特許第6804921号(P6804921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804921
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】電源接続システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/30 20060101AFI20201214BHJP
   H01H 85/20 20060101ALI20201214BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H01M2/30 A
   H01H85/20 D
   H01M2/30 B
   H01M2/34 A
   H01M2/34 B
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-196690(P2016-196690)
(22)【出願日】2016年10月4日
(65)【公開番号】特開2018-60653(P2018-60653A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】美才治 健
(72)【発明者】
【氏名】藤坂 宗幸
(72)【発明者】
【氏名】田沼 賢一
(72)【発明者】
【氏名】井端 栄史
(72)【発明者】
【氏名】板垣 辰昌
(72)【発明者】
【氏名】小野田 伸也
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−131117(JP,A)
【文献】 特開2016−131121(JP,A)
【文献】 特開2017−107824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/30
H01H 85/20
H01M 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する第1面及び第2面を外壁面として有するバッテリの前記第1面に設けたバッテリポストに対して電気的に接続されるバッテリ端子と、
前記バッテリ端子に対して電気的に接続される電子部品を設けたバッテリ用接続ユニットと、
前記バッテリポストが挿通される貫通孔を有し、前記バッテリ端子を収容すると共に前記バッテリ用接続ユニットを保持する保持部材と、
前記保持部材を前記バッテリに固定させる固定構造と、
を備え、
前記固定構造は、
弾性を持つ弧状かつ板状の弧状弾性体を有し、前記弧状弾性体の内周面側が前記バッテリ側を向くように配置すると共に、前記保持部材を前記バッテリに固定させる際に、前記第2面に設けた被係止部に前記弧状弾性体における周方向の一端の係止部を引っ掛けて係止する板バネ部材と、
前記被係止部に係止される前の前記板バネ部材の自由位置と前記保持部材が前記バッテリに固定された後の前記板バネ部材の固定位置との間で前記弧状弾性体における周方向の他端を回転自在に支持し、かつ、前記保持部材に対して回転自在に支持される連結部材と、
前記弧状弾性体の軸に対して平行な第1回転軸を有し、前記板バネ部材における前記弧状弾性体の前記他端と前記連結部材の相互間での相対回転を可能にする第1回転機構と、
前記第1回転軸に対して平行な第2回転軸を有し、前記連結部材と前記保持部材の相互間での相対回転を可能にする第2回転機構と、
を備え、
前記板バネ部材は、前記弧状弾性体の外周面に、作業者が少なくとも触覚で認識することができ、かつ、前記自由位置から前記固定位置まで移動させる際に作業者が押圧力を作用させる操作部を備えた操作領域を有することを特徴とした電源接続システム。
【請求項2】
前記操作部は、前記弧状弾性体の外周面側と内周面側とを連通させる貫通孔であることを特徴とした請求項1に記載の電源接続システム。
【請求項3】
前記操作部は、前記弧状弾性体の外周面から膨出させた膨出部であり、
前記膨出部は、前記板バネ部材を前記固定位置まで移動させた後で前記押圧力を作用させ続けた際に、前記弧状弾性体の内周面側に凹むように形成することを特徴とした請求項1又は2に記載の電源接続システム。
【請求項4】
前記操作領域は、前記弧状弾性体の外周面側から内周面側に向けた前記押圧力を前記自由位置で作用させた際に、前記弧状弾性体の前記一端に設けた係止部を前記被係止部に引っ掛けることが可能で、かつ、その引っ掛け状態のまま前記板バネ部材を前記固定位置まで移動させることが可能な位置に配置することを特徴とした請求項1,2又は3に記載の電源接続システム。
【請求項5】
