存在していなくてもよいことを表す。Cは下記式(5)のいずれか1種以上を表す。)
【0018】
【化5】
【0019】
(式(5)中、*はシクロペンタジエニル基と結合していることを表す。複数存在するR
3、s、tはそれぞれ独立して存在し、R
3は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、−NR
42基、−SR
4基、−OSiR
43基又は−PR
42基(複数存在するR
4は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)を表し、sは1〜7、tは1〜4を表す。点線は結合し、環構造を形成しても良いことを示す。)
[2]
前記式(1)〜式(3)で表され、Aが水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基である前項[1]に記載の硬化性樹脂混合物。
[3]
前記式(4)で表され、Bが水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基である前項[1]に記載の硬化性樹脂混合物。
[4]
炭素原子と水素原子のみから構成される前項[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂混合物。
[5]
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)が1.1〜1,000である前項[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂混合物。
[6]
水酸基当量が125g/eq.以上である前項[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂混合物。
[7]
下記式(6)〜式(8)のうち少なくとも1種以上で表されるシクロペンタジエン系化合物と下記式(9)で表される求電子試薬を反応して得られる前項[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂混合物。
【0020】
【化6】
【0021】
(式(6)中、Aは水素原子又は任意の有機基を表す。R
1、aは前記と同じ意味を表す。)
【0022】
【化7】
【0023】
(式(7)中、R
1、bは前記と同じ意味を表す。)
【0024】
【化8】
【0025】
(式(8)中、R
1、c、dは前記と同じ意味を表す。)
【0026】
【化9】
【0027】
(式(9)中、複数存在するR
5はそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表す。点線は結合し、環構造を形成しても良いことを示す。)
[8]
下記式(10)で表されるシクロペンタジエン系化合物と下記式(11)〜式(13)のうち少なくとも1種以上で表される求電子試薬を反応させて得られる前項[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂混合物。
【0028】
【化10】
【0029】
(式(10)中、R
1、a、bは前記と同じ意味を表し、点線は結合が存在していても、存在していなくてもよいことを表す。)
【0030】
【化11】
【0031】
(式(11)中、複数存在するR
5は前記と同じ意味を表す。点線は結合し、環構造を形成しても良いことを示す。)
【0032】
【化12】
【0033】
(式(12)中、複数存在するR
3、R
5、tは前記と同じ意味を表す。)
【0034】
【化13】
【0035】
(式(13)中、複数存在するR
3、sは前記と同じ意味を表す。)
[9]
前項[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂混合物と硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物。
[10]
前記硬化剤が活性アルケン含有樹脂である前項[9]に記載の硬化性樹脂組成物。
[11]
前記硬化剤がマレイミド樹脂である前項[9]に記載の硬化性樹脂組成物。
[12]
前項[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂混合物、又は前項[9]乃至[11]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物にさらにラジカル重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物。
[13]
前項[9]乃至[12]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【発明の効果】
【0036】
本発明の硬化性樹脂混合物は優れた硬化性を有し、その硬化物は耐熱性と電気特性に優れる。そのため、電気電子部品用絶縁材料(高信頼性半導体封止材料など)及び積層板(プリント配線板、ボールグリッドアレイ(BGA)基板、ビルドアップ基板など)、液晶封止材、有機EL封止材、接着剤(導電性接着剤等)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を始めとする各種複合材料、塗料等の用途に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の硬化性樹脂混合物について詳細に説明する。本発明の硬化性樹脂混合物は優れた硬化性を有し、その硬化物は耐熱性と電気特性に優れる。また極性が低く、かつ高架橋な硬化物となるため、低吸水率、高弾性特性、低熱膨張特性を併せ持つ。加えて架橋構造間に応力緩和できる結合基を有しているため、強靭性に優れる。
シクロペンタジエン構造を有する化合物は従来農薬用途や触媒用途などで使用されてきたが、硬化性樹脂として用いられたことはない。本発明は工業的に利用可能なシクロペンタジエン構造を有する硬化性樹脂混合物の提供を可能にするものである。
【0039】
本発明の硬化性樹脂混合物は下記式(1)〜式(4)で表されるシクロペンタジエン構造のうち少なくとも1種以上を有する。
【0041】
(式(1)中、複数存在するAは水素原子又は任意の有機基を表す。複数存在するR
1はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、−NR
22基、−SR
2基、−OSiR
23基又は−PR
22基を表す。複数存在するR
2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。aは1〜3の自然数を表す。)
【0042】
【化15】
(式(2)中、A、R
1は前記と同じ意味を表す。bは1〜4の自然数を表す。)
【化16】
【0043】
(式(3)中、A、R
1は前記と同じ意味を表す。c、dは1〜4の自然数を表す。)
【0045】
(式(4)中、複数存在するBは水素原子又は任意の有機基を表す。複数存在するR
1、a、bは前記と同じ意味を表す。nは1以上の自然数を表し、点線は結合が存在していても、存在していなくてもよいことを表す。Cは下記式(5)のいずれか1種以上を表す。)
【0047】
(式(5)中、*はシクロペンタジエニル基と結合していることを表す。複数存在するR
3、s、tはそれぞれ独立して存在し、R
3は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、−NR
42基、−SR
4基、−OSiR
43基又は−PR
42基(複数存在するR4は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)を表し、sは1〜7、tは1〜4を表す。点線は結合し、環構造を形成しても良いことを示す。)
【0048】
本発明の硬化性樹脂混合物は、式(1)〜式(4)のシクロペンタジエン構造のうち少なくとも1種以上を有していればよく、1種を単独で有しても複数種を併せ持ってもよく、合成過程で生じる式(1)〜式(4)で表すことができない成分を有していても良い。
【0049】
式(1)〜式(3)で表される構造を有する硬化性樹脂混合物は、生成物の結晶性を制御し、溶剤への溶解性を向上できる点、低粘度のため流動性や成型性を改善できる点から式(1)又は式(2)で表される構造を有するときが好ましく、耐熱性およびポットライフの観点から、式(2)で表される構造を有するときがさらに好ましい。電気特性の観点から極性基を含まないことが好ましく、R
1は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、溶剤溶解性の点から水素原子、メチル基がさらに好ましい。Aは通常、水素原子又は任意の有機基であるが、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であることがさらに好ましく、少なくとも1つ水素原子を含む場合、硬化性が良くなるため特に好ましい。
【0050】
