(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.アンモニア分解方法およびアンモニア分解装置
本発明のアンモニア分解方法では、アンモニアを含有する溶液中で、プラズマを発生させることによって、アンモニア(NH
3、NH
4+)を、窒素(N
2)および水素(H
2)に分解する。
【0019】
アンモニアを含有する溶液としては、特に制限されず、種々の溶液を用いることができる。例えば、アンモニアを含有する溶液において、溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、水、ヒドラジン、無水ヒドラジン、ヒドラジン1水和物などのプロトン性極性溶媒、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性極性溶媒、例えば、トルエン、キシレン、イソホロン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、フタル酸ジメチルなどの低極性溶媒などが挙げられる。
【0020】
また、アンモニアを含有する溶液において、アンモニア濃度は、例えば、0.001モル%以上、好ましくは、0.01モル%以上であり、例えば、1モル%以下、好ましくは、0.59モル%以下である。
【0021】
以下において、本発明のアンモニア分解方法の一実施形態を実施するために用いられるアンモニア分解装置について、
図1を参照して説明する。
【0022】
図1において、アンモニア分解装置1は、プラズマ反応容器2と、プラズマ発生装置3とを備えている。
【0023】
プラズマ反応容器2は、密閉可能な耐熱耐圧容器であって、アンモニアを含有する溶液に対して安定な材料から形成されている。なお、容器2の形状およびサイズは、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0024】
プラズマ発生装置3は、電源4と、1対の電極5とを備えている。
【0025】
電源4は、アンモニアを含有する溶液中にプラズマを発生させることができれば、特に制限されないが、例えば、公知のパルス電源などが挙げられる。パルス電源は、通常、パルス電圧、パルス幅およびパルス繰返し周波数を任意の値に調節可能であり、1対の電極5に、配線を介して電気的に接続されている。
【0026】
1対の電極5は、例えば、板状、棒状などに形成されている。
図1では、電極5は、棒状に形成されている。電極5を形成する電極材料としては、例えば、ニッケル、銅、ステンレス鋼、タングステンなどが挙げられ、好ましくは、タングステンが挙げられる。また、1対の電極5は、プラズマ反応容器2の周側面を貫通するように、プラズマ反応容器2に固定されており、プラズマ反応容器2内において、端面が向かい合うように、互いに所定間隔を隔てて対向配置されている。
【0027】
1対の電極5の端面間の距離は、例えば、0.5mm以上、好ましくは、0.8mm以上であり、例えば、1.5mm以下、好ましくは、1.2mm以下である。
【0028】
また、電極5の断面形状(すなわち、1対の電極5の対向面の形状)は、特に制限されないが、例えば、断面視略円形状、断面視略四角形状など、種々の形状が採用される。電極5の断面形状として、好ましくは、断面視略円形状が挙げられる。
【0029】
電極5のサイズは、例えば、電極5が断面視略円形状である場合、その直径(すなわち、1対の電極5の対向面の直径)が、0.1mm以上、好ましくは、0.2mm以上であり、1.0mmである。また、例えば、電極5が断面視略四角形状である場合、その一辺の長さ(すなわち、1対の電極5の対向面の一辺の長さ)が、0.1mm以上、好ましくは、0.2mm以上であり、1.0mmである。
【0030】
また、電極5の断面積(すなわち、1対の電極5の対向面の面積)が、0.007mm
2以上、好ましくは、0.03mm
2以上であり、例えば、1mm
2以下、好ましくは、0.8mm
2以下である。
【0031】
電極5のサイズが上記範囲であれば、アンモニアを含む溶液内に良好に気相(気泡)を生じさせ、また、その気相(気泡)による絶縁破壊を、溶液に生じさせることができる。
【0032】
以下において、アンモニア分解装置1を用いたプラズマ分解方法について、詳述する。
【0033】
この方法では、まず、アンモニアを含有する溶液中において1対の電極5を対向配置する(準備工程)。
【0034】
すなわち、
図1が参照されるように、プラズマ反応容器2内に、アンモニアを含有する溶液を、注入する。または、アンモニアを含有する容器が貯留されているプラズマ反応容器2に、電極5を挿入し、固定する。
