特許第6804936号(P6804936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6804936-油圧回路 図000002
  • 特許6804936-油圧回路 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804936
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】油圧回路
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20201214BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20201214BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20201214BHJP
   B60W 10/00 20060101ALI20201214BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20201214BHJP
【FI】
   H02K9/19 A
   B60L3/00 H
   B60K6/26ZHV
   B60W10/00 900
   B60W20/00
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-212161(P2016-212161)
(22)【出願日】2016年10月28日
(65)【公開番号】特開2018-74756(P2018-74756A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】梅田 純司
【審査官】 若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−235806(JP,A)
【文献】 特開2008−286063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
B60K 6/26
B60L 3/00
B60W 10/00
B60W 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源として電動モータを備える車両に搭載され、前記電動モータの冷却を行う油圧回路であって、
オイルを貯留するオイルパンと、
前記電動モータにオイルを導く冷却用油路と、
一端が前記冷却用油路に接続され、前記車両の被潤滑部にオイルを導く潤滑用油路と、
前記オイルパンに貯留されたオイルを吸入用油路を介して吸入し、当該吸入したオイルを昇圧して前記冷却用油路に供給するオイルポンプと、
一端が前記冷却用油路における前記潤滑用油路との接続箇所と前記電動モータとの間に接続される第1油路と、
前記第1油路の他端に設けられ、前記車両の加速度の絶対値が所定値以上になると開弁する開閉弁と、
一端が前記開閉弁に接続され、他端が前記オイルパン内に配設される、又は、前記吸入用油路に接続される第2油路と、
を備えることを特徴とする油圧回路。
【請求項2】
前記第2油路の他端は、前記オイルパン内に配設されるストレーナの吸入口近傍に配設されることを特徴とする請求項1に記載の油圧回路。
【請求項3】
前記開閉弁は、前記車両の加速度の絶対値が所定値以上になると開弁するように構成された機械式の開閉弁であることを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧回路。
【請求項4】
前記開閉弁の開閉制御を行う制御手段と、
前記車両の加速度を検出する検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記検出手段で検出された加速度の絶対値が所定値以上になると前記開閉弁を開弁制御することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の油圧回路。
【請求項5】
前記制御手段は、前記電動モータの温度が所定の温度以下のときに、前記車両の加速度の絶対値が所定値以上になると前記開閉弁を開弁制御することを特徴とする請求項4に記載の油圧回路。
【請求項6】
前記制御手段は、前記電動モータの駆動トルクが所定のトルク以下のときに、前記車両の加速度の絶対値が所定値以上になると前記開閉弁を開弁制御することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の油圧回路。
