(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804953
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】タイヤ加硫成型金型及び空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20201214BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20201214BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20201214BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20201214BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29C33/10
B29L30:00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-235662(P2016-235662)
(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2018-89864(P2018-89864A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】藤木 邦子
【審査官】
▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−297443(JP,A)
【文献】
特開2016−124148(JP,A)
【文献】
特開平10−138249(JP,A)
【文献】
特開2013−107451(JP,A)
【文献】
特開2013−060181(JP,A)
【文献】
米国特許第04347212(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/10
B29C 33/02
B29C 35/02
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ表面を成型する成型面と、前記成形面より窪んだ複数の凹溝と、金型内部と金型外部とを連通する下孔と、前記下孔の内側に設けられたベントプラグとを備えるタイヤ加硫成型金型において、
前記下孔及び前記ベントプラグが、隙間を空けて平行に並ぶ前記凹溝に跨がって、又は、一方の前記凹溝の角部と他方の前記凹溝の直線部分に跨がって設けられた、タイヤ加硫成型金型。
【請求項2】
タイヤのトレッド部を成型する複数のセクターと、タイヤのサイド部を成型する一対のサイドプレートと、タイヤのビード部を成型する一対のビードリングとを備え、前記下孔及び前記ベントプラグが少なくとも前記サイドプレートに設けられた、請求項1に記載のタイヤ加硫成型金型。
【請求項3】
タイヤのトレッド部を成型する複数のセクターと、タイヤのサイド部を成型する一対のサイドプレートと、タイヤのビード部を成型する一対のビードリングとを備え、前記下孔及び前記ベントプラグが少なくとも前記セクターに設けられた、請求項1に記載のタイヤ加硫成型金型。
【請求項4】
前記ベントプラグと前記凹溝との重なり幅が前記凹溝の幅の1/4以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ加硫成型金型。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ加硫成型金型の内部に未加硫タイヤをセットし、その未加硫タイヤに加熱及び加圧を施して加硫成型を行う工程を含むタイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ加硫成型金型及び空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの加硫成型に用いられるタイヤ加硫成型金型であって、その内面側にタイヤ周方向やタイヤ径方向等に延びる成型面より窪んだ凹溝が形成され、その凹溝の場所に金型内部と金型外部とを連通する下孔が設けられ、下孔にベントプラグが嵌合されたものが存在する。ベントプラグは金型内部の空気を金型外部へ排出するものであり、凹溝は金型内部の空気をベントプラグへ向かって流すものである。従来から、特許文献1や特許文献2に記載のように、凹溝の交差部に下孔やベントプラグを設けることが提案されていた。
【0003】
ところで特許文献3に記載されているように、タイヤ加硫成型金型のベントプラグの痕跡は空気入りタイヤの表面に残り外観上好ましくない。また、ベントプラグが下孔から抜け落ちるトラブルが生じることがある。またベントプラグの数が多いとタイヤ加硫成型金型の製造コストがかかる。これらのことから、タイヤ加硫成型金型に設けられるベントプラグの数は少ない方が良い。
【0004】
しかし、ベントプラグの数が少ないと、加硫成型時に金型内部の空気が十分に排出されない。その結果、加硫成型後の空気入りタイヤの表面にゴムの欠損が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−71251号公報
【特許文献2】特開2013−60181号公報
