(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリプロピレン(A)が、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとのブロック共重合体、およびプロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体からなる群から選ばれるいずれか1種のポリプロピレンであり、
前記ポリプロピレン(C)が、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとのブロック共重合体、またはプロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体からなる群から選ばれるいずれか1種のポリプロピレンであり、かつ
前記ポリプロピレン(A)と前記ポリプロピレン(C)とが、同種のポリプロピレンである、請求項3に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
請求項3または4に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる単層フィルム、または請求項3または4に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を少なくとも1つの表面層として有する多層フィルムである、フィルム。
ポリプロピレン(C)に、請求項1または2に記載のアンチブロッキング剤マスターバッチを、前記アンチブロッキング剤マスターバッチの割合が、ポリプロピレン系樹脂組成物の100質量%のうち、2〜40質量%となるように配合する、ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「疎水性シリカ粒子」とは、表面が疎水化処理されたシリカ粒子を意味する。
「分子量分布(M
w/M
n)」は、JIS K 7252−1:2016「プラスチック−サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方−第1部:通則」(対応国際規格ISO 16014−1:2012)、JIS K 7252−2:2016「プラスチック−サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方−第2部:ユニバーサルキャリブレーション法」(対応国際規格ISO 16014−2:2012)およびJIS K 7252−4:2016「プラスチック−サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方−第4部:高温での方法」(対応国際規格ISO 16014−4:2012)に準拠して、試料の質量平均分子量(M
w)および数平均分子量(M
n)を求め、質量平均分子量(M
w)を数平均分子量(M
n)で除した値である。
「メルトマスフローレイト(MFR)」は、JIS K 7210−1:2014「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方−第1部:標準的試験方法」(対応国際規格ISO 1133−1:2011)に準拠し、ポリプロピレンの場合、温度:230℃、荷重:21.18Nの条件で測定した値である。
「水分含有率」は、JIS K 7251:2002「プラスチック−水分含有率の求め方」(対応国際規格ISO 15512:1999)の「B法(水分気化法)」に準拠して求めた値である。
「プロピレン−エチレン共重合体におけるエチレン単位の割合」は、JIS K 0117:2000「赤外分光分析方法通則」に準拠し、赤外分光光度計を用いて観測されたプロピレン−エチレン共重合体の赤外分光スペクトルからエチレン単位の割合を算出した値である。
「体積平均粒子径」および「粒子径が5μm以下の粒子の割合」は、JIS Z 8825:2013「粒子径解析−レーザ回折・散乱法」(対応国際規格ISO 13320:2009)に準拠して求めた値である。
【0011】
<アンチブロッキング剤マスターバッチ>
本発明のアンチブロッキング剤マスターバッチは、特定のポリプロピレン(A)と特定のシリカ粒子(B)とを含む。
本発明のアンチブロッキング剤マスターバッチは、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
【0012】
(ポリプロピレン(A))
ポリプロピレン(A)は、分子量分布(M
w/M
n)、メルトマスフローレイト(MFR)および水分含有率が特定の範囲内にあるポリプロピレンである。
【0013】
ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとのブロック共重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、剛性や耐熱性の向上の点からは、プロピレン単独重合体またはブロック共重合体が好ましい。また、透明性が求められる用途においては、ランダム共重合体が好ましい。
他のα−オレフィンの炭素数は、1〜12が好ましい。他のα−オレフィンの具体例としては、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−ジメチル−1−ペンテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられ、エチレン、1−ブテンが好まし、エチレンがより好ましい。
【0014】
