特許第6804894号(P6804894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804894打抜き装置とレーザ加工装置とを備えた工作機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804894
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】打抜き装置とレーザ加工装置とを備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20201214BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20201214BHJP
   B23P 23/00 20060101ALN20201214BHJP
【FI】
   B23K26/38 A
   B21D28/02 Z
   !B23P23/00 Z
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-158571(P2016-158571)
(22)【出願日】2016年8月12日
(65)【公開番号】特開2017-70996(P2017-70996A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年8月14日
(31)【優先権主張番号】15180878.9
(32)【優先日】2015年8月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Trumpf Werkzeugmaschinen GmbH + Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デニス トレンクライン
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−197589(JP,A)
【文献】 特開平10−006092(JP,A)
【文献】 実開昭63−163288(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/38
B21D 28/02
B23P 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク加工するための工作機械であって、
・支持構造体(3)と、
・該支持構造体(3)に支持された、ワークを打抜き加工可能な打抜き装置(4)と、
・前記支持構造体(3)に支持された、ワークをレーザ加工可能なレーザ加工装置(5)であって、該レーザ加工装置(5)は、前記支持構造体(3)を介して前記打抜き装置(4)と接続されていて、該打抜き装置(4)の運転により運動励起可能である、レーザ加工装置(5)と、
・該レーザ加工装置(5)をワークに対して位置決めするために、作動運動で以て機能位置へ送ることができ、更に、該機能位置から離れた位置へ送ることができるレーザ送り装置(25)であって、前記レーザ加工装置(5)用に、前記作動運動の方向(29)において有効な、支持構造体側の装置ストッパ(22)が設けられており、該装置ストッパ(22)には、前記機能位置に送られたレーザ加工装置(5)が、前記作動運動の方向(29)において支持されていて、前記機能位置へ送られた前記レーザ加工装置(5)により、ワークをレーザ加工可能にする、レーザ送り装置(25)と、
・前記打抜き装置(4)と前記レーザ加工装置(5)との間に設けられた緩衝装置(16)であって、該緩衝装置(16)は、所定のばね剛性を有していて、前記打抜き装置(4)の運転による励起を減少させつつ、前記レーザ加工装置(5)を前記支持構造体(3)において支持することができるようになっている、緩衝装置(16)と、
を備えている工作機械において、
前記レーザ送り装置(25)は、前記緩衝装置(16)用の調節装置として設けられており、前記レーザ加工装置(5)の前記機能位置では、該機能位置から離れた前記レーザ加工装置(5)の位置でのばね剛性よりも高いばね剛性が対応して生ずるように、前記緩衝装置(16)のばね剛性が前記レーザ送り装置(25)により調節可能であり、
