(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
搬送面となり、厚みが25〜508μmの単層フィルム状の非粘着層と、接着処理した第1芯体帆布又は第1樹脂層と、を積層したベルト本体の長手方向の一端と他端を、凹部と先端部が半径0.5〜2.0mmの円弧形状をした凸部とが前記長手方向に交差する幅方向に沿って交互に配置されるように加工し、且つ、前記凸部と当該凸部に嵌合する前記凹部との間において、前記凸部の前記非粘着層における先端部と当該凸部に嵌合する前記凹部の底との間にのみそれぞれ、前記長手方向の幅が0.1〜1.0mmの範囲の隙間ができるように加工する凹凸部加工工程と、
前記一端の凸部と前記他端の凹部、及び、前記一端の凹部と前記他端の凸部をそれぞれ互いに突き合わせて、前記凸部の前記非粘着層における先端部と当該凸部に嵌合する前記凹部の底との間にのみそれぞれ、前記長手方向の幅が0.1〜1.0mmの範囲の隙間ができるように嵌合する嵌合工程と、
前記嵌合工程において嵌合した前記凸部と前記凹部を前記ベルト本体厚み方向に熱プレスで加熱圧着して、前記隙間に前記第1芯体帆布の接着成分、又は、前記第1樹脂層の樹脂成分を滲出させ、前記隙間を埋めた状態で、前記ベルト本体の一端と他端とを熱融着して接続する熱融着工程と、を含むことを特徴とする搬送ベルトの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、搬送面に非粘着性の樹脂層(非粘着層)を被覆した搬送ベルトでは、搬送面を構成する樹脂層が非粘着性素材であるがために、汎用素材に比べその下部層との接着性が低い。そのため、搬送ベルトの両端部の接合方法が突き合せ方式であると、特に小径プーリやナイフエッジを具備した搬送装置のような搬送ベルトが大きく屈曲するレイアウトでは、搬送ベルトがプーリに巻き掛かって大きく屈曲する際にジグザグ形状の先端部で非粘着層が剥れやすくなる。
【0006】
そこで、本発明は、粘着性の高い搬送物を搬送しても、突き合せ方式で接合した接合部(ジグザグ形状の先端部)での非粘着層の剥がれが生じない無端状の搬送ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、搬送面となる非粘着層が積層されたベルト本体の長手方向の一端と他端が接続された無端状の搬送ベルトであって、
前記非粘着層が積層されたベルト本体の前記一端及び前記他端は、前記長手方向に交差する幅方向に沿って交互に設けられた凸部と凹部をそれぞれ有し、前記一端の凸部と前記他端の凹部、及び、前記一端の凹部と前記他端の凸部がそれぞれ嵌合するように接続されており、
前記凸部の先端部は、前記搬送面を直交する方向から見たときに円弧形状をしていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、非粘着層が積層されたベルト本体の一端と他端とを接続する際に嵌合させる凸部の先端部が円弧形状をしていることにより、凸部の先端部が尖った形状(例えば、三角形状等)をしたものに比べて、先端部における非粘着層のベルト本体部に対する接触面積が増える。これにより搬送ベルトの使用時に凸部の先端部が屈曲しても、凸部の先端部への応力集中が抑制でき、凸部の先端部を起点とした、非粘着層のベルト本体からの剥がれを防止することができる。
【0009】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記非粘着層が積層されたベルト本体の前記凸部の先端部が、半径0.5〜2.0mmの真円形状をしていることを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、凸部の先端部が半径0.5〜2.0mmの真円形状をしているため、凸部の先端部への応力が集中せず均等に分散されるため、凸部の先端部を起点とした、非粘着層のベルト本体からの剥がれをより防止することができる。
【0011】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記非粘着層が、樹脂により形成されていることを特徴としている。
【0012】
上記のように非粘着層に樹脂を使用することにより非粘着性に優れた搬送面にすることができる。
【0013】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記非粘着層が、フッ素樹脂により形成されていることを特徴としている。
【0014】
上記のように非粘着層にフッ素樹脂を使用することにより非粘着性に加え、耐熱性にも優れた搬送面にすることができる。
【0015】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記非粘着層が、フィルム状のフッ素樹脂層であることを特徴としている。
【0016】
一般に、非粘着層が厚くなると、非粘着層が硬くなるので、搬送ベルトの屈曲により非粘着層がベルト本体から剥れ易くなる。
そこで、上記のように、非粘着層をフィルム状のフッ素樹脂層にすることにより非粘着層の厚みを薄くすることができる。これにより、非粘着層を薄くすることができるので、搬送ベルトの屈曲により非粘着層がベルト本体から剥れるのを抑制することができる。
【0017】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記非粘着層の厚みが、1.0〜20milであることを特徴としている。
【0018】
非粘着層の厚みが1.0mil(約25μm)より薄ければ、耐久性に劣り、20mil(約508μm)より厚ければ屈曲性が劣ることになる。そこで、上記のように非粘着層の厚みを1.0〜20milの範囲にすることにより、非粘着層の耐久性及び屈曲性を保持することができる。
【0019】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記ベルト本体は、
前記非粘着層と、
前記非粘着層の下層に積層された、第1芯体帆布層と、が積層されていることを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、ベルト本体を非粘着層と第1芯体帆布層によって構成することができ、搬送ベルトの厚みを薄くして屈曲性に優れる。
【0021】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記ベルト本体は、
前記非粘着層と、
前記非粘着層の下層に積層された第1樹脂層と、
前記第1樹脂層の下層に配置された、第1芯体帆布層と、が積層されていることを特徴としている。
【0022】
上記構成によれば、ベルト本体の非粘着層と第1芯体帆布層との間に、第1樹脂層を設けることにより、搬送面が柔らかくなり搬送物の傷付きを防止することができる。
【0023】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記ベルト本体は、更に、
