特許第6804980号(P6804980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804980電子デバイス用封止剤及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804980
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】電子デバイス用封止剤及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20201214BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20201214BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20201214BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C09K3/10 E
   H05B33/14 A
   H05B33/04
   H05B33/10
   H01L31/04 110
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 L
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-560846(P2016-560846)
(86)(22)【出願日】2016年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2016077659
(87)【国際公開番号】WO2017051795
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2019年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-187058(P2015-187058)
(32)【優先日】2015年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】七里 徳重
(72)【発明者】
【氏名】会田 哲也
【審査官】 辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102181019(CN,A)
【文献】 特許第5741984(JP,B2)
【文献】 特開2014−065787(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/061634(WO,A1)
【文献】 特開2015−000878(JP,A)
【文献】 特開2013−023630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10
H01L 51/44
H01L 51/50
H05B 33/04
H05B 33/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット法による塗布に用いられる電子デバイス用封止剤であって、
重合性化合物と光ラジカル重合開始剤とを含有し、
前記重合性化合物は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつ、主鎖にポリオキシアルキレン骨格を有する多官能(メタ)アクリル化合物と、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個以上のカチオン重合性基を有する単官能(メタ)アクリル化合物とを含有し、
前記単官能(メタ)アクリル化合物の有するカチオン重合性基が、エポキシ基又はオキセタニル基であり、
E型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定した粘度が5mPa・s以上、200mPa・s以下であ
ことを特徴とする電子デバイス用封止剤。
【請求項2】
多官能(メタ)アクリル化合物と単官能(メタ)アクリル化合物との含有割合が、重量比で、多官能(メタ)アクリル化合物:単官能(メタ)アクリル化合物=7:3〜3:7であることを特徴とする請求項1記載の電子デバイス用封止剤。
【請求項3】
光ラジカル重合開始剤の含有量が、重合性化合物100重量部に対して、0.5〜20重量部であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子デバイス用封止剤。
【請求項4】
インクジェット法により、請求項1、2又は3記載の電子デバイス用封止剤を基材に塗布する工程と、塗布した電子デバイス用封止剤を光照射により硬化させる工程とを有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法により容易に塗布することができ、接着性に優れ、アウトガスの発生を抑制し、残留応力を低減できる電子デバイス用封止剤に関する。また、本発明は、該電子デバイス用封止剤を用いる電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELともいう)表示素子や有機薄膜太陽電池素子等の有機薄膜素子を用いた電子デバイスの研究が進められている。有機薄膜素子は真空蒸着や溶液塗布等により簡便に作製できるため、生産性にも優れる。
【0003】
有機EL表示素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された積層体構造を有し、この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して発光する。このように有機EL表示素子は自己発光を行うことから、バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、薄型化が可能であり、しかも直流低電圧駆動が可能であるという利点を有している。
【0004】
