特許第6804841号(P6804841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804841
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】分光装置及び分光方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/45 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   G01J3/45
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-67(P2016-67)
(22)【出願日】2016年1月4日
(65)【公開番号】特開2017-122583(P2017-122583A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年12月14日
【審判番号】不服2020-2361(P2020-2361/J1)
【審判請求日】2020年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大登 正敬
【合議体】
【審判長】 三崎 仁
【審判官】 渡戸 正義
【審判官】 伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−177420(JP,A)
【文献】 特開2015−194359(JP,A)
【文献】 特公昭52−34235(JP,B2)
【文献】 特開昭63−100644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J3/00-4/04
G01J7/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を第1直線偏光、及び前記第1直線偏光の振動方向に直交する振動方向を有する第2直線偏光に分離する第1ビームスプリッタと、
前記第1ビームスプリッタから前記第1直線偏光として出射された直線偏光を第1透過光、及び前記第1透過光の振動方向と同じ振動方向を有する第1反射光に分離し、前記第1ビームスプリッタから前記第2直線偏光として出射された直線偏光を第2透過光、及び前記第2透過光の振動方向と同じ振動方向を有する第2反射光に分離する第2ビームスプリッタと、
前記第1透過光及び前記第2透過光によって生成される第1干渉縞を検出する第1検出部と、
前記第1反射光及び前記第2反射光によって生成される第2干渉縞を検出する第2検出部と、
前記第1透過光及び前記第2透過光が入射する第1偏光子と、
前記第1反射光及び前記第2反射光が入射する第2偏光子と、
を備え、
前記第1偏光子及び前記第2偏光子は、前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光の一方の振動方向に対する前記第1偏光子の透過軸の方向と、前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光の前記一方の振動方向に対する前記第2偏光子の透過軸の方向とが互いに直交するように配置されている分光装置。
【請求項2】
請求項に記載の分光装置において、
前記第1干渉縞と前記第2干渉縞との差を算出し、前記差を示すデータをフーリエ変換する信号処理部を備える分光装置。
【請求項3】
光を第1直線偏光、及び前記第1直線偏光の振動方向に直交する振動方向を有する第2直線偏光に分離する第1ビームスプリッタと、
前記第1ビームスプリッタから前記第1直線偏光として出射された直線偏光を第1透過光、及び前記第1透過光の振動方向と同じ振動方向を有する第1反射光に分離し、前記第1ビームスプリッタから前記第2直線偏光として出射された直線偏光を第2透過光、及び前記第2透過光の振動方向と同じ振動方向を有する第2反射光に分離する第2ビームスプリッタと、
前記第1透過光及び前記第2透過光によって生成される第1干渉縞を検出する第1検出部と、
前記第1反射光及び前記第2反射光によって生成される第2干渉縞を検出する第2検出部と、
前記第1透過光及び前記第2透過光が入射する第1偏光子と、
前記第1反射光及び前記第2反射光が入射する第2偏光子と、
を備え、
前記第1偏光子及び前記第2偏光子は、前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光の一方の振動方向に対する前記第1偏光子の透過軸の方向と、前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光の前記一方の振動方向に対する前記第2偏光子の透過軸の方向とが互いに同じ方向になるように配置されている分光装置。
