特許第6804983号(P6804983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804983材料を熱接触処理する装置及び方法及びそれにより製造された熱分解油
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804983
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】材料を熱接触処理する装置及び方法及びそれにより製造された熱分解油
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20201214BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20201214BHJP
   C10G 1/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B01J19/00 301D
   B09B3/00 302Z
   C10G1/00 BZAB
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-562848(P2016-562848)
(86)(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公表番号】特表2017-517384(P2017-517384A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】EP2015058102
(87)【国際公開番号】WO2015158732
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2018年2月6日
(31)【優先権主張番号】102014105340.0
(32)【優先日】2014年4月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】サミール ビンダー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヤクティス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス アプフェルバッハー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ホアヌング
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−517470(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/047283(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102186948(CN,A)
【文献】 特表2005−537368(JP,A)
【文献】 特開2000−248282(JP,A)
【文献】 特開2000−218259(JP,A)
【文献】 特開2012−136672(JP,A)
【文献】 特開平04−180878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J19/00
B09B1/00−5/00
C10G1/00
C02F11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
処理されるべき出発材料を供給するための供給領域(10)と、
前記出発材料から前コンディショニングされた材料を生成する前コンディショニング区域(20)と、
前記前コンディショニングされた材料から熱分解された材料を生成する熱分解区域(30)と、
得られた熱分解された材料を分離するための分離ユニット(50)とを備えた、材料を熱接触処理する装置において、
前記前コンディショニング区域(20)内に、前記出発材料を少なくとも150℃の温度に加熱するための第1の加熱手段および前記出発材料を前記熱分解区域(30)に搬送するための運搬手段が設けられていて、かつ前記熱分解区域(30)内に、前記前コンディショニングされた材料を少なくとも350℃の温度に更に加熱するための第2の加熱手段及び更に前記熱分解区域(30)内に返送手段(31)が設けられていて、前記返送手段(31)によって、少なくとも熱分解された材料の固形分を、少なくとも部分的に、前記熱分解区域(30)の前記前コンディショニング区域(20)側の領域(32)内に直接返送可能である結果、前記返送手段(31)は、返送された材料とも、熱分解されるべき材料とも直接接触する、前記装置。
【請求項2】
