特許第6804958号(P6804958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804958タイヤトレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804958
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/04 20060101AFI20201214BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20201214BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20201214BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20201214BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20201214BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C08L9/04
   C08L9/00
   C08K3/04
   C08K5/01
   C08L91/00
   B60C1/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-239587(P2016-239587)
(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公開番号】特開2018-95702(P2018-95702A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 晋作
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−075932(JP,A)
【文献】 特開2011−178849(JP,A)
【文献】 特開2013−170265(JP,A)
【文献】 特開2013−075933(JP,A)
【文献】 特開2012−201701(JP,A)
【文献】 特開2003−221472(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0259515(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08K 3/00−13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエンゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積が140〜250m/gであるカーボンブラック110〜150質量部と、鉱物油20〜60質量部と、石油樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂及びロジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂であって軟化点が70〜120℃の樹脂20〜60質量部を含有し、
周波数10Hz、初期歪み10%、動歪み±1%及び温度100℃の条件下で測定した加硫物の損失係数tanδ及び貯蔵弾性率E’(MPa)が、0.050≦tanδ/E’≦0.150を満たすタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のゴム組成物からなるトレッドゴムを備えた空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ、とりわけモータースポーツ用タイヤにおいては、乾燥路面における高いグリップ性能が要求される。そのため、従来、乾燥路面に対するグリップ性能を向上するために種々の検討がなされている。
【0003】
一方、タイヤトレッドゴムにおいて、その損失係数tanδと貯蔵弾性率E’との比tanδ/E’がグリップ性能の指標となることが知られており、この比が大きいほどグリップ性能が向上する(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−023146号公報
【特許文献2】特開平8−132823号公報
【特許文献3】特開2009−046088号公報
【特許文献4】特開平3−186402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータースポーツ用タイヤのグリップ性能については、100℃におけるtanδ/E’の相関が高く、この値を大きくすることが求められるが、一方で、この値が大きすぎるとブローアウトの要因となる。ここで、ブローアウトとは、加硫ゴムの動的疲労による発熱により、配合剤中の揮発性物質などがガス状になって多孔質(ポーラス)となり、外部に噴出する現象である。
【0006】
本発明は、ブローアウトを抑制しつつグリップ性能を向上することができるタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積が140〜250m/gであるカーボンブラック110〜150質量部を含有し、周波数10Hz、初期歪み10%、動歪み±1%及び温度100℃の条件下で測定した加硫物の損失係数tanδ及び貯蔵弾性率E’(MPa)が、0.050≦tanδ/E’≦0.150を満たすものである。
【0008】
本実施形態に係る空気入りタイヤは、該ゴム組成物からなるトレッドゴムを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態によれば、ブローアウトを抑制しつつグリップ性能を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムと、窒素吸着比表面積が140〜250m/gであるカーボンブラックとを含有するものである。
【0012】
ゴム成分としてのジエン系ゴムについては、特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン−イソプレンゴム、及び、ニトリルゴム(NBR)などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0013】
一実施形態として、ジエン系ゴムは、スチレンブタジエンゴムを含むことが好ましく、すなわち、ジエン系ゴムは、スチレンブタジエンゴム単独、又はスチレンブタジエンゴムと他のジエン系ゴムとのブレンドでもよい。例として、ジエン系ゴム100質量部中にスチレンブタジエンゴムを80〜100質量部含むことが好ましい。前記他のジエン系ゴムとしては、ブタジエンゴム及び/又は天然ゴムが好ましい。
【0014】