有機薄膜太陽電池素子は、無機半導体を使用した太陽電池に比べ、コスト、大面積化、製造工程の容易さ等の点で優れており、種々の構成のものが提案されている。具体的には例えば、非特許文献1には、フタロシアニン銅とペリレン系色素の積層膜を使用した有機太陽電池素子が開示されている。
【0005】
これらの有機薄膜素子は、有機層や電極が外気に曝されると、その性能が急激に劣化してしまうという問題がある。従って、安定性及び耐久性を高めるために、有機薄膜素子を封止して大気中の水分や酸素から遮断することが不可欠となる。
有機薄膜素子を封止する方法としては、従来、内部に吸水剤を設けた封止缶によって封止する方法が一般的であった。しかしながら、封止缶により封止する方法では、電子デバイスを薄型化することが困難となる。そこで、封止缶を使用しない有機薄膜素子の封止方法の開発が進められている。
【0006】
特許文献1には、有機EL表示素子の有機発光材料層と電極とを、CVD法により形成した窒化珪素膜と樹脂膜との積層膜により封止する方法が開示されている。ここで樹脂膜は、窒化珪素膜の内部応力による有機層や電極への圧迫を防止する役割を有する。
【0007】
特許文献1に開示された窒化珪素膜で封止を行う方法では、有機薄膜素子の表面の凹凸や異物の付着、内部応力によるクラックの発生等により、窒化珪素膜を形成する際に有機薄膜素子を完全に被覆できないことがある。窒化珪素膜による被覆が不完全であると、水分が窒化珪素膜を通して有機層内に浸入してしまう。
有機層内への水分の浸入を防止するための方法として、特許文献2には、無機材料膜と樹脂膜とを交互に蒸着する方法が開示されており、特許文献3や特許文献4には、無機材料膜上に樹脂膜を形成する方法が開示されている。
【0008】
樹脂膜を形成する方法として、インクジェット法を用いて基材上に低粘度の封止剤を塗布した後、該封止剤を硬化させる方法がある。このようなインクジェット法による塗布方法を用いれば、高速かつ均一に樹脂膜を形成することができる。しかしながら、インクジェット法による塗布に適したものとするために封止剤を低粘度となるようにした場合、アウトガスが発生したり、架橋度が高すぎ、硬化収縮による残留応力によって接着性の低下や電子デバイスの故障が生じたりする等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−223264号公報
【特許文献2】特表2005−522891号公報
【特許文献3】特開2001−307873号公報
【特許文献4】特開2008−149710号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Applied Physics Letters(1986、Vol.48、P.183)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、インクジェット法により容易に塗布することができ、接着性に優れ、アウトガスの発生を抑制し、残留応力を低減できる電子デバイス用封止剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該電子デバイス用封止剤を用いる電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、インクジェット法による塗布に用いられる電子デバイス用封止剤であって、重合性化合物と光ラジカル重合開始剤とを含有し、上記重合性化合物は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつ、主鎖にポリオキシアルキレン骨格を有する多官能(メタ)アクリル化合物と、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個以上のカチオン重合性基を有する単官能(メタ)アクリル化合物とを含有する電子デバイス用封止剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0013】
本発明者らは、電子デバイス用封止剤に用いる重合性化合物として、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつ、主鎖にポリオキシアルキレン骨格を有する多官能(メタ)アクリル化合物と、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個以上のカチオン重合性基を有する単官能(メタ)アクリル化合物とを組み合わせて用いることにより、得られる封止剤を、インクジェット法により容易に塗布することができ、接着性に優れ、アウトガスの発生を抑制し、残留応力を低減できるものとすることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
本発明の電子デバイス用封止剤は、重合性化合物を含有する。
上記重合性化合物は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつ、主鎖にポリオキシアルキレン骨格を有する多官能(メタ)アクリル化合物(以下、「本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物」ともいう)を含有する。本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物を含有することにより、本発明の電子デバイス用封止剤は、インクジェット法による塗布性や成膜性に優れるものとなる。また、本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物は、得られる電子デバイス用封止剤の耐熱性を向上させる効果も有する。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0015】
