(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板に実装(特に表面実装)される同軸コネクタは、主に同軸コネクタにおいて外周側に位置する筒状の外部導体が、基板に形成された導体パターンに半田により接合されることによって、基板上に固定される。同軸コネクタと基板との高い接合強度を確保するためには、接合後において、外部導体と導体パターンとの接合部分に適切な量の半田が存在していることが望ましい。具体的には、導体パターンの表面とそれに対向する外部導体の端面との間に適切な量の半田が介在していることが望ましく、かつ導体パターンの表面から、外部導体の外周面において外部導体の端面に近い部分にかけて、適切な大きさのフィレットが形成されていることが望ましい。フィレットは、外部導体を導体パターンに半田で接合すべく接合部分を加熱した際に、導体パターンの表面に塗布された半田が溶融して外部導体の表面に拡がることによって形成される。
【0006】
ところで、同軸コネクタの外部導体が基板の導体パターンに半田で接合された後に、当該基板が再び加熱される場合がある。例えば、基板の両面に部品を実装する場合や、一度実装した部品の半田不良を修正する場合等である。外部導体が導体パターンに半田で接合された後に基板が再び加熱されると、外部導体と導体パターンとの接合部分に存在する半田が再び溶融し、当該半田が外部導体の表面へ過剰に拡がることがある。この結果、当該接合部分に存在する半田の量が減り、同軸コネクタと基板との接合強度が低下することがある。
【0007】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、外部導体が基板の導体パターンに半田で接合された後に基板が再び加熱されても、基板との接合強度を維持することができる同軸コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の同軸コネクタは、外部導体と、外部導体の内側に設けられた中心導体とを備えた同軸コネクタであって、外部導体は、筒状の外部導体本体と、外部導体本体における軸方向一側に形成され、相手コネクタと脱着可能に嵌合する嵌合部と、外部導体本体における軸方向他側に形成され、絶縁部材を介して中心導体を支持する支持部と、
外部導体本体における軸方向他側に形成され、外部導体本体における軸方向他側の外周面よりも径方向に張り出した張出部と、外部導体本体の軸方向において張出部よりも他側に位置し、外部導体本体における軸方向他側の端
面から
外部導体本体における軸方向他側に突出し、外部導体を基板の表面に形成された導体パターンに半田により固定する固定部と、
張出部の外周面に張出部の全周に亘って形成され、固定部の突出端側の端面と比較して半田濡れ性が低く、固定部から外部導体本体へ向かう半田の進行を抑える第1のバリア部とを備えている。
【0009】
本発明のこの態様によれば、外部導体が基板の導体パターンに接合された後に基板が再び加熱された場合でも、外部導体を基板の導体パターンに固定している半田が外部導体本体の外周
面へ過剰に拡がって進行することを第1のバリア部により抑止することができる。これにより、外部導体と導体パターンとの接合部分に存在する半田の量が減ることを抑制することができ、同軸コネクタと基板との接合強度の低下を抑えることができる。
【0010】
また、上述した本発明の同軸コネクタにおいて、
固定部の突出端側の端面、および固定部において少なくとも外部導体の外周側を向いた周面は、基板の表面に形成された導体パターンに塗布された半田を付着させる面であることが好ましい。
【0011】
また、上述した本発明の同軸コネクタにおいて、外部導体本体における軸方向他側の端面に第2のバリア部を形成してもよく、また、外部導体本体における軸方向他側の内周面に第3のバリア部を形成してもよく、また、固定部の内周面に第4のバリア部を形成してもよい。
【0012】
また、上述した本発明の同軸コネクタにおいて、第1のバリア部を、外部導体本体の軸方向他側の外周面において軸方向他側の縁から軸方向一側へ離れた位置に形成してもよい。
【0013】
