特許第6804948号(P6804948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804948
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/18 20060101AFI20201214BHJP
   F16H 61/32 20060101ALI20201214BHJP
   F16H 63/34 20060101ALI20201214BHJP
   F16H 59/08 20060101ALI20201214BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20201214BHJP
   F16H 61/22 20060101ALI20201214BHJP
   F16H 63/48 20060101ALI20201214BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   F16H61/18
   F16H61/32
   F16H63/34
   F16H59/08
   F16H61/02
   F16H61/22
   F16H63/48
   F02D29/02 321B
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-229579(P2016-229579)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-84322(P2018-84322A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 淳史
(72)【発明者】
【氏名】川口 優作
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−090462(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/101973(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12、61/16−61/36
F16H 63/00−63/50
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの動力を駆動輪へ伝達する自動変速機と、前記自動変速機のシフトポジションに対応した操作ポジションへ運転者により操作される操作子を有する操作装置と、電動アクチュエータの作動により前記自動変速機のシフトポジションを切り替える切替機構とを備える車両において、前記操作ポジションに基づいて前記自動変速機のシフトポジションを前記切替機構により電気的に切り替える切替制御部とを備える、車両の制御装置であって、
前記切替機構により前記自動変速機の出力回転部材の回転が機械的に阻止された状態であるパーキングロックの状態とされた前記自動変速機のパーキングポジションでの前記エンジンの停止時に、前記操作装置において、前記パーキングロックの状態が解除された前記自動変速機の非パーキングポジションに対応した非パーキング操作ポジションへの操作が為された場合には、電動始動装置によるクランキングにより前記エンジンを始動するエンジン制御部を更に備えるものであり、
前記切替制御部は、前記非パーキング操作ポジションへの操作が、前記パーキングポジションでの前記エンジンの停止時に為された場合には、前記パーキングポジションでの前記エンジンの停止時とは別のときに為された場合と比べて、前記自動変速機を前記パーキングポジションから前記非パーキングポジションへ切り替えるように作動させた前記電動アクチュエータの減速開始時期を早くすることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記切替制御部は、前記電動アクチュエータに掛かる電圧が所定電圧よりも低い場合には高い場合と比べて、前記電動アクチュエータの減速を開始する減速開始位置から前記シフトポジションの切替え後の前記電動アクチュエータの目標作動位置までに対応する作動量である、前記減速開始位置を定める為の残りの作動量が、大きくなるように予め定められた関係を用いて、前記電動アクチュエータを作動させるものであり、
前記切替制御部は、前記電動アクチュエータに掛かる電圧に拘わらず、前記関係における前記電動アクチュエータに掛かる電圧が前記所定電圧よりも低い場合の前記残りの作動量を用いて前記電動アクチュエータを作動させることで、前記自動変速機を前記パーキングポジションから前記非パーキングポジションへ切り替えるように作動させた前記電動アクチュエータの減速開始時期を早くすることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記非パーキング操作ポジションへの操作は、前記エンジンの動力を前記駆動輪へ伝達することが可能な走行ポジションに対応した走行操作ポジションへの操作であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記エンジン制御部は、所定エンジン停止条件に基づいて前記エンジンを一時的に停止させるアイドリングストップ制御を実行するものであり、
前記パーキングポジションでの前記エンジンの停止時は、前記パーキングポジションでの前記アイドリングストップ制御による前記エンジンの停止時であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作装置の操作ポジションに基づいて電動アクチュエータの作動により自動変速機のシフトポジションを切り替える車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンと、前記エンジンの動力を駆動輪へ伝達する自動変速機と、前記自動変速機のシフトポジションに対応した操作ポジションへ運転者により操作される操作子を有する操作装置と、電動アクチュエータの作動により前記自動変速機のシフトポジションを切り替える切替機構とを備える車両において、前記操作ポジションに基づいて前記自動変速機のシフトポジションを前記切替機構により電気的に切り替える、車両の制御装置が良く知られている。例えば、特許文献1に記載された車両制御システムがそれである。この特許文献1には、自動変速機のパーキングレンジ(レンジはポジションと同意)において、エンジン停止時、車両停止時、及びフットブレーキ(すなわちホイールブレーキ)による車両の制動時である場合に、自動変速機の走行レンジに対応したドライブレンジ位置への人為的な操作に応じて、先ず、エンジンの始動(クランキング)を開始し、エンジン始動後に、自動変速機を走行レンジへ切り替えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−173607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転者によってある操作ポジションの操作が為されたときには、その操作に応じた制御を速やかに完了させることが望まれる。上述した特許文献1に開示された制御のように、運転者によって非パーキング操作ポジションへの操作が為されたときに、自動変速機のシフトポジションをパーキングポジションから非パーキングポジションへ切り替える制御とエンジンを始動する制御との、2つの制御を順に行う場合には、運転者による非パーキング操作ポジションへの操作から実際に上記2つの制御が完了するまでに相応の時間が掛かってしまい、非パーキング操作ポジションへの操作に対する上記2つの制御の応答性が低下する可能性がある。これに対して、上記2つの制御を同時期に重ねて行うと、電動始動装置によるエンジンのクランキングに伴うバッテリ電圧の低下に起因して、自動変速機のシフトポジションを切り替える電動アクチュエータに掛かる電圧も低下する為、バッテリ電圧が低下していないときと同様にはその電動アクチュエータを作動させられない可能性がある。