特許第6804967号(P6804967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特許6804967画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置
<>
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000002
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000003
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000004
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000005
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000006
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000007
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000008
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000009
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000010
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000011
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000012
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000013
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000014
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000015
  • 特許6804967-画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804967
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   A61B6/00 350D
   A61B6/00 350C
   A61B6/00 331D
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-246380(P2016-246380)
(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公開番号】特開2018-99240(P2018-99240A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】土田 和生
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−304907(JP,A)
【文献】 特開昭55−148400(JP,A)
【文献】 米国特許第05090042(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者のX線透視像を処理する画像処理装置であって、
前記X線透視像中で気管と食道が分岐する分岐領域を指定する領域指定部と、
前記分岐領域の前記X線透視像を用いて、検査食の移動領域を抽出する移動領域抽出部と、
前記移動領域に基づき、前記検査食の分岐点を検出する分岐点検出部と、
前記分岐点につながる前記移動領域を用いて、前記検査食による誤嚥が発生しそうなことを判定する誤嚥判定部と、
前記分岐点から気管側の前記移動領域の端点までの距離を判定する距離判定部と、を備え、
前記誤嚥判定部は、前記距離が所定の閾値を超えてしまった場合に、前記検査食による誤嚥が発生しそうと判定する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記検査食による誤嚥が発生しそうなことを表示、或いは音で通知する出力部を、更に備える、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記領域指定部は、
検査者が入力する前記被検者の顔の向き、及び前記気管と前記食道が分岐する領域を用いて、前記分岐領域を指定する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記X線透視像を記録する記録部を更に備え、