【請求項7】
前記制御手段は、前記電動モータによる回生が禁止されており、かつ前記車両の減速度が所定の減速度以上になると前記開閉弁を開弁制御することを特徴とする、請求項4〜請求項6の何れか一項に記載の油圧回路。
【請求項8】
前記開閉弁は、前記車両の減速度が所定の減速度以上になると開弁することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の油圧回路。
【請求項9】
前記所定の減速度は、フルブレーキング時に前記車両に発生する減速度に基づいて設定されることを特徴とする請求項7に記載の油圧回路。
【請求項10】
前記冷却用油路における前記第1油路との接続箇所と前記電動モータとの間に設けられ、前記車両の減速度が所定の減速度以上になると閉弁する開閉弁をさらに備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の油圧回路。
【請求項11】
駆動源として電動モータを備える車両に搭載され、前記電動モータの冷却を行う油圧回路であって、
オイルを貯留するオイルパンと、
前記電動モータにオイルを導く冷却用油路と、
前記車両の被潤滑部にオイルを導く潤滑用油路と、
前記オイルパンに貯留されたオイルを吸入用油路を介して吸入し、当該吸入したオイルを昇圧して前記冷却用油路及び前記潤滑用油路に供給するオイルポンプと、
一端が前記冷却用油路に接続される第1油路と、
前記第1油路の他端に設けられ、前記車両の減速度が所定の減速度以上になると開弁する第1の開閉弁と、
一端が前記開閉弁に接続され、他端が前記オイルパン内に配設される、又は、前記吸入用油路に接続される第2油路と、
前記冷却用油路における前記第1油路との接続箇所と前記電動モータとの間に設けられ、前記車両の減速度が所定の減速度以上になると閉弁する第2の開閉弁と
を備えることを特徴とする油圧回路。
【請求項12】
前記第1の開閉弁の開閉制御を行う制御手段と、
前記車両の加速度を検出する検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記検出手段で検出された減速度が所定の減速度以上になると前記第1の開閉弁を開弁制御することを特徴とする請求項11に記載の油圧回路。
【請求項13】
前記第1の開閉弁及び前記第2の開閉弁の開閉制御を行う制御手段と、
前記車両の加速度を検出する検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記電動モータによる回生が禁止されており、かつ前記車両の減速度が所定の減速度以上になると、前記第1の開閉弁を開弁制御するとともに前記第2の開閉弁を開閉制御することを特徴とする請求項11に記載の油圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源として電動モータを備える車両に搭載される油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駆動源として電動モータを備えるハイブリッド車両(HEV(Hybrid Electric Vechicle))や電気自動車(EV(Electric Vehicle))が実用化されている。電動モータは、駆動時や回生時に発熱する。この発熱による電動モータの性能低下や劣化を抑制するために、電動モータの冷却が行われている。電動モータの冷却は、例えば、オイルポンプによってオイルパン内から吸入したオイルを用いて行われる。
【0003】
特許文献1には、動力分割装置を備えたハイブリッド車両において、モータ・ジェネレータに連通した冷却用油路と、動力分割装置における動力伝達部にオイルを供給する潤滑用油路と、内燃機関によって駆動され、冷却用油路及び潤滑用油路に連通したメカオイルポンプと、電動機によって駆動され、冷却用油路及び潤滑用油路に連通した電動オイルポンプと、電動オイルポンプから出力されたオイルが供給される油路を冷却用油路と潤滑用油路とに選択的に切る換える切替弁とを備える油圧制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−199216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、オイルポンプがオイルを吸入する際に空気を吸い込むと、吸い込んだ空気によって油圧の低下や異音の発生などを招くおそれがある。そのため、オイルパン内に十分な量のオイルが貯留されるように、潤滑用と冷却用に用いるオイルの量(以下、「油量」と記載)が設定されている。