本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物は、主鎖にポリオキシアルキレン骨格を有する。本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物の有するポリオキシアルキレン骨格は、インクジェット法による本発明の電子デバイス用封止剤の塗布性を向上させる役割を有する。また、上記ポリオキシアルキレン骨格は、インクジェット装置のヘッド部分等に用いられている接着剤やゴム材料を膨潤させる等の装置へのダメージを低減したり、無機材料膜に対する濡れ性や塗布後及び硬化後の平坦性を向上させたりする効果も有する。
【0016】
本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物の有するポリオキシアルキレン骨格は、インクジェット法による塗布性や接着性や硬化物の柔軟性により優れるものとなることから、オキシアルキレン単位が2〜6個連続したものであることが好ましい。
【0017】
本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物の有する上記ポリオキシアルキレン骨格を構成するオキシアルキレン単位としては、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位等が挙げられる。
【0018】
本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物は、得られる電子デバイス用封止剤をインクジェット法に好適な粘度にすることが容易となる等の観点から、炭素鎖の分岐が少ない構造であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
【0019】
本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物としては、具体的には例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0020】
本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物の含有量は、重合性化合物全体100重量部に対して、好ましい下限が10重量部、好ましい上限が90重量部である。本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる電子デバイス用封止剤がインクジェット法による塗布性、インクジェット装置へのダメージを低減する効果、並びに、無機材料膜に対する濡れ性や塗布後及び硬化後の平坦性を向上させる効果により優れるものとなる。本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物の含有量のより好ましい下限は40重量部、より好ましい上限は70重量部である。
【0021】
上記重合性化合物は、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個以上のカチオン重合性基を有する単官能(メタ)アクリル化合物(以下、単に「本発明にかかる単官能(メタ)アクリル化合物」ともいう)を含有する。本発明にかかる単官能(メタ)アクリル化合物を含有することにより、本発明の電子デバイス用封止剤は、柔軟性が向上し残留応力が低減されることにより、接着性に優れるものとなる。また、本発明にかかる単官能(メタ)アクリル化合物は分子内にカチオン重合性基を有するため、原料に含まれる酸性分や、樹脂の分解により発生する酸をトラップすることにより、得られる電子デバイス用封止剤のアウトガスを低減する効果も有する。
【0022】
本発明にかかる単官能(メタ)アクリル化合物が有するカチオン重合性基としては、例えば、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタニル基、アリルエーテル基、ビニル基、水酸基等が挙げられる。
【0023】
本発明にかかる単官能(メタ)アクリル化合物としては、具体的には例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、3−エチル−3−(メタ)アクリルオキシメチルオキセタン、アリル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
本発明にかかる単官能(メタ)アクリル化合物の含有量は、重合性化合物全体100重量部に対して、好ましい下限が10重量部、好ましい上限が90重量部である。本発明にかかる単官能(メタ)アクリル化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる電子デバイス用封止剤が柔軟性、接着性、及び、低アウトガス性により優れるものとなる。本発明にかかる単官能(メタ)アクリル化合物の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は50重量部である。
【0025】
本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物と本発明にかかる単官能(メタ)アクリル化合物との含有割合は、重量比で、多官能(メタ)アクリル化合物:単官能(メタ)アクリル化合物=7:3〜3:7であることが好ましい。本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物と本発明にかかる単官能(メタ)アクリル化合物との含有割合がこの範囲とすることにより、得られる電子デバイス用封止剤が、インクジェット法による塗布性、成膜性、耐熱性、接着性、柔軟性をより優れるものとすることができる。本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物と本発明にかかる単官能(メタ)アクリル化合物との含有割合は、重量比で、多官能(メタ)アクリル化合物:単官能(メタ)アクリル化合物=6:4〜4:6であることがより好ましい。
【0026】
上記重合性化合物は、本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物や本発明にかかる単官能(メタ)アクリル化合物に加えて、粘度調整や接着性をより向上させる等の目的で、その他の重合性化合物を含有してもよい。
