【実施例1】
【0020】
図1は本発明による有機EL表示装置の断面図である。
図1は
図2で説明する有機EL表示装置の画素構成における駆動TFT(T1)および有機EL素子(EL)部分の構成を示す断面図である。以後、特に断らない場合、TFTとは駆動TFT(T1)を言う。
図1において、TFT基板100はガラスあるいは樹脂で形成されている。ガラス基板の場合も、厚さが0.2mm以下になると、フレキシブルに湾曲させることが出来る。一方、TFT基板100を樹脂で形成すれば、フレキシビリティをさらに向上させることが出来る。
【0021】
TFT基板100を形成する樹脂としては、ポリイミドが機械的強度、耐熱性の点から優れている。ポリイミドを用いれば、TFT基板100の厚さは10μm乃至20μm程度にまで薄くすることが出来る。したがって、非常にフレキシビリティに富む表示装置を製造することが出来る。なお、ポリイミドによるTFT基板100は次のようにして作成することが出来る。
【0022】
まず、ガラス基板上にポリイミドの材料であるポリアミド酸を形成し、イミド化して、厚さが10μm乃至20μm程度のポリイミドによるTFT基板100を形成する。その後、TFT基板100上にTFTや有機EL層、絶縁膜、配線、保護膜等を形成した後、ポリイミドとガラス基板の界面にレーザを照射してガラス基板を剥離する。
【0023】
図1に戻り、TFT基板100の上に下地膜101を形成する。しかし、下地膜101は、従来と異なり、TFTが形成される部分にのみアイランド状に形成する。下地膜101は基板全面にCVDで形成した後、フォトリソグラフィによって、アイランド状にパターニングする。下地膜101の機能は、ガラス基板あるいは樹脂基板からの不純物がTFTを構成する半導体層102を汚染することを防止することである。
【0024】
下地膜101は、一般には、SiN膜とSiO膜の積層膜で形成され、いずれの材料も硬い材料である。したがって、表示装置を湾曲させると破壊してしまう。本発明では、下地膜101の形成範囲をTFTが形成される部分にのみ限定して形成することによって、下地膜101にかかるストレスを抑制し、破壊させないようにしている。さらに本発明では、下地膜の平面形状を円形とすることによって、ディスプレイをどの方向に曲げても、ほぼ等しい応力が加わるようにすることを特徴としている。
【0025】
下地膜101の上には半導体層102が形成される。半導体層102はLTPS(Low Temperature Poly−Si)で形成される。すなわち、まず、全面にa−SiをCVDによって形成した後、エキシマレーザによってPoly−Si化し、その後、フォトリソグラフィによってパターニングする。
【0026】
その後、半導体層102を覆ってゲート絶縁膜103を形成する。ゲート絶縁膜103はTEOS(Tetraethyl orthosilicate)を原料とするSiOであり、CVDによって形成する。ゲート絶縁膜103も最初は全面に形成するが、フォトリソグラフィによって、半導体層102を覆う部分のみに存在するようにパターニングする。さらに本発明では、ゲート絶縁膜の平面形状を円形とすることによって、ディスプレイをどの方向に曲げても、ほぼ等しい応力が加わるようにすることを特徴としている。
【0027】
ゲート絶縁膜103の上にゲート電極104を金属または合金で形成する。ゲート電極を構成する金属は、Mo、W、Tiあるいはこれらの合金である。
図1におけるTFTは
図2で説明する駆動TFT(T1)であるが、駆動TFT(T1)のゲート電極は
図2で説明する選択TFT(T2)のソース電極と接続する。
【0028】
図3は、以上で説明したプロセスによって形成された構成を示す平面図である。
図3において、まず、下地膜101が円形に形成され、その上に半導体層102が形成される。半導体層102を覆ってゲート絶縁膜103が円形に形成される。そして、ゲート絶縁膜103の上にゲート電極104を形成する。
【0029】
図1に戻り、ゲート電極104およびゲート絶縁膜103を覆って層間絶縁膜105を形成する。層間絶縁膜105は基板全面ではなく、ゲート絶縁膜103を覆う範囲にのみ形成される。すなわち、下地膜101あるいはゲート絶縁膜103と同様に平面が円形になるように形成する。層間絶縁膜105もSiN等の無機膜で形成されているので、基板全面に形成すると表示装置を湾曲させたときに破壊する危険があるからである。層間絶縁膜105も、まず、基板全面にCVDによって形成した後、フォトリソグラフィによってパターニングする。さらに本発明では、層間絶縁膜105の平面形状を円形とすることによって、ディスプレイをどの方向に曲げても、ほぼ等しい応力が加わるようにすることを特徴としている。
