(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804835
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】窒素酸化物(NOx)還元触媒および窒素酸化物(NOx)を還元するプロセス
(51)【国際特許分類】
B01J 23/888 20060101AFI20201214BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20201214BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
B01J23/888 AZAB
F01N3/10 A
B01D53/94 222
B01D53/94 223
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-214200(P2015-214200)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2016-87604(P2016-87604A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2018年9月3日
(31)【優先権主張番号】14/529,491
(32)【優先日】2014年10月31日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】賈 鴻 飛
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・エイ・ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】坂野 充
(72)【発明者】
【氏名】南 圭一
(72)【発明者】
【氏名】トリン・ペック
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ティ・ファンソン
【審査官】
中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−139719(JP,A)
【文献】
特表2010−506724(JP,A)
【文献】
特開2012−135754(JP,A)
【文献】
特表2010−504204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86;53/94
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物(NOx)を還元するプロセスであって、
窒素酸化物(NOx)および炭化水素燃料を含む排ガス混合物を提供するステップと、
式:MWO4を有する遷移金属タングステン酸塩を含む窒素酸化物(NOx)還元触媒を提供するステップとを備え、MはMn、Fe、Co、NiおよびCuからなるグループから選択され、前記プロセスはさらに、
前記排ガス混合物を前記窒素酸化物(NOx)還元触媒の表面と接触させて窒素、水および二酸化炭素を形成するステップを備え、
前記遷移金属タングステン酸塩は、4.9〜28.2m2/gの比表面積を有する分散粒子を含む、プロセス。
【請求項2】
前記排ガス混合物は酸素をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記窒素酸化物(NOx)還元触媒は式:MWO4を有する遷移金属タングステン酸塩を含み、MはMn、Fe、CoおよびCuからなるグループから選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記窒素酸化物(NOx)還元触媒は式:MWO4を有する遷移金属タングステン酸塩を含み、MはNiおよびCoからなるグループから選択され、前記触媒は酸素欠乏環境において窒素酸化物(NOx)を還元する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記遷移金属タングステン酸塩は結晶構造を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記遷移金属タングステン酸塩は、10〜60ナノメートルの粒径を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒は式:MnWO4を有し、前記触媒は酸素の存在下で窒素酸化物(NOx)を還元する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記触媒は、前記窒素酸化物(NOx)変換および酸素変換が互いにほぼ等しいように、酸素の存在下でNOx変換に対して高い選択性を有する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記触媒は、90パーセントよりも高い窒素酸化物(NOx)変換を有する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
窒素酸化物(NOx)を還元するプロセスであって、
窒素酸化物(NOx)および炭化水素燃料を含む排ガス混合物を提供するステップと、
式:MWO4を有する遷移金属タングステン酸塩を含む窒素酸化物(NOx)還元触媒を提供するステップとを備え、MはMn、Fe、CoおよびCuからなるグループから選択され、前記プロセスはさらに、
酸素の存在下で前記排ガス混合物を前記窒素酸化物(NOx)還元触媒の表面と接触させて窒素、水および二酸化炭素を形成するステップを備え、