前記連結部材は、前記自由位置から前記固定位置までの移動の途中で前記弧状弾性体の曲率が小さくなり、前記固定位置まで移動した際の前記弧状弾性体の曲率が前記移動の途中の最小の曲率のときよりも大きく且つ前記自由位置での曲率よりも小さくなるように前記弧状弾性体を変形させるものであり、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間の間隔が前記弧状弾性体の変形を可能にするものとなるように形成することを特徴とした請求項1から4の内の何れか1つに記載の電源接続システム。
【請求項6】
前記電子部品は、ヒューズ回路体であることを特徴とした請求項1から5の内の何れか1つに記載の電源接続システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源接続システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されたバッテリにおいては、バッテリポストに対して電源接続システムが接続される場合がある。その電源接続システムとは、バッテリに対して電気的に接続されるバッテリ端子と、このバッテリ端子に対して電気的に接続される電子部品を設けたバッテリ用接続ユニットと、を備えたものである。例えば、下記の特許文献1から3には、バッテリ用接続ユニットとしてヒューズユニットを備えたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−87823号公報
【特許文献2】特開2009−110856号公報
【特許文献3】特開2015−60810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この電源接続システムは、バッテリ端子やバッテリ用接続ユニットをバッテリに組み付けることになるが、従来の組み付けの作業形態に着目するならば、その点で改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、バッテリへの組付け作業性を向上させた電源接続システムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明は、互いに交差する第1面及び第2面を外壁面として有するバッテリの前記第1面に設けたバッテリポストに対して電気的に接続されるバッテリ端子と、前記バッテリ端子に対して電気的に接続される電子部品を設けたバッテリ用接続ユニットと、前記バッテリポストが挿通される貫通孔を有し、前記バッテリ端子を収容すると共に前記バッテリ用接続ユニットを保持する保持部材と、前記保持部材を前記バッテリに固定させる固定構造と、を備える。前記固定構造は、弾性を持つ弧状かつ板状の弧状弾性体を有し、前記弧状弾性体の内周面側が前記バッテリ側を向くように配置すると共に、前記保持部材を前記バッテリに固定させる際に、前記第2面に設けた被係止部に前記弧状弾性体における周方向の一端の係止部を引っ掛けて係止する板バネ部材と、前記被係止部に係止される前の前記板バネ部材の自由位置と前記保持部材が前記バッテリに固定された後の前記板バネ部材の固定位置との間で前記弧状弾性体における周方向の他端を回転自在に支持し、かつ、前記保持部材に対して回転自在に支持される連結部材と、前記弧状弾性体の軸に対して平行な第1回転軸を有し、前記板バネ部材における前記弧状弾性体の前記他端と前記連結部材の相互間での相対回転を可能にする第1回転機構と、前記第1回転軸に対して平行な第2回転軸を有し、前記連結部材と前記保持部材の相互間での相対回転を可能にする第2回転機構と、を備える。そして、前記板バネ部材は、前記弧状弾性体の外周面に、作業者が少なくとも触覚で認識することができ、かつ、前記自由位置から前記固定位置まで移動させる際に作業者が押圧力を作用させる操作部を備えた操作領域を有することを特徴としている。
【0007】
ここで、前記操作部は、前記弧状弾性体の外周面側と内周面側とを連通させる貫通孔であることが望ましい。
【0008】
また、前記操作部は、前記弧状弾性体の外周面から膨出させた膨出部であり、前記膨出部は、前記板バネ部材を前記固定位置まで移動させた後で前記押圧力を作用させ続けた際に、前記弧状弾性体の内周面側に凹むように形成することが望ましい。
【0009】
また、前記操作領域は、前記弧状弾性体の外周面側から内周面側に向けた前記押圧力を前記自由位置で作用させた際に、前記弧状弾性体の前記一端に設けた係止部を前記被係止部に引っ掛けることが可能で、かつ、その引っ掛け状態のまま前記板バネ部材を前記固定位置まで移動させることが可能な位置に配置することが望ましい。
【0010】