【0035】
これにより、アンモニアを含有する溶液中において、1対の電極5が対向配置される。
【0036】
次いで、この方法では、電極5に通電し、電極5付近において溶液を沸騰させることによって電極5間に気相(気泡)を発生させるとともに、その気相(気泡)による絶縁破壊が溶液に生じる条件で、気相(気泡)中にプラズマを発生させ、溶液中に含有されるアンモニアを分解する(分解工程)。
【0037】
分解工程において、アンモニアを含有する溶液中に沸騰による気相(気泡)を発生させ、かつ、その気相(気泡)による絶縁破壊を溶液に生じさせる条件として、具体的には、以下に示す条件(a)〜(c)の内、少なくとも1つ以上の条件を満足することが挙げられる。
【0038】
(a)電極サイズ
1対の電極5のサイズを、上記した範囲とする。具体的には、電極5が断面視略円形状である場合、その直径(すなわち、1対の電極5の対向面の直径)を、例えば、0.1mm以上、好ましくは、0.2mm以上とし、また、例えば、1.0mm以下とする。
【0039】
電極5のサイズが上記範囲であれば、より確実に、アンモニアを含有する溶液に気相(気泡)を発生させ、その気相(気泡)による絶縁破壊を溶液に生じさせることができる。そのため、溶液中のアンモニアを確実に分解することができる。
【0040】
(b)周波数
電極5(パルス電源)による通電条件のうち、パルスの繰返し周波数を、適切な範囲に調整する。
【0041】
具体的には、パルスの繰返し周波数は、例えば、20kHz以上であり、例えば、100kHz以下、好ましくは、50kHz以下である。
【0042】
パルスの繰返し周波数が上記範囲であれば、より確実に、アンモニアを含有する溶液に気相(気泡)を発生させ、その気相(気泡)による絶縁破壊を溶液に生じさせることができる。そのため、溶液中のアンモニアを確実に分解することができる。
【0043】
(c)溶液のコンダクタンス
アンモニアを含有する溶液のコンダクタンス(電流の流れやすさ)を、適切な範囲に調整する。
【0044】
具体的には、アンモニアを含有する溶液のコンダクタンスは、例えば、0.01S/m以上、好ましくは、0.05S/m以上であり、例えば、10S/m以下、好ましくは、5S/m以下である。
【0045】
アンモニアを含有する溶液のコンダクタンスが上記範囲であれば、より確実に、アンモニアを含有する溶液に気相(気泡)を発生させ、その気相(気泡)による絶縁破壊を溶液に生じさせることができる。そのため、溶液中のアンモニアを確実に分解することができる。
【0046】
なお、コンダクタンスを調整する方法は、特に制限されず、公知の方法を採用することができ、具体的には、例えば、酸、アルカリなどの公知の添加剤を添加し、溶液の導電性を向上させる方法や、例えば、イオン吸着樹脂などにより溶液中のイオンを除去し、導電性を低下させる方法などが挙げられる。
【0047】
また、このアンモニア分解方法では、上記(a)〜(c)の条件のうち、少なくとも1つ以上の条件を満たしていればよいが、好ましくは、上記(a)〜(c)の条件を全て満たすことが挙げられる。上記(a)〜(c)の条件を全て満たしていれば、とりわけ確実に、アンモニアを含有する溶液に気相(気泡)を発生させ、その気相(気泡)による絶縁破壊を溶液に生じさせることができる。そのため、溶液中のアンモニアを確実に分解することができる。
【0048】
なお、上記(a)〜(c)を除く条件は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0049】
具体的には、アンモニアを含有する溶液の量は、例えば、10mL以上、好ましくは、20mL以上であり、例えば、100L以下、好ましくは、50L以下である。
【0050】
また、電極5(パルス電源)による通電条件のうち、パルス電圧は、例えば、1kV以上、好ましくは、3kV以上であり、例えば、20kV以下、好ましくは、15kV以下である。
【0051】
また、パルス幅は、例えば、0.1μs以上、好ましくは、1μs以上であり、例えば、10μs以下、好ましくは、5μs以下である。
【0052】
また、照射時間(通電時間)は、例えば、5分以上、好ましくは、30分以上であり、例えば、6時間以下、好ましくは、2時間以下である。
【0053】
そして、このような条件で通電することにより、アンモニアを含む溶液が沸騰し、その溶液中に気相(気泡)が生じるとともに、その気相(気泡)による絶縁破壊が溶液に生じる。このとき、溶液中のアンモニアが、気相(気泡)中に移動し、気体化(アンモニアガス化)される。
