(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記斜糸の少なくとも1本は、導電性フィラメントと非導電性フィラメントとを組み合わせて構成された複合斜糸となっていることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の電磁シールド。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態1の電磁シールドの概念構成図であり、複数本の縦糸3と、複数本の斜糸4とで構成された編組体構造2を有している。
【0015】
すなわち、複数本の斜糸4が互いに交差するように編組された編組体に、複数本の縦糸3が編み込まれて編組体構造2が構成されている。これら縦糸3と斜糸4はそれぞれ複数本、ここでは4本のフィラメントが束ねられ、あるいは平行に引き揃えた糸として構成されている。一般に、フィラメントは糸とも称するが、本明細書における糸は、1本のフィラメントで構成されたもの、又は複数本のフィラメントで構成されたものを含む。
【0016】
前記した縦糸3と斜糸4を構成しているフィラメントは、導電性素材からなる導電性フィラメント5と、導電性の無い誘電体素材からなる非導電性フィラメント6で構成されている。この実施形態1では、縦糸3は複数本のフィラメントが全て非導電性フィラメント6からなる導電性縦糸3bとして構成されている。斜糸4は、一部の斜糸は全て非導電性フィラメント6で構成された非導電性斜糸4aと、他の一部の斜糸は全て導電性フィラメント5で構成された導電性斜糸4bとが交互に配列されている。
【0017】
図2は本発明の実施形態2の電磁シールドの概念構成図である。この実施形態2では、縦糸3は全て複合縦糸3cであり、斜糸4は導電性斜糸4bと非導電性斜糸4aで構成されている。この複合縦糸3cは、複数本(ここでは4本)のフィラメントのうち、3本が導電性フィラメント5であり、1本が非導電性フィラメント6である。斜糸4は実施形態1と同じである。
【0018】
図3は本発明の実施形態3の電磁シールドの概念構成図である。この実施形態3では、縦糸3は全て複合縦糸3cであり、斜糸4も全て複合斜糸4cで構成されている。この複合縦糸3cは実施形態2と同じである。複合斜糸4cは、複数本(ここでは4本)のフィラメントのうち、2本が導電性フィラメント5で構成され、2本が非導電性フィラメント6で構成されている。
【0019】
これら実施形態1〜3の編組体構造2で形成されている電磁シールドを用いて
図4又は
図5に示すケーブル用の電磁シールドスリーブ1が構成される。この電磁シールドスリーブ1としては、大きく分けて2種類存在する。
1つは、編組スリーブと呼ばれる、編組体構造2が閉じた筒状に形成された形状である(
図4)。この形状のものは、従来知られている編組機を使用して製造することができる。
【0020】
もう1つは、所謂ラウンドアップスリーブと呼ばれる、平面状に形成された編組体構造2を丸めて形成された形状である(
図5)。
この形状のものは、従来の編組機を使用して編組体構造2を平面状に形成した後、縦糸3に略直交する方向に丸めて製造する。丸める際は、斜糸4に使用された非導電性フィラメント6が熱変形可能な程度に編組体構造を加熱した後、所定の径に編組体構造を丸め、丸めた状態で冷却する。冷却後、斜糸4に使用された非導電性フィラメント6は熱変形後の形状が維持されるため、結果、シールドスリーブ1の形状は筒状に維持される。
【0021】
このように、電磁シールドスリーブ1を斜糸4と縦糸3との編組体構造2とし、縦糸3を導電性縦糸3bで構成し、斜糸4を非導電性斜糸4aと導電性斜糸4bとで構成することで、電磁シールドスリーブ1における導電性フィラメント5の存在量を増やすことができ、必要十分なシール効果を得ることができる。
【0022】
ここで、電磁シールド効果を得るには、導電性縦糸3aと導電性斜糸4aのみで電磁シールドスリーブ1を形成すれば良いが、この場合には以下の問題が存在する。
【0023】
電磁シールドスリーブ1は実際の使用場面において、小さい半径に曲げられたり、振動が発生したりすることがある。
導電性縦糸3bや導電性斜糸4bを構成する導電性フィラメント5には金属材料が使用されることが多いが、金属材料のみで構成された電磁シールドスリーブでは、小さい半径に曲げた際には導電性フィラメント5にキンクが発生し、振動が発生した際には振動による導電性フィラメント5同士の擦れが起き、導電性フィラメント5の摩耗が進行する。