例えば、電動アクチュエータをシフトポジションの切替え後の目標作動位置に適切に止めることができない為に、電動アクチュエータの作動位置がその目標作動位置を超えるようなオーバーシュートが発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、自動変速機の非パーキングポジションへの切替えとエンジンの始動との2つの制御を同時期に実行して運転者による非パーキング操作ポジションへの操作に対する2つの制御の応答性を確保しつつ、電動アクチュエータの目標作動位置に対するオーバーシュートを抑制することができる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の要旨とするところは、(a) エンジンと、前記エンジンの動力を駆動輪へ伝達する自動変速機と、前記自動変速機のシフトポジションに対応した操作ポジションへ運転者により操作される操作子を有する操作装置と、電動アクチュエータの作動により前記自動変速機のシフトポジションを切り替える切替機構とを備える車両において、前記操作ポジションに基づいて前記自動変速機のシフトポジションを前記切替機構により電気的に切り替える切替制御部とを備える、車両の制御装置であって、(b) 前記切替機構により前記自動変速機の出力回転部材の回転が機械的に阻止された状態であるパーキングロックの状態とされた前記自動変速機のパーキングポジションでの前記エンジンの停止時に、前記操作装置において、前記パーキングロックの状態が解除された前記自動変速機の非パーキングポジションに対応した非パーキング操作ポジションへの操作が為された場合には、電動始動装置によるクランキングにより前記エンジンを始動するエンジン制御部を更に備えるものであり、(c) 前記切替制御部は、前記非パーキング操作ポジションへの操作が、前記パーキングポジションでの前記エンジンの停止時に為された場合には、前記パーキングポジションでの前記エンジンの停止時とは別のときに為された場合と比べて、前記自動変速機を前記パーキングポジションから前記非パーキングポジションへ切り替えるように作動させた前記電動アクチュエータの減速開始時期を早くすることにある。
【0007】
また、第2の発明は、前記第1の発明に記載の車両の制御装置において、前記切替制御部は、前記電動アクチュエータに掛かる電圧が所定電圧よりも低い場合には高い場合と比べて、前記電動アクチュエータの減速を開始する減速開始位置から前記シフトポジションの切替え後の前記電動アクチュエータの目標作動位置までに対応する作動量である、前記減速開始位置を定める為の残りの作動量が、大きくなるように予め定められた関係を用いて、前記電動アクチュエータを作動させるものであり、前記切替制御部は、前記電動アクチュエータに掛かる電圧に拘わらず、前記関係における前記電動アクチュエータに掛かる電圧が前記所定電圧よりも低い場合の前記残りの作動量を用いて前記電動アクチュエータを作動させることで、前記自動変速機を前記パーキングポジションから前記非パーキングポジションへ切り替えるように作動させた前記電動アクチュエータの減速開始時期を早くすることにある。
【0008】
また、第3の発明は、前記第1の発明又は第2の発明に記載の車両の制御装置において、前記非パーキング操作ポジションへの操作は、前記エンジンの動力を前記駆動輪へ伝達することが可能な走行ポジションに対応した走行操作ポジションへの操作である。
【0009】
また、第4の発明は、前記第1の発明から第3の発明の何れか1つに記載の車両の制御装置において、前記エンジン制御部は、所定エンジン停止条件に基づいて前記エンジンを一時的に停止させるアイドリングストップ制御を実行するものであり、前記パーキングポジションでの前記エンジンの停止時は、前記パーキングポジションでの前記アイドリングストップ制御による前記エンジンの停止時である。
【発明の効果】
【0010】
前記第1の発明によれば、自動変速機のパーキングポジションでのエンジンの停止時に、非パーキング操作ポジションへ操作された場合には、自動変速機のパーキングポジションから非パーキングポジションへの切替えとエンジンの始動との2つの制御が同時期に実行される。この際、非パーキング操作ポジションへの操作が、パーキングポジションでのエンジンの停止時に為された場合には、パーキングポジションでのエンジンの停止時とは別のときに為された場合と比べて、自動変速機をパーキングポジションから非パーキングポジションへ切り替えるように作動させた電動アクチュエータの減速開始時期が早くされるので、電動アクチュエータに掛かる電圧が低下した状態でも電動アクチュエータの作動位置をシフトポジションの切替え後の目標作動位置に止め易くされる。よって、自動変速機の非パーキングポジションへの切替えとエンジンの始動との2つの制御を同時期に実行して運転者による非パーキング操作ポジションへの操作に対する2つの制御の応答性を確保しつつ、電動アクチュエータの目標作動位置に対するオーバーシュートを抑制することができる。
【0011】
また、前記第2の発明によれば、非パーキング操作ポジションへの操作が、パーキングポジションでのエンジンの停止時に為された場合には、電動アクチュエータに掛かる電圧に拘わらず、電動アクチュエータに掛かる電圧が所定電圧よりも低い場合の、大きくされた残りの作動量を用いて電動アクチュエータが作動させられることで、自動変速機を非パーキングポジションへ切り替えるように作動させた電動アクチュエータの減速開始時期が早くされるので、電動アクチュエータに掛かる電圧が低下した状態とされても電動アクチュエータの作動位置をシフトポジションの切替え後の目標作動位置に適切に止め易くされる。
【0012】
また、前記第3の発明によれば、非パーキング操作ポジションへの操作は、自動変速機の走行ポジションに対応した走行操作ポジションへの操作であるので、自動変速機の走行ポジションへの切替えとエンジンの始動との2つの制御を同時期に実行して運転者による走行操作ポジションへの操作に対する2つの制御の応答性を確保しつつ、電動アクチュエータの目標作動位置に対するオーバーシュートを抑制することができる。2つの制御の応答性を確保することで、例えば発進応答性を確保することができる。
【0013】
また、前記第4の発明によれば、パーキングポジションでのエンジンの停止時は、パーキングポジションでのアイドリングストップ制御によるエンジンの停止時であるので、パーキングポジションでアイドリングストップ制御によって一時的にエンジンが停止させられている場合には、非パーキング操作ポジションへの操作によってエンジンの始動が実行される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明が適用される車両の概略構成を説明する図であると共に、車両における各種制御の為の制御系統及び制御機能の要部を説明する図である。
図2】切替機構の一例を示す斜視図である。
図3】ディテントプレートの構成を説明する図である。
図4】モータの回転量とシフトポジションとの対応関係を説明する図である。
図5】シフトポジションの切替えの際に用いられる、モータ電圧に応じた目標残りカウントを算出する為の目標残りカウントマップの一例を示す図である。
図6】電子制御装置の制御作動の要部すなわち非Pポジションへの切替えとエンジン始動とを同時期に実行して運転者による非P操作ポジションへの操作に対する制御の応答性を確保しつつ、モータの非P目標回転位置に対するオーバーシュートを抑制する為の制御作動を説明するフローチャートである。