プロピレン−エチレン共重合体におけるエチレン単位の割合は、全構成単位の100質量%のうち、ランダム共重合体の場合は0質量%超〜6.0質量%以下が好ましく、ブロック共重合体の場合は5〜40質量%が好ましい。エチレン単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、ポリプロピレン(A)中にシリカ粒子(B)が分散しやすい。
【0015】
ポリプロピレンは、公知の重合触媒を用いた公知の製造方法によって製造できる。
重合触媒としては、下記の(a)〜(c)を含む触媒、メタロセン触媒等が知られている。
(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物(以下、内部電子供与体化合物とも記す。)を含む固体触媒。
(b)有機アルミニウム化合物。
(c)外部電子供与体化合物。
【0016】
内部電子供与体化合物としては、フタレート系化合物、スクシネート系化合物、ジエーテル系化合物が挙げられる。内部電子供与体化合物としては、ポリプロピレンの立体規則性が高く、分子量分布が広くなる点から、フタレート系化合物またはスクシネート系化合物を内部電子供与体化合物として含む触媒が好ましい。
フタレート系化合物としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジイソプロピルフタレート、ジオクチルフタレート等が好ましい。
スクシネート系化合物としては、ジエチル−2,3−(ジイソプロピル)スクシネート、ジイソブチル−2,3−(ジイソプロピル)スクシネート、ジ−n−ブチル−2,3−(ジイソプロピル)スクシネート、ジエチル−2,3−(ジシクロヘキシル)−2−(メチル)スクシネート、ジイソブチル−2,3−(ジシクロヘキシル)−2−(メチル)スクシネート、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル等が好ましい。
【0017】
ポリプロピレン(A)の分子量分布(M
w/M
n)は、4〜15であり、4〜13が好ましい。ポリプロピレン(A)の分子量分布(M
w/M
n)が前記範囲の下限値未満では、ポリプロピレンの安価な製造が困難である。ポリプロピレン(A)の分子量分布(M
w/M
n)が前記範囲の上限値以下であれば、ポリプロピレン(A)中にシリカ粒子(B)が十分に分散する。そのため、フィルムの成形中にシリカ粒子(B)が凝集しにくいためにフィルムの表面からシリカ粒子(B)が脱落しにくい。ポリプロピレン(A)の分子量分布(M
w/M
n)が前記範囲の上限値を超える場合、ポリプロピレン中に低分子量成分が多く存在することで溶融混練不足となり、シリカ(B)の分散性が不十分でシリカ粒子(B)が凝集しやすく、フィルムの表面からシリカ粒子(B)の凝集物が脱落しやすい。
【0018】
ポリプロピレン(A)のメルトマスフローレイト(MFR)は、2〜15g/10minであり、2〜10g/10minが好ましい。ポリプロピレン(A)のメルトマスフローレイト(MFR)が前記範囲の下限値未満では、押出機の負荷が大きくなり、溶融混練が困難になる。ポリプロピレン(A)のメルトマスフローレイト(MFR)が前記範囲の上限値以下であれば、ポリプロピレン(A)中にシリカ粒子(B)が十分に分散する。そのため、フィルムの成形中にシリカ粒子(B)が凝集しにくいためにフィルムの表面からシリカ粒子(B)が脱落しにくい。ポリプロピレン(A)のメルトマスフローレイト(MFR)が前記範囲の上限値を超える場合、ポリプロピレンが低分子量であることで溶融混練不足となり、シリカ(B)の分散性が不十分でシリカ粒子(B)が凝集しやすく、フィルムの表面からシリカ粒子(B)の凝集物が脱落しやすい。
【0019】
ポリプロピレン(A)の水分含有率は、120質量ppm以下であり、90質量ppm以下が好ましい。ポリプロピレン(A)の水分含有率が前記範囲の上限値以下であれば、シリカ粒子(B)への水分吸収が抑制されるため、フィルムの成形中にシリカ粒子(B)が凝集しにくい。ポリプロピレン(A)の水分含有率は低ければ低いほどよく、好ましい下限値は0質量ppmである。
ポリプロピレン(A)の水分含有率は、ポリプロピレン(A)を製造する際のポリプロピレン(A)の乾燥条件によって調整できる。
【0020】
(シリカ粒子(B))
シリカ粒子(B)は、体積平均粒子径、粒子径が5μm以下の粒子の割合および水分含有率が特定の範囲内にあるシリカ粒子である。
シリカ粒子は、アンチブロッキング剤として機能するシリカ粒子であればよい。シリカ粒子の形状は、不定形であってもよく、球状であってもよい。
【0021】
シリカ粒子(B)の体積平均粒子径は、1.8〜3.5μmであり、2.0〜3.0μmが好ましく、2.2〜3.0μmがより好ましい。シリカ粒子(B)の体積平均粒子径が前記範囲の下限値以上であれば、押出機のホッパやシリンダ内でシリカ粒子が原因によるスリップが発生しにくいため、ポリプロピレン(A)中にシリカ粒子(B)が十分に分散する。そのため、フィルムの成形中にシリカ粒子(B)が凝集しにくい。シリカ粒子(B)の体積平均粒子径が前記範囲の上限値以下であれば、サイズの大きいシリカ粒子(B)が少ないため、シリカ粒子(B)はフィルムの表面から脱落しにくい。
【0022】
シリカ粒子(B)における粒子径が5μm以下の粒子の割合は、70質量%以上であり、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましい。シリカ粒子(B)における粒子径が5μm以下の粒子の割合が前記範囲の下限値以上であれば、ポリプロピレン(A)へのシリカ粒子(B)の分散性がよくなる。そのため、フィルムの成形中にシリカ粒子(B)が凝集しにくく、シリカ粒子(B)はフィルムの表面から脱落しにくい。シリカ粒子(B)における粒子径が5μm以下の粒子の割合は高ければ高いほどよく、好ましい上限値は100質量%である。