【請求項4】
請求項に記載の分光装置において、
前記第1干渉縞と前記第2干渉縞との平均を算出し、前記平均を示すデータをフーリエ変換する信号処理部を備える分光装置。
【請求項5】
光を第1直線偏光、及び前記第1直線偏光の振動方向に直交する振動方向を有する第2直線偏光に分離する第1ビームスプリッタと、
前記第1ビームスプリッタから前記第1直線偏光として出射された直線偏光を第1透過光、及び前記第1透過光の振動方向と同じ振動方向を有する第1反射光に分離し、前記第1ビームスプリッタから前記第2直線偏光として出射された直線偏光を第2透過光、及び前記第2透過光の振動方向と同じ振動方向を有する第2反射光に分離する第2ビームスプリッタと、
前記第1透過光及び前記第2透過光によって生成される第1干渉縞を検出する第1検出部と、
前記第1反射光及び前記第2反射光によって生成される第2干渉縞を検出する第2検出部と、
偏光子と、
を備え、
前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光は、前記偏光子に入射し、その後、前記第2ビームスプリッタに入射し、
前記第1干渉縞と前記第2干渉縞との平均を算出し、前記平均を示すデータをフーリエ変換する信号処理部を備える分光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の分光装置において、
前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光を集光するレンズを備え、
前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光は、前記レンズに入射し、その後、前記第2ビームスプリッタに入射する分光装置。
【請求項7】
第1ビームスプリッタにより、光を第1直線偏光、及び前記第1直線偏光の振動方向に直交する振動方向を有する第2直線偏光に分離し、
第2ビームスプリッタにより、前記第1ビームスプリッタから前記第1直線偏光として出射された直線偏光を第1透過光、及び前記第1透過光の振動方向と同じ振動方向を有する第1反射光に分離し、前記第2ビームスプリッタにより、前記第1ビームスプリッタから前記第2直線偏光として出射された直線偏光を第2透過光、及び前記第2透過光の振動方向と同じ振動方向を有する第2反射光に分離し、
前記第1透過光及び前記第2透過光を第1偏光子に入射させ、
前記第1反射光及び前記第2反射光を第2偏光子に入射させ、
前記第1透過光及び前記第2透過光によって生成される第1干渉縞を第1検出部により検出し、
前記第1反射光及び前記第2反射光によって生成される第2干渉縞を第2検出部により検出し、
前記第1偏光子及び前記第2偏光子は、前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光の一方の振動方向に対する前記第1偏光子の透過軸の方向と、前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光の前記一方の振動方向に対する前記第2偏光子の透過軸の方向とが互いに直交するように配置されている、分光方法。
【請求項8】
第1ビームスプリッタにより、光を第1直線偏光、及び前記第1直線偏光の振動方向に直交する振動方向を有する第2直線偏光に分離し、
第2ビームスプリッタにより、前記第1ビームスプリッタから前記第1直線偏光として出射された直線偏光を第1透過光、及び前記第1透過光の振動方向と同じ振動方向を有する第1反射光に分離し、前記第2ビームスプリッタにより、前記第1ビームスプリッタから前記第2直線偏光として出射された直線偏光を第2透過光、及び前記第2透過光の振動方向と同じ振動方向を有する第2反射光に分離し、
前記第1透過光及び前記第2透過光を第1偏光子に入射させ、
前記第1反射光及び前記第2反射光を第2偏光子に入射させ、
前記第1透過光及び前記第2透過光によって生成される第1干渉縞を第1検出部により検出し、
前記第1反射光及び前記第2反射光によって生成される第2干渉縞を第2検出部により検出し、
前記第1偏光子及び前記第2偏光子は、前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光の一方の振動方向に対する前記第1偏光子の透過軸の方向と、前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光の前記一方の振動方向に対する前記第2偏光子の透過軸の方向とが互いに同じ方向になるように配置されている、分光方法。