前記緩衝装置(16)は、ばね(17)を有しており、該ばね(17)を介して、前記レーザ加工装置(5)は前記支持構造体(3)に支持されており、前記ばね(17)は、前記レーザ加工装置(5)の支持方向において所定のばね長さを有しており、前記緩衝装置(16)の前記ばね剛性は、前記レーザ送り装置(25)が前記緩衝装置(16)の前記ばね(17)のばね長さを変化させることができるようになっていることにより、前記レーザ送り装置(25)によって調節可能であり、前記ばね長さは、前記レーザ加工装置(5)の前記機能位置において、該機能位置から離れた前記レーザ加工装置(5)の位置におけるばね長さに比べて減少させられており、延いては前記緩衝装置(16)の前記ばね(17)は、前記レーザ加工装置(5)の前記機能位置において前記支持構造体側の前記装置ストッパ(22)に、前記作動運動の方向(29)において前記レーザ加工装置(5)が支持されている場合には、前記レーザ送り装置(25)により圧縮されており、前記レーザ加工装置(5)は、前記緩衝装置(16)の前記ばね(17)を介して、前記作動運動の反対方向(11)において、支持構造体側のばね受けに支持されていることを特徴とする、工作機械。
【請求項2】
前記レーザ送り装置(25)は、前記支持構造体(3)に対応配置された支持構造体側の駆動部材と、前記レーザ加工装置(5)に運動接続された装置側の駆動部材(26)とを有しており、該装置側の駆動部材(26)は駆動可能であり且つ前記支持構造体側の駆動部材と協働するようになっており、
・前記レーザ送り装置(25)の前記装置側の駆動部材(26)は、前記レーザ送り装置(25)の前記支持構造体側の駆動部材に対して相対的に運動可能であり、これにより前記レーザ加工装置(5)は、前記作動運動で以て移動することができるようになっており、
・前記レーザ送り装置(25)の前記支持構造体側の駆動部材は、ひいては該支持構造体側の駆動部材を介して前記装置側の駆動部材(26)及び前記レーザ加工装置(5)は、前記レーザ加工装置(5)の前記作動運動の反対方向(11)において、前記緩衝装置(16)の前記ばね(17)を介して前記支持構造体(3)に支持されており、
・前記レーザ加工装置(5)が、前記機能位置において前記支持構造体側の装置ストッパ(22)に、前記作動運動の方向(29)において支持されている場合には、前記緩衝装置(16)の前記ばね(17)が圧縮された状態で、前記支持構造体側の駆動部材は、前記装置側の駆動部材(26)に対して相対的に、前記作動運動の反対方向(11)に運動可能である、請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
前記レーザ加工装置(5)は、前記レーザ送り装置(25)により、レーザ送り軸線(9)に沿って前記作動運動で以て前記機能位置へ送られ、更に、前記作動運動の反対方向(11)において、前記機能位置から離れた位置へ送られるようになっており、
・前記レーザ送り装置(25)の前記装置側の駆動部材(26)は、前記レーザ送り軸線(9)に沿って、前記レーザ送り装置(25)の前記支持構造体側の駆動部材に対して相対的に運動可能であり、
・前記支持構造体側の駆動部材は、ひいては該支持構造体側の駆動部材を介して前記装置側の駆動部材(26)及び前記レーザ加工装置(5)は、前記レーザ加工装置(5)の前記作動運動の反対方向(11)において前記レーザ送り軸線(9)に沿って、前記緩衝装置(16)の前記ばね(17)を介して前記支持構造体(3)に支持されており、
・前記レーザ加工装置(5)が、前記機能位置において前記支持構造体側の装置ストッパ(22)に、前記レーザ送り軸線(9)に沿って前記作動運動の方向(29)において支持されている場合には、前記緩衝装置(16)の前記ばね(17)が圧縮された状態で、前記支持構造体側の駆動部材は、前記装置側の駆動部材(26)に対して相対的に、前記レーザ送り軸線(9)に沿って前記作動運動の反対方向(11)に運動可能である、請求項2記載の工作機械。
【請求項4】
前記レーザ送り装置(25)として、ピストン‐シリンダユニットが設けられており、該ピストン‐シリンダユニットの、前記レーザ送り軸線(9)に沿って延びるシリンダは、前記装置側の駆動部材(26)として設けられており、前記ピストン‐シリンダユニットの、前記シリンダ内で前記レーザ送り軸線(9)に沿って可動にガイドされるピストンは、前記ピストン‐シリンダユニットの前記支持構造体側の駆動部材として設けられている、請求項3記載の工作機械。
【請求項5】
前記ピストン‐シリンダユニットは、空圧式のピストン‐シリンダユニットとして形成されている、請求項4記載の工作機械。
【請求項6】
