特許第6804882号(P6804882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804882
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】紫外線照射装置および真空容器装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20201214BHJP
   G01N 1/34 20060101ALI20201214BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20201214BHJP
   G01N 23/2251 20180101ALI20201214BHJP
   H01J 65/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H01J37/20 G
   G01N1/34
   G01N1/28 F
   G01N23/2251
   H01J65/00 D
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-129550(P2016-129550)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-6100(P2018-6100A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】岡野 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉川 光俊
(72)【発明者】
【氏名】神野 恭一
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 秀則
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和泉
【審査官】 小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/175029(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/011775(WO,A1)
【文献】 特開平07−226190(JP,A)
【文献】 特開昭52−093393(JP,A)
【文献】 特開平10−312765(JP,A)
【文献】 特開2006−164893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N23/00−23/2276
H01J37/20
61/50−65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器である試料室に配置される試料に対して紫外光を放射する紫外線照射装置であって、
一方向を向く紫外光放射面から紫外光を放射する紫外光源と、
前記紫外光放射面が前記試料室に配置された前記試料を向くように、前記紫外光源を支持し、試料表面に対する前記紫外光放射面の向きと、前記紫外光放射面の試料表面に対する距離間隔の少なくともいずれか一方を変更可能な調節機構を設けた支持部材とを備え、
前記紫外光放射面が、前記試料室内において、前記試料室内壁よりも前記試料に近い位置で露出し、
前記支持部材が、試料表面の一部領域に紫外光を照射するように、前記紫外光源を位置決め可能であることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記支持部材が、試料表面に対して斜め方向から紫外光を照射するように、前記紫外光源を支持することを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記紫外光源が、前記試料室内に設置され、
前記支持部材が、前記試料室の内壁と接続することを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記紫外光源が、前記紫外光放射面を底部とする有底筒状の外側管を有し、紫外光をランプ軸に沿って前記紫外光放射面から放射するエキシマランプであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記エキシマランプが、前記外側管を囲むとともに、導電性、紫外光反射特性、熱伝導性の少なくともいずれか1つを有するランプ取付部材を備えたことを特徴とする請求項4に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記ランプ取付部材が、導電性を有し、前記エキシマランプの外側電極として構成されることを特徴とする請求項5に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記ランプ取付部材が、その内面に紫外光反射部材を設けていることを特徴とする請求項5又は6に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記ランプ取付部材が、熱伝導性部材を有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項9】