前記領域指定部、前記移動領域抽出部、前記分岐点検出部は、前記記録部から読み出した前記X線透視像を処理対象とする、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項に記載の画像処理装置であって、
前記移動領域抽出部は、
前記X線透視像の現在のフレーム、一つ前のフレーム、更に一つ前のフレームの前記分岐領域内の輝度値のフレーム間差分を算出し、前記フレーム間差分を用いて、前記移動領域を抽出する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項に記載の画像処理装置であって、
前記分岐点検出部は、
前記移動領域の細線化を行って移動領域細線を得、
前記距離判定部は、前記分岐点から気管側の前記移動領域細線の端点までの長さを前記距離とする、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項に記載の画像処理装置であって、
前記領域指定部が指定した前記分岐領域の、前記現在のフレームと前記一つ前のフレーム間の画素の動きをオプティカルフローから算出し、前記現在のフレームと前記一つ前のフレームの位置合わせを行う位置合わせ部を、更に備える、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項に記載の画像処理装置であって、
前記位置合わせ部は、
前記画素の動きを、注目画素とその周辺画素において最も多いオプティカルフローを、前記注目画素のフレーム間の動きとして補正する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
X線透視像を処理する画像処理装置による誤嚥判定方法であって、
前記X線透視像中で気管と食道が分岐する分岐領域を指定し、
前記分岐領域で検査食の移動領域を抽出し、前記移動領域に基づき前記検査食の分岐点を検出し、
前記分岐点から前記気管側の前記移動領域の端点までの距離を判定し、
前記距離が所定の閾値を超えてしまった場合に、前記検査食による誤嚥が発生しそうと自動で判定する
ことを特徴とする誤嚥判定方法。
【請求項10】
請求項に記載の誤嚥判定方法であって、
前記X線透視像の現在のフレーム、一つ前のフレーム、更に一つ前のフレームの前記分岐領域内の輝度値のフレーム間差分を算出し、前記フレーム間差分を用いて、前記移動領域を抽出し、
前記移動領域の細線化を行って移動領域細線を得、
前記分岐点から気管側の前記移動領域細線の端点までの長さを前記距離とする、
ことを特徴とする誤嚥判定方法。
【請求項11】
X線透視像を撮影して処理するX線透視撮影装置であって、
被検者にX線照射するX線照射部と、
前記被検者を透過したX線を検出しX線信号を出力するX線検出器と、
前記X線信号を処理しX線画像を生成する画像処理部と、
前記X線画像を表示するX線画像表示部と、
前記X線画像を用いて、前記被検者で誤嚥が発生しそうなことを判定する誤嚥判定装置と、前記X線透視像の撮影、処理を制御する制御部と、を備え、
前記誤嚥判定装置は、
前記X線画像中で前記被検者の気管と食道が分岐する分岐領域を指定する領域指定部と、
指定された前記分岐領域の前記X線画像を用いて、検査食の移動領域を抽出する移動領域抽出部と、
抽出した前記移動領域に基づき、前記検査食の分岐点を検出する分岐点検出部と、
前記分岐点と前記移動領域の気管側の端点までの間の距離を判定する距離判定部と、を備え、
前記距離判定部は、前記距離が所定の閾値を超えてしまった場合に、前記検査食による誤嚥が発生しそうと判定する、
ことを特徴とするX線透視撮影装置。
【請求項12】
請求項11に記載のX線透視撮影装置であって、
前記検査食による誤嚥が発生しそうと判定した場合、表示、或いは音で通知する出力部を更に備える、
ことを特徴とするX線透視撮影装置。
【請求項13】
請求項12に記載のX線透視撮影装置であって、
前記移動領域抽出部は、
前記X線画像の現在のフレーム、一つ前のフレーム、更に一つ前のフレームの前記分岐領域内の輝度値のフレーム間差分を算出し、前記フレーム間差分を用いて、前記移動領域を抽出し、
前記分岐点検出部は、
前記移動領域の細線化を行って移動領域細線を得、
前記距離判定部は、
前記分岐点から気管側の前記移動領域細線の端点までの長さを前記距離とする、
