(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、障害者や高齢者用、あるいは幼児のおむつ交換が行える多機能トイレが、駅等の公共機関に設けられている。これらの多機能トイレはドアの開閉動作が困難な障害者や高齢者のために、開閉用ボタンの操作で動作する自動開閉ドアが設けられている。この自動開閉ドアは、トイレブース内に利用者がいない未使用状態では外側からの操作優先状態となっており、利用者が外側から解放ボタンを操作するとドアが開放する。解放されたドアから利用者がトイレブース内に入って内側から閉鎖ボタンを操作するとドアが閉鎖して内側からの操作優先状態に切り替わる。
【0003】
そして、利用者が用を足して内側から解放ボタンを操作するとドアが開放する。利用者がトイレブース内から出て外側から閉鎖ボタンを操作するとドアが閉鎖し、もとの外側からの操作優先状態となって次の利用者の使用可能状態に復帰する。そして新たな利用者が外側の解放ボタンを操作するとドアが開放する。
また、現在の多機能トイレでは利用者がトイレブース内に入って内側から閉鎖ボタンを操作してドアが閉鎖し、内側からの操作優先状態に切り替わると同時に所定時間にセットされたタイマーがスタートし、所定時間後には内側からの操作優先状態から外側からの操作優先状態に復帰し、外側の解放ボタンの操作でドアが開放する自動解除機能が設けられている。
【0004】
この自動解除機能が設けられている理由は、トイレブース内に入室中は外側からのドアの開閉ができず密室となるため、浮浪者が入り込んで長時間にわたって占拠したり、いたずらで長時間にわたってトイレブースを占拠してしまったり、本来、使用できなければならないはずの障害者や高齢者、幼児のおむつ交換をしたい人が利用できないという問題があった。そこで、これらの不法占拠を防止するため、所定時間後には内側からの優先状態を解除する自動解除機能が設けられている。
この自動解除機能のタイマー時間としては、車椅子使用の障害者が排便に要する時間を考慮して、30分くらいが一般に採用されている。
【0005】
上記自動解除機能を有する多機能トイレの問題点を解決する提案がいろいろなされている(例えば特許文献1)。特許文献1は、自動開閉ドアが設けられた多機能トイレにおいて、トイレブース内の人体を検出する人体検出センサを設け、人体検出センサの検出信号と、タイマーを組み合わせてドアの自動解除機能や報知機能を制御している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示される従来例は、トイレブース内の人体を検出する人体検出センサを設け、人体検出センサの検出信号と、所定時間で動作するタイマーとを組み合わせてドアの自動解除機能や報知機能を制御している。従ってタイマーの動作時間は一定となっている。
【0008】
しかし、ドアの自動解除機能を動作させるタイマー時間の長さは、利用者の障害状態の違いによって、希望時間が異なることがわかった。
2012年の国土交通省が行ったトイレの所要時間に関するアンケートによると、車椅子利用者の50%がトイレ所要時間は20分〜30分以上必要としている。特に20%の利用者は30分以上必要としている。
また、子供のおむつ交換を行う利用者の80%は30分以下であり、特に60%の人は20分以下としている。
参考までに多機能トイレを共通に使用している健常者の所要時間は10分以下である。
【0009】
上記の如くの、多機能トイレのドアの自動解除機能を動作させるタイマー時間を従来のように30分とした場合、トイレ所要時間を30分以上必要としている車椅子利用者の多くが、自動解除機能によってドアが開放されてしまう結果となる。
上述のアンケートにおいても車椅子利用者の30%の人が、使用中にドアを開けられ恥ずかしい思いをした経験があるとの調査結果となっている。