前記ランプ取付部材を覆うように断熱性部材が設けられていることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項10】
前記支持部材が、試料表面に対する前記紫外光放射面の向きと、前記紫外光放射面の試料表面に対する距離間隔の両方を変更させることが可能な調節機構を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項11】
前記支持部材が、前記試料室の内壁に対する前記紫外光源の角度を調整可能なように、前記紫外光源を支持することを特徴とする請求項10に記載の紫外線照射装置。
【請求項12】
前記支持部材が、前記試料室の内壁に固定される固定部と、光源保持部を前記試料室の内壁に接続させる連結部とを有し、
前記紫外光源が、前記連結部に対する角度が調整可能に、前記連結部によって支持されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の紫外線照射装置。
【請求項13】
試料が配置される試料室に対し、一方向を向く紫外光放射面から紫外光を放射するエキシマランプを、前記紫外光放射面が前記試料を向くように設置し、
前記紫外光放射面が前記試料室の内壁よりも前記試料に近い位置で前記試料室の内部空間に露出する状態で、紫外光を前記紫外光放射面から試料に向けて照射させる試料汚染物除去方法であって、
調節機構によって、試料表面に対する前記紫外光放射面の向きと、前記紫外光放射面の試料表面に対する距離間隔の少なくともいずれか一方を変更して、試料表面の一部領域に紫外光を照射するように前記エキシマランプを位置決めすることを特徴とする紫外線照射による試料汚染物除去方法。
【請求項14】
試料が配置される真空容器と、
紫外光を、一方向を向く紫外光放射面から放射する紫外光源と、
前記紫外光放射面が前記真空容器に配置された試料を向くように、前記紫外光源を支持し、試料表面に対する前記紫外光放射面の向きと、前記紫外光放射面の試料表面に対する距離間隔の少なくともいずれか一方を変更可能な調節機構を設けた支持部材とを備え、
前記紫外光放射面が、前記真空容器内において、前記真空容器の内壁よりも前記試料に近い位置で露出し、
前記支持部材が、試料表面の一部領域に紫外光を照射するように、前記紫外光源を位置決め可能であることを特徴とする真空容器装置。
【請求項15】
請求項14に記載された真空容器装置を備えたことを特徴とする電子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型電子顕微鏡などによって観察、分析される試料に付着する汚染物を除去する装置に関し、特に、紫外線照射による汚染物除去に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡などを用いて試料(例えば、半導体集積回路、レチクルなど)を観察、分析する場合、試料を真空容器である試料室内に配置して観察、分析を行う。このとき、大気中での試料放置、真空容器からのガス拡散、あるいは一次電子の照射などに起因して、炭素化合物などの汚染物が試料表面に付着、堆積する。汚染物付着(コンタミネーション)が生じると観察、分析の障害となるため、汚染物を除去する必要がある。
【0003】
汚染物の除去方法としては、紫外光を試料に照射する方法が知られている(特許文献1参照)。そこでは、試料室とは別の真空容器を設けて試料を配置し、この真空容器に隣接するように紫外光を照射するランプユニットを配置する。そして、真空容器の照射窓を介して紫外光を試料室内に照射する。
【0004】
紫外線を試料表面に照射することにより、汚染物の分子結合が切断されるとともに、真空容器内に残留する酸素が活性化し、オゾンが発生することで、汚染物が除去される。試料を支持する支持台は昇降可能に設置されており、試料に応じてその高さ、すなわちランプユニットとの距離が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−195965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