前記第1芯体帆布層の下層に積層された第2樹脂層と、
前記第2樹脂層の下層に配置された、第2芯体帆布層と、が積層されていることを特徴としている。
【0024】
上記構成によれば、ベルト本体が、更に、第2樹脂層と第2芯体帆布層とを備えることにより、搬送ベルトのベルト強力を高めることができる。
【0025】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記凸部の前記非粘着層における先端部と当該凸部に嵌合する前記凹部との間には、それぞれ隙間が形成されており、
前記第1芯体帆布層は接着剤を含み、当該接着剤が前記隙間に滲出していることを特徴としている。
【0026】
上記構成によれば、凸部の非粘着層における先端部とこの凸部に嵌合する凹部との間に隙間を設け、この隙間に、第1芯体帆布層と非粘着層との接着に使用される接着剤を滲み出させる。これにより、隙間に滲出した接着剤が非粘着層の側面を覆うことで、この接着剤が非粘着層に対するクッションの役割を担い、非粘着層における凸部の先端部への応力を緩和し、非粘着層の下からの浮き上がりを抑制し、凸部の先端部を起点とした、非粘着層のベルト本体からの剥がれをより防止することができる。
【0027】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記凸部の前記非粘着層における先端部と当該凸部に嵌合する前記凹部との間には、それぞれ隙間が形成されており、
前記第1樹脂層が前記隙間に滲出していることを特徴としている。
【0028】
上記構成によれば、凸部の非粘着層における先端部とこの凸部に嵌合する凹部との間に隙間を設け、この隙間に、第1樹脂層の樹脂成分を滲み出させる。これにより、隙間に滲出した第1樹脂層の樹脂成分が非粘着層の側面を覆うことで、この第1樹脂層が非粘着層に対するクッションの役割を担い、非粘着層における凸部の先端部への応力を緩和し、非粘着層の下からの浮き上がりを抑制し、凸部の先端部を起点とした、非粘着層のベルト本体からの剥がれをより防止することができる。
【0029】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記隙間の前記長手方向の幅は、0.1〜1.0mmであることを特徴としている。
【0030】
隙間のベルト本体の長手方向の幅を、0.1〜1.0mmの範囲にすることにより、隙間から滲出する接着剤又は樹脂の滲み量を、非粘着層に対するクッション性を担うのに適切な量にすることができる。
【0031】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記第1樹脂層、及び、第2樹脂層が、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーであることを特徴としている。
【0032】
上記構成によれば、第1樹脂層及び第2樹脂層を加工性・強度に優れた構成にすることができる。
【0033】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記第1芯体帆布層に含まれる前記接着剤は、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーであることを特徴としている。
【0034】
上記構成によれば、第1芯体帆布を加工性・強度に優れた構成にすることができる。
【0035】
また、本発明の1つは、上記搬送ベルトにおいて、前記熱可塑性樹脂または前記熱可塑性エラストマーは、ポリエーテル系ポリウレタン、又は、ポリカーボネート系ポリウレタンであることを特徴としている。
【0036】
上記構成によれば、コストパフォーマンスに優れる。
【0037】
また、本発明の1つは、搬送面となる非粘着層と、接着処理した第1芯体帆布又は第1樹脂層と、を積層したベルト本体の長手方向の一端と他端を、凹部と先端部が円弧形状をした凸部とが前記長手方向に交差する幅方向に沿って交互に配置するように加工する凹凸部加工工程と、
前記一端の凸部と前記他端の凹部、及び、前記一端の凹部と前記他端の凸部をそれぞれ互いに突き合わせて嵌合する嵌合工程と、
前記嵌合工程において嵌合した前記凸部と前記凹部を前記ベルト本体厚み方向に熱プレスで加熱圧着して、前記ベルト本体の一端と他端とを熱融着して接続する熱融着工程と、を含むことを特徴とする搬送ベルトの製造方法である。
【0038】
上記製造方法によれば、非粘着層が積層されたベルト本体の一端と他端とを接続する際に嵌合させる凸部の先端部が円弧形状をしていることにより、凸部の先端部が尖った形状(例えば、三角形状等)をしたものに比べて、先端部における非粘着層のベルト本体部に対する接触面積が増える。これにより搬送ベルトの使用時に凸部の先端部が屈曲しても、凸部の先端部への応力集中が抑制でき、凸部の先端部を起点とした、非粘着層のベルト本体からの剥がれを防止することができる搬送ベルトを製造することができる。
【0039】
また、本発明の1つは、搬送面となる非粘着層と、接着処理した第1芯体帆布又は第1樹脂層と、を積層したベルト本体の長手方向の一端と他端を、凹部と先端部が円弧形状をした凸部とが前記長手方向に交差する幅方向に沿って交互に配置されるように加工し、且つ、前記凸部の前記非粘着層における先端部と当該凸部に嵌合する前記凹部との間にそれぞれ隙間ができるように加工する凹凸部加工工程と、
前記一端の凸部と前記他端の凹部、及び、前記一端の凹部と前記他端の凸部をそれぞれ互いに突き合わせて、前記凸部の前記非粘着層における先端部と当該凸部に嵌合する前記凹部との間にそれぞれ隙間ができるように嵌合する嵌合工程と、
前記嵌合工程において嵌合した前記凸部と前記凹部を前記ベルト本体厚み方向に熱プレスで加熱圧着して、前記隙間に前記第1芯体帆布の接着成分、又は、前記第1樹脂層の樹脂成分を滲出させ、前記隙間を埋めた状態で、前記ベルト本体の一端と他端とを熱融着して接続する熱融着工程と、を含むことを特徴とする搬送ベルトの製造方法である。
【発明の効果】
【0040】
粘着性の高い搬送物を搬送しても、突き合せ方式で接合した接合部(ジグザグ形状の先端部)での非粘着層の剥がれが生じない無端状の搬送ベルトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0043】
(搬送ベルト1概要)
本実施形態に係る搬送ベルト1は、長尺な帯状のベルト本体の両端部を接合することにより無端状にした平ベルトであり、
図1に示すように、駆動プーリ11と従動プーリ12との間に巻き掛けられて使用される。これにより、搬送ベルト1の搬送面上に食品などの搬送物(物品)を乗せて、従動プーリ12側から駆動プーリ11側に搬送可能としている。
【0044】
(実施形態1)
図1に、実施形態1〜3に係る搬送ベルト1の側面図及び上面図を示す。
図2に、実施形態1〜3に係る搬送ベルト1の周長方向のX−X断面図を示す。