ことを特徴とするX線透視撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線透視撮影装置で嚥下造影検査を行う際に、X線透視像を用いて誤嚥が発生しそうなことを自動検出する画像処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢化などにより嚥下動作が正しく行われなくなり、摂食時に誤嚥が起きる可能性がある。誤嚥により気管支に食物の滓が残り、細菌が増殖するため、高齢者は肺炎にかかることがある。これからの高齢化社会において、嚥下障害の度合いやリハビリ状態を判定するために嚥下造影検査が増加する傾向にある。この検査は、実際に食べ物を飲み込むところを観察するため、誤嚥が発生する可能性があるため、誤嚥が起きそうなことを検出することは重要である。
【0003】
従来、嚥下造影検査を行い、X線透視像を用いて目視で誤嚥を判定していたり、加速度計やマイク等をのどに装置を取り付け誤嚥があったことを確認したりしている。たとえば加速度計を患者の首に取つけ、嚥下活動を表す電子信号を受信し、その信号から特徴を抽出し、嚥下活動をしているのか誤嚥しているのかを判定している(特許文献1参照)。また、嚥下音を採取するマイクを首に取つけ、その波形をもとに嚥下活動が異常かどうかを判定している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−502386号公報
【特許文献2】特開2003−111748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の場合、器具を患者に取り付ける必要があるため、患者にとってわずらわしさが生じ、小児の場合は嚥下造影検査を行いにくい場合がある。さらに、誤嚥が発生した後に誤嚥が起きていたことを知らせるようになっている。また、嚥下造影検査の際は、X線透視像を用いて検査者が目視で誤嚥を判定しており、検査食の移動速度が速く、誤嚥が起こりそうなことを見逃してしまう恐れがあった。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、誤嚥が発生しそうなことを自動で検出して通知することが可能な画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明においては、X線透視像を処理する画像処理装置であって、X線透視像中で気管と食道が分岐する分岐領域を指定する領域指定部と、分岐領域のX線透視像を用いて、検査食の移動領域を抽出する移動領域抽出部と、移動領域に基づき、検査食の分岐点を検出する分岐点検出部と、を備え、分岐点につながる移動領域を用いて検査食による誤嚥が発生しそうなことを判定する画像処理装置を提供する。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明においては、X線透視像を処理する画像処理装置による誤嚥判定方法であって、X線透視像中で気管と食道が分岐する分岐領域を指定し、
分岐領域で検査食の移動領域を抽出し、移動領域に基づき検査食の分岐点を検出し、分岐点につながる移動領域を用いて検査食による誤嚥が発生しそうなことを判定する誤嚥判定方法を提供する。
【0009】
更に、上記の目的を達成するため、本発明においては、X線透視像を撮影して処理するX線透視撮影装置であって、被検者にX線照射するX線照射部と、被検者を透過したX線を検出しX線信号を出力するX線検出器と、X線信号を処理しX線画像を生成する画像処理部と、X線画像を表示するX線画像表示部と、X線画像を用いて被検者で誤嚥が発生しそうなことを判定する誤嚥判定装置と、を備え、誤嚥判定装置は、X線画像中で被検者の気管と食道が分岐する分岐領域を指定する領域指定部と、指定された分岐領域のX線画像を用いて、検査食の移動領域を抽出する移動領域抽出部と、抽出した移動領域に基づき、検査食の分岐点を検出する分岐点検出部と、分岐点と移動領域の気管側の端点との間の距離を判定する距離判定部と、を備え、距離を用いて検査食による誤嚥が発生しそうなことを検出するX線透視撮影装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
嚥下造影検査を実施する際に、X線透視像を用いて自動で誤嚥が発生しそうなことを検出することで、誤嚥を未然に防ぐことができ、より安全な検査を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】誤嚥が起きた際の気管と食道周辺のX線透視像を示す図である。
図2】各実施例に係るX線透視撮影装置の全体を示すブロック図である。
図3】実施例1に係る誤嚥判定装置の一構成例を示すブロック図である。
図4】実施例1に係る誤嚥判定部の機能ブロック図である。
図5】実施例1に係る誤嚥判定装置の全体フローチャートを示す図である。