図7図6のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統及び制御機能の要部を説明する図である。図1において、車両10は、エンジン12と、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16とを備えている。動力伝達装置16は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース18内に、エンジン12の動力を駆動輪14へ伝達する自動変速機20、自動変速機20の出力回転部材である出力歯車22に連結された減速ギヤ機構24、その減速ギヤ機構24に連結されたディファレンシャルギヤ(差動歯車装置)26等を備えている。又、動力伝達装置16は、ディファレンシャルギヤ26に連結された1対のドライブシャフト(車軸)28等を備えている。動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力(特に区別しない場合にはトルクや力も同義)は、自動変速機20、減速ギヤ機構24、ディファレンシャルギヤ26、及びドライブシャフト28等を順次介して駆動輪14へ伝達される。又、車両10は、更に、操作装置30、インジケータ40、切替機構50等を備えている。車両10では、シフトバイワイヤ(SBW)方式を用いて、自動変速機20のシフトポジション(シフトレンジも同意)が切り替えられる。
【0017】
操作装置30は、自動変速機20における複数種類のシフトポジションを人為的操作により選択する為のシフト操作装置(すなわち人為的に操作されることで自動変速機20のシフトポジションの切替え要求を受け付けるシフト操作装置)である。操作装置30は、例えば運転席の近傍に配設され、自動変速機20の複数のシフトポジションに各々対応した複数の操作ポジションへ運転者により選択的に操作される操作子を有している。この操作子は、例えばシフトレバー32とPスイッチ34とである。シフトレバー32の操作ポジションはレバーポジションPlevであり、Pスイッチ34の操作ポジションはPスイッチオンポジションPswである。シフトレバー32及びPスイッチ34はどちらも、外力が付与されていない状態では元位置(初期位置)に戻されるモーメンタリ式の操作子、すなわち運転者によって操作されていないときは初期位置に戻される操作子(換言すれば操作力を解くと初期位置へ自動的に復帰する自動復帰式の操作子)である。シフトレバー32は、自動変速機20のシフトポジションをパーキングポジション(Pポジションともいう)以外の複数の非パーキングポジション(非Pポジションともいう)のうちの所望するシフトポジションとする為に、その所望するシフトポジションに対応するレバーポジションPlevへ運転者により択一的に操作される。非Pポジションは、例えばRポジション,Nポジション,及びDポジションである。Pスイッチ34は、シフトレバー32の近傍に別スイッチとして備えられた操作子であり、自動変速機20のシフトポジションをPポジションとする為に運転者により操作される。
【0018】
シフトレバー32のレバーポジションPlevは、R操作ポジション、N操作ポジション、D操作ポジション、H操作ポジション、及びB操作ポジションである。H操作ポジションは、シフトレバー32の初期位置(ホームポジション)であり、H操作ポジション以外のレバーポジションPlev(R,N,D,B操作ポジション)へ操作されていたとしても、運転者がシフトレバー32を解放すれば(すなわちシフトレバー32に作用する外力が無くなれば)、バネなどの機械的機構によりシフトレバー32はH操作ポジションへ戻される。操作装置30は、シフトレバー32のレバーポジションPlevを検出する位置センサであるシフトセンサ36及びセレクトセンサ38を備えており、レバーポジションPlevに応じたレバーポジション信号Splevとしての位置センサの出力電圧を後述する電子制御装置90へ出力する。電子制御装置90は、そのレバーポジション信号Splevとしての位置センサの出力電圧に基づいてレバーポジションPlevを認識(判定)する。
【0019】
Pスイッチ34は、例えばモーメンタリ式の押しボタンスイッチであって、運転者によりPスイッチオンポジションPswであるパーキング操作ポジション(P操作ポジションともいう)まで押込み操作される。Pスイッチ34が押込み操作されていない状態は、Pスイッチ34の初期位置(ホームポジション)であり、PスイッチオンポジションPswまで押込み操作されていたとしても、運転者がPスイッチ34を解放すれば、バネなどの機械的機構によりPスイッチ34は初期位置へ戻される。Pスイッチ34は、P操作ポジションまで押込み操作される毎に、PスイッチオンポジションPswに応じたPスイッチ信号Spswを後述する電子制御装置90へ出力する。
【0020】
P操作ポジションは、自動変速機20のPポジションに対応した操作ポジションであって、自動変速機20のPポジションを選択(又は要求)する操作ポジションである。自動変速機20のPポジションは、自動変速機20内の動力伝達経路が遮断され(すなわちエンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路が動力伝達不能なニュートラル状態(中立状態)とされ)、且つ切替機構50により自動変速機20の出力歯車22の回転が機械的に阻止(ロック)された状態であるパーキングロック(Pロックともいう)の状態とされた駐車ポジションである。又、R操作ポジションは、自動変速機20のRポジションに対応した後進走行操作ポジションであって、自動変速機20のRポジションを選択(又は要求)する操作ポジションである。自動変速機20のRポジションは、自動変速機20内の動力伝達経路が後進走行用の動力を伝達することが可能な動力伝達可能状態とされた(すなわちエンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路が後進走行用の動力伝達経路が形成された)後進走行ポジションである。又、N操作ポジションは、自動変速機20のNポジションに対応したニュートラル操作ポジションであって、自動変速機20のNポジションを選択(又は要求)する操作ポジションである。自動変速機20のNポジションは、自動変速機20内の動力伝達経路が遮断された(すなわちエンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路が動力伝達不能なニュートラル状態とされた)ニュートラルポジションである。又、D操作ポジションは、自動変速機20のDポジションに対応した前進走行操作ポジションであって、自動変速機20のDポジションを選択(又は要求)する操作ポジションである。自動変速機20のDポジションは、自動変速機20内の動力伝達経路が前進走行用の動力を伝達することが可能な動力伝達可能状態とされた(すなわちエンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路が前進走行用の動力伝達経路が形成された)前進走行ポジションである。又、B操作ポジションは、自動変速機20のBポジションに対応したエンジンブレーキ操作ポジションであって、自動変速機20のBポジションを選択(又は要求)する操作ポジションである。自動変速機20のBポジションは、Dポジションと比較して、Dポジションにて前進走行用の動力伝達経路が形成された動力伝達可能状態のときにエンジン12を用いたエンジンブレーキが作用させられ易い状態(すなわちエンジンブレーキ効果がより強く得られる状態)とされた減速前進走行ポジション(エンジンブレーキポジションともいう)である。
【0021】
自動変速機20のRポジション、Nポジション、Dポジション、及びBポジションは、各々、Pロックの状態が解除された自動変速機20の非Pポジションである。R操作ポジション、N操作ポジション、D操作ポジション、及びB操作ポジションは、各々、自動変速機20の非Pポジションに対応した非パーキング操作ポジション(非P操作ポジションともいう)である。自動変速機20のPポジション及びNポジションは、各々、エンジン12の動力を駆動輪14へ伝達することが不能な非走行ポジション(すなわちエンジン12の動力による走行を不能とする非走行ポジション)である。P操作ポジション及びN操作ポジションは、各々、自動変速機20の非走行ポジションに対応した非走行操作ポジションである。自動変速機20のRポジション、Dポジション、及びBポジションは、各々、エンジン12の動力を駆動輪14へ伝達することが可能な走行ポジション(すなわちエンジン12の動力による走行を可能とする走行ポジション)である。R操作ポジション、D操作ポジション、及びB操作ポジションは、各々、自動変速機20の走行ポジションに対応した走行操作ポジションである。