また、前記連結部材は、前記自由位置から前記固定位置までの移動の途中で前記弧状弾性体の曲率が小さくなり、前記固定位置まで移動した際の前記弧状弾性体の曲率が前記移動の途中の最小の曲率のときよりも大きく且つ前記自由位置での曲率よりも小さくなるように前記弧状弾性体を変形させるものであり、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間の間隔が前記弧状弾性体の変形を可能にするものとなるように形成することが望ましい。
【0011】
また、前記電子部品は、ヒューズ回路体であることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電源接続システムは、板バネ部材に対する押圧力の作用点(操作点)を作業者が容易に認識することができ、その操作点としての操作部とその周囲に押圧力を加えるだけで、板バネ部材及び連結部材から成る固定具を保持部材とバッテリとの間でロックさせ、その保持部材と共にバッテリに固定される。つまり、この電源接続システムは、そのバッテリへの組付け作業性を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、バッテリに組み付けた実施形態の電源接続システムを示す斜視図である。
図2図2は、電源接続システムを別角度から見た斜視図である。
図3図3は、電源接続システム(バッテリ接続ユニットを除く)の分解斜視図である。
図4図4は、バッテリ接続ユニットが取り付けられる前の電源接続システムを示す斜視図である。
図5図5は、固定具を示す斜視図である。
図6図6は、固定具を別角度から見た斜視図である。
図7図7は、固定具を示す正面図である。
図8図8は、図7のX−X線断面図である。
図9図9は、板バネ部材がバッテリに係止されたときの固定構造を示す斜視図である。
図10図10は、図9のY1−Y1線断面図である。
図11図11は、板バネ部材が自由位置のときの固定構造を示す斜視図である。
図12図12は、板バネ部材が自由位置のときの固定構造を示す正面図である。
図13図13は、図12のY2−Y2線断面図である。
図14図14は、板バネ部材が固定位置のときの固定構造を示す斜視図である。
図15図15は、板バネ部材が固定位置のときの固定構造を示す正面図である。
図16図16は、図15のY3−Y3線断面図である。
図17図17は、変形例の固定具を示す斜視図である。
図18図18は、図17のZ1−Z1線断面図である。
図19図19は、膨出部が凹まされた変形例の固定具を示す斜視図である。
図20図20は、図19のZ2−Z2線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る電源接続システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
[実施形態]
本発明に係る電源接続システムの実施形態の1つを図1から図20に基づいて説明する。
【0016】
図1及び図2の符号1は、本実施形態の電源接続システムを示す。電源接続システム1とは、バッテリ端子10と少なくとも1つのバッテリ用接続ユニット20とを備えたものである。この電源接続システム1は、バッテリ100に組み付けることでバッテリポスト101と電線110との間に介在させ、そのバッテリポスト101と電線110とに対してバッテリ端子10とバッテリ用接続ユニット20の電子部品21とを電気的に接続させる。バッテリ100は、互いに交差(この例示では、直交)する第1面100a及び第2面100bを外壁面として有しており、その第1面100aにバッテリポスト101を立設させている。このバッテリ100においては、第1面100aが上面となり、第2面100bが側面となる。この例示の電源接続システム1は、正極側のバッテリポスト101に取り付ける。
【0017】
バッテリ端子10は、金属等の導電性材料で成形されたものであり、バッテリポスト101に対して物理的且つ電気的に接続される。この例示のバッテリ端子10は、金属板を母材にして成形された第1及び第2の端子部材11,12を備えている(図3)。
【0018】
その第1端子部材11と第2端子部材12は、その相互間が雄ネジ部材13と雌ネジ部材14とを螺合させることで物理的且つ電気的に接続される。雄ネジ部材13は、第1端子部材11に対して、バッテリポスト101と同じ向きに突出させた状態で組み付けられている。一方、第2端子部材12には、その雄ネジ部材13を挿通させる貫通孔12aが形成されている。
【0019】