補強性充填剤としてのカーボンブラックについては、本実施形態では窒素吸着比表面積(NSA)が140〜250m/gである極めて小粒径のカーボンブラックを用いる。このような小粒径のカーボンブラックを用いることにより、発熱性を高めてモータースポーツ用タイヤのグリップ性能を向上することができ、また補強性を向上することができる。また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積が250m/g以下であることにより、発熱性が高くなりすぎるのを抑えることができる。カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、160〜220m/gであることが好ましく、より好ましくは180〜200m/gである。ここで、窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2に準拠して測定される。
【0015】
カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して110〜150質量部である。上記のような小粒径カーボンブラックを、このように高充填にて配合することにより、発熱性を高めることができ、また補強性を向上することができる。また、カーボンブラックの含有量が150質量部以下であることにより、発熱性が高くなりすぎるのを抑えることができる。カーボンブラックの含有量は、より好ましくは110〜140質量部である。
【0016】
本実施形態に係るゴム組成物には、オイルを配合することが好ましい。オイルとしては、一般にゴム組成物に配合される各種オイルを用いることができる。好ましくは、オイルとしては、炭化水素を主成分とする鉱物油を用いることである。すなわち、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、及びアロマ系オイルからなる群から選択される少なくとも1種の鉱物油を用いることが好ましい。
【0017】
オイルの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して20〜60質量部であることが好ましい。20質量部以上であることにより、発熱性を向上することができ、またE’を下げることができる。また、60質量部以下であることにより、発熱性が高くなりすぎるのを抑えることができる。オイルの含有量は、より好ましくは30〜50質量部である。
【0018】
本実施形態に係るゴム組成物には、樹脂を配合することができる。樹脂としては、軟化点が70〜120℃の樹脂が好ましく用いられる。このように高温で軟化する樹脂を配合することにより、高温でのE’を下げてグリップ性を向上することができる。樹脂の軟化点は、より好ましくは80〜110℃であり、更に好ましくは90〜100℃である。ここで、軟化点は、JIS K2207に準拠した環球式にて測定される値である。
【0019】
樹脂としては、例えば、石油樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、ロジン系樹脂などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。石油樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂が挙げられる。脂肪族系石油樹脂は、炭素数4〜5個相当の石油留分(C5留分)であるイソプレンやシクロペンタジエンなどの不飽和モノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり(C5系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。芳香族系石油樹脂は、炭素数8〜10個相当の石油留分(C9留分)であるビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどのモノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり(C9系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂は、上記C5留分とC9留分を共重合することにより得られる樹脂であり(C5/C9系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。クマロン系樹脂は、クマロンを主成分する樹脂であり、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、クマロンとインデンとスチレンを主成分とする共重合樹脂などが挙げられる。テルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペン−フェノール樹脂などが挙げられる。フェノール系樹脂としては、フェノール・ホルマリン樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂などが挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化などで変性したロジン変性樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、及び脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の石油樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
樹脂の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して20〜60質量部であることが好ましい。20質量部以上であることにより、発熱性を向上することができ、またE’を下げることができる。また、60質量部以下であることにより、発熱性が高くなりすぎるのを抑えることができる。樹脂の含有量は、より好ましくは40〜60質量部である。
【0021】
また、樹脂とオイルの質量比は、特に限定されないが、オイルの含有量に対する樹脂の含有量の比(樹脂/オイル)で、0.5〜2.0であることが好ましく、より好ましくは0.8〜2.0である。
【0022】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記の成分の他に、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。加硫剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄が挙げられ、特に限定するものではないが、その配合量はジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0023】