【請求項9】
第1ビームスプリッタにより、光を第1直線偏光、及び前記第1直線偏光の振動方向に直交する振動方向を有する第2直線偏光に分離し、
前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光を偏光子に入射させ、その後、第2ビームスプリッタに入射させ、
前記第2ビームスプリッタにより、前記第1ビームスプリッタから前記第1直線偏光として出射された直線偏光を第1透過光、及び前記第1透過光の振動方向と同じ振動方向を有する第1反射光に分離し、前記第2ビームスプリッタにより、前記第1ビームスプリッタから前記第2直線偏光として出射された直線偏光を第2透過光、及び前記第2透過光の振動方向と同じ振動方向を有する第2反射光に分離し、
前記第1透過光及び前記第2透過光によって生成される第1干渉縞を第1検出部により検出し、
前記第1反射光及び前記第2反射光によって生成される第2干渉縞を第2検出部により検出し、
信号処理部により、前記第1干渉縞と前記第2干渉縞との平均を算出し、前記平均を示すデータをフーリエ変換する、分光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光装置及び分光方法に関し、とくに、フーリエ変換分光に関する。
【背景技術】
【0002】
フーリエ変換分光では、ビームスプリッタにより、光を2つの直線偏光に分離する。特許文献1では、ビームスプリッタとしてサバール板を用いている。特許文献2では、ビームスプリッタとしてウォラストンプリズムを用いている。フーリエ変換分光では、レンズにより2つの直線偏光を集光することにより、干渉縞を生成する。干渉縞は、検出部により検出される。
【0003】
特許文献3では、ビームスプリッタとレンズとの間に偏光子を配置させている。検出部は、偏光子を透過した光線によって生成された干渉縞(第1干渉縞)を検出する。特許文献3では、この干渉縞を検出した後、偏光子の透過軸の向きを変える。その後、検出部は、偏光子を透過した光線によって生成された干渉縞(第2干渉縞)を検出する。特許文献3では、第1干渉縞と第2干渉縞との差を算出する。特許文献2には、この差ではバックグラウンドノイズが取り除かれていると記載されている。
【0004】
特許文献4では、ビームスプリッタ(具体的には、サバール板)から出射された光を偏光ビームスプリッタに入射させている。これにより、サバール板からの光は、互いに直交した振動方向を有する2つの直線偏光に分離される。これにより、一方の直線偏光に基づく第1干渉縞、及び他方の直線偏光に基づく第2干渉縞が同時に生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−105796号公報
【特許文献2】特開2002−168696号公報
【特許文献3】特開平2−268234号公報
【特許文献4】特開2015−194359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献4に記載されているように、フーリエ変換分光では、複数の干渉縞を同時に生成することがある。本発明者は、フーリエ変換分光において、複数の干渉縞を同時に生成するための方法を検討した。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フーリエ変換分光において、新規な方法により、複数の干渉縞を同時に生成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
分光装置は、第1ビームスプリッタ、第2ビームスプリッタ、第1検出部、及び第2検出部を備えている。第1ビームスプリッタは、光を第1直線偏光及び第2直線偏光に分離する。第1直線偏光の振動方向と第2直線偏光の振動方向とは、互いに直交している。第1直線偏光は、第2ビームスプリッタにより第1透過光及び第1反射光に分離される。第1透過光の振動方向と第1反射光の振動方向とは、互いに同じ方向である。第2直線偏光は、第2ビームスプリッタにより第2透過光及び第2反射光に分離される。第2透過光の振動方向と第2反射光の振動方向とは、互いに同じ方向である。第1検出部は、第1透過光及び第2透過光によって生成される第1干渉縞を検出する。第2検出部は、第1反射光及び第2反射光によって生成される第2干渉縞を検出する。