また、第1端子部材11には、別の雄ネジ部材15と雌ネジ部材16とが組み付けられている。第1端子部材11は、その雄ネジ部材15と雌ネジ部材16とを締め込んでいくことでバッテリポスト101に加締められ、これにより、このバッテリポスト101に対して物理的且つ電気的に接続される。
【0020】
また、第2端子部材12には、別の貫通孔12bが形成されている。一方、保持部材30には、バッテリポスト101と同じ向きに突出させた少なくとも1本の雄ネジ部材31が設けられている。この例示の保持部材30は、その雄ネジ部材31を1本備えている。第2端子部材12は、その雄ネジ部材31を貫通孔12bに挿通させる。この第2端子部材12は、その雄ネジ部材31に雌ネジ部材25(図4)を螺合させることによって、後述するバッテリ用接続ユニット20の電子部品21と共締めされ、その電子部品21に対して電気的に接続される。
【0021】
このバッテリ端子10には、電線110の電気接続部111が物理的且つ電気的に直接接続される場合もあれば、その電気接続部111がバッテリ用接続ユニット20の電子部品21を介して電気的に間接接続される場合もある。
【0022】
そのバッテリ用接続ユニット20とは、バッテリ100に接続される接続ユニットのことであり、電子部品21と、この電子部品を支持する支持部材22(図4)と、を備える。この例示のバッテリ用接続ユニット20は、ヒューズユニットとして構成されており、電子部品21としての保護回路部品(ヒューズ回路体)を備えている。支持部材22は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形されたものであり、その電子部品21を内方で支持する。ヒューズ回路体は、バッテリ端子10側と電線110側との間の通電経路上に可溶体を有する。このヒューズ回路体は、雄ネジ部材31と雌ネジ部材25とを螺合させることによってバッテリ端子10の第2端子部材12に共締めされ、このバッテリ端子10に対して物理的且つ電気的に接続される。このため、電子部品21には、雄ネジ部材31を挿通させる貫通孔21aが形成されている。更に、このヒューズ回路体は、雄ネジ部材26と雌ネジ部材27とを螺合させることによって電線110の端末の端子115に共締めされ、その電線110に対して電気的に接続される(図1)。その端子115は、金属等の導電性材料で成形されたものであり、電線110の電気接続部111に対して、圧着加工等で物理的且つ電気的に接続されている。この例示では、このバッテリ用接続ユニット20が2つ設けられている。以下、必要に応じて、その2つのバッテリ用接続ユニット20の内の一方を第1バッテリ用接続ユニット20Aと称し、その内の他方を第2バッテリ用接続ユニット20Bと称する。この電源接続システム1においては、第2端子部材12の上に第1バッテリ用接続ユニット20Aの電子部品21が積層され、その電子部品21の上に第2バッテリ用接続ユニット20Bの電子部品21が積層されている。尚、図1では、第1バッテリ用接続ユニット20Aに関わる雌ネジ部材27の図示を省略し、第2バッテリ用接続ユニット20Bに関わる端子115の図示を省略している。
【0023】
電源接続システム1は、そのバッテリ端子10を収容すると共にバッテリ用接続ユニット20を保持する保持部材30を備えている(図1及び図3)。その保持部材30は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。
【0024】
保持部材30は、バッテリポスト101が挿通される貫通孔32を有している(図3)。この保持部材30は、その貫通孔32にバッテリポスト101が挿通されるようバッテリ100の第1面100aに設置される。バッテリ端子10の第1端子部材11は、バッテリポスト101を挿通させつつ保持部材30に載せ置かれ、周囲の壁等から成る収容部33に収容される。電源接続システム1は、そのバッテリ端子10についてのバッテリポスト101の軸周りの回転を規制する回転規制部材35を備えている。その回転規制部材35は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形されたものであり、バッテリポスト101が挿通される貫通孔35aを有している。回転規制部材35は、保持部材30との間にバッテリ端子10が挟み込まれるように配置して、この保持部材30に取り付ける。
【0025】
