(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804963
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】止滓装置
(51)【国際特許分類】
F27B 3/19 20060101AFI20201214BHJP
F27D 3/14 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
F27B3/19
F27D3/14 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-242320(P2016-242320)
(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公開番号】特開2018-96630(P2018-96630A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】593213342
【氏名又は名称】株式会社日向製錬所
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】藤田 涼太
(72)【発明者】
【氏名】河野 利則
(72)【発明者】
【氏名】川野 幸治
【審査官】
鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−106947(JP,A)
【文献】
特開平08−060691(JP,A)
【文献】
特開平01−312019(JP,A)
【文献】
特開平07−145419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/14
F27B 3/00 − 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気炉におけるスラグタップホールから抜き出される溶融スラグを止滓するための止滓装置であって、
駆動源としてのシリンダと、
前記シリンダと連結されたピニオンギアと、
基台に固定されており、前記ピニオンギアに上方から噛合する上方ラックと、
前記基台に固定されておらず、前記ピニオンギアに下方から噛合する下方ラックと、
前記下方ラックに接続され、先端にテーパー状の水冷栓が設けられた水冷栓棒と、
を備え、
前記水冷栓棒は、前記下方ラックの、該水冷栓棒が前記スラグタップホールに向かう前方向の先端部に直接接続されており、前記ピニオンギアを介した前記下方ラックの移動に伴って直接、前方又は後方に移動する、
止滓装置。
【請求項2】
前記上方ラックを固定している前記基台の上面には、該基台の位置及び角度を調整する調整機構を有する支持体が設けられている
請求項1に記載の止滓装置。
【請求項3】
前記支持体の上部には、走行車輪が設けられており、
前記走行車輪には、走行用駆動モータが設けられている
請求項2に記載の止滓装置。
【請求項4】
前記下方ラックには、前記水冷栓棒を固定保持するための筐体が接続されており、
前記筐体内に前記水冷栓棒が挿入されることで、該水冷栓棒と前記下方ラックとが接続状態となり、
前記筐体内の底部であって前記下方ラックとの接続箇所には、バネ体が設けられている
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の止滓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止滓装置に関するものであり、より詳しくは、電気炉のスラグタップホールから吐出される溶融スラグを止滓するための操作を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、フェロニッケル製錬に用いる電気炉の操業では、アークにより発生する熱とスラグ層の抵抗により発生する熱とでスラグ層の上に供給される焼鉱を溶融してスラグとメタルとを生成させ、比重分離により、電気炉の底部に溶融状態のメタル層を形成し、その上にスラグ層を形成する。
【0003】
具体的に、
図5は、電気炉での操業の様子を示す電気炉の縦断面図である。
図5に示すように、フェロニッケル製錬における電気炉100は、例えば三相交流式の電気炉であり、天井部より3本の電極101が垂下され、電極101への通電により、投原管102から投入された焼鉱110が溶融し、電気炉底部にメタル層120が形成され、そのメタル層120の上にスラグ層130が形成される。そして、メタル層120における溶融物(溶融メタル)は、メタルタップホール(「出銑口」とも呼ばれる)103から抜き出され、スラグ層130における溶融物(溶融スラグ)は、スラグタップホール(「出滓口」とも呼ばれる)104から抜き出される。なお、抜き出された溶融メタルは、その後の処理を経てフェロニッケル製品となり、抜き出された溶融スラグは、骨材等となる。
【0004】
さて、スラグタップホール104から溶融スラグを抜き出すにあたり、溶融スラグの抜き出し停止(「止滓」とも呼ばれる)の操作は、例えば、内部に冷却水を通水したテーパー形状の水冷栓を先端に備えた棒(以下、「水冷栓棒」ともいう)をスラグタップホール104に差し込み閉塞させることによって行う。
【0005】