【0054】
そして、このような状態において、アンモニアを含む溶液は、プラズマ発生装置3により通電されているため、気相(気泡)中のアンモニアガスが、プラズマ処理され、窒素および水素に分解される。
【0055】
つまり、このようなアンモニア分解方法では、通電により溶液中に気相(気泡)を生じさせるとともに、その気相による絶縁破壊を溶液に生じさせる条件で、気相(気泡)中にプラズマを発生させる。このとき、溶液中に含有されるアンモニアが、気相(気泡)中に移動し、その気相(気泡)中において、アンモニアが分解される。
【0056】
このようなアンモニア分解方法によれば、アンモニアを含有する溶液中において、アンモニアを低コストかつ効率よく分解することができる。
【0057】
また、上記した条件(a)〜(c)のうち、少なくとも1つ以上の条件を満たしていることにより、アンモニアを含有する溶液中に、気相による絶縁破壊を確実に生じさせることができる。そのため、溶液中のアンモニアを確実に分解することができる。
【0058】
そのため、このようなアンモニア分解方法は、種々の産業分野において用いることができ、とりわけ、ヒドラジン類を液体燃料とする燃料電池において、好適に用いることができる。
【0059】
2.燃料電池システムの全体構成
以下において、上記のアンモニア分解方法が用いられる燃料電池システムについて、
図2を参照して詳述する。
【0060】
図2において、電動車両51は、燃料電池およびバッテリを選択的に動力源とするハイブリッド車両であって、燃料電池システム52を搭載している。
【0061】
燃料電池システム52は、燃料電池53と、燃料給排部54と、図示しない空気給排部と、制御部6と、動力部7とを備えている。
(1)燃料電池
燃料電池53は、液体燃料が直接供給および排出される、例えば、アニオン交換型燃料電池またはカチオン交換型燃料電池であって、電動車両51の中央下側に配置されている。
【0062】
燃料電池53に供給され、また、燃料電池53から排出される液体燃料としては、例えば、ヒドラジン類(例えば、無水ヒドラジンや、ヒドラジン1水和物などの水加ヒドラジンなどを含む)などが挙げられる。
【0063】
なお、以下において、燃料電池53に供給される液体燃料を供給液とし、燃料電池53から排出される液体燃料を排出液として、それぞれ区別する。
【0064】
また、燃料電池53の出力電圧は、例えば、0.2〜1.5Vであり、出力電流は、例えば、10〜400Aである。なお、これら出力は、単位セル28(後述)1つあたりの出力である。
【0065】
燃料電池53は、電解質層8と、電解質層8の一方側に配置されたアノード9と、電解質層8の他方側に配置されたカソード10とを有する単位セル28(燃料電池セル)が、セパレータ(図示せず)を介して複数積層されたスタック構造に形成されている。つまり、電解質層8を介してアノード9およびカソード10が対向配置されてなる単位セル28が複数積層されている。なお、
図2では、積層される複数の単位セル28のうち、電動車両51の前後方向最前端に配置される単位セル28だけを拡大して示し、その他の単位セル28については簡略化して記載している。
【0066】
電解質層8は、例えば、アニオン交換膜またはカチオン交換膜を用いて形成されている。
【0067】
アノード9は、燃料側電極としてのアノード電極11と、アノード電極11に液体燃料(供給液)を供給するための燃料供給部材12とを有している。
【0068】
アノード電極11は、電解質層8の一方面に形成されている。アノード電極11の電極材料としては、例えば、触媒が担持された多孔質担体(触媒担持多孔質担体)などが挙げられる。
【0069】
燃料供給部材12は、セパレータとしても兼用され、ガス不透過性の導電性部材からなる。燃料供給部材12には、その表面から凹む葛折状の溝が形成されている。そして、燃料供給部材12は、溝の形成された表面がアノード電極11に対向接触されている。これにより、アノード電極11の一方面と燃料供給部材12の他方面(溝の形成された表面)との間には、アノード電極11全体に液体燃料(供給液)を接触させるための燃料供給路13が形成される。
【0070】
燃料供給路13には、液体燃料(供給液)をアノード9内に流入させるための燃料供給口15が一端側(下側)に形成され、液体燃料(排出液)をアノード9から排出するための燃料排出口14が他端側(上側)に形成されている。
【0071】
カソード10は、酸素側電極としてのカソード電極16と、カソード電極16に空気(酸素)を供給するための空気供給部材17とを有している。