試料室外部から照射窓を通じて試料室内を照射する場合、汚染物が付着していない部分にも紫外線を照射することにより、紫外光が減衰して汚染物除去昨日が低下する。また、試料表面の照射対象領域外や汚染物が付着していない部分にも、紫外光を照射することになり、不要なガス発生、試料損傷などが生じる。さらに、試料室内に設置された試料台などの部品に対しても紫外線が照射することとなり、不要なガス放出や部品劣化を生じさせる。
【0007】
したがって、紫外線照射による試料汚染物の除去処理において、汚染物除去機能の低下なく、試料損傷、不要ガス発生などを抑えることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の紫外線照射装置は、紫外光放射面から紫外光を放射する紫外光源と、試料が配置される試料室と、紫外光放射面が試料を向くように、紫外光源を支持する支持部材とを備え、紫外光放射面が、試料室内において、試料室内壁よりも試料に近い位置で露出している。
【0009】
紫外光源が試料室を全体的に放射するような照明の代わりに、所望する範囲に照射可能となる紫外光源照射の構成を提供することで、適切な範囲で紫外光を照射することが可能となる。例えば、汚染物除去部分のみ紫外光を照射することを考えれば、紫外光源を、試料表面の所定領域に紫外光を照射するように位置決めすることが可能である。
【0010】
紫外光源の配置は、放射面が試料室内部に曝け出していることを条件として任意である。例えば、紫外光源を前記試料室内に設置すればよく、支持部材が、試料室の内壁と接続するように構成することが可能である。
【0011】
紫外光源の構成としては任意の光源を適用することが可能であり、一方向に向く紫外光放射面を備えた光源を適用することが可能である。例えば、紫外光源は、紫外光放射面を底部とする有底筒状の外側管を有し、紫外光をランプ軸に沿って紫外光放射面から放射するエキシマランプによって構成することが可能である。
【0012】
このようなエキシマランプに対しては、紫外線照射中のランプ加熱、効率的な紫外線照射などを考慮し、外側管を囲むとともに、導電性、紫外光反射特性、熱伝導性の少なくともいずれか1つを有するランプ取付部材を備えるように構成することができる。ランプと試料との間に遮る部材が存在せず、ランプからの紫外光が直接試料表面に照射されるようにするために真空容器である試料室内部にランプを配設すると、真空により断熱されてランプが過熱状態となることによって発光効率が低下し、汚染物除去機能が低下する。そこで、導電性、紫外光反射特性、熱伝導性の少なくともいずれか1つ備えることにより、ランプ過熱状態を防ぐことができる。ランプ取り付け部材は、例えばハウジング、収容器など、ランプ部分を覆ったり収容するような部材で構成することが可能である。なお、エキシマランプ以外の光源についても、そのような取り付け部材を設けることが可能である。
【0013】
エキシマランプの構成を簡易化することを考慮すれば、ランプ取付部材を、導電性を有し、前記エキシマランプの外側電極として構成することが可能である。また、紫外光放射面から効率よく光を導出するため、ランプ取付部材にその内面に紫外光反射部材を設けてもよい。また、ランプの過熱を防ぐことを考慮し、ランプ取付部材に熱伝導性部材を設けてもよい。さらに、ランプ取付部材を覆うように断熱性部材を設けるようにしてもよい。
【0014】
支持部材の構成は任意であり、効果的に紫外光放射面を試料に向ける光源姿勢に調整できることが望ましい。支持部材において、試料表面に対する紫外光放射面の向きと、紫外光放射面の試料表面に対する距離間隔のうち少なくともいずれか一方を変更させることが可能な調節機構を設けることが可能である。
【0015】
例えば支持部材は、試料室の内壁に対する紫外光源の角度を調整可能なように、紫外光源を支持することができる。また、試料室の内壁に固定される固定部と、光源保持部を試料室の内壁に接続させる連結部とを備えた支持部材を構成し、紫外光源を、連結部に対する角度が調整可能に、連結部によって支持するようにしてもよい。
【0016】
本発明の他の態様における紫外線照射による試料汚染物除去方法は、試料が配置される試料室に対し、紫外光を紫外光放射面から放射するエキシマランプを、紫外光放射面が試料を向くように設置し、紫外光放射面が試料室の内壁よりも試料に近い位置で試料室の内部空間に露出する状態で、紫外光を紫外光放射面から試料に向けて照射させる。このような試料汚染物除去方法は、電子顕微鏡など試料室、真空容器を備えた様々な装置に適用可能である。
【0017】