前記支持構造体側の駆動部材は、ひいては該支持構造体側の駆動部材を介して前記装置側の駆動部材(26)及び前記レーザ加工装置(5)は、前記レーザ加工装置(5)の前記作動運動の方向(29)において前記緩衝装置(16)の別のばね(18)を介して前記支持構造体(3)に支持されている、請求項2から5までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項7】
前記レーザ加工装置(5)用の前記支持構造体側の装置ストッパ(22)は、前記レーザ加工装置(5)を支持する側とは反対の側において、前記緩衝装置(16)の前記ばね(17)が前記レーザ加工装置(5)の前記作動運動の反対方向(11)において支持されている、支持構造体側のばね受けを形成している、請求項1から6までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項8】
前記支持構造体(3)は、前記打抜き装置(4)及び前記レーザ加工装置(5)と一緒に、当該工作機械の機械フレーム(2)に沿って、前記レーザ加工装置(5)の前記作動運動の方向(29)に対して横方向に移動可能である、請求項1から7までのいずれか1項記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク、特に金属薄板を加工するための工作機械に関し、該工作機械は、
・支持構造体と、
・該支持構造体に支持された、ワークを打抜き加工可能な打抜き装置と、
・前記支持構造体に支持された、ワークをレーザ加工可能なレーザ加工装置であって、該レーザ加工装置は、前記支持構造体を介して前記打抜き装置と接続されていて、前記打抜き装置の運転により運動励起可能である、レーザ加工装置と、
・該レーザ加工装置を前記ワークに対して位置決めするために、作動運動で以て機能位置へ送ることができ、更に、該機能位置から離れた位置へ送ることができるレーザ送り装置であって、前記機能位置へ送られた前記レーザ加工装置により、前記ワークをレーザ加工可能にする、レーザ送り装置と、
・前記打抜き装置と前記レーザ加工装置との間に設けられた緩衝装置であって、該緩衝装置は、所定のばね剛性を有していて、前記打抜き装置の運転による励起を減少させつつ、前記レーザ加工装置を前記支持構造体において支持することができるようになっている、緩衝装置と、を備えている。
【0002】
前記形式の打抜き‐レーザ複合機では、ワークの打抜き加工とレーザ加工とが順次行われる。打抜き運転中、レーザ加工装置はレーザ送り装置により、打抜き加工されるワークから離れた停止位置に移動させられている。ワークをレーザ加工するためには、レーザ加工装置がレーザ送り装置によって、ワークに近い機能位置へ移動させられる。
【0003】
機械フレームに打抜き装置とレーザ加工装置を一緒に取り付けることにより、工作機械の打抜き運転中に発生する振動や衝撃が、停止位置に配置されたレーザ加工装置に伝達される、という危険が生じる。ワークの打抜き加工によってレーザ加工装置が損傷されることを防止するために、従来技術の場合は特別な構造上の予防措置が講じられている。
【0004】
TRUMPF社(住所:Johann-Maus-Strasse 2, 71254 Ditzingen, ドイツ)により”TruMatic(登録商標)6000fiber”の名前で提供される、上位概念に記載の工作機械では、レーザ加工装置がレーザ送り装置と一緒にベースプレートに取り付けられており、ベースプレート自体はレーザ加工装置の停止位置において、打抜き装置も設けられた機械フレームにばね弾性的に支持されている。ばね装置は、機械の打抜き運転に結びついた振動や衝撃がフィルタリングされずにレーザ加工装置に伝達されないようにするために働く。ワークをレーザ加工することにより、レーザ加工装置がワーク近くの機能位置にある場合には、わざわざ前記目的のために設けられた装置を用いた、レーザ加工装置が設けられたベースプレートのばね弾性的な支持が、非作動状態にされており、レーザ加工装置はベースプレートを介して、上位概念に記載の工作機械の機械フレームと固く結合されている。レーザ加工装置を機械フレームに固く結合することにより、ワークのレーザ加工を所要の精度で実施することができるようになっている。
【0005】
上位概念に記載の従来技術を構造的に簡単にすることが、本発明の課題である。
【0006】
この課題は本発明に基づき、請求項1記載の工作機械によって解決される。
【0007】