少なくとも、前記熱分解区域(30)の前記前コンディショニング区域(20)側の前記領域(32)内で、前記返送手段(31)は、熱分解された材料と前コンディショニングされた材料との混合を行うことができるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記熱分解区域(30)内で、前記返送手段(31)は、前記熱分解区域内での熱分解されるべき材料の滞留時間に影響を及ぼすことができるように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、第1の運転状態及び第2の運転状態で運転可能であり、第1の運転状態では、前記前コンディショニングされた材料の送りを行い、かつ前記熱分解区域(30)内に存在する材料を主に前記分離ユニット(50)の方向に動かし、かつ第2の運転状態では主に、熱分解された材料を、前記熱分解区域(30)の前記前コンディショニング区域(20)側の前記領域(32)内へ返送することだけを行うことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記供給領域(10)及び/又は前記前コンディショニング区域(20)内に不活性ガス導管が設けられていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記前コンディショニング区域(20)と前記熱分解区域(30)とは相互に移行していて、1つの管型反応器内に配置されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記熱分解区域(30)と前記分離ユニット(50)との間に、前記熱分解された材料の仕上げを行うための後コンディショニング区域(40)が設けられていて、前記後コンディショニング区域(40)内には、前記熱分解された材料の少なくとも固形分の温度を上昇させるか又は保持するための第3の加熱手段が設けられていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記運搬手段は、コンベアスクリュー、又はベルトコンベアであることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記返送手段(31)はシャフト(61)及び/又は前記熱分解区域(30)の反応器内壁に配置されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記返送手段(31)は、バックミキシングするスクリューエレメント、反対方向に回転するスクリューエレメント、返送ウェブ及び/又は返送フックを含むことを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記熱分解区域(30)の縦軸は、水平面に対して0°〜45°の角度だけ傾斜していることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
次の工程:
A) 処理されるべき出発材料を少なくとも150℃の温度に加熱することにより、前コンディショニングされた材料を生成する、前コンディショニング区域(20)内で前記出発材料を前コンディショニングする工程、
B) 前記前コンディショニングされた材料を、250℃〜700℃の温度に加熱することにより、熱分解された材料を生成し、ここで、熱分解されるべき材料の熱分解区域(30)内での滞留時間は、1分〜1時間である、前記熱分解区域(30)内でほぼ酸素の不存在で前記前コンディショニングされた材料を熱分解する工程、
ここで、前記熱分解は、連続的に又は部分連続的に熱分解された材料を、返送手段(31)によって前記熱分解区域(30)の前記前コンディショニング区域(20)側の領域(32)内に直接返送し、少なくとも前記熱分解区域(30)の前記前コンディショニング区域(20)側の前記領域(32)内で前記熱分解された材料と前記前コンディショニングされた材料との混合を行うように行われ、かつ前記返送手段(31)は、返送された材料とも、熱分解されるべき材料とも直接接触し、
少なくとも、前記前コンディショニング区域(20)内に、前記出発材料を前記熱分解区域(30)に搬送するための運搬手段が設けられている、
D) 分離ユニット(50)内で前記熱分解された材料を分離する工程
を含む、材料を熱接触処理する方法。
【請求項13】
工程B)を、第1の運転状態では、前記前コンディショニングされた材料の前記熱分解区域(30)への送りを行いかつ前記熱分解区域(30)内に存在する材料を主に前記分離ユニット(50)の方向へ動かし、かつ第2の運転状態では、前記前コンディショニングされた材料の前記熱分解区域(30)内への送りを行わず、かつ主に熱分解された材料の、前記熱分解区域(30)の前記前コンディショニング区域(20)側の前記領域(32)内への返送を行うように実施することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程B)と工程D)との間に、次の工程:C)後コンディショニング区域(40)中で350℃〜800℃の温度での、前記熱分解された材料の少なくとも固形分の後コンディショニングを実施することを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記出発材料が、次の化学元素:亜鉛、鉄、白金、レニウム、クロム、銅、マンガン、ニッケル、チタン、アルミニウム、ケイ素の少なくとも1つを、単体の形、イオンの形又は結合した形で、少なくとも微量で含むことを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
出発材料として、10質量%より多い含水率を示す材料を使用することを特徴とする、請求項12から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
工程B)において、前記熱分解区域(30)内で1〜10℃/sの加熱速度が調節されることを特徴とする、請求項12から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
