(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
[前記基材の20℃における貯蔵弾性率/前記基材の前記第1ピークの温度より10℃高い温度における貯蔵弾性率]の比が9.0以上である請求項1又は2に記載のキャリアシート。
損失弾性率を貯蔵弾性率で除した値を損失係数とした際に、[前記基材の20℃における損失係数/前記基材の前記第1ピークの温度より10℃高い温度における損失係数]の比が0.75以下である請求項1〜3の何れか1項に記載のキャリアシート。
前記キャリアシートとして、前記接着剤層が電離放射線硬化性接着剤組成物を含むキャリアシートを用い、前記工程(3)と前記工程(4)との間に下記の工程(3.5)を有する、請求項6に記載のカット部材の製造方法。
(3.5)前記接着剤層に電離放射線を照射して、前記電離放射線硬化性接着剤組成物の硬化を進行させる工程。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[キャリアシート]
本発明のキャリアシートは、基材上に接着剤層を有するキャリアシートであって、前記基材は、測定温度0〜150℃、昇温速度10℃/分の条件で、示差走査熱量計により融解ピーク温度を測定した際に、20〜110℃の温度領域に少なくとも2つの融解ピークを有してなり、かつ、下記条件1を満たすものである。
<条件1>
前記測定で得られた融解曲線に対して、20℃と110℃との間を結ぶベースラインを引き、前記ベースラインと前記融解曲線との間で画定する面積をSとする。最も低温側の融解ピークを第1ピーク、第1ピークよりも高温側に位置する融解ピークのうち最も低温側の融解ピークを第2ピークとする。前記第1ピークと前記第2ピークとの間において、前記融解曲線の傾きが正から負に変化する温度のうちの最も低温側の温度を変曲温度とする。前記ベースラインに対して、前記変曲温度を通り温度軸に垂直な線Lを引き、前記融解曲線、前記ベースライン及び前記線Lで画定される面積のうち低温側の面積をS
1とする。S
1/Sが0.30以上の条件を満たす。
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
なお、本明細書において、「キャリアシートの接着剤層上に、少なくとも一方の面に凹凸を有する部材の凹凸を有する側の面を配置した積層体」のことを、単に「積層体」と称する場合がある。
また、本明細書において、「キャリアシートの基材の第1ピークの温度を超え、かつ第2ピークの温度を下回る温度で積層体を加熱圧着する工程」のことを、単に「加熱圧着工程」と称する場合がある。
【0014】
図1は、本発明のキャリアシート100の実施の形態を示す断面図である。
図1のキャリアシート100は、基材10上に接着剤層20を有している。
【0015】
[基材]
基材は、測定温度0〜150℃、昇温速度10℃/分の条件で、示差走査熱量計により融解ピーク温度を測定した際に、20〜110℃の温度領域に少なくとも2つの融解ピークを有してなり、かつ、上記条件1を満たすものである。
【0016】
キャリアシートの凹凸形状への追従性を良好にするためには、後述する接着剤層を軟化する手段も考えられる。
しかし、接着剤層の厚みは、カールを抑制する等の観点から、通常10〜20μmであり、部材の凹凸形状の段差が大きい場合には対応できない。また、接着剤層を過度に軟化させた場合、加熱圧着工程の際に接着剤層が積層体の周囲にはみ出しやすくなる。
このため、本発明では特定の基材を用いることにより、キャリアシートの凹凸形状への追従性を良好なものとしている。
【0017】
図2〜
図6は、実施例1〜3及び比較例1〜2のキャリアシートの基材を、測定温度0〜150℃、昇温速度10℃/分の条件で、示差走査熱量計により融解ピーク温度を測定した際の融解曲線である。
以下、「測定温度0〜150℃、昇温速度10℃/分の条件で、示差走査熱量計により融解ピーク温度を測定した際の融解曲線」のことを、単に「融解曲線A」と称する場合がある。
【0018】
図2〜
図6の融解曲線Aは、何れも、20〜110℃の温度領域に2つの融解ピークを有している。
20〜110℃の温度領域に融解ピークを有さない場合、キャリアシートの凹凸形状への追従性を良好にすることができない。また、20〜110℃の温度領域の融解ピークが1つのみの場合、加熱圧着工程の際に非融解部分が殆ど残存せず、加熱圧着工程の際に基材が過度に軟化してしまい、寸法精度が著しく低下してしまう。