本発明の他の態様における真空容器を備えた装置(真空容器装置)は、電子顕微鏡など試料室を備えた様々な装置に適用可能であって、試料が配置される真空容器と、紫外光を紫外光放射面から放射する紫外光源と、紫外光放射面が前記真空容器に配置された試料を向くように、紫外光源を支持する支持部材とを備え、紫外光放射面が、真空容器内において、真空容器の内壁よりも試料に近い位置で露出している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、試料の観察、分析などにおいて、試料汚染物を効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態である走査型電子顕微鏡の試料室を中心とした概略的構成を示した図である。
図2】エキシマランプを光放射面側から見た平面図である。
図3図2のIII−III’に沿ったエキシマランプの断面図である。
図4図3IV−IV’に沿ったエキシマランプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態である紫外線照射装置を備えた電子顕微鏡について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態である走査型電子顕微鏡の試料室を中心とした概略的構成を示した図である。図2は、エキシマランプを光放射面側から見た平面図である。
【0022】
走査型電子顕微鏡10は、電子銃、集束レンズ、走査用偏向器、対物レンズ(いずれも図示せず)などを備えた鏡筒20と、二次電子検出器30と、試料室40とを備え、試料室40には、観察対象となる試料(例えばレチクルや半導体回路など)50が支持台60に搭載されている。
【0023】
一次電子線を放出する鏡筒20は、その先端部20Bが試料室40の上壁40Aの中央部に嵌入した状態で取り付けられている。試料50から放出される二次電子を検出する二次電子検出器30は、上壁40Aを貫通して鏡筒先端部20Bの傍に取り付けられている。
【0024】
試料室40の下壁40Bには、試料室40内を真空排気するための真空ポンプ(図示せず)と繋がる排気管42が設けられている、排気管42により、試料室40は一次電子線、二次電子線が通過可能な高真空状態に維持された真空容器となる。
【0025】
試料室40に隣接する予備排気室45は、試料室40の側壁40Sに形成された開口部41を介して試料室40と繋がっており、仕切弁(図示せず)が開口部41を開閉する。予備排気室45の側壁に形成された開口部46によって試料40の出し入れが可能となり、開閉弁(図示せず)により開口部46を開閉する。また、予備排気室45の下壁には、真空排気するための真空ポンプ(図示せず)と繋がる排気管47が形成されている。
【0026】
鏡筒20内の電子銃から放出される一次電子ビームは、集束レンズ、対物レンズを介して試料50の表面50Sに集束され、走査用偏向器によって試料表面50Sの所定領域に対して走査される。走査によって試料表面50Sから放出される二次電子は、二次電子検出器30によって検出される。検出された二次電子信号に対して従来公知の画像処理を施すことにより、試料50の表面形状が画像化され、試料イメージがモニタ(図示せず)に表示される。
【0027】
試料室40内部には、筒型のエキシマランプ100が配置されており、試料室側壁40Sに取り付けられた支持部材120によって支持されている。誘電体バリヤ放電あるいは静電容量型放電によって発光するエキシマランプ100は、ここでは単体光源で構成されており、172nmの紫外光を光放射面105からランプ軸に沿って一方向に照射するスポット照射型ランプとして構成されている。
【0028】
エキシマランプ100は、鏡筒20からの電子ビーム照射、二次電子検出器30の二次電子検出の障害とならない上壁40Aの隅付近に配置されており、ここでは、光放射面105が試料表面50Sを向くように位置決めされている。すなわち、紫外光が試料表面50Sに対して斜め上方向から照射するようにエキシマランプ100が位置決めされている。
【0029】
エキシマランプ100を支持する支持部材120は、試料室側壁40Sに固定される固定部122と、連結部124とを備え、アルミニウムなどの金属など熱伝導性のある素材によって成形されている。支持部材120は、エキシマランプ100の試料室40内における位置、姿勢を調整可能なように、エキシマランプ100を支持する。
【0030】
具体的には、連結部124は、固定部122に対して取り付け角度調整可能に固定されており、軸B1にネジ(図示せず)を締め付けることによって固定される。一方、連結部124は、エキシマランプ100をその側面片側で保持し、軸B2にネジ(図示せず)を締め付けることによってエキシマランプ100が連結部124に固定される。
【0031】
したがって、2つの軸B1、B2回りに連結部124、エキシマランプ100の角度調整を行うことで、エキシマランプ100の試料室40内における姿勢、より具体的には光放射面105の試料表面50Sに対する角度およびその距離間隔が設定される。