しかし、単にタイマー時間を長く(例えば50分〜60分)すると、浮浪者が入り込んで長時間にわたってトイレブースを占拠したり、いたずらで長時間にわたって占拠を行うなどの恐れがあり、使用すべき必要のある車椅子利用者や子供のおむつ交換等の対象者が、長い時間待たされたり、また利用できないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は上記問題を解決し、利用者に特別な操作を行わせることなく、自動解除機能の設定時間を利用者の状態に合わせて制御すると共に、長時間にわたって占拠を行うことを防止した多機能トイレの見守りシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明における見守りシステムの構成は、
トイレブース内の利用者の状態を検知する見守りシステムであって、
利用者の動作によって生ずる非可聴音情報を取得する第1検出部と
、
第1検出
部で取得した情報に基づいて
、
利用者
の乗り物の使用の有無、又は利用者が使用する乗り物の種類を
判別することで、トイレブースに付帯された機器を制御する制御部と、を有することを特徴としている。
【0014】
制御部は、重量又は金属量の情報に基づいて、車椅子の有無を判定することを特徴としている。
【0016】
制御部は、トイレブースのドアの解錠又は施錠を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
上記の通り、本発明のトイレブース内の利用者の状態を検知する見守りシステムにおい
ては、利用者の動作によって生ずる非可聴音情報と、非可聴音情報以外の前記利用者の状態を示す情報を取得して、この2つの情報の組み合わせからトイレブース内の利用者がどんな条件の利用者であるか、又は動作状態にあるかを判断してトイレブースに付帯された機器を制御することによって、利用者の条件、又は動作状態に対応した多機能トイレの見守りシステムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の思想を具体化するための見守りシステムを例示するものであって、本発明を以下の構成に限定しない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。以下の説明において、同一部品、同一構成要素には同一の名称、符号を付し詳細説明を適宜省略することがある。
また、以下の実施形態の説明においては、利用者の動作によって発生する非可聴音波信号として、代表的な超音波信号を事例として説明する。
【0020】
本発明の見守りシステムは、多機能トイレの利用者がトイレブース内で発生する利用者の動作によって生じる非可聴音波信号及び非可聴音波信号以外の利用者の状態を示す信号を検出して、利用者の行動及び状態を類推し、トイレブース内に付帯された機器を利用者の状態に合わせて適切に制御する見守りシステムを提案するものである。
【0021】
本発明の説明に先立って、本発明でトイレブース利用者の動作によって生じる超音波信号に付いて説明する。
一般の生活空間における超音波は20kHz〜100kHzの音波であって、主として物と物とが接触、当接、すり合い、衝突、生活者の病的な呼吸の異常やもがきなどで発生し、その周波数は物の硬さや表面粗さに依存する。すなわち超音波の周波数、振幅、持続時間は、超音波の発生由来に固有であるので超音波を解析すれば超音波を発生した事象を特定することができる。さらに非可聴音である超音波を検出することで生活者の状態を把握するため、人間の声を検出する必要がなく、生活者のプライバシーに関わる問題を生じないという利点がある、
【0022】
図7は、日常の生活空間における様々な超音波を超音波センサで検出し、グラフG1〜G4に示したもので、各グラフの横軸は時間、縦軸は超音波の振幅レベル(強さ)である。
例えばグラフG1は蛇口から水が流れることで発生する超音波の波形であって、持続時
間が短いパルス状の超音波が特徴である。またグラフG2は、室内で生活者Pが歩行することで発生する超音波の波形であって、歩行ピッチを反映したパルス状の超音波が一定間隔で現れることが特徴である。
【0023】
またグラフG3は、ドアを開けたことで発生する超音波の波形を示し、持続時間が長いバースト状の波形が特徴である。またグラフG4は、トイレへの入室から水洗トイレを使用した期間で発生する超音波の波形を示し、トイレの鍵のロック、便座おろし、トイレットペーパの使用、洗浄便座の使用、水洗、などの一連の動作に対応して形状が異なる超音波の波形が発生することが特徴である。