より具体的に、溶融スラグの止滓操作においては、水冷栓棒をスラグタップホール104に水冷栓棒の先端を差し込むと、そのスラグタップホール104を介して流れてくる溶融スラグが水冷栓と接触することによって冷却されて固化する。すると、固化したスラグがいわゆる閉塞栓となってスラグタップホール104を閉塞し、これにより、溶融スラグの抜き出しを止める(止滓)することができる。
【0006】
ところが、このような止滓操作は、水冷栓棒を用いて作業者の手で行われており、1500℃〜1600℃程度で吐出される溶融スラグの近傍で行う必要があるため、吐出される溶融スラグからの輻射熱や飛散する溶融スラグの接触等による危険を伴い、その危険を万全に回避するための安全対策を高める必要があった。また、作業者の手によって行われる操作であるため、熟練度合い等に依存するところもあり、その結果作業効率性が向上せず、電気炉の操業効率も低下することがあった。
【0007】
例えば、特許文献1には、溶融還元炉の出銑口の閉塞装としてマッドガンを用いた装置が開示されているが、そのマッドガンはメタルタップホールに適用されるものであり、メタルと性状が異なる溶融スラグが抜き出されるスラグタップホールへの止滓操作には有効に適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平7−17932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、電気炉から抜き出される溶融スラグの止滓操作における作業負荷を軽減し、安全性高く作業することを可能にする止滓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、駆動源と、ピニオンギアと、ラックとを組み合わせた特定の機構を備えた止滓装置により、止滓操作における作業負荷を軽減し、作業の安全性を高められることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
(1)本発明の第1の発明は、電気炉におけるスラグタップホールから抜き出される溶融スラグを止滓するための止滓装置であって、駆動源としてのシリンダと、前記シリンダと連結されたピニオンギアと、基台に固定されており、前記ピニオンギアに上方から噛合する上方ラックと、前記ピニオンギアに下方から噛合する下方ラックと、前記下方ラックに接続され、先端にテーパー状の水冷栓が設けられた水冷栓棒と、を備える、止滓装置である。
【0012】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記上方ラックを固定している前記基台の上面には、該基台の位置及び角度を調整する調整機構を有する支持体が設けられている、止滓装置である。
【0013】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記支持棒の上部には、走行車輪が設けられており、前記走行車輪には、走行用駆動モータが設けられている、止滓装置である。
【0014】
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記下方ラックには、前記水冷栓棒を固定保持するための筐体が接続されており、前記筐体内に前記水冷栓棒が挿入されることで、該水冷栓棒と前記下方ラックとが接続状態となり、前記筐体内の底部であって前記下方ラックとの接続箇所には、バネ体が設けられている、止滓装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る止滓装置によれば、電気炉から抜き出される溶融スラグの止滓操作における作業負荷を軽減し、完全性の高い作業を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】ピニオンギアを後方から視たときの側面図である。
【
図4】電気炉のスラグタップホールに対して、止滓装置における水冷栓棒を挿入するときの様子を示す図である。
【
図5】電気炉での操業の様子を示す電気炉の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0018】
[止滓装置の構成]
図1は、本発明の実施形態に係る止滓装置の構成の一例を示す模式図である。止滓装置1は、電気炉100におけるスラグタップホール104から抜き出される溶融スラグを止滓するための止滓装置である。なお、
図1中の矢印X方向において、
図1向かって右側を「前方」とし、
図1向かって左側を「後方」とする。また、電気炉100の構成については、
図5と同様である。
【0019】
具体的に、止滓装置1は、駆動源としてのシリンダ2と、シリンダ2と連結されたピニオンギア3と、基台に固定されておりピニオンギア3に上方から噛合する上方ラック4と、ピニオンギア3に下方から噛合する下方ラック5と、下方ラック5に接続され、先端にテーパー状の水冷栓61が設けられた水冷栓棒6と、を備える。
【0020】
(シリンダ)
シリンダ2は、駆動源として作用し、シリンダ2のピストンロッド先端に連結したピニオンギア3がシリンダ2の往復運動(直線運動)により駆動する。シリンダ2としては、特に限定されず、例えば、圧縮空気を利用するエアシリンダや、油圧を利用する油圧シリンダ等を用いることができる。
【0021】
(ピニオンギア)
ピニオンギア3は、回転軸31を介してシリンダ2と連結されており、シリンダ2の直線運動を回転運動に変換する。なお、上述したように、ピニオンギア3は、シリンダ2のピストンロッド先端に取り付けられている。このピニオンギア3は、上方に位置する上方ラック4と、下方に位置する下方ラック5と、それぞれ噛合する。