【0030】
その後、層間絶縁膜105にスルーホール1061,1071を形成してドレイン電極106およびソース電極107を形成する。ソース電極106およびドレイン電極107は、Mo、W、Ti、あるいは、Al合金等で形成される。
図4はこの状態を示す平面図である。
図4において、層間絶縁膜105が円形に、下地膜101やゲート絶縁膜103と同様な形状で形成されている。層間絶縁膜105に形成されたスルーホール1061を介してドレイン電極105が半導体層102と接続し、スルーホール1071を介してソース電極107が半導体層102と接続する。
【0031】
図1に戻り、このようにして形成されたTFTを覆って有機パッシベーション膜108を形成する。有機パッシベーション膜108は平坦化膜を兼ねているので、2乃至3μmと、厚く形成する。有機パッシベーション膜108は透明なアクリル等の樹脂で形成する。有機パッシベーション膜108に感光性の樹脂を使用することによって、フォトレジストを用いずにスルーホール1081を形成することが出来る。
【0032】
有機パッシベーション膜108の上に、カソードとなる下部電極110を形成する。下部電極110はITO(Indium Tin Oxide)とAgとITOの積層構造となっている。Agは反射電極としての役割を有している。Agの下層に形成されるITOは有機パッシベーション膜108との密着性を向上させるためである。また、Agの上に形成されるITOは有機EL層111に対するアノードを構成する。なお、積層する金属はAgに限らず、他の金属でもよい。下部電極109は有機パッシベーション膜108に形成されたスルーホール1081を介してTFTのソース電極107と接続する。
【0033】
下部電極109を形成した後、バンク110を形成する。バンク110は有機EL層112の段切れ防止、画素間の隔絶等の役割を有する。バンク110はアクリル等の樹脂によって、2μm程度の厚さに形成される。バンク110は、まず、樹脂を厚さ2μm程度に基板全面に形成し、その後、発光領域となる部分から樹脂を除去することによって形成される。バンク110を構成する樹脂は、感光性に樹脂で形成するのがプロセス上有利である。
【0034】
バンク110の平面形状は、あとで形成される保護膜と同様に円形である。この様子を
図5に示す。
図5の画素において、ハッチングを施した円形の部分は、バンク110、第1無機保護膜113、有機保護膜114、第2無機保護膜115が積層された領域の平面図である。すなわち、この円形の部分は、他の部分に比べて厚さが非常に大きくなっており、フレキシブルディスプレイを湾曲させたときでも、この部分は曲がりづらい。したがって、バンク110が形成された範囲内における無機膜等にかかる応力は小さく抑えることが出来る。なお、
図5において、四角の点線で囲まれた領域は有機EL層111が形成される領域であり、四角の点線と円との間の領域がバンク110であると考えてよい。
【0035】
図1に戻り、バンク110で囲まれた領域内において、下部電極109の上に有機EL層111を形成する。有機EL層111は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等の複数の有機膜から形成される。その後、有機EL層111を覆って上部電極112を形成する。上部電極112はカソードを構成し、MgAg合金等で形成される。
【0036】
従来は、上部電極112は基板全面に形成されていたが、本発明では、有機EL層111を覆う部分にのみ形成し、カソード電位は、カソード配線40によって供給している。すなわち、MgAg合金等の合金は硬く、かつ、透過率を確保するために薄く形成されるので、表示装置を湾曲して使用すると、断線を生じやすい。そこで、本発明は、上部電極112を、有機EL層111を覆う部分にのみ限定して使用することによって、上部電極112の破壊を防止している。
【0037】
上部電極112は有機EL層111を覆うように形成される。上部電極112はカソードとしての役割を有するので、カソード電位を供給する必要がある。本発明では、上部電極112は各画素共通に形成されるのではなく、画素毎に形成されるので、上部電極112をバンク110の上に延在させ、バンク110に形成されたスルーホール1101を介して有機パッシベーション膜の上に形成されたカソード線40と接続し、カソード電位を供給する。なお、カソード線40は200nm以上と、金属あるいは合金により厚く形成されるので、表示領域を湾曲させても、断線する可能性は非常に小さい。上部電極112をAZO(Antimony Zinc Oxide)等の透明酸化物導電膜で形成する場合もあるが、この場合も、平面形状等はMgAg合金等の場合と同様である。