【0024】
[実施形態]
図1〜
図4を用いて本発明の実施形態における見守りシステム1を適用した、多機能トイレについて説明する。
図1は本実施形態の見守りシステムを適用した多機能トイレの構成を示す平面図である。
図2は
図1に示す見守りシステム1の回路構成を示すブロック図、
図3は利用者の動作によって生じる超音波信号の波形図、
図4は
図3に示す超音波信号及び利用者の状態を示す信号から利用者の状態を判定した例を示す表である。
【0025】
[本実施形態の多機能トイレの構成説明]
図1は本実施形態における見守りシステム1を適用した多機能トイレの構成を示す。見守りシステム1(トイレブース)は側壁2により一部が開口した4角形のブースを形成しており、開口部には自動ドア3が設けられている。見守りシステム1の内部には腰掛式の便器4と、便器4の両側には利用者が便器4に腰掛けるときに使用する2本の手すり5aと手すり5bとが設けられており、さらに用を足した後に手を洗うための洗面台7が設けられている。
【0026】
また、見守りシステム1の側壁2内側の自動ドア3の近傍には、見守りシステム1の内部から自動ドア3を解錠又は施錠するための、内側解錠ボタン8、内側施錠ボタン9が設けられている。また、内壁の便座4の近傍には用を足したあとに水洗を行う水洗ボタン10、なにかトラブルがあったときに外部に連絡するための呼び出しボタン11が設けられている。
さらに本発明における見守りシステム1の内部には、利用者の動作によって生ずる超音波信号を検出する第1検出部(超音波センサ)12と、利用者の超音波信号以外の情報信号として重量信号を検出する第2検出部(重量センサ)13が設けられている。
【0027】
見守りシステム1の側壁2外側には、正面の自動ドア3のある壁面に見守りシステム1の外部から自動ドア3を解錠又は施錠するための、外側解錠ボタン18、外側施錠ボタン19が設けられ、さらに見守りシステム1内のいろいろな情報を表示する表示部17が設けられている。
【0028】
[本実施形態の多機能トイレの動作説明]
次に
図1により、多機能トイレの動作を説明する。
車椅子に乗った利用者KSが使用する場合に付いて説明する。未使用状態の見守りシステム1は外側操作優先状態となっており、見守りシステム1を使用しようとする利用者KSが、自動ドア3の前に来て外側解錠ボタン18を押すと、自動ドア3は解錠されて開放状態となる。この開放状態となった自動ドア3を利用者KSが通過して見守りシステム1内に入ると、利用者KSが通過しているときに発生する、車椅子の走行に伴うシャフト部分からの超音波信号が第1検出部12(以後超音波センサ12とも記載する)によって非可聴音として検出される。
また、車椅子に乗った利用者KSが第2検出部13(以後重量センサ13とも記載する
)に乗ると車椅子の重量を含む利用者KSの重量信号が重量センサ13によって検出される。
【0029】
後述するが、この超音波センサ12からの超音波信号と、重量センサ13からの重量信号とを組み合わせて、利用者が車椅子使用の利用者KSであることが判定されて、外側の表示部17使用中である表示と、利用者が車椅子使用者であることが表示される。
【0030】
見守りシステム1内に入った利用者KSが内側施錠ボタン9を押すと、自動ドア3は閉鎖して施錠される。この施錠状態においては自動ドアの開閉が内側操作優先状態となって、見守りシステム1内は所定時間(車椅子の利用者KSに適した時間)だけ密室状態となり、利用者KSはゆっくり用を足すことができる。
【0031】
用を足し終えた利用者KSが内側解錠ボタン8を押すと、自動ドア3は解錠されて開放状態となり、自動ドアの開閉が内側操作優先状態から外側作優先状に切り替わった後、利用者KSが見守りシステム1の外に出て外側施錠ボタン19を押すと、自動ドア3は閉鎖されると共に施錠されて未使用状態に復帰する。
【0032】
