(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塗布液が溜められる溜め部、塗布液を吐出する吐出口、及び、前記溜め部と前記吐出口とを繋ぐスリット状流路を有し、被塗布部材に対して当該吐出口から塗布液を吐出する塗布器と、
前記塗布器と前記被塗布部材とを当該被塗布部材の被塗布面に平行な方向に相対移動させる移動手段と、
前記塗布器内の前記溜め部に塗布液を供給するポンプと、
前記相対移動を行いながら前記被塗布部材に対して前記吐出口から塗布液を吐出する塗布動作の際、前記塗布器内の塗布液を負圧にしつつ前記ポンプから塗布液を前記塗布器に供給するための制御を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記被塗布部材に対する塗布液の付着を開始する液付け動作のために、前記ポンプにより塗布液を前記塗布器に供給し、当該供給により前記塗布器内の塗布液の圧力を高めた後、当該圧力の低下が検出されると、前記ポンプによる塗布液の供給を停止し、
前記制御装置は、前記塗布器内の塗布液を負圧にしつつ前記相対移動させて行う前記塗布動作の際、前記吐出口から吐出されることで消費される塗布液の量に応じた塗布液を前記ポンプから、当該相対移動中に、前記塗布器内の塗布液を負圧に維持した状態で、前記溜め部に供給する制御を行う、塗布装置。
塗布液が溜められる溜め部、塗布液を吐出する吐出口、及び、前記溜め部と前記吐出口とを繋ぐスリット状流路を有し、被塗布部材に対して当該吐出口から塗布液を吐出する塗布器と、
前記塗布器と前記被塗布部材とを当該被塗布部材の被塗布面に平行な方向に相対移動させる移動手段と、
前記塗布器に塗布液を供給するポンプと、
前記相対移動を行いながら前記被塗布部材に対して前記吐出口から塗布液を吐出する塗布動作の際、前記塗布器内の塗布液を負圧にしつつ前記ポンプから塗布液を前記塗布器に供給するための制御を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記被塗布部材に対する塗布液の付着を開始する液付け動作のために、前記ポンプにより塗布液を前記塗布器に供給し、当該供給により前記塗布器内の塗布液の圧力を高めた後、当該圧力の低下が検出されると、前記ポンプによる塗布液の供給を停止する、塗布装置。
前記塗布器と配管を通じて接続され塗布液を溜めているタンクと、前記塗布器内の塗布液の圧力を所定の値に保つように前記タンクに溜めている塗布液の圧力を調整するための圧力調整器と、前記塗布器と前記タンクとを連通及び遮断可能とするバルブと、を更に備え、
前記制御装置は、前記バルブにより前記塗布器と前記タンクとの連通を遮断している状態で、前記ポンプにより塗布液を前記塗布器に供給してから、前記圧力の低下が検出されると、前記ポンプによる塗布液の供給を停止すると共に、前記バルブを動作させて前記タンクと前記塗布器とを連通させる、請求項1又は3に記載の塗布装置。
塗布液が溜められる溜め部、塗布液を吐出する吐出口、及び、前記溜め部と前記吐出口とを繋ぐスリット状流路を有する塗布器の当該吐出口から、被塗布部材に対して塗布液を吐出してキャピラリー塗布を行うための方法であって、
前記被塗布部材に対する塗布液の付着を開始する液付け動作のために、前記塗布器と繋がるポンプにより塗布液を前記塗布器に供給し、当該供給により前記塗布器内の塗布液の圧力を高めた後、当該圧力の低下を検出すると、前記ポンプによる塗布液の供給を停止し、
前記塗布器と前記被塗布部材とを当該被塗布部材の被塗布面に平行な方向に相対移動させながら、当該被塗布部材に対して前記吐出口から塗布液を吐出する塗布動作を行い、
前記塗布動作の際、前記相対移動中に前記塗布器内の前記溜め部に溜められる塗布液を負圧にしつつ、前記吐出口から吐出されることで消費される塗布液の量に応じた塗布液を、当該塗布器と繋がるポンプから、当該相対移動中に、前記塗布器内の塗布液を負圧に維持した状態で、当該溜め部に供給する、塗布方法。
塗布液が溜められる溜め部、塗布液を吐出する吐出口、及び、前記溜め部と前記吐出口とを繋ぐスリット状流路を有する塗布器の当該吐出口から、被塗布部材に対して塗布液を吐出してキャピラリー塗布を行うための方法であって、
前記被塗布部材に対する塗布液の付着を開始する液付け動作のために、前記塗布器と繋がるポンプにより塗布液を前記塗布器に供給し、当該供給により前記塗布器内の塗布液の圧力を高めた後、当該圧力の低下を検出すると、前記ポンプによる塗布液の供給を停止し、
前記塗布器と前記被塗布部材とを当該被塗布部材の被塗布面に平行な方向に相対移動させながら、当該被塗布部材に対して前記吐出口から塗布液を吐出する塗布動作を行い、
前記塗布動作の際、前記塗布器内の塗布液を負圧にしつつ当該塗布器と繋がる前記ポンプから塗布液を当該塗布器に供給する、塗布方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
塗布器の吐出口を下向きにしたキャピラリーコータを用いて基板に塗布液を塗布する場合、塗布液の膜厚に影響を与える主な制御パラメータは、塗布器内の圧力や塗布速度である。これら制御パラメータを用いて制御を行って塗布しても、膜厚を安定して再現させるためには、高い精度での制御が必要となる。
【0007】
前記特許文献1に記載のキャピラリーコータは、塗布器の内部に塗布液を溜める幅狭の貯留室が形成されており、この貯留室の圧力(気圧)を制御する構成となっている。貯留室の塗布液が吐出口から吐出されると、つまり、塗布のために塗布液が消費されると、貯留室の塗布液の液面が低下する。塗布器(貯留室)には外部から新たに塗布液は供給されるが、貯留室は幅狭であるため、塗布液の消費(及び供給)に伴う液面高さの変動が大きく、この結果、貯留室の圧力を一定に保つ制御は実質困難である。
【0008】
また、前記特許文献2に記載のキャピラリーコータは、塗布器と配管を介して接続された塗布液を溜めるタンクを備えており、塗布器内の圧力が一定となるよう、塗布器に設けた圧力センサの測定値を基にして前記タンクの圧力をフィードバック制御している。しかし、タンクから塗布器までの流路(配管)を塗布液が流れる際に生じる圧力損失により、塗布液の動きが遅れ、制御の応答性が低下する場合がある。すなわち、タンクの圧力を制御しても、その制御による圧力変化が塗布器内の圧力に反映されるまでに時間的なズレが生じ、この結果、塗布器内の圧力が所望の圧力にならなかったり、塗布器内の圧力が変動したりするという問題がある。