【0038】
図1において、上部電極112を覆って保護膜を形成する。有機EL層111は水分によって特性が劣化するために、保護膜を形成して、有機EL層111を保護する。
図1において、保護膜は、第1無機保護膜113、有機保護膜114、第2無機保護膜115の3層から構成されている。第1無機保護膜113は上部電極112の上に直接形成され、有機EL層111を水分から直接保護する役割を有している。第1無機保護膜113はSiN、SiO等によって形成され、厚さは数百nmである。
【0039】
一方、有機保護膜114は、有機EL層111を機械的に保護するものであり、10乃至15μmと厚く形成される。有機保護膜114は有機パッシベーション膜の2倍以上の厚さ、好ましくは3倍以上の厚さであり、より好ましくは10μm以上である。このように、有機保護膜114を有機EL層111の上方に厚く、かつ、島状に形成することによって、有機EL層111が存在する部分では、曲がりにくくなり、有機EL層111が破壊から免れる。また、有機保護膜114の下部に形成された無機絶縁膜、酸化物導電膜、あるいは無機保護膜等も破壊しにくくなる。有機保護膜114は透明樹脂であるアクリル等によって形成される。
【0040】
有機保護膜114を覆って第2無機保護膜115が形成されている。第2無機保護膜115は、有機保護膜104の側面まで覆い、有機保護膜114中に外部から水分が侵入することを防止する。第2無機保護膜115はSiNあるいはSiO等で形成され、厚さは数百nmである。
【0041】
第1無機保護膜113、有機保護膜114、第2無機保護膜115の平面形状は、
図5のハッチングで示したように、円形である。保護膜が形成された部分には、バンク110も形成されており、他の領域に比較して厚さがはるかに大きいので、ディスプレイを湾曲させても、保護膜が存在している部分は曲がりにくい。つまり、保護膜に覆われている領域内の各種無機膜、有機EL層111等に対する機械的な応力を小さく抑えることが出来る。したがって、この領域における膜破壊を防止することが出来る。
【0042】
また、保護膜が形成された領域は円形であるために、ディスプレイがどの方向に曲げられた場合であっても、この領域内に形成された各種無機膜、有機EL層111等は機械的な応力から保護される。
【0043】
図2は、本発明による有機EL表示装置の画素部の等価回路である。
図2において、走査線10とカソード線が横方向に延在して縦方向に配列している。また、映像信号線20とアノード線30が縦方向に延在して方向に配列している。走査線10とカソード線および映像信号線20とアノード線30で囲まれた領域が画素である。
【0044】
通常の有機EL表示装置では、カソードは表示領域全面に形成されているので、カソード線40は不要であるが、本発明では、個々の画素各々にカソード電圧を供給する必要があるので、カソード線40が存在している。
図2では、カソード線40は走査線10と平行延在しているが、レイアウトの都合によっては映像信号線20と平行に延在させてもよい。
【0045】
画素内では、有機EL層で形成される有機EL素子(EL)とこれを駆動する駆動TFT(T1)が直列に接続している。
図1におけるTFTは駆動TFT(T1)に相当する。駆動TFT(T1)のゲートとドレインの間には蓄積容量Csが配置している。蓄積容量Csの電位にしたがって、駆動TFT(T1)から有機EL素子(EL)に電流が供給される。
【0046】
図2において、選択TFT(T2)のゲートに走査線10が接続し、走査線10のON、OFF信号にしたがって、選択TFT(T2)が開閉される。選択TFT(T2)がONになると、映像信号線20から映像信号が供給され、映像信号によって蓄積容量Csに電荷が蓄積され、蓄積容量Csの電位によって、駆動TFT(T1)が駆動され、有機EL素子(EL)に電流が流れる。
【0047】
図5は、本発明による画素部の平面図である。画素は表示領域にマトリクス状に多数形成されているが、
図5では、4画素のみ図示している。
図5において、横方向に走査線10とカソード線40が延在し、縦方向に映像信号線20とアノード線30が延在している。走査線10と映像信号線20等で囲まれた領域が画素になっており、この中に有機EL層やTFTが形成されている。
図5に示す画素の平面形状の特徴は、画素が正方形である点である。
【0048】
図5において、ハッチングが施された円形の領域が、バンク110、第1無機保護膜113、有機保護膜104、第2無機保護膜105が積層して形成された部分であり、この部分が厚くなっている。円形内において、点線で示した四角の領域が有機EL層111が形成された領域であり、この部分から光が放射される。四角で囲った領域にはバンク110は存在しない。この部分は、保護膜のみによって覆われている。