図2に示す搬送ベルト1の断面図では、図の上側が搬送物を載置する外周側(搬送面側)、下側が内周側(駆動プーリ11及び従動プーリ12に接する面側)となり、図の奥行き方向が搬送ベルト1の幅方向となる。
【0045】
図1及び
図2に示すように、実施形態1の搬送ベルト1は、搬送面となる非粘着層21が積層されたベルト本体2の長手方向の一端31と他端32が接続されている。このベルト本体2の一端31及び他端32は、長手方向に交差する幅方向に沿って交互に設けられた凸部31a・32aと凹部31b・32bをそれぞれ有し、一端31の凸部31aと他端32の凹部32b、及び、一端31の凹部31bと他端32の凸部32aがそれぞれ嵌合するように配置され、加熱・加圧による圧着により接続されている。
【0046】
(ベルト本体2)
図2に示すように、ベルト本体2は、搬送ベルト1の外周側(搬送面側)から内周側へ順に、非粘着層21と、芯体帆布22(第1芯体帆布層)とが積層されて構成されている。
【0047】
非粘着層21は、搬送物と直接接触する搬送面となるため、搬送物が炊き立てのご飯や、つき立ての餅のような、高温かつ粘着性の高い食品である場合、搬送面の耐熱性を高めるとともに、特に搬送物が搬送面に粘着し難い非粘着性に優れた材料が使用される。例えば、非粘着層21には、フッ素樹脂やシリコーン樹脂などの樹脂が使用できるが、非粘着性に優れたフッ素樹脂が好ましい。フッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)などが挙げられるが、特に非粘着性に加え、耐熱性にも優れる点からPTFEが好ましい。
【0048】
非粘着層21の形成手段としては、フィルム状(又はシート状)に形成したフッ素樹脂を芯体帆布22に積層する手段がある。一般に、非粘着層21が厚くなると、非粘着層21が硬くなるので、搬送ベルト1の屈曲により非粘着層21がベルト本体2から剥れ易くなる。そこで、上記のように、非粘着層21をフィルム状のフッ素樹脂層にすることにより非粘着層21の厚みを薄くすることができる。これにより、非粘着層21を薄くすることができるので、搬送ベルト1の屈曲により非粘着層21がベルト本体2から剥れるのを抑制することができる。なお、その他に、非粘着層21の形成手段としては、フッ素樹脂粒子を水に分散させたディスパージョンを芯体帆布22の表面に塗布する手段がある。
【0049】
また、非粘着層21の厚さは、1.0〜20mil(1mil=1/1000インチ)の範囲で形成することが好ましい。非粘着層21の厚みが1.0mil(約25μm)より薄ければ、耐久性に劣り、20mil(約508μm)より厚ければ屈曲性が劣ることになる。そこで、上記のように非粘着層21の厚みを1.0〜20milの範囲にすることにより、非粘着層21の耐久性及び屈曲性を保持することができる。
【0050】
芯体帆布22(第1芯体帆布層)は、経糸と緯糸を交差させて織られた織布(平織り、綾織り、朱子織等)である。例えば、経糸、緯糸をほぼ直角に交差して織られた平織り布が使用できる。経糸・緯糸の材質としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、綿繊維などが用いられる。また、経糸・緯糸は、フィラメント(長繊維)を撚り合せたマルチフィラメント、またはモノフィラメントや、短繊維を撚り合せたスパン糸(紡績糸)を用いてもよい。経糸・緯糸の繊度は、フィラメント糸の場合は、500〜1500dtexである(スパン糸の場合は、5〜22番手)。経糸密度は、70〜150本/5cm、緯糸密度は、45〜80本/5cmである。
【0051】
芯体帆布22の厚さは、例えば、0.3〜2.0mmであって、特に0.5〜1.2mmが好ましい。芯体帆布22の厚みが、0.5mmよりも薄いと、物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性が確保できず、1.2mmよりも厚いと、屈曲性が低下してしまうためである。
【0052】
また、芯体帆布22には、非粘着層21との接着性を向上させるため、接着処理をしている。接着処理は、有機溶媒に溶かした接着剤を芯体帆布22にコーティング、または、芯体帆布22を接着剤に浸漬することにより行う。接着剤としては、加工性・強度に優れた熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーが好ましく、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーとしては、ポリエーテル系ポリウレタン、又は、ポリカーボネート系ポリウレタンが好ましく、特にポリエーテルポリウレタンエラストマーをメチルエチルケトン/シクロヘキサン/テトラヒドロフランの混合溶媒に溶解させたものが好ましい。
【0053】
(ベルト本体2の一端31及び他端32:接合部)
図2に示すように、ベルト本体2の一端31に形成された凸部31a及び凹部31bは、ジグザグ形状(電光形状、フィンガー形状)をしている。また、ベルト本体2の他端32に形成された凸部32a及び凹部32bもジグザグ形状をしている。この凸部31a及び凹部31b、凸部32a及び凹部32bは、ベルト本体2の長手方向の両端を、X、Y軸カッティングプロッタや、打ち抜き機等で裁断することにより互いに嵌合するようにジグザグ形状(電光形状)になるように形成される。
【0054】
また、
図1に示すように、凸部31a・32aの先端部31cは、搬送面を直交する方向から見たときの形状が円弧形状をしている。本実施形態では、凸部31a・32aの先端部31cは、真円形状をしており、半径Rが、0.5〜2.0mmの範囲内の丸みを有することが好ましい。
【0055】
また、ベルト本体2のジグザグ形状をした、一端31の凸部31aと他端32の凹部32b、及び、一端31の凹部31bと他端32の凸部32aをそれぞれ互いに突き合わせて嵌合し、ベルト本体2の厚み方向に熱プレスで加熱圧着して、ベルト本体2の一端31と他端32とを融着することにより接続している。
【0056】
上記構成によれば、非粘着層21が積層されたベルト本体2の一端31と他端32とを接続する際に嵌合させる凸部31a・32aの先端部31c・32cが円弧形状をしていることにより、凸部31a・32aの先端部が尖った形状(例えば、三角形状等)をしたものに比べて、先端部31c・32cにおける非粘着層21のベルト本体2に対する接触面積が増える。これにより搬送ベルト1の使用時に凸部31a・32aの先端部31c・32cが屈曲しても、凸部31a・32aの先端部31c・32cへの応力集中が抑制でき、凸部31a・32aの先端部31c・32cを起点とした、非粘着層21のベルト本体2からの剥がれを防止することができる。
【0057】