前記遷移金属タングステン酸塩は、4.9〜28.2m2/gの比表面積を有する分散粒子を含む、プロセス。
【請求項11】
窒素酸化物(NOx)を還元するプロセスであって、
窒素酸化物(NOx)および炭化水素燃料を含む排ガス混合物を提供するステップと、
式:MWO4を有する遷移金属タングステン酸塩を含む窒素酸化物(NOx)還元触媒を提供するステップとを備え、MはNiおよびCoからなるグループから選択され、前記プロセスはさらに、
酸素欠乏環境において前記排ガス混合物を前記窒素酸化物(NOx)還元触媒の表面と接触させて窒素、水および二酸化炭素を形成するステップを備え、
前記遷移金属タングステン酸塩は、4.9〜28.2m2/gの比表面積を有する分散粒子を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、窒素酸化物(NOx)を還元するための触媒および窒素酸化物(NOx)を還元するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
燃焼機関からの排ガスは、スモッグおよび他の形態の環境公害の一因となる窒素酸化物(NOx)を作り出す。環境を保護して政府規制を満たすために、これらの機関の排気流からNOxを除去すべきである。現在の三元触媒コンバータ技術は、一定の制約条件下で自動車の排ガス中のNOxを除去するために使用され得る。たとえば、三元触媒は、摂氏300度よりも高い高温で作用する。また、現在の排出基準を満たすために、三元触媒は、白金、ロジウムおよびパラジウムなどの大量の貴金属を含有している。さらに、先行技術の触媒は、酸素の存在下でNOxと反応するのが困難であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、酸素豊富条件および酸素欠乏条件を含むさまざまな条件下でNOxを還元する改善された触媒が当該技術において必要とされている。また、高価な貴金属を含まず、安価に製造できる触媒も必要とされている。さらに、酸素の存在下でまたは酸素の非存在下でNOxと選択的に相互作用する表面を含む触媒も当該技術において必要とされている。また、酸素豊富条件および酸素欠乏条件を含むさまざまな条件においてNOxを還元するためのプロセスも当該技術において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
一局面では、式:MWO
4を有する遷移金属タングステン酸塩を含み、MはMn、Fe、Co、NiおよびCuからなるグループから選択される、窒素酸化物(NOx)還元触媒が開示される。
【0005】
別の局面では、式:MWO
4を有する遷移金属タングステン酸塩を含む窒素酸化物(NOx)還元触媒であって、MはMn、Fe、CoおよびCuからなるグループから選択され、触媒は炭化水素燃料を含む酸素豊富環境で窒素酸化物(NOx)を還元する、窒素酸化物(NOx)還元触媒が開示される。
【0006】
別の局面では、式:MWO
4を有する遷移金属タングステン酸塩を含む窒素酸化物(NOx)還元触媒であって、MはNiおよびCoからなるグループから選択され、触媒は炭化水素燃料を含む酸素欠乏環境で窒素酸化物(NOx)を還元する、窒素酸化物(NOx)還元触媒が開示される。
【0007】
さらなる局面では、窒素酸化物(NOx)および炭化水素燃料を含む排ガス混合物を提供するステップと、式:MWO
4を有する遷移金属タングステン酸塩を含む窒素酸化物(NOx)還元触媒を提供するステップとを含み、MはMn、Fe、Co、NiおよびCuから選択され、さらに、排ガス混合物を窒素酸化物(NOx)還元触媒の表面と接触させて窒素、水および二酸化炭素を形成するステップを含む、窒素酸化物(NOx)を還元するプロセスが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】MnWO
4ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図1B】CoWO
4ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図1C】FeWO
4ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図1D】NiWO
4ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図1E】CuWO
4ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図2】MWO
4についての粒径および対応する比表面積(BET SSA)のプロットであり、MはMn、Fe、Co、NiおよびCuから選択される。
【
図3】窒素酸化物(NOx)還元触媒の活性試験に使用される試験プロトコルのグラフ図である。
【
図4】酸素なしの窒素酸化物(NOx)還元触媒についての温度の関数としてのNO変換のプロットである。
【
図5】酸素ありの窒素酸化物(NOx)還元触媒についての温度の関数としてのNO変換のプロットである。
【
図6】窒素酸化物(NOx)還元触媒についての酸素変換の関数としてのNO変換のプロットである。
【
図7】MnWO
4についての温度の関数としてのNO、酸素および炭化水素変換のプロットである。
【
図8】MnWO
4についての温度の関数としての窒素および二酸化窒素カウント値のプロットである。
【
図9】NiWO
4についての温度の関数としてのNOおよび炭化水素変換のプロットである。
【
図10】NiWO
4についての温度の関数としての窒素および二酸化窒素カウント値のプロットである。
【