【0072】
カソード電極16は、電解質層8の他方面に形成されている。
【0073】
カソード電極16の電極材料としては、例えば、アノード電極11の電極材料として例示した、触媒担持多孔質担体などが挙げられる。
【0074】
空気供給部材17は、セパレータとしても兼用され、ガス不透過性の導電性部材からなる。空気供給部材17には、その表面から凹む葛折状の溝が形成されている。そして、空気供給部材17は、溝の形成された表面がカソード電極16に対向接触されている。これにより、カソード電極16の他方面と空気供給部材17の一方面(溝の形成された表面)との間には、カソード電極16全体に空気を接触させるための空気流路としての空気供給路18が形成される。
【0075】
空気供給路18には、空気をカソード10内に流入させるための空気供給口19が他端側(上側)に形成され、空気をカソード10から排出するための空気排出口20が一端側(下側)に形成されている。
【0076】
また、このような燃料電池53において、複数の単位セル28をそれぞれ区分する1つのセパレータは、上記燃料供給部材12および上記空気供給部材17を兼ね備える。換言すると、セパレータは、その一方側面において、燃料供給部材12として作用するとともに、他方側面において、空気供給部材17として作用する。
(2)燃料給排部
燃料給排部54は、アノード9に液体燃料を供給するために設けられている。
【0077】
供給液が貯留される燃料タンク35と、燃料タンク35から燃料電池53(具体的には、アノード9の燃料供給路13)へ、供給液を輸送する燃料供給ライン37と、燃料供給ライン37に介在される循環燃料タンク41と、その循環燃料タンク41に接続され、燃料電池53(具体的には、アノード9の燃料排出口14)から、排出液を循環燃料タンク41に排出させる燃料排出ライン38と、燃料排出ライン38に介在される気液分離器56とを備えている。
【0078】
燃料タンク35は、液体燃料に耐性のある材質、具体的には、ステンレス板などの金属材料などから、例えば、箱状などに形成されている。
【0079】
燃料供給ライン37は、その上流側端部が、燃料タンク35に接続されるとともに、下流側端部が、燃料電池53(具体的には、アノード9の燃料供給路13)に接続されており、その流れ方向途中において、循環燃料タンク41が介在されている。
【0080】
より具体的には、燃料供給ライン37は、燃料タンク35および循環燃料タンク41間を接続する第1供給ライン39と、循環燃料タンク41および燃料電池53間を接続する第2供給ライン42とを備えている。
【0081】
第1供給ライン39は、その上流側端部が、燃料タンク35に接続されるとともに、下流側端部が、循環燃料タンク41に接続されている。
【0082】
また、第1供給ライン39の流れ方向途中には、第1供給ポンプ43および燃料供給弁44が設けられている。
【0083】
第1供給ポンプ43としては、例えば、ロータリーポンプ、ギヤポンプなどの回転式ポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプなどの往復式ポンプなど、公知の送液ポンプが用いられる。第1供給ポンプ43は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されている(
図2の破線参照)。これにより、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、第1供給ポンプ43に入力され、コントロールユニット29(後述)が、第1供給ポンプ43の駆動および停止を制御する。
【0084】
また、燃料供給弁44は、第1供給ライン39を開閉するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、燃料供給弁44は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されている(
図2の破線参照)。これにより、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、燃料供給弁44に入力され、コントロールユニット29(後述)が、燃料供給弁44の開閉を制御する。
【0085】
このような第1供給ライン39により、燃料タンク35から、液体燃料(1次(高濃度)供給液)が、循環燃料タンク41へ供給される。
【0086】