また、凸部31a・32aの先端部31c・32cが半径0.5〜2.0mmの真円形状をしているため、凸部31a・32aの先端部31c・32cへの応力が集中せず均等に分散されるため、凸部31a・32aの先端部31c・32cを起点とした、非粘着層21のベルト本体2からの剥がれをより防止することができる。
【0058】
また、上記構成によれば、ベルト本体2を非粘着層21と芯体帆布22の層によって構成することができ、厚みを薄くした屈曲性に優れた搬送ベルト1にすることができる。
【0059】
(実施形態2)
実施形態2の搬送ベルト1は、
図2に示すように、ベルト本体2が、搬送ベルト1の外周側(搬送面側)から内周側へ順に、非粘着層21と、第1樹脂層23と、芯体帆布22(第1芯体帆布層)とが積層されて構成されている。なお、その他の構成は実施形態1と同様である。
【0060】
第1樹脂層23は、ポリウレタン、ポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステルからなる熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから形成される。特に、加工性や強度に優れた熱可塑性ポリウレタン樹脂/エラストマーであって、耐加水分解性に優れたポリエーテル系ポリウレタンや、耐熱性、耐薬品性に優れたポリカーボネート系ポリウレタンが好ましい。非粘着層21の下層に積層される第1樹脂層23は、非粘着層21の搬送面を柔らかくし、搬送物の傷付きを防止するために設けられる。なお、仮に、非粘着層21に用いる材料(例えばフッ素樹脂)が高価な場合、搬送面のクッション性を高めるために非粘着層21を厚くするとコストが上がってしまう。そこで、第1樹脂層23に安価かつ柔軟な材料を使用し、非粘着層21と芯体帆布22との間に積層することで製造コストを低減することができる。
【0061】
また、第1樹脂層23の厚みは、0.3〜0.5mmの範囲が好ましい。第1樹脂層23の厚みが、0.3mmよりも薄いと、搬送面のクッション性が十分に確保できず、0.5mmよりも厚いと、屈曲性が低下してしまうためである。
【0062】
(実施形態3)
実施形態3の搬送ベルト1は、
図2に示すように、ベルト本体2が、搬送ベルト1の外周側(搬送面側)から内周側へ順に、非粘着層21と、第1樹脂層23と、芯体帆布22(第1芯体帆布層)と、第2樹脂層25と、芯体帆布24(第2芯体帆布層)とが積層されて構成されている。なお、その他の構成は実施形態2と同様である。
【0063】
第2樹脂層25は、第1樹脂層23同様に、ポリウレタン、ポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステルからなる熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから形成される。また、第2樹脂層25の厚みは、第1樹脂層23同様に、0.3〜0.5mmの範囲が好ましい。
【0064】
芯体帆布24は、芯体帆布22同様に、経糸と緯糸を交差させて織られた織布(平織り、綾織り、朱子織等)である。
【0065】
上記のように、ベルト本体2が、第1樹脂層23及び芯体帆布22に加えて、第2樹脂層25と芯体帆布24とを備えることにより、搬送ベルト1のベルト強力を高めることができる。
【0066】
(実施形態4)
実施形態4の搬送ベルト1は、
図4に示すように、ベルト本体2が、搬送ベルト1の外周側(搬送面側)から内周側へ順に、非粘着層21と、芯体帆布22(第1芯体帆布層)とが積層されて構成されている(実施形態1と同様の構成)。そして、
図3及び
図4に示すように、ベルト本体2の一端31の凸部31aの非粘着層21における先端部31cと凸部31aに嵌合する凹部32bとの間、及び、ベルト本体2の他端32の凸部32aの非粘着層21における先端部32cと凸部32aに嵌合する凹部31bとの間には、それぞれ隙間35が形成されている。この隙間35に、非粘着層21の下層に積層された芯体帆布22に含まれている接着剤を滲出させて、隙間35を埋めている。
【0067】
このように隙間35を設け、この隙間35に、芯体帆布22に含まれている接着剤を滲み出させ、接着剤が非粘着層21の側面を覆うことで、この接着剤が非粘着層21に対するクッションの役割を担い、非粘着層21における凸部31a・32aの先端部31c・32cへの応力を緩和し、非粘着層21の下からの浮き上がりを抑制し、凸部31a・32aの先端部31c・32cを起点とした、非粘着層21のベルト本体2からの剥がれをより防止することが可能となる。
【0068】
隙間35の大きさとしては、
図3に示すように、凸部31aの先端部31cと凹部32bと間の幅A(長手方向の幅)は、0.1〜1.0mmの範囲内であることが好ましい。幅Aを0.1〜1.0mmの範囲にすることにより、隙間35から滲出する接着剤の滲み量を、非粘着層に対するクッション性を担うのに適切な量にすることができる。
【0069】
非粘着層21に隙間35を設ける方法としては、ベルト本体2の両端(一端31と他端32)をわずかに離して突き合せ、隙間35を設ける方法がある。その他に、非粘着層21に隙間35を設ける方法としては、ベルト本体2の両端における凸部31a・32aの非粘着層21における先端部31cをわずかに切断して(隙間35の大きさ分を切断)、一端31と他端32を突き合せたときに隙間35ができるようにする方法がある。
【0070】
(実施形態5)
実施形態5の搬送ベルト1は、
図4に示すように、ベルト本体2が、搬送ベルト1の外周側(搬送面側)から内周側へ順に、非粘着層21と、第1樹脂層23と、芯体帆布22(第1芯体帆布層)とが積層されて構成されている。なお、その他の構成は実施形態4と同様である。
【0071】
第1樹脂層23は、実施形態2同様に、ポリウレタン、ポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステルからなる熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから形成される。特に、加工性や強度に優れた熱可塑性ポリウレタン樹脂/エラストマーであって、耐加水分解性に優れたポリエーテル系ポリウレタンや、耐熱性、耐薬品性に優れたポリカーボネート系ポリウレタンが好ましい。非粘着層21の下層に積層される第1樹脂層23は、非粘着層21の搬送面を柔らかくし、搬送物の傷付きを防止するために設けられる。また、第1樹脂層23の厚みは、0.3〜0.5mmの範囲が好ましい。第1樹脂層23の厚みが、0.3mmよりも薄いと、搬送面のクッション性が十分に確保できず、0.5mmよりも厚いと、屈曲性が低下してしまうためである。
【0072】
そして、
図3及び
図4に示すように、ベルト本体2の一端31の凸部31aの非粘着層21における先端部31cと凸部31aに嵌合する凹部32bとの間、及び、ベルト本体2の他端32の凸部32aの非粘着層21における先端部32cと凸部32aに嵌合する凹部31bとの間には、それぞれ隙間35が形成されている。この隙間35に、非粘着層21の下層に積層された第1樹脂層23の樹脂成分を滲出させて、隙間35を埋めている。