【0023】
シリカ粒子(B)の水分含有率は、3.5質量%以下であり、3.0質量%以下が好ましい。シリカ粒子(B)の水分含有率が前記範囲の上限値以下であれば、フィルムの成形中にシリカ粒子(B)が凝集しにくい。そのため、シリカ粒子(B)はフィルムの表面から脱落しにくい。シリカ粒子(B)の水分含有率は低ければ低いほどよく、好ましい下限値は0質量%である。
【0024】
シリカ粒子(B)としては、疎水性シリカ粒子を含むものが好ましい。疎水性シリカ粒子は、水分含有率が低いため、フィルムの成形中にシリカ粒子(B)が凝集しにくく、フィルムの表面からシリカ粒子(B)が脱落しにくい。
【0025】
疎水性シリカ粒子の製造方法としては、例えば、特開平6−92621号公報に記載の方法等が挙げられる。
疎水性シリカ粒子の市販品としては、富士シリシア化学社製のサイロホービック(登録商標)507(体積平均粒子径2.7μm)、サイロホービック(登録商標)505(体積平均粒子径3.9μm)、サイロホービック(登録商標)702(体積平均粒子径4.1μm)、サイロホービック(登録商標)704(体積平均粒子径6.2μm)等が挙げられる。
【0026】
(他の成分)
アンチブロッキング剤マスターバッチにおける他の成分としては、酸化防止剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、造核剤、充填材、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防曇剤、分散剤、銅害防止剤、気泡防止剤等が挙げられる。
【0027】
(各成分の割合)
ポリプロピレン(A)の割合は、アンチブロッキング剤マスターバッチの100質量%のうち、89〜98質量%が好ましく、91〜98質量%がより好ましい。ポリプロピレン(A)の割合が前記範囲の下限値以上であれば、シリカ粒子(B)は良好に分散されることで凝集しにくく、フィルムの表面から脱落しにくい。ポリプロピレン(A)の割合が前記範囲の上限値以下であれば、シリカ粒子(B)や他の成分による効果を阻害することがない。
【0028】
シリカ粒子(B)の割合は、アンチブロッキング剤マスターバッチの100質量%のうち、2〜11質量%であり、2〜9質量%が好ましく、3〜9質量%がより好ましい。シリカ粒子(B)の割合が前記範囲の下限値以上であれば、フィルムにした際にフィルム中のシリカ粒子が十分な量となり、フィルムのブロッキングを抑えることができる。シリカ粒子(B)の割合が前記範囲の上限値以下であれば、シリカ粒子(B)が凝集しにくく、あるいはサイズの大きいシリカ粒子(B)が少ないことで、フィルムの表面からシリカ粒子(B)が脱落しにくい。
【0029】
他の成分の割合は、アンチブロッキング剤マスターバッチの100質量%のうち、0〜9質量%が好ましく、0〜7質量%がより好ましく、0〜5質量%がさらに好ましい。
【0030】
(アンチブロッキング剤マスターバッチの製造方法)
本発明のアンチブロッキング剤マスターバッチは、例えば、パウダー状のポリプロピレン(A)とシリカ粒子(B)と、必要に応じて他の成分とを混合し、溶融混練し、ペレット化することによって製造できる。
【0031】
混合方法としては、混合装置を用いて混合する方法が挙げられる。混合装置としては、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、タンブラーミキサ、スクリューブレンダ、リボンブレンダ等が挙げられる。
【0032】
溶融混練方法としては、混練装置を用いて溶融混練する方法が挙げられる。混練装置としては、押出機、ニーダ、ミキシングロール、バンバリーミキサ等が挙げられる。
溶融混練温度は、170〜280℃が好ましく、190〜260℃がより好ましい。
【0033】
(作用機序)
以上説明した本発明のアンチブロッキング剤マスターバッチにあっては、分子量分布(M
w/M
n)、メルトマスフローレイト(MFR)および水分含有率が特定の範囲内にあるポリプロピレン(A)と、体積平均粒子径、粒子径が5μm以下の粒子の割合および水分含有率が特定の範囲内にあるシリカ粒子(B)とを含み、シリカ粒子(B)の割合が特定の範囲にあるため、これを配合したポリプロピレン系樹脂組成物をフィルムに成形した場合、フィルムの成形中にシリカ粒子が凝集しにくく、あるいはサイズの大きいシリカ粒子(B)が少ないことで、シリカ粒子がフィルムの表面から脱落しにくい。
【0034】
<ポリプロピレン系樹脂組成物>
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン(C)と、本発明のアンチブロッキング剤マスターバッチとを含む。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じてアンチブロッキング剤マスターバッチに含まれる他の成分とは別の、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0035】
(ポリプロピレン(C))
ポリプロピレン(C)としては、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとのブロック共重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体等が挙げられる。ポリプロピレン(C)における他のα−オレフィンの好ましい例示は、ポリプロピレン(A)における他のα−オレフィンの好ましい例示と同様である。