【0022】
図2は、
図1中の矢印X方向にピニオンギア3を後方から視たときの側面図であり、ピニオンギア3及びその周囲の構成を示す図である。
図2に示すように、ピニオンギア3は、回転軸31を略中心に有し、上部噛合部32にて上方ラック4と噛合し、下部噛合部33にて下方ラック5と噛合する。また、ピニオンギア3には、その回転軸31の両端にガイドローラ8(8a,8b)が設けられている。ピニオンギア3は、シリンダ2の往復運動に伴って、ガイドレール9(9a,9b)に沿って前方又は後方に移動する。
【0023】
(上方ラック)
上方ラック4は、ピニオンギア3に上方から上部噛合部32にて噛合するラックギアである。上方ラック4は、
図1及び
図2に示すように、基台7に固定されている。したがって、この上方ラック4自体は前方又は後方に移動しない。基台7に固定されている上方ラック4上では、シリンダ2の往復運動に伴ってピニオンギア3が
図1中矢印X方向において前後に動くようになっている。
【0024】
(下方ラック)
下方ラック5は、ピニオンギア3の下方から下部噛合部33にて噛合するラックギアである。下方ラック5は、
図2に示すように、その両側において、先端が凸型形状の軸51a,51bが設けられている。下方ラック5の両側に設けられた軸51a,51bは、その先端にある凸型形状部においてロッドガイド10(10a,10b)とそれぞれ嵌合する。下方ラック5は、上方ラック4とは異なり、基台7に直接固定されていないため、ロッドガイド10a,10bに沿って
図1中矢印X方向において前後に動くようになっている。また、下方ラック5は、固定されていないことにより、ピニオンギア3の移動量(シリンダ2のストローク)のおよそ2倍の移動量が付与されることになる。なお、下方ラック5の具体的な移動のメカニズムについては後述する。
【0025】
なお、
図2に示すような構成のギア伝動機構を設けることによって、それぞれの構成が適度に支持されるとともに、スムーズな動作を生じさせることができる。
【0026】
(水冷栓棒)
水冷栓棒6は、先端にテーパー状の水冷栓61が取り付けられた棒状体であり、下方ラック5に接続されている。止滓装置1においては、シリンダ2の往復運動によりピニオンギア3を介して下方ラック5が
図1中矢印X方向の前方又は後方に動き、下方ラック5の動きに伴って、その下方ラック5に接続された水冷栓棒6が、電気炉のスラグタップホール104に挿入(差し込み)又は抜去される。
【0027】
図3は、水冷栓棒6の構成を示す構成図であり、下方ラック5との接続状態を示す拡大図である。水冷栓棒6には、冷却水を内部に供給するための冷却水供給口62と、冷却水を内部から排出するための冷却水排出口63とを有する。冷却水供給口62から供給された冷却水は、水冷栓棒6の内部を通って水冷栓61が設けられた先端部まで到達する。冷却水は、水冷栓棒6内を循環するため、水冷栓棒6全体が冷却される。これにより、水冷栓棒6がスラグタップホール104に挿入されると、冷却された水冷栓棒6により溶融スラグが固化するようになる。なお、冷却水供給口62、冷却水排出口63には、例えば冷却水を供給する、または排出させるための冷却水ホース等が接続される。
【0028】
また、
図3に示すように、水冷栓棒6は、下方ラック5の先端5Aに取り付けられたケース(筺体)40内に挿入されて接続される。筺体40は、水冷栓棒6を固定保持するためのものであり、その底部(下方ラック5と接続箇所付近)には、スプリング等のバネ体が設けられている。このように、筺体40の底部にバネ体を設けて、その筺体40に水冷栓棒6を挿入して下方ラック5と接続することで、水冷栓棒6をスラグタップホール104に挿入又は抜去するときの衝撃を緩和することができる。すなわち、水冷栓棒6をスラグタップホール104に挿入する際に受ける反力を吸収することができ、また、万一、水冷栓棒6がスラグタップホール104の周辺位置に接触した場合でも、その衝撃を吸収することができスラグタップホール104の破損を防ぐことができる。
【0029】
[止滓装置の動作]
このような止滓装置1においては、上方ラック4と、シリンダ2のピストンロッド先端に取り付けられたピニオンギア3との噛み合い、及び、ピニオンギア3と、水冷栓棒6が接続された下方ラック5との噛み合いにより、シリンダ2の直線往復運動に伴って、水冷栓棒6を
図1中矢印X方向の前方又は後方の方向に動作させることができる。
【0030】
より具体的に、止滓装置1においては、シリンダ2の押し出し動作(前方方向への直進運動)により、シリンダ2のピストンロッド先端に取り付けられたピニオンギア3が上方ラック4と噛み合い、ピニオンギア3の回転軸31の両側に設けたガイドローラ8a,8bがガイドレール9a,9bに沿ってピニオンギア3が後方方向に移動する。また、それと同時に、ピニオンギア3は下方ラック5と噛み合い、下方ラック5の両側に設けた凸型形状の軸51a,51bが凹型形状の前進のロッドガイド10a,10bに沿って、下方ラック5が前方の方向に移動する。そして、このような下方ラック5の前方方向への移動により、下方ラック5に接続された水冷栓棒6が前方に移動する。なお、水冷栓棒6の後方への移動(後退の動作)は、上述した動作の逆の動作を行うことで可能となる。
【0031】