キャリアシートの凹凸形状への追従性を良好にするためには、第一に、基材が20〜110℃の温度領域に少なくとも2つの融解ピークを有することが重要となる。ただし、基材が20〜110℃の温度領域に少なくとも2つの融解ピークを有していても、上記条件1を満たさなければ、キャリアシートの凹凸形状への追従性を良好にすることはできない。
【0019】
本発明のキャリアシートの基材は、上記条件1を満たすものである。以下、
図2を用いて条件1について説明する。
まず、融解曲線Aに対して、20℃と110℃との間を結ぶベースラインを引き、ベースラインと融解曲線Aとの間で画定する面積をSとする。
図2の一点鎖線がベースラインに相当する。
次に、最も低温側の融解ピークを第1ピーク、第1ピークよりも高温側に位置する融解ピークのうち最も低温側の融解ピークを第2ピークとして設定する。
図2の「a」が第1ピーク、「b」が第2ピークに該当する。
次に、第1ピークと第2ピークとの間において、融解曲線Aの傾きが正から負に変化する温度のうちの最も低温側の温度を変曲温度とする。
図2の「c」が変曲温度に該当する。
次に、ベースラインに対して、変曲温度を通り温度軸に垂直な線Lを引き、融解曲線A、ベースライン及び線Lで画定される面積のうち低温側の面積をS
1とする。
図2の破線が線Lに相当する。
図2のS
1/Sは0.39であり、S
1/Sが0.30以上であることを要求する条件1を満たしている。
【0020】
20〜110℃の温度領域に少なくとも2つの融解ピークを有することは、20〜110℃の温度領域に少なくとも2段階の相転移が生じていることを意味する。そして、S
1/Sが0.30以上であることは、基材の第1段階の相転移における融解熱量が大きいことを示している。言い換えると、S
1/Sが0.30以上であることは、基材の第1段階の相転移によって、キャリアシートが凹凸形状に対して良好な追従性を示すことを意味している。
一方、S
1/Sが0.30未満の場合、キャリアシートが凹凸形状に十分追従することができない。
【0021】
条件1において、S
1/Sは0.32以上であることが好ましく、0.35以上であることがより好ましく、0.37以上であることがさらに好ましい。
S
1/Sの上限は特に限定されないが、加熱圧着工程の際に基材が過度に軟化することを抑制する観点から、0.60以下であることが好ましく、0.50以下であることがより好ましく、0.45以下であることがさらに好ましい。
【0022】
基材は、第1ピークの温度が40〜70℃であることが好ましく、45〜65℃であることがより好ましく、50〜60℃であることがさらに好ましい。
積層体を加熱圧着する際の温度は、第1ピークの温度を超える温度である。したがって、第1ピークの温度が上記範囲であることにより、加熱圧着工程の作業性を良好にするとともに、加熱に要するコストを低減できる。
【0023】
基材は、第1ピークと第2ピークとの温度差が20℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましく、27℃以上であることがさらに好ましい。
第1ピークと第2ピークとの温度差が近い場合、加熱圧着工程において、第2ピークの影響により、基材が必要以上に軟化する場合がある。第1ピークと第2ピークとの温度差を上記範囲とすることにより、加熱圧着工程の際の第2ピークの影響を排除しやすくなり、寸法精度を良好にしやすくできる。
また、第1ピークと第2ピークとの温度差が大きいと、上記条件1を満たしにくくなる傾向がある。このため、第1ピークと第2ピークとの温度差は、45℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましい。
【0024】
また、基材は、[基材の20℃における貯蔵弾性率/基材の第1ピークの温度より10℃高い温度における貯蔵弾性率]の比が9.0以上であることが好ましく、11.5以上であることがより好ましく、14.0以上であることがさらに好ましい。
以下、[基材の20℃における貯蔵弾性率/基材の第1ピークの温度より10℃高い温度における貯蔵弾性率]の比のことを、「基材の貯蔵弾性率の比」と称する場合がある。
【0025】
基材の貯蔵弾性率の比が上記範囲であることは、加熱圧着工程時の温度での貯蔵弾性率が低い一方で、常温(20℃)での貯蔵弾性率が高い傾向にあることを意味している。
したがって、基材の貯蔵弾性率の比を上記範囲とすることにより、常温(20℃)でのキャリアシートのハンドリング性を良好にすることができ、ひいては、キャリアシートの接着剤層上に部材を配置した積層体を作製する工程、及び、積層体を任意の大きさにカットした後にキャリアシートを除去する工程の作業性を良好にすることができる。さらに、基材の貯蔵弾性率の比を上記範囲とすることにより、加熱圧着工程時に、キャリアシートが凹凸形状に追従しやすくすることができる。