【0006】
しかしながら、車両の加減速時や旋回時には、車両に発生する加速度に応じてオイルパン内のオイルの油面が傾き、オイルパンの一側の油面が低下する。そのため、油面が低下した場合でもオイルポンプが空気を吸い込まないように、車両の加減速時や旋回時に発生する加速度を考慮して油量を設定する必要がある。特に、車両の減速時(例えば、フルブレーキングによる減速時)には最も大きな加速度が発生する可能性があるので、この減速時に発生する最大加速度を考慮して油量が設定されている場合がある。このように油量を設定した場合、油量が増大し、この油量に伴う質量やコストの増加を招く。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、オイルパンに貯留されるオイルに作用する加速度にかかわらずオイルポンプでの空気の吸い込みを防止しつつ、油量を低減することが可能な油圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る油圧回路は、駆動源として電動モータを備える車両に搭載され、電動モータの冷却を行う油圧回路であって、オイルを貯留するオイルパンと、電動モータにオイルを導く冷却用油路と、オイルパンに貯留されたオイルを吸入用油路を介して吸入し、当該吸入したオイルを昇圧して冷却用油路に供給するオイルポンプと、一端が冷却用油路に接続される第1油路と、第1油路の他端に設けられ、車両の加速度に応じて開弁する開閉弁と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る油圧回路では、電動モータを冷却するための冷却用油路に第1油路が接続され、この第1油路に開閉弁が設けられている。この開閉弁は、車両の加速度に応じて開弁する。したがって、本発明に係る油圧回路では、車両の加速度に応じて開閉弁が開弁し、冷却用のオイルをオイルパンなどに戻すことができ、オイルパン内の油量が増加する。そのため、車両で発生する最大の加速度に応じてオイルパン内のオイルの油面が傾いた場合でも、オイルパンの一側の油面の低下が抑えられる。これにより、油量を減らした場合(ひいては、油量を減らしたことでオイルパン内のオイルが少なくなった場合)でも、オイルポンプでの空気の吸い込みを防止することができる。このように、本発明に係る油圧回路によれば、オイルパンに貯留されるオイルに作用する加速度にかかわらずオイルポンプでの空気の吸い込みを防止しつつ、油量を低減することができる。
【0010】
本発明に係る油圧回路では、車両の被潤滑部にオイルを導く潤滑用油路を備え、オイルポンプは、オイルを冷却用油路及び潤滑用油路に供給することが好ましい。このように構成することで、車両で発生する最大の加速度に応じてオイルパン内のオイルの油面が傾いた場合でも、冷却用のオイルをオイルパンなどに戻すことで、被潤滑部の循環用のオイルを確保することができる。
【0011】
本発明に係る油圧回路では、一端が開閉弁に接続され、他端がオイルパン内に配設される、または、吸入用油路に接続される第2油路を備えることが好ましい。このように構成することで、開閉弁が開弁した場合に、冷却用のオイルをオイルパン内、または、吸入用油路に確実に戻すことができ、オイルポンプでの空気の吸い込みを防止することができる。
【0012】
本発明に係る油圧回路では、第2油路の他端は、オイルパン内のストレーナの吸入口近傍に配設されることが好ましい。このように構成することで、オイルパンに戻したオイルをストレーナに吸入し易くすることができ、オイルポンプでの空気の吸い込みを防止することができる。
【0013】
本発明に係る油圧回路では、開閉弁は、車両の加速度に応じて開弁するように構成された機械式の開閉弁であることが好ましい。このように構成することで、車両の加速度に応じて開閉弁を制御する必要がなく、制御用の部品を別途設ける必要がない。
【0014】
本発明に係る油圧回路では、開閉弁の開閉制御を行う制御手段と、車両の加速度を検出する検出手段と、を備え、制御手段は、検出手段で検出された加速度に応じて開閉弁を開弁制御することが好ましい。このように構成することで、車両の加速度に応じて精度良く開閉弁を開弁させることができる。
【0015】
本発明に係る油圧回路では、開閉弁は、電動モータの温度が所定の温度以下のときに、車両の加速度に応じて開弁すると好ましい。このように構成することで、車両の加速度が大きくなった場合でも電動モータの温度が所定の温度よりも高いときには開閉弁が閉弁するので、冷却用油路によって導かれたオイルによって電動モータを冷却することができる。これによって、電動モータの過熱を防止し、電動モータの信頼性を確保することができる。