【0032】
エキシマランプ100は、その外周部分に筒状のランプ取付部材110を備え、光放射面105とその反対側の封止部100Bを除いてエキシマランプ100の光源部分を試料室40の内部空間40Tに露出させないようにしている。ランプ取付部材110は、ここでは一対の半円筒状部材を締め付けネジ(図示せず)によって一体化することで構成されている。
【0033】
図3は、図2のIII−III’に沿ったエキシマランプの断面図である。図4は、図3のIV−IV’に沿ったエキシマランプの断面図である。
【0034】
エキシマランプ100は、石英ガラスなどの誘電材料から成る内側管130および外側管140を備える。外側管140は、平坦な光放射面105と、外側管縮径によって内側管130と溶着、形成された封止部100Bを有し、管内部に内側管130を収容する。
【0035】
内側管130の内壁中心付近には、Moなどの帯状内側電極120’が埋設されており、内側電極120は給電線120Lと接続されている。内側管130、外側管140から構成される発光管は、放電空間135を形成し、Xeなどの希ガスもしくは希ガスとハロゲンガスの混合ガスが放電空間135に封入されている。
【0036】
上述したエキシマランプ100のランプ取付部材110は、ここでは外側電極として構成されており、アース側に接続されている。ランプ取付部材110の内面は、アルミニウム膜などの薄膜状(箔状)の紫外線反射部材(図示せず)が設けられている。ランプ取付部材110は、アルミニウムや銅など、熱伝導性および導電性を有する金属などによって形成されている。
【0037】
エキシマランプ100は、図1に示す光源制御装置150によって点灯制御される。エキシマランプ100は、短時間の点灯/消灯を繰り返し行うことが可能であり、オペレータなどの入力操作に応じて点灯時間などを設定可能である。
【0038】
以下、紫外光照射による試料汚染物除去について説明する。
【0039】
エキシマランプ100は、連結部124の固定部122に対する取り付け角度およびエキシマランプ100に対する取り付け角度を調整することによって、所望の位置に位置決めされる。具体的には、試料表面50Sに対して所定領域に紫外線が照射するように、その光放射面105の試料表面50Sに対する角度および距離間隔を所望する角度、距離間隔が定められる。また、試料室40内のガスに酸素を含有させるようにしておく。
【0040】
エキシマランプ100の外側電極(ランプ取付部材)110、内側電極120に対して電圧が印加されると、放電空間135において誘電体バリヤ放電(あるいは静電容量型放電)が生じる。上述したように、ランプ取付部材110内面はアルミニウム膜が形成されているため、径方向に放射する紫外光はそのアルミニウム膜によって反射を繰り返し、その結果、紫外光がエキシマランプ100の光放射面105からランプ軸に沿って放出され、試料表面50Sの所定領域に照射される。
【0041】
エキシマランプ100が試料室40の内部空間40Tに配置されていることから、その光放射面105は内部空間40Tに露出している。すなわち、光放射面105は内部空間40Tに曝け出している。光放射面105と試料50との間に遮る部材が存在せず、紫外光が直接試料表面50Sに照射される。
【0042】
スポット照射型ランプであるエキシマランプ100を試料室40内の上壁40Aの隅付近に配置して紫外光を照射することにより、光放射面105と試料表面50Sの照射対象領域との間の空間に鏡筒先端部20Bなど他の試料室内部の部材が入り込むことがなく、紫外光は試料表面50Sの照射対象領域外に照射されない。
【0043】
エキシマランプ100は、適切な温度で点灯することによって所望の波長(ここでは172nm)の紫外線を照射することができる。エキシマランプ100が過熱状態になると、汚染物除去機能が低下する。また、ランプ過熱により、封止部100Bに熱膨張差に起因するクラックが発生し、ランプ破損の恐れが生じる。
【0044】
しかしながら、エキシマランプ100のランプ取付部材110、およびそれに連結する支持部材120(固定部122、連結部124)がいずれも熱伝導性を有するため、ランプ点灯によって生じた熱は、ランプ取付部材110、連結部124、固定部122を介して試料室内壁40Sに速やかに伝達され、エキシマランプ100の過熱が防止される。
【0045】
エキシマランプ100をランプ軸方向に沿って一様放電させるためには、ランプ軸方向に沿って電気抵抗の影響を考慮する必要がない程度まで、内側電極120と外側電極110の導電率を高める(電気抵抗を小さくする)必要がある。本実施形態では、ランプ取付部材110を外部電極として構成し、内側電極120とランプ軸に沿って全体的に等距離間隔で対向しているため、紫外線照度が電気抵抗増大によって低くなるようなことがなく、紫外線照度が高められた状態になっている。
