特許第6804916号(P6804916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804916
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】モニタ装置及びモニタ装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/24 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   A61B18/24
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-188257(P2016-188257)
(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公開番号】特開2018-50756(P2018-50756A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】山下 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 豊
(72)【発明者】
【氏名】上田 之雄
(72)【発明者】
【氏名】玉置 善紀
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−517805(JP,A)
【文献】 特開昭60−106444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/20 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内の血栓にパルス光を照射する装置に用いられるモニタ装置であって、
前記血管内に照射されるモニタ光を出力する光出力部と、
前記モニタ光の戻り光を検出し、検出信号を出力する光検出部と、
前記検出信号に基づいて前記戻り光の強度の時間変化である時間波形を取得する解析部と、を備え、
前記解析部は、前記時間波形に基づいてパラメータを求め、当該パラメータに基づいて、前記パルス光の照射に伴う前記血管内の反応を評価し、
前記パラメータは、前記時間波形の波形面積を含む、モニタ装置。
【請求項2】
前記パラメータは、前記時間波形における収束時間、前記時間波形におけるピーク時間、前記時間波形におけるピーク強度、前記時間波形における波形パターン、及び、前記時間波形におけるピークの有無のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載のモニタ装置。
【請求項3】
前記モニタ光は、連続波光である、請求項1又は2に記載のモニタ装置。
【請求項4】
前記モニタ光の波長は、600nm乃至1300nmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモニタ装置。
【請求項5】
前記パルス光は、前記モニタを兼ねている、請求項1又は2に記載のモニタ装置。
【請求項6】
血管内の血栓にパルス光を照射する装置に用いられるモニタ装置の作動方法であって、
前記モニタ装置が、前記血管内に照射されるモニタ光を出力する出力工程と、
前記モニタ装置が、前記モニタ光の戻り光を、光検出部により検出し、検出信号を出力する光検出工程と、
前記モニタ装置が、前記検出信号に基づいて前記戻り光の強度の時間変化である時間波形を取得する解析工程と、を備え、
前記解析工程では、前記時間波形に基づいてパラメータを求め、当該パラメータに基づいて、前記パルス光の照射に伴う前記血管内の反応を評価し、
前記パラメータは、前記時間波形の波形面積を含む、モニタ装置の作動方法。
【請求項7】
前記パラメータは、前記時間波形における収束時間、前記時間波形におけるピーク時間、前記時間波形におけるピーク強度、前記時間波形における波形パターン、及び、前記時間波形におけるピークの有無のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項6に記載のモニタ装置の作動方法。
【請求項8】
前記モニタ光は、連続波光である、請求項6又は7に記載のモニタ装置の作動方法。
【請求項9】
前記モニタ光の波長は、600nm乃至1300nmである、請求項6〜8のいずれか一項に記載のモニタ装置の作動方法。
【請求項10】
前記パルス光は、前記モニタを兼ねている、請求項6又は7に記載のモニタ装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニタ装置及びモニタ装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管内に形成された血栓の除去を行う血管形成装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された血管形成装置は、光ファイバを有するカテーテルと、光ファイバに接続されるレーザシステムとを有している。血管形成装置では、光ファイバの先端からパルス光を出力し、当該パルス光によって発生した気泡によって血栓を溶解する。このような血管形成装置では、血管内に造影剤を注入してX線画像を取得することによって、光ファイバと血栓との位置関係を特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−508938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記血管形成装置では、例えば、パルス光が出力される光ファイバの先端が血栓から離れ過ぎている場合や、光ファイバの先端が血管壁に向いている場合などには、パルス光が血栓に適切に照射されず、血栓を効率的に溶解することが困難となる。この点、パルス光が血管内で適切に照射されていることを評価するために、前述のように、血管内に造影剤を注入してX線画像を取得する場合がある。しかしこの場合、造影剤の注入の度にパルス光の照射を中断せざるを得ず、当該評価が煩雑で非効率となるおそれがある。また、造影剤の投与あるいは治療時間の増加は、患者への負担を伴う。