【0009】
本発明に係る分光方法では、第1ビームスプリッタにより、光を第1直線偏光及び第2直線偏光に分離する。第1直線偏光の振動方向と第2直線偏光の振動方向とは、互いに直交している。第2ビームスプリッタにより、第1直線偏光を第1透過光及び第1反射光に分離する。第1透過光の振動方向と第1反射光の振動方向とは、互いに同じ方向である。第2ビームスプリッタにより、第2直線偏光を第2透過光及び第2反射光に分離する。第2透過光の振動方向と第2反射光の振動方向とは、互いに同じ方向である。第1透過光及び第2透過光によって生成される第1干渉縞を第1検出部により検出する。第1反射光及び第2反射光によって生成される第2干渉縞を第2検出部により検出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フーリエ変換分光において、新規な方法により、複数の干渉縞を同時に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る分光装置の構成を示す図である。
図2図1に示した第1ビームスプリッタの詳細を説明するための図である。
図3図1の変形例を示す図である。
図4】第2の実施形態に係る分光装置の構成を示す図である。
図5図4の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
なお、以下に示す説明において、信号処理部90は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。信号処理部90は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされた本図の構成要素を実現するプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶メディア、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置には様々な変形例がある。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る分光装置の構成を示す図である。分光装置は、第1ビームスプリッタ40、第2ビームスプリッタ60、第1検出部82、及び第2検出部84を備えている。第1ビームスプリッタ40は、光を第1直線偏光oe及び第2直線偏光eoに分離する。第1直線偏光oeの振動方向と第2直線偏光eoの振動方向とは、互いに直交している。第1直線偏光oeは、第2ビームスプリッタ60により第1透過光及び第1反射光に分離される。第1透過光の振動方向と第1反射光の振動方向とは、互いに同じ方向である。第2直線偏光eoは、第2ビームスプリッタ60により第2透過光及び第2反射光に分離される。第2透過光の振動方向と第2反射光の振動方向とは、互いに同じ方向である。第1検出部82は、第1透過光及び第2透過光によって生成される第1干渉縞を検出する。第2検出部84は、第1反射光及び第2反射光によって生成される第2干渉縞を検出する。以下、詳細に説明する。
【0015】
光源10は、分光装置で測定される光を発する。この光は、例えば、試料を透過した光、試料で散乱した光、又は試料の発光である。この光は、例えば赤外線であるが、可視光又は紫外線であってもよい。
【0016】
光源10からの光は、レンズ20を透過する。レンズ20は、光源10からの光をコリメート光に変換する。言い換えると、レンズ20は、コリメートレンズである。
【0017】
レンズ20からの光は、偏光子30に入射する。本図に示す例において、偏光子30に入射する光の光軸から見た場合、偏光子30の透過軸は、分光装置の高さ方向(図中、Y方向)から45°傾いている。これにより、偏光子30を透過した光は、偏光子30の透過軸と同じ方向に振動する直線偏光となる。
【0018】
偏光子30からの直線偏光は、第1ビームスプリッタ40を透過し、2つの直線偏光(第1直線偏光oe及び第2直線偏光eo)に分離される。第1直線偏光oeは、分光装置の高さ方向(図中、Y方向)に振動している。第2直線偏光eoは、第1直線偏光oeの振動方向に垂直な方向(図中、X方向)に振動している。図2を用いて後述するように、第1直線偏光oeとして出射される光が第1ビームスプリッタ40に入射してから第1ビームスプリッタ40から出射されるまでに通過する光路長と、第2直線偏光eoとして出射される光が第1ビームスプリッタ40に入射してから第1ビームスプリッタ40から出射されるまでに通過する光路長とは、互いに等しい。
【0019】