【0046】
紫外線が試料表面50Sの所定領域に照射すると、活性酸素およびオゾンが、試料室40に残存する酸素によって試料表面50Sの近傍に生成し、また、紫外線照射によって汚染物の分子結合が切断される。この光分解作用によって分解された炭化水素などの分子が活性化酸素、オゾンと反応し、水、二酸化炭素となって除去される。
【0047】
紫外線をスポット照射している間、エキシマランプ100の光放射面105から放射される紫外光は、鏡筒先端部20B、二次電子検出器30など試料室40内部にある機器、部材などに照射されない。そのため、不必要なガス放出や、部材劣化などが生じない。そして、エキシマランプ100の短時間照射を繰り返し行うことにより、活性酸素、オゾン生成を精密に制御し、照射所定領域に必要な時間だけ紫外線照射を行う。
【0048】
その結果、必要な量を超える活性酸素、オゾン発生によって不要なガス放出、試料表面50Sの汚染物が堆積していない部分の損傷などを抑えながら、汚染物が除去される。
【0049】
ランプ取付部材については、その形状は円柱状に限定されない。また、エキシマランプ保持構造についても、試料室内壁に対する角度あるいはエキシマランプに対する角度のどちらか一方が角度調整可能にエキシマランプを支持するように構成してもよく、他の支持構造で試料室内壁に機械的、熱的、電気的に接続させてもよい。
【0050】
ランプ取付部材の紫外光反射構造に関しては、ランプ取付部材内面にアルミ膜などの紫外光反射部材を設ける代わりに、ランプ取付部材内面を鏡面状に形成し、あるいは、外側電極の内周面を鏡面仕上げにすることも可能である。また、ランプ取付部材の導電性に関しては、ランプ取付部材内周面に設けた紫外光反射部材とランプ取付部材との間に外側電極を設けるようにしてもよい。熱伝導性、導電性、反射特性いずれか1つをもつようにランプ取付部材を設けることが可能である。
【0051】
ランプ熱の放熱に関しては、試料室内壁に熱を伝達させる代わりに、試料室外部へ熱を伝達させるように構成してもよい。さらに、ランプ取付部材の外周を断熱部材で覆うことによって、試料室内の部材が加熱されてガス放出するのを防ぐように構成してもよい。断熱部材としては、例えば、ポリイミド、ガラス、セラミックスなどがある。
【0052】
試料表面に対する照射領域に関しては、その一部領域を照射領域とせずに試料全体を照射領域にすることも可能である。スポット照射型エキシマランプの紫外光照射角度、試料表面との距離間隔を調整することにより、試料のサイズなどに応じて照射領域を設定すればよい。また、スポット照射型エキシマランプのサイズ、光放射面のサイズを調整することでも照射領域を適宜変更することが可能である。
【0053】
エキシマランプ以外の紫外光放射光源を使用することも可能であり、光放射面から一定方向に照射するスポット照射型光源を用いることが可能である。さらに、エキシマランプなどの光源全体を試料室内部に配置する構成に限定されず、少なくとも光放射面が試料内壁よりも試料に近く(試料室壁面よりも内部空間側に突出し)、試料空間内部で露出、曝させるように構成すればよい。その光放射面が試料室内壁(照射窓など)に形成される構成ではないことで、光放射面を任意の位置に定めることが可能となる。
【0054】
本実施形態では、試料室内部にエキシマランプを配置する電子顕微鏡で構成されているが、試料室とは別に前処理室、あるいは専用紫外線照射室などを設け、そこで紫外線照射を行うように構成してもよく、また、電子顕微鏡以外の装置であって、試料を観察、分析、あるいは計測可能な装置や、紫外線照射処理やオゾン処理を行う真空容器装置に適用することも可能である。
【0055】
このように本実施形態によれば、走査型電子顕微鏡10の試料室40内に、スポット照射型のエキシマランプ100を配置し、固定部122、連結部124から成る支持部材112によって試料室側壁40Sに取り付ける。そして、その光放射面105が試料表面50Sを向くように、エキシマランプ取り付け位置を調整する。光放射面105から放出した紫外光は、試料表面50Sの所定領域を照射する。試料損傷、試料室内の部材劣化、不要なガス放出を防ぐとともに、簡易な構成であるため、試料室周辺のスペースに制限のある電子顕微鏡などの装置、機器に対し、装備することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
10 走査型電子顕微鏡
40 試料室
50 試料
50S 試料表面
100 エキシマランプ(紫外光源)
105 光放射面(紫外光放射面)
110 ランプ取付部材
120 支持部材
122 固定部
124 連結部
図1
図2
図3
図4