図6】実施例1の誤嚥判定部のフローチャートを示す図である。
図7】実施例1に係るX線透視像から検査食の移動領域を算出する方法の説明図ある。
図8】実施例1に係る検査食の分岐点を検出する分岐点検出部の説明図ある。
図9】実施例1に係る距離判定部の処理の説明図である。
図10】実施例3の誤嚥判定部の機能ブロック図である。
図11】実施例3の誤嚥判定部のフローチャートを示す図である。
図12】実施例3の被検者の動きを吸収する処理の説明図である。
図13】実施例4の位置合わせ部のフローチャートを示す図である。
図14】フレーム間の画素の移動量を補正処理の説明図である。
図15】実施例5の全体のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各種の実施形態について図面を用いて説明する。図1は本発明に係る誤嚥判定を説明するためのX線透視像を示す図、図2は本発明に係るX線透視撮影装置の全体構成例を示す図である。
【0013】
まず、図1を使って本発明の誤嚥判定の原理を説明する。図1の(a)に示すように、X線透視像中で検査者の指定に基づき、気管1と食道2が分岐する分岐領域3を指定し、図1の(b)に示すように、分岐領域3における、造影剤を混ぜた食べ物である検査食4の気管1と食道2とのわかれ具合を画像処理で算出することで誤嚥が発生しそうなことを検出し、誤嚥が発生しそうなことを知らせる。
【0014】
図2に示すX線透視撮影装置は、被検者101を載せる天板110と、被検者101にX線を照射するX線源102と、被検者101に対するX線照射領域を設定する絞り装置111と、X線源102に電力供給を行なう高電圧発生器105と、X線源102に対向する位置に配置され、被検者101を透過したX線を検出するX線検出器103と、X線検出器103から出力されたX線信号に対して画像処理を行なう画像処理部104と、画像処理部104から出力されたX線画像(X線透視像を含む)を表示するX線画像表示部106と、上記の各構成要素を制御する制御部107と、制御部107に対して指令を行なう操作部108と、画像処理部104から出力されたX線透視像から誤嚥が発生しそうなことを検出する誤嚥判定装置109とを備えている。
【0015】
これらの内、X線画像表示部106、制御部107、操作部108、並びに誤嚥判定装置109は、一台のパーソナルコンピュータ(PC)の中央処理部(CPU),入力部、表示部、記憶部等を用いて構成しても良い。
【0016】
X線源102は、高電圧発生器105から電力供給を受けてX線を発生させるX線管球を有する。また、X線源102には、特定のエネルギーのX線を選択的に透過させるX線フィルタなどを有していてもよい。絞り装置111は、X線源102から発生したX線を遮蔽するX線遮蔽用鉛板を複数有し、複数のX線遮蔽用鉛板をそれぞれ移動することにより、被検者101に対するX線照射領域を決定する。X線検出器103は、例えば、X線を検出する複数の検出素子が二次元アレイ状に配置されて構成されており、X線源102から照射され、被検者101を透過したX線の入射量に応じたX線信号を検出する機器である。
【0017】
画像処理部104は、X線検出部103から出力されたX線信号を画像処理し、画像処理されたX線画像を出力する。画像処理は、ガンマ変換、階調変換処理、画像の拡大・縮小等である。X線画像表示部106は、画像処理部104から出力されたX線画像、更には被検者情報・撮影条件を表示する。また、誤嚥判定装置109は、以下の各実施例で説明するように画像処理部104から出力されたX線透視像であるX線画像から、誤嚥が発生しそうなことを検出する。
【実施例1】
【0018】
実施例1は、上述の誤嚥判定装置、すなわちX線透視像を処理する画像処理装置であって、X線透視像中で気管と食道が分岐する分岐領域を指定する領域指定部と、分岐領域のX線透視像を用いて、検査食の移動領域を抽出する移動領域抽出部と、移動領域に基づき、検査食の分岐点を検出する分岐点検出部と、を備え、分岐点につながる移動領域を用いて、検査食による誤嚥が発生しそうなことを検出する画像処理装置の実施例である。また、X線透視像を処理する画像処理装置による誤嚥判定方法であって、X線透視像中で気管と食道が分岐する分岐領域を指定し、分岐領域で検査食の移動領域を抽出し、移動領域に基づき検査食の分岐点を検出し、分岐点につながる移動領域を用いて検査食による誤嚥が発生しそうなことを判定する誤嚥判定方法の実施例、更にはそれを利用するX線透視撮影装置の実施例である。
【0019】