本発明の場合は、レーザ送り装置が、レーザ加工装置を機能位置及び機能位置から離れた、特にワークから離れた位置、例えば停止位置へ移動させるためだけでなく、更に、支持構造体におけるレーザ加工装置の支持を、変化する運転状況に適合させるためにも使用される。レーザ加工装置が機能状態にあり、このレーザ加工装置をワークのレーザ加工に使おうとする場合には、レーザ送り装置により、レーザ加工装置を本発明による工作機械の支持構造体に結合している緩衝装置の高いばね剛性が生ぜしめられる。好適には、レーザ送り装置によって、機能位置に移動されたレーザ加工装置の、支持構造体に対する固い結合が実現され得る。緩衝装置のばね剛性の増大に基づき、当該ワークのレーザ加工、例えばレーザ切断又はレーザ溶接を、高精度で実施することができる。レーザ加工装置がワーク加工に使用されず、本発明による工作機械が打抜きモードにある場合には、緩衝装置のばね剛性が、レーザ送り装置によって低下させられている。その結果、緩衝装置は、打抜き運転に基づき生じる振動や衝撃を緩和することができるようになり、これにより、レーザ加工装置に対する打抜き運転の悪影響を防ぐことができるようになっている。これに相応してレーザ送り装置により引き受けられた二重機能に基づき、本発明による工作機械の構造上簡単な構成が得られる。
【0008】
独立特許請求項1に係る本発明の特別な構成は、従属する特許請求項2〜10から得られる。
【0009】
特許請求項2によれば、本発明による工作機械の好適な構成形式の場合、レーザ加工装置を支持するために設けられた緩衝装置のばね剛性は、レーザ送り装置が、緩衝装置のばねの長さを変化させることによって変更される。適当なばね構成形式において、この手段は、本発明による工作機械の支持構造体におけるレーザ加工装置の支持部の「硬さ」を変化させる簡単な可能性を提供する。ばね構成形式としては、例えばコイルばね、板ばね及び皿ばねや、エラストマばね及びガスばねも考慮される。
【0010】
機能位置においてレーザ加工装置を可能な限り固定的に支持する、本発明による好適な構造手段は、特許請求項3の対象になっている。本発明による工作機械の支持構造体側の装置ストッパは、機能位置へ移動させられるレーザ加工装置を、作動運動方向において実質的に遊び無く支持するために働く。反対方向においてレーザ加工装置は、緩衝装置のばねを介して支持構造体に支持されており、この場合、緩衝装置のばねは、レーザ送り装置により圧縮されている。これにより全体としては、レーザ加工装置の作動運動方向においても、反対方向においても、ワークの高精度レーザ加工の実施に不可欠である、レーザ加工装置のほぼ固定的な支持が得られるようになっている。
【0011】
特許請求項4は、特許請求項3に記載の支持構想の構造的な実現の詳細に関する。請求する本発明の構成形式のレーザ送り装置は、工作機械の支持構造体に対応配置された、支持構造体側の駆動部材と、支持構造体に対して相対運動するレーザ加工装置に運動接続されている、装置側の駆動部材とを有している。レーザ送り装置の支持構造体側の駆動部材は、レーザ加工装置の作動運動とは反対の方向において、本発明による工作機械の支持構造体に支持されており、したがって、レーザ加工装置が機能位置から離れた位置にある場合には、前記方向においてばね弾性的に支持されるようになっている。支持構造体側の駆動部材のばね弾性的な支持は、支持構造体側の駆動部材と協働する装置側の駆動部材の、相応してばね弾性的な支持を生ぜしめると共に、装置側の駆動部材を介して、この装置側の駆動部材と運動接続されたレーザ加工装置の、相応してばね弾性的な支持をも生ぜしめる。装置側の駆動部材により、支持構造体側の駆動部材に対して相対的に行われる運動に基づき、レーザ加工装置は、機能位置から離れた位置から出発して、作動運動で以て機能位置へ移動させられる。機能位置においてレーザ加工装置は、支持構造体側の装置ストッパを介して、作動運動方向において支持されており、これにより、作動運動方向への更なる運動が阻止されている。レーザ送り装置を続けて作動させると、支持構造体側の駆動部材が、装置側の駆動部材に対して相対的に、レーザ加工装置の駆動運動とは反対の方向に移動させられ、これにより、緩衝装置のばねが圧縮されて、レーザ加工装置の作動運動とは反対の方向においてレーザ加工装置を支持するために設けられた緩衝装置のばね剛性が高められるようになっている。
【0012】
構造的に特に簡単に手段により、レーザ送り装置の装置側の駆動部材と、支持構造体側の駆動部材の、レーザ送り軸線に沿って実施される直線運動が実現され得る(特許請求項5)。
【0013】
本発明による工作機械のレーザ送り装置に関しては、種々様々な構成形式が考えられる。特許請求項6によれば、好適なのは、ピストン‐シリンダユニットとして設けられたレーザ送り装置である。この場合、ピストン‐シリンダユニットのシリンダは、レーザ送り装置の装置側の駆動部材として設けられており、ピストン‐シリンダユニットのピストンは、支持構造体側の駆動部材として設けられている。