【特許文献3】特開2013−107451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、ベントプラグの数が少なく、しかも加硫成型時に金型内部の空気を十分に排出することができるタイヤ加硫成型金型及びそれを用いた空気入りタイヤの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のタイヤ加硫成型金型は、タイヤ表面を成型する成型面と、前記成形面より窪んだ複数の凹溝と、金型内部と金型外部とを連通する下孔と、前記下孔の内側に設けられたベントプラグとを備えるタイヤ加硫成型金型において、前記下孔及び前記ベントプラグが、
隙間を空けて平行に並ぶ前記凹溝に跨がって、又は、一方の前記凹溝の角部と他方の前記凹溝の直線部分に跨がって設けられたことを特徴とする。
【0008】
また、実施形態の空気入りタイヤの製造方法は、前記タイヤ加硫成型金型の内部に未加硫タイヤをセットし、その未加硫タイヤに加熱及び加圧を施して加硫成型を行う工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
実施形態のタイヤ加硫成型金型では、ベントプラグが、隙間を空けて近接する複数の凹溝に跨がって設けられているため、ベントプラグの数を少なくでき、しかも加硫成型時に金型内部の空気を十分に排出することができる。
【0010】
また、実施形態の空気入りタイヤの製造方法では上記のタイヤ加硫成型金型を用いるため、加硫成型時に、少ないベントプラグで金型内部の空気を十分に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態のタイヤ加硫成型金型10の軸方向の半断面図。
【
図2】サイドプレート14の成形面18を金型内側から見た図。
【
図4】
図3のB−Bの位置におけるタイヤ加硫成型金型10の断面図。
【
図5】
図3の場所aの拡大図。(a)スプリングベント30と凹溝との重なり方の例。(b)スプリングベント30と凹溝との重なり方の別の例。
【
図8】下孔20に設けられたスプリングベント30の軸方向の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態について図面に基づき説明する。なお、本実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。また図面は、説明の都合上、長さや形状等が誇張されて描かれたり、模式的に描かれたりする場合がある。しかしこのような図面はあくまでも一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0013】
図1に本実施形態のタイヤ加硫成型金型10を示す。タイヤ加硫成型金型10は、周上に並べられた複数のセクター12と、複数のセクター12が形成する円周の軸方向両側に設けられた一対のサイドプレート14と、サイドプレート14の内径側に設けられた一対のビードリング16とを備える。加硫成型時にはタイヤ加硫成型金型10内に未加硫タイヤがセットされる。セクター12、サイドプレート14、ビードリング16は、空気入りタイヤを成型する成型部材であり、これらの金型内側の面はタイヤ表面を成型する成型面18である。複数のセクター12は主に空気入りタイヤのトレッド部を、一対のサイドプレート14は空気入りタイヤのサイド部を、一対のビードリング16は空気入りタイヤのビード部を、それぞれ成型する。セクター12の材料は、限定されないが、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金(例えばAl−Cu系、Al−Mg系、Al−Mn系、Al−Si系の合金)である。またサイドプレート14及びビードリング16の材料は、限定されないが、例えば、一般構造用圧延鋼材(例えばSS400)等の鋼材である。サイドプレート14の材料とビードリング16の材料とは同じであっても良いし異なっても良い。
【0014】
本実施形態のサイドプレート14の全体又は一部を
図2〜
図8に例示する。
図2はサイドプレート14の成形面18を金型内側から見た図である。
図3は、
図2において四角で囲まれているA部を拡大して示したものである。
【0015】
図3に示すように、サイドプレート14の成形面18の外径端付近の場所には、空気入りタイヤのサイド部に凸部を形成するための第1凹部22及び第2凹部24が設けられている。第1凹部22と第2凹部24とは形状が異なる。なお第2凹部24の中にある符号26で示された部分は、空気入りタイヤのサイド部の前記凸部内に細溝を形成するための凸部である。
【0016】
サイドプレート14の金型内側には、成型面18より窪んだ複数本の凹溝が設けられている。通常凹溝は加硫成型時に最後まで空気が残り易い場所に設けられている。本実施形態の場合は、第1凹部22を囲む第1凹溝61、第1凹溝61よりサイドプレート内径側の第2凹溝62、第1凹部22内を通る第3凹溝63、第2凹部24を囲む第4凹溝64、第4凹溝64よりサイドプレート内径側の第5凹溝65等が設けられている。これらの凹溝の幅は、例えば0.3mm以上1.0mm以下である。またこれらの凹溝の深さは、例えば0.3mm以上1.0mm以下である。これらの凹溝は空気入りタイヤの表面に凸条を形成する。
【0017】