【0036】
ポリプロピレン(C)は、公知の重合触媒を用いた公知の製造方法によって製造できる。ポリプロピレン(C)における重合触媒の好ましい例示は、ポリプロピレン(A)における重合触媒の好ましい例示と同様である。
【0037】
アンチブロッキング剤マスターバッチにおけるポリプロピレン(A)と、ポリプロピレン系樹脂組成物における主材であるポリプロピレン(C)とは、溶融混練過程でアンチブロッキング剤をポリピロピレン中に分散させることでシリカ粒子(B)の凝集を防ぎ、フィルム表面からシリカ粒子(B)を脱落しにくくする観点から、同種のポリプロピレンであることが好ましい。すなわち、ポリプロピレン(C)がプロピレン単独重合体であれば、ポリプロピレン(A)もポリプロピレン(C)と同種のプロピレン単独重合体であることが好ましく、ポリプロピレン(C)がブロック共重合体であれば、ポリプロピレン(A)もポリプロピレン(C)と同種のブロック共重合体であることが好ましく、ポリプロピレン(C)がランダム共重合体であれば、ポリプロピレン(A)もポリプロピレン(C)と同種のランダム共重合体であることが好ましい。なお、ポリプロピレン(C)がブロック共重合体の場合は、ポリプロピレン(A)として単独重合体やランダム共重合体を使用することも可能である。その際、ポリプロピレン(C)の構成要素としてプロピレン単独共重合体が含まれる場合にはそれと同種のプロピレン単独共重合体をポリプロピレン(A)とし、ポリプロピレン(C)の構成要素としてランダム共重合体が含まれる場合はそれと同種のランダム共重合体をポリプロピレン(A)とすること好ましい。
【0038】
ポリプロピレン(C)の分子量分布(M
w/M
n)、メルトマスフローレイト(MFR)、水分含有率等は、フィルムに必要とされる物性に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。
ポリプロピレン(C)のメルトマスフローレイト(MFR)は、製膜性、押出機負荷、シリカ分散性の点から、2〜15g/10minが好ましく、2〜10g/10minがより好ましい。
【0039】
(他の成分)
ポリプロピレン系樹脂組成物における他の成分としては、造核剤、充填材、塩素吸収剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、シリカ粒子以外のアンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物等が挙げられる。
【0040】
(各成分の割合)
ポリプロピレン(C)の割合は、ポリプロピレン系樹脂組成物の100質量%のうち、60〜98質量%が好ましく、70〜98質量%がより好ましく、80〜98質量%がより好ましい。ポリプロピレン(C)の割合が前記範囲の下限値以上であれば、シリカ粒子(B)が多くなりすぎず、フィルムのコストが抑えられる。ポリプロピレン(C)の割合が前記範囲の上限値以下であれば、フィルムにした際にフィルム中のシリカ粒子(B)が十分な量となり、フィルムのブロッキングを抑えることができる。
【0041】
アンチブロッキング剤マスターバッチの割合は、ポリプロピレン系樹脂組成物の100質量%のうち、2〜40質量%であり、2〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。アンチブロッキング剤マスターバッチの割合が前記範囲の下限値以上であれば、フィルムにした際にフィルム中のシリカ粒子が十分な量となり、フィルムのブロッキングを抑えることができる。アンチブロッキング剤マスターバッチの割合が前記範囲の上限値以下であれば、シリカ粒子(B)が多くなりすぎず、フィルムのコストが抑えられる。
【0042】
他の成分の割合は、ポリプロピレン系樹脂組成物の100質量%のうち、0〜9質量%が好ましく、0〜7質量%がより好ましく、0〜5質量%がさらに好ましい。
【0043】
(ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法は、ポリプロピレン(C)に本発明のアンチブロッキング剤マスターバッチを、アンチブロッキング剤マスターバッチの割合がポリプロピレン系樹脂組成物の100質量%のうち2〜40質量%となるように配合する方法である。
【0044】
ポリプロピレン系樹脂組成物は、アンチブロッキング剤マスターバッチと同様の方法によって製造でき、好ましい形態も同様である。
【0045】
(作用機序)
以上説明した本発明のポリプロピレン系樹脂組成物にあっては、本発明のマスターバッチを含むため、これをフィルムに成形した場合、フィルムの成形中にシリカ粒子が凝集しにくく、あるいはサイズの大きいシリカ粒子(B)が少ないことで、フィルムの表面からシリカ粒子(B)が脱落しにくい。
以上説明した本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法にあっては、本発明のマスターバッチを用いているため、フィルムに成形した場合、フィルムの成形中にシリカ粒子が凝集しにくく、あるいはサイズの大きいシリカ粒子(B)が少ないことで、フィルムの表面からシリカ粒子(B)が脱落しにくいポリプロピレン系樹脂組成物を製造できる。
【0046】
<フィルム>
本発明のフィルムは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる単層フィルム、または本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を少なくとも1つの表面層として有する多層フィルムである。
【0047】