式(4)で表される構造を有する硬化性樹脂混合物は硬化性が良好となり、その硬化物は優れた耐熱性と電気特性を有する。また、硬化性樹脂の極性が低く、かつ高架橋な硬化物となるため、低吸水率、高弾性特性、低熱膨張特性を併せ持つ。加えて架橋構造間に応力緩和できる結合基を有しているため、強靭性に優れる。
本発明の硬化性樹脂混合物は式(4)で表される構造を、1種を単独で有しても、複数種を併せ持ってもよい。電気特性の観点から極性基を含まないことが好ましく、R
1は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、溶剤溶解性の点から水素原子、メチル基がさらに好ましい。nは1〜100の自然数であることが好ましく、1〜50の自然数であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。結合基に関しては、式(5)で表される構造であれば、特に限定されないが、電気特性と強靭性の観点からアラルキル構造を含有することが好ましい。Bは通常、水素原子又は任意の有機基であるが、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基であることがさらに好ましく、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であることが特に好ましい。R
3は水素原子、素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
【0051】
本発明の硬化性樹脂混合物は公知の手法で合成することができる。シクロペンタジエン系化合物と求電子試薬を反応させる手法が好適に用いられる。式(1)〜式(3)で表される構造を有する硬化性樹脂混合物において、シクロペンタジエン系化合物は下記式(6)〜式(8)で表される化合物のうち少なくとも1種である。
【0053】
(式(6)中、Aは水素原子又は任意の有機基を表す。R
1、aは前記と同じ意味を表す。)
【0055】
(式(7)中、R
1、bは前記と同じ意味を表す。)
【0057】
(式(8)中、R
1、c、dは前記と同じ意味を表す。)
【0058】
式(6)〜式(8)で表される化合物は、いかなる原料を用いても良く、1種のみを使用しても、2種以上を併用してもよい。具体的には次に列挙される化合物が例示できるが、その限りではない。
【0059】
式(6)で表される化合物としては、1,3−シクロペンタジエン、1−メチル−1,3−シクロペンタジエン、2−メチル−1,3−シクロペンタジエン、1,2,3,4−テトラメチル−1,3−シクロペンタジエン、1,2,3,4,5−ペンタメチル−1,3−シクロペンタジエンが挙げられる。
【0060】
式(7)で表される化合物としては、インデン、2−メチルインデン、3−メチルインデン、4−メチルインデン、5−メチルインデン、6−メチルインデン、7−メチルインデン、2−エチルインデン、3−エチルインデン、4−エチルインデン、5−エチルインデン、6−エチルインデン、7−エチルインデン、2,3−ジメチルインデン、2,4−ジメチルインデン、2,6−ジメチルインデン、2,7−ジメチルインデン、3,4−ジメチルインデン、3,5−ジメチルインデン、3,6−ジメチルインデン、3,7−ジメチルインデン、4,5−ジメチルインデン、4,6−ジメチルインデン、4,7−ジメチルインデン、5,6−ジメチルインデン、5,7−ジメチルインデン、6,7−ジメチルインデン、4,5,6,7−テトラメチルインデン、2−エテニルインデン、3−エテニルインデン、5−エテニルインデン、4−エチニルインデン、6−エチニルインデン、2−プロピルインデン3−プロピルインデン、5−プロピルインデン、7−プロピルインデン、2−イソプロピルインデン、3−イソプロピルインデン、4−イソプロピルインデン、5−イソプロピルインデン、7−イソプロピルインデン、2−ターシャリーブチルインデン、3−ターシャリーブチルインデン、4−ターシャリーブチルインデン、6−ターシャリーブチルインデン、2−(2−メチルプロプル)インデン、5−(2−メチルプロプル)インデン、2−(1−メチルエテニル)インデン、3−(1−メチルエテニル)インデン、2−アリルインデン、2−エチル−4−メチルインデン、4−エチル−2−メチルインデン、4−フェニルインデン、6−フェニルインデン、2−ヒドロキシインデン、3−ヒドロキシインデン、4−ヒドロキシインデン、5−ヒドロキシインデン、6−ヒドロキシインデン、7−ヒドロキシインデン、2−アミノインデン、4−アミノインデン、5−アミノインデン、6−アミノインデン、7−アミノインデン、2−ブロモインデン、4−ブロモインデン、5−ブロモインデン、6−ブロモインデン、7−ブロモインデン、2−クロロインデン、4−クロロインデン、5−クロロインデン、6−クロロインデン、3−フルオロインデン、4−フルオロインデン、5−フルオロインデン、6−フルオロインデン、2−ヨードインデン、6−ヨードインデン、2−ホスファニルインデン、6−チオールインデン、1H−インデン−2−メタンアミン、1H−インデン−3−メタンアミン、1H−インデン−4−メタンアミン、1H−インデン−5−メタンアミン、1H−インデン−6−メタンアミン、1H−インデン−7−メタンアミン、1H−インデン−2−カルボニトリル、1H−インデン−3−カルボニトリル、1H−インデン−4−カルボニトリル、1H−インデン−5−カルボニトリル、1H−インデン−7−カルボニトリル、1H−インデン−2−カルボアルデヒド、1H−インデン−4−カルボアルデヒド、1H−インデン−5−カルボアルデヒド、1H−インデン−6−カルボアルデヒド、1H−インデン−7−カルボアルデヒド、1H−インデン−2−メタンノール、1H−インデン−3−メタンノール、1H−インデン−4−メタンノール、1H−インデン−5−メタンノール、2−ブロモメチルインデン、3−ブロモメチルインデン、4−ブロモメチルインデン、6−ブロモメチルインデン、7−ブロモメチルインデン、2−クロロメチルインデン、3−クロロメチルインデン、2−フルオロメチルインデン、4−メトキシインデン、5−メトキシインデン、6−メトキシインデン、2−メチル−6−アミノインデン、4−ヒドロキシ−6−メチルインデン、5−ブロモ−2−メチルインデンが挙げられる。
【0061】
式(8)で表される化合物としては、フルオレン、1−メチルフルオレン、2−メチルフルオレン、3−メチルフルオレン、4−メチルフルオレン、1,6−ジメチルフルオレン、1,7−ジメチルフルオレン、1,8−ジメチルフルオレン、2,3−ジメチルフルオレン、2,5−ジメチルフルオレン、2,6−ジメチルフルオレン、2,7−ジメチルフルオレン、3,6−ジメチルフルオレン、4,5−ジメチルフルオレン、1−エチルフルオレン、2−エチルフルオレン、3−エチルフルオレン、4−エチルフルオレン、1−ヒドロキシフルオレン、2−ヒドロキシフルオレン、3−ヒドロキシフルオレン、4−ヒドロキシフルオレン、1−アミノフルオレン、2−アミノフルオレン、3−アミノフルオレン、4−アミノフルオレン、2−チオールフルオレン、2−エチニルフルオレン、3−エチニルフルオレン、2−エテニルフルオレン、2−フルオロフルオレン、3−フルオロフルオレン、4−フルオロフルオレン、2−クロロフルオレン、3−クロロフルオレン、4−クロロフルオレン、2−ブロモフルオレン、3−ブロモフルオレン、4−ブロモフルオレン、2−ヨードフルオレン、3−ヨードフルオレン、4−ヨードフルオレン、2−シアノフルオレンが挙げられる。
【0062】
シクロペンタジエン系化合物のうち、溶解性および低粘度化の観点で1,3−シクロペンタジエン、1−メチル−1,3−シクロペンタジエン、インデン、フルオレンが好ましく、耐熱性と十分なポットライフを得るためにインデンが更に好ましい。
【0063】
式(1)〜式(3)で表される構造を有する硬化性樹脂混合物において、求電子試薬は下記式(9)で表される化合物である。
【0065】
(式(9)中、複数存在するR
5はそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表す。点線は結合し、環構造を形成しても良いことを示す。)
【0066】
求電子試薬は1種のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。具体的には次に列挙される化合物が例示できるが、その限りではない。
【0067】
求電子試薬としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロルベンズアルデヒド、ブロムベンズアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、セバシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド、フタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、トルアルデヒド、α−ナフトアルデヒド、β−ナフトアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ベンジル、アセチルアセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、エチルフェニルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ベンゾフェノン、フルオレノン、インダノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、アンスラキノン、4−ヒドロキシアセトフェノン、アセナフテンキノン、キノン、ベンゾイルアセトン、アダマンタノン、ジアセチルが挙げられる。