導電性フィラメント5のキンクや摩耗は導電性フィラメント5の破断を引き起こし、ひいては電磁シールドスリーブ1の破断や電磁シールド効果の低下に繋がる。
【0024】
本発明は、一部の斜糸4を非導電性斜糸4bで構成することで、導電性斜糸4aを構成する導電性フィラメント5のキンクと摩耗を抑制し、電磁シールドスリーブ1の機械的な耐久性を高め、さらには電磁シールド効果を高めることができる。
【0025】
また、縦糸3と斜糸4を複数本のフィラメント5,6で構成することで、引っ張りなど、導電シールドスリーブ1を破断させるような負荷が発生した際は、負荷が各フィラメント5,6に分散するため、破断を抑制することができる。
【0026】
以上の構成は、特殊な作業や、使用するフィラメントへの追加工を行うことなく、編組体構造の製造に従来用いられている編組機に供給するフィラメントの種類を変更することで得られるため、製造上の問題が少ない、生産性に優れた構成である。
【0027】
また、導電性フィラメント5が塑性変形を示す応力を受けた際、該非導電性フィラメント6は弾性変形を示すように電磁シールドスリーブ1を構成することが好ましい。
この構成とすることで、キンクに繋がるような導電性フィラメント5の塑性変形が起きる強さの応力が電磁シールドスリーブ1に発生しても、非導電性フィラメント6が弾性変形し、応力が無くなった後に元の形状に戻るため、導電性フィラメント5の塑性変形が抑制され、キンクの発生を低減することができる。
【0028】
複数本のフィラメントで縦糸3、斜糸4を構成する際、フィラメントを円形に束ねる、特定のフィラメントに他のフィラメントを巻き付けるといった、種々の態様を取ることができる。
前記した実施形態1〜3においては、縦糸3は、複数本のフィラメントを互いに略平行に引き揃えて構成している。この構成とすることで、縦糸3に発生する負荷が、より均等に各フィラメントへ分散するため、破断抑制効果を高めることができる。
互いに略平行とは、フィラメントが完全に平行な位置関係にある状態だけではなく、フィラメントが交差しない程度に並んで存在している状態も指す。
【0029】
破断抑制効果を高める観点では、電磁シールドスリーブ1を構成する全ての縦糸3を、複数本のフィラメントを互いに平行に引き揃えた構成とすることが好ましいが、必ずしも全ての縦糸3をこの構成する必要はなく、電磁シールドスリーブ1の使用環境において、特に負荷の掛かる特定の縦糸3のみに、この構成を採用すると言った態様でも良い。
【0030】
実施形態1〜3では、縦糸3と同様に、斜糸4についても、複数本のフィラメントを互いに略平行に引き揃えて構成している。
全ての斜糸4をこの構成にしても良いし、特に負荷の掛かる特定の斜糸4のみに、この構成を採用しても良い。
【0031】
斜糸4の具体的な構成としては、前記したように、非導電性フィラメント6のみで構成された非導電性斜糸4a、導電性フィラメント5のみで構成された導電性斜糸4b、非導電性フィラメント6と導電性フィラメント5とを組み合わせて構成した複合斜糸4cが挙げられる。
【0032】
非導電性斜糸4aは非導電性フィラメント6を集合させた構成によって、電磁シールドスリーブ1の強度と形状保持性の向上に寄与する。
【0033】
導電性斜糸4bは導電性フィラメント5を集合させた構成によって、電磁シールドスリーブ1の電磁シールド効果の向上に寄与する。
【0034】
本発明の好ましい形態の1つとして、
図1、2に示したような、導電性斜糸4bと非導電性斜糸4aの両方を用い、編組の同じ打ち方向において、導電性斜糸4bと非導電性斜糸4aが交互に現れる部分が存在するように構成した態様が挙げられる。
編組の同じ打ち方向において、導電性斜糸4bと非導電性斜糸4aが交互に現れる部分が存在することで、シールドスリーブ1の耐久性とシールド効果を両立することができる。
【0035】
加えて、導電性斜糸4bと非導電性斜糸4aとでは、同じ力を与えた時の変形の仕方が異なるため、シールドスリーブ1の構成によっては、場所によって同じ力を与えた時の変形具合が異なる場合がある。
編組の同じ打ち方向において、導電性斜糸4bと非導電性斜糸4aが交互に現れる部分が存在するように構成することで、その場所では導電性斜糸4bと非導電性斜糸4aが均等に存在し、同じ力を与えた時の変形具合が均一になる。これによってシールドスリーブ1の取扱い性が向上する。
【0036】