図2は、図1に示した第1ビームスプリッタ40の詳細を説明するための図である。本図に示す例において、第1ビームスプリッタ40は、サバール板である。第1ビームスプリッタ40は、第1結晶板42及び第2結晶板44を有している。第1結晶板42及び第2結晶板44は、互いに接合している。
【0020】
第1結晶板42及び第2結晶板44は、いずれも一軸性結晶により形成されている。第1結晶板42の材料及び第2結晶板44の材料は同一である。なお、第1結晶板42の厚さと第2結晶板44の厚さとは互いに等しい。本図に示す例では、第1結晶板42及び第2結晶板44は、イットリウムバナデート(YVO)により形成されている。ただし、第1結晶板42及び第2結晶板44は、例えば、方解石(CaCO)、石英(SiO)、又は酸化チタン(TiO)により形成されていてもよいし、又は例えば、液晶、複屈折ポリマー、又はポーリングにより光学異方性を有するガラスにより形成されていてもよい。
【0021】
第1結晶板42は、第1結晶板42の光学軸が第1結晶板42の厚さ方向(図中、Z方向)から45°傾くように形成されている。同様にして、第2結晶板44は、第2結晶板44の光学軸が第2結晶板44の厚さ方向(図中、Z方向)から45°傾くように形成されている。第1結晶板42及び第2結晶板44は、第1ビームスプリッタ40(第1結晶板42及び第2結晶板44)の厚さ方向(図中、Z方向)から見た場合、第1結晶板42の光学軸と第2結晶板44の光学軸が互いに直交するように接合されている。本図に示す例では、第1結晶板42の光学軸は、第2結晶板44側に向かうにつれて上側に傾いている。第2結晶板44の光学軸は、第1結晶板42の反対側に向かうにつれて右側に傾いている。
【0022】
第1結晶板42に入射した光は、第1結晶板42の入射面において常光線o(第1常光線o)と異常光線e(第1常光線e)とに分離する。第1常光線oは、第1結晶板42の入射面で屈折することなく、第1結晶板42の厚さ方向(図中、Z方向)に沿って直進する。第1常光線oは直線偏光である。第1常光線oは、第1結晶板42の光学軸と直交する方向に振動する。これに対して、第1異常光線eは、第1結晶板42の入射面で屈折する。第1異常光線eの光軸は、第1結晶板42の厚さ方向(図中、Z方向)から第1結晶板42の光学軸と同じ方向に傾く。第1異常光線eは直線偏光である。第1異常光線eは、第1結晶板42の光学軸と平行な方向に振動する。
【0023】
第1結晶板42の常光線oは、第2結晶板44に入射すると、異常光線e(第2異常光線e)となる。第2異常光線eは、第1結晶板42と第2結晶板44の界面で屈折する。第2異常光線eの光軸は、第2結晶板44の厚さ方向(図中、Z方向)から第2結晶板44の光学軸と同じ方向に傾く。第2異常光線eは直線偏光である。第2異常光線eは、第2結晶板44の光学軸と平行な方向に振動する。これに対して、第1結晶板42の異常光線eは、第2結晶板44に入射すると、常光線o(第2常光線o)となる。第2常光線oは、第2結晶板44の厚さ方向(図中、Z方向)に沿って直進する。第2常光線oは直線偏光である。第2常光線oは、第2結晶板44の光学軸と直交する方向に振動する。
【0024】
第2結晶板44の異常光線eは、第2結晶板44の出射面で屈折する。これにより、第2結晶板44の異常光線eは、第1直線偏光oeとして第2結晶板44から出射される。第1直線偏光oeは、第1ビームスプリッタ40の厚さ方向(図中、Z方向)に沿って直進する。これに対して、第2結晶板44の常光線oは、第2結晶板44の出射面で屈折することなく、第2直線偏光eoとして第2結晶板44から出射される。第2直線偏光eoは、第1ビームスプリッタ40の厚さ方向(図中、Z方向)に沿って直進する。
【0025】
なお、第1ビームスプリッタ40は、ウォラストンプリズムであってもよい。以下、第1ビームスプリッタ40はサバール板として説明を行う。
【0026】
図1に戻る。第1直線偏光oe及び第2直線偏光eoは、第1ビームスプリッタ40から出射され、レンズ50を透過する。第1直線偏光oe及び第2直線偏光eoは、レンズ50によって第1検出部82及び第2検出部84に集光される。
【0027】
レンズ50を透過した後、第1直線偏光oe及び第2直線偏光eoは、第2ビームスプリッタ60に入射する。第2ビームスプリッタ60は、無偏光ビームスプリッタ、より具体的には本図に示す例においてプレート型無偏光ビームスプリッタである。なお、第2ビームスプリッタ60は、キューブ型無偏光ビームスプリッタであってもよい。第1直線偏光oeの一部及び第2直線偏光eoの一部は、第2ビームスプリッタ60を透過し、第1直線偏光oeの他の一部及び第2直線偏光eoの他の一部は、第2ビームスプリッタ60により反射される。