【0005】
本発明の一側面は、血管内でパルス光が適切に照射されていることを簡便に評価することができるモニタ装置及びモニタ装置の作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、血管内の血栓にパルス光を照射する装置に用いられるモニタ装置であって、血管内に照射されるモニタ光を出力する光出力部と、モニタ光の戻り光を検出し、検出信号を出力する光検出部と、検出信号に基づいて戻り光の強度の時間変化である時間波形を取得する解析部と、を備え、解析部は、時間波形に基づいてパラメータを求め、当該パラメータに基づいて、パルス光の照射に伴う血管内の反応を評価する。
【0007】
また、本発明の一側面は、血管内の血栓にパルス光を照射する装置に用いられるモニタ装置の作動方法であって、血管内に照射されるモニタ光を出力する出力工程と、モニタ光の戻り光を、光検出部により検出し、検出信号を出力する光検出工程と、検出信号に基づいて戻り光の強度の時間変化である時間波形を取得する解析工程と、を備え、解析工程では、時間波形に基づいてパラメータを求め、当該パラメータに基づいて、パルス光の照射に伴う血管内の反応を評価する。
【0008】
このようなモニタ装置及びモニタ装置の作動方法によれば、照射部によって照射されたモニタ光の戻り光が光検出部によって検出される。モニタ光の戻り光は、パルス光によって生じた気泡にモニタ光が反射あるいは散乱されることによって生じる。ここで、パルス光が血栓に対して適切に照射されている場合と、パルス光が血栓に対して適切に照射されていない場合とでは、気泡の発生の有無や、気泡の消滅までの状態といった血管内の反応が異なることが見出される。このような血管内の気泡に関する反応が異なることに応じて、戻り光の時間波形も異なることが見出される。そこで、戻り光の時間波形から求められたパラメータに基づいてパルス光の照射に伴う血管内の反応を評価することによって、血管内でパルス光が適切に照射されていることを簡便に評価することが可能となる。
【0009】
また、一側面においては、パラメータは、時間波形における収束時間、時間波形におけるピーク時間、時間波形におけるピーク強度、時間波形における波形パターン、時間波形におけるピークの有無、及び、時間波形の積分値のうちの少なくとも1つであってよい。この構成によれば、パルス光の照射による血管内の反応を適切に判断することできる。
【0010】
また、一側面においては、モニタ光は連続波光であってよい。この構成によれば、気泡の発生から消滅までを継続して観測しやすくなる。
【0011】
また、一側面においては、モニタ光の波長は、600nm乃至1300nmであってよい。この場合、モニタ光はヘモグロビンや水分に吸収され難い波長を有することになる。よって、モニタ光の減衰を抑制することができる。また、生体へのダメージを低減できるため、安全性を向上させることができる。
【0012】
また、一側面においては、モニタ光はパルス光であってもよい。パルス光がモニタ光を兼ねることによって、モニタ光を発生させる別途の光源を不要にできる。
【発明の効果】
【0013】
一側面のモニタ装置及びモニタ装置の作動方法によれば、血管内でパルス光が適切に照射されていることを簡便に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係るモニタ装置が適用される光照射装置を示す概略図である。
図2】モニタ装置による計測の原理を説明するための模式図である。
図3】モニタ装置による計測の原理を説明するための図である。
図4】モニタ装置によって計測される時間波形を示すグラフである。
図5】モニタ装置によって計測される時間波形における波形面積の時間変化を示すグラフである。
図6】レーザパルス光の平均出力と時間波形の収束時間との関係を示すグラフである。
図7】レーザパルス光の照射距離と時間波形の収束時間との関係を示すグラフである。
図8】モニタ装置によって計測される時間波形を示すグラフである。
図9】光照射装置によって照射されるパルス光の平均出力とモニタ装置によって計測される時間波形のピーク時間との関係を示すグラフである。
図10】カテーテルが血管内に挿管された状態を示す模式図である。
図11】血管内の状態とモニタ装置によって計測される時間波形との関係を示す模式図である。
図12】カテーテルが血栓を貫通した状態を示す模式図である。
図13】他の実施形態に係るモニタ装置が適用される光照射装置を示す概略図である。
図14】モニタ装置が適用される光照射装置の変形例を示す模式図である。
図15】モニタ装置が適用される光照射装置の他の変形例を示す模式図である。
図16】モニタ装置が適用される光照射装置のさらに他の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、一実施形態に係るモニタ装置20が適用された光照射装置1Aを示す概略図である。図1に示す光照射装置1Aは、血管内にレーザパルス光L1を照射する装置であり、例えば急性期脳塞栓症等の治療に利用される。光照射装置1Aは、治療用レーザ光源3と、モニタ用レーザ光源5(光源、光出力部)と、光ファイバ7と、結合光学系10と、光検出器(光検出部)8と、解析部9と、を備えている。なお、本実施形態では、モニタ用レーザ光源5と、光検出器8と、解析部9と、結合光学系10の一部とによって、モニタ装置20が構成されている。