【0014】
特別な利点としては、空圧式のピストン‐シリンダユニットの形態のレーザ送り装置が挙げられる(特許請求項7)。空圧式のピストン‐シリンダユニットのシリンダ内に滞留している圧縮空気の圧縮性に基づいて、シリンダ内部のピストンは弾性的に可動である。レーザ加工装置用の緩衝装置のばねとの組合せにおいて、空圧式のピストン‐シリンダユニットは、ばね‐ダンパシステムを形成している。
【0015】
特許請求項8記載の本発明の構成形式の場合、レーザ加工装置は、作動運動方向においても、作動運動とは反対の方向においても、本発明による工作機械の支持構造体に、ばね弾性的に支持されている。このことは、工作機械の打抜き運転と結びついた振動や衝撃による損傷に対する、レーザ加工装置の包括的な防護につながっている。
【0016】
構造的に特に簡単な構成の重要性において、特許請求項9記載の本発明による工作機械の場合は、1つの同じ構成部材が、機能位置に送られたレーザ加工装置を作動運動方向において支持すると共に、レーザ加工装置用の緩衝装置のばねを、反対方向において支持するようになっている。
【0017】
特許請求項10は、本発明による工作機械の、特に実地に即した構成に関する。工作機械の打抜き装置とレーザ加工装置の両方が支持された支持構造体は、打抜き装置とレーザ加工装置と一緒に、作動運動に対して横方向に、特にレーザ送り軸線に対して垂直に延びる方向に走行可能である。このような走行運動は、被加工ワークに対して相対的に打抜き装置及び/又はレーザ加工装置を位置決めするために用いてよいが、作業運動として実施してもよい。いずれにしろ、1つの同じ駆動装置を、打抜き装置の運動発生用にも、レーザ加工装置の運動発生用にも使用することができる。その結果、本発明による工作機械のこの構成形式は、特にエネルギ効率的且つコスト効率的である。
【0018】
以下に、本発明を例示的な概略図につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】共通の支持構造体に設けられた打抜き装置とレーザ加工装置とを備える打抜き‐レーザ複合機の部分図である。
図2図1に示したレーザ加工装置を、支持構造体における停止位置で示すと共に、支持構造体とレーザ加工装置との間で機能する緩衝装置を示す図である。
図3図1及び図2に示したレーザ加工装置を、支持構造体における機能位置で示すと共に、機能可能な緩衝装置を示す図である。
図4図1図3に示したレーザ加工装置を、支持構造体における機能位置で示すと共に、非作動状態の緩衝装置を示す図である。
【0020】
図1において、打抜き‐レーザ複合機として構成された工作機械1は、機械フレーム2を有している。機械フレーム2に沿って、支持構造体3が図1の図平面に対して垂直に走行可能である。支持構造体3は、打抜き装置4と、レーザ切断ヘッド5の形態のレーザ加工装置とを支持している。打抜き装置4とレーザ切断ヘッド5とは両方共、従来の構成形式である。
【0021】
打抜き装置4は通常、打抜きポンチを装填可能な工具ホルダ7を備えたラム6を有している。複数の駆動装置(詳細には図示せず)によって、ラム6は、工具ホルダ7と、工具ホルダ7に装填される打抜きポンチと共に、作業行程と、この作業行程に続く戻り行程とで以て、打抜き行程軸線8に沿って運動可能であると共に、打抜き行程軸線8を中心として回動調節可能である。レーザ切断ヘッド5は、後で更に詳しく説明するように、レーザ送り軸線9に沿って位置決め可能である。工作機械1の打抜き装置4とレーザ切断ヘッド5とは両方とも、図1図3及び図4に示した金属薄板10の加工に用いられ、金属薄板10は加工中、従来のワーク支持台(簡略化のため図示せず)によって下方支持される。
【0022】
図1においてレーザ切断ヘッド5は、レーザ送り軸線9に沿ってワークに近い機能位置へ移動している。レーザ切断ヘッド5が機能位置に位置している場合には、レーザ切断ヘッド5から金属薄板10に向けられるレーザ光線により、金属薄板10を切断加工することができる。金属薄板切断加工のために実施されるべき、レーザ切断ヘッド5と金属薄板10との相対運動は、一方ではレーザ切断ヘッド5を支持している支持構造体3の、図1の図平面に対して垂直な移動により生ぜしめられ、且つ他方では金属薄板10の、支持構造体3の移動に対して垂直な水平方向移動により生ぜしめられる。この場合、両軸方向に実施される移動をオーバラップさせることが可能である。金属薄板10の切断加工を所要の精度で実施できるようにするためには、機能位置にあるレーザ切断ヘッド5が支持構造体3に可能な限り固くしっかりと結合されている必要があり、支持構造体3自体は機械フレーム2に接して遊び無くガイドされている。