基材の貯蔵弾性率の比の上限は特に限定されないが、20.0程度である。
【0026】
また、損失弾性率を貯蔵弾性率で除した値を損失係数とした際に、[基材の20℃における損失係数/基材の第1ピークの温度より10℃高い温度における損失係数]の比が0.75以下であることが好ましく、0.70以下であることがより好ましく、0.60以下であることがさらに好ましく、0.50以下であることがよりさらに好ましい。
以下、[基材の20℃における損失係数/基材の第1ピークの温度より10℃高い温度における損失係数]の比のことを、「基材の損失係数の比」と称する場合がある。
【0027】
損失係数は、材料が変形する際に材料が吸収するエネルギーの程度を表している。つまり、基材の損失係数の比が上記範囲であることは、加熱圧着工程時の温度領域で基材が多くのエネルギーを吸収する一方で、常温(20℃)では基材は多くのエネルギーを吸収しない傾向にあることを意味している。また、基材のエネルギーの吸収の程度は、基材を構成する材料の融解の程度に関連すると考えられる。
したがって、基材の損失係数の比を上記範囲とすることにより、常温(20℃)でのキャリアシートのハンドリング性を良好にすることができ、ひいては、キャリアシートの接着剤層上に部材を配置した積層体を作製する工程、及び、積層体を任意の大きさにカットした後にキャリアシートを除去する工程の作業性を良好にすることができる。さらに、基材の損失係数の比を上記範囲とすることにより、加熱圧着工程時に、キャリアシートが凹凸形状に追従しやすくすることができる。
【0028】
基材は、20〜110℃の温度領域に少なくとも2つの融解ピークを有してなり、かつ、上記条件1を満たすものであれば、その種類は特に限定されない。
基材としては、樹脂基材が好ましく、特に、アイオノマーを含む組成物から形成された基材(以下、「アイオノマー基材」と称する場合がある。)が好適である。
【0029】
アイオノマーとは、高分子鎖中のイオン基と、金属イオンとがイオン会合体を形成してなる高分子のことをいう。
アイオノマー基材を加熱すると2つの融解ピークを観察しやすい。アイオノマー基材を加熱した際の第1ピークは、イオン会合体の結合が緩む(イオン結晶が融解する)ことにより生じると考えられ、第2ピークは高分子鎖の結晶融解により生じると考えられる。
【0030】
アイオノマー基材は上記のように2つの融解ピークを観察しやすいものの、アイオノマー基材だからといって上記条件1を満たすとは限らない。むしろ、アイオノマー基材であっても上記条件1を満たさない場合が多い。
上記条件1を満たすためには、後述するように、中和度を高くすることが肝要である。
【0031】
アイオノマーの高分子鎖としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−アクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。アイオノマーの金属イオンとしては、Na
+、Zn
2+等が挙げられる。
アイオノマーは高分子鎖に存在する酸基を金属イオンで中和したものといえる。この中和の程度が大きいほど、イオン会合体の結合が緩む(イオン結晶が融解する)際に大きなエネルギーを要して第1ピークが大きくなり、ひいては、S
1/Sが大きくなり、条件1を満たしやすくなる。
【0032】
アイオノマーの第2ピークは、高分子鎖の物性に由来すると考えられる。このため、アイオノマーの第2ピークは、高分子鎖を構成する高分子の種類、高分子の分子量、高分子の結晶化度等により調整できる。
【0033】
基材の厚みは、凹凸形状への追従性、及び費用対効果のバランスの観点から、30〜200μmであることが好ましく、50〜150μmであることがより好ましく、80〜130μmであることがさらに好ましい。
【0034】
基材上には、後述する接着剤層との密着性を向上させるために、基材表面にコロナ放電処理を施したり、易接着剤層を設ける等の易接着処理を施してもよい。
【0035】
[接着剤層]
接着剤層は、部材を保持可能な接着力を有し、かつカット工程終了後に剥離可能なものであれば、特に制限することなく使用できる。
【0036】
接着剤層に含まれる接着剤としては、常温で部材を接着できる感圧接着剤(粘着剤)が好ましい。また、感圧接着剤の中でも、電離放射線硬化性接着剤組成物が好ましい。電離放射線硬化性接着剤組成物は、カット工程後に電離放射線を照射して硬化を進行させることにより、部材に対する接着力が低下し、積層体からキャリアシートを剥離する作業性を向上することができる。