多層フィルムにおける、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層以外の他の層としては、多層フィルムの製造時に発生する切れ端等の工程戻しリサイクル材からなる層、ガスバリア層、シーラント層等が挙げられる。
本発明のフィルムの厚さは、10〜300μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
【0048】
(フィルムの製造方法)
本発明のフィルムの製造方法は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法によってポリプロピレン系樹脂組成物を得た後、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形してポリプロピレン系樹脂組成物からなる単層フィルムを得る、または少なくともポリプロピレン系樹脂組成物を成形してポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を少なくとも1つの表面層として有する多層フィルムを得る方法である。
【0049】
単層フィルムの製造方法としては、インフレーション法、Tダイ法等が挙げられる。
多層フィルムの製造方法としては、共押出法、押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。
【0050】
本発明のフィルムの製造方法においては、フィルムまたはシートを延伸して延伸フィルムを製造してもよい。
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法等により一軸または二軸に延伸する方法が挙げられる。
【0051】
本発明のフィルムの製造方法においては、フィルムの表面に金属を蒸着させて金属蒸着フィルムを製造してもよい。蒸着方法としては、真空蒸着法が挙げられる。金属としては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、ゲルマニウム、すず、セレン等が挙げられ、アルミニウムが好ましい。
【0052】
(作用機序)
以上説明した本発明のフィルムにあっては、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる単層フィルムまたは本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を少なくとも1つの表面層として有する多層フィルムであるため、フィルムの成形中にシリカ粒子が凝集しにくく、あるいはサイズの大きいシリカ粒子(B)が少ないことで、フィルムの表面からシリカ粒子(B)が脱落しにくい。
以上説明した本発明のフィルムの製造方法にあっては、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法でポリプロピレン系樹脂組成物を得て、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形して単層フィルムを得る、または少なくともポリプロピレン系樹脂組成物を成形してポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を少なくとも1つの表面層として有する多層フィルムを得る方法であるため、フィルムの成形中にシリカ粒子が凝集しにくく、あるいはサイズの大きいシリカ粒子(B)が少ないことで、フィルムの表面からシリカ粒子(B)が脱落しにくいフィルムを製造できる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これにより本発明は限定されない。
【0054】
(分子量分布(M
w/M
n))
ポリプロピレン(A)1.5mgを2mLのバイアル瓶に採取し、酸化防止剤を含む1,2,4−トリクロロベンゼン1.5mLを加え、高温振とう器(アジレント・テクノロジー社製、PL−SP260VS)を用いて150℃で2時間撹拌し、ポリプロピレン(A)の溶液を調製した。
ポリプロピレン(A)の溶液について、JIS K 7252−1:2016(対応国際規格ISO 16014−1:2012)、JIS K 7252−2:2016(対応国際規格ISO 16014−2:2012)およびJIS K 7252−4:2016(対応国際規格ISO 16014−4:2012)に準拠して、ゲル浸透クロマトグラフィー装置(アジレント・テクノロジー社製、PL−GPC220)を用い、145℃の条件でポリプロピレン(A)の質量平均分子量(M
w)および数平均分子量(M
n)を求め、質量平均分子量(M
w)を数平均分子量(M
n)で除して分子量分布(M
w/M
n)を求めた。
測定においてはポリプロピレン(A)の溶液の溶媒と同じものを移動相とし、カラムとして昭和電工社製UT−G(1本)、UT−807(1本)、UT−806M(2本)を直列に接続したものを使用し、検出器として示差屈折率計を使用した。ポリプロピレン(A)の溶液500μLをカラムに注入し、流速1.0mL/分、温度145℃、データ取り込み間隔1秒で測定した。カラムの較正は、分子量580〜745万のポリスチレン標準試料(Shodex STANDARD、昭和電工株式会社製)を使用し、三次式近似で行った。Mark−Houkinsの係数は、ポリスチレン標準試料に関しては、K=1.21×10
−4、α=0.707、ポリプロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、およびポリプロピレン系重合体に関しては、K=1.37×10
−4、α=0.75を使用した。