保持部材30は、第2端子部材12の上に電子部品21が積層された状態で第1バッテリ用接続ユニット20Aを保持する。第1バッテリ用接続ユニット20Aの支持部材22と保持部材30との間には、保持部材30から第1バッテリ用接続ユニット20Aが外れないように保持する保持機構(図示略)が設けられている。その保持機構は、例えば、一方の爪部を他方に引っ掛けることで相互間を係合させるロック機構の如きものである。第2バッテリ用接続ユニット20Bは、その電子部品21が第1バッテリ用接続ユニット20Aの電子部品21の上に積層された状態で保持部材30に保持させる。第2バッテリ用接続ユニット20Bの支持部材22と保持部材30との間には、保持部材30から第2バッテリ用接続ユニット20Bが外れないように保持する保持機構(図示略)が設けられている。その保持機構は、第1バッテリ用接続ユニット20Aに関わるものと同じように構成すればよい。
【0026】
電源接続システム1は、その保持部材30をバッテリ100に固定させる固定構造40を備えている(図1)。その固定構造40は、保持部材30に取り付けた固定具41を利用してバッテリ100に固定させるものであり、その固定具41としての板バネ部材50と連結部材60とを備える(図5から図8)。
【0027】
板バネ部材50は、弾性を持つ弧状かつ板状の弧状弾性体51を有するものであり、金属板を母材にして成形される。この板バネ部材50は、保持部材30がバッテリ100の第1面100aに設置されている状態のときに、弧状弾性体51の内周面側がバッテリ100側を向くように配置する。
【0028】
この板バネ部材50は、弧状弾性体51における周方向の一端に係止部52を有する。その係止部52は、保持部材30をバッテリ100に固定させる際にバッテリ100の被係止部102に引っ掛ける部位であり(図9及び図10)、その被係止部102で板バネ部材50を係止させる。この例示の係止部52は、弧状弾性体51における周方向の一端から内周面側に折り曲げられたフック形状のものとして形成している。この例示の板バネ部材50には、係止部52を2つ設けている(図6)。板バネ部材50は、保持部材30をバッテリ100に固定させる際に、その係止部52と被係止部102の相互間における係止点を仮想回動軸として回動させる。
【0029】
ここで、被係止部102は、バッテリ100の第2面100bに設けている。この例示の被係止部102は、第2面100bから突出させた第1突出体102aと、この第1突出体102aにおける突出方向側の端部からバッテリ100の下面側に向けて突出させた第2突出体102bと、を有している。係止部52は、その第2突出体102bと第2面100bとの間の隙間に挿入して、第2突出体102bに引っ掛ける。
【0030】
この板バネ部材50は、係止部52が被係止部102に係止される前の自由位置と保持部材30がバッテリ100に固定された後の固定位置との間で移動させる。図11から図13は、板バネ部材50が自由位置のときの固定構造40を示している。図14から図16は、板バネ部材50が固定位置のときの固定構造40を示している。連結部材60は、その板バネ部材50の動きを担うものである。
【0031】
連結部材60は、板バネ部材50を保持部材30に連結させるものである。この連結部材60は、自由位置と固定位置との間で弧状弾性体51における周方向の他端を回転自在に支持し、かつ、保持部材30に対して回転自在に支持される。この例示の連結部材60は、金属等から成る線材を折り曲げたものであり、軸線が互いに間隔を空けて平行に配置された1組の軸部61,62を有する(図5から図8)。この連結部材60においては、一方の軸部61が後述する第1回転軸71となり、他方の軸部62が後述する第2回転軸81となる。この例示の連結部材60は、四角に折り曲げられている。
【0032】
この固定構造40においては、板バネ部材50と連結部材60との間に第1回転機構70を設け、かつ、連結部材60と保持部材30との間に第2回転機構80を設けている(図10)。
【0033】
第1回転機構70は、弧状弾性体51における周方向の他端と連結部材60の相互間での相対回転を可能にするものである。この第1回転機構70は、その弧状弾性体51の軸に対して平行な第1回転軸71を有している(図5から図8)。この例示では、連結部材60の軸部61を第1回転軸71とし、この第1回転軸71を軸支する軸受け72を弧状弾性体51における周方向の他端に設ける。ここでは、その弧状弾性体51の他端を第1回転軸71に巻き付けるように折り曲げることによって、この弧状弾性体51の他端に軸受け72を形成する。
【0034】
第2回転機構80は、連結部材60と保持部材30の相互間での相対回転を可能にするものである。この第2回転機構80は、第1回転軸71に対して平行な第2回転軸81を有している(図5から図8)。この例示では、連結部材60の軸部62を第2回転軸81とし、この第2回転軸81を軸支する軸受け82を保持部材30に設ける(図10)。保持部材30においては、その第2回転軸81が回転自在に嵌合される溝部を軸受け82として設けている。