なお、本明細書において、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能であり、さらには近紫外線(UV−A)も使用可能である。
【0037】
感圧接着剤としては、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ウレタン系接着剤、ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。
【0038】
電離放射線硬化性接着剤組成物としては、感圧接着性ポリマーと、電離放射線の照射により硬化し、部材に対する接着力を電離放射線照射前よりも低下させるように作用する電離放射線重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する組成物等が挙げられる。なお、感圧接着性ポリマー自体が電離放射線の照射で重合する官能基を含有する場合には、感圧接着性ポリマーと、電離放射線重合性化合物とは兼用が可能である。
【0039】
感圧接着性ポリマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、酢酸ビニル−エチレン共重合体系ポリマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体系ポリマー、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体系ポリマー、ウレタン系ポリマー、合成ゴム系ポリマー、ポリブチラール系ポリマー、エポキシ系ポリマー等が挙げられる。
【0040】
部材に対する接着力を電離放射線照射前よりも低下させるように作用する電離放射線重合性化合物としては、(メタ)アクリル基、ビニル基等の電離放射線重合性基を含有するものがあげられる。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0041】
光重合開始剤としては汎用のものを用いることができ、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物、ベンジルジメチルケタール等のケタール誘導体化合物などがあげられる。
【0042】
接着剤層の厚みは、カールの抑制、及び適切な保持力を確保する観点から、1〜100μmであることが好ましく、3〜50μmであることがより好ましく、5〜25μmであることがさらに好ましい。
【0043】
基材上に接着剤層を形成する手段としては、接着剤を含む接着層形成用塗布液を基材上に塗布、乾燥する手段が挙げられるが、一旦別の部材上に接着剤層を形成した中間部材を作製し、該中間部材と基材上とをラミネートする手段(転写法)が好適である。基材が第1ピーク温度を超える環境に置かれた場合、その後に基材を冷却しても、基材本来の物性が損なわれる場合がある(例えば第1ピークが出にくくなる)が、転写法によれば、基材本来の物性を維持しやすくできる。転写法に用いる別の部材としては、後述する離型フィルムが好適である。
【0044】
接着剤が電離放射線硬化性接着剤組成物の場合、接着剤層を形成する段階では電離放射線硬化性接着剤組成物の硬化を完了させず、積層体をカットした後に電離放射線を照射して、電離放射線硬化性接着剤組成物の硬化を進行させることが好ましい。このように電離放射線を照射することで、カットする段階での部材の保持力を良好にするとともに、積層体をカットした後のキャリアシートの剥離性を良好にすることができる。
上記効果を得るためには、接着剤層を形成する段階において電離放射線を全く照射しなくてもよいが、電離放射線硬化性接着剤組成物が完全硬化するためには不十分な電離放射線を照射して、電離放射線硬化性接着剤組成物を部分的に硬化させておき、積層体をカットした後に電離放射線を再照射して、電離放射線硬化性接着剤組成物の硬化を進行させることも好ましい。このように電離放射線硬化性接着剤組成物の硬化を複数段階に分けることで、接着剤層の凝集力を高めた上で、カットする段階での部材の保持力を良好にするとともに、積層体をカットした後のキャリアシートの剥離性を良好にすることができる。
【0045】
接着剤層上には、取り扱い性を向上するために、離型フィルムを積層しておくことが好ましい。離型フィルムとしては、シリコーン等の離型剤で表面処理したフィルムや、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。なお、上述したように、離型フィルムは転写法による接着剤層を形成する際の支持体として用いることもできる。
【0046】