本実施形態に係るゴム組成物は、周波数10Hz、初期歪み10%、動歪み±1%及び温度100℃の条件下で測定した加硫後の損失係数tanδ及び貯蔵弾性率E’(MPa)の比tanδ/E’が、0.050≦tanδ/E’≦0.150を満たすものである。100℃でのtanδが高くなると、発熱性が向上することでグリップ性能は向上するが、E’が高いと路面に対する追従性に劣ることからゴムと路面との接地面積が十分に確保できず、グリップ性能が低下してしまう。そのため、乾燥路面でのグリップ性能を向上するためには、tanδ/E’を大きくする必要があり、特に高速走行条件下で使用されるモータースポーツ用タイヤでは、100℃におけるtanδ/E’を大きくする必要がある。一方で、tanδ/E’が大きすぎると、ブローアウトが生じやすくなる。そのため、加硫ゴム物性としての100℃でのtanδ/E’を0.050〜0.150に設定することにより、ブローアウトを抑制しつつ、グリップ性能を向上することができる。
【0024】
tanδ/E’は、0.070〜0.130であることが好ましく、より好ましくは0.080〜0.120である。なお、tanδ及びE’それぞれの値は特に限定されず、例えば、tanδが0.250〜0.750でもよく、0.350〜0.450でもよい。また、E’が3.0〜7.0MPaでもよく、3.0〜5.0MPaでもよい。
【0025】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し、カーボンブラック、オイル及び樹脂とともに、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0026】
このようにして得られるゴム組成物は、空気入りタイヤの接地面を構成するトレッドゴムに用いられる。好ましくは、モータースポーツ用タイヤのトレッドゴムに用いることである。なお、空気入りタイヤのトレッドゴムには、キャップゴムとベースゴムとの2層構造からなるものと、両者が一体の単層構造のものがあるが、接地面を構成するゴムに好ましく用いられる。すなわち、単層構造のものであれば当該トレッドゴムが上記ゴム組成物からなり、2層構造のものであればキャップゴムが上記ゴム組成物からなることが好ましい。
【0027】
空気入りタイヤの製造方法は、特に限定されない。例えば、上記ゴム組成物を、常法に従い、押出加工によって所定の形状に成形して未加硫のトレッドゴム部材を作製し、該トレッドゴム部材を他の部材と組み合わせて未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)を作製した後、例えば140〜180℃で加硫成型することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0030】
・SBR:JSR(株)製「JSR0202」
・カーボンブラック1:三菱化学(株)製「ダイヤブラックN339」(NSA:91m/g)
・カーボンブラック2:三菱化学(株)製「ダイヤブラック−UX10」(NSA:190m/g)
・カーボンブラック3:東海カーボン製「シースト9」(NSA:142m/g)
・樹脂1:脂肪族系石油樹脂、日本ゼオン(株)製「クイントンM100」(軟化点:95℃)
・樹脂2:フェノール・ホルマリン熱可塑性樹脂、住友ベークライト製「DUREZ 19900」(軟化点:95℃)
・オイル:アロマ系、JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスNC140」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1種」
・老化防止剤:住友化学(株)製「アンチゲン6C」
・ワックス:日本精鑞(株)製「OZOACE0355」
・加硫促進剤:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」。
【0031】
各ゴム組成物について、160℃で30分間加硫した試験片(幅5.0mm、長さ20mm、厚み1.0mm)を用いて、tanδとE’を測定した。また、各ゴム組成物をトレッドゴムに用いて、常法に従い加硫成型することによりモータースポーツ用タイヤ(タイヤサイズ:31/71−18)を作製した。得られたタイヤについて、グリップ性能とブローアウト性能を測定した。各測定方法は以下の通りである。
【0032】
・tanδ:JIS K6394に準拠して、(株)東洋精機製作所製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz、初期歪み10%、動歪み±1%及び温度100℃の条件下(伸長変形)でtanδを測定した。
【0033】
・E’:JIS K6394に準拠して、(株)東洋精機製作所製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz、初期歪み10%、動歪み±1%及び温度100℃の条件下(伸長条件)でE’を測定した。
【0034】
・グリップ性能(ラップタイム計測):タイヤ4本を実車(レース専用車両)に装着し、プロドライバーの運転によるクローズドサーキット(1周:3.5km)の周回タイムを計測し、10周回の平均タイムを求めた。平均タイムの逆数について比較例1の値を100として指数で示した。指数が大きいほどラップタイムが速く、グリップ性能に優れていることを示す。
【0035】
・ブローアウト性能:ラップタイム計測と併せて、トレッドに発生するブローアウトを目視にて評価した。ラップタイム計測試験終了後にブローアウトが確認された場合は「×」、ブローアウトが確認されなかった場合は「○」で示す。
【0036】
【表1】
【0037】
結果は、表1に示す通りである。比較例1は、従来の一般的なカーボンブラックよりも小粒径のカーボンブラックを配合したものであるが、配合量が少ないため、tanδ/E’が小さく、グリップ性能が不十分であった。比較例2では、比較例1に対して、小粒径カーボンブラックの配合量を増やし、また樹脂を増量したものであり、tanδ/E’が大きすぎて、ブローアウトが発生した。比較例3では、樹脂を減量しすぎて、tanδ/E’が小さくなり、グリップ性能が悪化した。また、比較例4に示されるように、一般的な粒径のカーボンブラックでは多量に配合した場合でも、tanδ/E’が小さく、グリップ性能に劣っていた。
【0038】
これに対し、実施例1〜8では、小粒径のカーボンブラックを多量に配合し、樹脂及びオイルの配合量の調整により、tanδ/E’を上記所定の範囲内に設定したことにより、ブローアウトを抑えつつ、モータースポーツ用タイヤとしての優れたグリップ性能を向上することができた。
【0039】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。