【0035】
連結部材60においては、第2回転軸81の保持部材30に対する径方向への移動が規制されており、この第2回転軸81が固定具41における回転の中心となる。このため、この連結部材60において、第1回転軸71は、自ら自転しつつ、第2回転軸81の軸周りに公転する。
【0036】
この固定構造40においては、作業者が弧状弾性体51の外周面側から内周面側に向けた押圧力を自由位置で作用させることによって、板バネ部材50の係止部52をバッテリ100の被係止部102に係止させ、そこから更に押圧力を加えることで、板バネ部材50と連結部材60との間及び連結部材60と保持部材30との間で各々相対回転させながら板バネ部材50が係止点を中心に回動し、この板バネ部材50が固定位置まで移動する。
【0037】
この固定構造40は、その固定位置で板バネ部材50を逆向きに回動させぬように、連結部材60を次のように形成している。連結部材60には、板バネ部材50の自由位置から固定位置までの移動の途中で弧状弾性体51の曲率が小さくなり、固定位置まで移動した際の弧状弾性体51の曲率が移動の途中の最小の曲率のときよりも大きく且つ自由位置での曲率よりも小さくなるように弧状弾性体51を変形させる。連結部材60は、第1回転軸71と第2回転軸81との間の間隔がその弧状弾性体51の変形を可能にするものとなるように形成する。更に、この連結部材60は、自由位置から固定位置までの移動の途中で第1回転軸71が第2回転軸81を乗り越えて、その乗り越えと共に、最も小さくなった弧状弾性体51の曲率が大きくなっていくように形成することが望ましい。これにより、固定位置での板バネ部材50は、弧状弾性体51の内周面側において、その周方向における一端(係止部52及びその周囲)からバッテリ100に対して押圧力を作用させると共に、その周方向における他端(軸受け72)から連結部材60を介して保持部材30に対して押圧力を作用させる。よって、固定位置での板バネ部材50は、弧状弾性体51の内周面側において、その周方向における両端でバッテリ100及び保持部材30の組付け体を挟み込んだ状態でロックされるので、逆向きへの回動が抑制される。従って、この固定構造40は、バッテリ100への電源接続システム1の固定状態を保つことができる。更に、この固定構造40は、バッテリポスト101の軸周りへの電源接続システム1の回転を抑えることもできる。また更に、この固定構造40は、保持部材30に取り付けた固定具41の板バネ部材50に対して押圧力を作用させるだけで、この保持部材30を含む電源接続システム1をバッテリ100に対して簡便に固定することができる。
【0038】
ところで、この電源接続システム1においては、その固定具41(板バネ部材50及び連結部材60)を作業者が操作する際の作業性を高めることによって、保持部材30のバッテリ100への固定作業を容易ならしめ、延いてはバッテリ100への組付け作業性を向上させることができる。そこで、本実施形態の固定構造40において、板バネ部材50には、弧状弾性体51の外周面に、作業者が少なくとも触覚で認識することができ、かつ、自由位置から固定位置まで移動させる際に作業者が押圧力を作用させる操作領域90を設ける。そして、その操作領域90には、その押圧力を作用させる操作点としての操作部91を設けている(図5から図8)。
【0039】
その操作領域90は、弧状弾性体51の外周面側から内周面側に向けた押圧力を板バネ部材50の自由位置で作用させた際に、その弧状弾性体51における周方向の一端に設けた係止部52をバッテリ100の被係止部102に引っ掛けることが可能で、かつ、その引っ掛け状態のまま板バネ部材50を固定位置まで移動させることが可能な位置に配置する。例えば、固定具41は、板バネ部材50の係止部52をバッテリ100の被係止部102に引っ掛けた後、連結部材60において第1回転軸71が第2回転軸81を乗り越えていくように、弧状弾性体51の外周面に対して押圧力を加える必要がある。このために、その押圧力は、弧状弾性体51の内周面側をバッテリ100に近づけつつ、弧状弾性体51の他端の軸受け72をバッテリ100の上面側に押し上げるものとすることが望ましい。よって、操作領域90は、そのような押圧力を作用させることができるように、例えば、係止部52がバッテリ100の被係止部102に引っ掛かった際の弧状弾性体51において、その外周面の頂点(バッテリ100から最も離れている部分)よりも係止部52側に配置する(図9)。但し、その押圧力は、板バネ部材50を係止部52と被係止部102との間の係止点を中心に回動させる位置で作用させる必要がある。このため、操作領域90は、その押圧力で板バネ部材50の回動動作に必要な回転トルクを発生させるべく、先の配置の範囲において係止部52よりも軸受け72側に設定し、その回転トルクのモーメントアームが設けられるように配置することが望ましい。