【0017】
治療用レーザ光源3は、血栓の除去に用いられるレーザパルス光L1を出力する。レーザパルス光L1は、血栓及び血液に吸収され得る波長を有している。例えば、レーザパルス光L1の波長が500〜600nmの場合には、レーザパルス光L1が血栓及び血液に吸収され易い。本実施形態では、例えばレーザパルス光L1の波長は、約550nmであり、一例として532nmである。また、レーザパルス光L1の周波数は1〜100Hz程度であり、レーザパルス光L1のパルス幅は50μs〜200μs程度である。本実施形態では、一例として、レーザパルス光L1の周波数は5Hzであり、レーザパルス光L1のパルス幅は100μsである(図3参照)。治療用レーザ光源3の出力は、例えば20mW〜100mWとすることができる。治療用レーザ光源3としては、例えばレーザダイオード等を用いることができる。
【0018】
モニタ用レーザ光源5は、血管内に照射されるモニタ光L2を出力する。本実施形態では、血栓及び血液に対して吸収され難い波長を有する光をモニタ光L2として用いることができる。例えば、ヘモグロビンは、600nm未満の波長を有する光を吸収し易い。水分は1000nm以上の波長を有する光を吸収し易い。そのため、モニタ光L2としては、例えば600nm〜1300nmの波長のレーザ光を用いることができる。モニタ光L2としては、連続波(continuous wave)光及びパルス光のいずれを用いてもよい。本実施形態におけるモニタ光L2は連続波光である(図3参照)。モニタ用レーザ光源5の出力は、治療用レーザ光源3の出力よりも小さい。モニタ用レーザ光源5の出力は、例えば1mW以上であってもよい。モニタ用レーザ光源5としては、例えばレーザダイオード等を用いることができる。
【0019】
光ファイバ7の一方の端面7aには、治療用レーザ光源3からのレーザパルス光L1が入力される。光ファイバ7は、入力されたレーザパルス光L1を導光し、レーザパルス光L1を他方の端面7bから出力する。光ファイバ7の一方の端面7aには、モニタ用レーザ光源5からのモニタ光L2が入力される。光ファイバ7は、入力されたモニタ光L2を導光し、モニタ光L2を他方の端面7bから出力する。光ファイバ7の他方の端面7bには、レーザパルス光L1及びモニタ光L2の戻り光L3が入力される。光ファイバ7は、入力された戻り光L3を導光し、一方の端面7aから出力する。光ファイバ7の他端側は、血管内に挿入されるカテーテルC(図10等参照)内に収容されている。カテーテルCは、例えば直径1mm以下の細い血管内に挿入される場合がある。そこで、カテーテルCは、一例として0.8mm以下の直径を有している。光ファイバ7としては、例えば、直径が140μm程度、コア径が100μm程度のマルチモード光ファイバを利用してもよい。光ファイバ7の一端側は、結合光学系10に着脱自在に接続されている。光ファイバ7及び該光ファイバ7を収容するカテーテルCは、例えば治療の都度に交換可能である。
【0020】
結合光学系10は、治療用レーザ光源3と光ファイバ7の一端とを光学的に接続する。すなわち、結合光学系10は、治療用レーザ光源3から出力されるレーザパルス光L1を、光ファイバ7の一方の端面7aに入力させる。結合光学系10は、モニタ用レーザ光源5と光ファイバ7の一端とを光学的に接続する。すなわち、結合光学系10は、モニタ用レーザ光源5から出力されるモニタ光L2を、光ファイバ7の一方の端面7aに入力させる。結合光学系10は、光ファイバ7の一端と光検出器8とを光学的に接続する。すなわち、結合光学系10は、光ファイバ7の一方の端面7aから出力される戻り光L3を、光検出器8に入力する。結合光学系10は、4つのレンズ11A〜11Dと、2つのビームスプリッタ13A,13Bと、バンドパスフィルタ15と、を有している。なお、本実施形態では、レンズ11B,11C,11Dと、ビームスプリッタ13A,13Bと、バンドパスフィルタ15と、がモニタ装置20に属する。
【0021】
レンズ11A,11Bは、治療用レーザ光源3から出力されるレーザパルス光L1の光路上において、治療用レーザ光源3と光ファイバ7の一方の端面7aとの間に配置されている。ビームスプリッタ13Aは、治療用レーザ光源3から出力されるレーザパルス光L1の光路上において、レンズ11Aとレンズ11Bとの間に配置されている。ビームスプリッタ13Aには、モニタ用レーザ光源5から出力されるモニタ光L2が入力される。ビームスプリッタ13Aは、例えばハーフミラーやダイクロイックミラーによって構成される。
【0022】
ビームスプリッタ13Bは、モニタ用レーザ光源5から出力されるモニタ光L2の光路上であって、モニタ用レーザ光源5とビームスプリッタ13Aとの間に配置されている。ビームスプリッタ13Bは、例えばハーフミラーによって構成される。レンズ11Cは、モニタ用レーザ光源5から出力されるモニタ光L2の光路上であって、モニタ用レーザ光源5とビームスプリッタ13Bとの間に配置されている。
【0023】
バンドパスフィルタ15は、ビームスプリッタ13Bから出力される戻り光L3の光路上であって、ビームスプリッタ13Bと光検出器8との間に配置されている。バンドパスフィルタ15は、戻り光L3のうちモニタ光L2の波長成分を選択的に透過させる。レンズ11Dは、ビームスプリッタ13Bから出力される戻り光L3の光路上において、バンドパスフィルタ15と光検出器8との間に配置されている。
【0024】
治療用レーザ光源3から出力されたレーザパルス光L1は、レンズ11Aによって平行光となり、ビームスプリッタ13Aを透過し、レンズ11Bによって光ファイバ7の一方の端面7aに入力される。光ファイバ7の一方の端面7aに入力されたレーザパルス光L1は、光ファイバ7の他方の端面7bから出力される。