また、上述した本発明の同軸コネクタにおいて、外部導体本体における軸方向他側の端面または軸方向他側の外周面に2個の固定部を形成し、2個の固定部を外部導体本体の径方向に互いに離間して配置してもよい。また、上述した本発明の同軸コネクタにおいて、外部導体本体における軸方向他側の端面または軸方向他側の外周面に、4個の固定部を周方向に間隔を置いて形成してもよい。また、上述した本発明の同軸コネクタにおいて、固定部を、外部導体をその軸方向他側から見たときにC字状、U字状またはコ字状となるように形成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、同軸コネクタの外部導体が基板の導体パターンに半田で接合された後に基板が再び加熱されても、同軸コネクタと基板との接合強度を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
図1ないし
図4は、本発明の第1の実施形態の同軸コネクタ1を示している。詳しくは、
図1、
図2および
図3は同軸コネクタ1を横斜め上方、横斜め下方および下方から見た状態をそれぞれ示している。
図4は
図3中の矢示IV−IV方向から見た同軸コネクタ1および基板2の断面を示している。また、
図5は、
図4中の同軸コネクタ1の外部導体10のみを示している。以下、説明の便宜上、基板2を水平に置き、基板2の上面に同軸コネクタ1を実装する場合を例にあげて説明する。
【0017】
図1ないし
図4に示すように、同軸コネクタ1は、その軸線が基板2(
図4参照)の表面と垂直となるように基板2に表面実装される表面実装型の同軸コネクタである。相手コネクタを同軸コネクタ1に基板2の上方から差し込むことにより、相手コネクタと、基板2に形成された回路との間の電気的接続を行うことができる。同軸コネクタ1は、外部導体10、中心導体25および絶縁部材29を備えている。
【0018】
外部導体10は、
図1に示すように円筒状に形成されている。また、外部導体10は、例えば黄銅またはリン青銅等の金属材料に切削加工を施し、当該切削加工を施した金属材料にニッケルめっきおよび金めっきを施すにより形成されている。外部導体10の大きさは限定されないが、例えば直径5〜6mm程度、高さ7〜8mm程度である。外部導体10は、同軸コネクタ1の外殻、接地等の電気的接続手段、および同軸コネクタ1を基板2に固定する手段として機能する。
【0019】
外部導体10は円筒状の外部導体本体11を備えている。外部導体本体11における軸方向一側、すなわち本実施形態において外部導体本体11の上部には、相手コネクタと脱着可能に嵌合する嵌合部12が形成されている。嵌合部12内には、その上方から、相手コネクタを差し込むことができる。
図4に示すように、嵌合部12の内周面にはコネクタ係止部13が形成されている。コネクタ係止部13は、嵌合部12の内周面の一部に全周に亘って形成された凹部または凸部により形成されている。嵌合部12内に差し込まれた相手コネクタはコネクタ係止部13により係止される。
【0020】
外部導体本体11における軸方向他側、すなわち本実施形態において外部導体本体11の下部には、絶縁部材29を介して中心導体25を支持する支持部14が形成されている。支持部14には、絶縁部材29を固定する絶縁部材係止部15が形成されている。
【0021】
嵌合部12と支持部14との間に位置する外部導体本体11の内周面には境界部16が形成されている。境界部16は、外部導体本体11の内周面の一部に全周に亘って形成された凸部により形成されている。なお、境界部16の中心側には間隙を介して中心導体25を通す空間が確保されている。嵌合部12に差し込まれた相手コネクタの外側の導体は、嵌合部12の内周面および境界部16の上面に接触する。
【0022】
外部導体本体11の下部には、
図1に示すように、当該部分の外周面よりも径方向に張り出した張出部17が形成されている。本実施形態において、張出部17は外部導体本体11の下端部に配置されている。張出部17の外形は直方体状である。張出部17の外周部には、それぞれ前方、後方、左方および右方を向いた4個の平面が形成されている。また、