【0055】
(メルトマスフローレイト(MFR))
ポリプロピレン(A)、ポリプロピレン(C)またはアンチブロッキング剤マスターバッチについて、JIS K 7210−1:2014(対応国際規格ISO 1133−1:2011)に準拠し、温度:230℃、荷重:21.18Nの条件でメルトマスフローレイト(MFR)を測定した。
【0056】
(水分含有率)
ポリプロピレン(A)またはシリカ粒子(B)について、JIS K 7251:2002(対応国際規格ISO 15512:1999)の「B法(水分気化法)」に準拠して水分含有率を求めた。
【0057】
(エチレン単位の割合)
ポリプロピレン(A)について、JIS K 0117:2000に準拠したフーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製、IRT−5000)を用いて観測された赤外分光スペクトルからエチレン単位の割合を算出した。校正は、
13C−NMR法でエチレン単位の割合を測定した標準サンプルを用いて行った。
【0058】
(体積平均粒子径および粒子径が5μm以下の粒子の割合)
シリカ粒子(B)について、JIS Z 8825:2013(対応国際規格ISO 13320:2009)に準拠してレーザ回析・散乱法で体積平均粒子径および粒子径が5μm以下の粒子の割合を求めた。
【0059】
(アンチブロッキング剤マスターバッチの製造可否)
ポリプロピレン(A)とシリカ粒子(B)とを溶融混練した後、シリカ粒子(B)が十分に分散したものを〇、シリカ粒子(B)が十分に分散せず、アンチブロッキング剤マスターバッチとして使用できなかったものを×と評価した。
【0060】
(シリカ粒子の分散性)
フィルムの表面の0.05m
2の領域について、シリカ粒子の凝集物(白点または黒点)の個数、およびそれらのサイズを尺付ルーペを用いて目視で測定した。各凝集物ごとに最も大きくなる向きのサイズを確認し、サイズが0.20mm以上の凝集物の個数を記録した。同様の測定を3回行い、3回の結果を平均化し、平均値を2倍にすることで0.1m
2あたりの凝集物の個数を算出した。
【0061】
(シリカ粒子の耐脱落性)
JIS K 7125:1999「プラスチック−フィルム及びシート−摩擦係数試験方法」(対応国際規格ISO 8295:1995)に準拠し、手動引張試験機(ティー・エス・イー社製、Autocom AC−C)および専用摩擦係数試験用治具を用いて摩擦係数試験を行った。滑り片としては、面積:40cm
2、質量:200g、材質:フェルトのものを用いた。用意した同一のフィルム2枚のうち1枚を滑り片に巻き、もう1枚を試験テーブルに固定し、滑り片を速度100mm/minで100mmの直線移動を50回繰り返し行なうことで2枚のフィルムを摩擦させた。フィルムのサイズは、滑り片側:MD(フィルムの長手方向)×TD(フィルムの幅方向)=100×100mm、試験テーブル側:MD×TD=120×200mmとした。フィルム長手方向での繰り返し摩擦によるシリカ脱落が実用上の問題となるため、2枚のフィルムが共にMD方向に摩擦するように実施した。
【0062】
摩擦係数試験によってシリカ粒子の脱落が多いと、摩擦係数試験前と比較して、透過光量が増大して内部ヘーズが低下する傾向にある。よって、シリカ粒子の凝集物の耐脱落性の指標として、試験前と試験後の内部ヘーズの変化率を求める。なお、摩擦係数試験の際に、シリカ粒子によってフィルムの表面に微細な傷が生じることで外部ヘーズが変化するため、全ヘーズおよび外部ヘーズは採用しない。
JIS K 7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方−」(対応国際規格ISO 14782:1999)に準拠し、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて摩擦係数試験前後のフィルムについて内部ヘーズの測定を3回行い、これらの平均値を内部ヘーズとした。摩擦係数試験の前のフィルムの内部ヘーズhおよび摩擦係数試験(50回)の後の滑り片側のフィルムの内部ヘーズh’を求め、下記式から内部ヘーズの変化率(%)を求めた。
内部ヘーズの変化率=(h’−h)/h×100
シリカ粒子が脱落しにくいフィルムであれば、試験前と試験後の内部ヘーズの差異は顕現しないため、内部ヘーズの変化率は±5%以内となる。内部ヘーズの変化率が±5%を超えるフィルムは不合格とした。
【0063】
(フィルムのアンチブロッキング性)
手動引張試験機(ティー・エス・イー社製、Autocom AC−C)および専用ブロッキング試験用治具を用い、フィルム同士のブロッキング強度を測定した。
長さ:10cm×幅:10cmの2枚のフィルムを、温度:50℃、荷重:98N(10kg)で24時間密着させて試験片を得た。試験片を引張試験機に取り付け、移動速度:500mm/分でフィルム同士を垂直に引きはがし、引張試験機のロードセルにより検出された最大荷重を試験片のブロッキング強度(N/cm
2)とした。
【0064】
(製造例1)
(ポリプロピレン(A−1−1))
MgCl
2上にTiと内部供与体化合物としてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号明細書の実施例5に記載された方法によって調製した。固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの質量比が20、TEAL/DCPMSの質量比が10となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予備重合を行った。