【0025】
モニタ用レーザ光源5から出力されたモニタ光L2は、レンズ11Cによって平行光となり、ビームスプリッタ13Bを透過し、ビームスプリッタ13Aに入力される。ビームスプリッタ13Aは、入力されたモニタ光L2をレンズ11Bに出力する。レンズ11C及びビームスプリッタ13Aの位置は、ビームスプリッタ13Aから出力されるモニタ光L2の光軸とレーザパルス光L1の光軸とが一致するように調整されている。レンズ11Bに入力されたモニタ光L2は、光ファイバ7の一方の端面7aに入力される。光ファイバ7の一方の端面7aに入力されたモニタ光L2は、光ファイバ7の他方の端面7bから出力される。
【0026】
光ファイバ7からの戻り光L3は、レンズ11Bによって平行光となり、ビームスプリッタ13Aに入力される。ビームスプリッタ13Aは、入力された戻り光L3をビームスプリッタ13Bに出力する。ビームスプリッタ13Bは、戻り光L3をバンドパスフィルタ15に出力する。バンドパスフィルタ15を通過したモニタ光L2と同じ波長成分の戻り光L3は、レンズ11Dによって光検出器8に入力される。
【0027】
光検出器8は、入力された戻り光L3の強度を検出する。光検出器8としては、光電子増倍管(Photomultiplier Tube;PMT)、アバランシェフォトダイオード、PINフォトダイオード、MPPC(Multi-Pixel Photon Counter)といった様々なものが用いられる。光検出器8には、解析部9が電気的に接続されている。光検出器8は、検出した戻り光L3を光電変換し、戻り光L3の強度を示す信号(検出信号)を解析部9に出力する。
【0028】
解析部9は、光検出器8によって検出された戻り光L3に基づいて、レーザパルス光L1の照射に伴う血管内の反応を評価する。本実施形態の解析部9は、光検出器8から入力された戻り光L3の強度を示す信号に基づいて、戻り光L3の強度の時間変化である時間波形(以下、単に「時間波形」という)を取得する。例えば、解析部9は、時間波形を、レーザパルス光L1の各パルスに対応させて取得してもよい。解析部9は、取得した時間波形に基づいてパラメータを求め、当該パラメータに基づいて、レーザパルス光L1の照射に伴う血管内の反応を評価する。このようなパラメータとしては、時間波形における収束時間、時間波形におけるピーク時間、時間波形におけるピーク強度、時間波形における波形パターン、時間波形におけるピークの有無、及び、時間波形の積分値(波形面積)のうちの少なくとも1つが用いられる。解析部9によって求められた評価結果は、例えば、画像、音声等の任意の出力として作業者に通知される。
【0029】
解析部9は、例えば、光検出器8から出力された信号をデジタルデータに変換するAD変換器と、演算処理が行われるCPUなどの演算回路と、RAM及びROMといったメモリにより構成される記憶装置と、入出力装置と、を含むコンピュータによって構成され得る。例えば、解析部9は、パーソナルコンピュータや、スマートフォン、タブレット端末などを含むスマートデバイスなどのコンピュータによって構成されてもよい。また、解析部9は、クラウドサーバなどのコンピュータによって構成されてもよく、この場合、解析部9の機能は、クラウドサーバによって実現されてもよい。
【0030】
次に、モニタ装置20による計測の原理を説明する。
【0031】
図2及び図3は、モニタ装置20による計測の原理を説明するための図である。図2は、血管BV内において血流を阻害する血栓Tに対して、光ファイバ7の他端からレーザパルス光L1が照射された際の反応を模式的に示す。血栓Tにレーザパルス光L1が照射されると、レーザパルス光L1のエネルギーが血栓Tに選択的に吸収される。その結果、図2に示すように、熱作用による気泡TBが発生する。血管BV内の血栓Tは、この気泡TBの物理的な作用によって切削又は除去される。
【0032】
血管BV内に気泡TBが発生すると、光ファイバ7から照射されるレーザパルス光L1及びモニタ光L2は、気泡TBによって反射あるいは散乱される。反射あるいは散乱されたレーザパルス光L1及びモニタ光L2の少なくとも一部は、光ファイバ7の他端に入力されて戻り光L3となる。本実施形態では、戻り光L3がバンドパスフィルタ15を通過することによって、主として戻り光L3におけるモニタ光L2の波長成分が光検出器8に入力される。
【0033】
図3は、照射されるレーザパルス光L1及びモニタ光L2と、血栓Tに照射されたレーザパルス光L1によって発生する気泡TBの動態とのタイミングチャートの一例を示す。図3に示すように、通常、気泡TBは、レーザパルス光L1の照射から10μs以内に発生する。発生した気泡TBは、時間の経過とともに成長した後、縮小し、消失する。発生後に体積を増加させた気泡TBは、増加のピークを経て体積を減少させ、最終的に消失する。気泡TBの持続時間(気泡TBの発生から消失までの時間)は、最大でも2ms程度である。気泡TBの持続時間は、レーザパルス光L1の入力エネルギー量などの様々な条件に依存する。
【0034】
図示する例では、レーザパルス光L1の周波数は5Hzである。つまり、光ファイバ7の他端からは、200msの周期のレーザパルス光L1が照射される。レーザパルス光L1のパルス幅は、100μsである。レーザパルス光L1の一のパルスによって発生した気泡TBは、その次のパルスが照射される前に消失している。この場合、レーザパルス光L1の照射の開始から10μs以降で且つ0.1msまでにおいて、気泡TBによるレーザパルス光L1の反射あるいは散乱が生じ、反射あるいは散乱したレーザパルス光L1の一部が戻り光L3となる。
【0035】