1mmより大きい平均粒子サイズを示す出発材料を使用することを特徴とする、請求項12から17までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料を熱接触処理(thermokatalytische Behandlung)する装置及びその方法、並びにそれにより製造された熱分解油に関する。
【0002】
熱分解は、炭素含有出発材料、例えばバイオマスから、熱分解生成物としての液状熱分解濃縮物(熱分解油)、固体熱分解コークス及び熱分解ガスへの熱による反応に利用され、かつ酸素遮断下で又は少なくともほぼ酸素の不存在で行われる。この熱分解は、通常では吸熱プロセスであるが、しかしながら個々の部分工程は発熱性に進行することもある。上述の熱分解生成物の割合は、一方で出発材料の選択により(及び特に出発材料の残留水分によっても)、他方で取り巻く方法条件、特に熱分解温度、熱分解時間(滞留時間)並びに加熱速度及び冷却速度により影響を及ぼされる。
【0003】
頻繁に、熱分解反応の熱必要量は、熱分解コークスなどの燃焼により及び/又は熱分解ガスの燃焼によりまかなうことができる。
【0004】
それゆえ、この熱分解は、270〜1030℃の温度で酸素の不存在での特別な条件下で、広範囲な用途のために需要に応じた生成物、例えばガス、油又は炭を製造することができる方法である。この熱分解は、主に使用した出発材料の加熱速度に依存して、急速熱分解(flash及びfast pyrolysis)と低速熱分解(slow pyrolysis)とに区別される。
【0005】
この急速熱分解は、液状生成物に関して最大の収率を目指す。この場合、45%までの液状生成物が得られる。このために、使用するバイオマスを数秒間で熱分解しなければならず;従って、高熱区域内での固体の滞留時間も同様に数秒間である。低速熱分解(乾留も)は、数十年来、炭の製造のために利用されている。ここでは、熱分解区域内での熱分解されるべき材料の滞留時間は数時間から数日である。炭に関して最大の割合を達成するために加熱速度は遅い。この場合、<25%の水分含有率を示す出発材料、特に木材が利用される;出発材料としての他の生物由来材料にとって、この方法は適していないか又はあまり適していない。
【0006】
上述の熱分解法とは別の選択肢は、中程度の温度範囲で中程度の滞留時間での熱分解である。国際公開第2010/130988号(WO 2010/130988 A1)は、使用した出発材料の粒子直径に依存して滞留時間が数分であることができるこの種の方法を開示している。この熱分解は、ここではタール含有率が低減された生成物を生じる。
【0007】
国際公開第2009/138757号(WO 2009/138757 A2)は、熱分解反応器を開示しており、ここでは出発材料をコンベヤスクリューによって反応器を通過するように搬送し、その際に同時に熱分解する。熱分解区域の終端で、ガス状の熱分解蒸気を取り出し;熱分解されるべき出発材料中への熱導入の改善を実現するために、生じる炭を熱媒体として外部スクリューを介して熱分解区域の始端部に送り返す。この場合、外部スクリューの回転速度によって、新たな出発材料に対する炭の比率を調節することができ;内部スクリューの回転速度によって、熱分解区域内の滞留時間を調節することができる。
【0008】
本発明の基礎となる課題は、従来技術による熱分解法を改善し、かつ生成される生成物スペクトルに関して更に適切に影響を及ぼすことができる装置並びに方法を提供することである。他の課題は、熱分解法を用いて高価値の熱分解生成物、特に高められた発熱量を示すガス状熱分解生成物及び/又は、少なくとも他の油と混合して燃料として、例えばバイオディーゼルとして適する液状熱分解油及び/又は肥料又は土壌改良剤として適する固体熱分解生成物を得ることである。
【0009】
これらの課題の少なくとも1つは、独立請求項に記載の装置、方法及び熱分解油により解決される。従属請求項、後続する記載及び実施例及び図面は、有利な態様を教示する。
【0010】
材料、特に廃棄材料を熱接触処理する装置は、供給領域、前コンディショニング区域、熱分解区域及び分離ユニットを含む。供給領域内で、処理されるべき出発材料が本来の熱分解装置に供給される。前コンディショニング区域内には第1の加熱手段が配置されていて、この第1の加熱手段によって、供給された出発材料を少なくとも150℃の温度に加熱することができ、ここで前コンディショニングされた材料が生成される。
熱分解区域内には第2の加熱手段が配置されていて、この第2の加熱手段によって、前コンディショニングされた材料を少なくとも350℃の温度に加熱することができる。更に、この熱分解区域内には返送手段が設けられていて、この返送手段により、(特にこの熱分解区域の下流部分で)生成された熱分解材料の固形分を少なくとも部分的に、熱分解区域の、前コンディショニング区域側の領域に(つまり熱分解区域の上流部分に)返送することができる。この返送手段は、この場合、固形分の返送を、直接の経路で(つまり「直接」)、つまり、この固形分が熱分解区域を離れることなくかつ特に前コンディショニング区域をもう一度通過することなく行うように構成されている。換言すると、「直接」とは、この返送手段が、一方で返送される材料と、及び他方で熱分解されるべき材料と直接接触することを意味する。
分離ユニット内で、最終的に得られた熱分解された材料の分離、つまり固体成分、液体成分及び気体成分への分離が行われる。
【0011】
おのずから、この熱分解区域は、この熱分解区域から熱分解生成物のガス状成分が少なくとも下流方向に流動できるように通過可能に装置が構成されていることがわかる。当業者にとってこのために必要な措置は先行技術から公知である。