得られた予備重合物を重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造した。重合中は、重合温度を80℃、分子量調整剤として用いた水素の濃度を0.20モル%とし、圧力を調整した。
得られたパウダー状のプロピレン単独重合体について、100℃のスチームを用いて触媒の失活と残留モノマーの除去を行った後、100℃のドライ窒素を用いて残存する水分の除去を行った。乾燥は、水分が残ったパウダーがないようにするため、撹拌しながら行った。最後にパウダーを冷却する際の放熱によってプロピレン単独重合体中の水分を蒸発させ、ポリプロピレン(A−1−1)を得た。
【0065】
(製造例2)
(ポリプロピレン(A−1−2))
製造例1と同様にして得たパウダー状のプロピレン単独重合体について、100℃のスチームを用いて触媒の失活と残留モノマーの除去を行った後、40℃のドライ窒素を用いて残存する水分の除去と冷却を行い、ポリプロピレン(A−1−2)を得た。乾燥は、水分が残ったパウダーが無いようにするため、撹拌しながら行った。
【0066】
(製造例3)
(ポリプロピレン(A−1−3))
製造例1と同様にして得たパウダー状のプロピレン単独重合体について、100℃のスチームを用いて触媒の失活と残留モノマーの除去を行った後、冷却し、ポリプロピレン(A−1−3)を得た。
【0067】
(製造例4)
(ポリプロピレン(A−2))
MgCl
2上にTiと内部供与体化合物としてのジエーテルを担持させた固体触媒を、特開平7−2925号公報の実施例1に記載された方法によって調製した。固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの質量比が114、TEAL/DCPMSの質量比が6となるような量で、10℃において20分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて10分間保持することによって予備重合を行った。
得られた予備重合物を重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造した。重合中は、重合温度を70℃、分子量調整剤として用いた水素の濃度を0.07モル%とし、圧力を調整した。
得られたパウダー状のプロピレン単独重合体について、製造例1と同様にしてスチーム処理と乾燥を行い、ポリプロピレン(A−2)を得た。
【0068】
(製造例5)
(ポリプロピレン(A−3))
MgCl
2上にTiと内部供与体化合物としてのジエチル−2,3−(ジイソプロピル)スクシネートを担持させた固体触媒を、特開平7−2925号公報の実施例1に記載された方法によって調製した。固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの質量比が18、TEAL/DCPMSの質量比が10となるような量で、室温において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予備重合を行った。
得られた予備重合物を重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造した。重合中は、重合温度を70℃、分子量調整剤として用いた水素の濃度を0.19モル%とし、圧力を調整した。
得られたパウダー状のプロピレン単独重合体について、製造例1と同様にしてスチーム処理と乾燥を行い、ポリプロピレン(A−3)を得た。
【0069】
(製造例6)
(ポリプロピレン(A−4))
分子量調整剤として用いた水素の濃度を0.10モル%とした以外は、製造例1と同様にしてパウダー状のプロピレン単独重合体を得た。
得られたパウダー状のプロピレン単独重合体について、製造例1と同様にしてスチーム処理と乾燥を行い、ポリプロピレン(A−4)を得た。
【0070】
(製造例7)
(ポリプロピレン(A−5))
分子量調整剤として用いた水素の濃度を0.28モル%とした以外は、製造例1と同様にしてパウダー状のプロピレン単独重合体を得た。
得られたパウダー状のプロピレン単独重合体について、製造例1と同様にしてスチーム処理と乾燥を行い、ポリプロピレン(A−5)を得た。
【0071】
(製造例8)
(ポリプロピレン(A−6))
重合反応器にプロピレンとエチレンを導入して、共重合体におけるエチレン単位の割合が4.1質量%となるようにエチレン濃度を調整し、分子量調整剤として用いた水素濃度を0.37モル%とした以外は、製造例1と同様にしてプロピレン−エチレンランダム共重合体を得た。
得られたパウダー状のプロピレン−エチレンランダム共重合体について、製造例1と同様にしてスチーム処理と乾燥を行い、ポリプロピレン(A−6)を得た。
【0072】
(製造例9)
(ポリプロピレン(A−7))
製造例5と同じ予備重合物を用い、プロピレン単独重合体を2つの重合反応器を用いて多段重合で製造した。1つめの重合反応器の水素濃度を0.060モル%、2つめの重合反応器の水素濃度を0.84モル%とし、重合温度70℃で、重合圧力を調整し、それぞれの比率が50:50になるように滞留時間分布を調整した。
得られたパウダー状のプロピレン単独重合体について、製造例1と同様にしてスチーム処理と乾燥を行い、ポリプロピレン(A−7)を得た。
【0073】
(製造例10)
(ポリプロピレン(A−8))
分子量調整剤として用いた水素の濃度を0.54モル%とした以外は、製造例1と同様にしてパウダー状のプロピレン単独重合体を得た。
得られたパウダー状のプロピレン単独重合体について、製造例1と同様にしてスチーム処理と乾燥を行い、ポリプロピレン(A−8)を得た。