【0028】
第1直線偏光oeは、第2ビームスプリッタ60により、第1透過光及び第1反射光に分離される。第2直線偏光eoは、第2ビームスプリッタ60により、第2透過光及び第2反射光に分離される。上記したように、第2ビームスプリッタ60は、無偏光ビームスプリッタであり、偏光ビームスプリッタではない。このため、第1透過光の振動方向及び第1反射光の振動方向は、互いに同じ方向となり、具体的には第1直線偏光oeの振動方向と同じ方向になる。同様に、第2透過光の振動方向及び第2反射光の振動方向は、互いに同じ方向となり、具体的には第2直線偏光eoの振動方向と同じ方向になる。さらに、本図に示す例では、第1直線偏光oeは、第1透過光の強度と第1反射光の強度とがほぼ等しくなるように分離され、第2直線偏光eoは、第2透過光の強度と第2反射光の強度とがほぼ等しくなるように分離される。
【0029】
第2ビームスプリッタ60を透過した光(第1透過光及び第2透過光)は、第1偏光子72を透過し、第1検出部82に集光される。この場合、第1直線偏光oeの成分及び第2直線偏光eoの成分によって干渉縞(第1干渉縞)が生成される。第1検出部82は第1干渉縞を検出する。これに対して、第2ビームスプリッタ60により反射された光(第1反射光及び第2反射光)は、第2偏光子74を透過し、第2検出部84に集光される。この場合、第1直線偏光oeの成分及び第2直線偏光eoの成分によって干渉縞(第2干渉縞)が生成される。第2検出部84は第2干渉縞を検出する。第1検出部82及び第2検出部84は、いずれも、行列状に配置された複数の光電変換素子を有するイメージセンサであり、より具体的には、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。
【0030】
本図に示す例において、第1偏光子72及び第2偏光子74は、第1直線偏光oe及び第2直線偏光eoの一方の振動方向(基準方向)に対する第1偏光子72の透過軸の方向と、上記した基準方向に対する第2偏光子74の透過軸の方向とが互いに直交するように配置されている。さらに、本図に示す例では、第1偏光子72は、上記した基準方向に対する第1偏光子72の透過軸の方向と、上記した基準方向に対する偏光子30の透過軸の方向とが互いに同じ方向になるように配置されている。
【0031】
第1干渉縞の強度分布Iは、
【数1】
によって示すことができる。ただし、I(σ)は光源10の光の強度分布であり、σは波数であり、Δは第1直線偏光oeの成分と第2直線偏光eoの成分との光路差である。これに対して、第2干渉縞の強度分布Iは、
【数2】

によって示すことができる。第1干渉縞の強度分布Iと第2干渉縞の強度分布Iとの差は、
【数3】

となる。
【0032】
第1検出部82の検出結果を示す信号及び第2検出部84の検出結果を示す信号は、信号処理部90に送信される。信号処理部90は、これらの信号に基づいて、強度分布Iと強度分布Iとの差を算出する。さらに、信号処理部90は、この差を示すデータをフーリエ変換する。式(3)から明らかなように、強度分布Iと強度分布Iとの差においては、強度分布のバックグラウンドノイズ(式(1)及び式(2)における第1項)が除去されるとともに、光路差Δに依存する信号成分(式(1)及び式(2)における第2項)を2倍にすることができる。
【0033】
以上、本実施形態によれば、第1ビームスプリッタ40によって光を第1直線偏光oe及び第2直線偏光eoに分離する。第1直線偏光oeは、第2ビームスプリッタ60によって第1透過光及び第1反射光に分離され、第2直線偏光eoは、第2ビームスプリッタ60によって第2透過光及び第2反射光に分離される。第1透過光及び第2透過光によって第1干渉縞が生成される。第1反射光及び第2反射光によって第2干渉縞が生成される。このようにして、本実施形態では、複数の干渉縞を同時に生成することができる。
【0034】
さらに、本実施形態においては、第1ビームスプリッタ40と第2ビームスプリッタ60の間にレンズ50が配置されている。言い換えると、第2ビームスプリッタ60からの透過光(第1透過光及び第2透過光)が入射するレンズ、及び第2ビームスプリッタ60からの反射光(第1反射光及び第2反射光)が入射するレンズを別々に設ける必要がない。このため、分光装置の光学系を簡素にすることができる。
【0035】