図3に示すように、同軸コネクタ1を下方から見た場合、張出部17の外形は略正方形であり、この正方形の一辺の長さ寸法は、外部導体本体11の外径寸法と等しい。このため、同軸コネクタ1を下方から見た場合、張出部17のうち、外部導体本体11の下部の外周面よりも径方向に張り出している部分は、張出部17の4個の角部のみである。
【0023】
外部導体本体11における下端側には、
図2に示すように、外部導体10を基板2の表面に形成された導体パターン3に半田により固定する固定部18が形成されている。なお、導体パターン3には配線パターン、パッド等が含まれる。固定部18は、外部導体本体11の下端面または下部の外周面から下方に向かって突出している。本実施形態の同軸コネクタ1では、外部導体本体11の下部に張出部17が配置されており、固定部18は張出部17の下端面における外周部から下方に向かって突出している。なお、張出部17の下端面における外周部は、外部導体本体11の下端面または下部の外周面に相当する。このように外部導体本体11から下方に突出した固定部18は、外部導体本体11の下端面を基板2から離す機能をも有している。
【0024】
固定部18は2個形成されており、これら固定部18は外部導体本体11の径方向に互いに離間して配置されている。また、これら固定部18は、
図3に示すように、外部導体本体11の軸線と交わりかつ径方向に伸長する直線Lを基準に線対称となるように位置および概ねの形状が設定されている。また、
図4に示すように、各固定部18の下端面は、基板2の導体パターン3の表面に塗布された半田と接触する面となっている。また、各固定部18の周面は、導体パターン3の表面に塗布された半田により形成されたフィレット5(
図6参照)が接触する面となっている。
【0025】
このように外部導体本体11に張出部17を形成し、張出部17の下端面における外周部に固定部18を形成することにより、同軸コネクタ1を基板2上で支持する範囲を大きくすることができ、同軸コネクタ1の基板2上における姿勢を安定させることができる。一方、同軸コネクタ1を下方から見た場合の張出部17の形状を正方形とし、この正方形の一辺の長さ寸法を外部導体本体11の直径寸法と等しくしたことにより、基板2上において同軸コネクタ1が占有する面積を小さくすることができる。また、2つの固定部18を外部導体本体11の径方向に互いに離間して配置することにより、基板2上に形成された他の導体パターン(例えば配線部分)を2つの固定部18間に通すことができる。これにより、基板2上に実装する部品または導体パターン3の配置の自由度を高めることができ、または、基板2上における部品の実装密度を高めることができる。また、2つの固定部18を互いに離すことで、固定部18間の隙間を介して半田付けの良否を容易に確認することが可能になる。また、
図3に示すように、同軸コネクタ1を下方から見た場合、正方形の張出部17の1つの角部、および固定部18において張出部17の当該角部に対応する部分には、面取り部19が形成されている。面取り部19を形成することにより、同軸コネクタ1の実装時に、基板2上における同軸コネクタ1の周方向の向きを容易に定めることができる。
【0026】
一方、
図1に示すように、同軸コネクタ1において、外部導体本体11の下部の外周面には、半田の進行を抑える第1のバリア部21が形成されている。具体的には、本実施形態の同軸コネクタ1においては、外部導体本体11の下部に張出部17が形成されおり、第1のバリア部21は、張出部17の外周面に形成されている。第1のバリア部21は張出部17の全周に亘って形成されている。すなわち、張出部17において前方、後方、左方および右方を向いたそれぞれの面、および面取り部19が形成された面に形成されている。また、第1のバリア部21は、張出部17のこれらの面において、下端の縁から上端の縁に至る全面に亘って形成されている。また、
図2または
図3に示すように、外部導体本体11の下端面において固定部18が形成されていない部分の全面には、半田の進行を抑える第2のバリア部22が形成されている。さらに、
図5に示すように、外部導体本体11の下部の内周面には、半田の進行を抑える第3のバリア部23が全周に亘って形成されている。なお、
図1ないし
図5に示す同軸コネクタ1おいて、第1のバリア部21、第2のバリア部22、または第3のバリア部23が形成された部分には、格子状の模様を付している(