【0068】
求電子試薬のうち、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ベンゾフェノンが耐熱性の面で好ましく、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、ベンゾフェノンが反応制御による低粘度材料を得る観点で更に好ましい。
【0069】
式(4)で表される構造を有する硬化性樹脂混合物において、シクロペンタジエン系化合物は下記式(10)で表される公知の化合物であればいかなる原料を用いても良く、1種のみを使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0071】
(式(10)中、R
1、a、bは前記と同じ意味を表し、点線は結合が存在していても、存在していなくてもよいことを表す。)
【0072】
式(10)で表される化合物の具体例としては、1,3−シクロペンタジエン、1−メチル−1,3−シクロペンタジエン、2−メチル−1,3−シクロペンタジエン、1,2,3,4−テトラメチル−1,3−シクロペンタジエン、1,2,3,4,5−ペンタメチル−1,3−シクロペンタジエン、インデン、2−メチルインデン、3−メチルインデン、4−メチルインデン、5−メチルインデン、6−メチルインデン、7−メチルインデン、2−エチルインデン、3−エチルインデン、4−エチルインデン、5−エチルインデン、6−エチルインデン、7−エチルインデン、2,3−ジメチルインデン、2,4−ジメチルインデン、2,6−ジメチルインデン、2,7−ジメチルインデン、3,4−ジメチルインデン、3,5−ジメチルインデン、3,6−ジメチルインデン、3,7−ジメチルインデン、4,5−ジメチルインデン、4,6−ジメチルインデン、4,7−ジメチルインデン、5,6−ジメチルインデン、5,7−ジメチルインデン、6,7−ジメチルインデン、4,5,6,7−テトラメチルインデン、2−エテニルインデン、3−エテニルインデン、5−エテニルインデン、4−エチニルインデン、6−エチニルインデン、2−プロピルインデン3−プロピルインデン、5−プロピルインデン、7−プロピルインデン、2−イソプロピルインデン、3−イソプロピルインデン、4−イソプロピルインデン、5−イソプロピルインデン、7−イソプロピルインデン、2−ターシャリーブチルインデン、3−ターシャリーブチルインデン、4−ターシャリーブチルインデン、6−ターシャリーブチルインデン、2−(2−メチルプロプル)インデン、5−(2−メチルプロプル)インデン、2−(1−メチルエテニル)インデン、3−(1−メチルエテニル)インデン、2−アリルインデン、2−エチル−4−メチルインデン、4−エチル−2−メチルインデン、4−フェニルインデン、6−フェニルインデン、2−ヒドロキシインデン、3−ヒドロキシインデン、4−ヒドロキシインデン、5−ヒドロキシインデン、6−ヒドロキシインデン、7−ヒドロキシインデン、2−アミノインデン、4−アミノインデン、5−アミノインデン、6−アミノインデン、7−アミノインデン、2−ブロモインデン、4−ブロモインデン、5−ブロモインデン、6−ブロモインデン、7−ブロモインデン、2−クロロインデン、4−クロロインデン、5−クロロインデン、6−クロロインデン、3−フルオロインデン、4−フルオロインデン、5−フルオロインデン、6−フルオロインデン、2−ヨードインデン、6−ヨードインデン、2−ホスファニルインデン、6−チオールインデン、1H−インデン−2−メタンアミン、1H−インデン−3−メタンアミン、1H−インデン−4−メタンアミン、1H−インデン−5−メタンアミン、1H−インデン−6−メタンアミン、1H−インデン−7−メタンアミン、1H−インデン−2−カルボニトリル、1H−インデン−3−カルボニトリル、1H−インデン−4−カルボニトリル、1H−インデン−5−カルボニトリル、1H−インデン−7−カルボニトリル、1H−インデン−2−カルボアルデヒド、1H−インデン−4−カルボアルデヒド、1H−インデン−5−カルボアルデヒド、1H−インデン−6−カルボアルデヒド、1H−インデン−7−カルボアルデヒド、1H−インデン−2−メタンノール、1H−インデン−3−メタンノール、1H−インデン−4−メタンノール、1H−インデン−5−メタンノール、2−ブロモメチルインデン、3−ブロモメチルインデン、4−ブロモメチルインデン、6−ブロモメチルインデン、7−ブロモメチルインデン、2−クロロメチルインデン、3−クロロメチルインデン、2−フルオロメチルインデン、4−メトキシインデン、5−メトキシインデン、6−メトキシインデン、2−メチル−6−アミノインデン、4−ヒドロキシ−6−メチルインデン、5−ブロモ−2−メチルインデンが挙げられる。
【0073】
シクロペンタジエン系化合物のうち、極性基および運動性のあるアルキル基が少なく、優れた電気特性を得るため1,3−シクロペンタジエン、インデンが好ましく、耐熱性を得るためにインデンが更に好ましい。
【0074】
式(4)で表される構造を有する硬化性樹脂混合物において、求電子試薬は下記式(11)〜式(13)のいずれかで表され、1種のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0076】
(式(11)中、複数存在するR
5は前記と同じ意味を表す。点線は結合し、環構造を形成しても良いことを示す。)
【0078】
(式(12)中、複数存在するR
3、R
5、tは前記と同じ意味を表す。)
【0080】
(式(13)中、複数存在するR
3は前記と同じ意味を表し、sは1〜7を表す。)
【0081】
前記式(11)〜式(13)のいずれかで表され求電子試薬は具体的には次に列挙される化合物が例示できるが、その限りではない。
【0082】
式(11)で表される化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロルベンズアルデヒド、ブロムベンズアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、セバシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド、フタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、トルアルデヒド、α−ナフトアルデヒド、β−ナフトアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ベンジル、アセチルアセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、エチルフェニルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ベンゾフェノン、フルオレノン、インダノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、アンスラキノン、4−ヒドロキシアセトフェノン、アセナフテンキノン、キノン、ベンゾイルアセトン、アダマンタノン、ジアセチルが挙げられる。
【0083】
式(12)で表される化合物としては、o−ジクロロメチルベンゼン、o−ジブロモメチルベンゼン、o−キシリレングリコール、o−ジメトキシメチルベンゼン、m−ジクロロメチルベンゼン、m−ジブロモメチルベンゼン、m−キシリレングリコール、m−ジメトキシメチルベンゼン、p−ジクロロメチルベンゼン、p−ジブロモメチルベンゼン、p−キシリレングリコール、p−ジメトキシメチルベンゼン、2,2’−ジクロロメチルジフェニル、2,2’−ジブロモメチルジフェニル、2,2’−ジメトキシメチルジフェニル、2,2’−ジメチロールジフェニル、2,4’−ジクロロメチルジフェニル、2,4’−ジブロモメチルジフェニル、2,4’−ジメトキシメチルジフェニル、2,4’−ジメチロールジフェニル、3,3’−ジクロロメチルジフェニル、3,3’−ジブロモメチルジフェニル、3,3’−ジメトキシメチルジフェニル、3,3’−ジメチロールジフェニル、4,4’−ジクロロメチルジフェニル、4,4’−ジブロモメチルジフェニル、4,4’−ジメトキシメチルジフェニル、4,4’−ジメチロールジフェニル、3,3’,4,4’−テトラクロロメチルジフェニル、3,3’,4,4’−テトラブロモメチルジフェニル、3,3’,4,4’−テトラメトキシメチルジフェニル、3,3’,4,4’−テトラメチロールジフェニル、3,3’,5,5’−テトラクロロメチルジフェニル、3,3’,5,5’−テトラブロモメチルジフェニル、3,3’,5,5’−テトラメトキシメチルジフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチロールジフェニル、3,3’,5,5’−テトラクロロメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニル、3,3’,5,5’−テトラブロモメチル−4,4’−ジヒドロキシメチルジフェニル、3,3’,5,5’−テトラメトキシメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチロール−4,4’−ジヒドロキシメチルジフェニルが挙げられる。