一方、モニタ光L2は、連続波光であり、気泡TBの発生から消失までの間、継続して照射されている。気泡TBの発生から消失までの間、気泡TBによるモニタ光L2の反射あるいは散乱が生じ、反射あるいは散乱したモニタ光L2の一部が戻り光L3となる。本実施形態では、このモニタ光L2の戻り光L3の時間波形に基づいて、血管BV内の反応を評価する。
【0036】
次に、レーザパルス光L1の照射に伴う血管BV内の反応を評価するためのパラメータについて説明する。
【0037】
本実施形態では、解析部9によって取得された時間波形の波形面積(積分値)に関連するパラメータを用いて、血管BV内の評価を行うことができる。戻り光L3は、モニタ光L2が気泡TBに反射あるいは散乱されることで生じるため、気泡TBの発生から消滅までの間に継続して検出される。そのため、時間波形におけるレーザパルス光L1の照射から振幅(強度)の収束までの波形面積をパラメータとして用いることができる。
【0038】
また、時間波形の収束時間をパラメータとすることができる。レーザパルス光L1の照射によって発生する気泡TBの形状等は、照射対象の状態などの様々な要因に依存する。そのため、気泡TBによって反射あるいは散乱される戻り光L3の状態もレーザパルス光L1の照射毎に異なる場合がある。例えば図4は、時間波形を示すグラフであり、照射条件を同一にした2回のレーザパルス光L1における、それぞれの戻り光L3の時間波形GA,GBを示している。図4では、時間が0μsのときにレーザパルス光L1の照射が開始されている。図4に示すように、レーザパルス光L1の照射条件を同一にした場合であっても、光検出器8によって得られる戻り光L3の振幅強度に差が生じ得る。例えば、時間波形GAでは、気泡TBの成長及び縮小に合わせてピークが形成されている。一方、時間波形GBは、目立ったピークを備えておらず、ブロードな波形を有している。
【0039】
図5は、このような2種類の時間波形におけるそれぞれの波形面積の時間変化を模式的に示すグラフである。図5では、時間波形の波形面積を縦軸にプロットしている。図5に示すように、2つのグラフSA,SBでは、収束した波形面積の大きさが異なっている。しかしながら、波形面積の収束までにかかる時間は略同一となっている。この時間は、気泡TBの持続時間であると考えられる。
【0040】
図6は、照射されたレーザパルス光L1の平均出力と解析部9によって取得された時間波形の収束時間との関係を示すグラフである。図6に示すように、レーザパルス光L1の出力以外の条件を同一にした場合、時間波形の収束時間は、レーザパルス光L1の平均出力に対してリニアな関係となっている。また、図7は、カテーテルの先端から疑似血栓(ゼラチンファントム)までの距離をレーザパルス光L1の照射距離とした場合における、照射距離と時間波形の収束時間との関係を示すグラフである。図7に示すように、時間波形の収束時間は、レーザパルス光L1の照射距離が短いほど長くなっている。このような結果から、時間波形の収束時間をパラメータとすることによって、気泡TBの動態を精度よく評価できる。
【0041】
また、図5に示す2つのグラフでは、上述の通り波形面積の大きさが異なっている。これは、気泡TBの成長速度等の動態に起因していると考えられる。気泡TBの成長は、レーザパルス光L1の入力エネルギー量に依存する他、照射対象の硬さのような周囲の環境にも依存する。そのため、同じ照射条件でも異なる反応が検出された場合、対象の状態が異なっていることを判別することができる。例えば、通常の血栓に比べて硬さが異なる血栓の場合には、戻り光L3の時間波形における波形面積の大きさが通常と異なる。また、上述の通り、血栓除去は気泡TBの物理的な作用によって得られるため、気泡TBの発生毎に光ファイバ7にも応力が加わる。そのため、同一の照射条件で発生した気泡TBにおいても、モニタ光L2の反射あるいは散乱の状態に差異が生じる場合がある。このような差異は、主に時間波形のピーク強度の差となって表れるが、気泡TBの持続時間は照射条件毎に収束する。そのため、時間波形の持続時間を検出することで、気泡TBの動態を精度よく評価できる。なお、ピーク強度も平均化すれば、条件毎に収束する(図8(a)参照)。
【0042】
また、時間波形においてピークが現れた時間であるピーク時間に関連するパラメータを用いることができる。図8は、モニタ装置20によって計測される時間波形の一例を示すグラフである。図8では、時間が0μsのときにレーザパルス光L1の照射が開始されている。図8の(a)は、平均出力を36.1mVとするレーザパルス光L1が同一の照射条件で4回照射されたときの時間波形の例を示している。また、図8の(b)は、平均出力を73.4mVとするレーザパルス光L1が4回照射されたときの時間波形の例を示している。図8に示すように、戻り光L3の時間波形では、振幅の最大値がピークとして観測される。例えば、図8の(a)では、レーザパルス光L1の照射開始から平均して約250μsの位置にピークが現れており、図8の(b)では、レーザパルス光L1の照射開始から平均して約400μs程度の位置にピークが現れている。なお、図8において、レーザパルス光L1の照射直後に現れているピークは、戻り光L3のうちバンドパスフィルタ15によって減衰しきれなかったレーザパルス光L1の波長成分に起因するものである。
【0043】
図9は、レーザパルス光L1の平均出力とモニタ装置20によって計測される時間波形のピーク時間との関係を示すグラフである。図9に示すように、時間波形のピーク時間は、レーザパルス光L1の平均出力に対してリニアな関係となっている。通常、入力エネルギー量が増加すると、発生する気泡TBのサイズが大きくなる。この場合、気泡TBが最大となるまでの時間が長くなるので、取得される時間波形のピークまでの時間が大きくなると考えられる。すなわち、ピークまでの時間は気泡TBの大きさの指標になり得る。そこで、時間波形における振幅のピークまでの時間(立ち上がり時間)をパラメータとして用いることができる。また、上述の通り、気泡TBの大きさと時間波形の収束時間にも相関があるため、振幅のピークから収束までの時間(立ち下がり時間)をパラメータとしてもよい。