【0009】
以上のように、塗布器内の圧力の制御が不安定であると、塗布器から吐出される塗布液の吐出量が変動し、この結果、被塗布部材上に形成される塗膜の膜厚が均一とならない可能性がある。
そこで、本発明は、上記のようなキャピラリーコータ(キャピラリー塗布)の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、被塗布部材に形成する塗膜の厚さを所望の厚さにすることが可能となる塗布装置及び塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の塗布装置は、塗布液が溜められる溜め部、塗布液を吐出する吐出口、及び、前記溜め部と前記吐出口とを繋ぐスリット状流路を有し、被塗布部材に対して当該吐出口から塗布液を吐出する塗布器と、前記塗布器と前記被塗布部材とを当該被塗布部材の被塗布面に平行な方向に相対移動させる移動手段と、前記塗布器に塗布液を供給するポンプと、前記相対移動を行いながら前記被塗布部材に対して前記吐出口から塗布液を吐出する塗布動作の際、前記塗布器内の塗布液を負圧にしつつ前記ポンプから塗布液を前記塗布器に供給するための制御を行う制御装置と、を備えている。
この塗布装置によれば、吐出口から塗布液を吐出して、所望の厚さの塗膜を被塗布部材(被塗布面)上に形成することが可能となるキャピラリー塗布を行うことができる。
【0011】
また、前記制御装置は、前記塗布動作の際、前記吐出口から吐出される塗布液の量に応じた塗布液を前記ポンプから前記塗布器に供給する制御を行うことができる。
この構成によれば、塗布動作の際、吐出口から吐出されることで消費される塗布液の量に応じた塗布液がポンプから塗布器に供給されるので、所望の厚さの塗膜を被塗布部材(被塗布面)上に形成するキャピラリー塗布の制御が容易となる。
【0012】
また、前記塗布装置は、前記塗布器内の塗布液に圧力を作用させる圧力付与装置と、前記塗布器内の塗布液の圧力を測定する圧力センサと、を更に備え、前記制御装置は、前記塗布器内の塗布液を負圧にするために前記圧力付与装置によって前記塗布器内の塗布液の圧力制御を行うと共に、前記圧力センサの測定結果に基づいて前記ポンプによる塗布液の調整制御を行うことができる。
この構成によれば、塗布器内の圧力(負圧)を一定に保つための圧力制御が行われ、所望の厚さの塗膜を被塗布部材(被塗布面)上に形成するキャピラリー塗布の制御が容易となる。
【0013】
また、被塗布部材の塗布開始部へ塗布液を付着させる際、塗布液の吐出量を適切に制御して所望の膜厚を塗布開始部から得るのが好ましい。そこで、前記制御装置は、前記被塗布部材に対する塗布液の付着を開始する液付け動作のために、前記ポンプにより塗布液を前記塗布器に供給し、当該供給により前記塗布器内の塗布液の圧力を高めた後、当該圧力の低下が検出されると、前記ポンプによる塗布液の供給を停止するのが好ましい。
ポンプから塗布器に塗布液の供給を行うと、一旦、塗布器内の塗布液の圧力が高まり、これにより、吐出口から塗布液が吐出される。そして、塗布液が被塗布部材に接すると、塗布液の表面張力によって塗布器内の塗布液を更に引き出そうとし、これにより、塗布器内の圧力が低下する。そこで、この圧力の低下が検出されると、ポンプによる塗布液の供給を停止することで、液付け動作の際に過剰な塗布液が被塗布部材に付着するのを防ぐことが可能となる。
【0014】
また、前記液付け動作のために、前記塗布装置は、前記塗布器と配管を通じて接続され塗布液を溜めているタンクと、前記塗布器内の塗布液の圧力を所定の値に保つように前記タンクに溜めている塗布液の圧力を調整するための圧力調整器と、前記塗布器と前記タンクとを連通及び遮断可能とするバルブと、を更に備え、前記制御装置は、前記バルブにより前記塗布器と前記タンクとの連通を遮断している状態で、前記ポンプにより塗布液を前記塗布器に供給してから、前記圧力の低下が検出されると、前記ポンプによる塗布液の供給を停止すると共に、前記バルブを動作させて前記タンクと前記塗布器とを連通させるのが好ましい。
この構成によれば、液付け動作の際、吐出口から吐出された塗布液が被塗布部材に付着した後において、塗布器内の塗布液の圧力を一定値(負圧)に保つことが可能となる。
【0015】
また、本発明の塗布方法は、塗布液が溜められる溜め部、塗布液を吐出する吐出口、及び、前記溜め部と前記吐出口とを繋ぐスリット状流路を有する塗布器の当該吐出口から、被塗布部材に対して塗布液を吐出してキャピラリー塗布を行うための方法であって、前記塗布器と前記被塗布部材とを当該被塗布部材の被塗布面に平行な方向に相対移動させながら、当該被塗布部材に対して前記吐出口から塗布液を吐出する塗布動作を行い、前記塗布動作の際、前記塗布器内の塗布液を負圧にしつつ当該塗布器と繋がるポンプから塗布液を当該塗布器に供給する。
この塗布方法によれば、吐出口から塗布液を吐出して、所望の厚さの塗膜を被塗布部材(被塗布面)上に形成することが可能となるキャピラリー塗布を行うことができる。
【0016】
また、前記塗布動作の際、前記吐出口から吐出される塗布液の量に応じた塗布液を前記ポンプから前記塗布器に供給する。
この構成によれば、塗布動作の際、吐出口から吐出されることで消費される塗布液の量に応じた塗布液がポンプから塗布器に供給されるので、所望の厚さの塗膜を被塗布部材(被塗布面)上に形成するキャピラリー塗布の制御が容易となる。
【0017】
また、前記塗布器内の塗布液の圧力が圧力センサによって測定され、前記塗布器内の塗布液を負圧にするために当該塗布器内の塗布液の圧力制御を行うと共に、前記圧力センサの測定結果に基づいて前記ポンプによる塗布液の調整制御を行う。
この構成によれば、塗布器内の圧力(負圧)を一定に保つための圧力制御が行われ、所望の厚さの塗膜を被塗布部材(被塗布面)上に形成するキャピラリー塗布の制御が容易となる。
【0018】
また、被塗布部材の塗布開始部へ塗布液を付着させる際、塗布液の吐出量を適切に制御して所望の膜厚を塗布開始部から得るのが好ましい。そこで、前記被塗布部材に対する塗布液の付着を開始する液付け動作のために、前記ポンプにより塗布液を前記塗布器に供給し、当該供給により前記塗布器内の塗布液の圧力を高めた後、当該圧力の低下を検出すると、前記ポンプによる塗布液の供給を停止するのが好ましい。