【0084】
式(13)で表される化合物としては、シクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、3,9−ジメチルトリシクロデカ−3,8−ジエンが挙げられる。
【0085】
耐熱性および電気特性の観点から、求電子試薬としてはホルムアルデヒド、アセトン、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、p−ジクロロメチルベンゼン、4,4’−ジクロロメチルジフェニルが好ましく、p−ジクロロメチルベンゼン、4,4’−ジクロロメチルジフェニルが特に好ましい。
【0086】
本発明の硬化性樹脂組成物において、シクロペンタジエン系化合物と求電子試薬を反応させる場合、触媒を添加しても良い。用いる触媒としては特に限定されないが、酸性触媒の場合、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸類;シュウ酸、トルエンスルホン酸、酢酸等の有機酸類;タングステン酸等のヘテロポリ酸、活性白土、無機酸、塩化第二錫、塩化亜鉛、塩化第二鉄等、その他酸性を示す有機、無機酸塩類、等の公知の酸性触媒などが挙げられる。塩基性触媒の場合、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド等のアルカリ土類金属アルコキシド等が挙げられる。またアミン系の触媒を使用することもでき、トリエチルアミン、エタノールアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン等が挙げられる。特にアミン系の触媒を使用する場合は溶媒として兼用することもできる。これら触媒は、単独でも2種以上を併用してもよい。シクロペンタジエニルアニオンを生成させ、求電子試薬の反応を促進するためにも塩基性触媒が好適に用いられる。触媒の使用量は、シクロペンタジエン系化合物に対し、通常0.001〜10倍モル、好ましくは0.01〜2倍モルの範囲である。なお、触媒を溶媒として使用する場合は、シクロペンタジエン系化合物に対し、10〜200質量%程度添加することが好ましい。
【0087】
本発明の硬化性樹脂混合物を得る反応では、必要に応じて溶剤を使用してもよい。用い得る溶剤としては、ケトン類、アルコール類、非プロトン性極性溶媒、芳香族炭化水素類等、公知の溶剤を用いることができるが、シクロペンタジエン系化合物および求電子試薬と反応性を有しないことから、非プロトン性極性溶媒、芳香族炭化水素類が好ましい。フルベニル基含有樹脂の極性が低いことから、生成した樹脂を溶解しやすい点を勘案すると、芳香族炭化水素類が更に好ましい。
【0088】
溶剤を使用する場合の使用量は特に制限されないが、例えば、シクロペンタジエン系化合物に対し10〜1000質量%使用することができる。反応温度は通常0〜200℃であり、好ましくは30〜180℃であり、50℃〜150℃で反応させると特に好ましい。反応時間は通常0.5〜20時間であるが、原料化合物の種類によって反応性に差があるため、この限りではない。
【0089】
本発明の硬化性樹脂混合物を得るためには、シクロペンタジエン系化合物および求電子試薬の反応終了後、さらに2段階目として高温で反応を進行させてもよい。高温反応を行なうことで、シクロペンタジエン系化合物と求電子試薬の反応中間体に含まれる水酸基、ハロゲン基などの極性基が消失され、電気特性および吸水率を低減でき、耐熱性を向上させることができる。2段階目の高温反応は80℃〜200℃で行うことが好ましい。この際に副生した水を共沸等により除去することが、反応を完結させる上で好ましい。80℃より低いと反応が完結しない可能性があり、200℃より高いと硬化性樹脂混合物の自己重合が起こる懸念がある。
【0090】
シクロペンタジエン系化合物が消費しきらない場合、求電子試薬を追加することで反応効率を向上してもよい。どう反応を行なう場合、反応温度は通常0〜200℃であり、好ましくは30〜180℃であり、50℃〜150℃で反応させると特に好ましい。反応時間は通常0.5〜20時間であるが、原料化合物の種類によって反応性に差があるため、この限りではない。
【0091】
高温で反応が完結しない場合、酸性化合物により反応液を中和、さらに酸性条件下にて追い込み反応を行なっても良い。酸性条件下、反応を行なうことで、フルベニル基含有樹脂中に残存する水酸基を更に低減することができる。用いうる酸性触媒の具体例としては塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸類;シュウ酸、トルエンスルホン酸、酢酸等の有機酸類;タングステン酸等のヘテロポリ酸、活性白土、無機酸、塩化第二錫、塩化亜鉛、塩化第二鉄等、その他酸性を示す有機、無機酸塩類、等の公知の酸性触媒などが挙げられる。これら触媒は、単独でも2種以上を併用してもよい。触媒の使用量は、前段の反応におけるpHにも依存するが、中和後のシクロペンタジエン系化合物に対し、通常0.001〜10倍モル、好ましくは0.01〜2倍モルの範囲で追加して使用する。反応温度は通常0〜200℃であり、好ましくは30〜180℃であり、50℃〜150℃で反応させると特に好ましい。反応時間は通常0.5〜20時間であるが、原料化合物の種類によって反応性に差があるため、この限りではない。
【0092】
反応終了後、酸または塩基を用いて触媒を中和する。中和剤としては特に限定されないが、酸の場合、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸類;シュウ酸、トルエンスルホン酸、酢酸等の有機酸類;タングステン酸等のヘテロポリ酸、活性白土、無機酸、塩化第二錫、塩化亜鉛、塩化第二鉄等、その他酸性を示す有機、無機酸塩類、等が挙げられ、塩基の場合、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリポリリン酸5ナトリウム、アンモニア等が例示される。この際、中和剤を均一に分散させるために、水溶液として徐々に滴下することが好ましい。
【0093】
本発明の硬化性樹脂混合物は、大量の水中に反応液を滴下するなど公知の手法により結晶として析出させることもできるが、本発明では、反応物を水洗後または水洗無しに、加熱減圧下で反応液から未反応物や溶媒等を除去することにより樹脂として取り出すことができる方法のほうが簡便性、安定性、収率、コスト等の観点から好ましい。
【0094】
本発明の硬化性樹脂混合物は分子量分布を有するため、結晶構造を有しない。従来農薬用途や触媒用途などで使用されてきたシクロペンタジエニル基を有する化合物の多くは結晶構造を有するため、溶剤溶解性が悪くハンドリング性に困難性が生じていたが、本発明の硬化性樹脂混合物は結晶構造を取らず、液状や半固形状となるため、ハンドリング性が良好である。
【0095】
本発明の硬化性樹脂混合物の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)は、通常1.1〜1,000であり、好ましくは1.2〜100であり、さらに好ましくは1.5〜50である。上記範囲に分子量分布を有する硬化性樹脂混合物は母骨格が結合していることから、耐熱性が高くなり、高温時の揮発を低減することができる。加えて、強靭性が向上し、更には結晶性の低減による溶剤溶解性の向上にも寄与することができる。なお、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーション(GPC)分析により測定することができる。
【0096】
本発明の硬化性樹脂混合物は、以下のような反応式で示すことができる。
【0098】
(上記反応式中、複数存在するR
5は前記と同じ意味を表す。点線は結合し、環構造を形成しても良いことを示す。)
【0099】
上記反応式に示すように、反応中間体および副生成物には水酸基が含まれており、電気特性を悪化させる傾向がある。分子内の極性が低減し、電気特性および低吸水特性が向上するため、水酸基当量は通常125g/eq.以上であり、好ましくは500g/eq.以上、更に好ましくは1,500g/eq.以上である。
【0100】
本発明の式(1)〜式(3)で表される硬化性樹脂混合物を得る工程で、シクロペンタジエン系化合物として、式(4)または式(5)で表される化合物、求電子試薬として、下記式(14)で表される化合物を用いた場合、下記式(15)で表される化合物が生成する。
【0102】
(式(14)中、R
5は前記と同じ意味を表す。複数存在するR