【0044】
また、気泡TBが発生する条件が同じであれば、時間波形におけるピーク時の強度(振幅)であるピーク強度についても充分に有用なパラメータとして使用できる。また、時間波形における波形パターンをパラメータとしてもよい。例えば、血液Bと血栓Tとでは硬さ等の物性が異なる。そのため、同じレーザパルス光L1が照射された場合でも、ピーク強度や波形パターンに違いが生じ得る。例えば、血液Bにレーザパルス光L1が照射されたときの気泡TBのサイズは、血栓Tの場合に比べて大きくなる。
【0045】
また、時間波形におけるピークの有無をパラメータとしてもよい。図7に示すように、レーザパルス光L1の照射距離が大きくなった場合には、次第に反応の低下が起こり、最終的にレーザパルス光L1の照射効果が得られなくなる。つまり、照射距離が所定の長さ以上になった場合には、気泡TBが発生しなくなるので、戻り光L3の時間波形にピークが現れなくなる。
【0046】
次に、図10図12を参照して、光照射装置1Aにおけるモニタ装置20の作動方法の例について説明する。
【0047】
光照射装置1Aを用いてレーザ血栓治療を行う場合、光ファイバ7を収容したカテーテルCを血管BV内に挿入し、当該カテーテルCの先端を血栓Tに近い位置まで移動させる。この状態では、カテーテルC内に生理食塩水Sを注入し、カテーテルCの先端から血管BV内に生理食塩水Sを投与する。血管BV内におけるカテーテルCの位置は、例えばカテーテルCの先端側に取り付けられた金属マーカMをX線透過装置で撮像して確認する。そして、治療用レーザ光源3からレーザパルス光L1を出力させ、光ファイバ7の他端からレーザパルス光L1を血管BV内に照射する。このレーザパルス光L1の照射に併せて、モニタ装置20を次のとおり作動させる。
【0048】
すなわち、まず、モニタ用レーザ光源5からモニタ光L2を出力させ、光ファイバ7の他端からモニタ光L2を血管BV内に照射する(出力工程)。出力工程で出力させたモニタ光L2の戻り光L3を、光検出器8により検出し、戻り光L3の強度に応じた信号(検出信号)を出力する(光検出工程)。光検出工程で出力された信号に基づいて、戻り光L3の強度の時間変化である時間波形を、解析部9により取得し、血管BV内の反応を評価する(解析工程)。
【0049】
図10は、カテーテルCが血管BV内に挿管された状態を示す模式図である。図10の(a)の例では、カテーテルCの先端の位置が、血栓Tから離れている。血液中で照射されたレーザパルス光L1は、0.1mm進むと90%以上が血液によって吸収されてしまう。そのため、カテーテルCの先端が血栓Tの直近に配置されていない場合、レーザパルス光L1の照射による気泡TBが発生し難く、治療の効果は著しく低下する。また、図10の(b)の例では、カテーテルCの先端の位置が、血栓Tの一部のみに直近している。このように、カテーテルCの先端が血栓Tの大部分に近接できていない場合には、治療の効果が低下する虞がある。また、図10の(c)の例では、カテーテルCの先端の位置が、血栓Tではなく血管壁に向いている。この場合、レーザパルス光L1は血栓Tではなく、血管壁に照射されることになり、治療の効果を得ることができない。
【0050】
以上の図10の(a)〜(c)に示した状態では、モニタ光L2の反射あるいは散乱が生じないか、生じても通常の状態に比べて小さくなる。そこで、時間波形の波形面積が極端に小さい場合、時間波形のピーク強度等が極端に小さい場合、時間波形の収束時間が極端に小さい場合、ピーク波形が得られない場合などには、カテーテルCの先端の位置が、血栓Tから離れていると評価することができる。なお、極端に小さいとは、取得される各値が所定の閾値よりも小さいことを意味する。
【0051】
図11は、血管BV内の状態とモニタ装置20によって計測される時間波形との関係を示す模式図である。図11の(a)は、カテーテルCの先端と血栓Tとの理想的な位置関係を示す。カテーテルCの先端が血栓Tに直近している場合、レーザパルス光L1が効率的に血栓Tに照射される。この場合、発生する気泡TBによってモニタ光L2が反射あるいは散乱され、戻り光L3が増大する。そこで、時間波形の波形面積、時間波形のピーク強度、時間波形の収束時間などから、カテーテルCの先端の位置が血栓Tに直近していると評価することができる。
【0052】
図11の(b)は、図11の(a)の状態から治療が進行した状態を示す。図11の(b)に示すように、治療が進行すると、カテーテルCの先端から血栓Tまでの距離が大きくなる。この場合、レーザパルス光L1の照射距離が大きくなり、気泡TBが発生し難くなる。これにより、治療効果が低下する。時間波形の波形面積の減少、時間波形のピーク強度の減少、時間波形の収束時間の減少などから、カテーテルCの先端の位置が血栓Tから離れてきたと評価することができる。このように、カテーテルCの位置が血栓Tから離れたと評価された場合には、図11の(c)のように再びカテーテルCを血栓Tに近づける操作が行われる。これにより、気泡TBが発生しやすくなり、治療が効率的に行われる。この場合、戻り光L3が増加する。すなわち、時間波形の波形面積の増加、時間波形のピーク強度の増加、時間波形の収束時間の増加などから、カテーテルCの先端の位置が、血栓Tに直近したと評価することができる。
【0053】