上記その他の重合性化合物としては、本発明にかかる多官能(メタ)アクリル化合物及び本発明にかかる単官能(メタ)アクリル化合物以外のその他の(メタ)アクリル化合物や、エポキシ化合物や、オキセタン化合物や、ビニルエーテル化合物等のその他のカチオン重合性化合物等が挙げられるが、低アウトガス性等の観点から上記その他のカチオン重合性化合物は含有しないことが好ましい。上記その他のカチオン重合性化合物を含有する場合、上記その他のカチオン重合性化合物の含有量は、重合性化合物全体100重量部に対して、好ましい上限が1重量部である。
【0027】
上記その他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アリレート等が挙げられる。これらのその他の(メタ)アクリル化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0028】
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールO型エポキシ樹脂、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。なかでも、脂環式エポキシ樹脂が好ましい。
上記脂環式エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、セロキサイド2000、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド3000、セロキサイド8000、サイクロマーM100(いずれも、ダイセル社製)、サンソサイザーEPS(新日本理化工業社製)等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0029】
上記オキセタン化合物としては、例えば、フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−((2−エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン、3−エチル−3−((3−(トリエトキシシリル)プロポキシ)メチル)オキセタン、3−エチル−3−(((3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ)メチル)オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン、1,4−ビス(((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン等が挙げられる。これらのオキセタン化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0030】
上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、ベンジルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジシクロペンタジエンビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。これらのビニルエーテル化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0031】
上記その他の重合性化合物の含有量は、重合性化合物全体100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。上記その他の重合性化合物の含有量がこの範囲であることにより、アウトガスを多量に発生させたり、応力緩和性を悪化させたりすることなく、粘度調整や接着性をより向上させる等の効果を発揮することができる。上記その他の重合性化合物の含有量のより好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は10重量部である。
なお、上述したように、上記その他のカチオン重合性化合物を含有する場合、上記その他のカチオン重合性化合物の含有量は、重合性化合物全体100重量部に対して、好ましい上限が1重量部である。
【0032】
本発明の電子デバイス用封止剤は、光ラジカル重合開始剤を含有する。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0033】
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE 184、IRGACURE 369、IRGACURE 379、IRGACURE 651、IRGACURE 819、IRGACURE 907、IRGACURE 2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO(いずれもBASF社製)、ベンソインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
【0034】
上記光ラジカル重合開始剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が20重量部である。上記光ラジカル重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、低粘度である本発明の電子デバイス用封止剤がインクジェット法による塗布後に濡れ広がって硬化阻害の原因となる酸素と接触する面積が大きくなっても充分に硬化させることができ、アウトガスの発生を抑制しつつ均一な硬化物を得ることができる。上記光ラジカル重合開始剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0035】
本発明の電子デバイス用封止剤は、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、本発明の電子デバイス用封止剤と基板等との接着性を向上させる役割を有する。