【0012】
本発明の場合に、熱分解区域内のこの返送手段によって2つの重要な利点を実現できることがわかった。
1つは、返送手段によって返送を行う方法パラメータの調節により(及び場合により付加的に、全体の装置の方法パラメータにより及び熱分解区域内の事象へのその影響により)、熱分解されるべき材料の熱分解区域中での滞留時間に、直接かつ簡単に影響を及ぼすことができることである。その他に、もちろんこの返送手段の形状によっても影響を及ぼすことができる。
もう1つは、少なくとも、熱分解された材料の固形分を熱分解区域の上流部分へ及び特に熱分解区域の始端部にまで直接返送することにより、生成したての熱分解された材料をまだ熱分解されていない前コンディショニングされた材料と即座に接触できることが保証されることである。生成したての熱分解された材料と前コンディショニングされた材料との接触は、本発明による方法で目的とする生成物スペクトルのために重要である。この方法及び上述の装置には、つまり、生成したての熱分解された材料が、その高められた表面積により(揮発相の脱ガスにより)及び前コンディショニングされた材料の熱分解のための触媒として作用し、かつ特にこの生成したての触媒が、生成され熱分解された材料の完全に変更された生成物スペクトルを引き起こすという知見が基礎となっている。特に、熱分解ガス中の明らかに高められた水素分が、極めて低い酸価の熱分解油を生成させかつ肥料又は土壌改良剤として適した固体熱分解生成物の獲得を達成することができる。
【0013】
一実施態様の場合に、この返送手段は、少なくとも熱分解区域の上流部分内で、この返送手段が熱分解された材料の返送を保証するばかりか、更に熱分解された材料と前コンディショニングされた材料との混合も可能にするように構成されている。従って、返送手段とは、本発明の範囲内で、正確には1つの具体的な返送手段であるとは解釈されず、むしろ多様な返送手段の組み合わせ、特に多様な形状の所定の返送手段タイプの組み合わせであると解釈することもできる。このように、熱分解区域の下流部分内では、主に上流部分の方向への搬送に意味があるが、上流部分内では、固体の熱分解された材料と前コンディショニングされた材料との混合に主眼が置かれる。前コンディショニング区域に直接隣接する熱分解区域の範囲内でのこの混合が特に重要である。本発明の場合に、150℃より高い温度が支配的でありかつ同時に返送手段が配置されている装置又は反応器の領域が、熱分解区域の始端部と見なされる。熱分解区域の始端部は、ただし、遅くとも(返送手段が存在していない場合でも)350℃よりも高い温度が支配的である場合には達している。(つまり、熱分解されるべき材料の温度は、大量の熱分解生成物、特にガス状の熱分解生成物が発生する程高い)。換言すると、この熱分解区域は、部分区域に細分化することができ、この場合、返送手段は、全ての部分区域内には設けられていない。しかしながら、この区域は全体の領域にわたって返送手段を有していてもよい。
【0014】
既に説明したように、本発明による装置によって、熱分解区域内での熱分解品の滞留時間を極めて大きな変動幅で調節することができる。特に、この返送手段は、装置の運転時に生成された固体の熱分解された材料の返送を連続的に行い、しかも熱分解区域の上流部分では前コンディショニングされた材料との混合を行うように構成されていてもよい。この場合、特に2つの選択肢が考えられる:
【0015】
一つは、例えば二軸スクリューを用いて連続的に返送を行うことができ、この場合、少なくとも上流部分内に混合のために必要なスクリューエレメントの空所が設けられている。
【0016】
もう一つは、第1の運転状態と、第2の運転状態とを有する装置の運転も可能である。実際の運転では、両方の運転状態の「相互の移行(ineinander Uebergehen)」により、通常では、準連続的な運転が行われる。第1の運転状態では、前コンディショニングされた材料の送り(特に前コンディショニング区域内に配置された運搬手段によって、及び/又は供給領域及び/又は前コンディショニング区域内に相応して高い圧力を生じさせることができる手段によって)が行われ;この送りにより、次いで熱分解区域内に存在する材料は本質的に分離ユニットの方向(つまり下流方向)に動かされる。
第2の運転状態では、前コンディショニングされた材料の熱分解区域内への送りを行わないか又は極めてわずかな程度で送りを行うことで、熱分解区域内の返送手段がその主目的を果たすことができ、かつ熱分解された材料は熱分解区域を通過して上流に戻し搬送される(つまり前コンディショニング区域側の、熱分解区域の領域内に)戻し搬送される。第1の運転状態と第2の運転状態とを、このために設けられた制御エレメントを用いた相応するサイクル制御により、得られる生成物スペクトルの最適化のために、熱分解区域中での熱分解品の滞留時間を正確に調節でき、かつ更に触媒(つまり熱分解された材料の固形分)と前コンディショニングされた材料との混合比も調節することができる。
【0017】
別の実施形態の場合には、本発明による装置は、供給領域及び/又は前コンディショニング区域内で、この装置がほぼ酸素不含で運転される可能性が生じるように構成されている。このため、特に不活性ガス導管などが設けられていてもよい。
【0018】
本発明による装置、及びここでもまた特にこの装置の熱分解区域は、特に多段階式スクリュー反応器又は回転管式反応器の様式に従って構築されていてよい。
【0019】