図3は実施例1のX線透視撮影装置の誤嚥判定装置の一構成例を示すブロック図である。同図の撮影装置200は、図2の右半分のX線画像、すなわちX線透視像を撮影する構成部分に対応する。誤嚥判定装置109は、撮影装置200から送られてくるX線透視像を記録する記録部210、記録部210に記録されるX線透視像に対してリアルタイムで誤嚥が発生しそうなことを判定する誤嚥判定部220、記録部210に保存されているX線透視像や記録中のX線透視像を表示する表示部230、及び誤嚥判定部220で誤嚥が発生しそうだと判定した場合に、検査者に通知する誤嚥表示部240から構成される。
【0020】
誤嚥判定部220は、例えば、誤嚥判定装置109を実現するCPUのプログラム実行などで構成することができる。好適にはこのCPUは、制御部107を構成するCPUとは別個のCPUを使用するが、同一のCPUを用いても良い。表示部230は、図2のX線画像表示部106とは別個のディスプレイで構成する。なお、誤嚥表示部240は通知、警告用の表示を行うものであり、表示部230を構成するディスプレイの表示画面中の一表示領域として構成することができる。
【0021】
続いて、図4の機能ブロックを用いて、本実施例の誤嚥判定部220の動作機能について説明する。上述のように、誤嚥判定部220をCPUのプログラム実行で実現する場合、各機能ブロックはそれぞれの機能を実行するプログラムで構成可能である。まず、領域指定部221は、検査者が操作部108などを使って入力する、検査中のX線透視中の気管1と食道2の分岐点周辺の領域と、被検者の顔の向きに従い、分岐領域3を指定する。
【0022】
移動領域抽出部223は、領域指定部221で指定した分岐領域3内で、検査食4の移動領域を抽出する。続いて、分岐点検出部224は移動領域抽出部223で抽出した移動領域から検査食の分岐点を検出する。そして、距離判定部225は、分岐点検出部224が検出した検査食の分岐点から、分岐点につながる移動領域の気管側の端点までの距離を算出することにより、誤嚥が発生しそうなことを検出する。
【0023】
次に、図5を用いて実施例1に係るX線透視撮影装置の全体動作フローを説明する。同図のステップ310で装置を起動し、ステップ320で誤嚥判定装置109が録画を開始し、記録部210に記録する。ステップ330で、記録部210に記録しているリアルタイムのX線透視像から、任意のタイミングで検査者が例えば操作部108から入力する気管と食道の分岐点付近の領域に従い、領域指定部221が矩形の分岐領域3を指定する。
【0024】
次のステップ340ではステップ330で指定した分岐領域3内での検査食の移動領域に基づき、検査食が分岐したことを検出し、誤嚥が発生しそうなことを自動で判定する。ステップ350ではステップ340で誤嚥が発生しそうと判定した場合、誤嚥が発生しそうなことを誤嚥表示部240に表示し、ステップ360では誤嚥が発生していないと判定されると誤嚥表示部240から誤嚥が発生しそうであるとする表示を消す。ステップ370では検査を終了し、誤嚥判定装置を終了する。
【0025】
次に、図6を用いて上述した全体動作フロー中で、誤嚥判定部220が実行するステップ330、340について説明する。先に説明したように、誤嚥判定部220をCPUのプログラム実行でステップ330、340を実行可能である。同図のステップ405は図4のステップ330と同様である。ステップ410で、X線透視像の最新のフレームを読み込む。X線透視像は例えば、30fps(フレーム/秒)で撮影される。ステップ415とステップ420でステップ405において指定した分岐領域3内の検査食の移動領域を抽出する。
【0026】
図7を用いて、ステップ415とステップ420について説明する。同図の左側に現在のフレームft、一つ前のフレームft-1、二つ前のフレームft-2各々の分岐領域3のX線透視像を模式的に示した。ステップ415で現在のフレームftと一つ前のフレームft-1のフレーム間の輝度の差分を取り、所定の閾値で2値化して輝度の差分の2値化画像を得る。しかしこれだけでは、移動前の領域も一緒に抽出されてしまう。そこで、ステップ420でフレームftとft-1のフレーム間の輝度の差分の2値化画像5と、一つ前のフレームft-1と二つ前のフレームft-2のフレーム間の輝度の差分の2値化画像6との共通部分(AND)を抽出し、移動領域7を抽出する。これにより検査食の移動領域7が抽出できる。
【0027】
続いて、ステップ425とステップ430で検査食の分岐点の検出を行う。図8を用いて、ステップ425とステップ430について説明する。ステップ425でステップ420において抽出した移動領域7を細線化し、移動領域細線8を得る。ステップ430で移動領域細線8を使って検査食の分岐点9を検出する。分岐点の条件は、例えば図8中の拡大部分に示すように、注目画素の周りの8近傍の画素が3つ以上黒い画素なら分岐点9とする。ただし、分岐点より下の黒い画素が1つ以下の場合は分岐点としない。この分岐点の条件に限定されず、他の適切な条件を設定しても良い。ステップ435で分岐点9から被検者の顔が向いている方向につながる移動領域細線8の端点までの画素の数を数え距離として算出する。