また利用者KSが内側解錠ボタン8を押さなくても、所定時間が経過すると後述する自動解除機能が作動して内側操作優先状態が解除され、外側操作優先状に切り替わる。この結果利用者が長時間にわたって内側解錠ボタン8を押さないで、密室状態にすることを防止できる。
【0033】
なお、図示は省略したが、見守りシステム1内におむつ交換用の台を設置しておけば、ベビーカーを押したお母さんが利用者BCとして、おむつ交換に利用することが出来る。
このときは、ベビーカーの走行に伴うシャフト部分からの超音波信号が超音波センサ12によって非可聴音として検出され、またベビーカーの重量を含む利用者BCの重量信号が重量センサ13によって検出される。この超音波センサ12からの超音波信号と、重量センサ13からの重量信号とを組み合わせて、利用者がベビーカーを押した利用者BCであることが判定されて、外側の表示部17に使用中と利用者がベビーカー使用者であることが表示される。
【0034】
[本実施形態の多機能トイレの回路構成説明]
次に
図2に示すブロック図によりトイレブース1に適用した見守りシステムの回路構成を説明する。
図2は
図1に示す見守りシステム1の回路構成を示すブロック図であり、
図1に示す操作ボタンである内側解錠ボタン8、内側施錠ボタン9、外側解錠ボタン18、外側施錠ボタン19からの操作信号と、センサである第1検出部12、第2検出部13からの検出信号を入力する制御部20によって構成されている。
【0035】
制御部20は、第1検出部12と第2検出部13とからの検出信号を入力して、後述する方法で利用者が車椅子使用者KSか、ベビーカー使用者BCか、自転車携行者JTか、健常者KJかを判定し、各判定結果に従って出力端子Tks、Tbc、Tjt、Tkjに対して選択的に判定信号Pt1、Pt2、Pt3、Pt4を発生する判定部21と、判定部21から供給される判定信号に対応して異なるタイマー時間を設定するタイマー22と、内側解錠ボタン8、外側解錠ボタン18の操作信号を入力制御すると共に、タイマー22から供給されるタイマー時間に従って異なる時間長の自動解除機能を制御する解錠制御部23と、内側施錠ボタン9、外側施錠ボタン19からの操作信号を入力制御する施錠制御部24とにより構成される。
また、解錠制御部23と施錠制御部24からの駆動信号を入力して自動ドア3の開閉制御を行う自動ドアロック機構30を有する。
【0036】
[本実施形態の見守りシステムの回路動作説明]
図1を用いて説明した見守りシステム1の動作について説明する。
未使用状態の見守りシステム1は外側操作優先状態となっており、見守りシステム1を使用しようとする利用者が、自動ドア3の前に来て外側解錠ボタン18を押すと、解錠指令信号Po1が解錠制御部23に入力し、解錠制御部23から自動ドアロック機構30に解錠信号Pos供給されて自動ドア3は解錠されて開放状態となる。この開放状態となった自動ドア3を利用者が通過して見守りシステム1内に入ると、利用者が通過しているときに発生する超音波信号が第1検出部12(超音波センサ)によって非可聴音として検出される。また、利用者が第2検出部13(重量センサ)に乗ると乗り物の重量を含む利用者の重量信号が重量センサ13によって検出される。
【0037】
前述の如く、判定部
21はこの超音波センサ12からの超音波信号と、重量センサ13からの重量信号とを組み合わせて、利用者が車椅子使用者KSか、ベビーカー使用者BCか、自転車携行者JTか、健常者KJかを判定し、各判定結果に従って出力端子Tks、Tbc、Tjt、Tkjに対して選択的に判定信号Pt1、Pt2、Pt3、Pt4を発生する。
判定部
21はこの判定結果に従って外側の表示部17に利用者の状態を表示し、また、判定結果による判定信号に従ってタイマー22に利用者の状態に適したタイマー時間を設定する。
【0038】
本実施形態においては、車椅子使用者KSの判定信号Pt1に対しては50分、ベビーカー使用者BCの判定信号Pt2に対しては30分、自転車携行者JTの判定信号Pt3に対しては10分、健常者KJの判定信号Pt4に対しては10分の各タイマー時間を設定している。すなわち車椅子使用者KSに対しては50分、ベビーカー使用者BCに対しては30分と十分な施錠期間を保障し、自転車携行者JT、健常者KJに対しては10分と短い施錠期間として、トイレブース1の長時間にわたる占拠を防止している。