6、eはそれぞれ独立し、R6は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフルオロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜10のフルオロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数7〜40のアリールアルキル基、炭素数7〜40のアルキルアリール基又は炭素数8〜40のアリールアルケニル基を表し、eは1〜4の自然数を表す。)
【0104】
(式(15)中、R
1、R
5、R
6、b、eは前記と同じ意味を表す。点線は結合が存在していても、存在していなくてもよいことを表す。)
【0105】
式(15)で表される化合物を含有することで、共役系が分子全体まで拡張されるため、吸収波長を高波長化することができる。薄層基板において、表面に据え付けたレジストの光硬化時に用いるh線やi線のエネルギーを吸収できるため、裏面レジストへの影響を低減することができ、生産性を向上することができる。
【0106】
本発明の硬化性樹脂組成物は硬化剤を含有することができる。硬化剤は本発明の硬化性樹脂混合物と反応できる化合物であれば、公知のいかなる材料を用いても良い。具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミン樹脂、プロペニル樹脂、メタリル樹脂、イソシアネート樹脂、シアネートエステル樹脂、活性アルケン含有樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられ、次に列挙する樹脂を例示することができる。これらの硬化剤は1種類で用いても、複数種類を併用してもよい。
【0107】
フェノール樹脂としては、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド、フルフラール等)との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と置換ビフェニル類(4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル及び4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるフェノール樹脂、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、ポリフェニレンエーテルが挙げられる。
【0108】
エポキシ樹脂としては、前記のフェノール樹脂、アルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、4−ビニル−1−シクロヘキセンジエポキシドや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシラートなどを代表とする脂環式エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)やトリグリシジル−p−アミノフェノールなどを代表とするグリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂が挙げられる。
【0109】
アミン樹脂としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ナフタレンジアミン、アニリンノボラック、オルソエチルアニリンノボラック、アニリンとキシリレンクロライドとの反応により得られるアニリン樹脂、アニリンと置換ビフェニル類(4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル及び4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)が挙げられる。
【0110】
イソシアネート樹脂としては、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環構造のジイソシアネート類;イソシアネートモノマーの一種類以上のビュレット体又は、上記ジイソシアネート化合物を3量化したイソシアネート体等のポリイソシアネート;上記イソシアネート化合物とポリオール化合物とのウレタン化反応によって得られるポリイソシアネートが挙げられる。
【0111】
シアネートエステル樹脂としては、フェノール樹脂をハロゲン化シアンと反応させることにより得られるシアネートエステル化合物が挙げられる。
【0112】
活性アルケン含有樹脂としては、前記のフェノール樹脂と活性アルケン含有のハロゲン系化合物(クロロメチルスチレン、アリルクロライド、メタリルクロライド、アクリル酸クロリド、アリルクロライド等)の重縮合物、活性アルケン含有フェノール類(2−アリルフェノール、2−プロペニルフェノール、4−アリルフェノール、4−プロペニルフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール等)とハロゲン系化合物(4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジブロモベンゾフェノン、塩化シアヌル等)の重縮合物、エポキシ樹脂若しくはアルコール類と置換若しくは非置換のアクリレート類(アクリレート、メタクリレート等)の重縮合物、マレイミド樹脂(4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2’−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン)が挙げられる。
【0113】
ポリアミド樹脂としては、アミノ酸(6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等)、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ウンデカンラクタム、ω−ラウロラクタム)および「ジアミン(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタンなどの脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン;キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン等とジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、スクシン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸; これらジカルボン酸のジアルキルエステル、およびジクロリド)との混合物から選ばれた1種以上を主たる原料とした重合物が挙げられる。
【0114】
ポリイミド樹脂としては、前記のジアミンとテトラカルボン酸二無水物(4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−シクロヘキセン−1,2ジカルボン酸無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1−エチリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2’−プロピリデン−4,4’− ジフタル酸二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、チオ−4,4’−ジフタル酸二無水物、スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、1,4−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2−ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物)、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、メチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,1−エチリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、オキシ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、チオ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、スルホニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、rel−[1S,5R,6R]−3−オキサビシクロ[3,2,1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、エチレングリコール−ビス−(3,4−ジカルボン酸無水物フェニル)エーテル、4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物)との重縮合物が挙げられる。
【0115】