第2供給ライン42は、その上流側端部が、循環燃料タンク41に接続されるとともに、下流側端部が、燃料電池53(具体的には、アノード9の燃料供給路13)に接続されている。
【0087】
また、第2供給ライン42の流れ方向途中には、第2供給ポンプ45が設けられている。
【0088】
第2供給ポンプ45としては、上記した公知の送液ポンプが用いられる。第2供給ポンプ45は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されている(
図2の破線参照)。これにより、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、第2供給ポンプ45に入力され、コントロールユニット29(後述)が、第2供給ポンプ45の駆動および停止を制御する。
【0089】
このような第2供給ライン42により、液体燃料(2次供給液)が、循環燃料タンク41から燃料電池53に供給される。
【0090】
循環燃料タンク41は、例えば、中空の容器からなり、燃料供給ライン37に介在するように備えられている。具体的には、循環燃料タンク41の側壁面における上部に、第1供給ライン39が接続され、また、底面に、第2供給ライン42が接続されている。
【0091】
また、循環燃料タンク41の上面には、燃料排出ライン38の下流側端部が接続されている。
【0092】
燃料排出ライン38は、その上流側端部が、燃料電池53(具体的には、アノード9の燃料排出口14)に接続されるとともに、下流側端部が、循環燃料タンク41に接続されており、その流れ方向途中において、気液分離器56が介在されている。
【0093】
より具体的には、燃料排出ライン38は、燃料電池53および気液分離器56間を接続する第1排出ライン57と、気液分離器56および循環燃料タンク41間を接続する第2排出ライン58とを備えている。
【0094】
第1排出ライン57は、その上流側端部が、燃料電池53(具体的には、アノード9の燃料排出口14)に接続されるとともに、下流側端部が、気液分離器56に接続されている。
【0095】
このような第1排出ライン57により、燃料電池53から、液体燃料(排出液)が、気液分離器56へ供給される。
【0096】
第2排出ライン58は、その上流側端部が、気液分離器56に接続されるとともに、下流側端部が、循環燃料タンク41に接続されている。
【0097】
このような第2排出ライン58により、液体燃料(排出液)が、気液分離器56から循環燃料タンク41に供給される。
【0098】
気液分離器56は、例えば、中空の容器からなり、燃料排出ライン38に介在するように備えられている。具体的には、気液分離器56の側壁面に、第1排出ライン57が接続され、また、底面に、第2排出ライン58が接続されている。
【0099】
これにより、燃料電池53から排出される排出液が、第1排出ライン57を介して、気液分離器56に輸送され、気体成分と液体成分とに分離される。その後、液体成分(排出液)が、第2排出ライン58を介して、循環燃料タンク41に輸送される。そして、液体成分(排出液)が、燃料タンク35から輸送された液体燃料(1次供給液)と混合され、濃度調整された後、供給液(2次供給液)として、燃料電池53に戻る(還流する)。このようにして、液体燃料がアノード9を循環する燃料循環経路(クローズドライン(閉流路))が形成される。
【0100】
また、気液分離器56の側壁面における上部には、気液分離器56の内外を流通させる上部流通口25が形成されている。
【0101】
上部流通口25には、気液分離器56で分離されたガス(気体)を排出するためのガス排出管26が接続されている。
【0102】
より具体的には、ガス排出管26は、その上流側端部が、気液分離器56の上部流通口25に接続されており、また、下流側端部が、大気に開放されている。また、ガス排出管26の途中には、ガス排出弁27が設けられている。
【0103】
ガス排出弁27は、ガス排出管26を開放して気液分離器56内の圧力を開放するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。ガス排出弁27は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されている(
図2の破線参照)。これにより、コントロールユニット29(後述)からの制御信号がガス排出弁27に入力され、コントロールユニット29(後述)が、ガス排出弁27の開閉を制御する。
【0104】
また、燃料給排部54には、上記したアンモニア分解装置1が、備えられている。
【0105】