ポンプから塗布器に塗布液の供給を行うと、一旦、塗布器内の塗布液の圧力が高まり、これにより、吐出口から塗布液が吐出される。そして、塗布液が被塗布部材に接すると、塗布液の表面張力によって塗布器内の塗布液を更に引き出そうとし、これにより、塗布器内の圧力が低下する。そこで、この圧力の低下が検出されると、ポンプによる塗布液の供給を停止することで、液付け動作の際に過剰な塗布液が被塗布部材に付着するのを防ぐことが可能となる。
【0019】
また、前記液付け動作のために、前記塗布器には、塗布液を溜めているタンクが配管を通じて接続されていると共に、当該塗布器と当該タンクとを連通及び遮断可能とするバルブが設けられており、前記塗布器内の塗布液の圧力を所定の値に保つように前記タンクに溜めている塗布液の圧力が、圧力調整器によって調整可能であり、前記バルブにより前記塗布器と前記タンクとの連通を遮断している状態で、前記ポンプにより塗布液を前記塗布器に供給してから、前記圧力の低下を検出すると、前記ポンプによる塗布液の供給を停止すると共に、前記バルブを動作させて前記タンクと前記塗布器とを連通させるのが好ましい。
この構成によれば、液付け動作の際、吐出口から吐出された塗布液が被塗布部材に付着した後において、塗布器内の塗布液の圧力を一定値(負圧)に保つことが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、塗布器に供給する塗布液の量をポンプにより所定の量に制御することで、塗布器から被塗布部材に吐出された塗布液の表面張力により吐出口から塗布器外に吐出されようとする塗布液の量を抑制することができる。この結果、塗布動作の際、塗布器内の塗布液が負圧に維持され、被塗布部材に塗布する塗膜の厚さを所望の厚さにすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
〔塗布装置の構成について〕
図1は、塗布装置の全体構成を説明する概略構成図である。この塗布装置5は、例えば枚葉状である被塗布部材に塗布液を吐出して均一な厚さの塗膜を形成するための装置である。なお、本実施形態で説明する被塗布部材は、円形の基板7(
図2(A)参照)であり、具体的には円形のシリコンウエハである。
【0023】
塗布装置5は、基板7よりも上側に位置する塗布器10(ノズル、スリットダイともいう)を備えており、この塗布器10から塗布液を吐出し、基板7の上面に塗布液を塗布する。基板7の上面が、塗布液が塗布される被塗布面8となり、この被塗布面8が上向きとなる姿勢で基板7はステージ9上に支持され、その状態で塗布が行われる。
塗布装置5は、塗布液を吐出する前記塗布器10の他に、基板7と塗布器10とを相対的に移動させる移動手段20と、塗布器10に塗布液を供給するためのポンプ30と、塗布器10内の塗布液に圧力を作用させる圧力付与装置40と、各種制御を行うコンピュータからなる制御装置50と、塗布器10内の塗布液の圧力を計測するための圧力センサ60とを備えている。
【0024】
塗布器10について説明する。塗布器10は、
図2(A)に示すように一方向に長い直線状のノズルからなり、その下端に、塗布液を吐出する一方向に長い吐出口11が設けられている。前記のとおり基板7(被塗布面8)は円形であり、吐出口11は基板7の直径D(基板7の前記一方向の最大寸法)よりも大きな幅寸法Wを有している(W>D)。このため、塗布器10(吐出口11)には、基板7が直下に存在する部分と、基板7が直下に存在しない部分とが生じ、また、これらの部分それぞれの範囲(長さ)は、基板7と塗布器10(吐出口11)との相対的な位置に応じて変化する。
図2(A)は、塗布器10及び基板7を示す斜視図であり、
図2(B)は、この塗布器10のうち、基板7が直下に存在する部分における断面図であり、
図2(C)は、塗布器10のうち、基板7が直下に存在していない部分における断面図である。
【0025】
図2(B)(C)に示すように、塗布器10は、塗布液が溜められる溜め部13、塗布液を吐出する吐出口11、及び、溜め部13と吐出口11とを繋ぐスリット状流路12を有している。これら溜め部13、スリット状流路12及び吐出口11は、一方向(
図2(B)(C)の紙面に直交する方向)に沿って長く形成されている。溜め部13は、吐出口11から吐出させる塗布液を一旦溜めるために拡大させた領域である。スリット状流路12の下端が吐出口11となっている。そして、この塗布器10では、基板7に対して吐出口11から塗布液が下向きに吐出される。後述する塗布動作の際、溜め部13、スリット状流路12は、塗布液で満たされた状態(つまり、充満状態)となる。本実施形態では、吐出口11から塗布液が吐出される方向は、下向きであるが、これに限らず、斜め下向きであってもよく、また、横向き(水平方向向き)、上向き、斜め上向きとする場合もある。
【0026】
図1において、圧力センサ60は、塗布器10に設けられており、塗布器10内の塗布液の圧力を測定するセンサである。本実施形態では、圧力センサ60の検出部(センサ部)は溜め部13において露出しており、溜め部13の塗布液の圧力(内圧)が測定される。圧力センサ60の測定結果は制御装置50に入力される。なお、以下において「塗布器10内の圧力」は、溜め部13の塗布液の圧力を意味する。
【0027】
塗布装置5は、装置基台6、及び、この装置基台6に搭載され基板7を上に載せるステージ9を備えている。ステージ9上の基板7の被塗布面8は水平となる。そして、本実施形態では、ステージ9に対して塗布器10が移動手段20によって移動可能となっている。
移動手段20は、装置基台6に設けられているレール21、このレール21に沿って水平方向に移動する可動ブロック22、及び、可動ブロック22を移動させるリニアアクチュエータ23を備えている。そして、塗布器10は可動ブロック22に搭載されている。この移動手段20により、固定状態にあるステージ9上の基板7に対して、塗布器10が水平方向に移動可能となる。なお、移動手段20は、塗布器10と基板7とを基板7の被塗布面8に平行な方向に相対移動させる構成であればよく、図示しないが、固定状態にある塗布器10に対してステージ9(基板7)を移動させる構成であってもよい。また、移動手段20は、塗布器10を上下方向に移動させる昇降アクチュエータ24を備えている。これにより、基板7に対する塗布器10(吐出口11)の高さを調整することが可能である。移動手段20は、制御装置50によって制御され、所定の速度(具体的には一定速度)で塗布器10を水平方向に移動させることができる。