【0016】
本発明に係る油圧回路では、開閉弁は、電動モータの駆動トルクが所定のトルク以下のときに、車両の加速度に応じて開弁すると好ましい。このように構成することで、車両の加速度が大きくなった場合でも電動モータの駆動トルクが所定のトルクよりも大きいときには開閉弁が閉弁するので、冷却用油路によって導かれたオイルによって電動モータを冷却することができる。これによって、電動モータの過熱を防止し、電動モータの信頼性を確保することができる。
【0017】
本発明に係る油圧回路では、開閉弁は、車両の加速度の絶対値が所定値以上になると開弁すると好ましい。このように構成することで、車両の加速度の絶対値が所定値以上になると開閉弁が確実に開弁することで、オイルポンプでの空気の吸い込みを確実に防止することができる。
【0018】
本発明に係る油圧回路では、開閉弁は、車両の減速度が所定の減速度以上になると開弁することが好ましい。このように構成することで、減速時に車両の減速度が所定の減速度以上になると開閉弁が開弁し、冷却用のオイルをオイルパンなどに戻すことができ、オイルパン内の油量が増加する。そのため、車両の減速時に発生する最大の加速度に応じてオイルパン内のオイルの油面が傾いた場合でも、オイルパンの後方側の油面の低下が抑えられる。これにより、油量を減らした場合でも、オイルポンプでの空気の吸い込みを防止することができる。
【0019】
本発明に係る油圧回路では、車両の減速度が所定の減速度以上の場合、電動モータでの回生が禁止されることが好ましい。このように構成されることで、車両の減速度が所定の減速度以上の場合に電動モータが発熱しないので、電動モータに対する冷却が不要であり、電動モータにオイルを回す必要がない。
【0020】
本発明に係る油圧回路では、所定の減速度は、フルブレーキング時に車両に発生する減速度に基づいて設定されることが好ましい。このように構成することで、フルブレーキングによる減速時に最大の加速度が発生した場合に、開閉弁が開弁し、冷却用のオイルをオイルパンなどに戻すことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、オイルパンに貯留されるオイルに作用する加速度にかかわらずオイルポンプでの空気の吸い込みを防止しつつ、油量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る油圧回路の構成を示すブロック図である。
図2】第2実施形態に係る油圧回路の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。なお、実施形態では、車両の前後方向の加速度において車両の前方向への加速度をプラス値の加速度とし、車両の後方向への加速度をマイナス値の加速度とする。車両の減速度は、マイナス値の加速度の絶対値である。
【0024】
図1を参照して、第1実施形態に係る油圧回路1について説明する。図1は、第1実施形態に係る油圧回路1のブロック図である。油圧回路1を搭載する車両として、ハイブリッド車両に適用した場合を例にして説明する。油圧回路1について説明する前に、このハイブリッド車両について説明しておく。
【0025】
ハイブリッド車両は、駆動源として、エンジン(図示省略)及び電動モータ10を備えている。エンジンは、どのような形式のものでもよいが、例えば、水平対向型の4気筒ガソリンエンジンである。
【0026】
電動モータ10は、電動機として機能し、例えば、三相交流タイプの交流同期モータである。電動モータ10は、発電機としても機能するモータ・ジェネレータである。電動モータ10は、車両の加速時などに供給される電力に応じて回転駆動しているときや車両の減速時に回生で発電しているときに発熱する。電動モータ10は、オイルによって冷却される油冷式の電動モータである。
【0027】
また、ハイブリッド車両は、動力分割機構(図示省略)を備えている。動力分割機構は、例えば、リングギヤ、ピニオンギヤ、サンギヤ、及び、プラネタリキャリアから構成される遊星歯車機構を有している。この動力分割機構は、リングギヤに電動モータ10とドライブトレーンが接続され、サンギヤに発電機が接続され、プラネタリキャリアにエンジンが接続され、エンジンで発生した駆動力をドライブトレーンと発電機とに分割して伝達する。
【0028】