図3は、図1の変形例を示す図である。本図に示すように、レンズ50は、第2ビームスプリッタ60と第1検出部82との間、及び第2ビームスプリッタ60と第2検出部84との間それぞれに設けられていてもよい。本図に示す例では、第2ビームスプリッタ60を透過した光(第1透過光及び第2透過光)は、レンズ50(レンズ52)を透過し、その後、第1偏光子72を透過する。第1透過光及び第2透過光は、レンズ52により集光される。第2ビームスプリッタ60により反射された光(第1反射光及び第2反射光)は、レンズ50(レンズ54)を透過し、第2偏光子74を透過する。第1反射光及び第2反射光は、レンズ54により集光される。
【0036】
なお、レンズ52は、第2ビームスプリッタ60と第1偏光子72の間に代えて、第1偏光子72と第1検出部82の間に配置してもよい。この場合、第1透過光及び第2透過光は、第1偏光子72を透過し、その後、レンズ52を透過する。同様にして、レンズ54は、第2ビームスプリッタ60と第2偏光子74の間に代えて、第2偏光子74と第2検出部84の間に配置してもよい。この場合、第1反射光及び第2反射光は、第2偏光子74を透過し、その後、レンズ54を透過する。
【0037】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る分光装置の構成を示す図であり、第1の実施形態の図1に対応する。本実施形態に係る分光装置は、以下の点を除いて、第1の実施形態に係る分光装置と同様の構成である。
【0038】
本実施形態においては、第1偏光子72及び第2偏光子74は、第1直線偏光oe及び第2直線偏光eoの一方の振動方向(基準方向)に対する第1偏光子72の透過軸の方向と、上記した基準方向に対する第2偏光子74の透過軸の方向とが互いに同じ方向になるように配置されている。さらに、第1偏光子72及び第2偏光子74は、上記した基準方向に対する第1偏光子72の透過軸の方向と、上記した基準方向に対する第2偏光子74の透過軸の方向と、上記した基準方向に対する偏光子30の方向とが互いに同じ方向になるように配置されている。
【0039】
本図に示す例においても、第1偏光子72を透過した光によって第1干渉縞が生成され、第2偏光子74を透過した光によって第2干渉縞が生成される。本図に示す例では、上記したように、基準方向に対する第1偏光子72の透過軸の方向と、基準方向に対する第2偏光子74の透過軸の方向とが互いに同じ方向であるため、第1干渉縞の強度及び第2干渉縞の強度は、いずれも、上記した式(1)に示したようになる。
【0040】
第1検出部82の検出結果を示す信号及び第2検出部84の検出結果を示す信号は、信号処理部90に送信される。信号処理部90は、これらの信号に基づいて、第1干渉縞(第1検出部82の検出結果)と第2干渉縞(第2検出部84の検出結果)との平均を算出する。さらに、信号処理部90は、この平均を示すデータをフーリエ変換する。本図に示す例では、第1検出部82及び第2検出部84において画素欠けが生じていたとしても、その影響を抑制することができる。
【0041】
図5は、図4の変形例を示す図である。本図に示すように、レンズ50と第2ビームスプリッタ60の間に偏光子70を配置してもよい。本図に示す例において、偏光子70は、第1直線偏光oe及び第2直線偏光eoの一方の振動方向(基準方向)に対する偏光子70の透過軸の方向と、上記した基準方向に対する偏光子30の透過軸の方向とが同じ方向になるように配置されている。これにより、本図に示す例では、図4に示した例と同様にして、第2ビームスプリッタ60を透過した光(第1透過光及び第2透過光)によって生成される干渉縞(第1干渉縞)と、第2ビームスプリッタ60により反射された光(第1反射光及び第2反射光)によって生成される干渉縞(第2干渉縞)とは、上記した式(1)に示したようになる。
【0042】
本図に示す例においても、信号処理部90は、第1干渉縞と第2干渉縞との平均を算出し、この平均を示すデータをフーリエ変換する。このため、第1検出部82及び第2検出部84において画素欠けが生じていたとしても、その影響を抑制することができる。
【0043】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0044】
10 光源
20 レンズ
30 偏光子
40 第1ビームスプリッタ
42 第1結晶板
44 第2結晶板
50 レンズ
52 レンズ
54 レンズ
60 第2ビームスプリッタ
70 偏光子
72 第1偏光子
74 第2偏光子
82 第1検出部
84 第2検出部
90 信号処理部
図1
図2
図3
図4
図5