本発明のキャリアシートは、加熱圧着時にキャリアフィルムが部材の凹凸形状に十分に追従することができ、部材の保持性を向上できるため、カット時に部材の位置がずれることを抑制し、カット部材の寸法精度が低下することを抑制できる。
また、本発明のキャリアシートは、凹凸への追従性が良好であるため、キャリアシートと凹凸との間に空気が入り込むことを抑制できる。
【0047】
[カット部材の製造方法]
本発明のカット部材の製造方法の実施の形態は、下記(1)〜(4)の工程を有するものである。
(1)上述した本発明のキャリアシートの接着剤層上に、少なくとも一方の面に凹凸を有する部材の凹凸を有する側の面を配置した積層体を作製する工程。
(2)キャリアシートの基材の第1ピークの温度を超え、かつ第2ピークの温度を下回る温度で積層体を加熱圧着する工程。
(3)加熱圧着した積層体を、基材が切断されないように、部材側から任意の大きさにカットする工程。
(4)積層体からキャリアシートを除去し、任意の大きさにカットされた部材を得る工程。
【0048】
図7は、本発明のカット部材の製造方法の実施の形態を示す工程図である。
工程(1)では、キャリアシート100の接着剤層20上に、少なくとも一方の面に凹凸を有する部材30の凹凸31を有する側の面を配置した積層体200を作製する。接着剤層20上に離型フィルムを有する場合、接着剤層20上に凹凸を有する部材30を配置する前に離型フィルムを剥離する。
凹凸を有する部材30としては、銅張積層板、積層セラミックチップコンデンサ等が挙げられる。
【0049】
工程(2)では、キャリアシートの基材10の第1ピークの温度を超え、かつ第2ピークの温度を下回る温度で積層体200を加熱圧着する。
加熱圧着時の温度は、第1ピークの温度(t
1)、及び第2ピークの温度(t
2)を基準として、t
1+0℃〜t
2−10℃の範囲とすることが好ましく、t
1+5℃〜t
2−20℃の範囲とすることがより好ましい。
加熱圧着の時間は、通常は10〜180秒程度である。
なお、工程(2)は、真空チャンバー等を用いて、真空環境下で行うことが好ましい。
【0050】
工程(3)では、加熱圧着した積層体200を、基材10が切断されないように、部材30側から任意の大きさにカットする。
工程(3)のカットの手法は、断裁刃によるカット、レーザーによるカット等が挙げられる。レーザーによるカット(レーザーカット)は、生産効率に優れる点で好適である。
なお、工程(3)において、接着剤層20の厚み方向の全部が切断された場合、工程(4)の際に、接着剤層20の一部が部材30側に残存する場合がある。このため、工程(3)では、接着剤層20の厚み方向の少なくとも一部が残存するようにして、部材30を切断することが好ましい。
【0051】
工程(4)では、積層体200からキャリアシート100を除去し、任意の大きさにカットされた部材30aを得る。
【0052】
本発明のカット部材の製造方法は、接着剤層が電離放射線硬化性樹脂組成物を含むキャリアシートを用い、工程(3)と工程(4)との間に下記の工程(3.5)を有することが好ましい。
(3.5)前記接着剤層に電離放射線を照射して、前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化を進行させる工程。
【0053】
上記工程(3.5)を行うことにより、工程(4)において積層体200からキャリアシート100を除去する際の剥離力が軽くなり、工程(4)の作業性を向上することができる。
【0054】
上記工程(3.5)を行う場合、工程(1)で用いるキャリアシートの接着剤層中の電離放射線硬化性接着剤組成物に対しては、電離放射線を全く照射しなくてもよいが、電離放射線硬化性接着剤組成物が完全硬化するためには不十分な電離放射線を照射して、電離放射線硬化性接着剤組成物を部分的に硬化させておくことが好ましい。このようにすることで、接着剤層の凝集力を高めた上で、カットする段階での部材の保持力を良好にするとともに、積層体をカットした後のキャリアシートの剥離性を良好にすることができる。
【0055】
本発明のカット部材の製造方法によれば、工程(2)の加熱圧着時にキャリアフィルムが部材の凹凸形状に十分に追従することができ、部材の保持性を向上できるため、カット時に部材の位置がずれることを抑制し、カット部材の寸法精度が低下することを抑制できる。また、本発明のカット部材の製造方法は、工程(2)の加熱圧着時にキャリアフィルムが部材の凹凸形状に十分に追従することができるため、キャリアシートと凹凸との間に空気が入り込むことを抑制できる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0057】
1.基材の準備、及び該基材の物性測定