図6、
図9、
図10、
図11においても同様である)。
【0027】
第1のバリア部21、第2のバリア部22および第3のバリア部23は、外部導体10の他の部分の表面と比較して半田濡れ性が低い。具体的には、本実施形態では、第1のバリア部21、第2のバリア部22および第3のバリア部23においてはニッケルめっきが露出しており、外部導体10の他の部分の表面においては金めっきが露出している。すなわち、第1のバリア部21、第2のバリア部22および第3のバリア部23にはニッケルバリアが形成されている。第1のバリア部21、第2のバリア部22および第3のバリア部23は、外部導体10の他の部分の表面と比較して半田が付着しにくい。
【0028】
なお、第1のバリア部21は、外部導体本体11の下部の外周面(張出部17の外周面)に加え、またはこれに代えて、固定部18の外周面において固定部18の下側の縁から上方へ離れた部分に形成してもよい。すなわち、固定部18の外周面において固定部18の下端面に近い部分は、半田(フィレット)を接触させるためにバリア部の形成を避けるべきであるが、その部分よりも上方の部分であれば、バリア部を形成してもよい。
【0029】
他方、中心導体25は、
図4に示すように、外部導体10の内側に設けられている。中心導体25は、棒状の外形を有し、例えば黄銅またはリン青銅等の金属材料にニッケルめっきおよび金めっきを施すにより形成されている。中心導体25の上端部には、相手コネクタの中心導体と接触する接触部26が形成されている。また、中心導体25の下端部には、基板2に形成された導体パターン4に接続される接続部27が形成されている。中心導体25において接触部26と接続部27との間に、ニッケルバリア等の、半田の進行を抑えるバリア部を形成してもよい。なお、電気的に見た場合、例えば、外部導体10の固定部18が接合される導体パターン3は、基板2に形成された回路の接地経路の一部であり、中心導体25が接続される導体パターン4は、基板2に形成された回路の信号経路の一部である。また、絶縁部材29は、樹脂等の絶縁材料により形成されている。絶縁部材29は外部導体10の支持部14に固定され、中心導体25は絶縁部材29に固定されている。
【0030】
本実施形態の同軸コネクタ1によれば、外部導体10が基板2の導体パターン3に接合された後に基板2が再び加熱されても、外部導体10の固定部18と基板2の導体パターン3とを接合している半田が過剰に拡がることを第1のバリア部21、第2のバリア部22および第3のバリア部23により抑止することができる。具体的には、固定部18と導体パターン3とを接合している半田が、外部導体本体11の外周面に拡がって上方へ進行することを、第1のバリア部21により防止することができる。また、固定部18と導体パターン3とを接合している半田が、外部導体本体11の下端面に拡がることを、第2のバリア部22により防止することができる。また、固定部18と導体パターン3とを接合している半田が、外部導体本体11の内周面に拡がって上方へ進行することを、第3のバリア部23により防止することができる。したがって、基板2の再加熱によって、固定部18と導体パターン3とを接合している半田の量が減ることを抑制することができ、これにより、同軸コネクタ1と基板2との接合強度が低下することを抑えることができる。よって、例えば、相手コネクタを同軸コネクタ1から引き抜いた際に、同軸コネクタ1が基板2の導体パターン3から剥がれることを防止することができ、または、外部導体10と導体パターン3との間の電気的接続に不良が生じることを防止することができる。
【0031】
ここで、
図6は、基板2上に実装された本実施形態の同軸コネクタ1において、固定部18と導体パターン3とが半田により接合されている部分を示している。また、
図6中の二点鎖線Hは、第1のバリア部21、第2のバリア部22および第3のバリア部23の最下位置を示している。