【0028】
この塗布装置5では、基板7と塗布器10(吐出口11)とを上下方向に対向させた状態で、移動手段20によってこれらを相対的に移動させ、基板7と塗布器10との間で発生する塗布液(塗布液のビード3)に働く表面張力によって塗布器10から塗布液を吐出させる。このため、細長い吐出口11に対して、
図2(B)に示すように基板7が存在する部分では塗布液が吐出されるのに対して、
図2(C)に示すように基板7の無い部分では塗布液の吐出がされない。これにより、円形の基板7を塗布対象とした場合に、塗布液を無駄にすることなく、必要な部分に塗膜を形成することが可能となり、塗布液の利用効率を高めている。
【0029】
図1において、ポンプ30は、塗布器10に所望の量の塗布液を供給する機能を有している。ポンプ30は、任意の流量の塗布液を精度よく送り出すことが可能であり、例えば、シリンジポンプ(定量ポンプ)である。塗布器10とポンプ30とは配管81を通じて接続されており、配管81には開閉切り換えバルブ71が設けられている。ポンプ30は、制御装置50によって制御され、単位時間当たりの塗布液の送り量が制御されて、塗布液が塗布器10に供給される。ポンプ30によって塗布器10に塗布液が供給されることで、この塗布器10の吐出口11から塗布液が吐出される。また、ポンプ30は、塗布液を供給するための動作と反対の動作を行うことで、塗布器10側の塗布液を吸引することも可能である。この吸引動作は、後に説明するが、ポンプ30への塗布液の補充、及び、制御モード(その2)の際に行われる。
【0030】
また、塗布装置5は、塗布液を溜めるタンク(第一タンク)35を更に備えている。このタンク35は、前記配管81から延長された配管83を通じてポンプ30と接続されている。配管83には開閉切り換えバルブ73が設けられている。タンク35に溜めることができる塗布液の容量は、ポンプ30の容量よりも大きく、タンク35に溜められている塗布液は、ポンプ30に補充するための塗布液となる。
【0031】
圧力付与装置40は、タンク(第二タンク)41及び圧力調整器42を含む。タンク41は、塗布液を溜めていると共に、配管82を通じて塗布器10と接続されている。配管82には開閉切り換えバルブ72が設けられており、バルブ72が開状態で、タンク41と塗布器10(溜め部13)との間で塗布液が流通可能となっている。バルブ72は、塗布器10と第二タンク41とを連通及び遮断可能とする。タンク41に溜めることができる塗布液の容量は、塗布器10の溜め部13の容量(容積)よりも大きい。
圧力調整器42は、レギュレータからなり、タンク41の塗布液に作用させる圧力を変化させる。圧力調整器42は、制御装置50によって制御され、タンク41の塗布液の圧力(内圧)を調整する。タンク41と塗布器10とは配管82を通じて接続されていることから、タンク41の塗布液の圧力を調整することで、塗布器10(溜め部13)の塗布液の圧力を所定の圧力に制御することができる。例えば、タンク41の塗布液の圧力(ゲージ圧)を負圧に調整することで、塗布器10(溜め部13)の塗布液の圧力(ゲージ圧)を負圧にすることができる。
【0032】
このように、本実施形態では、圧力調整器42は、塗布器10内の塗布液の圧力を所定の値(負圧)に保つようにタンク41に溜めている塗布液の圧力を調整するためのものであり、これら圧力調整器42及びタンク41によって、塗布器10内の塗布液に圧力(負圧)を作用させる圧力付与装置40が構成されている。
【0033】
以上の構成を備えている塗布装置5には、塗布器10に対してそれぞれ繋がるポンプ制御ラインL1及び圧力制御ラインL2が含まれる。ポンプ制御ラインL1には、配管81,83、バルブ71,73、ポンプ30及び第一タンク35が含まれる。圧力制御ラインL2には、配管82、バルブ72、第二タンク41及び圧力調整器42が含まれる。後述する塗布動作及び液付け動作それぞれにおいて、これらポンプ制御ラインL1及び圧力制御ラインL2の一方又は双方が選択的に用いられる。
【0034】
本実施形態の塗布装置5は、塗布動作のために二つの制御モードを有しており、択一的に採用される。このために、制御装置50の記憶手段に記憶されているコンピュータプログラムには、二つの制御モードのプログラムが含まれており、選択的に実行される。なお、前記塗布動作とは、移動手段20(リニアアクチュエータ23)によって基板7と塗布器10との相対移動を行いながら、この基板7に対して吐出口11から塗布液を吐出する動作である。
【0035】
以下において、前記構成を備えている塗布装置5によって行われる塗布方法について説明する。この塗布方法には、基板7に対する塗布液の付着を開始する液付け動作が含まれており、この液付け動作に続いて塗布動作が行われる。
【0036】
〔制御モード(その1)〕
図3〜
図5は、塗布方法を説明する説明図である。なお、以下の説明において、ポンプ30と塗布器10との間のバルブ71を第一バルブ71と呼び、第二タンク41と塗布器10との間のバルブ72を第二バルブ72と呼び、第一タンク35とポンプ30との間のバルブ73を第三バルブ73と呼ぶ。
【0037】
図3(A)に示すように、塗布器10から塗布液の初期出しを行う(初期出し工程)。このために、第一バルブ71を開とし、ポンプ30を動作させることで吐出口11から微量の塗布液を吐出する。この初期出し工程では、塗布器10は基板7上に存在していない。
次に、塗布器10の吐出口11の拭き取りが行われる(拭き取り工程:
図3(B)参照)。この際、ポンプ30は停止した状態にある。
次に、塗布器10の高さ位置を、ステージ9上の基板7に対して所定の位置とする。塗布器10の高さ調整は、昇降アクチュエータ24(
図1参照)によって行われる。例えば、吐出口11と被塗布面8との間隔を数十μmとする。また、リニアアクチュエータ23(
図1参照)によって、基板7の塗布開始位置(基板7の縁部)の直上に吐出口11が位置するように塗布器10を移動させる(準備移動工程)。
この準備移動工程が完了するまでの間において、第二タンク41の塗布液の圧力を大気圧よりも低く設定する処理(以下、事前処理という)が行われる。
【0038】