また、止滓装置1においては、上方ラック4、下方ラック5、及びピニオンギア3の伝動機構を適用することにより、水冷栓棒6の上方の位置にシリンダ2を配置させることができ、長手方向(奥行き,
図1中矢印X方向)の寸法を抑えることもできる。このことから、長手方向のスペース制約がある場所での設置に有利であり、上下方向のスペースを有効に利用することができる。また、シリンダ2を止滓装置1における上部の位置に配置することで、電気炉100から樋上を流れる溶融スラグの輻射熱から遠ざけることができ、加えて止滓装置1の本体周りに防熱板11(
図1参照)を取り付けることができ、更なる焼損防止を期待することができる。
【0032】
図4は、電気炉100のスラグタップホール104に対して、止滓装置1における水冷栓棒6を挿入するときの様子を示す図である。止滓装置1においては、未動作時には、上述したギア電動機構に基づいて
図4(A)に示すように水冷栓棒6を
図4(A)中矢印Y方向に移動させて、スラグタップホール104を開放させる。これにより、電気炉100からは、スラグタップホール104を介して溶融スラグが抜き出され、溶融スラグ樋104aを通って移送されることになる。
【0033】
一方で、電気炉100から所定量の溶融スラグが抜き出され、それ以上の抜き出しを停止させる止滓作業を行うに際しては、止滓装置1において、上述したギア電動機構に基づき、
図4(B)に示すように水冷栓棒6を
図4(B)中矢印Z方向に移動させて、水冷栓棒6を先端からスラグタップホール104に挿入させるようにする。水冷栓棒6には、先端に冷却水が循環している水冷栓61が設けられているため、スラグタップホール104への水冷栓棒6の挿入により、水冷栓61と接触した溶融スラグが冷却固化され、固化したスラグがいわゆる閉塞栓となって溶融スラグの流出を止める。
【0034】
[止滓装置における他の構成]
ここで、
図1に示すように、止滓装置1においては、上方ラック4を固定している基台7の上面に、その基台7の位置及び角度を調整する調整機構12(
図1中点線丸囲み部)を有する支持体13を設けることができる。このように、調整機構12を設けることによって、水冷栓棒6のスラグタップホール104への挿入位置を容易にかつ適切に定めることができる。
【0035】
具体的に、位置及び角度を調整する調整機構12としては、特に限定されないが、例えばベベルギアボックス等を用いることができる。調整機構12としてベベルギアボックスを用いた場合、ベベルギアボックス出力軸と支持体13とを接続させて、ベベルギアボックス入力軸にハンドル等を接続して回転させることによって、容易に位置及び角度の調整を行うことができる。さらに、ベベルギアボックス入力軸にモータを接続することによって、機械的な自動操作を行うことが可能となり、人力作業が無くなるためより一層に調整が容易になり、作業の安全性も向上させることができる。
【0036】
なお、支持体13としては、
図1に示すように、例えば2本備えるようにすることができる。そして、例えば、基台7の上面に備えた2本の支持体13を雄ネジとし、基台7における支持体13の取付部に雌ネジを備えるようにすることで、支持体13を回転させる操作によって基台7を昇降させることができるため、その基台7の位置及び角度の調整を容易に行うことが可能となる。
【0037】
また、支持体13の上部には、走行機構14を設けることができる。具体的に、走行機構14としては、走行車輪15と、モータ回転軸16aを介して走行車輪15を回転させる走行用駆動モータ16とを備える機構を設けることができる。例えば、止滓装置1を設置する箇所、つまり作業場の天井部90に走行レール91を設けるようにし、その走行レール91上を、走行機構14を介して止滓装置1が走行するようにすることができる。
【0038】
このように、止滓装置1において、走行を可能にする走行機構14を設けることによって、止滓作業前の待機位置から、電気炉100におけるスラグタップホール104の正面手前の位置までの移動や、止滓作業後のスラグタップホール104の正面から待機位置までの移動を、容易に行うことができる。
【0039】
また、その走行機構14においては、走行用駆動モータ16にリミットスイッチ等を組み合わせるようにしてもよい。これにより、電気炉100におけるスラグタップホール104の手前の適切な位置で自動停止するように構成することもでき、作業効率を向上させることができ好ましい。
【0040】
なお、止滓装置1において、上述した調整機構12と走行機構14とを併せて備える場合、止滓装置1を走行機構14により走行させる前の待機位置での待機状態にあるときに、基台7の位置及び角度を調整することが好ましい。これにより、止滓作業中には、スラグタップホール104の閉塞作業のみを行えばよく、作業効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 止滓装置
2 シリンダ
3 ピニオンギア
4 上方ラック
5 下方ラック
6 水冷栓棒
7 基台
8,8a,8b ガイドローラ
9,9a,9b ガイドレール
10,10a,10b ロッドガイド
11 防熱板
12 調整機構
13 支持体
14 走行機構
15 走行車輪
16 走行用駆動モータ
16a モータ回転軸
31 ピニオンギアの回転軸
40 筺体(ケース)
61 水冷栓
62 冷却水供給口
63 冷却水排出口
100 電気炉
101 電極
102 投原管
104 スラグタップホール
104a 溶融スラグ樋
110 焼鉱
120 メタル層
130 スラグ層