図6に示すように、固定部18と導体パターン3とを接合している半田は、二点鎖線Hよりも上側に拡がっていない。この結果、固定部18と導体パターン3との接合部分には、適切な量の半田が存在している。具体的には、互いに対向する固定部18の下端面と導体パターン3の表面との間は適切な量の半田で満たされており、かつ導体パターン3の表面と固定部18の周面との間には、適切な大きさのフィレット5が形成されている。本実施形態の同軸コネクタ1によれば、基板2が再び加熱されても、固定部18と導体パターン3との接合部分の半田の拡がり(半田上がり)が、第1のバリア部21、第2のバリア部22および第3のバリア部23により抑止される。したがって、基板2が再び加熱されても、さらには基板2の加熱が数回繰り返されても、
図6に示すような、固定部18と導体パターン3との接合部分に適切な量の半田が存在している状態を保持することができ、それゆえ、同軸コネクタ1と基板2との高い接合強度を保持することができる。
【0032】
一方、
図7は、基板2上に実装された比較例による同軸コネクタ91において、固定部93と導体パターン3とが半田により接合されている部分を示している。比較例による同軸コネクタ91は、外部導体92のいずれの箇所にも、半田の進行を抑えるバリア部が形成されていない。その結果、基板2が再び加熱されることによって(または基板2の加熱が数回繰り返されることによって)、固定部94と導体パターン3との接合部分の半田が、外部導体本体93の外周面、内周面および下端面に拡がっており、それゆえ、固定部94と導体パターン3との接合部分にはわずかな半田しか残っていない。具体的には、固定部94の下端面と導体パターン3との表面との間の半田が少なくなり、またはフィレット5の大きさも非常に小さくなっている。この状態では、同軸コネクタ91と基板2との接合強度はかなり低下している。本実施形態の同軸コネクタ1によれば、このような状態となることを防止することができる。
【0033】
また、本実施形態の同軸コネクタ1のバリア部による上記半田拡散抑制作用の効果は、同軸コネクタが表面実装型の同軸コネクタである場合に特に顕著となる。すなわち、表面実装型の同軸コネクタは、リードを基板のスルーホールに挿入して半田付けするディップ型の同軸コネクタと比較して、接合部分に付着させることができる半田の量が少ない。それゆえ、基板の再加熱によって接合部分の半田が拡がると、接合部分に残る半田の量が極めて少なくなり、当該同軸コネクタと基板の導体パターンとの十分な接合強度を確保することが困難になる。本実施形態の同軸コネクタ1によれば、上記バリア部により、接合部分の適切な半田の量を維持し、同軸コネクタと基板の導体パターンとの十分な接合強度を確保することができる。
【0034】
また、本実施形態の同軸コネクタ1のバリア部による上記半田拡散抑制作用の効果は、同軸コネクタが小型である場合に特に顕著となる。すなわち、小型の同軸コネクタの場合、外部導体と導体パターンとの接合部分の面積が小さく、それゆえ接合部分の半田の量が少なくなる。それゆえ、基板の再加熱によって接合部分の半田が拡散して接合部分の半田の量が減ると、同軸コネクタと基板の導体パターンとの十分な接合強度を確保することが困難になる。本実施形態の同軸コネクタ1によれば、上記バリア部により、接合部分の適切な半田の量を維持し、同軸コネクタと基板の導体パターンとの十分な接合強度を保持することができる。
【0035】
図8は同軸コネクタ1の製造方法を示している。当該製造方法は次の通りである。まず、
図8(1)に示すように、黄銅、リン青銅等の棒状金属材を切削して外部導体10の形状を有する外部導体形成体31を形成する(形状形成工程)。次に、
図8(2)に示すように、外部導体形成体31の全面(外周面、内周面および各端面等)にニッケルめっきを施し、外部導体形成体31の全面をニッケル32で被覆する(下地めっき工程)。次に、
図8(3)に示すように、ニッケルめっきを施した外部導体形成体31の全面(外周面、内周面および各端面等)に金めっきを施し、外部導体形成体31の全面を金33で重ねて被覆する(本めっき工程)。次に、
図8(4)に示すように、金めっきを施した外部導体形成体31において、第1のバリア部21、第2のバリア部22および第3のバリア部23にそれぞれ対応する部分以外の部分に金めっき保護剤34を付ける(保護剤付加工程)。次に、金めっき保護剤34を付けた外部導体形成体31の全体を、金めっき剥離剤に浸す(剥離工程)。これにより、