より具体的には、液体燃料が、アノード9を循環する燃料循環経路(循環燃料タンク41、第2供給ライン42、燃料供給路13、第1排出ライン57、気液分離器56および第2排出ライン58)を循環する場合、後述するように、液体燃料は、アンモニアを含有する場合がある。
【0106】
そこで、液体燃料(すなわち、アンモニアを含有する溶液)が貯留される循環燃料タンク41を、アンモニア分解装置1のプラズマ反応容器2として兼用し、その周壁面に、1対の電極5を固定する。また、循環燃料タンク41(プラズマ反応容器2)の近傍に、電源4を設け、その電源4と電極5とを配線により接続して、プラズマ発生装置3とする。
(3)空気給排部
空気給排部は、詳しくは図示しないが、燃料電池システム52に採用される公知の構成でよく、具体的には、空気をカソード10に供給するための空気供給管(図示せず)と、カソード10から排出される空気を外部に排出するための空気排出管(図示せず)とを備えている。
【0107】
空気供給管(図示せず)は、その一端側(上流側)が大気中に開放され、他端側(下流側)が空気供給口19に接続されている。空気供給管(図示せず)の途中には、エアコンプレッサなどの公知の空気供給ポンプ(図示せず)が介在されており、また、その下流側には、空気供給弁(図示せず)が設けられている。
【0108】
これら空気供給ポンプ(図示せず)および空気供給弁(図示せず)は、それぞれ、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されており、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、空気供給ポンプ(図示せず)および空気供給弁(図示せず)に入力され、コントロールユニット29(後述)が、空気供給ポンプ(図示せず)の駆動および停止を制御、および、空気供給弁(図示せず)の開閉を制御する。
【0109】
空気排出管(図示せず)は、その一端側(上流側)が空気排出口20に接続され、他端側(下流側)がドレンとされる。
(4)制御部
制御部6は、コントロールユニット29を備えている。
【0110】
コントロールユニット29は、電動車両51における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータから構成されている。
【0111】
制御部6では、詳しくは後述するが、例えば、第1供給ポンプ43、第2供給ポンプ45などの駆動および停止、燃料供給弁44やガス排出弁27の開閉などを、適宜制御する。
(5)動力部
動力部7は、燃料電池53から出力される電気エネルギを電動車両51の駆動力として機械エネルギに変換するためのモータ31と、モータ31に電気的に接続されるインバータ32と、モータ31による回生エネルギを蓄電するための動力用バッテリ33と、DC/DCコンバータ30とを備えている。
【0112】
モータ31は、燃料電池53よりも前方、電動車両51の前側に配置されている。モータ31としては、例えば、三相誘導電動機、三相同期電動機など、公知の三相電動機が挙げられる。
【0113】
インバータ32は、モータ31と燃料電池53との間に配置されている。インバータ32は、燃料電池53で発電された直流電力を交流電力に変換する装置であって、例えば、公知のインバータ回路が組み込まれた電力変換装置が挙げられる。また、インバータ32は、配線により、燃料電池53およびモータ31にそれぞれ電気的に接続されている。
【0114】
動力用バッテリ33としては、例えば、定格電圧が100V程度のニッケル水素電池や、リチウムイオン電池など、公知の二次電池が挙げられる。また、動力用バッテリ33は、インバータ32と燃料電池53との間の配線に接続され、これにより、燃料電池53からの電力を蓄電可能、かつ、モータ31に電力を供給可能とされている。
【0115】
DC/DCコンバータ30は、動力用バッテリ33と燃料電池53との間に配置されている。DC/DCコンバータ30は、燃料電池53の出力電圧を昇降圧する機能を有し、燃料電池53の電力および動力用バッテリ33の入出力電力を調整する機能を有している。
【0116】
そして、DC/DCコンバータ30は、コントロールユニット29と電気的に接続されており(
図2の破線参照)、これにより、コントロールユニット29から出力される出力制御信号の入力に応じて、燃料電池53の出力(出力電圧)を制御する。
【0117】
また、DC/DCコンバータ30は、配線により、燃料電池53および動力用バッテリ33にそれぞれ電気的に接続されているとともに、配線の分岐により、インバータ32に電気的に接続されている。