【0036】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記シランカップリング剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、余剰のシランカップリング剤がブリードアウトすることを抑制しつつ、接着性を向上させる効果を発揮することができる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0038】
本発明の電子デバイス用封止剤は、更に、本発明の目的を阻害しない範囲において、表面改質剤を含有してもよい。上記表面改質剤を含有することにより、本発明の電子デバイス用封止剤に塗膜の平坦性を付与することができる。
上記表面改質剤としては、例えば、界面活性剤やレベリング剤等が挙げられる。
【0039】
上記表面改質剤としては、例えば、シリコーン系やフッ素系等のものが挙げられる。
上記表面改質剤のうち市販されているものとしては、例えば、BYK−340、BYK−345(いずれもビックケミー・ジャパン社製)、サーフロンS−611(AGCセイミケミカル社製)等が挙げられる。
【0040】
本発明の電子デバイス用封止剤は、粘度調整等を目的として有機溶剤を含有してもよいが、有機EL表示素子に用いた場合に残存した有機溶剤により有機発光材料層が劣化したり、アウトガスを発生させたりする等の問題があるため、有機溶剤は含有しないことが好ましい。
【0041】
また、本発明の電子デバイス用封止剤は、必要に応じて、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0042】
本発明の電子デバイス用封止剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
【0043】
本発明の電子デバイス用封止剤は、E型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定した粘度の好ましい下限が5mPa・s、好ましい上限が200mPa・sである。上記電子デバイス用封止剤の粘度がこの範囲であることにより、インクジェット法による塗布性により優れるものとなる。上記電子デバイス用封止剤の粘度のより好ましい下限は10mPa・s、より好ましい上限は80mPa・s、更に好ましい上限は30mPa・sである。
なお、インクジェット法による塗布時に本発明の電子デバイス用封止剤を加熱し、粘度を低くして塗布しても良い。
【0044】
本発明の電子デバイス用封止剤の硬化物の波長380〜800nmにおける光の全光線透過率の好ましい下限は80%である。上記全光線透過率が80%以上であることにより、得られる有機EL表示素子等の電子デバイスが光学特性により優れるものとなる。上記全光線透過率のより好ましい下限は85%である。
上記全光線透過率は、例えば、AUTOMATIC HAZE MATER MODEL TC=III DPK(東京電色社製)等の分光計を用いて測定することができる。
【0045】
本発明の電子デバイス用封止剤は、硬化物に紫外線を100時間照射した後の400nmにおける透過率が20μmの光路長にて85%以上であることが好ましい。上記紫外線を100時間照射した後の透過率が85%以上であることにより、透明性が高く、発光の損失が小さくなり、かつ、色再現性により優れるものとなる。上記紫外線を100時間照射した後の透過率のより好ましい下限は90%、更に好ましい下限は95%である。
上記紫外線を照射する光源としては、例えば、キセノンランプ、カーボンアークランプ等、従来公知の光源を用いることができる。
【0046】
本発明の電子デバイス用封止剤は、JIS Z 0208に準拠して、硬化物を85℃、85%RHの環境下に24時間暴露して測定した100μm厚での透湿度が100g/m以下であることが好ましい。上記透湿度が100g/m以下であることにより、例えば、電子デバイスとして有機EL表示素子の製造に用いた場合、有機発光材料層に水分が到達してダークスポットが発生することを防止する効果により優れるものとなる。
【0047】
更に、本発明の電子デバイス用封止剤は、硬化物を85℃、85%RHの環境下に24時間暴露したときに、硬化物の含水率が0.5%未満であることが好ましい。上記硬化物の含水率が0.5%未満であることにより、例えば、電子デバイスとして有機EL表示素子の製造に用いた場合、硬化物中の水分による有機発光材料層の劣化を防止する効果により優れるものとなる。上記硬化物の含水率のより好ましい上限は0.3%である。
上記含水率の測定方法としては、例えば、JIS K 7251に準拠してカールフィッシャー法により求める方法や、JIS K 7209−2に準拠して吸水後の重量増分を求める等の方法が挙げられる。
【0048】
本発明の電子デバイス用封止剤は、インクジェット法による塗布に用いられる。
インクジェット法により、本発明の電子デバイス用封止剤を基材に塗布する工程と、塗布した電子デバイス用封止剤を光照射により硬化させる工程とを有する電子デバイスの製造方法もまた、本発明の1つである。
なお、本発明の電子デバイス用封止剤を硬化させる際には、光照射に加えて加熱により硬化させてもよい。
【0049】
本発明の電子デバイス用封止剤を基材に塗布する工程において、本発明の電子デバイス用封止剤は、基材の全面に塗布してもよく、基材の一部に塗布してもよい。例えば、電子デバイスとして有機EL表示素子を製造する場合、塗布により形成される本発明の電子デバイス用封止剤の封止部の形状としては、有機発光材料層を有する積層体を外気から保護しうる形状であれば特に限定されず、該積層体を完全に被覆する形状であってもよいし、該積層体の周辺部に閉じたパターンを形成してもよいし、該積層体の周辺部に一部開口部を設けた形状のパターンを形成してもよい。
【0050】