導電性斜糸4bと非導電性斜糸4aが交互に現れる部分は、必ずしも電磁シールドの全体に設ける必要はなく、電磁シールドの一部に導電性斜糸4b同士が隣接する部分、もしくは非導電性斜糸4a同士が隣接する部分、あるいはその両方が存在しても良い。
【0037】
また、導電性斜糸4bと非導電性斜糸4aが交互に現れる部分については、例えば、2本の導電性斜糸4bが隣接−2本の非導電性斜糸4aが隣接−2本の導電性斜糸4bが隣接−2本の非導電性斜糸4aが隣接、のように、導電性斜糸4bのみで構成された部分と非導電性斜糸4aのみで構成された部分が交互に現れるといった態様でも良い。
【0038】
非導電性フィラメント6と導電性フィラメント5とを組み合わせて構成した複合、斜糸4cは単独で耐久性と電磁シールド効果を有することができる。このため、複合斜糸4cを使用する場合は、
図3に示したように、斜糸4の全てを複合斜糸4cにして電磁シールドスリーブ1を形成することが可能であるため、生産性に優れる構成である。
【0039】
複合斜糸4cに使用される導電性フィラメント5の本数は、複合斜糸4cを構成するフィラメントの本数の20〜80%とするのが好ましい。導電性フィラメント5の本数をこの範囲とすることで、複合斜糸4cは導電性フィラメント5の存在によって得られる効果と、非導電性フィラメント6の存在によって得られる効果を両立することができる。
実際の本数は、電磁シールドスリーブ1に求められる電磁シールド性能に応じて、適宜調整すれば良い。
【0040】
複合斜糸4cに使用される導電性フィラメント5の外径(太さ、以下同じ)は、複合斜糸4cに使用される非導電性フィラメント6の外径より小さくするのが好ましい。
フィラメント同士の接触、およびシールドスリーブ1と周囲の物体の接触によって、フィラメントの摩耗が発生するが、この構成とすることで、相対的に外径の太い非導電性フィラメント6から摩耗が進行するため、導電性フィラメント5の摩耗による電磁シールド効果の減少を抑制することができる。
この構成は特に、複数本のフィラメントを互いに平行に引き揃えて複合斜糸4cを構成する場合に有効な構成である。
【0041】
斜糸4と同様に、前記したように、縦糸3の具体的構成としては、非導電性フィラメント6のみで構成された非導電性縦糸3a、導電性フィラメント5のみで構成された導電性縦糸3b、非導電性フィラメント6と導電性フィラメント5とを組み合わせて構成した複合縦糸3cが挙げられる。
【0042】
縦糸3は、導電性フィラメント5の使用により、電磁シールドスリーブ1の電磁シールド効果の向上させる目的で使用するため、縦糸3は導電性縦糸3b、あるいは複合縦糸3cを主にして構成し、必要に応じて非導電性縦糸3aを使用するのが好ましい。
図1は縦糸3の全てを導電性縦糸3bとした場合、
図2、3は縦糸3の全てを複合縦糸3cとした場合を示している。
【0043】
複合斜糸4cと同様に、複合縦糸3cに使用される導電性フィラメント5の本数は、複合縦糸3cを構成するフィラメントの本数の20〜80%とするのが好ましい。
【0044】
複合斜糸4cと同様に、複合縦糸3cに使用される導電性フィラメント5の外径は、複合縦糸3cに使用される非導電性フィラメント6の外径より小さくするのが好ましい。
【0045】
以上述べた、非導電性斜糸4a、導電性斜糸4b、複合斜糸4c、非導電性縦糸3a、導電性縦糸3b、複合縦糸3cを組み合わせて、本発明にかかる電磁シールドスリーブ1を構成する。
【0046】
本発明において、斜糸4、縦糸3の両方に非導電性フィラメント6を使用する場合は、斜糸4に使用される非導電性フィラメント6と、縦糸3に使用される非導電性フィラメント6の材料を異なるものとすることで、より好ましい効果を得ることができる。
斜糸4に使用される非導電性フィラメント6と、縦糸3に使用される非導電性フィラメント6の材料を異なるものとする際は、所望する電磁シールドの電磁シールド特性が得られるよう、特定の物性の大小関係に注目して材料を選定する。
【0047】
ここで言う、「異なる材料」とは、材料の種類が異なる場合のみを指すものではなく、材料の種類は同一でも、配合される添加物や製造過程の差によって、材料の性質に差がある場合も指す。
【0048】
斜糸4に使用される非導電性フィラメント6と、縦糸3に使用される非導電性フィラメント6の材料を異なる材料とする態様の1つとして、縦糸3に使用する非導電性フィラメント6の熱変形温度を、斜糸4に使用する非導電性フィラメント6の熱変形温度より高くなるように材料を選定した態様が挙げられる。