【0023】
打抜き装置4は、工作機械1の切断運転中は停止されている。図1で分かるように、この場合、ラム6は工具受容部7と共に、金属薄板10から打抜き行程軸線8に沿って引き戻されている。逆に、工作機械1の打抜き運転に際しては、レーザ切断ヘッド5が図1に示した機能位置に比べ、金属薄板10とは反対の方向の戻し運動で以て、レーザ送り軸線9に沿って停止位置に持ち上げられている。レーザ切断ヘッド5の戻し運動の方向は、図1に矢印11で示されている。図2では、レーザ切断ヘッド5は、ワークから離れた停止位置で示されている。金属薄板10は、図2には図示されていない。停止位置にあるレーザ切断ヘッド5と、金属薄板10の上面との間の間隔は、金属薄板10が打抜き加工に必要とされる移動を、レーザ切断ヘッド5にぶつからずに実施することができるように設定されている。
【0024】
レーザ切断ヘッド5は停止位置及び機能位置へ移動する際、支持構造体3に固く結合されたベースプレート13に設けられたリニアガイド12により、レーザ送り軸線9に沿ってガイドされている。この目的のためにリニアガイド12は、ベースプレート13に設けられたガイドレール14と、レーザ切断ヘッド5に設けられた、ガイドレール14に装着されたガイドキャリッジ15とを有している。
【0025】
工作機械1の打抜き運転には衝撃と振動とが結びついており、これらは打抜き装置4を起点として、支持構造体3とベースプレート13とを介してレーザ切断ヘッド5にまで伝わる。
【0026】
レーザ切断ヘッド5が金属薄板10の打抜き加工と、これに結びついた振動及び衝撃とによって損傷されないようにするために、打抜き装置4とレーザ切断ヘッド5との間、詳細にはベースプレート13とレーザ切断ヘッド5との間には、緩衝装置16が設けられている。
【0027】
図2では、緩衝装置16は下ばね17と上ばね18とを有している。図示の例の場合には、下ばね17と上ばね18とが両方ともコイルばねとして形成されている。緩衝装置16の上ばね18のばね剛性は、上ばね18が、この上ばね18を重力方向に押圧する質量の作用下で、不完全にしか圧縮されないように選択されている。
【0028】
両ばね17,18はピストンロッド19に装着されており、この場合、下ばね17は、ピストンロッド19に結合された下側のばね受け20と、受けアングル部材22の水平脚部21の下面との間で予荷重をかけられており、且つ上ばね18は、ピストンロッド19に設けられた上側のばね受け23と、受けアングル部材22の水平脚部21の上面との間で予荷重をかけられている。受けアングル部材22は、垂直脚部24においてベースプレート13と固く結合されている。ピストンロッド19は、受けアングル部材22の水平脚部21を貫通しており、これにより受けアングル部材22に対するピストンロッド19の長手方向相対運動が可能になっている。
【0029】
ピストンロッド19は、レーザ送り装置として設けられたピストン‐シリンダユニット25の構成部材であり、ピストン‐シリンダユニット25は、図示の例の場合には圧縮空気で作動する。ピストン‐シリンダユニット25は更に、レーザ切断ヘッド5に対応配置された装置側の駆動部材としてシリンダ26を有しており、シリンダ26もピストンロッド19と同様に、レーザ送り軸線9に対して平行に延在していると共に、その内部では、ピストンロッド19に取り付けられた、図面では見えないピストンを、レーザ送り軸線9に沿ってガイドしている。ピストン‐シリンダユニット25のピストンは、支持構造体3に対応配置された支持構造体側の駆動部材を形成している。
【0030】
ピストン‐シリンダユニット25のシリンダ26は、結合バー27を介してレーザ切断ヘッド5に固く結合されている。レーザ切断ヘッド5は、結合バー27の取付け部付近に、図2を見る人の方に向かって突出している位置決めストッパ28を有している。
【0031】