事前処理では、圧力制御ラインL2において、第二タンク41の塗布液の圧力が所定の減圧値(所定の負圧値)に設定される。この減圧値(負圧値)は、制御装置50に設定されている値であって、塗布器10の塗布液の圧力を所定の負圧値とさせるための値である。具体的には、塗布動作を行う際において塗布器10の塗布液に生じさせる負圧値と同じ値とする。第二タンク41の塗布液の負圧(減圧)は、圧力調整器42によって行われる。以上の処理が、事前処理である。
この事前処理により、前記準備移動工程までは、第二バルブ72は閉状態であって、この状態では第二タンク41の塗布液の圧力は、塗布器10の塗布液の圧力に影響を与えないが、後に説明するが、第二バルブ72を開くことで、第二タンク41の塗布液の負圧を、塗布器10の塗布液の圧力に作用させ、塗布器10の塗布液の圧力を瞬時に負圧にさせることができる。
【0039】
次に、ポンプ30を動作させ塗布器10に塗布液を供給する(
図4(A)参照)。この際、ポンプ30による塗布液の供給量は、超少量であり、塗布動作の際の供給量よりも少ない。これにより、吐出口11から微量の塗布液が吐出される。また、ポンプ30による塗布液の供給により、塗布器10内の塗布液の圧力は上昇し、大気圧に近づく。
そして、吐出口11から吐出された微量の塗布液が基板7に接すると(
図4(B)参照)、塗布器10内の圧力が急激に低下する(大気圧より低い負圧に戻る)。これは、基板7に接した塗布液の表面張力及び毛細管減少(キャピラリー)により塗布器10内の塗布液が基板7側に引き出されるためである。
【0040】
圧力センサ60は塗布器10内の圧力を刻々と測定していることから、基板7に塗布液が接することに起因する塗布器10内の圧力低下が制御装置50において検出されると、第二バルブ72を開く(
図4(C)参照)。更に、ポンプ30による塗布液の供給を停止する。これにより、前記事前処理が行われていることと協働して、塗布器10の塗布液は、第二タンク41の塗布液の圧力の影響を受け、塗布器10の塗布液の圧力は負圧となる。この結果、塗布器10から塗布液が流出し続けるのを防ぐことができ、基板7と吐出口11との間に塗布液によるビード3が形成される(
図4(C)参照)。
【0041】
以上の
図4(A)〜(C)に示す工程が、前記液付け動作(液付け工程)であり、この液付け動作では、前記のとおり、制御装置50によって次の制御が行われる。つまり、基板7に対する塗布液の付着を開始する液付け動作のために、ポンプ30により塗布液を塗布器10に供給し、この供給により塗布器10内の塗布液の圧力を高めた後、この圧力の低下が圧力センサ60によって検出されると、ポンプ30による塗布液の供給を停止する。更に本実施形態では、第二バルブ72により塗布器10と第二タンク41との連通を遮断している状態(つまり、第二バルブ72が閉状態)で、ポンプ30により塗布液を塗布器10に供給してから、圧力センサ60によって圧力の低下が検出されると、ポンプ30による塗布液の供給を停止すると共に、第二バルブ72を動作させて(つまり、第二バルブ72を開いて)第二タンク41と塗布器10とを連通させる。
この液付け動作によれば、ポンプ30から塗布器10に塗布液の供給を行うと、一旦、塗布器10内の塗布液の圧力が高まり、これにより、吐出口11から塗布液が吐出される。そして、塗布液が基板7に接すると、塗布液の表面張力によって塗布器10内の塗布液を更に引き出そうとし、これにより、塗布器10内の圧力が低下する。そこで、この圧力の低下が圧力センサ60によって検出されると、ポンプ30による塗布液の供給を停止することで、液付け動作の際に過剰な塗布液が基板7に付着するのを防ぐことが可能となる。更に、第二バルブ72を開いて第二タンク41と塗布器10とを連通させることで、吐出口11から吐出された塗布液が基板7に付着した後において、塗布器10内の塗布液の圧力を一定値(負圧)に保つことが可能となる。
【0042】
以上のように液付け動作され、第二タンク41の塗布液の圧力の影響によって、塗布器10内の塗布液の圧力が負圧になると(両者の圧力が等しくなると)、第二バルブ72を閉じる。そして、
図5(A)に示すように、塗布動作(塗布工程)が行われる。この工程では、移動手段20(リニアアクチュエータ23)により塗布器10の水平方向の移動を開始させると共に、ポンプ30による塗布液の供給が開始される。そして、塗布器10を水平方向に移動させながら、ポンプ30による塗布液の供給が行われる。
【0043】
本実施形態では、塗布器10の移動速度は一定である。ここで、基板7は円形であることから、前記のとおり(
図2参照)、塗布器10(吐出口11)には、基板7が直下に存在する部分と、基板7が直下に存在していない部分とが生じており、また、これらの部分それぞれの範囲は、基板7と塗布器10との相対的な位置に応じて変化する。そして、細長い吐出口11に対して、
図2(B)に示すように基板7が存在する部分では塗布液が吐出されるのに対して、
図2(C)に示すように基板7の無い部分では塗布液の吐出がされない。
したがって、塗布器10を一定速度で移動させて塗布液を円形の基板7に対して塗布し、一定の膜厚の塗膜を基板7上に形成するためには、吐出口11から吐出させるべき塗布液の量が、基板7に対する塗布器10の位置に応じて異なる。そこで、ポンプ30から、塗布液を一定量送り出すのではなく、一定の膜厚の塗膜を基板7上に形成するために必要となる量を送り出す制御(定量吐出制御)が行われる。つまり、ポンプ30から送り出される塗布液の量は、基板7の幅方向の変化(形状変化)に応じて変化する塗布液量(前記必要となる量)に相当する量とする。なお、基板7の前記幅方向は、塗布器10(吐出口11)の長手方向と一致する方向である。
【0044】
前記のようにしてポンプ30から送り出される塗布液の量は、制御装置50の記憶手段に記憶されているコンピュータプログラムに設定される。つまり、コンピュータプログラムには、塗布器10と基板7との相対的な位置と、その位置での塗布液の吐出量(供給量)とが対応付けられたデータが含まれており、このデータに基づいて、制御装置50がポンプ30及び移動手段20を動作させる。これにより、圧力センサ60の計測値を用いなくても、設定された量の塗布液が塗布器10から吐出され、一定の膜厚を基板7上に形成することが可能となる。なお、位置に基づく前記吐出量は、形成する塗膜に応じて予め求められた値であり、塗膜によって変わる。