【0118】
これにより、DC/DCコンバータ30からモータ31への電力は、インバータ32において直流電力から三相交流電力に変換され、三相交流電力としてモータ31に供給される。
【0119】
3.燃料電池システムによる発電
上記した燃料電池システム52では、コントロールユニット29の制御により、燃料供給弁44が開かれ、第1供給ポンプ43および第2供給ポンプ45が駆動されることにより、燃料タンク35に貯留される供給液が燃料供給ライン37を介して、具体的には、第1供給ライン39、循環燃料タンク41および第2供給ライン42を順次通過し、アノード9に供給される。一方、空気供給弁(図示せず)が開かれ、空気供給ポンプ(図示せず)が駆動されることにより、空気が空気供給管(図示せず)を介してカソード10に供給される。なお、燃料供給弁44は、液体燃料が所定量供給された後に閉じられる。
【0120】
アノード9では、液体燃料が、アノード電極11と接触しながら燃料供給路13を通過する。一方、カソード10では、空気が、カソード電極16と接触しながら空気供給路18を通過する。
【0121】
そして、各電極(アノード電極11およびカソード電極16)において電気化学反応が生じ、起電力が発生する。
【0122】
例えば、電解質層8がアニオン交換膜であり、液体燃料がヒドラジンである場合には、下記式(1)〜(3)の通りとなる。
(1) N
2H
4+4OH
−→N
2+4H
2O+4e
− (アノード電極11での反応)
(2) O
2+2H
2O+4e
−→4OH
− (カソード電極16での反応)
(3) N
2H
4+O
2→N
2+2H
2O (燃料電池53全体での反応)
すなわち、ヒドラジンが供給されたアノード電極11では、ヒドラジン(N
2H
4)とカソード電極16での反応で生成した水酸化物イオン(OH
−)とが反応して、窒素(N
2(ガス))および水(H
2O)が生成するとともに、電子(e
−)が発生する(上記式(1)参照)。
【0123】
また、上記した(1)で示される反応では、実際には、窒素(N
2(ガス))および水(H
2O)に加えて、アンモニア(NH
3、NH
4+)が副生する。
【0124】
アノード電極11で発生した電子(e
−)は、図示しない外部回路を経由してカソード電極16に到達する。つまり、この外部回路を通過する電子(e
−)が、電流となる。
【0125】
一方、カソード電極16では、電子(e
−)と、外部からの供給もしくは燃料電池53での反応で生成した水(H
2O)と、空気供給路18を流れる空気中の酸素(O
2)とが反応して、水酸化物イオン(OH
−)が生成する(上記式(2)参照)。
【0126】
そして、生成した水酸化物イオン(OH
−)が、電解質層8を通過してアノード電極11に到達し、上記と同様の反応(上記式(1)参照)が生じる。
【0127】
このようなアノード電極11およびカソード電極16での電気化学的反応が連続的に生じることによって、燃料電池53全体として、上記式(3)で示される反応が生じて、燃料電池53に起電力が発生する。
【0128】
そして、発生した起電力が、配線を介して、DC/DCコンバータ30に送電され、動力部7では、インバータ32およびモータ31、および/または、動力用バッテリ33に送電される。そして、モータ31では、インバータ32により三相交流電力に変換された電気エネルギが電動車両51の車輪を駆動させる機械エネルギに変換される。一方、動力用バッテリ33では、その電力が充電される。
【0129】
また、燃料給排部54では、アノード9から排出される排出液(使用後および未反応の液体燃料、副生する窒素ガス(N
2)およびアンモニア(NH
3、NH
4+)を含む。)が、第1排出ライン57を介して、気液分離器56に流入する。
【0130】
気液分離器56では、排出液による液溜まりが、気液分離器56の中空部分に生じるとともに、排出液に含まれるガス(窒素ガス(N
2)など)の一部が、液溜まりの上方空間へ分離される。
【0131】
このようにして、気液分離器56において、排出液が、液体燃料と気体とに分離される。
【0132】
なお、気液分離器56において分離された気体は、ガス排出弁27が開かれることにより、ガス排出管26を介して外部へ排出される。
【0133】
一方、気液分離器56において分離された液体燃料は、第2排出ライン58を介して、循環燃料タンク41に流入し、供給液(2次供給液)として循環され、再度、燃料供給口15から燃料供給路13に流入する。
【0134】