本発明の硬化性樹脂組成物は、耐熱性、密着性、誘電特性のバランスから、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、活性アルケン含有樹脂を含有することが好ましい。耐熱性を更に向上するためには、マレイミド樹脂を用いることが特に好ましい。硬化剤を含有することによって、硬化物の脆さと金属への密着性を向上でき、はんだリフロー時や冷熱サイクルなどの信頼性試験におけるパッケージのクラックを抑制できる。特にマレイミド樹脂やアクリレート樹脂等の活性アルケンを含有する活性アルケン含有樹脂を硬化剤として含有する場合、シクロペンタジエニル基含有樹脂と低極性かつ均一な硬化物を得やすく、誘電特性および強靭性の面で優れる。
【0116】
硬化剤の使用量は、本発明の硬化性樹脂混合物の添加量に対し、通常10倍以下、好ましくは5倍以下、さらに好ましくは3倍以下の質量範囲である。硬化剤の使用量が10倍以上の場合、本発明の硬化性樹脂混合物の濃度が低くなり、充分な耐熱性や誘電特性が得られなくなる可能性がある。
【0117】
本発明の硬化性樹脂組成物において、本発明の硬化性樹脂混合物のフルベニル基同士や、フルベニル基とマレイミド基、アクリレート基、プロペニル基などから選択される活性アルケンを反応させるために、ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。用い得るラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)−ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン等のパーオキシカーボネート類、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物の公知の硬化促進剤が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類等が好ましく、ジアルキルパーオキサイド類がより好ましい。ラジカル重合開始剤の添加量としては、硬化性樹脂組成物の質量100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部が特に好ましい。用いるラジカル重合開始剤の量が多いと重合反応時に分子量が十分に伸長しない。
【0118】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤(硬化触媒)を併用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノールや1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ、カルボン酸亜鉛(2−エチルヘキサン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ミスチリン酸亜鉛)やリン酸エステル亜鉛(オクチルリン酸亜鉛、ステアリルリン酸亜鉛等)等の亜鉛化合物等の遷移金属化合物(遷移金属塩)等が挙げられる。硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂100に対して0.01〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0119】
本発明の硬化性樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)が特に好ましい。リン含有化合物の含有量はリン含有化合物/硬化性樹脂組成物=0.1〜0.6(重量比)が好ましい。0.1以下では難燃性が不十分であり、0.6以上では硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0120】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤を添加しても構わない。使用できる酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物中の樹脂成分に対して100重量部に対して、通常0.008〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0121】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。フェノール系酸化防止剤の具体例として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、等のモノフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が例示される。イオウ系酸化防止剤の具体例として、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルル−3,3’−チオジプロピオネート等が例示される。
【0122】
リン系酸化防止剤の具体例として、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類などが例示される。
これらの酸化防止剤はそれぞれ単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて併用しても構わない。特に本発明においてはリン系の酸化防止剤が好ましい。
【0123】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて光安定剤を添加しても構わない。光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル}メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、等が挙げられる。HALSは1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0124】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100重量部に対して通常0.05〜50重量部、好ましくは0.05〜20重量部が必要に応じて用いられる。
【0125】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて溶融シリカ、結晶シリカ、多孔質シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、石英粉、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、ジルコニア、窒化アルミニウム、グラファイト、フォルステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、酸化鉄アスベスト、ガラス粉末等の粉体、またはこれらを球形状あるいは破砕状にした無機充填材を添加することができる。また、特に半導体封止用の硬化性樹脂組成物を得る場合、上記の無機充填材の使用量は硬化性樹脂組成物中、通常80〜92質量%、好ましくは83〜90質量%の範囲である。
【0126】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を配合することが出来る。用いうる添加剤の具体例としては、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコーンゲル、シリコーンオイル、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。これら添加剤の配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは700質量部以下の範囲である。
【0127】
本発明の硬化性樹脂組成物は、有機溶剤を添加してワニス状の組成物(以下、単にワニスという。)としてもよい。溶剤添加により硬化性樹脂組成物の調製時における粘度が下がり、ハンドリング性を向上されるとともにガラスクロス等の基材への含浸性がより向上する傾向にある。用いられる溶剤としては、例えばγ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。また、積層板を作成する際は使用する溶剤の沸点が高すぎると残溶剤として残ってしまう可能性がある。使用する溶剤の沸点としては、200℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以下である。溶剤は、得られたワニス中の溶剤を除く固形分濃度が通常10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%となる範囲で使用する。
【0128】