一実施形態の場合に、本発明による装置は管型反応器であってよく、この場合、前コンディショニング区域と熱分解区域とは直接相互に移行している。これにより、前コンディショニングされた材料と、熱分解区域の下流部分内で生成された固体の、触媒作用を示す熱分解生成物との効果的な接触を行うことができる。
【0020】
別の実施形態の場合には、本発明による装置中で、熱分解区域の後に後コンディショニング区域が接続されている。よって、この後コンディショニング区域は、熱分解区域と分離ユニットとの間に配置されている。後コンディショニング区域内では、熱分解された材料の仕上げを行うことができる。例えば、これは、炭の安定化(特に酸素/炭素比及び水素/炭素比の低減による)及び/又はガス状の熱分解生成物の発熱量の向上(例えば水性ガスシフト反応及び/又は水蒸気改質法による)又は生成された熱分解油の品質の向上である。従って、後コンディショニング区域内には、通常では、第3の加熱手段が配置されていて、この加熱手段によって、熱分解区域からの材料の温度を維持することができるか又は高めることができる。熱分解区域とは異なり、この後コンディショニング区域内には、通常では返送手段が配置されていない。本願の場合に、返送手段がもはや設けられていない装置又は反応器の領域が、後コンディショニング区域の始端部と見なされる。更に、この区域内では、温度は、熱分解区域内の温度よりも高くてもよく、特に700℃より高くてもよい。
【0021】
別の実施形態の場合に、本発明による装置の前コンディショニング区域内に(及びこの装置中に含まれているのなら、通常では後コンディショニング区域中でも同様に)、熱分解区域へ出発材料を搬送するための(若しくは後コンディショニング区域の場合には、熱分解された材料を分離ユニットに搬送するための)運搬手段が設けられている。運搬手段(前コンディショニング区域用の運搬手段並びに後コンディショニング区域用の運搬手段)として、コンベヤスクリュー及び/又はベルトコンベヤ、例えば、前コンディショニング区域及び場合により後コンディショニング区域の縦軸方向にほぼ沿って延びるシャフト上に配置されたコンベヤスクリューを挙げることができる。
【0022】
別の実施形態の場合には、返送手段は、熱分解区域の縦軸にほぼ沿って延びるシャフト上に配置されている。これは、特に、装置の簡単な構造を保証するために、返送手段が配置されているばかりでなく、前コンディショニング区域及び場合により存在する後コンディショニング区域の範囲内にも搬送手段(例えばコンベヤスクリュー)も配置されているシャフトである。その他に、返送手段がシャフト上にない場合には、前コンディショニング区域及び後コンディショニング区域の搬送手段だけが同じシャフト(このシャフトは通常では熱分解区域を通過して延びる)上に配置されていてもよい。
【0023】
上述の実施形態とは別の選択肢の場合に、返送手段は熱分解区域の反応器内壁に配置されていてもよい。この場合、例えば、返送手段の運動は、反応壁が回転することにより行うことができる。しかしながら、返送手段の運動はこれとは無関係に行ってもよい。これとは異なり、返送手段は、シャフトに配置された実施態様の場合に、シャフト自体により(前コンディショニング区域及び場合により後コンディショニング区域内の運搬手段と同時に)動かすことができるが、特に、例えば上述の2つの運転状態で運転する場合には、前コンディショニング区域の運搬手段とは無関係に動かすことができる。
【0024】
本発明による返送手段は、特に、バックミキシングするスクリューエレメント、反対方向に回転するスクリューエレメント、返送ウェブ(特に反応器壁部で)及び/又は返送フックであってよい。返送フックの形状は、特に、熱分解された材料と前コンディショニングされた材料との混合が、上流方向に向けられたインパルスによって保証されるように選択される。返送手段のために重要であるのは、特に、この返送手段により「対向搬送運動(Gegenfoerderbewegung)」を実現可能であるので、熱分解区域中に存在する材料流の部分流を常に熱分解区域中で上流方向に導くことができるか又は2つの運転状態での運転の際に少なくとも、2つの運転状態の一方で固体の熱分解生成物の上流への搬送が実現可能であることである。
【0025】
別の実施形態の場合に、熱接触処理のための装置は、熱分解区域の縦軸が水平面に対して傾斜する、通常では0°〜45°、特に0°〜25°、例えば0°〜10°の角度だけ傾斜するように構成されている。この傾斜は、通常の場合に、熱分解区域中に存在する材料が、(少なくとも前コンディショニング区域内で送りが行われない場合に)上流方向に動かされるように及び/又は返送手段によって容易に上流方向に搬送することができるように、熱分解区域内でこの材料に重力が作用するように選択される。
【0026】
先に定義された課題の少なくとも1つは、次の方法によっても解決される。この方法は、特に、先に記載された装置を用いて実施することができるので、先に記載された装置の全体の実施形態は、この方法についても通用するし、またその逆も通用する。
【0027】
材料、特に廃棄材料を熱接触処理する方法は、次の工程を含む:
A) 前コンディショニング
B) 熱分解
D) 分離
また、任意に、工程C)の後コンディショニングが含まれていてもよい。
【0028】
工程A)において、処理されるべき出発材料は、前コンディショニング区域内で、少なくとも150℃の温度に、大抵は250℃の温度に、頻繁には350℃の温度に加熱される。この場合、前コンディショニングされた材料が得られる。
【0029】