【0039】
見守りシステム1内に入った利用者が内側施錠ボタン9を押すと、施錠指令信号Pi2が施錠制御部24に入力され、施錠制御部24から自動ドアロック機構30に施錠信号Pcsが供給されて自動ドア3は閉鎖して施錠される。同時に施錠指令信号Pi2はタイマー22のスタート端子STに供給されてタイマー22をスタートさせる。このタイマー22が動作している間は、タイマー22の出力端子OUTからのタイマー信号Pteが解錠制御部23のロック端子LOに供給されて解錠制御部23をロック状態に保つ。この結果、新たな利用希望者がきて外側解錠ボタン18を操作しても解錠指令信号Po1はロック状態にある解錠制御部23を通過できず、自動ドアロック機構30の解錠は行われない。この施錠状態においては自動ドアの開閉が内側操作優先状態となって、見守りシステム1内はタイマー21の動作時間で決まる所定時間だけ密室状態となり、利用者はゆっくり用を足すことができる。
【0040】
そして用を足し終えた利用者が内側解錠ボタン8を押すと、解錠指令信号Pi1がタイマー22のリセット端子RSと解錠制御部23に供給される。この結果タイマー22は動作をリセットされて、出力端子OUTからのタイマー信号Pteが無くなって解錠制御部23のロック状態が解除される。この結果、同時に解錠制御部23に供給された解錠指令信号Pi1は、ロック状態が解除された解錠制御部23から解錠信号Posとして出力され自動ドアロック機構を制御して自動ドアの解錠及び開放を行う。
【0041】
上記動作が、一般的な利用者による自動ドア3の施錠、解錠動作だが、利用者がいつまでたっても解錠動作を行わずトイレブース1の占拠を続けようとしても、動作を開始したタイマー22が設定されたタイマー時間が経過すると、出力端子OUTからのタイマー信
号Pteの出力を停止して、解錠制御部23のロック状態を解除する自動解錠機能が行われて見守りシステム1の占拠を防止する。そして利用者が見守りシステム1の外に出て外側施錠ボタン19を押すと、施錠指令信号Pi2が施錠制御部24を制御して、施錠信号Pcsを自動ドアロック機構30に供給し、自動ドア3は閉鎖さると共に施錠されて未使用状態に復帰する。
【0042】
[本実施形態における第1検出部の検出波形の説明]
次に
図3Aから
図3Cにより、見守りシステム
1の利用者が使用する、乗り物に対する第1検出部の検出波形を説明する。
図3Aから
図3Cは本実施形態における第1検出部12である超音波センサが検出した
超音波波形であり、
図3Aは車椅子の非可聴音の超音波波形、
図3Bはベビーカーの非可聴音の超音波波形、
図3Cは自転車の非可聴音の超音波波形である。いずれも車軸部分の回転音が主であり、前半の信号間隔の粗な部分は、走行動作による車軸回転に同期した超音波波形、後半の信号間隔の密な部分は、ブレーキによる停止動作に伴う超音波波形である。
【0043】
図3Aから
図3Cに示す各乗り物の超音波波形は略同形状の波形であるが、各乗り物によって波形の振幅レベルに違いがあることがわかる。
各利用者が使用する乗り物による振幅レベルの違いは、車輪の大きさ、車輪の数、高さ位置、車輪にかかる重量等によって異なる。
各乗り物の車輪の特徴としては、車椅子は車輪が大きく、シャフト位置が比較的高く、かつ左右両輪のため横幅が広い構造である。またベビーカーは車輪が小さく、シャフト位置が低く、かつ左右両輪のため横幅が広い構造である。さらに自転車は車輪が一番大きく、シャフト位置が高く、かつ前後両輪のため横幅が狭い構造である。
【0044】
各乗り物はその構造の違いにより、第1検出部12を中間的な位置に設けた場合、その第1検出部12による超音波信号の検出レベルは
図3Aから
図3Cに示す如く、
図3Aに示す車椅子の検出レベルが大で、
図3Bに示すベビーカーの検出レベルが中で、
図3Cに示す自転車の検出レベルが小となっている。なお、車輪の大きい自転車の検出レベルは小さい理由としては、自転車は一般的に利用者が乗ったまま入ることなく、自転車から降りて押しながら入るため、車輪にかかる重量は少なくシャフトの回転音が低くなっている。