本発明の硬化性樹脂組成物の調製方法は特に限定されないが、各成分を均一に混合するだけでも、あるいはプレポリマー化してもよい。例えば本発明で用いられるフルベニル基含有化合物を触媒の存在下または不存在下、溶剤の存在下または不存在下において加熱することによりプレポリマー化する。同様に、本発明の硬化性樹脂混合物の他、エポキシ樹脂、必要により、アミン化合物、マレイミド系化合物、シアネートエステル化合物、フェノール樹脂、酸無水物化合物などの硬化剤及びその他添加剤を追加してプレポリマー化してもよい。各成分の混合またはプレポリマー化は溶剤の不存在下では例えば押出機、ニーダ、ロール、プラネタリーミキサーなどを用い、溶剤の存在下では攪拌装置つきの反応釜などを使用する。
【0129】
ニーダ、ロール、プラネタリーミキサーを用いて均一に混合する場合、50〜100℃ の範囲内の温度で練りこむように混合し、均一な樹脂組成物とする。得られた樹脂組成物は粉砕後、タブレットマシーン等の成型機で円柱のタブレット状に成型、もしくは顆粒状の紛体、もしくは粉状の成型体とする、もしくはこれら組成物を表面支持体の上で溶融し0.05mm〜10mmの厚みのシート状に成型し、硬化性樹脂組成物成型体とすることもできる。得られた成型体は0〜20℃でべたつきのない成型体となり、−25〜0℃で1週間以上保管しても流動性、硬化性をほとんど低下させない。
【0130】
得られた成型体についてトランスファー成型機、コンプレッション成型機にて硬化物に成型することができる。成型物を完全に硬化させるために、65〜300℃、好ましくは100℃〜270℃、さらに好ましくは120〜240℃の熱をかけても良い。
【0131】
本発明の硬化性樹脂組成物は、加熱溶融し、低粘度化してガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維などの強化繊維に含浸させることによりプリプレグを得ることもできる。その具体例としては、例えば、Eガラスクロス、Dガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、球状ガラスクロス、NEガラスクロス、及びTガラスクロス等のガラス繊維、更にガラス以外の無機物の繊維やポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、全芳香族ポリアミド、ポリエステル;並びに、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリイミド及び炭素繊維などの有機繊維が挙げられるが、これらに特に限定されない。基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマットなどが挙げられる。また、織布の織り方としては、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、織布を開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.01〜0.4mm程度である。また、前記ワニスを、強化繊維に含浸させて加熱乾燥させることによりプリプレグを得ることもできる。
【0132】
積層板として用いる場合、上記プリプレグを1枚以上備える。積層板はプリプレグを1枚以上備えるものであれば特に限定されず、他のいかなる層を有していてもよい。積層板の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができ、上記プリプレグ同士を積層し、加熱加圧成形することで積層板を得ることができる。このとき、加熱する温度は、特に限定されないが、65〜300℃が好ましく、120〜270℃がより好ましい。また、加圧する圧力は、特に限定されないが、加圧が大きすぎると積層板の樹脂の固形分調整が難しく品質が安定せず、また、圧力が小さすぎると、気泡や積層間の密着性が悪くなってしまうため2.0〜5.0MPaが好ましく、2.5〜4.0MPaがより好ましい。本実施形態の積層板は、金属箔からなる層を備えることにより、後述する金属箔張積層板として好適に用いることができる。
【0133】
上記プリプレグを所望の形に裁断、必要により銅箔などと積層後、積層物にプレス成形法やオートクレーブ成形法、シートワインディング成形法などで圧力をかけながら硬化性樹脂組成物を加熱硬化させることにより電気電子用積層板(プリント配線板)や、炭素繊維強化材を得ることができる。
【0134】
本発明の硬化物は成型材料、接着剤、複合材料、塗料など各種用途に使用できる。特に本発明のシクロペンタジエン構造を含有する硬化性樹脂混合物の硬化物は優れた耐熱性と誘電特性を示すため、半導体素子用封止材、液晶表示素子用封止材、有機EL素子用封止材、プリント配線基板、ビルドアップ積層板等の電気・電子部品や炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等の軽量高強度構造材用複合材料に好適に使用される。
【0135】
本発明の硬化性樹脂組成物は、耐湿性、耐熱性、高接着性の要求される広範な分野でも用いることが出来る。具体的には、絶縁材料、積層板(プリント配線板、BGA用基板、ビルドアップ基板など)、封止材料、レジスト等あらゆる電気・電子部品用材料として有用である。又、成形材料、複合材料の他、塗料材料、接着剤等の分野にも用いることが出来る。特に半導体積層板には好適に用いることができる。
【実施例】
【0136】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に実施例で用いた各種分析方法について記載する。
【0137】
・ICI溶融粘度
JIS K7117−2(ISO3219)に準拠
・軟化点
JIS K7234に準拠
・GPC
カラム:(ShodexKF−603、KF−602x2、KF−601x2)
連結溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/min.
カラム温度:40℃
検出:RI(示差屈折検出器)
・GC−MS
装置:(株)島津製作所GCMS−QP2010
カラム:HP−5(30m)
キャリア:ヘリウム
流速:1mL/min
カラム温度:80℃(2min)−5℃/min−300℃(60min)
インジェクション:オートインジェクター1μL,split 30:1,300℃
イオン化:EI
【0138】
[実施例1:インデン−ベンズアルデヒド樹脂混合物]
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらインデン73.2部、トルエン143.6部、カリウム−tert−ブトキシド6.7部を加え、70℃に昇温し、ベンズアルデヒド63.7部を30分かけて滴下した。発熱を伴いながら、溶液は黒色へと変化し、70〜75℃の範囲で2時間反応を行った。その後、室温まで冷却し、35%塩酸を30分かけて滴下し、脱水しながら95℃まで昇温、5時間反応を行なった。反応終了後、室温まで冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いて溶液を中和した。続いて、水を加え、水層が中性になるまで水洗を行い、得られた有機層をロータリーエバポレーターにて110℃で減圧下、溶剤を留去することで115部を得た。得られたフルベニル基含有樹脂(以下、FR−1と示す。)は暗褐色半固形状の樹脂であり、水酸基当量は5,400g/eq.、Mw/Mnは8.31であった。GC−MS分析により、式(16−a)で表される化合物及び式(16−b)で表される化合物を確認した。
【0139】
【化30】
【0140】
[実施例2:インデン−アセトフェノン樹脂混合物]
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらインデン24.4部、トルエン50.7部、カリウム−tert−ブトキシド4.5部を加え、80℃に昇温し、アセトフェノン24.0部を30分かけて滴下した。発熱を伴いながら、溶液は黒色へと変化し、80〜85℃の範囲で2時間反応を行った。その後、フラスコにディーンシュタークを取り付けて、脱水しながら120℃まで昇温、5時間反応を行なった。反応終了後、室温まで冷却し、30%塩酸4.2部を用いて溶液を中和した。続いて、水を加え、水層が中性になるまで水洗を行い、得られた有機層をロータリーエバポレーターにて120℃で減圧下、溶剤を留去することで40部を得た。得られたフルベニル基樹脂(以下、FR−2と示す。)は暗褐色液状の樹脂であり、水酸基当量は検出限界(30,000g/eq.)以上、Mw/Mnは1.79であった。GC−MS分析により式(17−a)で表される化合物及び式(17−b)で表される化合物を確認した。
【0141】
【化31】
【0142】
[実施例3:フルオレン−ベンズアルデヒド樹脂混合物]
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらフルオレン34.9部、トルエン78.6部、カリウム−tert−ブトキシド22.4部を加え、80℃に昇温し、ベンズアルデヒド21.2部を30分かけて滴下した。溶液は黒色へと変化し、80〜85℃の範囲で2時間反応を行った。その後、フラスコにディーンシュタークを取り付けて、脱水しながら120℃で5時間、150℃で2時間反応を行なった。反応終了後、室温まで冷却し、30%塩酸24.3部を用いて溶液を中和した。続いて、水を加え、水層が中性になるまで水洗を行い、得られた有機層をロータリーエバポレーターにて130℃で減圧下、水を加えながら水蒸気蒸留して、溶剤および残存のフルオレンを除去することで35部を得た。得られたフルベニル基樹脂(以下、FR−3と示す。)は赤橙色半固形状の樹脂であり、水酸基当量は検出限界(30,000g/eq.)以上、Mw/Mnは5.81であった。GC−MS分析により式(18)で表される化合物を確認した。