工程B)で、前コンディショニングされた材料は、熱分解区域内で250℃〜700℃、特に350℃〜500℃の温度に加熱される。熱分解されるべき材料の熱分解区域内での滞留時間は、この場合、1分〜1時間、特に1分〜30分、例えば5分〜15分である。熱分解区域の終端で得られる材料は、「熱分解された材料」といわれる。滞留時間とは、本願の場合に、固体粒子(例えばペレット)が熱分解区域内へ侵入してから搬出されるまでに要する固形分の平均滞留時間であると解釈される。滞留時間は、本願の場合に、寸法通りのプレキシガラスコールドモデルに関する参照方法を用いて測定される(このコールドモデルは、本発明によるモデルを、熱接触装置を構成している材料及び加熱装置を除いて複製している(特に返送手段及び場合による運搬手段に関して)。「出発材料」として、20mm〜30mmの長さを示す等級D25の木材ペレットを使用する。まず、市販の木材ペレットをコールドモデルに導入する。全ての区域が木材ペレットで満たされた後に、25個の着色された木材ペレットのバッチを供給し、この着色されたペレットのそれぞれが熱分解区域に侵入してから搬出するまでに要する時間を測定する。この平均滞留時間を、直接視覚的に測定することができる(特に、この測定が反応器直径とペレットサイズとの比率に基づき可能である場合に)。比較的大きな反応器(単なる視覚的検出は不可能)の場合に又はプレキシガラスモデルの準備に手間がかかりすぎる場合には、個々のペレットが前コンディショニング区域内へ侵入してから後コンディショニング区域から搬出されるか又は、後コンディショニング区域が存在しない場合には、熱分解区域から搬出されるまでの時間を決定し、かつ前コンディショニング区域及び場合により存在する後コンディショニング区域を通過する(一定の)通過時間を差し引くことにより、この滞留時間を間接的に測定することもできる。この平均滞留時間
【数1】
は、滞留時間tiの合計を着色されたペレットの数で割った商から生じ、この場合、前記参照方法の2つの経路が行われる:
【数2】
工程B)において、熱分解は連続的に又は部分連続的に行うことができ、この場合、部分連続的にとは、特に2つの運転状態での先に記載された運転実施に関していて、連続的にとは、熱分解された材料に関して、熱分解区域の上流領域へ常に返送することを意味する。装置に関して先に説明したように、この返送は、熱分解区域の、前コンディショニング側の領域内へ直接行われ、この場合、熱分解区域のこの上流の領域内では少なくとも熱分解された材料と前コンディショニングされた材料との混合が行われる。
【0030】
先に説明されたように、固体の熱分解された材料を、特に、熱分解されるべき前コンディショニングされた材料の分解が始まる領域内へ返送することが合目的である、というのもこの温度は既に十分に高いためである。これは、特に、前コンディショニング領域に直接後続する熱分解区域の部分である。
【0031】
先行技術の方法とは異なり、本発明による方法のためには、熱接触処理のための装置に供給される個々の熱媒体を必要としない。原則的に、熱媒体を付加的に使用することもできる。しかしながら、これは、通常の場合には必要ない、というのも、触媒作用する本発明により返送された固体の熱分解生成物が、既に熱を伝達する目的を果たしているためである。
【0032】
本発明による方法のための出発材料として、特に、廃棄物及びバイオマスが挙げられる。しかしながら、その他にも、電子部品屑、使用済プラスチック、例えば自動車タイヤなどの使用も考えられる。これらの出発材料は、炭素を基礎とする材料(つまり、乾燥状態で50質量%を越える炭素割合を有する材料)であり、例えば、バイオマスに関して、例えばセルロース含有材料などの形で存在する。頻繁に、バイオマスは、ヘミセルロース、セルロース、リグニン及び他の有機化合物(後者の他の有機化合物は大抵わずかな量でのみ含まれる)からなる混合物を含む。セルロース含有材料(これは、例えば、発酵残滓などの形で存在する)の他の出発材料用の第2の主要グループは、水肥含有生成物及び汚泥(特に廃水処理からの汚泥)を挙げることができる。しかしながら、この種の廃棄生成物の他に、原則として、葉、藁、醸造絞りかす、ブドウ絞りかす及び柑橘類果肉のような材料も出発材料として考えられる。おのずからこれらの上述の材料の相互の混合物も、又は他の材料との混合物も出発材料として適していることはわかる。上述の材料の多くは、目下のところ、費用をかけて廃棄されるか又は農業分野において「肥料」としては耕地面積の過剰栄養を引き起こす。他の面では、例えばバイオガス装置の発酵残滓中には利用可能な潜在エネルギーがまだ25%も含まれている。通常の場合に、先行技術により、この潜在エネルギーは利用されない。本発明による方法は、この種の生物由来材料の高効率の利用を提供し、この場合、専ら又は少なくとも大部分が高価値の生成物として得られる。
【0033】
一実施形態の場合に、この熱分解は、熱分解区域内で、常圧(1013hPa)で行うことができるが、この圧力はそれより高くてもよく、例えばそれより200hPa高く、又はそれより1000hPa高くてもよい。それどころか、個々の場合には、30000hPaまでの圧力が存在してもよい。本発明による装置の多様な領域又は区域内でも多様な高さで生成されていてもよいこの圧力によって、全体の装置内の送りを制御することもできる。例えば、熱分解生成物の分離を高めた圧力で行うことができるので、炭化水素は水素、二酸化炭素及び一酸化炭素の圧力管理に基づいて既に分離可能である。
【0034】
一実施形態の場合に、この方法は、工程B)において、装置に関して先に記載したように、2つの運転状態で作業するように実施される。