【0022】
インジケータ40は、運転者の見易い位置に設けられており、選択中のシフトポジション(Pポジションを含む)を表示する。又は、インジケータ40は、自動変速機20のシフトポジションの実際の状態を表示しても良い。本実施例の操作装置30では、シフトレバー32及びPスイッチ34は作用させられる外力が無くなれば初期位置へ戻されるので、シフトレバー32及びPスイッチ34を視認しただけでは選択中のシフトポジションを認識することは出来ない。よって、このようなインジケータ40を備えることは有用である。
【0023】
図2は、切替機構50の構成を説明する斜視図である。切替機構50は、電動アクチュエータの作動により自動変速機20のシフトポジションを切り替える。具体的には、図2において、切替機構50は、Pロック機構52、電動アクチュエータとしてのモータ54、エンコーダ56などを備えている。切替機構50は、自動変速機20の出力歯車22(ここでは駆動輪14も同意)の回転を機械的に阻止するPロック装置であり、後述する電子制御装置90からの制御信号に基づいて、Pロックの状態として車両10の移動を防止したり、又はPロックの状態を解除して車両10の移動を許容する。
【0024】
モータ54は、例えばスイッチトリラクタンスモータ(SRモータ)であり、後述する電子制御装置90からの指令(制御信号)を受けてPロック機構52を駆動する。エンコーダ56は、例えばロータリエンコーダであって、モータ54と一体的に回転し、モータ54の作動状況(ここでは回転状況)を検知してその回転状況を表す信号すなわちモータ54の作動量としての回転量に応じた計数値(カウント)であるエンコーダカウントを取得する為のパルス信号Sencを電子制御装置90へ供給する。
【0025】
Pロック機構52は、モータ54により回転駆動されるシャフト58、シャフト58の回転に伴って回転するディテントプレート60、ディテントプレート60の回転に伴って動作するロッド62、自動変速機20の出力歯車22と同心上に固定されて(図1参照)駆動輪14と共に回転するパーキングギヤ(Pギヤともいう)64、Pギヤ64と噛み合うことが可能なロックポール66、ディテントプレート60の回転を制限するスプリング68、スプリング68のディテントプレート60側の先端に設けられたころ70、ロッド62のロックポール66側の先端に設けられたテーパー部材72などを備えている。
【0026】
ディテントプレート60は、シャフト58を介してモータ54の駆動軸に連結されており、ロッド62、スプリング68、ころ70などと共にモータ54により駆動される。ディテントプレート60は、Pロック機構52を、Pポジションに対応するPロックポジションと、非Pポジション(R,N,D,Bポジション)に対応する非Pロックポジションとの間で切り替える、Pロック位置決め部材である。
【0027】
図2は、非Pロックポジションであるときの状態を示している。図2に示す状態は、Pギヤ64にロックポール66が噛み合うロック状態が解除された非ロック状態とされているので、駆動輪14の回転はPロック機構52によっては妨げられない。図2に示す状態から、モータ54によりシャフト58を矢印Aの方向に回転させると、ディテントプレート60を介してロッド62が矢印Bの方向に押され、テーパー部材72によりロックポール66が矢印Cの方向に押し上げられる。ディテントプレート60の頂部に設けられた山74を挟む2つの谷(図3に示す谷76,78参照)のうちの一方の谷(図3に示す谷76参照)にあったころ70が山74を乗り越えて他方の谷(図3に示す谷78参照)へ移るまでディテントプレート60が回転したとき、ロックポール66はPギヤ64と噛み合う位置まで押し上げられる。これにより、Pギヤ64と連動して回転する駆動輪14の回転が機械的に阻止され、Pロック機構52はPロックポジションとされ、自動変速機20のシフトポジションがPポジションとされる。
【0028】
図3は、ディテントプレート60の構成を説明する図である。図3において、山74を挟む2つの谷76,78の各々において、山74から離れた側に位置する面を壁と称する。非Pロックポジション(シフトポジションの非Pポジション)に対応する谷76における壁は非P壁80である。Pロックポジション(シフトポジションのPポジション)に対応する谷78における壁はP壁82である。ころ70が谷78(Pロックポジション)から谷76(非Pロックポジション)へ移動する場合、非P壁80がころ70に衝突しないように後述する電子制御装置90によりモータ54が制御される。具体的には、電子制御装置90により、非P壁80がころ70に衝突する手前の位置(例えば非P目標回転位置と称す)でモータ54の回転が停止させられる。又、ころ70が谷76から谷78へ移動する場合、P壁82がころ70に衝突しないように電子制御装置90によりモータ54が制御される。具体的には、電子制御装置90により、P壁82がころ70に衝突する手前の位置(例えばP目標回転位置と称す)でモータ54の回転が停止させられる。
【0029】
図4は、モータ54の回転量(エンコーダカウント)と自動変速機20のシフトポジションとの対応関係を説明する図である。モータ54はディテントプレート60を回転駆動し、そのモータ54の作動位置としての回転位置(モータ回転位置ともいう)は非P壁80及びP壁82により規制される。図4に、モータ54の回転制御を行う上でのP壁82の位置(P壁位置)及び非P壁80の位置(非P壁位置)を概念的に示した。又、図4に示したP判定位置及び非P判定位置は、何れも自動変速機20のシフトポジションの切替えが判定されるディテントプレート60の所定位置である。すなわち、P判定位置からP壁位置までがPポジション範囲であり、非P判定位置から非P壁位置までが非Pポジション範囲である。エンコーダ56で検出したモータ54の回転量がPポジション範囲にあるときには、シフトポジションがPポジションであると判定される一方で、モータ54の回転量が非Pポジション範囲にあるときには、シフトポジションが非Pポジションであると判定される。尚、モータ54の回転量がP判定位置から非P判定位置の間にあるときには、シフトポジションが不定、又はシフトポジションが切替中であることが判定される。以上の判定は、後述する電子制御装置90により実行される。
【0030】
又、図4に示すように、Pポジション範囲内にP目標回転位置が設定され、非Pポジション範囲内に非P目標回転位置が設定される。P目標回転位置は、非PポジションからPポジションへの切替時に、P壁82がころ70に衝突しない位置であり、P壁位置から所定のマージンをもって定められる。同様に、非P目標回転位置は、Pポジションから非Pポジションへの切替時に、非P壁80がころ70に衝突しない位置であり、非P壁位置から所定のマージンをもって定められる。尚、P壁位置からの所定のマージンと、非P壁位置からの所定のマージンとは同一である必要はなく、ディテントプレート60の形状などに依存して異なっても良い。
【0031】
このように構成された切替機構50において、エンコーダ56により出力されたパルス信号Sencに基づいてモータ54の回転量に応じたエンコーダカウントが後述する電子制御装置90により取得されてモータ回転位置が定められる。但し、エンコーダ56は相対位置センサである為、モータ54の基準位置を設定し、その基準位置からのエンコーダカウントに基づいてモータ54の絶対位置となるモータ回転位置が定められる。例えば、電子制御装置90により、P壁位置及び非P壁位置が検出されて基準位置が設定される。
【0032】