【0074】
(シリカ粒子(B))
シリカ粒子(B−1):含水シリカ粒子(水澤化学工業社製、ミズパール K−150、体積平均粒子径:1.6μm)。
シリカ粒子(B−2):非疎水性シリカ粒子(富士シリシア化学社製、サイリシア(登録商標)530、体積平均粒子径:2.7μm)。
シリカ粒子(B−3):疎水性シリカ粒子(富士シリシア化学社製、サイロホービック(登録商標)507、体積平均粒子径:2.7μm)。
シリカ粒子(B−4):疎水性シリカ粒子(富士シリシア化学社製、サイロホービック(登録商標)505、体積平均粒子径:3.9μm)。
シリカ粒子(B−5):疎水性シリカ粒子(富士シリシア化学社製、サイロホービック(登録商標)702、体積平均粒子径:4.1μm)。
シリカ粒子(B−6):疎水性シリカ粒子(富士シリシア化学社製、サイロホービック(登録商標)704、体積平均粒子径:6.2μm)。
【0075】
シリカ粒子(B)における粒子径が5μm以下の粒子の割合は、シリカ粒子(B)を1種のみ用いる、または2種以上を組み合わせて用いることによって調整した。
シリカ粒子(B)の水分含有率は、用いるシリカ粒子の種類(含水シリカ粒子、非疎水性シリカ粒子、疎水性シリカ粒子)の配合割合を変えることによって調整した。
【0076】
(ポリプロピレン(C))
ポリプロピレン(C−1):プロピレン単独重合体(サンアロマー社製、PC600A、MFR:8g/10min)。
ポリプロピレン(C−2):プロピレン−エチレンランダム共重合体(サンアロマー社製、PC630A、MFR:8g/10min)。
【0077】
(他の成分)
添加剤(D−1):酸化防止剤(住友化学株式会社製、Sumilizer(登録商標)GP)。
添加剤(D−2):酸化防止剤(BASFジャパン社製、Irgafos(登録商標)168)。
添加剤(D−3):中和剤(淡南化学工業社製、カルシウムステアレート)。
【0078】
(実施例1〜15、比較例1〜2、4〜8)
表1に示す種類、割合のポリプロピレン(A)、シリカ粒子(B)および添加剤(D)を、ヘンシェルミキサを用いて混合した。得られた混合物を押出機(神戸製鋼所社製、KTX37mmφ異方向二軸押出機)を用い、シリンダ設定温度:230℃、スクリュ回転数:300rpm、スクリーンメッシュ:#200で溶融混練し、ダイスからストランド状に吐出した。ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザで切断し、ペレット状のアンチブロッキング剤マスターバッチを得た。
【0079】
(比較例3)
シリカ粒子(B−1)を100℃オーブン中で1時間乾燥し、水分含有率2.5質量%とし、これをシリカ粒子(B)として使用た。それ以外は上記実施例および比較例と同じ工程でペレット状のアンチブロッキング剤マスターバッチの作製を試みた。
【0080】
(実施例1〜10、12〜15、比較例1〜8)
表1〜表5に示す種類、割合のポリプロピレン(C)、アンチブロッキング剤マスターバッチを、ヘンシェルミキサを用いて混合した。得られた混合物をTダイ成形機(サーモプラスティックス社製、3種3層Tダイ成形機)を用い、シリンダ温度:250℃、スクリュ回転数:50rpm、スクリーンメッシュ:#200、チルロール温度:30℃、フィルムの厚さ:30μmで成形し、単層フィルムを得た。
【0081】
(実施例11)
表3に示す種類、割合のポリプロピレン(C)、アンチブロッキング剤マスターバッチを、ヘンシェルミキサを用いて混合した。得られた表面層用混合物と、工程戻しリサイクル材からなる中間層用材料とを、Tダイ成形機(サーモプラスティックス社製、3種3層Tダイ成形機)を用い、シリンダ温度:250℃、スクリュ回転数:50rpm、スクリーンメッシュ:#200、チルロール温度:30℃、フィルムの厚さ:30μmで成形し、表面層/中間層/表面層=5μm/20μm/5μmの多層フィルムを得た。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
比較例1は、ポリプロピレン(A)の分子量分布(M
w/M
n)が15を超えたため、ポリプロピレン中に低分子量成分が多く存在することで溶融混練不足となり、シリカ粒子(B)の凝集物がフィルムの表面から脱落しやすかった。
比較例2は、ポリプロピレン(A)のMFRが15g/10minを超えたため、低分子量であることで成形時に溶融混練不足となり、シリカ(B)の分散性が不十分でシリカ粒子(B)が凝集しやすく、シリカ粒子(B)の凝集物がフィルムの表面から脱落しやすかった。
比較例3は、シリカ粒子(B)の体積平均粒子径が1.8μm未満であったため、ポリプロピレン(A)とシリカ粒子(B)とを溶融混練しても、シリカ粒子(B)が十分に分散しなかった。
比較例4は、シリカ粒子(B)の体積平均粒子径が3.5μm超であり、粒子径が5μm以下の粒子の割合が70質量%未満であったため、サイズの大きいシリカ粒子(B)がフィルムの表面から脱落しやすかった。
【0088】
比較例5は、アンチブロッキング剤マスターバッチ中のシリカ粒子(B)の割合が2質量%未満であったため、フィルムがブロッキングしやすかった。
比較例6は、アンチブロッキング剤マスターバッチ中のシリカ粒子(B)の割合が11質量%を超えたため、シリカ粒子(B)の凝集物の量が多くなることでフィルムの表面から脱落しやすかった。
比較例7は、ポリプロピレン(A)の水分含有率が120質量ppmを超えたため、シリカ粒子(B)の凝集物がフィルムの表面から脱落しやすかった。
比較例8は、シリカ粒子(B)の水分含有率が3.5質量%を超えたため、シリカ粒子(B)の凝集物がフィルムの表面から脱落しやすかった。