【0073】
なお、隙間35から滲出する第1樹脂層23の樹脂成分は、非粘着層21の搬送面に広がって滲み出していてもよい。また、隙間35から滲出する樹脂成分の滲み出しやすさは、樹脂成分の流動性を調整することにより変えることが可能である。
【0074】
このように隙間35を設け、この隙間35に、第1樹脂層23の樹脂成分を滲み出させ、樹脂成分が非粘着層21の側面を覆うことで、この樹脂成分が非粘着層21に対するクッションの役割を担い、非粘着層21における凸部31a・32aの先端部31c・32cへの応力を緩和し、非粘着層21の下からの浮き上がりを抑制し、凸部31a・32aの先端部31c・32cを起点とした、非粘着層21のベルト本体2からの剥がれをより防止することが可能となる。
【0075】
(実施形態6)
実施形態6の搬送ベルト1は、
図4に示すように、ベルト本体2が、搬送ベルト1の外周側(搬送面側)から内周側へ順に、非粘着層21と、第1樹脂層23と、芯体帆布22(第1芯体帆布層)と、第2樹脂層25と、芯体帆布24(第2芯体帆布層)とが積層されて構成されている。なお、その他の構成は実施形態5と同様である。
【0076】
第2樹脂層25は、第1樹脂層23同様に、ポリウレタン、ポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステルからなる熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから形成される。また、第2樹脂層25の厚みは、第1樹脂層23同様に、0.3〜0.5mmの範囲が好ましい。
【0077】
芯体帆布24は、芯体帆布22同様に、経糸と緯糸を交差させて織られた織布(平織り、綾織り、朱子織等)である。
【0078】
上記のように、ベルト本体2が、第1樹脂層23及び芯体帆布22に加えて、第2樹脂層25と芯体帆布24とを備えることにより、搬送ベルト1のベルト強力を高めることができる。
【0079】
(実施形態7)
実施形態7の搬送ベルト1は、
図13に示すように、実施形態3同様に、ベルト本体2が、搬送ベルト1の外周側(搬送面側)から内周側へ順に、非粘着層21と、第1樹脂層23と、芯体帆布22(第1芯体帆布層)と、第2樹脂層25と、芯体帆布24(第2芯体帆布層)とが積層されて構成されている。
【0080】
そして、実施形態7の搬送ベルト1は、
図13及び
図14に示すように、ベルト本体2の一端31には下層が突き出た2段の段差が形成され、更に、形成された2段の段差それぞれにジグザグ形状(電光形状、フィンガー形状)をした複数の凸部31a・31c及び複数の凹部31b・31dが形成されており、また、ベルト本体2の他端32には上層が突き出た2段の段差が形成され、更に、形成された2段の段差それぞれにジグザグ形状(電光形状、フィンガー形状)をした複数の凸部32a・32c及び複数の凹部32b・32dが形成されている。そして、ベルト本体2の一端31の上層の複数の凸部31aと他端32の上層の複数の凹部32b、及び、一端31の上層の複数の凹部31bと他端32の上層の複数の凸部32aをそれぞれ互いに突き合わせて嵌合し、同様に、ベルト本体2の一端31の下層の複数の凸部31cと他端32の下層の複数の凹部32d、及び、一端31の下層の複数の凹部31dと他端32の下層の複数の凸部32cをそれぞれ互いに突き合わせて嵌合し、ベルト本体2の厚み方向に熱プレスで加熱圧着して、ベルト本体2の一端31と他端32とを融着することにより接合している(段差接合方式)。
【0081】
ベルト本体2の一端31の上層及び下層は、第2樹脂層25の中央部分で2段に分けられている。同様に、ベルト本体2の他端32の上層及び下層も、第2樹脂層25の中央部分で2段に分けられている。
【0082】
また、ベルト本体2の一端31の上層の凸部31a及び他端32の上層の凸部32aの先端部は、搬送面を直交する方向から見たときの形状が円弧形状をしている。そして、この円弧形状をした凸部31a及び凸部32aに対応して、他端32の凹部32b及び一端31の凹部31bも円弧形状をしている。一方、ベルト本体2の一端31の下層の凸部31c及び他端32の下層の凸部32cの先端部は、三角形状をしている。そして、この三角形状をした凸部31c及び凸部32cに対応して、他端32の凹部32d及び一端31の凹部31dも三角形状をしている。
【0083】
なお、実施形態7では、ベルト本体2の一端31の下層の凸部31c及び他端32の下層の凸部32cの先端部を、円弧形状にしても良い。この場合、この円弧形状をした凸部31c及び凸部32cに対応して、他端32の凹部32d及び一端31の凹部31dも円弧形状にする。
【0084】
ベルト長手方向に上記のような段差を設けない接合方式の搬送ベルトでは、搬送ベルトの内周面に異物が付着した場合にそのまま走行させると、異物が搬送ベルトとプーリとの間に挟まれ、搬送ベルトの一端と他端との接合部に局所的な応力が加わって、接続部が割れてしまう場合がある。そこで、搬送ベルトの一端と他端との接合部に段差を設けることにより(段差接合方式)、段差が無い場合に比べ、接合部への局所的な応力集中が緩和され、接合部を割れにくくすることができる。
【0085】
(実施形態1の搬送ベルトの製造方法)
図5を参照して、実施形態1に係る搬送ベルト1の製造方法を説明する。
【0086】
まず、熱可塑性エラストマーを有機溶媒に溶かした接着剤を作製し、この接着剤を帆布素材(平織り布)に塗布、又は、帆布素材を接着剤に浸漬することにより接着処理を施し、所定の寸法に切断して芯体帆布22を作製する。
【0087】
そして、フッ素樹脂(PTFE)フィルム(非粘着層21)を、芯体帆布22の搬送面側に積層し、有端の長尺状のベルト本体2を作製する(有端長尺ベルト作製工程)。
【0088】
次に、非粘着層21と芯体帆布22とを積層したベルト本体2の長手方向の一端31と他端32を、X、Y軸カッティングプロッタや、打ち抜き機等で裁断することにより、ジグザグ形状(電光形状)になるように加工する(凹凸部加工工程)。これにより、ベルト本体2の一端31は、ジグザグ形状をした凸部31a及び凹部31bが、幅方向に沿って交互に配置された形状に加工される。また、ベルト本体2の他端32も、ジグザグ形状をした凸部32a及び凹部32bが、幅方向に沿って交互に配置された形状に加工される。
【0089】
また、凹凸部加工工程では、ベルト本体2の一端31と他端32を、X、Y軸カッティングプロッタや、打ち抜き機等で裁断する際に、凸部31a・32aの先端部31cが、搬送面を直交する方向から見たときの形状が円弧形状になるように加工される。また、凹部31b・32bも、円弧状の先端部31cに対応した円弧形状に加工される。
【0090】
次に、ベルト本体2の一端31の凸部31aと他端32の凹部32b、及び、一端31の凹部31bと他端32の凸部32aをそれぞれ互いに突き合わせて嵌合させる(嵌合工程)。