図8(5)に示すように、外部導体形成体31において、金めっき保護剤34を付けていない部分、すなわち、第1のバリア部21、第2のバリア部22および第3のバリア部23にそれぞれ対応する部分において金33が剥がれ、ニッケル32が露出する。これにより、外部導体10が完成する。次に、棒状金属材を切削し、ニッケルめっきを施し、さらに重ねて金めっきを施した中心導体25、および絶縁部材29を用意し、
図8(6)に示すように、これら中心導体25および絶縁部材29を外部導体10へ組み付ける(組み付け工程)。これにより、同軸コネクタ1が完成する。
【0036】
同軸コネクタ1において、第1のバリア部21は張出部17の外周面に配置され、第2のバリア部22は外部導体本体11の下端面に配置され、第3のバリア部23は外部導体本体11の内周側に配置され、それぞれ位置および向きが異なるが、上記製造方法によれば、これらのバリア部を容易に形成することができる。すなわち、
図8(4)に示す保護剤付加工程で、外部導体形成体31のうち、第1のバリア部21、第2のバリア部22、および第3のバリア部23にそれぞれ対応する部分の直ぐ下の位置から外部導体形成体31の下端までの範囲R1の全体を金めっき保護剤34に浸し、続いて、外部導体形成体31を上下逆さにして、第1のバリア部21および第3のバリア部23にそれぞれ対応する部分の直ぐ上の位置から外部導体形成体31の上端までの範囲R2の全体を金めっき保護剤34に浸す。これにより、外部導体形成体31において第1のバリア部21、第2のバリア部22および第3のバリア部23にそれぞれ対応する部分以外の部分に金めっき保護剤34を容易に付けることができる。そして、剥離工程で、外部導体形成体31を金めっき剥離剤に浸すことで、外部導体形成体31において第1のバリア部21、第2のバリア部22および第3のバリア部23にそれぞれ対応する部分の金33を容易に剥がすことができ、ニッケル32を露出させることができる。
【0037】
なお、同軸コネクタ1は、ニッケルめっきを施した外部導体形成体において、各バリア部に対応する部分にマスクを形成して金めっきを行い、その後、マスクを除去するといった方法でも製造することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
図9(1)は、本発明の第2の実施形態の同軸コネクタ41を示している。同軸コネクタ41の外部導体42において、外部導体本体43の下端側には、4個の固定部44A、44B、44C、44Dが形成されている。各固定部44A、44B、44C、44Dは、外部導体本体43の下端面または下部の外周面(本実施形態においては張出部44の下端面における外周部)から下方に向かって突出している。4個の固定部44A、44B、44C、44Dは、外部導体本体43の周方向において、間隔を置いて配置され、それぞれ互いに離間している。固定部44A、44B、44C、44Dの周方向の間隔は限定されないが、本実施形態においては、4個の固定部44A、44B、44C、44Dが、外部導体本体43の周方向において、例えば90度の間隔を置いて配置されている。同軸コネクタ41のその余の部分は、第1の実施形態の同軸コネクタ1と同様である。
【0039】
このように4個の固定部44A、44B、44C、44Dを、間隔を置いて配置することにより、基板2上に形成された他の導体パターンを固定部44A、44B間および固定部44C、44D間に通すことができ、または、他の導体パターンを固定部44A、44C間および固定部44B、44D間に通すこともできる。これにより、同軸コネクタ41を基板2上に実装する際に、同軸コネクタ41の周方向における向きが90度変わっても、同軸コネクタ41を基板2上の他の導体パターンを跨ぐように配置することができる。したがって、同軸コネクタ41を基板2へ実装するに当たり、同軸コネクタ41の向きの決定を厳格に行う必要がなくなるので、実装作業または実装装置を簡単化することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