【0045】
なお、
図1では第1検出部12を自動ドア3の入り口の片側にのみ、1個だけ設けたが、出来れば自動ドア3の入り口の両側に2個設け、2個の検出信号の合算値で判定することが望ましい。その理由は自動ドア3を通過する利用者が、多少左右方向にずれて通過しても確実に判別することができるからである。
【0046】
[本実施形態における第1検出部12と第2検出部13との組合せによる判定の説明]
次に
図4Aから
図4Dを用いて、第1検出部12の検出信号による判定動作について説明する。
図4Aは、第1検出部12の検出信号のみによる判定動作を示す表である。すなわち乗り物の車椅子、ベビーカー、自転車に加えて多機能トイレを共通使用する健常者を第1検出部の非可聴音検出で判定したものである。
【0047】
非可聴音検出レベルとしては車椅子がレベル大、ベビーカーがレベル中、自転車がレベル小に加えて健常者は乗り物を使用していないため乗り物に起因した非可聴音は発生せず、非可聴音検出レベルはなしとしている。上記の如く、非可聴音検出レベルの乗り物ごとの差異を、レベル検出するようにすれば、車椅子、ベビーカー、自転車、健常者をそれぞれH1〜H4の判定を行うことができる。
【0048】
図4Bは、利用者の状態をより正確に把握するために第1検出部12と第2検出部13
との組み合わせによる判定動作を行った結果を示す表である。
図4Bに示す表において、乗り物及び非可聴音出レベルは
図4Aに示す表と同じでるが、第2検出部13として重量測定部(重量センサ)を用いており、その検出信号を重量で示している。
すなわち重量としては、それぞれ車椅子が大、ベビーカーが中、自転車が小〜中、健常者が小〜中となっている。この自転車と健常者が小〜中になっているのは、車椅子やベビーカー使用者のような重量はないが、体重は個人差によって変わるため、検出幅を持たせている。
【0049】
図4Bの表に示すごとく、第1検出部12と第2検出部13との検出信号の組み合わせによる判定条件ついては、車椅子が大×大、ベビーカーが中×中、自転車が小×中、健常者がなしとなっている。この判定条件より車椅子、ベビーカー、自転車、健常者をそれぞれH1〜H4の判定を行うことができる。
図4Aに示す表の第1検出部12で検出した信号レベルの差異のみによる判定に比べて、
図4Bに示す表の2つの検出信号の積による判定であるため、より正確に利用者の判別を行うことができる。
【0050】
図4Cに示す表は、本実施形態における第2検出部13の変形例であり、第2検出部13として重量測定部に替えて金属量測定部を設けた場合の判定例を示している。金属量は各乗り物における金属部品の使用量によって異なり、それぞれ車椅子が大、ベビーカーが中、自転車が中、健常者がなしとなっている。
図4Cに示す表のごとく、第1検出部12と第2検出部13との検出信号の組み合わせによる判定条件ついては、車椅子が大×大、ベビーカーが中×中、自転車が小×中、健常者がなしとなっている。この判定条件より車椅子、ベビーカー、自転車、健常者をそれぞれH1〜H4として判定を行うことができる。この判定結果は、
図4Bの判定結果と同様に2つの検出信号の積による判定であるため、正確に利用者の判別を行うことができる。
【0051】
図4Dは、車椅子、ベビーカー、自転車、健常者のそれぞれH1〜H4の判定に対するタイマー設定時間の例を示した表である。トラブルの起こり易い車椅子とベビーカーは長めのタイマー設定時間50分と30分とし、健常者や自転車は居座り防止のためタイマー設定時間をそれぞれ短めの10分としている。これらのタイマー設定時間は、あくまで一例であり、これらの数値に限定するものでは無い。
【0052】
第2検出部に用いるセンサとしては、さらに臭気センサを用いることができ、トイレの使用に時間のかかる車椅子使用者や、便秘や下痢などで利用時間がかかる場合、見守りシステム1(トイレブース)の使用中に自動ドアが解錠されるトラブルが発生することを考慮した見守りシステムとすることができる。特に時間のかかる排便を硫黄化合物や硫化水素系物質を検出する臭気センサを用いて利用者の排便行為自体を検知し、排便行為のタイミングとタイマーによる解錠時間が近接する場合に、自動解錠機能の時間を延長してトラブルを回避するものである。なお、臭気センサが検出する物質は、排便を想定した硫黄化合物や硫化水素系物質に限定されるものではなく、排尿を想定してアンモニア系物質を検出する臭気センサを使用することもできる。