【0091】
嵌合工程において嵌合した凸部31a・32aと凹部31b・32bを、ベルト本体2の厚み方向に熱プレス機により加熱圧着して、ベルト本体2の一端31と他端32とを熱融着させて接続する(熱融着工程)。このような工程を経て搬送ベルト1を得る。
【0092】
上記製造方法によれば、非粘着層21が積層されたベルト本体2の一端31と他端32とを接続する際に嵌合させる凸部31a・32aの先端部31c・32cが円弧形状をしていることにより、凸部31a・32aの先端部31c・32cが尖った形状(例えば、三角形状等)をしたものに比べて、先端部31c・32cにおける非粘着層21のベルト本体2に対する接触面積が増える。これにより搬送ベルト1の使用時に凸部31a・32aの先端部31c・32cが屈曲しても、凸部31a・32aの先端部31c・32cへの応力集中が抑制でき、凸部31a・32aの先端部31c・32cを起点とした、非粘着層21のベルト本体2からの剥がれを防止することができる搬送ベルト1を製造することができる。
【0093】
(実施形態2の搬送ベルトの製造方法)
実施形態2の搬送ベルト1の製造方法では、上記有端長尺ベルト作製工程において、更に、熱可塑性エラストマーを押出し機によって所定の寸法のシート状に押出し成形して、第1樹脂層23を形成する。
【0094】
次に、芯体帆布22の搬送面側に第1樹脂層23を積層し、さらに、フッ素樹脂(PTFE)フィルム(非粘着層21)を、第1樹脂層23の搬送面側に積層し、有端の長尺状のベルト本体2を作製する(有端長尺ベルト作製工程)。他の工程は実施形態1の搬送ベルトの製造方法と同様である。
【0095】
(実施形態3の搬送ベルトの製造方法)
実施形態3の搬送ベルト1の製造方法では、実施形態1の有端長尺ベルト作製工程において、熱可塑性エラストマーを有機溶媒に溶かした接着剤を作製し、この接着剤を帆布素材(平織り布)に塗布、又は、帆布素材を接着剤に浸漬することにより接着処理を施し、所定の寸法に切断して芯体帆布22及び芯体帆布24を作製する。
【0096】
また、熱可塑性エラストマーを押出し機によって所定の寸法のシート状に押出し成形して、第1樹脂層23及び第2樹脂層25を形成する。
【0097】
次に、芯体帆布24の搬送面側に第2樹脂層25を積層し、第2樹脂層25の搬送面側に芯体帆布22を積層し、芯体帆布22の搬送面側に第1樹脂層23を積層し、さらに、フッ素樹脂(PTFE)フィルム(非粘着層21)を、第1樹脂層23の搬送面側に積層し、有端の長尺状のベルト本体2を作製する(有端長尺ベルト作製工程)。他の工程は実施形態1の搬送ベルトの製造方法と同様である。
【0098】
(実施形態4の搬送ベルトの製造方法)
実施形態4の搬送ベルト1の製造方法では、上記嵌合工程において、ベルト本体2の両端(一端31と他端32)をわずかに離して突き合せ(隙間35の大きさ分)、隙間35を設ける。
【0099】
具体的には、ベルト本体2の一端31の凸部31aと他端32の凹部32b、及び、一端31の凹部31bと他端32の凸部32aをそれぞれ互いにわずかに離して突き合わせ(隙間35の大きさ分)、ベルト本体2の一端31の凸部31aの非粘着層21における先端部31cと凸部31aに嵌合する凹部32bとの間、及び、ベルト本体2の他端32の凸部32aの非粘着層21における先端部32cと凸部32aに嵌合する凹部31bとの間に、それぞれ隙間35ができるように嵌合させる(嵌合工程)。
【0100】
嵌合工程において嵌合した凸部31a・32aと凹部31b・32bを、ベルト本体2の厚み方向に熱プレス機により加熱圧着して、隙間35に芯体帆布22の接着成分を滲出させ、隙間35を埋めた状態で、ベルト本体2の一端31と他端32とを熱融着させて接続する(熱融着工程)。このような工程を経て搬送ベルト1を得る。
【0101】
なお、その他に非粘着層21に隙間35を設ける方法としては、凹凸部加工工程において、ベルト本体2の両端における凸部31a・32aの非粘着層21における先端部31cをわずかに切断して(隙間35の大きさ分を切断)、一端31と他端32とを突き合せたときに隙間35ができるように加工する方法がある。
【0102】
上記製造方法によれば、凸部31a・32aの非粘着層21における先端部31c・32cとこの凸部31a・32aに嵌合する凹部31b・32bとの間に隙間35を設け、この隙間35に、芯体帆布22の接着成分を滲み出させる。これにより、隙間35に滲出した芯体帆布22の接着成分が非粘着層21の側面を覆うことで、非粘着層21に対するクッションの役割を担い、非粘着層21における凸部31a・32aの先端部31c・32cへの応力を緩和し、非粘着層21の下からの浮き上がりを抑制し、凸部31a・32aの先端部31c・32cを起点とした、非粘着層21のベルト本体2からの剥がれをより防止することができる搬送ベルト1を製造することができる。
【0103】
(実施形態5の搬送ベルトの製造方法)
実施形態5の搬送ベルト1の製造方法では、上記有端長尺ベルト作製工程において、更に、熱可塑性エラストマーを押出し機によって所定の寸法のシート状に押出し成形して、第1樹脂層23を形成する。
【0104】
次に、芯体帆布22の搬送面側に第1樹脂層23を積層し、さらに、フッ素樹脂(PTFE)フィルム(非粘着層21)を、第1樹脂層23の搬送面側に積層し、有端の長尺状のベルト本体2を作製する(有端長尺ベルト作製工程)。他の工程は実施形態4の搬送ベルトの製造方法と同様である。ただし、非粘着層21の下層が第1樹脂層23であるため、熱融着工程において、嵌合した凸部31a・32aと凹部31b・32bを、ベルト本体2の厚み方向に熱プレス機により加熱圧着させる際に、隙間35に第1樹脂層23の樹脂成分を滲出させ、隙間35を埋めた状態で、ベルト本体2の一端31と他端32とを熱融着させて接続する(熱融着工程)。
【0105】
(実施形態6の搬送ベルトの製造方法)
実施形態6の搬送ベルト1の製造方法では、有端長尺ベルト作製工程において、熱可塑性エラストマーを有機溶媒に溶かした接着剤を作製し、この接着剤を帆布素材(平織り布)に塗布、又は、帆布素材を接着剤に浸漬することにより接着処理を施し、所定の寸法に切断して芯体帆布22及び芯体帆布24を作製する。
【0106】
また、熱可塑性エラストマーを押出し機によって所定の寸法のシート状に押出し成形して、第1樹脂層23及び第2樹脂層25を形成する。
【0107】
次に、芯体帆布24の搬送面側に第2樹脂層25を積層し、第2樹脂層25の搬送面側に芯体帆布22を積層し、芯体帆布22の搬送面側に第1樹脂層23を積層し、さらに、フッ素樹脂(PTFE)フィルム(非粘着層21)を、第1樹脂層23の搬送面側に積層し、有端の長尺状のベルト本体2を作製する(有端長尺ベルト作製工程)。他の工程は実施形態5の搬送ベルトの製造方法と同様である。
【0108】
(実施形態7の搬送ベルトの製造方法)