また、2次供給液の循環使用に伴って、液体燃料中の燃料濃度が低くなる場合には、気液分離器56において分離され、循環燃料タンク41に流入した液体燃料は、燃料供給弁44の開閉によって燃料タンク35から輸送された液体燃料(1次(高濃度)供給液)と混合され、濃度調整された後、供給液(2次供給液)として、再度、燃料供給口15から燃料供給路13に流入する。
【0135】
このようにして、液体燃料が、燃料循環経路(循環燃料タンク41、第2供給ライン42、燃料供給路13、第1排出ライン57、気液分離器56および第2排出ライン58)を循環する。
【0136】
4.燃料電池システムにおけるアンモニア分解
上記式(3)で示したように、燃料電池システム52では、液体燃料がヒドラジンである場合、ヒドラジン(N
2H
4)および酸素(O
2)の反応により、窒素ガス(N
2)および水(H
2O)を生成する。
【0137】
また、この反応では、窒素ガス(N
2)および水(H
2O)に加えて、アンモニア(NH
3、NH
4+)が副生し、アンモニアが、液体燃料に含有される。
【0138】
そこで、この燃料電池システム52では、上記したアンモニア分解方法を、燃料循環経路(クローズドライン)に介在される循環燃料タンク41内において実施する。
【0139】
より具体的には、燃料電池53における化学反応によってアンモニアが生成された場合、アンモニアを含んだ液体燃料(すなわち、アンモニアを含有する溶液)は、循環燃料タンク41内に貯留される。
【0140】
このとき、燃料電池システム52には、循環燃料タンク41をプラズマ反応容器2として兼用するアンモニア分解装置1が設けられており、液体燃料(すなわち、アンモニアを含有する溶液)中において、1対の電極5が対向配置されている。
【0141】
そのため、上記した条件、すなわち、溶液中に気泡を発生させる条件で、電極5に通電し、溶液中にプラズマを発生させることにより、溶液中に含有されるアンモニアを分解することができる。
【0142】
このようなアンモニア分解方法によれば、燃料電池システム52において、循環する液体燃料に含有されるアンモニアを、その液体燃料中で分解することができる。
【0143】
そのため、液体燃料に含有されるアンモニアを効率よく分解することができ、燃料電池システム52によって、効率よく発電することができる。
【実施例】
【0144】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0145】
実施例1
図1に示すアンモニア分解装置を用意した。なお、プラズマ反応容器の容量は、50〜100mLとし、電極として、断面視略円形状(直径1mm)のタングステン電極を用いた。
【0146】
また、アンモニアを含有する溶液として、アンモニアを含有するヒドラジン溶液を用いた。なお、ヒドラジン溶液には、水酸化カリウムを添加しており、そのコンダクタンスは0.08S/mであった。
【0147】
次いで、アンモニアを含有するヒドラジン溶液50mLを、プラズマ反応容器に入れ、アンモニア含有量をイオンクロマトグラフ分析により測定した。その結果、処理前のヒドラジン溶液において、アンモニア(NH
4+)含有量は、8690.7ppmであった。
【0148】
そして、アルゴン雰囲気下において、電源を、パルス電圧5kV、周波数20kHz、パルス幅2μs、照射時間60分の条件で作動させ、ヒドラジン溶液中で電極に通電し、溶液中に気泡を生じさせるとともに、その気泡による絶縁破壊を生じさせ、その気泡中にプラズマを発生させた。また、操作中、反応容器を、チラーで20〜30℃に冷却した。
【0149】
その後、電源を切り、上記の処理後のヒドラジン溶液中のアンモニア含有量をイオンクロマトグラフ分析により測定した。その結果、処理後のヒドラジン溶液において、アンモニア(NH
4+)含有量は、4569.5ppmであり、アンモニア低減率は47%であった。
【0150】
実施例2
実施例1の方法において、通電時の周波数を15kHzに変更し、また、アンモニアを含有するヒドラジン溶液に水酸化カリウムを添加して、コンダクタンスを1.0S/mとした。さらに、空気雰囲気下においてヒドラジン溶液中で電極に通電し、プラズマを発生させた。その他の条件は実施例1と同様に実施した。
【0151】
なお、電極として、断面視略円形状(直径1mm)のタングステン電極を用いた。
【0152】
その結果、溶液中に気泡が発生し、アンモニアが分解された。
【0153】
処理前のヒドラジン溶液中のアンモニア含有量は、8690.7ppmであり、処理後のヒドラジン溶液中のアンモニア含有量が、4000ppmであり、アンモニア低減率は65%であった。