実施例1〜3及び比較例1〜2で用いる基材として、以下の基材1〜5を準備した。
基材1:アイオノマー基材(商品名:ハイミラン1855、三井・デュポン ポリケミカル社製、厚み100μm)
基材2:アイオノマー基材(商品名:ハイミラン1707、三井・デュポン ポリケミカル社製、厚み100μm)
基材3:アイオノマー基材(商品名:RB0086、クラボウ社製、厚み100μm)
基材4:アイオノマー基材(商品名:ハイミラン1652、三井・デュポン ポリケミカル社製、厚み100μm)
基材5:ポリプロピレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体/ポリプロピレン、の3層基材(商品名:ポビック、アキレス社製、厚み100μm)
【0058】
2.基材の物性測定
上記基材1〜5について、予備昇温は行わずに、測定温度0〜150℃、昇温速度10℃/分の条件で、示差走査熱量計(商品名:EXSTRA DSC6200、日立ハイテクサイエンス社製)により融解ピーク温度を測定した。基材1〜5の融解ピーク曲線を
図2〜
図6に示す。また、該測定結果から算出した「第1ピークの温度」、「第1ピークと第2ピークとの温度差」、「S
1/S」を表1に示す。
さらに、上記基材1〜5について、動的粘弾性測定装置(商品名:EXSTRA DMS6100、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、18〜90℃における貯蔵弾性率E’及び損失係数tanδを測定し、基材の貯蔵弾性率の比、及び基材の損失係数の比を算出した。測定周波数は1Hzとし、歪みは0.1〜3.0%とした。結果を表1に示す。
【0059】
3.キャリアシートの作製
[実施例1]
厚み50μmの離型フィルム(三井化学東セロ社製、商品名:SPPET O1-50BU)の離型処理面上に、下記処方の接着剤層用塗布液を乾燥後の厚みが10μmとなるように、塗布し、100℃で60秒乾燥して接着剤層を形成した。次いで、接着層上に上記基材1をラミネートして、キャリアシートを得た。
【0060】
<接着剤層用塗布液>
(電離放射線硬化性接着剤組成物)
・アクリル系粘着剤と紫外線硬化成分との混合物(商品名:N4498、日本合成化学工業社製) 100質量部
・光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、BASF社製) 1.4質量部
・硬化剤(商品名:コロネートL、東ソー社製) 4質量部
(希釈溶剤)
・トルエン 50質量部
・メチルエチルケトン 50質量部
【0061】
[実施例2]
基材1を、基材2に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャリアシートを得た。
[実施例3]
基材1を、基材3に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャリアシートを得た。
[比較例1]
基材1を、基材4に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャリアシートを得た。
[比較例2]
基材1を、基材5に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャリアシートを得た。
【0062】
4.追従性の評価
実施例1〜3及び比較例1〜2のキャリアシートの離型フィルムを剥離しながら、キャリアシートの接着剤層と、表面にシボ加工が施された金属性の部材(平均表面粗さが4.0μm)のシボ加工面とを加熱圧着した積層体を得た。加熱圧着作業には、熱ラミネータ(熱ロールの径56mmφ、熱ロールの温度65℃、線圧120N/mm)を用い、搬送速度は0.5m/minとした。
加熱圧着した積層体を基材側から目視で観察し、気泡の多さを評価指標として、凹凸形状に対するキャリアシートの追従性をA〜Dの4段階で評価した。A及びB評価が合格レベルである。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
表1中、「E+08」は10の8乗、「E+07」は10の7乗、「E+06」は10の6乗を示す。
【0064】
表1の結果から明らかなように、S
1/Sが0.30以上である実施例1〜3のキャリアシートは、加熱圧着時の凹凸形状への追従性が良好であることが確認できる。
なお、加熱圧着した積層体の基材側から紫外線を照射し、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化を進行させたところ、実施例1〜3のキャリアシートは金属製の部材から容易に剥離することができた。