実施形態7の搬送ベルト1の製造方法では、実施形態3の搬送ベルト1同様の構成で、有端の長尺状のベルト本体2を作製する。
【0109】
そして、
図14に示すように、ベルト本体2の両端(一端31と他端32)で、第2樹脂層25のベルト厚み方向の中央部分にベルト長手方向に切込みを入れる。これにより、ベルト本体2の外周側、及び、内周側にベルト厚み方向の切込みを入れたときに、上層及び下層により形成される2段の段差を形成することができる。なお、ベルト本体2において、この切込みより上側を上層、切込みより下側を下層とする。
【0110】
そして、X軸、Y軸カッティングプロッタや、打ち抜き機等で、ベルト本体2の一端31と他端32の上層のみをジグザグ形状に裁断した後、ベルト本体2の一端31と他端32の下層のみを、ベルト本体2の一端31と他端32の上層のジグザグ形状の位置からずらすようにジグザグ形状に裁断する。
【0111】
なお、ベルト本体2の一端31の上層の凸部31a及び他端32の上層の凸部32aの先端部は(非粘着層21を含むベルト本体2の外周側)、丸み(円弧形状)を有するように裁断し、ベルト本体2の一端31の下層の凸部31c及び他端32の下層の凸部32cの先端部は(非粘着層21を含まないベルト本体2の内周側)、尖った形状(三角形状)に裁断する。
【0112】
その後、ベルト本体2の一端31の上層の複数の凸部31aと他端32の上層の複数の凹部32b、及び、一端31の上層の複数の凹部31bと他端32の上層の複数の凸部32aをそれぞれ互いに突き合わせて嵌合し、同様に、ベルト本体2の一端31の下層の複数の凸部31cと他端32の下層の複数の凹部32d、及び、一端31の下層の複数の凹部31dと他端32の下層の複数の凸部32cをそれぞれ互いに突き合わせて嵌合し、ベルト本体2の厚み方向に熱プレスで加熱圧着して、ベルト本体2の一端31と他端32とを融着することにより接合する(段差接合方式)。
【実施例】
【0113】
次に、表1に示す、実施例1〜11に係る搬送ベルト、及び、比較例1に係る従来の搬送ベルト(凸部が三角形状)を作製し、各搬送ベルトに対して走行試験を行い、非粘着層21の剥がれ易さを観察した。また、各搬送ベルトに対して有限要素法解析(FEM)による解析を行った。
【0114】
(実施例1〜11の搬送ベルト)
実施例1に使用する搬送ベルト1は、上記実施形態3の搬送ベルトである(
図2参照)。実施例1に係る搬送ベルト1は、厚さ5mil(約127μm)のPTFEフィルムを使用した非粘着層21と、厚さ0.3mmのポリエーテル系ポリウレタンエラストマー製の第1樹脂層23と、経糸・緯糸にポリエステル繊維を用いた平織布(接着処理有り)(経糸(スパン糸)の繊度:20番手、緯糸の繊度:1100dtex、経糸密度:140本/5cm、緯糸密度:56本/5cm)の芯体帆布22と、第2樹脂層25(第1樹脂層23と同じ)と、芯体帆布24(芯体帆布22と同じ)とが積層されて構成されている。
【0115】
また、実施例1に使用する搬送ベルト1は、
図7に示すように、凸部31a(凸部32a)と凸部31a(凸部32a)との間の幅方向の距離が15mm、凹部31bと凹部32bとの間の長手方向の距離が40mm、凸部31a・32aの先端部31cの半径Rが1.5mmの円弧形状になるように形成している。
【0116】
実施例2〜4に使用する搬送ベルト1は、上記実施例1の搬送ベルト1において、凸部31a・32aの先端部31cの半径Rが、0.5mm(実施例2)の円弧形状、1.0mm(実施例3)の円弧形状、2.0mm(実施例4)の円弧形状になるように形成している。
【0117】
実施例5〜6に使用する搬送ベルト1は、上記実施例1の搬送ベルト1の非粘着層21に、厚さ1.0mil(約25μm)のPTFEフィルム(実施例5)、厚さ20mil(約508μm)のPTFEフィルム(実施例6)を使用している。
【0118】
実施例7〜8に使用する搬送ベルト1は、上記実施例1の搬送ベルト1において、凸部31aの先端部31cと凹部32bと間に、0.5mm(実施例7)の隙間35、1.0mm(実施例8)の隙間35を形成している。
【0119】
実施例9に使用する搬送ベルト1は、上記実施形態1の搬送ベルトである(
図2参照)。実施例9に係る搬送ベルト1は、厚さ5mil(約127μm)のPTFEフィルムを使用した非粘着層21と、経糸・緯糸にポリエステル繊維を用いた平織布(接着処理有り)(経糸(スパン糸)の繊度:20番手、緯糸の繊度:1100dtex、経糸密度:140本/5cm、緯糸密度:56本/5cm)の芯体帆布22とが積層されて構成されている。
【0120】
実施例10に使用する搬送ベルト1は、上記実施形態2の搬送ベルトである(
図2参照)。実施例10に係る搬送ベルト1は、厚さ5mil(約127μm)のPTFEフィルムを使用した非粘着層21と、厚さ0.3mmのポリエーテル系ポリウレタンエラストマー製の第1樹脂層23と、経糸・緯糸にポリエステル繊維を用いた平織布(接着処理有り)(経糸(スパン糸)の繊度:20番手、緯糸の繊度:1100dtex、経糸密度:140本/5cm、緯糸密度:56本/5cm)の芯体帆布22とが積層されて構成されている。
【0121】
実施例11に使用する搬送ベルト1は、上記実施形態7の搬送ベルトである(
図13、
図14参照)。実施例11に使用する搬送ベルト1は、上述した段差接合方式によりベルト本体2の一端31と他端32とを融着している(融着箇所を接合部とする)。また、実施例11に使用する搬送ベルト1は、
図15に示すように、凸部と凸部との間の幅方向の距離が15mm、凸部と凹部との間の長手方向の距離が35mmである。搬送ベルト1の上層の凸部の先端部の半径Rは1.5mmの円弧形状になるように形成され、下層の凸部の先端部は三角形状になるように形成されている。また、上層の凸部と下層の凸部との間の長手方向の距離(ズレ)は20mmである。また、実施例11は、段差接合方式以外の構成は、実施例1と同様である。
【0122】
(比較例1の搬送ベルト)
一方、比較例1に使用する搬送ベルトは、実施例1同様に、非粘着層21と、第1樹脂層23と、芯体帆布22と、第2樹脂層25と、芯体帆布24とが積層されて構成されている。
【0123】
また、比較例1に使用する搬送ベルトは、
図7に示すように、凸部31a・32aの先端が尖った三角形状をしており、凸部31a(凸部32a)と凸部31a(凸部32a)との間の幅方向の距離が15mm、凹部31bと凹部32bとの間の長手方向の距離が60mmになるように形成されている。
【0124】
(走行試験方法)
各搬送ベルトについて、
図8に示す走行試験機を用いて走行させ、走行後の各搬送ベルトの凸部31a・32aの状態を目視で観察した。具体的には、