それでは、油圧回路1について説明する。油圧回路1は、オイルを用いて電動モータ10を冷却すると共に被潤滑部11を潤滑するための油圧回路である。油圧回路1は、オイルパン12内のオイルをオイルポンプ13によって吸入して昇圧し、この昇圧されたオイルを潤滑用油路14及び冷却用油路15に供給する。特に、油圧回路1は、車両の減速時に限界加速度が発生した場合に冷却用油路15に供給される冷却用のオイルをオイルパン12に戻す機能を有している。限界加速度は、フルブレーキング(ブレーキ性能が最大限に発揮されるブレーキング)時に車両に発生する最大の加速度(減速度)である。なお、フルブレーキング時(例えば、ブレーキペダルの踏み込み量や踏み込み速度、または、マスタシリンダ圧などに基づいてフルブレーキング操作されたと判定された時)には、電動モータ10での回生が禁止され、回生ブレーキが働かず、油圧式のブレーキのみで減速する。
【0029】
被潤滑部11は、オイルによって潤滑される部材である。被潤滑部11は、例えば、上述した動力分割機構やドライブトレーンなどに設けられるギヤや軸受けなどである。
【0030】
オイルパン12は、オイルを貯留する。オイルパン12内には、ストレーナ16が配設されている。ストレーナ16は、例えば、車両の加減速時にオイルパン12内のオイルの油面が車両の前後方向において傾いた場合の傾きの中心位置よりも後方側に吸入口が位置するように配置される。また、ストレーナ16は、例えば、車両の旋回時にオイルパン12内のオイルの油面が車両の幅方向において傾いた場合に左方側又は右方側の油面が低下するので、オイルパン12内の幅方向の中央に吸入口が位置するように配置される。ストレーナ16は、オイルポンプ13によって吸い込まれるオイル中の異物(コンタミネーション)を捕捉する。ストレーナ16には、吸入用油路17の一端が接続されている。
【0031】
オイルポンプ13は、潤滑用油路14と冷却用油路15にオイルを供給するオイルポンプである。オイルポンプ13は、オイルパン12に貯留されているオイルを吸入し、この吸入したオイルを昇圧して吐出する。オイルポンプ13の吸入部(吸入口)は、吸入用油路17の他端が接続され、吸入用油路17を介してストレーナ16に連通されている。オイルポンプ13は、機械式のオイルポンプ(メカオイルポンプ)であり、例えば、ベーンタイプのオイルポンプやトロコイドタイプのオイルポンプなどが好適に用いられる。オイルポンプ13は、例えば、エンジンの駆動時にはエンジンの駆動力を伝達する動力伝達軸にギヤを介して連結されることで駆動され、エンジンの停止時には駆動輪に駆動力(電動モータ10の駆動力)を伝達する動力伝達軸にギヤを介して連結されることで駆動される。なお、オイルポンプ13から必要以上の油圧のオイルが吐出された場合にオイルの一部を排出するリリーフバルブが設けられてもよい。
【0032】
潤滑用油路14は、被潤滑部11を潤滑するための油路である。潤滑用油路14は、オイルポンプ13の吐出部(吐出口)に連通されている。潤滑用油路18は、オイルポンプ13から吐出されたオイルを被潤滑部11まで導くように油路が形成されている。
【0033】
冷却用油路15は、電動モータ10を冷却するための油路である。冷却用油路15は、オイルポンプ13の吐出部に連通されている。冷却用油路15は、オイルポンプ13から吐出されたオイルを電動モータ10まで導くように油路が形成されている。なお、冷却用油路15の任意の箇所にはオイルを冷却するオイルクーラが設けられてもよい。また、上述した発電機も備える車両の場合、冷却用油路15は電動モータ10に加えて発電機も冷却する油路でもよい。
【0034】
冷却用油路15には、第1油路18の一端が接続されている。第1油路18は、電動モータ10を冷却するための冷却用のオイルをオイルパン12に戻すための油路である。第1油路18の径は、冷却用油路15の径よりも大径である。第1油路18は、冷却用油路15におけるオイルポンプ13に近い箇所に接続されると好ましい。第1油路18の他端には、開閉弁19が設けられている。
【0035】
開閉弁19は、冷却用のオイルをオイルパン12に戻すために、第1油路18の端部を開閉する機械式の開閉弁である。開閉弁19は、車両の減速度が所定の減速度以上になると開弁(全開)するように構成されている。開閉弁19は、例えば、ばね付きのチェックバルブであり、チェックバルブに作用する減速度が所定の減速度以上になると開弁するようにマスやばね力などが調整されている。開閉弁19は、例えば、チェックバルブの弁体19a(例えば、ボール)のマスとチェックバルブに作用する減速度とに応じて弁体19aに作用する押力と、ばね19bのばね力(付勢力)とのバランスによって弁体19aが駆動され、作用する減速度が所定の減速度以上になると開弁する。開閉弁19は、車両の前後方向の加速度が作用するように車両の前後方向に沿って配置され、特に、減速度が大きくなると開弁する向きに配置されている。