【0045】
また、塗布動作開始の際には、前記事前処理が実行され、塗布器10内の塗布液の圧力は負圧にされており、そして、吐出口11から吐出される塗布液量についてポンプ30から塗布器10へ補給されるので、塗布器10内の圧力は、塗布動作の間、負圧のまま一定値に維持される。
【0046】
以上のように、制御モード(その1)では、塗布動作の際、制御装置50により、次の制御が行われる。つまり、塗布動作の際、吐出口11から吐出されることで消費される塗布液の量に応じた塗布液を、ポンプ30から塗布器10に供給するための制御が行われる。この制御により、塗布器10内の塗布液を負圧に維持しつつ、所望の均一厚さの塗膜を基板7(被塗布面8)上に形成するキャピラリー塗布の制御が容易となる。
【0047】
そして、
図5(B)に示すように、基板7の塗布終了位置(基板の縁部)に塗布器10(吐出口11)が到達すると、ポンプ30による塗布液の供給が停止される。
供給が停止されると、図示しないが、塗布器10を昇降アクチュエータ24によって上昇させ、第一バルブ71を閉じ、第三バルブ73を開く。そして、ポンプ30は、第一タンク35の塗布液を吸引して補充し、次の塗布に備える。また、塗布液が塗布された基板7は、ステージ9から取り外され、乾燥機に運ばれる。
【0048】
以上より、制御モード(その1)では、塗布により消費される塗布液をポンプ30により供給する制御が行われる。この制御の際、圧力制御ラインL2の第二バルブ72が閉の状態にあり、ポンプ制御ラインL1のポンプ30のみによる液供給となる。ポンプ30は、予め設定された塗布器10からの塗布液の吐出量に応じた分だけ、塗布器10に塗布液を供給する。この際、塗布器10へ供給する塗布液量は、毛細管現象及び塗布動作により基板7と塗布器10との間の塗布液のビード3に生じるせん断力によって塗布器10の外に引き出されようとする塗布液の量より少なめに設定されており、これにより、吐出を抑制しながらの供給となる。この結果、ポンプ30によって塗布液が供給されているが、塗布器10内には、塗布液を外へ引き出そうとする力が吐出口11より働き、塗布器10内の塗布液は負圧の状態に保たれる。
【0049】
〔制御モード(その2)〕
塗布器10から塗布液の初期出しを行う初期出し工程、塗布器10の吐出口11の拭き取りが行われる拭き取り工程、及び、基板7の塗布開始位置(基板7の縁部)の直上に吐出口11が位置するように塗布器10を移動させる準備移動工程は、前記制御モード(その1)における、初期出し工程(
図3(A))、拭き取り工程(
図3(B))、及び、準備移動工程(
図3(C))と同様に行われる。
また、準備移動工程が完了するまでの間において、前記事前処理を行う点も、制御モード(その1)と同様である。
そして、基板7に対する塗布液の付着を開始する液付け動作(液付け工程)が、開始される。この液付け動作は、
図4(A)〜(C)に示す制御モード(その1)の液付け動作(液付け工程)と同様である。
制御モード(その1)と同様である点についての説明は、ここでは省略する。
【0050】
液付け動作が完了すると、基板7と吐出口11との間に塗布液によるビード3が形成される(
図4(C)参照)。液付け動作が行われ、第二バルブ72を開いて第二タンク41と塗布器10とを連通させることで、吐出口11から吐出された塗布液が基板7に付着した後において、塗布器10内の塗布液の圧力が一定値(負圧)に保たれる。
第二タンク41の塗布液の圧力の影響によって、塗布器10内の塗布液の圧力が負圧になると、前記制御モード(その1)では第二バルブ72を閉じるが(
図5(A)参照)、制御モード(その2)では第二バルブ72は開状態を維持する(
図6(A)参照)。そして、塗布動作(塗布工程)が行われる。この工程では、移動手段20(リニアアクチュエータ23)による塗布器10の水平方向の移動を開始させると共に、第二タンク41の塗布液の圧力を制御することでこの第二タンク41と繋がっている塗布器10の塗布液の圧力を一定値(一定の負圧値)に保ち、更に、ポンプ30により塗布器10へ塗布液の供給が可能となる状態になる。つまり、移動手段20により塗布器10を水平方向に移動させながら、第二タンク41及び圧力調整器42による圧力制御と、ポンプ30による塗布液の供給が行われる供給制御とが、制御装置50によって行われる。
【0051】
塗布動作において行われる前記圧力制御は、第二タンク41の塗布液の圧力を設定値に保つことで、塗布器10の塗布液の圧力が所定(一定)の負圧値となるようにする制御である。
また、塗布動作において行われる前記供給制御は、圧力センサ60の計測値に基づくフィードバック制御である。すなわち、制御装置50は、圧力センサ60の計測値の変化を刻々と検出し、この変化量が閾値(許容値)を越えた場合、ポンプ30による塗布液の供給又は吸引を行う。具体的に説明すると、圧力センサ60による計測値が低下してその変化量が閾値を越えた場合、塗布液を供給する動作を行い、計測値が上昇してその変化量が閾値を越えた場合、塗布液を吸引する動作を行う。このように、制御装置50は、ポンプ30による塗布液の供給又は吸引の調整動作を行うことで、塗布器10の塗布液の圧力をより一層安定させる。
【0052】
また、制御モード(その2)においても、塗布器10の移動速度は一定である。ここで、基板7は円形であることから、前記のとおり(
図2参照)、塗布器10(吐出口11)には、基板7が直下に存在する部分と、基板7が直下に存在していない部分とが生じており、また、これらの部分それぞれの範囲は、基板7と塗布器10との相対的な位置に応じて変化する。そして、細長い吐出口11に対して、
図2(B)に示すように基板7が存在する部分では塗布液が吐出されるのに対して、
図2(C)に示すように基板7の無い部分では塗布液の吐出がされない。
したがって、塗布器10を一定速度で移動させて塗布液を円形の基板7に対して塗布し、一定の膜厚を基板7上に形成するためには、吐出口11から吐出させるべき塗布液の量が、基板7に対する塗布器10の位置に応じて異なる。そこで、ポンプ30から、塗布液を一定量送り出すのではなく、一定の膜厚の塗膜を基板7上に形成するために必要となる量を送り出す制御が行われる。更に、この制御モード(その2)では、前記のとおり、圧力センサ60の測定値に基づいてポンプ30による塗布液の供給又は吸引の制御が行われ、塗布器10内の圧力を調整している(一定としている)。つまり、ポンプ30から送り出される塗布液の量は、基板7の幅方向の変化(形状変化)に応じて変化する塗布液量(前記必要となる量)に相当する量と、圧力センサ60の測定値に基づく制御を行うことで塗布液を供給又は吸引する塗布液量との和になる。