図2において緩衝装置16は、レーザ切断ヘッド5が停止位置にある状態で、出発状態にある。下ばね17も上ばね18も、比較的小さなばね剛性を有している。よって、工作機械1の打抜き運転と結びついた、打抜き装置4を起点としてベースプレート13に取り付けられた受けアングル部材22にまで伝わる振動や衝撃は、受けアングル部材22の水平脚部21に支持されたばね17,18によって、レーザ送り軸線9に沿って比較的ソフトに、ピストン‐シリンダユニット25のピストンロッド19に伝達される。ピストン‐シリンダユニット25のシリンダ26の内部に滞留している圧縮空気が圧縮されると、ピストン‐シリンダユニット25はショックアブソーバの形式で、打抜き運転により生じるばね17,18の振動を緩衝することができるようになっている。よって、加工に起因する振動及び衝撃は、あらゆるケースにおいて大幅にフィルタリングされてレーザ切断ヘッド5に到達することになる。レーザ切断ヘッド5は、場合によってはレーザ送り軸線9に沿って補償運動を行い、この補償運動に際してレーザ切断ヘッド5は、レーザ切断ヘッド5と一緒に振動するガイドキャリッジ15と、支持構造体に固定されたベースプレート13におけるリニアガイド12のガイドレール14とを介してガイドされる。このようにして、特にレーザ切断ヘッド5の損傷及び/又はレーザ切断ヘッド5に設けられた光学素子の望ましくない変位が、緩衝装置16により効果的に防止される。
【0032】
打抜き過程を終了して、金属薄板10をレーザ切断ヘッド5により切断加工しようとする場合には、打抜き装置4が金属薄板10から、図1に示した位置へ引き戻されると共に、レーザ切断ヘッド5がピストン‐シリンダユニット25により、図2に示した停止位置からレーザ送り軸線9に沿って作動運動させられて、機能位置へ降下させられる。レーザ切断ヘッド5の作動運動の方向は、図2に矢印29で示されている。
【0033】
レーザ切断ヘッド5の作動運動を生ぜしめるためにピストン‐シリンダユニット25が作動すると、ピストン‐シリンダユニット25のシリンダ26は、ピストンロッド19と、シリンダ26の内部でガイドされるピストンとに対して相対的に、レーザ送り軸線9に沿って下方に移動する。シリンダ26と共に、シリンダ26と結合されたレーザ切断ヘッド5もレーザ送り軸線9に沿って作動運動して降下する。緩衝装置16は、まずは出発状態に留まっている。作動運動に際しても、レーザ切断ヘッド5はリニアガイド12により、レーザ送り軸線9に沿ってガイドされる。
【0034】
レーザ切断ヘッド5に取り付けられた位置決めストッパ28が、支持構造体側の装置ストッパとして働く受けアングル部材22に、詳細には受けアングル部材22の水平脚部21にぶつかり、これにより図3に示した状態が生じると直ちに、レーザ切断ヘッド5の作動運動が終了して、レーザ切断ヘッド5の機能位置に到達した状態になる。レーザ切断ヘッド5は依然として、緩衝装置16の下ばね17を介して、レーザ切断ヘッド5の作動運動とは反対の、矢印11で示した方向において、支持構造体側のばね受けとして利用される受けアングル部材22に、延いては工作機械1の支持構造体3に、ばね弾性的に支持されている。
【0035】
ピストン‐シリンダユニット25の継続的な作動は、作動運動の方向29において有効な、受けアングル部材22によるレーザ切断ヘッド5の支持に基づき、レーザ切断ヘッド5を更に降下させることはなく、むしろ、レーザ切断ヘッド5が機能位置に残留した状態で、ピストンロッド19をピストン‐シリンダユニット25のシリンダ26内へ更に進入させ、これに相応してシリンダ26内のピストンを、レーザ切断ヘッド5の作動運動とは逆方向11で、シリンダ26に対して相対運動させる。これにより、受けアングル部材22の水平脚部21の下面と、ピストンロッド19に設けられた下側のばね受け20との間で予荷重をかけられた下ばね17が、下ばね17の巻条が密に重なり合うまで圧縮され、その結果、レーザ送り軸線9に沿って1つの剛性の構造体が形成されることになる(図4)。
【0036】
これによりレーザ切断ヘッド5は、レーザ送り軸線9に沿って受けアングル部材22に遊び無く支持されると共に、受けアングル部材22とベースプレート13とを介して、工作機械1の支持構造体3と機械フレーム2とに支持されることになる。その結果、レーザ切断ヘッド5による金属薄板10の切断加工を高精度で実施することができるようになっている。
【0037】
金属薄板切断加工を終了して、引き続き打抜き加工を継続したい場合には、ピストン‐シリンダユニット25を作動させて、まずピストンロッド19を、このピストンロッド19の位置をレーザ送り軸線9に沿って保持するシリンダ26から、下ばね17が延びた状態で進出させ(図3)、次いでシリンダ26をレーザ切断ヘッド5と共にピストンロッド19に沿って上方に移動させることにより、レーザ切断ヘッド5をワークから離れた停止位置に移動させる(図2)。
図1
図2
図3
図4