【0053】
図5は第2検出部13として臭気サンサを用いた場合の動作原理を示すグラフであり、横軸はトイレの使用時間、縦軸は排便に伴う臭気センサの出力レベルを示している。
図5に示す如く、トイレブース1へ利用者が入室して自動ドアを施錠した時点から自動解錠機能のタイマーがスタートする。そしてタイマー動作の途中で排便行為がおこなわれると臭気カーブNが無臭気状態N1から急激に上昇する上昇状態N2となり、やがて下降状態N3を通して無臭気状態に戻る。
【0054】
前述の臭気サンサが臭気カーブNの上昇状態N2、すなわち臭気の急上昇を検出するとまだ排便中であると判断して自動解錠機能の解錠時間を所定時間だけ延長し、トイレ使用
中の解錠トラブルを防止することができる。第2検出部13として臭気センサを用いる場合は、検出感度を高めるために出来るだけ便器4の近傍に配置することが好ましい。
【0055】
[第2検出部の変形例における回路構成の説明]
次に
図6の回路ブロック図により見守りシステム50(トイレブース)の回路構成を説明する。
図6に示す見守りシステム50の基本的構成は
図1に示す見守りシステム1と同じであり、同一または対応する要素には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
見守りシステム50が見守りシステム1と異なるところは、第2検出部13として、重量センサ13a及び臭気センサ13b(臭気検出部)を設けたことである。
見守りシステム50では、第2検出部13として重量センサ13a及び臭気センサ13bが判定部21に接続されており、利用者の重量の情報と、
図5を用いて説明した臭気センサ出力の上昇、下降の臭気発生信号Pnを判定部21に出力する。
【0056】
判定部21では、第1検出部12及び重量センサ13aからの信号に基づいて利用者の状態を判別し、利用者の状態に応じたタイマー設定時間Pt1からPt4のいずれかをタイマー22に出力するとともに、タイマー22でカウントしている自動ドア3を解錠するまでの残り時間ΔPtと臭気発生信号Pnの発生時間とを比較し、臭気発生信号Pnが発生した時点での自動ドア3を解錠するまでの残り時間ΔPtが例えば5分未満の場合にはタイマー設定時間の延長信号+Ptをタイマー22に出力し、自動ドア3を解錠するまでの時間を延長する。
【0057】
以上のように、第2検出部13を複数のセンサで構成することにより、見守りシステム50の利用者の状態を正確に把握できるとともに、利用者の利用状態に応じて見守りシステム50の付帯機器である自動ドア3の解錠時間を適切に設定することが可能となる。上記では、第2検出部13を複数のセンサで構成した例として、重量センサ13aと臭気センサ13bとを用いた例を説明したが、第2検出部13として構成する複数のセンサの組合せはこれに限定されるものではなく、金属量センサと臭気センサの組合せや、重量センサと金属量センサと臭気センサとを組合せた構成を採用することができる。
【0058】
上記の如く、本発明では多機能トイレを利用する利用者の動作によって生ずる非可聴音情報を取得する第1検出部12と、前記非可聴音情報以外の前記利用者の情報を取得する第2検出部13とを設け、第1検出部12及び第2検出部13で取得した情報に基づいて利用者の動作及び状態を制御部20で把握するようにしているので、利用者の状態判別を正確に行うことができ、また利用者の使用状況を把握できるため、見守りシステムに付帯する機器である自動解錠機能を利用者に合わせて適正な時間設定とすることができる。
【0059】
上記第2検出部13としては本実施形態に示した、臭気、重量、金属量に限られず、水洗の音や、使用後に手すりを跳ねあげる音を検出して使用終了を判断してもよく、また利用者の倒れる音や、苦しむ息遣いを検出して警報を発生しても良い。