前記制御モード(その1)では、ポンプ30から送り出される塗布液の量は、制御装置50に予め記憶されているコンピュータプログラムに設定されるが、制御モード(その2)では、ポンプ30から送り出される塗布液の量は、圧力センサ60の測定値に応じて刻々と変化することになる。
【0053】
以上のように、塗布動作の際、制御装置50により、次の制御が行われる。つまり、塗布動作の際、塗布器10内の塗布液を負圧に維持するために圧力付与装置40(第二タンク41及び圧力調整器42)によって塗布器10内の塗布液の圧力制御が行われると共に、圧力センサ60の測定結果に基づいて、ポンプ30による塗布液の供給及び吸引を含む調整制御が行われる。
なお、塗布動作開始の際には、前記事前処理が実行され、塗布器10の塗布液の圧力は負圧にされており、そして、塗布動作が開始されても、圧力付与装置40によって塗布器10の負圧が維持され、また、圧力センサ60の測定結果に基づいてポンプ30による制御も行われることから、塗布器10の塗布液の圧力は、負圧のまま一定値に維持される。
この制御により、塗布器10内の圧力(負圧)を一定に保つための圧力制御が行われ、均一厚さの塗膜を基板7(被塗布面8)上に形成するキャピラリー塗布の制御が容易となる。
【0054】
そして、本実施形態では、
図6(B)に示すように、ステージ9上には基板7の他に、この基板7の縁部(塗布終了側の縁部)に隣接してダミー板65が設けられており、塗布器10は、基板7に沿って移動して基板7の塗布終了位置(基板7の縁部)を通過し、ダミー板65に到達するまで、塗布液を吐出し続ける。そして、塗布器10(吐出口11)がダミー板65の所定位置に到達すると、ポンプ30による塗布液の調整(吐出)が停止されると共に、第二バルブ72を閉じる。
そして、図示しないが、塗布器10を昇降アクチュエータ24によって上昇させ、第一バルブ71を閉じ、第三バルブ73を開く。そして、ポンプ30は、第一タンク35の塗布液を吸引して補充し、次の塗布に備える。また、塗布液が塗布された基板7は、ステージ9から取り外され、乾燥機に運ばれる。
なお、ダミー板65を省略して制御モード(その1)のようにして塗布動作を終了させてもよく、また、制御モード(その1)においてダミー板65を採用してもよい。
【0055】
この制御モード(その2)では、ポンプ制御ラインL1の第一バルブ71と圧力制御ラインL2の第二バルブ72との双方を開の状態として制御が行われる。塗布動作しながら塗布器10に設けられている圧力センサ60により圧力の低下が検知されると、ポンプ30により塗布器10に微量の液供給を行うことで、塗布器10内の圧力を元の設定値に戻すことができる。この操作を短時間にフィードバック制御することで、塗布器10内の圧力を一定に保つことができる。
なお、ポンプ30による液供給量については、予測される塗布液の消費に応じた量としてもよいが、更に、設定した液供給量と実際の液消費量との差異が生じた際にフィードバック制御して調整した値とするのが好ましい。
【0056】
〔制御モード(その1)及び(その2)〕
前記構成を備えている塗布装置5では、制御装置50は、塗布条件に応じて、ポンプ制御ラインL1及び圧力制御ラインL2の一方又は双方を選択的に採用することができる。つまり、塗布条件に応じて、制御モード(その1)又は制御モード(その2)が択一的に選択される。塗布条件としては、例えば、基板7に形成する膜厚や、塗布速度(塗布器10の移動速度)等がある。
【0057】
制御モード(その1)及び(その2)それぞれにおいて行われる液付け動作(塗布開始時の着液方法)について更に説明する。
図4(A)に示すように、圧力制御ラインL2の第二バルブ72を閉、ポンプ制御ラインL1の第一バルブ71を開とした状態で、ポンプ30からの塗布液の供給により、塗布器10から微量な塗布液をゆっくりと吐出させる。この際、塗布器10内の圧力は負圧状態から正圧方向に変化する。そして、塗布器10から吐出された塗布液が基板7に付着すると(
図4(B)参照)、塗布器10と基板7との間をつなぐ塗布液(ビード3)が表面張力により塗れ広がろうとすることで、塗布器10から塗布液を引き出そうとする力が発生する。この力により、塗布器10内の圧力が負圧方向に変化する。このような塗布器10内の圧力変化を圧力センサ60により検知すると、圧力制御ラインL2及びポンプ制御ラインL1における切り替えを次のように行う。
【0058】
すなわち、塗布器10内の圧力変化をもとに、ポンプ30を停止し、圧力制御ラインL2の第二バルブ72を開とする(
図4(C)参照)。これにより、塗布器10内の圧力は予め圧力制御ラインL2(第二タンク41)により設定された圧力となる。この際、前記圧力変化からポンプ30による塗布液の供給停止までの時間、及び、前記圧力変化から第二バルブ72を開くまでの時間を、タイマーにより設定した所定の時間とする制御を行うことで、塗布開始時に塗布器10から吐出される塗布液の量を制御することができる。
第二バルブ72を開とした後、ポンプ30により塗膜厚制御を行う場合(制御モード(その1))、再び、第二バルブ72を閉とし、ポンプ30により塗布液の供給が行われる。圧力制御により塗膜厚制御を行う場合(制御モード(その2))、そのままの第二バルブ72を開の状態とし、設定圧力に応じた圧力一定制御が行われる。
【0059】
さらに、基板7の塗布開始部において塗布液を着液する際、ポンプ30により塗布液の供給を行うことで、毛細管現象により塗布器10の外に吐出されようとする塗布液の量を必要最小限に抑制している。また、塗布液の着液タイミングを塗布器10の圧力変化から検知することにより、少量の塗布液吐出でも確実に着液させることができ、安定した塗布開始部の膜厚を得ることが可能となる。
【0060】
以上のように、前記二つの制御モードそれぞれにおいて、制御装置50は、塗布動作の際、塗布器10内の塗布液を負圧に維持した状態でポンプ30から塗布液を塗布器10に供給するための制御を行う。この構成によれば、塗布動作の際、塗布器10に供給する塗布液の量をポンプ30により所定の量に制御することができ、また、塗布器10から基板7に吐出された塗布液の表面張力及び毛細管現象により吐出口11から塗布器10外に吐出されようとする塗布液の量を抑制することができる。したがって、吐出口11から塗布液を下向きに吐出して、所望の厚さ(均一厚さ)の塗膜を基板7(被塗布面8)上に形成することが可能となるキャピラリー塗布を行うことができる。