図8に示すように、実施例1〜11、及び、比較例1に係る、幅100mm、長さ1500mmの搬送ベルトを、プーリ径φ75mmの5つのプーリに巻き掛けて(ベルト張力8kgf/cm)、走行させた。この走行試験では、5つのプーリにより搬送ベルトが1000万回屈曲されるまで行った(走行試験の打ち切り回数)。そして、判定基準(合格基準)としては、搬送ベルトを200万回屈曲させた段階で非粘着層の先端部の剥離が無ければ、搬送ベルトとして実用可能と判断した。
【0125】
(走行試験結果)
【表1】
【0126】
走行試験の結果、比較例1の搬送ベルトでは、170万屈曲で凸部の非粘着層21の先端が剥離した。一方、実施例1の搬送ベルト1では、1000万屈曲でも異常は見られなかった(剥離なし)。このように、ジグザグ形状をした凸部31a・32aの先端部31c・32cを円弧形状にすることにより、凸部の先端部が尖った形状(三角形状等)をしている場合に比べて、非粘着層21が、凸部31a・32aの先端部31c・32cから剥がれにくくなった。
【0127】
また、実施例1(半径R=1.5mm)に対して、半径Rが異なる3種類(実施例2:半径R=0.5mm、実施例3:半径R=1.0mm、実施例4:半径R=2.0mm)の搬送ベルトについても、走行試験の結果、搬送ベルトを200万回屈曲させても非粘着層の先端部の剥離が無く、搬送ベルトとして実用可能な耐久性能が得られた。また、非粘着層の先端部が剥離するまでの屈曲回数は、実施例2(半径R=0.5mm、250万回) < 実施例3(半径R=1.0mm、700万回) < 実施例1(半径R=1.5mm、1000万回まで異常なし) = 実施例4(半径R=2.0mm、1000万回まで異常なし)の順で大きくなり、半径Rが大きいほど非粘着層の先端部の剥離が生じにくくなることがわかった。
【0128】
また、実施例1(PTFEの厚み5mil)に対して、非粘着層の厚みが異なる2種類(実施例5:PTFEの厚み1.0mil、実施例6:PTFEの厚み20mil)の搬送ベルトについても、走行試験の結果、合格基準である200万回を大きく上回る耐久性能が得られた。ただし、実施例5(1.0mil)は900万回屈曲で非粘着層が摩擦により一部消滅(摩滅)し、実施例6(20mil)では750万回屈曲で表面にクラック(亀裂)が発生した。これにより、実施例1(5mil)に対して、非粘着層の厚みが薄いと非粘着層の耐久性が劣り、厚いと耐屈曲性が劣ることがわかった。
【0129】
また、実施例1に対して、隙間35が異なる2種類(実施例7:幅0.5mm、実施例8:幅1.0mm)の搬送ベルトについても、走行試験の結果、どちらも1000万回屈曲まで異常なく完走し、合格基準である200万回を大きく上回る耐久性能が得られた。
【0130】
また、実施例9、及び、実施例10の搬送ベルト1でも、実施例1と同様に、合格基準である「200万回屈曲」を大きく上回り、「1000万回屈曲」まで異常なく完走するほど充分な耐久性能を確認できた。
【0131】
また、実施例11の搬送ベルト1についても、走行試験の結果、実施例1と同等の耐久性能を確認できた。
【0132】
(異物を挟み込んだ場合の走行試験)
次に、搬送ベルトとプーリとの間に異物が挟み込まれた状態での搬送ベルトの走行を想定した下記の走行条件で、実施例11(接合部に段差あり)と実施例1(接合部に段差なし)とを比較検証した。
【0133】
異物を挟み込んだ場合の走行試験では、
図16に示す走行試験機(5軸走行試験機)を用いて、搬送ベルトを走行させ、接合部が割れるまでのベルト走行時間を測定した。具体的には、走行試験機の直径75mmの二つのプーリに、搬送ベルトの内周側とプーリとの間に異物が挟まった状態を再現するため、プーリの軸方向中央部分に、幅10mmの粘着テープを厚さ1.5mmになるように巻き付けて凸部(異物)を設けた。また、ベルト張力を1N/mm、ベルト速度を100m/minとする条件で24時間の走行試験を行った。そして、評価方法としては、接合部が割れるまでのベルト走行時間を測定した。その走行試験結果を表2に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
上記異物を挟み込んだ場合の走行試験の結果、搬送ベルト1の接合部の外周側と内周側で接合部に段差をつけた実施例11は、段差を設けていない実施例1に比べると、搬送ベルトの内周側とプーリとの間に異物が挟みこまれた場合でも、接合部の割れが生じにくい(段差により応力集中が緩和される)ことが確認できた。
【0136】
(有限要素法解析(FEM))
実施例1、及び、比較例1に係る搬送ベルトに関して、凸部の先端部での応力集中を、有限要素法解析(FEM)により解析し、本発明の効果を検証した。
【0137】
具体的には、実施例1、及び、比較例1に係る搬送ベルトに対して、
図9に示すように、搬送ベルトにかかる張力が8N/mmとなるように、直線的な引張り力、及び、順曲げの力を付与したときの凸部の先端部での応力集中を解析した。なお、順曲げで使用するプーリ径は75mmのものを使用している。
【0138】
解析結果を
図10に示す。この解析結果では、非粘着層21の凸部の先端部の裏側(第1樹脂層23との界面)の応力分布を示し、図左のバーの上になる程、応力が高いことを示す。また、図中の応力の数値は、搬送ベルトにかかる最大の応力値である(Mises応力)。
【0139】
比較例1の非粘着層21の凸部の先端部には応力が集中しているが、実施例1の非粘着層21の凸部の先端部は、比較例1より応力が集中していない。これにより、搬送ベルトに対して引張り、順曲げがかかった時、凸部の先端部が円弧形状の方が、先端にかかる応力が抑えられることがわかる。これは、比較例1の凸部の先端部は、非粘着層21の面積が周辺よりも極端に小さくなる為、先端部に応力が集中しやすいと考えられる。一方、実施例1のように凸部の先端部を円弧形状にすることにより、先端部の非粘着層21の面積が増え、先端部への応力集中を抑えられると考えられる。
【0140】
次に、実施例1に使用した搬送ベルト1に隙間35を形成した場合における、隙間35から滲み込む樹脂成分の影響について、有限要素法解析(FEM)により解析し、本発明の効果を検証した。下層(第1樹脂層23)から隙間35に滲み出した樹脂成分(滲み量)を、
図3に示す凸部31aの先端部31cと凹部32bと間の幅Aを変えて(幅A:0mm(隙間無し)、0.5mm、1.0mm)、解析を行った。
【0141】
解析結果を
図11に示す。この解析結果によると、隙間35に滲み出した樹脂成分の滲み量が多いほど(隙間35が大きいほど)、凸部の先端部への応力集中が抑えられ、滲み出した樹脂成分のクッション性が高まり、非粘着層21凸部の先端部が、下層(第1樹脂層23)から浮き上がろうとするのを抑えていることがわかる。
【0142】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及び実施例に限定されるものでないと考えられるべきである。また、本発明の範囲は、上記した実施形態及び実施例の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。