【0035】
他の実施形態の場合には、既に先に示唆したように、工程B)と工程D)との間に、後コンディショニングを実施し、この場合に、工程C)中の温度が工程B)中の温度よりも低くないことを条件として、熱分解された材料の少なくとも固形分が450℃〜800℃の温度で処理されるため、高価値の熱分解生成物が得られる。
【0036】
他の実施形態の場合には、これらの出発材料は、次の化学元素:亜鉛、鉄、白金、レニウム、クロム、銅、マンガン、ニッケル、チタン、アルミニウム、ケイ素の少なくとも1つが含まれているように選択される。これらの元素は単体の形で存在する必要はなく、イオンの形で存在しても、又は結合した形(例えば酸化物化合物として又は錯体の形)で存在してもよい。この種の金属は、例えば水肥などの中にしばしば含まれている、というのもこれらの金属は微量元素であるか又は他の形で物質代謝に供給されるためであるが、これらの金属は、所定の廃棄物を得る特別な製造条件に基づいて、例えば銅製の槽からの銅のように、廃棄物中に導入されることもある。本発明の場合に、特に、上述の金属の場合に、触媒としての固体熱分解生成物の優れた触媒作用が熱分解区域中で行われることが判明した。これを保証するために、これらの金属を含んでいないバイオマスに、高い金属割合を示すバイオマス、例えば水肥を、特に有効な方法の実施を保証するために添加することができる。しかしながら、その他に、特に廃棄材料(及びここではまた生物由来ではない廃棄材料)から、少量の金属を出発材料に添加してもよい。
【0037】
一実施形態の場合に、出発材料として、10質量%より多い水分含有率を示す材料が使用される。それどころか、25質量%までの水分含有率を示す材料も使用することができ;更に40質量%までの水分含有率を示す材料も使用することができる。しかしながら、本発明による方法は、熱分解生成物の熱利用による本発明による装置の加熱手段の運転に加えて、比較的湿った出発材料又は一般に目的とする生成物スペクトルのために湿りすぎの出発材料の予備乾燥が可能である限りでは、価値ある熱分解生成物を提供する。高い含水率が本発明の場合に可能である、というのも使用される中速熱分解の範囲内で、特に均一又は不均一な水性ガスシフト反応又は水蒸気改質反応によって、使用物質から水が消費されかつ水素を生成することができるためである。本発明による方法は、通常の場合に特に、固体熱分解生成物の触媒作用により同様にこの水素が増大する程度で生成することにより優れている。更に、本発明による方法のために、先行技術で使用された含水率よりも明らかに高められた含水率を示す出発材料を利用できかつそれどころか極めて合目的である。これとは異なり、例えば低速熱分解の場合には、水25質量%での自明の限界値が生じ、急速熱分解の場合には、通常ではそれどころか10質量%未満の含水率であるか、又は出発材料の著しい予備乾燥が不可欠である。
【0038】
別の実施形態の場合には、工程B)は、熱分解区域中で投入品の1〜10℃/s、特に2〜10℃/sの加熱速度が調節されるように実施される。更に、別の実施形態の場合に、この方法を、1mmより大きい、特に5〜40mmの平均粒子サイズを示す出発材料を使用するように実施する(粒子サイズは、この場合、篩い分け法により決定される)。上述の加熱速度及び/又は粒子サイズによって、特にこの中速熱分解の効果的な実施を行うことができる。これとは異なり、急速熱分解(schnelle Pyrolysen及びFlash-Pyrolysen)のためには、明らかに急速の加熱速度及びそれに伴って明らかに小さな粒子サイズが必要である。
【0039】
先に定義された課題は、(少なくとも部分的に)先に記載された方法及び先に記載された装置により得られる熱分解生成物によって解決される。通常の場合に、記載された方法により、液相約30〜50質量%(この場合、分離可能な液相の他に生成される油について10〜15質量%含まれる)、気相20〜60質量%及び固体、特に炭及び炭状の固体15〜40質量%が製造される。この物質の状態は、この場合、室温(20℃)に関する。ガス生成物流中には、後コンディショニングを行わない限り、20質量%まで水素が存在し;水蒸気改質による後コンディショニングにより、ガス生成物流中の水素割合を50質量%まで高めることができる。これは、同等の先行技術による方法と比べて、著しい向上であり、この著しい向上は、これに制限されるものではないが、返送された固体熱分解材料の触媒効果に起因する。この触媒効果は、ここでは、アルキル鎖の分解を促進する点にあると思われる。タールは、本発明による方法によっては生成されないか又はわずかな程度でだけ生成され、場合により簡単な措置、例えばRME洗浄によってガス流から除去することができる。
【0040】
本発明により得られる油は、特に高い発熱量を特徴とし、この発熱量は通常では20MJ/kgより大であり、多くの場合に30MJ/kgよりも大である。その他に、低い含水率及び低い酸価を示す。これらの特徴に基づいて、この油は、バイオディーゼル又は植物油と混合することができるばかりか;この油はそれどころか少なくとも他の材料と混合してバイオディーゼルとして及びそれによりエンジン用に直接使用することができる。この熱分解油は、特に<2質量%の含水率を示しかつ<15mg KOH/g、特に<4mg/KOH/gの酸価を示し、この場合、特に15質量%までの収率に関連する。
【0041】