【0028】
図9を用いて、被検者が左を向いている場合を例示して距離の算出の方法を説明する。ステップ440で、図9のように分岐点9から端点10、11までの距離が閾値を超えているかを判断する。これは、細線化を行った際、本来は残ってはいけない枝が残ってしまうことがよくおこり、それを除去するためである。同図の(b)の端点11のように閾値以上の場合は誤嚥が発生しそうな状態なのでステップ445に進む。一方、同図の(a)の端点10のように閾値未満の場合は誤嚥が発生しそうではないのでステップ450に進む。ステップ445で誤嚥表示部240に誤嚥が発生しそうであることを検査者に知らせる。ステップ450で最終フレームかどうかを判断する。最終フレームであれば処理は終了し、最終フレームでなければ次のフレームに移る。
【0029】
以上説明した本実施例の構成により、自動で誤嚥が発生しそうなことを検出することができるため、誤嚥を未然に防ぎ、X線透視撮影装置を使ったより安全な嚥下造影検査の実施が可能になる。更に、検査中に自動で誤嚥が発生しそうなことを検出して通知されるため、検査者は常に誤嚥に気を付けてX線透視像を見る必要がなくなり、検査者の負担を減らすことができる。
【実施例2】
【0030】
続いて、実施例2の画像処理装置、誤嚥判定方法、及びX線透視撮影装置について説明する。実施例1と異なる点は、誤嚥表示部240を使って誤嚥が発生しそうなことを表示するのではなく、スピーカーなどを使って音で通知することを可能とする点にある。
【0031】
本実施例により、検査中のX線透視像の映像に誤嚥判定装置を適用した際に、誤嚥が発生しそうなことをスピーカー等の音で知らせることで、検査中に検査者が表示部に表示される映像を見なくても誤嚥が発生しそうなことを知ることができ、誤嚥以外の検査に集中することができる。なお本明細書において、表示部230、誤嚥表示部240、並びにスピーカー等を総称して出力部と呼ぶ場合がある。言いかえるなら、本発明に係る装置は、検査食による誤嚥が発生しそうなことを表示、或いは音で通知する出力部を備える。
【実施例3】
【0032】
次に、実施例3は、領域指定部が指定した分岐領域の、現在のフレームと一つ前のフレーム間の画素の動きをオプティカルフローから算出し、現在のフレームと一つ前のフレームの位置合わせを行う位置合わせ部を備える構成の実施例であり、以下、図10図12を用いて説明する。
【0033】
図10は実施例3における誤嚥判定装置の一構成例のブロック図である。実施例1及び実施例2と異なる点は、誤嚥判定部220において被検者の動きを吸収しフレームの位置を合わせる位置合わせ部222を追加している点である。
【0034】
図11を用いて、実施例3の誤嚥判定部220の動作について説明する。実施例1及び実施例2と異なる点は、ステップ410とステップ415の間に位置合わせ部222の処理であるステップ411とステップ414が追加されている点であり、これらのステップも誤嚥判定部220のCPUのプログラム実行で実現できる。
【0035】
図12を用いて、ステップ411とステップ414について説明する。同図においては、右方向に移動したと想定している。ステップ411で、図12のように現在のフレームftと一つ前のフレームft-1の2枚の画像12、画像13からオプティカルフロー手法を用いて画素ごとのフレーム間の動きを示すオプティカルフロー14を算出する。ステップ414で画素ごとのフレーム間の動きをもとにフレームftの画像をずらし、被検者動きを吸収後のフレームftの画像15を得る。
【0036】
本実施例の構成により、嚥下造影検査中の飲み込み動作や被検者の動きにより、フレーム間の差分画像に被検者の動きが入ってしまったり、分岐領域として指定した指定領域から気管と食道が分岐している領域が外れてしまったりすることを防ぐことができる。これによって、より正確な移動領域を算出することができるため、誤嚥が発生しそうなことの検出の誤検出を低減することができる。
【実施例4】
【0037】
続いて、実施例4として、実施例3で説明した位置合わせ部は、画素の動きを、注目画素と、その周辺画素において最も多いオプティカルフローを、注目画素のフレーム間の動きとして補正する構成の実施例を説明する。以下、図13図14を用いて実施例4の画像処理装置、誤嚥判定方法、X線透視撮影装置について説明する。