【0143】
【化32】
【0144】
[実施例4:メチルシクロペンタジエン−アセトフェノン樹脂混合物]
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置、ディーンシュタークを備えたフラスコに、窒素パージを施しながらメチルジシクロペンタジエン(丸善石油化学株式会社製MDCPD)50.0部を加え、160℃まで昇温し、留出分を回収した。得られた留出分を33.7部、カリウム−tert−ブトキシド44.9部、トルエン126.6部を加え、80℃に昇温し、アセトフェノン48.1部を30分かけて滴下した。溶液は黒色へと変化し、80〜85℃の範囲で5時間反応を行った。その後、脱水しながら120℃まで昇温、2時間反応を行なった。反応終了後、室温まで冷却し、30%塩酸48.6部を用いて溶液を中和した。続いて、水を加え、水層が中性になるまで水洗を行い、得られた有機層をロータリーエバポレーターにて120℃で減圧下、溶剤を留去することで72部を得た。得られたフルベニル基樹脂(以下、FR−4と示す。)は暗褐色半固形状の樹脂であり、水酸基当量は12,000g/eq.、Mw/Mnは1.22であった。GC−MS分析により式(19−a)で表される化合物及び式(19−b)で表される化合物を確認した。
【0145】
【化33】
【0146】
[実施例5:インデンアラルキル樹脂混合物]
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらインデン34.9部、トルエン66.5部、カリウム−tert−ブトキシド18.1部を加え、80℃に昇温し、p−キシリレンジクロリド13.1部を30分かけて分割添加した。激しい発熱を伴いながら、溶液は黒色へと変化し、80〜90℃の範囲で3時間反応を行った。その後、80℃でベンズアルデヒド15.9部を30分かけて滴下し、2時間反応を行なった。室温まで冷却して、35%塩酸31.3部を30分かけて滴下し、脱水しながら95℃まで昇温、5時間反応を行なった。反応終了後、室温まで冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液38.0部を用いて溶液を中和した。水を加え、水層が中性になるまで水洗を行い、得られた有機層をロータリーエバポレーターにて110℃で減圧下、溶剤を留去することで55部を得た。得られたシクロペンタジエニル基含有樹脂混合物(以下、CP−1と示す。)は暗褐色半固形状の樹脂であり、Mw/Mnは8.00であった。GC−MS分析により式(20−a)で表される化合物及び式(20−b)で表される化合物を確認した。
【0147】
【化34】
【0148】
[実施例6:インデンビフェニルアラルキル樹脂混合物]
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらインデン23.2部、トルエン38.2部、カリウム−tert−ブトキシド7.4部を加え、80℃に昇温し、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル7.5部を30分かけて分割添加した。激しい発熱を伴いながら、溶液は黒色へと変化し、80〜90℃の範囲で3時間反応を行った。その後、80℃でベンズアルデヒド14.9部を30分かけて滴下し、2時間反応を行なった。室温まで冷却して、35%塩酸20.8部を30分かけて滴下し、脱水しながら95℃まで昇温、5時間反応を行なった。反応終了後、室温まで冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液25.9部を用いて溶液を中和した。水を加え、水層が中性になるまで水洗を行い、得られた有機層をロータリーエバポレーターにて110℃で減圧下、溶剤を留去することで38部を得た。得られたシクロペンタジエニル基含有樹脂混合物(以下、CP−2と示す。)は暗褐色半固形状の樹脂であり、Mw/Mnは10.41であった。GC−MS分析により式(21)で表される化合物を確認した。
【0149】
【化35】
【0150】
[実施例7:メチルシクロペンタジエンビフェニルアラルキル樹脂]
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置、ディーンシュタークを備えたフラスコに、窒素パージを施しながらメチルジシクロペンタジエン(丸善石油化学株式会社製MDCPD)50.0部を加え、160℃まで昇温し、留出分を回収した。得られた留出分32.1部、トルエン82.7部、カリウム−tert−ブトキシド29.6部を加え、80℃に昇温し、p−キシリレンジクロリド13.1部を30分かけて分割添加した。激しい発熱を伴いながら、溶液は黒色へと変化し、80〜90℃の範囲で2時間反応を行った。その後、室温まで冷却し、35%塩酸2.5部で中和し、水を加え、水層が中性になるまで水洗を行った。得られた有機層をロータリーエバポレーターにて110℃で減圧下、溶剤を留去することで36部を得た。得られたシクロペンタジエニル基含有樹脂混合物(以下、CP−3と示す。)は暗褐色半固形状の樹脂であり、Mw/Mnは5.21であった。GC−MS分析により式(22)で表される化合物を確認した。
【0151】
【化36】
【0152】
[実施例8:インデン−ベンズアルデヒド樹脂混合物]
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらインデン73.2部、トルエン143.6部、カリウム−tert−ブトキシド6.7部を加え、70℃に昇温し、ベンズアルデヒド63.7部を30分かけて滴下した。発熱を伴いながら、溶液は黒色へと変化し、70〜75℃の範囲で2時間反応を行った。その後、室温まで冷却し、35%塩酸を用いて中和した。続いて、水を加え、水層が中性になるまで水洗を行い、得られた有機層をロータリーエバポレーターにて110℃で減圧下、溶剤を留去することで116部を得た。得られたフルベニル基含有樹脂(以下、FR−1と示す。)は暗褐色半固形状の樹脂であり、水酸基当量は1,100g/eq.、Mw/Mnは2.50であった。GC−MS分析により式(23−a)で表される化合物及び式(23−b)で表される化合物を確認した。
【0153】
【化37】
【0154】
[実施例9〜16、比較例1〜3]
得られた化合物とマレイミド樹脂等を表1の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールで混練、タブレット化後、トランスファー成形で樹脂成形体を調製し、200℃で2時間、220℃で6時間、300℃で2時間硬化させた。得られた硬化物の物性を下記項目について測定し、結果を表1に示す。
【0155】
<耐熱性試験>
・ガラス転移温度:動的粘弾性試験機により測定し、tanδが最大値のときの温度。
動的粘弾性測定器:TA−instruments製DMA−2980
昇温速度:2℃/分
<誘電率試験・誘電正接試験>
・(株)関東電子応用開発製の1GHz空洞共振器を用いて、空洞共振器摂動法にてテストを行った。ただし、サンプルサイズは幅1.7mm×長さ100mmとし、厚さは1.7mmで試験を行った。JIS C2565に準拠して1GHzにおいて測定。
【0156】
【表1】
【0157】
表1より、本発明の硬化性樹脂混合物は、耐熱性、電気特性に優れることが確認された。
【0158】
[実施例17]
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらトルエン95.6部、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.5部を加え、室温にて実施例1で得られたFR−1を28.7部、30分かけて分割添加した。室温で5時間撹拌を続けた後、80℃に昇温し更に5時間反応を継続した。反応終了後、室温まで冷却し、水を加え、水層が中性になるまで水洗を行い、得られた有機層をロータリーエバポレーターにて120℃で減圧下、溶剤を留去することでFR−1の重合物を得た。更にトルエンを10部加え、ワニスを調整した後、離型PETフィルムに塗布し、120℃で乾燥することでFR−1の重合フィルムを得た。
【0159】
[比較例4]
FR−1の代わりにインデンモノマーを用いた以外は実施例17と同じ方法で、インデンモノマーの重合フィルムを得た。
【0160】
<耐熱性試験>
・実施例17および比較例4で得られた重合フィルムを用いて、500℃での残炭率を測定した。
測定装置:TG−DTA6220(セイコーインスツル社製)
測定温度:30〜580℃
昇温速度:10℃/min
ガス:窒素ガス200ml/min
【0161】
【表2】
【0162】
表2より、本発明の硬化性樹脂混合物は、耐熱性に優れることが確認された。