図1に戻り、車両10は、例えば自動変速機20のシフトポジションの切替えなどを制御する車両10の制御装置を含む電子制御装置90を備えている。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置90は、エンジン12の出力制御、自動変速機20の変速制御、切替機構50による自動変速機20のシフトポジションの切替制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン出力制御用、変速制御用等に分けて構成される。
【0033】
電子制御装置90には、車両10に設けられた各種センサ等(例えばPスイッチ34、シフトセンサ36及びセレクトセンサ38、エンジン回転速度センサ41、出力回転速度センサ42、アクセル開度センサ43、ブレーキスイッチ44、バッテリセンサ45、エンコーダ56など)による検出値に基づく各種信号(例えばPスイッチオンポジションPswに応じたPスイッチ信号Spsw、レバーポジションPlevに応じたレバーポジション信号Splev、エンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne、車速Vに対応する出力歯車22の回転速度である出力回転速度No、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度θacc、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキ操作部材の運転者による操作が為されたブレーキ操作状態を示す信号であるブレーキオンBon、車両10に備えられたバッテリ46の電圧であるバッテリ電圧Vbat、切替機構50における位置信号としてのモータ回転位置に対応するエンコーダカウントを取得する為のパルス信号Sencなど)が、それぞれ供給される。又、電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン12、自動変速機20、インジケータ40、エンジン始動時にエンジン12をクランキングする電動始動装置としてのスタータ48、切替機構50(モータ54)など)に各種指令信号(例えばエンジン12の出力制御の為のエンジン制御指令信号Seng、自動変速機20の変速制御の為の変速制御指令信号Sshift、自動変速機20のシフトポジション(特には、非Pポジション)を切り替える為のシフトポジション切替制御指令信号Spos、自動変速機20のシフトポジション(Pポジションを含む)を表示する為のシフトポジション表示信号Sindi、エンジン12をクランキングする為のクランキング制御指令信号Scr、切替機構50の切替制御の為のP切替制御指令信号Splockなど)が、それぞれ出力される。
【0034】
電子制御装置90は、車両10における各種制御の為の制御機能を実現する為に、エンジン制御手段すなわちエンジン制御部92、及び切替制御手段すなわち切替制御部94を備えている。
【0035】
エンジン制御部92は、例えば予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された(すなわち予め定められた)関係(例えば駆動力マップ)にアクセル開度θacc及び車速V(出力回転速度No等も同意)を適用することで要求駆動力Fdemを算出する。エンジン制御部92は、伝達損失、補機負荷、自動変速機20のギヤ比γ等を考慮して、その要求駆動力Fdemが得られる目標エンジントルクTetgtを設定し、その目標エンジントルクTetgtが得られるように、エンジン12の出力制御を行うエンジン制御指令信号Sengをスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置などへ出力する。
【0036】
又、エンジン制御部92は、例えば燃費を向上させる為に、所定エンジン停止条件に基づいて、ユーザ操作に因らず、エンジン12を自動的に一時停止し、その後にエンジン12を自動的に再始動するエンジン12の自動停止再始動制御(以下、アイドリングストップ制御という)を実行する。具体的には、エンジン制御部92は、アイドリングストップ制御を実行する為の所定エンジン停止条件が成立した場合には、エンジン12への燃料供給を停止するフューエルカット制御等を実行してエンジン12を一時的に自動停止するエンジン一時停止指令を燃料噴射装置等へ出力して、アイドリングストップ制御を開始する。エンジン制御部92は、アイドリングストップ制御中に所定エンジン停止条件が不成立となった場合には、スタータ48によるエンジン12のクランキング、電子スロットル弁の開閉制御、燃料供給制御、点火時期制御等を実行してエンジン12を自動的に再始動するエンジン再始動指令を燃料噴射装置等へ出力して、アイドリングストップ制御を解除する。上記所定エンジン停止条件は、例えば車速Vがゼロと判定される車両停止中(又は低車速での車両減速中)であって、アクセルオフ、且つエンジン12の暖機完了後であり、且つブレーキ操作信号Bonが出力されている(特にDポジション時)などの条件である。
【0037】
又、エンジン制御部92は、例えば自動変速機20のPポジションでのエンジン12の停止時に、操作装置30における操作ポジションが非P操作ポジションへ操作された場合には、所定条件の下で、スタータ48によるクランキングによりエンジン12を始動する。非P操作ポジションは、前述したように、R操作ポジション、N操作ポジション、D操作ポジション、及びB操作ポジションである。ところで、PポジションにあるときのN操作ポジションへの操作は、積極的に車両発進を意図したものではないと考えられる。その為、エンジン12を始動することになる、非P操作ポジションへの操作は、車両発進を意図したものであると考えられる、走行操作ポジションへの操作であることが望ましい。但し、走行操作ポジション(R操作ポジション、D操作ポジション、及びB操作ポジション)のうちのB操作ポジションに対応する自動変速機20のBポジションは、Dポジションでの前進走行中を前提としたエンジンブレーキポジションである。そうすると、B操作ポジションへの操作は、車両発進を意図したものではないと考えられる。又は、PポジションにあるときのB操作ポジションへの操作では、Bポジションへ切り替える必要はないとも考えられる。その為、エンジン12を始動することになる、走行操作ポジション(非P操作ポジション)への操作には、B操作ポジションへの操作を含めないことが望ましい。尚、上記所定条件は、例えば車速Vがゼロと判定される車両停止中であって、ブレーキ操作信号Bonが出力されているときなどの条件である。
【0038】
ところで、運転者によるエンジン始動操作(例えばエンジン始動用スイッチの操作)が為されないにも拘わらず、非P操作ポジションへの操作によってエンジン12を自動的に始動することは、アイドリングストップ制御によってエンジン12が一時的に自動停止させられているときに限った方が良い、という考え方もある。その為、非P操作ポジションへの操作によってエンジン12を始動することになる、自動変速機20のPポジションでのエンジン12の停止時は、自動変速機20のPポジションでのアイドリングストップ制御によるエンジン12の停止時に限っても良い。
【0039】