【0038】
図13に、実施例4の誤嚥判定部220の位置合わせ部222の動作の一例を示す。実施例1−実施例3と異なる点は、位置合わせ部のステップ411とステップ414の間にフレーム間の動きを補正するステップ413を追加した点である。
【0039】
図14を用いてステップ413について説明する。同図においては、図12同様、右方向に移動したと想定している。ステップ414では、図14に示す異常なオプティカルフロー16を、注目画素とその周辺画素において最も多いオプティカルフローを注目画素の正常なフレーム間の動きとして補正をして、補正後のオプティカルフロー17を得る。これにより、フレーム間の画素の移動量の異常値を減らすことができる。よって、正確に分岐領域として指定した指定領域の位置合わせができるため、誤嚥が発生しそうなことの検出の誤検出を減らすことができる。ステップ414も誤嚥判定部220のCPUのプログラム実行で実現できることは言うまでもない。
【0040】
本実施例によれば、フレーム間の画素の移動量を補正することでより正確に、分岐領域として指定した指定領域の位置合わせができるため、誤嚥が発生しそうなことの検出の誤検出を減らすことができる。
【実施例5】
【0041】
次に、実施例5として、X線透視像を記録する記録部を更に備え、X領域指定部、移動領域抽出部、分岐点検出部は、記録部から読み出したX線透視像をその処理対象とする構成の画像処理装置、誤嚥判定方法、X線透視撮影装置の実施例について説明する。実施例1〜実施例4と違うところは、読み込むX線透視像が違う点であり、記録部210に保存してある動画に対して誤嚥判定を行う。
【0042】
図15を用いて実施例5の構成の全体動作について説明する。ステップ710で誤嚥判定装置109を起動し、ステップ720で記録部210の録画データを再生する。ステップ730で、再生しているX線透視像から任意のタイミングで顔の向きと気管と食道の分岐点付近の領域を検査者が入力し、領域指定部221がそれに基づき、矩形の分岐領域を指定する。次のステップ740ではステップ730で指定した分岐領域内で移動領域を抽出、これを用いて検査食が分岐したことを検出し、誤嚥が発生しそうなことを自動で判定する。ステップ750ではステップ740で誤嚥が発生しそうな場合は誤嚥が発生しそうなことを誤嚥表示部240で表示、或いは音で通知警告し、ステップ760では誤嚥が発生していないと判定されると誤嚥表示部240から誤嚥が発生しそうである表示を消す、或いは音による通知警告を止める。ステップ770では動画の再生を終了し、装置を終了する。
【0043】
本実施例により、誤嚥の診断の際に何度も録画した動画の見返しを省くことができ、検査者の負担を減らすことができる。
【0044】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、誤嚥判定部の領域指定部は、操作部等を使って検査者が入力する、気管と食道の分岐点付近の領域と、顔の向きを用いて分岐領域を指定等行ったが、X線透視像を画像処理することにより、分岐点付近の領域や被検者の顔の向きを自動的に検出しても良い。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0045】
更に、上述した各構成、機能、制御部等は、それらの一部又は全部を実現するCPU用のプログラムを作成する例を説明したが、それらの一部又は全部を例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良いことは言うまでもない。すなわち、制御部の全部または一部の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路などにより実現してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 気管
2 食道
3 分岐領域
4 検査食
5、6 2値化画像
7 移動領域
8 移動領域細線
9 分岐点
10、11 端点
12、13、15 画像
14、16、17 オプティカルフロー
101 被検者
102 X線源
103 X線検出器
104 画像処理部
105 高電圧発生器
106 X線画像表示部
107 制御部
108 操作部
109 誤嚥判定装置
110 天板
111 絞り装置
200 撮影装置
210 記録部
220 誤嚥判定部
221 領域指定部
222 位置合わせ部
223 移動領域抽出部
224 分岐点抽出部
225 距離判定部
230 表示部
240 誤嚥表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15