【0049】
図5の第2無機保護膜115で代表させた保護膜で覆われた領域は平面が円形であるから、ディスプレイがいずれの方向に湾曲しても、曲がりにくい。したがって、この領域に形成された有機EL層111、無機膜等は機械的に保護される。この保護領域には重要な要素である、有機EL層111、駆動TFT(T1)等が配置し、曲げ応力等から保護されている。
【0050】
図5において、選択TFT(T2)は保護膜115の範囲外に形成されている。選択TFT(T2)のゲートは走査線10に接続し、ドレイは映像信号線20に接続している。そして、選択TFT(T2)のソースは駆動TFT(T1)のゲートに接続する。選択TFT(T2)は、平面が円形に形成された下地膜101の上に形成されている。また、ゲート絶縁膜、層間絶縁膜も下地膜と同様な形状で、島状に形成されている。これは、
図3および
図4で説明したとおりである。したがって、選択TFT(T2)は、保護膜によって機械的に保護されていないが、下地膜101、ゲート絶縁膜103、層間絶縁膜105が、平面が円形に形成されて積層されているので、曲げに対する強度が強く、無機膜、半導体層等は破壊しにくい構造となっている。
【0051】
なお、駆動TFT(T1)は第2無機保護膜115及びその下の有機保護膜等に覆われているので、曲げ応力に対して機械的に保護されている。また、駆動TFT(T1)も
図3および
図4で説明したように、下地膜101、ゲート絶縁膜103、層間絶縁膜105が、平面が円形になるように島状に積層して形成されている。したがって、駆動TFT(T1)は、曲げ応力に対しては2重に保護されている。
【0052】
なお、駆動TFT(T1)と対向し、且つ島状に積層する下地膜101、ゲート絶縁膜103、及び層間絶縁膜105と、選択TFT(T2)と対向し、且つ島状に積層する下地膜101、ゲート絶縁膜103、及び層間絶縁膜105とは、互いに離間して位置してもよい。
【0053】
図5において、走査線10と映像信号線20が交差する部分には、島状に層間絶縁膜105が形成されている。しかし、この部分の島状の層間絶縁膜105は面積が非常に小さいので、層間絶縁膜105にかかる曲げ応力は小さい。したがって、ディスプレイが曲げられても、破壊する確率は小さい。なお、走査線10と映像信号線20の交点における島状の層間絶縁膜105の平面形状も円である。
【0054】
図6は本発明の他の形態を示す画素の平面図である。
図6が
図5と異なる点は、選択TFT(T2)が第2無機保護膜115およびその下の有機保護膜等の下側に形成されていることである。したがって、
図6の構成では、選択TFT(T2)は、駆動TFT(T1)同様、曲げ応力に対して2重に保護されることになり、より信頼性を上げることが出来る。
【0055】
図5および
図6では、駆動TFT(T1)はいずれも、画素内において、円形でハッチングされた範囲内、すなわち、第2無機保護膜115に覆われた領域に形成されている。しかし、レイアウトの都合上、TFT(T1)を、ハッチングされた円の範囲外に配置する場合もある。この場合でも、TFT(T1)が配置されている下地膜101、TFT(T1)を構成するゲート絶縁膜103、層間絶縁膜105等を平面で視て、円形に形成することによって、ディスプレイを湾曲した場合にも、TFT(T1)が破壊する確率を小さく抑えることが出きる。
【0056】
図7は本発明を別な画素配置に適用した例である。
図7は横方向に配列する第1の画素行と第2の画素行との間で、画素の配置を半画素ピッチずらせた配置である。
図7において、ハッチングを施した円形部分は、第2無機保護膜115の下に形成された有機保護膜等が厚く形成されて曲がりにくい領域である。
図7において、画素ピッチを横方向に半画素ピッチずらしたことによって、このディスプレイは、縦方向に湾曲しやくすく、横方向には湾曲しづらい構成となっている。すなわち、走査線が延在する領域には厚く形成された領域が存在しないので、曲がりやすい。
【0057】
一方、本発明とは逆に、第1の画素列を第2の画素列に対して、縦方向に半画素ピッチずらすことによって、ディスプレイを横方向に湾曲しやすく、縦方向に湾曲しづらくすることが出来る。このように、本発明を用いた画素配置によって、ディスプレイの曲げやすい方向をあらかじめ設定することが出来る。
【0058】
いずれにせよ、重要な点は、
図5乃至