図11】MWO
4のXRDプロットであり、MはMn、Fe、Co、NiおよびCuから選択される。
【
図12】酸素豊富条件における窒素酸化物(NOx)還元触媒についての還元メカニズムのグラフ図である。
【
図13】酸素欠乏条件における窒素酸化物(NOx)還元触媒についての還元メカニズムのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましい実施形態の詳細な説明
本開示は、窒素酸化物(NOx)を還元する形成方法、プロセスおよび/または窒素、水および二酸化炭素を発生するための窒素酸化物(NOx)の還元のための触媒組成物を提供する。触媒は、式:MWO
4を有する遷移金属タングステン酸塩を含んでもよく、MはMn、Fe、Co、NiおよびCuからなるグループから選択される。触媒は、酸素豊富環境および酸素欠乏環境で利用されてもよい。この触媒は、狭く規定された条件でしか作用しない多くの三元触媒とは異なり、さまざまな条件での反応を可能にする貴金属フリー触媒を提供する。当該触媒は、現在の先行技術の触媒とは対照的に、酸素豊富環境および酸素欠乏環境における窒素酸化物(NOx)と触媒の表面との選択的な相互作用を可能にする。
【0010】
当該プロセスは、窒素酸化物(NOx)および炭化水素燃料を含む排ガス混合物を提供するステップと、式:MWO
4を有する遷移金属タングステン酸塩を含む窒素酸化物(NOx)還元触媒を提供するステップとを含み、MはMn、Fe、Co、NiおよびCuからなるグループから選択され、さらに、排ガス混合物を窒素酸化物(NOx)還元触媒の表面と接触させて窒素、水および二酸化炭素を形成するステップを含む。
【0011】
一局面では、窒素酸化物(NOx)還元触媒は、式:MWO
4の遷移金属タングステン酸塩を含み、MはMn、Fe、Co、NiおよびCuからなるグループから選択され、窒素酸化物(NOx)還元触媒は結晶構造を含む。触媒は、複数の遷移金属タングステン酸ナノ粒子を含んでもよい。いくつかの場合においては、
図1A〜Eおよび
図2に最もよく示されるように、ナノ粒子は、粒径が均一であり、10〜60ナノメートルの平均粒径を有してもよい。
【0012】
上述のように、触媒は、酸素豊富条件および酸素欠乏条件などのさまざまな条件において使用され得る。一局面では、触媒は式:MWO
4を有してもよく、MはMn、Fe、CoおよびCuから選択され、触媒は酸素豊富環境で窒素酸化物(NOx)を還元する。
【0013】
別の局面では、触媒は式:MWO
4を有してもよく、MはNiおよびCoから選択され、触媒は酸素欠乏環境で窒素酸化物(NOx)を還元する。
【0014】
別の局面では、Co(NO
3)
2、MnCl
2、FeCl
2、Ni(NO
3)
2またはCu(SO
4)
4を含む遷移金属の金属塩を提供するステップと、Na
2WO
4を提供するステップと、金属塩とNa
2WO
4とを組合せて溶液を形成するステップと、溶液をマイクロ波エネルギ源に晒し、水熱反応を開始し、MWO
4を形成するステップとを含む、窒素酸化物(NOx)還元触媒を形成するプロセスが開示される。晒すステップは、温度を所望の温度範囲まで上昇させるか溶液を所望の温度範囲まで加熱するためにさまざまな時間にわたってマイクロ波エネルギに晒すことを含んでもよい。
【0015】
晒すステップは、溶液をマイクロ波エネルギに1分未満〜60分晒すことを含んでもよい。一局面では、晒すステップは、800ワットの電力で1〜10分であってもよい。晒すステップは、溶液の温度を摂氏80〜300度の温度まで上昇させてもよい。晒すステップの後、溶液を冷却してから、洗浄および乾燥してもよい。乾燥ステップの後、触媒材料を摂氏350〜700度で60分間空気中でか焼してもよい。
【0016】
酸素豊富条件については、触媒は、式:MWO
4を有する遷移金属タングステン酸塩を含んでもよく、MはMn、Fe、CoおよびCuからなるグループから選択され、触媒は炭化水素燃料で窒素酸化物(NOx)を還元する。
【0017】
図12を参照して、酸素豊富条件における触媒反応のグラフ図が示される。当該図に示されるように、酸素は触媒の表面に吸着し、一酸化窒素(NO、x=1)の形態の窒素酸化物(NOx)が表面吸着酸素と結合して二酸化窒素を形成し、これが炭化水素燃料と反応して窒素、二酸化炭素および水を形成する。上記の反応メカニズムは、典型的な先行技術の触媒における(NOx)または(NO)還元に対する全体的な活性化エネルギ障壁を減少させ得る。
【0018】
酸素欠乏条件については、触媒は、式:MWO
4を有する遷移金属タングステン酸塩を含んでもよく、MはNiおよびCoからなるグループから選択され、触媒は炭化水素燃料を含む酸素欠乏環境で窒素酸化物(NOx)を還元する。
【0019】
図13を参照して、酸素欠乏条件における触媒反応のグラフ図が示される。当該図に示されるように、窒素酸化物(NOx)または(NO)は触媒の表面と結合し、窒素酸素結合が解離して窒素を形成し、酸素は炭化水素燃料と反応して二酸化炭素および水を形成する。
【0020】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。これらの実施例は、本発明を実施する具体的態様を例示するものであり、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものとして意図されていない。
【0021】
実施例
MWO
4の調製
Co(NO
3)
2、MnCl
2、Fecl
2、Ni(NO
3)
2またはCu(SO
4)
4およびNa
2WO
4×2H