切替制御部94は、操作装置30における操作ポジションに基づいて自動変速機20のシフトポジションを切替機構50により電気的に切り替える。具体的には、切替制御部94は、レバーポジション信号SplevやPスイッチ信号Spswに基づいて、運転者が所望する自動変速機20のシフトポジションである要求ポジションを設定する。切替制御部94は、要求ポジションに対応した自動変速機20のシフトポジションへの切替えを行う。より具体的には、切替制御部94は、エンコーダ56により出力されたパルス信号Sencに基づいてエンコーダカウントを取得してモータ回転位置を定める。切替制御部94は、そのモータ回転位置に基づいて、Pロック機構52がPロックポジションであるか或いは非Pロックポジションであるかを判断する(すなわち自動変速機20のシフトポジションがPポジションであるか或いは非Pポジションであるかを判断する)。切替制御部94は、シフトポジションが非Pポジションにあるときに、P操作ポジションへの操作が為されたことで、要求ポジションとしてPポジションを設定した場合には、モータ54を作動させてPロック機構52をPロックポジションとすることによって、自動変速機20のシフトポジションを非PポジションからPポジションへ切り替える。一方で、切替制御部94は、シフトポジションがPポジションにあるときに、非P操作ポジション(ここでは例えばR,N,D操作ポジションのうちの何れか1つ)への操作が為されたことで、要求ポジションとしてその非P操作ポジションに対応する非Pポジションを設定した場合には、モータ54を作動させてPロック機構52を非Pロックポジションとすることによって、自動変速機20のシフトポジションをPポジションから非Pポジションへ切り替えると共に、要求ポジションに対応したRポジション、Nポジション、Dポジションの何れかのシフトポジションへ切り替える。
【0040】
切替制御部94は、自動変速機20のシフトポジションを切り替える際には、取得したエンコーダカウントを予め定められた目標作動量としての目標カウント(目標計数値)に一致させるようにモータ54を制御する。この目標カウントは、例えばシフトポジションの切替え後のモータ54の目標作動位置としての目標回転位置(すなわちP目標回転位置又は非P目標回転位置)に対応するカウント(作動量)であって、その目標回転位置にモータ54を停止させる為の予め求められた目標値である。
【0041】
自動変速機20のシフトポジションを切り替える際には、切替えの応答性を確保しつつ、切替え後のモータ54の目標回転位置を超えないようにその目標回転位置で適確にモータ54を停止させることが望ましい。その為、モータ回転位置が切替え後の目標回転位置に近づいたところからモータ54を減速させる。具体的には、モータ54の減速を開始する回転位置である減速開始位置を定める為の値として、目標カウントまでの残りのカウント(目標残りカウントともいう)が予め定められている。切替制御部94は、自動変速機20のシフトポジションを切り替える際には、目標カウントから目標残りカウントを減算した値である減速開始カウント(=目標カウント−目標残りカウント)にエンコーダカウントが到達したら、目標カウントにてモータ54を停止させるように、モータ54の減速を開始する。
【0042】
ところで、モータ54に掛かる電圧であるモータ54への印加電圧(以下、モータ電圧という)が低い場合には、高い場合よりもモータトルクが小さくされる。そうすると、モータ電圧が低い場合には、モータ54を減速させるときの減速トルクが比較的小さくされて、減速し難くされる。その為、自動変速機20のシフトポジションの切替えに際して、モータ電圧が低い場合には、高い場合よりも、モータ54を早めに減速させること(つまり減速開始位置を切替え前のモータ54の目標回転位置に近い側とすること)が望ましい。つまり、モータ電圧が低い場合には、目標残りカウントを比較的大きな値とする。これにより、モータ電圧が低いときであっても、切替え後のモータ54の目標回転位置を超えないようにその目標回転位置で適確にモータ54を停止させることができる。
【0043】
具体的には、電子制御装置90は、モータ電圧が所定電圧よりも低い場合には高い場合と比べて、減速開始位置を定める為の目標残りカウントが大きくなるように予め定められた、図5に示すような関係(例えばマップ、目標残りカウントマップともいう)を有している。前記所定電圧は、例えばモータ54が減速し難くなる為にモータ54を早めに減速させることが望ましいような低いモータ電圧であることを判断する為の予め定められた閾値である。従って、目標残りカウントは、シフトポジションの切替えの応答性とモータ54の目標回転位置での停止性能とを両立させる為の、モータ電圧に応じて予め定められた値である。目標残りカウントマップは、例えば、図5の実線に示すように、モータ電圧の高圧側から低圧側にかけて目標残りカウントが漸増させられるマップであっても良いし、又は、図5の破線に示すように、所定電圧を境として二段階の目標残りカウントが設定されるマップであっても良いし、又は、図5の二点鎖線に示すように、所定電圧や所定電圧よりも高い電圧を境として三段階以上の目標残りカウントが設定されるマップであっても良い。尚、モータ電圧は、モータ54に印加される電圧を直接的に検出した電圧値が用いられる。又は、車両10ではモータ54にはバッテリ電圧Vbatが印加されているので、モータ電圧としてバッテリ電圧Vbatが用いられても良い。この場合、モータ電圧は、例えばバッテリ46からモータ54までのワイヤーハーネスなどによる電圧降下分が考慮されても良い。
【0044】
切替制御部94は、自動変速機20のシフトポジションを切り替える際には、図5に示すような目標残りカウントマップを用いて、モータ54を作動させる。切替制御部94は、自動変速機20のシフトポジションを切り替える際には、モータ電圧に応じた目標残りカウントを算出し、減速開始カウントにエンコーダカウントが到達したらモータ54の減速を開始する。
【0045】
ここで、車両10では、自動変速機20のPポジションでのエンジン12の停止時(特には、アイドリングストップ制御によるエンジン停止時)に、操作装置30において運転者により非P操作ポジション(特には、R操作ポジション又はD操作ポジション)への操作が為された場合には、エンジン12の始動制御(すなわちスタータ48によるクランキング)と、Pポジションから非Pポジションへのシフトポジションの切替え制御(すなわちモータ54の作動によるPロック状態の解除)との2つの制御が同時期に実行される。このような場合、モータ54に電圧を印加するバッテリ46によってスタータ48にも電圧が印加される為に、クランキング時のバッテリ電圧Vbatの低下と、モータ54の作動電圧確保との相反する事象が発生する。そうすると、バッテリ電圧Vbatが低下していないときと同様にはモータ54を作動させられない可能性がある。例えば、モータ54の作動開始後にバッテリ電圧Vbatが低下したときに、低下したバッテリ電圧Vbatに応じた目標残りカウントに対応する減速開始位置を既に過ぎていると、低下したバッテリ電圧Vbatによるモータ54の減速トルクでは、切替え後の目標回転位置で適確にモータ54を停止させることができず、その目標回転位置を超えるようなオーバーシュート(特には、ころ70と非P壁80との衝突)が発生する可能性がある。このような課題は、モータ54のようなSRモータなどのコギングトルクがないモータ(つまりモータ電圧がゼロとなった場合又は低下した場合に、ロータの慣性力を減衰する力がなくなるモータ又は低下するモータ)を用いた場合に顕著に生じると考えられる。上述したようなオーバーシュートの発生を回避する為に、例えばエンジン12の始動が完了するまでPロック状態の解除を遅延させたり、又は、Pロック状態の解除が完了してからエンジン12の始動制御を開始するなど、2つの制御を時間差で行うことが考えられる。しかしながら、運転者によるR操作ポジション又はD操作ポジションへの操作からエンジン始動完了までの時間が延びることで、車両発進の遅れ感などのデメリットが生じる可能性がある。
【0046】
そこで、切替制御部94は、非P操作ポジション(特には、R操作ポジション又はD操作ポジション)への操作が、自動変速機20のPポジションでのエンジン12の停止時(特には、アイドリングストップ制御によるエンジン12の停止時)に為された場合には、Pポジションでのエンジン12の停止時とは別のときに為された場合と比べて、自動変速機20をPポジションから非Pポジションへ切り替えるように作動させたモータ54の減速開始時期を早くする。つまり、切替制御部94は、Pポジションにて非P操作ポジションへの操作が為されたときに、エンジン12の始動制御(クランキング)が為される場合には、エンジン12の始動制御が為されない場合と比べて、自動変速機20をPポジションから非Pポジションへ切り替えるように作動させたモータ54の減速開始時期を早くする。