上記電子デバイス用封止剤を光照射により硬化させる場合、本発明の電子デバイス用封止剤は、300nm〜400nmの波長及び300〜3000mJ/cmの積算光量の光を照射することによって好適に硬化させることができる。
【0051】
本発明の電子デバイス用封止剤に光を照射するための光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
これらの光源は、上記光ラジカル重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜選択される。
【0052】
本発明の電子デバイス用封止剤への光の照射手段としては、例えば、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射、同時照射と逐次照射との組み合わせ照射等が挙げられ、いずれの照射手段を用いてもよい。
【0053】
上記電子デバイス用封止剤を光照射により硬化させる工程により得られる硬化物は、更に無機材料膜で被覆されてもよい。
上記無機材料膜を構成する無機材料としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、窒化珪素(SiN)や酸化珪素(SiO)等が挙げられる。上記無機材料膜は、1層からなるものであってもよく、複数種の層を積層したものであってもよい。また、上記無機材料膜と本発明の電子デバイス用封止剤からなる樹脂膜とを、交互に繰り返して上記積層体等を被覆してもよい。
【0054】
本発明の電子デバイスの製造方法は、本発明の電子デバイス用封止剤を塗布した基材(以下、「一方の基材」ともいう)と他方の基材とを貼り合わせる工程を有していてもよい。
上記電子デバイスとして有機EL表示素子を製造する場合、上記一方の基材は、有機発光材料層を有する積層体の形成されている基材であってもよく、該積層体の形成されていない基材であってもよい。
上記一方の基材が上記積層体の形成されていない基材である場合、上記他方の基材を貼り合わせた際に、上記積層体を外気から保護できるように本発明の電子デバイス用封止剤を塗布すればよい。即ち、上記他方の基材を貼り合わせた際に上記積層体の位置となる場所に全面的に塗布するか、又は、上記他方の基材を貼り合わせた際に上記積層体の位置となる場所が完全に収まる形状に、閉じたパターンの封止剤部を形成してもよい。
【0055】
上記電子デバイス用封止剤を光照射により硬化させる工程は、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の前に行なってもよいし、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の後に行なってもよい。
上記電子デバイス用封止剤を光照射により硬化させる工程を、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の前に行なう場合、本発明の電子デバイス用封止剤は、光照射してから硬化反応が進行して接着ができなくなるまでの可使時間が1分以上であることが好ましい。上記可使時間が1分以上であることにより、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる前に硬化が進行し過ぎることなく、より高い接着強度を得ることができる。
【0056】
上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程において、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる方法は特に限定されないが、減圧雰囲気下で貼り合わせることが好ましい。
上記減圧雰囲気下の真空度の好ましい下限は0.01kPa、好ましい上限は10kPaである。上記減圧雰囲気下の真空度がこの範囲であることにより、真空装置の気密性や真空ポンプの能力から真空状態を達成するのに長時間を費やすことなく、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる際の本発明の電子デバイス用封止剤中の気泡をより効率的に除去することができる。
【0057】
本発明の電子デバイス用封止剤は、特に有機EL表示素子用封止剤として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、インクジェット法により容易に塗布することができ、接着性に優れ、アウトガスの発生を抑制し、残留応力を低減できる電子デバイス用封止剤を提供することができる。また、本発明によれば、該電子デバイス用封止剤を用いる電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0060】
(実施例1〜13、比較例1〜4)
表1、2に記載された配合比に従い、各材料を、ホモディスパー型撹拌混合機(プライミクス社製、「ホモディスパーL型」)を用い、撹拌速度3000rpmで均一に撹拌混合することにより、実施例1〜13、比較例1〜4の各電子デバイス用封止剤を作製した。
【0061】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用封止剤について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0062】
(粘度)
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用封止剤について、E型粘度計(東機産業社製、「VISCOMETER TV−22」)を用いて、25℃、100rpmの条件における粘度を測定した。
【0063】
(濡れ広がり性)
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用封止剤を、インクジェット吐出装置(マイクロジェット社製、「NanoPrinter300」)を用いて、80ピコリットルの液滴量にてアルカリ洗浄した無アルカリガラス(旭硝子社製、「AN100」)上に印刷し、10分後に無アルカリガラス上の液滴の直径を測定した。