図7、あるいは、その他の変形画素配置においても、平面が円形である保護膜によって保護された領域は、どの方向に湾曲されたとしても、曲げ応力からは保護され、配線の断線や、無機絶縁膜、無機保護膜、あるいは酸化物導電膜等の破壊が生ずる確率が小さくなることである。
【0059】
図5乃至
図7において、画素に形成された第2無機保護膜105で代表される平面が円形の保護膜と、隣接する画素に形成された第2無機保護膜105で代表される平面が円形の保護膜との間隔は2μm以上、好ましくは5μm以上である。この間隔が2μm以上あれば、ディスプレイを湾曲させても、円形の保護膜どうしの干渉によってストレスが発生することはないからである。
【0060】
以上の説明では、バンク110、第1無機保護膜113、有機保護膜114、第2無機保護膜115を積層した領域の平面は円であるとして説明したが、レイアウト上、円とすることが難しい場合がある。このような場合、例えば、8角形、7角形、6角形、5角形等の多角形としてもよい。円以外の形状では、5角形以上の多角形が好適である。要するに、いずれの方向に表示装置を湾曲させても、第2無機保護膜等の保護膜で形成された要素に対して実質的に同じストレスになるようにすればよい。
【0061】
図1に示すように、バンク110、および、第1無機保護膜113、有機保護膜114、第2無機保護膜115等が形成された領域は他の領域に比べて厚さが非常に大きいので、有機EL表示装置の表面が凹凸になっている。一方、有機EL表示装置は、反射を防止するために、表面に偏光板を用いる場合が多い。
図8はこの様子を示す断面図である。偏光板200は粘着材201を用いて有機EL表示装置に接着する。
【0062】
粘着材201は、20μm乃至30μm程度と厚く形成される。そうすると、この粘着材201が、有機EL表示装置の表面の凹部を充填することになり、偏光板201の表面を平らにすることが出来る。偏光板200は、厚さが100μm程度であり、基材は樹脂であるから、表示装置を湾曲して使用することの妨げにならない。
【0063】
以上で説明した例は、画素毎に、換言すれば1サブ画素毎に、或いは1ドット毎に、平面が円形になるように、バンク110、第1無機保護膜103、有機保護膜104、第2無機保護膜105等を積層して形成した例である。しかし、画面が高精細になると、画素毎にこのような保護層を形成することが困難になる場合がある。このような場合、複数の画素に共通して、バンク110、第1無機保護膜113、有機保護膜114、第2無機保護膜115等を積層して厚くした領域を形成することが出来る。
【0064】
図9はその例である。
図9において、平面が円である、バンク110、第1無機保護膜113、有機保護膜114、第2無機保護膜115の積層体が4画素分の有機EL層111を共通して覆っている。画素が4角であり、保護層115の平面が円であるので、4画素共通に覆うために、有機EL層111は
図5乃至7の場合よりも画素の中心に対して偏心して配置している。また、当該4画素が備える上部電極は、当該4画素に跨って共通に形成され、当該4画素以外の画素が備える上部電極とは分離している構造にしてもよい。なお、
図9では、駆動TFT(T1)、選択TFT(T2)等は省略されている。
【0065】
図9では、4画素のみ記載しているが、この4画素のセットが表示領域に繰り返し配置されることになる。4画素を共通に覆う保護膜115の平面形状は円形であるが、円形の保護膜が4画素ピッチ毎に配置されることになる。4画素を覆う円形の保護膜115と、隣接する4画素を覆う円形の保護膜115との間には、所定の間隔が必要である。この所定の間隔は2μm以上、より好ましくは5μm以上存在すればよい。2μm以上あれば、ディスプレイを湾曲させても、円形の保護膜どうしの干渉によってストレスが発生することはないからである。
【0066】
また、
図9では、4画素を纏めて1つの島状の保護膜で覆っている。画素配置を
図7のように、第1の画素行と第2の画素行で1/2画素ピッチ分ずらしたような構成とすれば、3個の画素を円形の一つの島状の保護膜で覆うことが可能である。画素を3個とすることによって、例えば、赤、緑、青の3画素を纏めて一つの保護膜で覆うことが出来、白色の均一性を取りやすい。
【0067】
このように、複数の画素に対して共通に、平面が円形である保護層等の積層体を形成することが出来る。そして、この領域は、水分等に対してだけでなく、曲げ応力からも保護されることになる。
【0068】
以上の説明では、TFTはトップゲートであるとして説明したが、TFTがボトムゲートである場合も同様である。ボトムゲートである場合も、ゲート絶縁膜は必須であり、下地膜は必要である場合が多く、また、層間絶縁膜も必要である場合が多い。したがって、ボトムゲートタイプの場合にも本発明の利益を得ることが出来る。