2Oの出発材料をシグマアルドリッチ社から購入し、さらなる精製なしに直接使用した。典型的な合成においては、(0.2M)Na
2WO
4溶液を強い攪拌下で化学量論的に(0.2M)遷移金属溶液と組合わせた。次に、溶液混合物をマイクロ波ガラス管に入れた。マイクロ波反応器(アントンパール社のMicrowave 300)でマイクロ波補助水熱合成を行った。マイクロ波管を、最大電力(800W)でさまざまな温度まで加熱した。以下により詳細に説明されるように、マイクロ波に晒すことをさまざま時間にわたって維持した。マイクロ波に晒した後、強制的な空気流によって管を冷却した。結果として得られた生成物を遠心分離機で複数回DI水で洗った後、摂氏60度で1晩真空乾燥した。乾燥ステップの後、触媒材料を摂氏550度で60分間空気中でか焼した。
【0022】
最終粉末生成物を、
図1A〜Eに示されるようにSEMによって検査した。図中、MWO
4材料は10〜60nmの粒径を有する分散粒子を含んでいることがわかる。粒子は、
図2に示されるように4.9〜28.2m
2/gの比表面積を有する。X線回折(XRD)データが
図11に示されており、触媒材料についての結晶構造を示している。
【0023】
実施例2
MWO
4の活性試験
活性試験は、実験室規模の充填床反応器(PID Eng&Tech社のMicroactivity-Reference)において行なった。炭化水素プロピレン(C3H6)によって、NO還元に対する活性を判定した。活性試験は、酸素欠乏条件および酸素豊富条件の両方において化学量論的条件下で行なった。
図3に示されるように、酸素欠乏条件下では、NO:C3H6の化学量論比は9:1であり、酸素豊富条件下では、NO:C3H6:O2の化学量論比は3:1:3である。さらに
図3に示されるように、100mgの触媒材料を400mgの石英砂と組合せ、100ml/分の全流量(気体時空間速度GHSV〜15,000逆時間)を酸素豊富条件および酸素欠乏条件の両方における試験に使用した。前処理段階は、反応器および触媒混合物を摂氏500度まで加熱し、当該温度を酸化条件下で15分間維持する(30ml/分のHeバランスにおける10%O2)ことを含む。その後、反応器を冷却し、一定の試験において一酸化窒素(NO、x=1)の形態の窒素酸化物(NOx)、炭化水素(C
3H
6)および酸素の気体混合物を導入して所定時間にわたって摂氏50度で維持した。その後、反応器を摂氏600度まで加熱した。さまざまなデータに反映されているようにさまざまな温度で測定を行なった。これは以下により詳細に説明される。
【0024】
図4を参照して、反応器に酸素を加えなかった酸素欠乏条件における触媒サンプルについてのNO変換のプロットが示される。当該プロットからわかるように、NiWO
4およびCoWO
4サンプルは、酸素欠乏条件においてNO還元を示した。酸素欠乏条件におけるNOxの還元は、酸素の非存在下でのNOと触媒表面との選択的な相互作用を立証している。
【0025】
図5を参照して、反応器に酸素を加えた酸素豊富条件における触媒サンプルについてのNO変換のプロットが示される。当該プロットからわかるように、MnWO
4、FeWO
4、CoWO
4およびCuWO
4サンプルは、酸素豊富条件においてNO還元を示した。酸素豊富条件におけるNOxの還元は、酸素の存在下でのNOと触媒表面との選択的な相互作用を立証している。
【0026】
図6は、反応器に酸素を加えた酸素豊富条件下の化学量論的NO還元の条件下のO
2変換の関数として触媒サンプルについてのNO変換のプロットを示す。当該プロットからわかるように、MnWO
4、FeWO
4、CoWO
4サンプルは高いNO選択性を示している。本明細書における選択性とは、触媒表面の、O
2ガスではなくNOガスと選択的に相互作用する能力を指す。MnWO
4サンプルは、O
2に対するNOのほぼ1対1の選択性を示している。酸素の存在下で所望のNO還元反応を行なう触媒表面の能力は、現在の先行技術の触媒に対する改善を提供する。
【0027】
図7を参照して、反応器に酸素を加えた酸素豊富条件におけるMnWO
4に対する温度の関数としてNO、C3H6およびO2変換が示される。当該図においてわかるように、NO変換はサンプルに対して90%を超えている。NO変換は、O
2がより高温で欠乏すると低下した。
【0028】
図8を参照して、それぞれm/z=28およびm/z=46での質量分析カウント値の検出によって監視されるN2およびNO2の生成が、反応器に酸素を加えた酸素豊富条件における温度の関数として示される。
図8は、酸素豊富条件下のNOの還元によってN
2が生成され、微量のNO
2も存在することを示唆している。
【0029】
図9を参照して、反応器に酸素を加えなかった酸素欠乏条件におけるNiWO
4に対する温度の関数としてNOおよびC3H6変換が示される。当該図においてわかるように、NO変換はサンプルに対して80%を超えている。
【0030】
図10を参照して、それぞれm/z=28およびm/z=46での質量分析カウント値の検出によって監視されるN2およびNO2の生成が、反応器に酸素を加えなかった酸素欠乏条件における温度の関数として示される。
図10は、酸素欠乏条件下のNOの還元によってN
2が生成され、NO
2は生成されないことを示唆している。
【0031】
本発明は、上記の例示的な実施例に制限されるものではない。記載された実施例は、本発明の範囲を限定することを意図していない。それらの変更、要素の他の組合せ、および他の使用が当業者には想定されるであろう。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。