図3に示すように、第1凹部22よりサイドプレート内径側において、第1凹溝61と第2凹溝62とが隙間を空けて近接している。この近接している場所の近傍において、第1凹溝61と第2凹溝62とは平行になっている。また、第4凹溝64は、第2凹部24の形状に沿うことによって、角部66、67を形成している。これらの角部66、67と第5凹溝65とは隙間を空けて近接している。
【0018】
図4に示すように、サイドプレート14には複数の下孔20が設けられている。下孔20は断面円形で金型内側から金型外側に向かって延びている孔である。下孔20はサイドプレート14の成型面18及び金型外側の面に開口している。従って下孔20によって金型内部と金型外部とが連通している。この下孔20の内側にはベントプラグが隙間無く嵌合されている。ベントプラグは金型内部の空気を金型外部へ排出するものである。本実施形態ではベントプラグとして後述するスプリングベント30が設けられているものとする。
【0019】
図3において、下孔20及びスプリングベント30が設けられている場所は、第1凹溝61と第2凹溝62とが隙間を空けて近接している場所a、第3凹溝63と重なる場所b、角部66と第5凹溝65とが隙間を空けて近接している場所c、角部67と第5凹溝65とが隙間を空けて近接している場所d、第2凹部24内の場所e、f、gである。
【0020】
2本の凹溝が隙間を空けて近接している場所a、c、dでは、下孔20及びスプリングベント30がそれらの凹溝に跨がるように設けられている。
図5に示すように、第1凹溝61と第2凹溝62とが平行に並んでいる場所aにおいては、スプリングベント30が、第1凹溝61と第2凹溝62とに跨がって設けられている。跨がり方としては
図5(a)に示す形態や
図5(b)に示す形態等がある。
図5(a)では、スプリングベント30が、第1凹溝61及び第2凹溝62に重なり、かつ、第1凹溝61の幅方向両側及び第2凹溝62の幅方向両側に出ている。
図5(b)では、スプリングベント30が、第1凹溝61及び第2凹溝62に重なり、かつ、第1凹溝61と第2凹溝62とに挟まれた領域内に収まっている。これらの他にも様々な跨がり方があるが、いずれの場合も、スプリングベント30と第1凹溝61との重なり幅が第1凹溝61の幅の1/4以上であり、スプリングベント30と第2凹溝62との重なり幅が第2凹溝62の幅の1/4以上であることが望ましい。
【0021】
また
図6に示すように、場所cではスプリングベント30が第4凹溝64の角部66と第5凹溝65とに跨がって設けられている。また
図7に示すように、場所dではスプリングベント30が第4凹溝64の角部67と第5凹溝65とに跨がって設けられている。これらの場合も、スプリングベント30と第4凹溝64との重なり幅が第4凹溝64の幅の1/4以上であり、スプリングベント30と第5凹溝65との重なり幅が第5凹溝65の幅の1/4以上であることが望ましい。
【0022】
図8に示すように、スプリングベント30は、筒状で内径側に通気孔32を有するハウジング40と、ハウジング40の内径側に挿入され通気孔32を開閉するステム50とを備える。なお
図8において、上側が金型内側、下側が金型外側である。
【0023】
ハウジング40の通気孔32は、下孔20と同方向へ延びており、金型内部と金型外部とを連通している。ハウジング40の内径面すなわち通気孔32を形成する面のうち、ハウジング40の金型内側端面42からハウジング40の深さ方向へ(すなわち金型外側へ)連続する面は、金型外側に向かって径が小さくなるようにテーパ面となっている。このテーパ面は通気孔32の閉塞時にステム50と接触する接触面44である。また、ハウジング40の内径面のうち接触面44から金型外側へ連続する面(中間内径面45とする)は、径が一定となっている。さらに、ハウジング40の金型外側の端部付近では、中間内径面45よりも内径が小さくなった小内径部46が設けられている。
【0024】
ステム50は、その金型内側端面52を備える頭部54と、頭部54から金型外側へ連続する第一胴部56と、第一胴部56からさらに金型外側へ連続する第二胴部57と、第二胴部57から連続する先端部58とを備える。頭部54の外径面53は金型外側に向かって径が小さくなるようにテーパ面となっている。この外径面53は通気孔32の閉塞時にハウジング40の接触面44と接触する面である。
【0025】
第一胴部56及び第二胴部57の外径はハウジング40の中間内径面45の内径より小さく、第一胴部56及び第二胴部57の外径面とハウジング40の中間内径面45との間に隙間ができている。また、第二胴部57は、第一胴部56よりも外径が小さく、その一部がハウジング40の小内径部46の内径側に位置している。第二胴部57と小内径部46との間には通気部が存在する。このような構造のため、ステム50の頭部54の外径面53とハウジング40の接触面44との間に入った空気は、第一胴部56及び第二胴部57の外径面と中間内径面45との間を通過し、さらに第二胴部57と小内径部46との間の通気部を通過し、スプリングベント30より金型外側へ排出される。
【0026】
ステム50の先端部58はハウジング40の小内径部46よりも外径が大きくなっている。そして先端部58は、ハウジング40の小内径部46より金型外側にあるため、小内径部46より金型内側へ移動することができない。これによりステム50がハウジング40から金型内側へ抜け落ちないようになっている。
【0027】