【0036】
所定の減速度は、フルブレーキング時に車両で発生する限界加速度に基づいて設定され、例えば、限界加速度に相当する減速度(例えば、1G)、または、限界加速度に相当する減速度よりも所定量(例えば、0.1G)小さい減速度が設定される。これによって、開閉弁19は、フルブレーキング時(限界加速度発生時)に、自動的に開弁する。
【0037】
開閉弁19には、第2油路20の一端が接続されている。第2油路20は、開閉弁19が開弁した場合に冷却用のオイルをオイルパン12内のストレーナ16の吸入口近傍に戻すための油路である。第2油路20の他端は、ストレーナ16の吸入口近傍に配設されている。特に、第2油路20の他端は、ストレーナ16の吸入口に向けて配設されていると好ましい。第2油路20の径は、例えば、第1油路18の径と同径である。
【0038】
上述した構成の油圧回路1でのフルブレーキングによる減速時の動作について説明する。オイルポンプ13は、エンジンなどの動力によって駆動され、ストレーナ16を介してオイルパン12内のオイルを吸入する。オイルポンプ13は、吸入したオイルを昇圧し、昇圧したオイルを潤滑用油路14に吐出すると共に冷却用油路15に吐出する。潤滑用油路14に吐出されたオイルは、潤滑用油路14を介して被潤滑部11まで導かれ、被潤滑部11を潤滑する。この潤滑に用いられたオイルは、被潤滑部11を通過後に、オイルパン12に戻る。開閉弁19は、通常、閉弁している。したがって、冷却用油路15に吐出されたオイルは、冷却用油路15を介して電動モータ10まで導かれ、電動モータ10を冷却する。この冷却に用いられたオイルは、電動モータ10の各部を通過後に、オイルパン12に戻る。
【0039】
車両の運転者によってフルブレーキング操作された場合、車両には、フルブレーキングにより最大の減速度が発生する。これにより、オイルパン12において、オイルの油面が車両の前後方向に傾き、後方側で油面が低くなる。この際、電動モータ10による回生が禁止されている。
【0040】
このとき、車両の減速度が所定の減速度以上になると、開閉弁19は自動的に開弁する。これにより、冷却用油路15に吐出されたオイルは、第1油路18の径が冷却用油路15の径よりも大きいので、第1油路18及び開閉弁19を介して第2油路20に流入する。第2油路20に流入したオイルは、オイルパン12内のストレーナ16の吸入口近傍で排出される。
【0041】
この場合、冷却用油路15に吐出された冷却用のオイルがオイルパン12に戻されるので、開閉弁19が閉弁している場合に比べてオイルパン12内の油量が増加する。そのため、フルブレーキングで発生する減速度(限界加速度)に応じてオイルパン12内のオイルの油面が傾くことで後方側の油面が低下するが、このようなオイルを戻す機能のない油圧回路が搭載される従来の車両に比べて、後方側の油面の低下が抑えられる。これによって、従来の車両に比べて油量を減らしても(ひいては、油量を減らしたことでオイルパン12内のオイルが少なくなった場合でも)、オイルポンプ13がストレーナ16を介して空気を吸い込むことを防止することができる。また、このオイルポンプ13から潤滑用油路14に吐出されたオイルは被潤滑部11に供給されているので、被潤滑部11を潤滑することができる。
【0042】
第1実施形態に係る油圧回路1によれば、フルブレーキングによる減速時には冷却用のオイルを戻すことでオイルパン12内の油量を増加させることにより、オイルパン12に貯留されるオイルに作用する加速度にかかわらずオイルポンプ13での空気の吸い込みを防止しつつ、油量を低減することができる。このように油量を低減した場合でも、被潤滑部11の循環用のオイルを十分に確保することができる。
【0043】
第1実施形態に係る油圧回路1によれば、フルブレーキングによる減速時には従来の車両に比べて後方側の油面が低下しないので、ストレーナ16を油面の傾きの中心位置よりも後方側に吸入口が位置するように配置することができる。このようにストレーナ16を配置することで、車両の加速時に発生する最大の加速度に応じてオイルパン12内のオイルの油面が傾くことでオイルパン12の前方側で油面が最も低下した場合でも、オイルポンプ13がストレーナ16を介して空気を吸い込むことを防止することができる。これによって、油量を更に低減することができる。