【0047】
具体的には、切替制御部94は、モータ電圧に拘わらず、図5に示すような目標残りカウントマップにおけるモータ電圧が前記所定電圧よりも低い場合の目標残りカウントを用いてモータ54を作動させることで、自動変速機20をPポジションから非Pポジションへ切り替えるように作動させたモータ54の減速開始時期を早くする。このように、本実施例では、Pポジションでアイドリングストップ制御(エコランともいう)によるエンジン停止が為されている場合には、その後のスタータ48によるクランキングによってバッテリ電圧Vbatが低下した状態とされても、モータ54によるPロック状態の解除が適切に実行できるように、低いモータ電圧(バッテリ電圧Vbatも同意)の状態で適切にシフトポジションの切替えができるように適合された図5に示すような目標残りカウントマップにおける目標残りカウント(マップ値)を予め選択して非Pポジションへの切替え制御に用いる。これにより、エンジン12の始動制御とPポジションから非Pポジションへの切替え制御との2つの制御が同時期に実行される制御中にモータ電圧が低下したとしても、オーバーシュートすることなく非Pポジションへの切替え制御が適切に実行される。尚、予め低いモータ電圧に応じたマップ値を用いることで、モータ回転速度の上限値が抑制される為、Pポジションから非Pポジションへの切替え時間が延びてしまうが、同時期に実行するエンジン始動制御に掛かる時間の方が切替え時間よりも長いので、発進遅れへの影響はないか或いは極めて小さくされる。
【0048】
電子制御装置90は、上述したようなモータ54の減速開始時期を早くする制御を実現する為に、制御状態判定手段すなわち制御状態判定部96を更に備えている。
【0049】
制御状態判定部96は、モータ54が停止した状態にあるモータ停止中であるか否か(すなわち自動変速機20のシフトポジションの切替え過渡中でなく、モータ54がPロック機構52を駆動していない状態であるか否か)を判定する。
【0050】
制御状態判定部96は、エンジン制御部92によるアイドリングストップ制御によってエンジン12が停止した状態にあるエンジン停止中であるか否か(すなわちエコランによるエンジン停止中であるか否か)を判定する。
【0051】
制御状態判定部96は、自動変速機20のシフトポジションがPポジションであるか否かを判定する。
【0052】
切替制御部94は、制御状態判定部96により、モータ停止中であると判定され、且つ、エコランによるエンジン停止中であると判定され、且つ、自動変速機20がPポジションであると判定された場合には、モータ電圧に拘わらず、図5に示すような目標残りカウントマップにおける前記所定電圧よりも低いモータ電圧での目標残りカウント(マップ値)を読み出す。すなわち、エコランからの復帰(エンジン再始動)によるバッテリ電圧Vbat降下に備えて、モータ54の早期減速開始用(つまりモータ回転速度抑制用)の制御値を読み出す。
【0053】
一方で、切替制御部94は、制御状態判定部96により、モータ停止中であると判定されたときに、エコランによるエンジン停止中でないと判定されるか、或いは、自動変速機20がPポジションでないと判定された場合には、図5に示すような目標残りカウントマップを用いてモータ電圧に応じた目標残りカウント(マップ値)を読み出す。すなわち、モータ回転速度抑制用の制御値と比べて、シフトポジションの切替え応答性を重視した制御値を読み出す。
【0054】
図6は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわち自動変速機20の非Pポジションへの切替えとエンジン12の始動との2つの制御を同時期に実行して運転者による非P操作ポジションへの操作に対する2つの制御の応答性を確保しつつ、モータ54の目標回転位置(非P目標回転位置)に対するオーバーシュートを抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。図7は、図6のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【0055】
図6において、先ず、制御状態判定部96の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、モータ停止中(モータ54が停止中)であるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は制御状態判定部96の機能に対応するS20において、アイドリングストップ制御(エコラン)によるエンジン停止中であるか否かが判定される。このS20の判断が肯定される場合は制御状態判定部96の機能に対応するS30において、自動変速機20のシフトポジションがPポジションであるか否かが判定される。このS30の判断が肯定される場合は切替制御部94の機能に対応するS40において、モータ電圧に拘わらず、図5に示すような目標残りカウントマップにおける前記所定電圧よりも低いモータ電圧での目標残りカウントである、モータ54の早期減速開始用(モータ回転速度抑制用)のマップ値が読み出される。上記S20の判断が否定される場合は、又は、上記S30の判断が否定される場合は、切替制御部94の機能に対応するS50において、図5に示すような目標残りカウントマップを用いてモータ電圧に応じた目標残りカウントである、シフトポジションの切替え応答性を重視したマップ値が読み出される。
【0056】
図7は、Pポジションでのエンジン12の停止中に、運転者により非P操作ポジションへの操作が為されたことで、Pロック状態の解除とエンジン12の再始動(エコランによるエンジン停止状態の解除)とが同時期に実行された場合の実施態様(本実施例、比較例A参照)の一例と、エンジン12の始動が実行されずにPロック状態の解除が実行された場合の実施態様(比較例B参照)の一例とを示している。図7において、t1時点は、Pポジションから非Pポジションへの切替え制御が開始されて、モータ54の作動が開始されたことを示している。t2時点は、エンジン12の再始動が開始されたことを示している。二点鎖線で示される比較例Bでは、応答性を重視した目標残りカウントに基づいてモータ54の減速が掛けられる。エンジン12の始動が実行されない比較例Bでは、バッテリ電圧Vbatの低下がないので、モータ54の減速トルクが十分に得られてモータ回転速度が速やかに低下させられる。これによって、モータ回転位置がオーバーシュートすることなく速やかに非P目標回転位置へ到達させられつつ、速やかに非Pポジションへの切替えが完了させられる。一方で、破線で示される比較例Aでも、比較例Bと同様に、応答性を重視した目標残りカウントに基づいてモータ54の減速が掛けられてモータ回転速度が低下させられる。モータ回転速度の低下中にエンジン12の再始動が実行される比較例Aでは、バッテリ電圧Vbatの低下に伴い、モータ54の減速トルクが低下させられる為、モータ回転速度の低下が停滞させられる(t2時点以降参照)。その為、モータ回転位置が非P目標回転位置をオーバーシュートして、ころ70と非P壁80との衝突が発生している。比較例Aでは応答性を重視した目標残りカウントを用いたものの、同時期にエンジン始動が為されたことで、結果的に、非Pポジションへの切替完了が遅れている。これに対して、実線で示される本実施例では、エンジン再始動によるバッテリ電圧Vbatの低下に備えて、モータ54の回転速度抑制を重視した目標残りカウントに基づいてバッテリ電圧Vbatが高いうちにモータ54の減速が掛けられ、モータ回転速度が早めに引き下げられる。これによって、バッテリ電圧Vbatが低下した状態とされても、モータ回転位置が非P目標回転位置へ近づいたときに適切に減速が可能となり、オーバーシュートの発生が回避又は抑制される(t2時点以降参照)。
【0057】