ハウジング40の小内径部46とステム50の第一胴部56との間にはスプリングベント30の一部としてバネ34が設けられている。バネ34はステム50を金型内側に向かって付勢している。そのため常時、ステム50の頭部54の金型内側端面52はハウジング40の金型内側端面42よりも金型内側へ突出しており、ハウジング40の接触面44とステム50の頭部54の外径面53との間に隙間ができ、通気孔32が開放状態となっている。通気孔32の開放状態では金型内部の空気が通気孔32を通過して金型外部へ排出される。
【0028】
一方、ステム50がバネ34の付勢力に抗して金型外側へ押されると、ハウジング40の接触面44とステム50の頭部54の外径面53とが接触してこれらの間の隙間が閉じ、通気孔32が閉塞状態となる。すると、金型内部の空気が金型外部へ排出されなくなる。
【0029】
このようなスプリングベント30が複数の凹溝に跨がるように設けられる場所や、1つの凹溝に重なるように設けられる場所では、スプリングベント30のハウジング40の金型内側端面42が、
図8に示すように凹溝の溝底68と一致していても良いし、凹溝の溝底68よりも金型内側(
図8の上側)へ突出していても良い。
【0030】
以上の構造のタイヤ加硫成型金型10で空気入りタイヤの加硫成型が行われる際は、タイヤ加硫成型金型10の内部に未加硫タイヤがセットされ、サイドプレート14等の成型部材が加硫成型温度に保持される。そして、セットされた未加硫タイヤの内側に配置されている図示しないブラダーが膨張し、未加硫タイヤの表面が成型面18に押し当てられる。すると、タイヤ加硫成型金型10の内部に残っていた空気は、複数の凹溝内へ押しやられ、凹溝内をスプリングベント30の方向へ流れる。スプリングベント30の周辺に到達した空気は、ハウジング40を超えて、スプリングベント30から金型外部へ排出される。
【0031】
ここで、1つのスプリングベント30が2つの凹溝に跨がって設けられている場所では、2つの凹溝内を流れて来た空気が1つのスプリングベント30から排出される。例えば上記の場所aでは、第1凹溝61内を流れて来た空気と第2凹溝62内を流れて来た空気とが、これらに跨がるスプリングベント30から排出される。また上記の場所c及び場所dでは、第4凹溝64内を流れて来た空気と第5凹溝65内を流れて来た空気とが、これらに跨がるスプリングベント30から排出される。
【0032】
金型内の空気が少なくなるに従って、未加硫タイヤのゴムがスプリングベント30に向かって流動し、最終的にスプリングベント30のステム50を金型外側へ押す。すると通気孔32が閉塞状態になり、空気の金型外部への排出が終わる。そして未加硫タイヤに所定時間の加熱及び加圧が施される。
【0033】
本実施形態のタイヤ加硫成型金型10では、隙間を空けて近接する2本の凹溝に跨がってスプリングベント30が設けられているため、2本の凹溝のそれぞれにスプリングベント30が設けられている場合と比べて、スプリングベント30の総数が少なく済む。そのため、空気入りタイヤの表面に出来るスプリングベント30の痕跡が少なくなり、また、ベントプラグが下孔から抜け落ちるトラブルも少なく済む。またタイヤ加硫成型金型10の製造コストが抑えられる。
【0034】
また、2本の凹溝内を流れて来た空気をスプリングベント30から金型外部へ排出することができるため、加硫成型時に金型内部の空気を十分に排出することができる。そのため、加硫成型後の空気入りタイヤの表面にゴムの欠損が出来にくくなる。
【0035】
また、本実施形態のタイヤ加硫成型金型10を用いたタイヤ製造方法によれば、空気入りタイヤの表面に出来るスプリングベント30の痕跡を減らすことができ、また、ベントプラグが下孔から抜け落ちるトラブルを減らすことができる。さらに、加硫成型後の空気入りタイヤの表面のゴムの欠損を減らすことができる。
【0036】
スプリングベント30と凹溝との重なり幅が凹溝の幅の1/4以上であれば、金型内部の空気を十分に排出することができ、上記の効果が大きくなる。
【0037】
上記実施形態に対して、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、様々な変更を行うことができる。例えば、1つのスプリングベントが隙間を空けて近接する3本以上の凹溝に跨がって設けられていても良い。また、セクター12において、隙間を空けて近接する複数の凹溝に跨がって上記実施形態と同様にスプリングベントが設けられていても良い。また、ベントプラグは金型内部の空気を金型外部へ排出できるものであれば良く、上記実施形態の構造のスプリングベント30に限定されない。ただしベントプラグは、空気入りタイヤの表面に大きな痕跡(例えばスピューと呼ばれるヒゲ状突起)を残さないものであることが望ましい。
【符号の説明】
【0038】
10…タイヤ加硫成型金型、12…セクター、14…サイドプレート、16…ビードリング、18…成型面、20…下孔、22…第1凹部、24…第2凹部、26…凸部、30…スプリングベント、32…通気孔、34…バネ、40…ハウジング、42…金型内側端面、44…接触面、45…中間内径面、46…小内径部、50…ステム、52…金型内側端面、53…外径面、54…頭部、56…第一胴部、57…第二胴部、58…先端部、61…第1凹溝、62…第2凹溝、63…第3凹溝、64…第4凹溝、65…第5凹溝、66…角部、67…角部、68…溝底