図12は、カテーテルCが血栓Tを貫通した状態を示す模式図である。図11の(a)〜(c)の工程を繰り返し行うことによって、カテーテルCの先端が血栓Tを貫通する。これにより、血栓Tによって閉塞された血管BVが再開通する。流路が確保された結果、図12の(a)に示すように、カテーテルCの先端の周囲にも血液Bが流入する。この場合、照射されるレーザパルス光L1が血液Bに吸収されて、気泡TBが発生する。in vitroでの実験によって、レーザパルス光L1の入力エネルギー量が同一の場合、レーザパルス光L1が血栓Tに照射されたときに発生する気泡TBよりも、レーザパルス光L1が血液Bに照射されたときに発生する気泡TBの方が大きくなることが分かっている。そのため、血管BVの再開通後に、例えば戻り光L3の時間波形における収束時間の増加といった変化を観測することができる。
【0054】
ただし、レーザパルス光L1の照射中においては、カテーテルCの先端から血管BV内に生理食塩水Sが継続投与されている。そのため、図12の(b)に示すように、血液Bは生理食塩水Sによって置換される可能性がある。この場合、例えば戻り光L3の時間波形の収束時間が減少することがある。このように、図12の(a)及び図12の(b)のいずれの場合でも、血栓Tにレーザパルス光L1が照射されている場合に比べて、異なる時間波形が取得される。
【0055】
レーザ血栓治療に対するモニタ装置20よる評価は、解析部9によって、音、音声、画像表示等の出力で作業者に通知され得る。そのため、作業者は治療の開始、治療の効果、治療の進捗、及び治療の終了をリアルタイムで把握することが可能となる。
【0056】
以上、本実施形態によれば、モニタ用レーザ光源5によって照射されたモニタ光L2の戻り光L3が光検出器8によって検出される。モニタ光L2の戻り光L3は、レーザパルス光L1によって生じた気泡TBにモニタ光L2が反射あるいは散乱されることによって生じる。ここで、レーザパルス光L1が血栓Tに対して適切に照射されている場合と、レーザパルス光L1が血栓Tに対して適切に照射されていない場合とでは、気泡TBの発生の有無や、気泡TBの消滅までの状態といった血管BV内の反応が異なることが見出される。そして、このような血管BV内の反応が異なることに応じて、戻り光L3の時間波形も異なることが見出される。そこで、戻り光L3の時間波形から求められたパラメータに基づいてレーザパルス光L1の照射に伴う血管BV内の反応を評価することによって、不可視下の血管BV内の血栓Tに対してレーザパルス光L1が適切に照射されていることを簡便にリアルタイムで評価することが可能となる。この場合、カテーテルCの先端の位置も把握できるため、血管壁にレーザパルス光L1が照射されることを抑制できる。また、上記実施形態においては、カテーテルCの先端に新たな構造体を構築する等の必要がなく、従来使用されていたカテーテルをそのまま利用することができる。
【0057】
また、パラメータとして、時間波形における収束時間、時間波形におけるピーク時間、時間波形におけるピーク強度、時間波形における波形パターン、時間波形におけるピークの有無、及び、時間波形の波形面積(積分値)を挙げることができる。このようなパラメータによれば、レーザパルス光L1の照射による血管BV内の反応を適切に判断することできる。なお、これらのパラメータは、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。
【0058】
また、モニタ光L2は連続波光であるため、気泡TBの発生から消滅までを継続して観測しやすくすることができる。なお、モニタ光L2としてパルス光を用い、このモニタ光L2の戻り光L3に基づいて、血管BV内の反応を評価してもよい。この場合、モニタ光L2のパルス幅と気泡TBの持続時間との関係によっては、気泡TBの発生から消失までを継続して観察し難い可能性もあるが、気泡TBの動態を評価することはできる。モニタ光L2としてパルス光を用いる場合には、モニタ光L2のパルス幅を気泡TBの持続時間よりも長くすることによって、気泡TBの発生から消滅までを継続して観測できる。
【0059】
また、モニタ光L2の波長は、600nm乃至1300nmである。モニタ光L2がヘモグロビンや水分に吸収され難い波長を有することによって、モニタ光L2の減衰を抑制することができる。
【0060】
また、レーザパルス光L1の戻り光L3自体の有無によって、気泡TBの発生の有無を確認することができる。この場合、例えば、光ファイバ7の先端に直近した位置に血栓Tがあることを確認できる。また、気泡TBが発生しない場合には、レーザパルス光L1が血栓Tに照射されていないと評価することができる。この場合、例えば、光ファイバ7の先端が血栓Tから離れていることや、レーザパルス光L1が血管壁に照射されていることが原因として考えられる。
【0061】
[第2実施形態]
本実施形態に係る光照射装置1Bでは、治療用レーザ光源3によって照射されるレーザパルス光L1がモニタ光L2としても使用されている点で第1実施形態の光照射装置1Aと相違している。以下、主として第1実施形態と相違する点について説明し、同一の要素や部材については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0062】
図13に示すように、光照射装置1Bは、治療用レーザ光源3(光源、光出力部)と、光ファイバ7と、結合光学系30と、光検出器8と、解析部9と、を備えている。結合光学系30は、治療用レーザ光源3と光ファイバ7の一端とを光学的に接続する。すなわち、結合光学系30は、治療用レーザ光源3から出力されるレーザパルス光L1を光ファイバ7の端面7aに入力する。結合光学系30は、光ファイバ7の一端と光検出器8とを光学的に接続する。すなわち、結合光学系30は、光ファイバ7からの戻り光L3を光検出器8に入力する。結合光学系30は、3つのレンズ11A,11B,11Dと、1つのビームスプリッタ33と、を有している。なお、本実施形態では、治療用レーザ光源3と、光検出器8と、解析部9と、結合光学系30の一部とによって、モニタ装置35が構成されている。結合光学系30のうちレンズ11A,11B,11D及びビームスプリッタ33は、モニタ装置35に属する。