上述のように、本実施例によれば、自動変速機12のPポジションでのエンジン12の停止時に、非P操作ポジションへ操作された場合には、自動変速機20のPポジションから非Pポジションへの切替えとエンジン12の始動との2つの制御が同時期に実行される。この際、非P操作ポジションへの操作が、Pポジションでのエンジン12の停止時に為された場合には、Pポジションでのエンジン12の停止時とは別のときに為された場合と比べて、自動変速機20をPポジションから非Pポジションへ切り替えるように作動させたモータ54の減速開始時期が早くされるので、モータ電圧が低下した状態でもモータ回転位置をシフトポジションの切替え後の目標回転位置である非P目標回転位置に止め易くされる。よって、自動変速機20の非Pポジションへの切替えとエンジン12の始動との2つの制御を同時期に実行して運転者による非P操作ポジションへの操作に対する2つの制御の応答性を確保しつつ、モータ54の目標回転位置に対するオーバーシュートを抑制することができる。
【0058】
また、本実施例によれば、非P操作ポジションへの操作が、Pポジションでのエンジン12の停止時に為された場合には、モータ電圧に拘わらず、モータ電圧が所定電圧よりも低い場合の、大きくされた目標残りカウントを用いてモータ54が作動させられることで、自動変速機20を非Pポジションへ切り替えるように作動させたモータ54の減速開始時期が早くされるので、モータ電圧が低下した状態とされてもモータ回転位置を非P目標回転位置に適切に止め易くされる。
【0059】
また、本実施例によれば、エンジン12を始動することになる、非P操作ポジションへの操作は、走行操作ポジション(R操作ポジション又はD操作ポジション)への操作であるので、自動変速機20の走行ポジションへの切替えとエンジン12の始動との2つの制御を同時期に実行して運転者による走行操作ポジションへの操作に対する2つの制御の応答性を確保しつつ、モータ54の目標回転位置に対するオーバーシュートを抑制することができる。2つの制御の応答性を確保することで、例えば発進応答性を確保することができる。
【0060】
また、本実施例によれば、非P操作ポジションへの操作によってエンジン12を始動することになる、Pポジションでのエンジン12の停止時は、Pポジションでのアイドリングストップ制御によるエンジン12の停止時であるので、Pポジションでアイドリングストップ制御によって一時的にエンジン12が停止させられている場合には、非P操作ポジションへの操作によってエンジン12の始動が実行される。
【0061】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0062】
例えば、前述の実施例では、図5に示すような目標残りカウントマップを用いて目標残りカウントを算出し、その目標残りカウントに基づいて減速開始位置を定めたが、この態様に限らない。例えば、マップという態様ではなく、予め定められた関係としての、モータ電圧が所定電圧よりも低いときと高いときとの各々における目標残りカウントに基づいて減速開始位置を定めても良い。又は、モータ54の作動開始から減速開始までの時間をモータ電圧に応じて予め定めておき、その時間に基づいて減速開始位置を定めても良い。
【0063】
また、前述の実施例では、モータ54の作動量をエンコーダカウントで表したが、この態様に限らない。例えば、モータ54の作動量を回転量で取得する必要はなく、モータ54により駆動される、Pロック機構52のロッド62の移動量などで表しても良い。Pロック機構52を駆動する電動アクチュエータは回転作動することなくPロック機構52を駆動するものであっても良く、このような場合には、電動アクチュエータの作動量や作動位置は回転量(エンコーダカウント)や回転位置で表されないことは言うまでもない。
【0064】
また、前述の実施例では、操作装置30はシフトレバー32及びPスイッチ34の2つの操作子を備えていたが、この態様に限らない。例えば、操作装置は、自動変速機20の各シフトポジションに対応したP,R,N,D等の操作ポジションと、その操作ポジションへ操作されるレバーやダイヤル等の1つの操作子と、その操作子が各操作ポジションへ操作されたことを電気的に検出する位置センサとを備えているような操作装置であっても良い。又は、操作子は、モーメンタリ式の操作子でなくても良い。
【0065】
また、前述の実施例では、切替機構50は、ディテントプレート60の回動動作に連動して、Pロックの状態(Pロックポジション)と、Pロックが解除された状態(非Pロックポジション)とが切り替えられたが、この態様に限らない。例えば、切替機構は、Pポジションに対応したPロックポジションと、R,N,Dポジション等の非Pポジションに各々対応した複数の非Pロックポジションとを切り替える切替機構であっても良い。
【0066】
また、前述の実施例では、エンジン12を始動することになる非P操作ポジションへの操作は、走行操作ポジション(R操作ポジション又はD操作ポジション)への操作であったが、この態様に限らない。例えば、発進応答性を確保することを考慮しないのであれば、エンジン12を始動することになる非P操作ポジションへの操作には、N操作ポジションへの操作を含めても良い。
【0067】
また、前述の実施例では、非P操作ポジションへの操作が為されたときにエンジン12を始動する場合は、Pポジションでのエコランによるエンジン停止中であったが、この態様に限らない。例えば、非P操作ポジションへの操作に対する2つの制御(非Pポジションへの切替え及びエンジン12の始動)の応答性を確保しつつ、モータ54の目標回転位置に対するオーバーシュートを抑制するという観点では、Pポジションでのエコランによるエンジン停止中でなく、単にPポジションでのエンジン停止中であっても良い。この場合、図6のフローチャートにおけるS20では、単にエンジン停止中であるか否かが判定される。又は、所定電圧よりも低いモータ電圧での、モータ54の早期減速開始用(モータ回転速度抑制用)の目標残りカウントを設定するタイミングとしては、図6のフローチャートに示すように、モータ停止中のときでも良いが、これに替えて、例えばP操作ポジションから非P操作ポジションへ操作された時点でも良い。この場合、図6のフローチャートにおけるS10では、P操作ポジションから非P操作ポジションへ操作されたか否かが判定され、又、S30は備えられる必要はない。このように、図6のフローチャートは、適宜変更され得る。
【0068】
また、前述の実施例において、自動変速機20は、例えば遊星歯車式の自動変速機、同期噛合型平行2軸式変速機、DCT(Dual Clutch Transmission)、無段変速機、又は電気式無段変速機等である。又、車両10はエンジン12を動力源として備えていたが、例えば前記動力源としては、電動機等の他の原動機をエンジン12と組み合わせて採用することもできる。動力源として電動機を備える場合、又は、電気式無段変速機のように元々電動機を備える場合には、その電動機によってエンジン12をクランキングしても良い。このような場合には、その電動機が電動始動装置として機能する。従って、このような場合には、車両10はスタータ48を必ずしも備える必要はない。
【0069】
また、前述の実施例では、Pギヤ64は、自動変速機20の出力歯車22と同心上に固定されていたが、この態様に限らない。例えば、Pギヤ64は、ロックポール66と噛み合わされることで駆動輪14(出力歯車22も同意)の回転が阻止される関係にあれば、設けられる場所に制限は無い。
【0070】
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0071】
10:車両
12:エンジン
14:駆動輪
20:自動変速機
22:出力歯車(出力回転部材)
30:操作装置
32:シフトレバー(操作子)
34:Pスイッチ(操作子)
48:スタータ(電動始動装置)
50:切替機構
54:モータ(電動アクチュエータ)
90:電子制御装置(制御装置)
92:エンジン制御部
94:切替制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7