液滴の直径が400μm以上であった場合を「○」、液滴の直径が200μm以上400μm未満であった場合を「△」、液滴の直径が200μm未満であった場合を「×」として濡れ広がり性を評価した。
【0064】
(接着性)
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用封止剤を、スピンコーターを用いて、無アルカリガラス(旭硝子社製、「AN100」)上に10μmの厚みに塗布し、LEDランプを用いて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm照射して電子デバイス用封止剤を硬化させ、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜に対し、JIS K 5600−5−6に従い、切込み間隔1mmのクロスカット試験を行った。
クロスカット試験を行った際の、剥がれが0%であった場合を「○」、剥がれが0%を超え10%以下であった場合を「△」、剥がれが10%を超えた場合を「×」として接着性を評価した。
【0065】
(低アウトガス性)
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用封止剤の加熱時のアウトガスをヘッドスペース法によるガスクロマトグラフにより測定した。ヘッドスペース用バイアルに各電子デバイス用封止剤を100mg入れ、LEDランプを用いて波長365nmの紫外線を1500mJ/cm照射して封止剤を硬化させた後、バイアルを封止し、100℃で100時間加熱して、ヘッドスペース法により発生ガスを測定した。
発生したガスが300ppm以下であった場合を「○」、300ppmを超え500ppm未満であった場合を「△」、500ppm以上であった場合を「×」として低アウトガス性を評価した。
【0066】
(有機EL表示素子の表示性能)
(有機発光材料層を有する積層体が配置された基板の作製)
ガラス基板(長さ25mm、幅25mm、厚さ0.7mm)にITO電極を1000Åの厚さで成膜したものを基板とした。上記基板をアセトン、アルカリ水溶液、イオン交換水、イソプロピルアルコールにてそれぞれ15分間超音波洗浄した後、煮沸させたイソプロピルアルコールにて10分間洗浄し、更に、UV−オゾンクリーナ(日本レーザー電子社製、「NL−UV253」)にて直前処理を行った。
次に、この基板を真空蒸着装置の基板フォルダに固定し、素焼きの坩堝にN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)を200mg、他の異なる素焼き坩堝にトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)を200mg入れ、真空チャンバー内を、1×10−4Paまで減圧した。その後、α−NPDの入った坩堝を加熱し、α−NPDを蒸着速度15Å/sで基板に堆積させ、膜厚600Åの正孔輸送層を成膜した。次いで、Alqの入った坩堝を加熱し、15Å/sの蒸着速度で膜厚600Åの有機発光材料層を成膜した。その後、正孔輸送層及び有機発光材料層が形成された基板を別の真空蒸着装置に移し、この真空蒸着装置内のタングステン製抵抗加熱ボートにフッ化リチウム200mgを、別のタングステン製ボートにアルミニウム線1.0gを入れた。その後、真空蒸着装置の蒸着器内を2×10−4Paまで減圧してフッ化リチウムを0.2Å/sの蒸着速度で5Å成膜した後、アルミニウムを20Å/sの速度で1000Å成膜した。窒素により蒸着器内を常圧に戻し、10mm×10mmの有機発光材料層を有する積層体が配置された基板を取り出した。
【0067】
(無機材料膜Aによる被覆)
得られた積層体が配置された基板の、該積層体全体を覆うように、13mm×13mmの開口部を有するマスクを設置し、プラズマCVD法にて無機材料膜Aを形成した。
プラズマCVD法は、原料ガスとしてSiHガス及び窒素ガスを用い、各々の流量をSiHガス10sccm、窒素ガス200sccmとし、RFパワーを10W(周波数2.45GHz)、チャンバー内温度を100℃、チャンバー内圧力を0.9Torrとする条件で行った。
形成された無機材料膜Aの厚さは、約1μmであった。
【0068】
(樹脂保護膜の形成)
得られた基板に対し、実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用封止剤を、インクジェット吐出装置(マイクロジェット社製、「NanoPrinter300」)を使用して基板にパターン塗布した。
その後、LEDランプを用いて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm照射して電子デバイス用封止剤を硬化させて樹脂保護膜を形成した。
【0069】
(無機材料膜Bによる被覆)
樹脂保護膜を形成した後、該樹脂保護膜の全体を覆うように、12mm×12mmの開口部を有するマスクを設置し、プラズマCVD法にて無機材料膜Bを形成して有機EL表示素子を得た。
プラズマCVD法は、上記「(無機材料膜Aによる被覆)」と同様の条件で行った。
形成された無機材料膜Bの厚さは、約1μmであった。
【0070】
(有機EL表示素子の発光状態)
得られた有機EL表示素子を、温度85℃、湿度85%の環境下で100時間暴露した後、3Vの電圧を印加し、有機EL表示素子の発光状態(ダークスポット及び画素周辺消光の有無)を目視で観察した。ダークスポットや周辺消光が無く均一に発光した場合を「○」、ダークスポットや周辺消光が認められた場合を「△」、非発光部が著しく拡大した場合を「×」として有機EL表示素子の表示性能を評価した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、インクジェット法により容易に塗布することができ、接着性に優れ、アウトガスの発生を抑制し、残留応力を低減できる電子デバイス用封止剤を提供することができる。また、本発明によれば、該電子デバイス用封止剤を用いる電子デバイスの製造方法を提供することができる。