大抵の出発材料の場合には、更に、水不含の熱分解油の酸素含有率が16質量%よりも明らかに低い熱分解油が得られる。しばしば、この酸素含有率は8質量%未満である。酸素の炭素に対する割合(つまりそれぞれ質量%で示して酸素割合と炭素割合との商)は、通常では0.15未満であり、通常では0.12未満である。水素/炭素の質量比は、それに対して頻繁に、0.08よりも高く、特に0.10よりも高く、しばしば0.11よりも高い。この結果として、本発明による方法により製造可能な大抵の熱分解油は、75質量%より高い炭素含有率、6〜11質量%の水素含有率及び9質量%までの酸素含有率を示すことが確認できる。更に、窒素含有率は、通常では1.5〜4.5質量%であり、これは、汚泥の場合にはもちろんより高くなることもある。
【0042】
明細書、特許請求の範囲及び実施例に示された値は、この場合、常に次のように決定された:
DIN 51558-1: 1979-07による酸価、
DIN EN 15296による酸素含有率(計算値);
DIN EN 15104による炭素含有率、水素含有率及び窒素含有率、
DIN EN 14918による発熱量(qp、led)、
DIN EN 14775による灰分含有率、ただし815℃によるもの。
【0043】
ここで、(他に詳細には記載しない限り)水素、酸素、炭素及び窒素の含有率は、慣用の測定方法に従って、熱分解油の有機成分及び灰分の質量に対するだけである;熱分解油中に含まれる水は従って考慮されないことが指摘される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】前コンディショニング区域20、熱分解区域30及び後コンディショニング区域40に区分される管型反応器を示す。
図2】Aは図1の詳細図を示し、Bは返送フック又は返送手段31の更に拡大された図を示す。
図3】Aは、図1に示した分離ユニット50を通過した後の生成物スペクトル(質量%で示す)のグラフを示し、Bは、このガス状の成分が含むガス(質量%で示す)のグラフを示す。
【0045】
例示的に、本発明を次に、図面及び具体的な実施例を用いて更に詳細に記載する:
図1は、前コンディショニング区域20、熱分解区域30及び後コンディショニング区域40に区分される管型反応器を示す。熱分解区域30の上流部分は、「前コンディショニング区域20側の領域」32である。熱分解されるべき材料が、この反応器に、気密な供給領域10を介して供給され、前コンディショニング区域20内に配置されたコンベヤスクリュー21によってこの材料は熱分解区域内に運搬される。熱分解区域30内にはこの場合に返送手段31として返送フックが存在する。後コンディショニング区域40内では、またコンベヤスクリュー41が配置されている。コンベヤスクリュー21及び41並びに返送手段31は、これらの区域内に延びるシャフト61上に配置されている。加熱手段は図示されていない。反応器の縦軸は、水平面に対して15°の角度だけ傾斜している。この反応器の後方に分離ユニット50が配置されていて、この分離ユニット50は、気密な炭搬出部52と、気相から液相を分離するバイオディーゼルで運転される、導管53を介してこの炭搬出部52と接続するスプレー式吸収装置51と、熱分解水を油相と分離するための分離ユニット55とに区分される。気相は、出口54を介して捕集することができる。図2Aは、図1の詳細図を示す。ここには、シャフト61上に配置された4つの返送フック又は返送手段31を備えたシャフト61の部分図を示す。この返送フックは、シャフト上にオーバーラップして配置されているため、空いたシャフト部分は存在しない。2つの図示されていない他のフックがこのシャフト61の背面側に存在する。図2Bは、返送フック又は返送手段31の更に拡大された図を示す。
【0046】
例示的に、この方法は、投入材料としてペレットの形の発酵残滓を用いて、図1、2A及び2Bによる上述の装置で実施する。管型反応器に関して、図1及び図2A中のサイズ比はほぼ実際と一致する。この管型反応器は、ほぼ1メートルの長さ及び約10〜15cmの直径を有する。シャフト61は、約5cmの直径を有するため、返送フックは、熱分解区域30内で比較的反応器内壁の近くにまで達する。使用した発酵残滓ペレットは、ドイツ国のバイオガス装置の発酵残滓に由来し、ペレット化されて供給された。ペレットの直径は6mmであった。投入品の分析は、表1の特性値を示し(この場合、Huは下限の発熱量を表し、Hoは、上限の発熱量を示す)かつ表2の元素分析データを示した。
【0047】
表1:
【表1】
【0048】
表2:
【表2】
【0049】
この温度は、前コンディショニング区域20中では150℃に調節された。熱分解区域30中では、更に400℃に加熱された。後コンディショニング区域40は、700℃に調節される。この全体の装置では圧力を加えなかった。しかしながら、領域B)中の熱分解により軽度の正圧が生じ、この正圧は、このプロセスを下流側に誘導する。更に、2つの運転状態を有する実施形態を選択し、この場合、10秒の運転状態1(送り)の後に15秒の運転状態2(送りなし)を交互に続けた。図1に示したような分離ユニット50を通過した後に、図3Aにより生成物スペクトル(質量%で示す)が得られる。このガス状の成分はまた図3Bによるガスを含んでいる(質量%で示す)。
【0050】
別のフラクションについての分析は、次のことを示した:
表3(水相)
【表3】
【0051】
表4(油)
【表4】
【0052】
表5(″炭)
【表5】
【0053】
3.8mg KOH/gの低い酸価(TAN)及び油の低い含水率(1.7質量%)が際立っている。
図1
図2A
図2B
図3