【0040】
例えば、ここでは、この固定具41の具体例として下記の固定具41Aを示す(図5から図8)。その固定具41Aは、板バネ部材50の具体例として挙げる下記の板バネ部材50Aを先の連結部材60に取り付けたものである。その板バネ部材50Aにおいては、操作部91の具体例として、弧状弾性体51の外周面側と内周面側とを連通させる貫通孔を設けている。この板バネ部材50Aの操作領域90においては、その貫通孔を操作部91Aとして用いる。その操作部91Aは、弧状弾性体51の外周面に触れた作業者が少なくとも手指で認識できる大きさと形状のものとする。ここで示す操作部91Aは、弧状弾性体51における周方向の中央部分に形成している。尚、この操作部91Aは、作業者が目視で認識することもできる。
【0041】
このように、この電源接続システム1においては、板バネ部材50(50A)に対する押圧力の作用点(操作点)を作業者が容易に認識することができ、その操作点としての操作部91(91A)とその周囲に押圧力を加えるだけで、固定具41(41A)を保持部材30とバッテリ100との間でロックさせ、その保持部材30と共にバッテリ100に固定される。従って、この電源接続システム1は、そのバッテリ100への組付け作業性が従来よりも向上しているので、その組付け作業を簡便かつ正確に行うことができる。
【0042】
その固定具41としては、下記の固定具41Bを挙げることもできる(図17から図20)。その固定具41Bは、板バネ部材50の具体例として挙げる下記の板バネ部材50Bを先の連結部材60に取り付けたものである。その板バネ部材50Bにおいては、操作部91の具体例として、弧状弾性体51の外周面から膨出させた膨出部を設けている。この板バネ部材50Bの操作領域90においては、その膨出部を操作部91Bとして用いる。その操作部91Bは、弧状弾性体51の外周面に触れた作業者が少なくとも手指で認識できる大きさと形状のものとする。ここで示す操作部91Bは、弧状弾性体51における周方向の中央部分に形成している。尚、この操作部91Bは、作業者が目視で認識することもできる。また、この操作部91Bには、そのような膨出部に替えて、弧状弾性体51の外周面を内周面側に凹ませた凹部を用いることもできる。この電源接続システム1は、これらのような固定具41Bに置き換えたとしても、先の例示と同様に、バッテリ100への組付け作業性を向上させることができる。
【0043】
ここで、この固定具41Bは、操作部91Bとして膨出部を用いる場合、その膨出部を下記のように形成してもよい。その膨出部は、板バネ部材50Bを固定位置まで移動させた後で押圧力を作用させ続けた際に、弧状弾性体51の内周面側に凹むように形成する。この膨出部は、凹ませるために必要な力F1が、板バネ部材50Bを自由位置から固定位置まで移動させるために必要な力F2よりも大きくなるように形成する(F1>F2)。例えば、この膨出部は、そのような力の関係を成立させるべく、周囲の弧状弾性体51の板厚よりも薄肉化し、力F2が加わったときに凹ませることができるように形成する。これにより、この電源接続システム1は、先の例示と同様にバッテリ100に固定させるまでの作業性の向上効果が得られるだけでなく、操作部91Bとしての膨出部の凹み変形と共に、少なくとも手指による触覚で固定作業の完了を作業者に認識させることができる。この例示の操作部91Bは、目視による凹みの確認と共に、固定作業の完了を視認することもできる。よって、この場合の電源接続システム1は、バッテリ100への組付け作業性を更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 電源接続システム
10 バッテリ端子
20 バッテリ用接続ユニット
20A 第1バッテリ用接続ユニット
20B 第2バッテリ用接続ユニット
30 保持部材
32 貫通孔
40 固定構造
41 固定具
50,50A,50B 板バネ部材
51 弧状弾性体
52 係止部
60 連結部材
70 第1回転機構
71 第1回転軸
80 第2回転機構
81 第2回転軸
90 操作領域
91,91A,91B 操作部
100 バッテリ
100a 第1面
100b 第2面
101 バッテリポスト
102 被係止部
図1
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