【0044】
第1実施形態に係る油圧回路1によれば、第2油路20の他端がオイルパン12内のストレーナ16の吸入口近傍に配設されているので、オイルパン12に戻したオイルをストレーナ16に吸入し易くすることができ、オイルポンプ13がストレーナ16を介して空気を吸い込むことを防止することができる。
【0045】
第1実施形態に係る油圧回路1によれば、開閉弁19が車両の減速度が所定の減速度以上になると開弁するように構成された機械式の開閉弁であるので、車両の減速度に応じて開閉弁19を制御する必要がなく、制御用の部品を別途設ける必要がない。
【0046】
第1実施形態に係る油圧回路1によれば、車両の減速度が所定の減速度以上の場合(フルブレーキング時)、電動モータ10での回生が禁止されるので、電動モータ10で発熱しない。そのため、電動モータ10に対する冷却が不要であり、電動モータ10にオイルを回す必要がない。
【0047】
図2を参照して、第2実施形態に係る油圧回路2について説明する。図2は、第2実施形態に係る油圧回路2のブロック図である。
【0048】
油圧回路2は、第1実施形態に係る油圧回路1と比較すると、機械式の開閉弁19に代えて電磁式の開閉弁25を用いる点が異なる。以下では、この開閉弁25及び開閉弁25を制御する制御部についてのみ説明する。
【0049】
開閉弁25は、第1油路18を開閉する電磁式の弁である。開閉弁25は、車両の減速度が所定の減速度以上になった場合にのみ開弁するように制御される。開閉弁25は、ECU(Electronic Control Unit)30(特許請求の範囲に記載の制御手段に相当)によって開閉制御される。開閉弁25は、例えば、ノーマリークローズの電磁弁の場合、非通電時に閉弁し、通電時に開弁する。なお、開閉弁25は、第1実施形態に係る開閉弁19のように配置に制約がない。
【0050】
ECU30は、ハイブリッド車両に搭載される電子制御装置である。ECU30は、例えば、HEVCU(Hybrid Electric Vehicle Control Unit)である。ECU30は、例えば、VDCU(Vehicle Dynamics Control Unit)40からCAN(Cotroller Area Network)50を介して車両の加速度情報を受信する。VDCU40には、加速度センサ41(特許請求の範囲に記載の検出手段に相当)が接続されている。加速度センサ41は、例えば、車両の前後方向及び横方向の加速度を検出するセンサである。
【0051】
ECU30は、受信した加速度情報を用いて車両の減速度(マイナス値の加速度の絶対値)を取得し、この取得した減速度が所定の減速度以上か否かを判定する。そして、ECU30は、減速度が所定の減速度未満の場合、開閉弁25を閉弁制御する(例えば、開閉弁25への通電を停止する)。また、ECU30は、減速度が所定の減速度以上の場合、開閉弁25を開弁制御する(例えば、開閉弁25に通電する)。
【0052】
上述した構成の油圧回路2でのフルブレーキングによる減速時の動作について説明する。ここでは、開閉弁25に関する動作について詳細に説明する。VDCU40では、加速度センサ41で検出した加速度情報をCAN50を介してECU30などに送信する。ECU30では、加速度情報を受信すると、車両の減速度が所定の減速度以上か否かを判定する。ECU30では、減速度が所定の減速度未満と判定している場合、開閉弁25を閉弁制御する。この制御によって開閉弁25が閉弁している場合、冷却用油路15に吐出されたオイルは、冷却用油路15を介して電動モータ10まで導かれ、電動モータ10を冷却する。
【0053】
車両の運転者によってフルブレーキング操作された場合、車両には、フルブレーキングにより最大の減速度が発生する。このとき、ECU30では、車両の減速度が所定の減速度以上と判定し、開閉弁25を開弁制御する。この制御によって開閉弁25が開弁すると、冷却用油路15に吐出されたオイルは、第1実施形態での動作説明と同様に、第1油路18及び開閉弁19を介して第2油路20に流入する。第2油路20に流入したオイルは、オイルパン12内のストレーナ16の吸入口近傍に排出される。これ以降の動作については、第1実施形態での動作説明と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