図9(2)は、本発明の第3の実施形態の同軸コネクタ51を示している。同軸コネクタ51の外部導体52において、固定部54は、外部導体52をその下方から見た場合にC字状、U字状またはコ字状に形成されている。具体的には、外部導体本体53の下端面において、例えば前方を向いた1部分を除く部分に固定部54が連続して形成されている。同軸コネクタ51のその余の部分は、第1の実施形態の同軸コネクタ1と同様である。
【0041】
本実施形態によれば、固定部54の下端面の面積が大きくなるので、固定部54の下端面と基板2の導体パターン3の表面との間に介在する半田の量を増やすことができる。また、固定部54の周面の面積も大きくなるので、固定部54と半田のフィレットとが接触する面積を大きくすることができる。したがって、同軸コネクタ51と基板2との接合強度を高めることができる。
【0042】
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第4の実施形態の同軸コネクタ61を示している。同軸コネクタ61の外部導体62において、固定部64の内周面には、半田の進行を抑える第4のバリア部65が形成されている。なお、同軸コネクタ61の外部導体本体63の下端面にはバリア部が形成されていない。本実施形態によれば、固定部64と導体パターン3とを接合している半田が、固定部64の内周面を介して、バリア部が形成されていない外部導体本体62の下端面等に拡がることを、第4のバリア部65により防止することができる。したがって、同軸コネクタ61と基板2との接合強度が低下することを抑止することができる。また、本実施形態によれば、固定部64の内周面および外部導体本体62の内周面に半田が付着することを防止することができる。これにより、中心導体25とそれを包囲する導体の面との距離が半田の付着により狂うのを防止することができる。したがって、例えば同軸コネクタ1を高周波信号用の同軸コネクタとして用いた場合に、インピーダンス等の電気的性能を設計通りに良好に実現することができる。
【0043】
(第5の実施形態)
図11は、本発明の第5の実施形態の同軸コネクタ71を示している。同軸コネクタ71の外部導体72において、第1のバリア部75は、外部導体本体73の下部(張出部74)の外周面において下側の縁から上方へ離れた位置に形成されている。なお、同軸コネクタ71の外部導体本体73の下端面および内周面にはバリア部が形成されていない。同軸コネクタ71のその余の部分は、第1の実施形態の同軸コネクタ1と同様である。本実施形態によれば、第1のバリア部75がこのような位置に配置されているので、マスクを用いてバリア部を形成する方法により、第1のバリア部75を容易に製造することが可能になる。
【0044】
なお、上述した第1の実施形態において、外部導体本体11の形状は円筒状に限らず、多角形の筒状でもよい。また、外部導体10または中心導体25の最表面にめっきにより被覆する金属は金に限らず、例えば錫でもよい。また、外部導体10のバリア部21、22、23において露出させる金属は、半田濡れ性の低いニッケル以外の金属でもよい。また、バリア部21、22、23は、外部導体本体11の下部外周面等をレーザー照射等で合金化や酸化させて半田濡れ性を低下させることにより形成してもよいし、金属以外の樹脂を外部導体本体11の下部外周面等に塗布することにより形成してもよい。また、張出部17の外形は正方形に限らず、円形のフランジ状でもよく、また、張出部17がなくてもよい。また、中心導体25の接触部26は雌型であるが、雄型であってもよい。また、上記第1の実施形態では、直線状の中心導体25の下端部を基板2の表面に形成された導体パターン4に接続する場合を例にあげたが、中心導体の形状や、基板に形成された導体パターンと中心導体との接続態様は限定されない。例えば、中心導体の下端側が90度曲がり、2つの固定部18間を通って外部導体10の側方に伸長する構成としてもよいし、中心導体の下端部が多層基板の内部に伸長し、多層基板の内部の導体パターンに接続される構成としてもよい。第1の実施形態における以上の変形は、上述した他の実施形態にも適用することができる。
【0045】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う同軸コネクタもまた本発明の技術思想に含まれる。