【0063】
ビームスプリッタ33は、治療用レーザ光源3から出力されるレーザパルス光L1の光路上において、レンズ11Aとレンズ11Bとの間に配置されている。ビームスプリッタ33は、例えばハーフミラーによって構成される。レンズ11Dは、戻り光L3の光路上において、ビームスプリッタ33と光検出器8との間に配置されている。
【0064】
治療用レーザ光源3から出力されるレーザパルス光L1は、レンズ11Aによって平行光となり、レンズ11Bによって光ファイバ7の一方の端面7aに入力される。光ファイバ7の一方の端面7aに入力されたレーザパルス光L1は、光ファイバ7の他方の端面7bから出力される。光ファイバ7からの戻り光L3は、レンズ11Bによって平行光となり、ビームスプリッタ33に入力される。ビームスプリッタ33は、入力された戻り光L3を光検出器8に向けて出力する。この戻り光L3は、レンズ11Dによって光検出器8に入力される。
【0065】
レーザパルス光L1の照射によって気泡TBが発生すると、気泡TBによるレーザパルス光L1の反射あるいは散乱が生じ、レーザパルス光L1の一部が戻り光L3となる。つまり、本実施形態では、レーザパルス光L1がモニタ光としても機能しており、このレーザパルス光L1の戻り光L3を解析部9で解析することによって、気泡TBの動態を評価することが可能である。
【0066】
本実施形態においても、第一実施形態と同様の作用効果を奏する。特に、本実施形態では、血管BV内の反応を評価するために血管BV内に照射されるモニタ光がレーザパルス光L1である。レーザパルス光L1がモニタ光を兼ねることによって、モニタ用レーザ光源5(図1参照)等の別途の光源を不要にできる。なお、この場合、レーザパルス光L1のパルス幅と気泡TBの持続時間との関係によっては気泡TBの発生から消失までを継続して観察し難い可能性もあるが、この場合であっても、気泡TBの動態を評価することは可能である。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
【0068】
例えば、上述した各実施形態では、モニタ装置20,35をレーザ血栓治療用の光照射装置1A、1Bに適用した例を示したが、これに限定されない。例えば、モニタ装置20,35は、機械的治療装置に適用されてもよい。図14は、機械的治療装置による血栓Tの治療を示す模式図である。図14に示すように、機械的治療装置では、カテーテルCと、カテーテルC内に収容された光ファイバ7と、カテーテルC内に収容された血栓キャッチャ40とを有している。血栓キャッチャ40は、例えばワイヤ41と、ワイヤ41の先端に設けられた螺旋状のキャッチャ43とを有している。このような機械的治療装置では、カテーテルCを血栓Tの直近に配置し、血栓キャッチャ40のキャッチャ43によって、血栓Tを引き抜くことができる。この場合、光ファイバ7から照射されたレーザパルス光L1及びモニタ光L2の少なくとも何れかの戻り光L3をモニタすることによって、カテーテルCの位置確認を簡便にリアルタイムで行うことができる。また、血栓Tの引き抜き操作においては、血栓Tがキャッチャ43から脱落していないかの確認をすることができる。
【0069】
また、例えば、モニタ装置20,35は他の機械的治療装置に適用されてもよい。図15は、他の機械的治療装置による血栓Tの治療を示す模式図である。図15に示すように、機械的治療装置では、カテーテルCと、カテーテルC内に収容された光ファイバ7とを有している。この機械的治療装置では、カテーテルCを血栓Tの直近に配置し、カテーテルCによって、血栓Tを吸引することができる。この場合、光ファイバ7から照射されたレーザパルス光L1及びモニタ光L2の少なくとも何れかの戻り光L3をモニタすることによって、カテーテルCの位置確認を簡便にリアルタイムで行うことができる。また、血管壁等を吸引することなく、確実に血栓Tを吸引しているかの確認をすることができる。
【0070】
また、例えば、モニタ装置20,35は薬剤投与装置に適用されてもよい。図16は、薬剤投与装置による血栓Tの治療を示す模式図である。図16に示すように、薬剤投与装置では、カテーテルCと、カテーテルC内に収容された光ファイバ7とを有している。この薬剤投与装置では、カテーテルCを血栓Tの直近に配置し、カテーテルCの先端から血栓Tに向けて薬剤を投与することができる。この場合、光ファイバ7から照射されたレーザパルス光L1又はモニタ光L2の戻り光L3をモニタすることによって、カテーテルCの位置確認を簡便にリアルタイムで行うことができる。また、薬剤投与による血栓溶解の効果が得られているかを確認することができる。また、血栓Tの有無の確認を行うことができる。
【0071】
また、上述した各実施形態では、結合光学系10,30にビームスプリッタを使用しているが、ビームスプリッタに代えて、光ファイバカプラ、光ファイバコンバイナのような光結合及び光分離機能を有する光学部品を用いてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1A,1B…光照射装置(血管内にパルス光を照射する装置)、3…治療用レーザ光源(光源、光出力部)、5…モニタ用レーザ光源(光源、光出力部)、8…光検出器(光検出部)、9…解析部、20…モニタ装置、L1…レーザパルス光(パルス光)、L2…モニタ光、L3…戻り光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16