第2実施形態に係る油圧回路2は、第1実施形態に係る油圧回路1と同様の効果を有する(但し、開閉弁19に関する効果は除く)。特に、第2実施形態に係る油圧回路2によれば、ECU30によって開閉制御される電磁式の開閉弁25を用いているので、車両の減速度に応じて精度良く開閉弁25を開弁させることができる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では駆動源としてエンジンと電動モータ10を備えるハイブリッド車両に適用したが、駆動源として電動モータのみを備える電気自動車にも適用可能である。
【0056】
上記実施形態では強制潤滑用のオイルポンプとしてエンジン又は電動モータ10の動力によって駆動される機械式のオイルポンプ13を適用したが、電動式のオイルポンプも適用可能であり、また、エンジンの作動中にエンジンの動力によって駆動される機械式のオイルポンプとエンジンの停止中に用いられる電動式のオイルポンプとを切り換えて用いる構成にも適用可能である。
【0057】
上記実施形態では一端が開閉弁19,25に接続され、他端がオイルパン12内に配設される第2油路20を備える構成としたが、第2油路20を備えない構成としてもよい。この構成の場合、開閉弁19,25が開弁した場合に、開閉弁19,25からオイルが排出されることで、オイルがオイルパン12に戻る。また、一端が開閉弁19,25に接続され、他端が吸入用油路17の任意の箇所に接続される第2油路を設ける構成としてもよい。
【0058】
上記実施形態では1個の開閉弁19,25を設ける構成としたが、冷却用油路15における第1油路18の接続箇所よりも電動モータ10側に車両の減速度が所定の減速度以上になると閉弁する開閉弁を更に設ける構成としてもよい。このように構成した場合、油路の径に関係なく、車両の減速度が所定の減速度以上になると電動モータ10側にオイルが流れない。
【0059】
上記実施形態では電動モータ10の冷却用と被潤滑部11の潤滑用に用いられる油圧回路1,2に適用したが、これ以外の用途にも用いられる油圧回路に適用可能であり、また、電動モータ10の冷却用のみに用いられる油圧回路に適用可能である。
【0060】
上記実施形態では車両の減速度(車両の後方向の加速度)が所定の減速度以上になると開弁する開閉弁19,25に適用したが、車両の前方向の加速度が所定の加速度以上になると開弁する開閉弁にも適用可能であり、また、車両の横方向の加速度が所定の加速度以上になると開弁する開閉弁にも適用可能である。
【0061】
上記実施形態では車両の減速中において電動モータ10での回生が禁止される場合(電動モータ10が作動していない場合)に車両の減速度が所定の減速度以上になると開閉弁19,25を開弁して、電動モータ10の冷却用のオイルをオイルパン12に戻す構成としたが、車両の加速中などにおいて電動モータの作動中でも車両の加速度に応じて開閉弁を開弁して、電動モータの冷却用のオイルをオイルパンなどに戻す構成とした場合、作動中の電動モータの過熱が問題となる可能性がある。以下に、電動モータの過熱を防止する方法の例を示す。
【0062】
例えば、電動モータの温度を取得する手段を備え、電動モータの温度が所定の温度以下のときに開閉弁が車両の加速度に応じて開弁するようにすることで、車両の任意の方向の加速度が大きくなった場合でも電動モータの温度が所定の温度よりも高いときには開閉弁が閉弁するので、冷却用油路によって導かれたオイルによって電動モータを冷却することができる。また、電動モータの駆動トルクを取得する手段を備え、電動モータの駆動トルクが所定のトルク以下のときに開閉弁が車両の加速度に応じて開弁するようにすることで、車両の任意の方向の加速度が大きくなった場合でも電動モータの駆動トルクが所定のトルクよりも大きいときには開閉弁が閉弁するので、冷却用油路によって導かれたオイルによって電動モータを冷却することができる。これによって、電動モータの過熱を防止し、電動モータの信頼性を確保することができる。
【0063】
上記第2実施形態ではECU30で開閉弁25を車両の減速度に基づいて開閉制御する構成としたが、他のパラメータも加味して開閉制御する構成としてもよい。例えば、オイルの温度(油温)が低いと、オイルの粘度が高くなり、オイルの油圧が高くなるので、油温センサにより油温を検出し、ECUではこの検出した油温も加味して開閉制御を行う。
【符号の説明】
【0064】
1,2 油圧回路
10 電動モータ
11 被潤滑部
12 オイルパン
13 オイルポンプ
14 潤滑用油路
15 冷却用油路
16 ストレーナ
17 吸入用油路
18 第1油路
19,25 開閉弁
20 第2油路
30 ECU
41 加速度センサ
図1
図2