そして、このような塗布装置5が実行する塗布方法(キャピラリー塗布)を、製品の製造方法に適用することで、全面にわたって均一な膜厚を有する塗膜が形成された高品質の製品を、安定して製造することが可能となる。
【0061】
〔適用条件〕
以上説明した塗布装置5に適用可能となる塗布液としては、粘度が1〜100000mPa・Sであり、ニュートニアンであることが塗布性から好ましいが、チキソ性を有する塗布液にも適用できる。具体的に適用できる塗布液の例としては、カラーフィルター用のブラックマトリックス、RGB色画素形成用塗布液の他、レジスト液、オーバーコート材、柱形成材料等や、半導体用の粘着層用塗布液、平坦化用塗布液、保護膜用塗布液、レジスト液、着色層用塗布液、蛍光発光層用塗布液、TFT用ポジレジスト等、等がある。
基板(被塗布部材)7としては、シリコンウエハやガラスの他にアルミ等の金属板、セラミック板、フィルム等を用いてもよい。基板(被塗布部材)7の形状は、矩形形状であってもよく、また、円形等の非矩形形状であってもよい。更に複数の非矩形形状の基板を、塗布器10の長手方向に沿って並列配置することで、これら基板7に対して同時に塗布してもよい。さらに使用する塗布条件としては、塗布速度が0.1〜100mm/秒、より好ましくは0.5〜20mm/秒、塗布器10の吐出口11と基板7の被塗布面8との間の隙間(スリット間隙)は50〜1000μm、より好ましくは100〜500μm、塗布厚さはウエット状態で0.5〜100μm、より好ましくは1〜50μmである。
【0062】
〔実施例1〕
制御モード(その1)を採用した場合の実施例について説明する。
図1に示す塗布装置5により、直径φ100×厚さ0.53mmの円形シリコンウエハに対してポリイミドを塗布した。ポリイミドは粘度4400mPa・sで、固形分濃度19%のものであった。塗布器10として、吐出口11の塗布幅方向(長手方向、Y方向)の長さが150mm、吐出口11の間隙(X方向長さ)が0.4mmのものを用いた。この塗布器10の溜め部13の塗布液の圧力を測定するために圧力センサ60を設けた。
そして、ポンプ30による吐出量制御で、ウエット膜厚が40μmとなるよう、塗布幅変化に応じた吐出量を定め、塗布開始時の塗布器10内の圧力を−20Pa(ゲージ圧)、塗布速度0.5mm/秒の条件で塗布を行った。
塗布した基板7を、150℃のホットプレートで10分間乾燥させた。乾燥後に塗布状況を観察したところ、φ100の面領域全面に厚さ8μmの塗膜が形成されており、塗布外周部の2mm範囲を除いた直径96mm以内の範囲で、膜厚むらが±3%以下と良好であった。
【0063】
〔実施例2〕
制御モード(その2)を採用した場合の別の実施例について説明する。
図1に示す塗布装置5により、直径φ100×厚さ0.53mmの円形シリコンウエハに対してカラーレジストを塗布した。カラーレジストは粘度4mPa・sで、固形分濃度15%のものであった。塗布器10として、吐出口11の塗布幅方向(長手方向、Y方向)長さが150mm、吐出口11の間隙(X方向長さ)が0.2mmのものを用いた。この塗布器10の溜め部13の塗布液の圧力を測定するために圧力センサ60を設けた。
そして、定圧制御による吐出量制御として、塗布器10内の圧力変動の補正をポンプ30によって実施した。
塗布開始時の塗布器10内の圧力を−180Pa(ゲージ圧)、塗布速度2mm/秒の条件で、吐出圧の変動が閾値として5Pa以内となるようポンプ30についてフィードバック制御を行いつつ塗布動作を行った。
塗布した基板7について、25秒で65Paに到達する真空乾燥を60秒行ってから、120℃のホットプレートで10分間さらに乾燥させた。
乾燥後に塗布状況を観察したところ、φ100の面領域全面に厚さ800nmの塗膜が形成されており、塗布外周部の2mm範囲を除いた直径96mm以内の範囲で、膜厚むらが±3%以下と良好であった。
【0064】
本実施形態のように塗布器10(吐出口11)から塗布液を吐出する方向を下向きとする場合(下向きキャピラリー塗布の場合)、塗布器10内の塗布液を負圧にすることの意義は、次の(1)(2)にある。
(1)塗布器10内の塗布液が(自重によって)自由に吐出口11から流れ出ないようにするため。
(2)基盤7上に形成される膜厚を調整するため。
【0065】
なお、塗布液の吐出方向が上向き(斜め上向きを含む。)となるように塗布装置5を構成してもよい。この場合(上向きキャピラリー塗布の場合)図示しないが(
図1を参考にして説明すると)吐出口11が下向きの場合と同じ状態で、吐出口11とその上方の基板7との間に塗布液のビードを形成し、吐出口11付近(スリット状流路12)の塗布液が負圧となるようにする。この動作の際、圧力調整器42によりタンク41に加える圧力値は、吐出口11付近の塗布液が所定の負圧となることをもとに算出した圧力値であり、負圧でなくとも良い。そして、この状態で塗布動作を行う。つまり、塗布動作の際、塗布器10内の吐出口11付近の塗布液を負圧にしつつポンプ30から塗布液を塗布器10に供給するための制御が、制御装置50によって実行される。具体的には、吐出口11から吐出される塗布液の量に応じた塗布液をポンプ30から塗布器10に供給する制御を行う。つまり、前記制御モード(その1)に基づく塗布動作が行われる。そして、この制御装置50は、塗布器10内の吐出口11付近の塗布液を負圧に維持するために圧力付与装置40によって塗布器10内の塗布液の圧力制御を行うと共に、圧力センサ60の測定結果に基づいてポンプ30による塗布液の調整制御を行う機能も有している。つまり、前記制御モード(その2)に基づく塗布動作を行うこともできる。なお、この上向きキャピラリー塗布の場合、塗布器10内の吐出口11付近の塗布液を負圧にすることの意義は、前記(2)にある。
【0066】
〔付記〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
前記実施形態では、被塗布部材を枚葉状の基板7としたが、枚葉状ではなく連続した部材であってもよい。