【0049】
電磁シールドスリーブ1を、ラウンドアップスリーブとして製造する際、平面状の編組体構造2を加熱した状態で変形させる方法を使用するが、縦糸3に使用する非導電性フィラメント6の熱変形温度を、斜糸4に使用する非導電性フィラメント6の熱変形温度より高いものとすることで、縦糸3に略直交する方向に丸める際に、縦糸3に平行な方向よりも縦糸3に略直交する方向への変形性が高まるため、丸めて筒状にする作業が容易に行えるとともに、縦糸3に平行な方向への不用意な変形を抑制することができる。
【0050】
斜糸4に使用される非導電性フィラメント6と、縦糸3に使用される非導電性フィラメント6の材料を異なる材料とする態様の1つとして、斜糸4に使用する非導電性フィラメント6の耐摩耗性を、縦糸3に使用する非導電性フィラメント6の耐摩耗性よりも高くなるように材料を選定した態様が挙げられる。
電磁シールドスリーブ1を構成する編組体構造2における縦糸3と斜糸4の交差部において、縦糸3は斜糸4に挟まれた状態となるため、電磁シールドスリーブ1が周辺の物体と接触する際は、斜糸4の方が周辺の物体と接触しやすい状態にある。
このため、斜糸4に使用する非導電性フィラメント6の耐摩耗性をより高いものとすることで、電磁シールドスリーブ1をより耐摩耗性に優れたものにすることができる。
【0051】
耐摩耗性の大小関係を示す指標としては、結晶化度、引張モジュラス、曲げ弾性率などが挙げられる。
結晶化度が低い材料と比較して、結晶化度が高い材料は強固な結晶構造を多く含み、耐熱性に優れるため、材料自体の強さ、摩耗の一因である摩擦による発熱に対する耐久性を有する。
一般的に結晶化度が高い材料は、引張モジュラス、曲げ弾性率も高くなる傾向にある。
【0052】
斜糸4に使用する非導電性フィラメント6の結晶化度を、縦糸3に使用する非導電性フィラメント6の結晶化度よりも高くなるように材料を選定した態様では、電磁シールドスリーブ1をラウンドアップスリーブとした場合、ラウンドアップスリーブを開いた際に、元の筒状に復元しやすくなるという効果も得られる。
これは、結晶化度が高い材料は一般的に、外力によって変形した際に元の形状に復元しようとする力が強く発生する傾向にあるためである。
【0053】
斜糸4に使用される非導電性フィラメント6と、縦糸3に使用される非導電性フィラメント6の材料を異なる材料とする態様の1つとして、斜糸4に使用する非導電性フィラメント6の成形収縮率を、縦糸3に使用する非導電性フィラメント6の成形収縮率よりも高くなるように材料を選定した態様が挙げられる。
電磁シールドスリーブ1を、後述するラウンドアップスリーブとして製造する際、斜糸4に使用する非導電性フィラメント6の成形収縮率を縦糸3に使用する非導電性フィラメント6の成形収縮率よりも高くすることで、縦糸3に略直交する方向に丸める際に、縦糸3に平行な方向よりも縦糸3に略直交する方向への変形性が高まるため、丸めて筒状にする作業が容易に行えるとともに、縦糸3に平行な方向への不用意な変形を抑制することができる。
【0054】
本発明に使用される導電性フィラメント5は、金属線、金属メッキされた樹脂繊維、導電性材料を混合した樹脂繊維などを用いることができる。
シールド効果向上させるには、金属線を使用するのがより好ましく、本発明においては軟銅線、ニッケルメッキ軟銅線、スズメッキ軟銅線、銀メッキ軟銅線などが特に好ましく使用できる。
【0055】
本発明に使用される非導電性フィラメント6は、ガラス繊維、樹脂繊維などを用いることができ、樹脂繊維に使用する具体的な材料としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド(ナイロンなど)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンイミン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の導体の実施例について説明する。
【0057】
[実施例1]
実施例1として、
図1に示した実施形態1のような、縦糸3が全て導電性縦糸3bであり、斜糸4には導電性斜糸4bと導電性斜糸4aが使用され、編組の同じ打ち方向において、導電性斜糸4bと非導電性斜糸4aが交互に現れるように構成された、ラウンドアップスリーブ形状の電磁シールドスリーブを作成する。
【0058】
導電性フィラメント5には、直径0.1mmのニッケルメッキ軟銅線を、非導電性フィラメント6には直径0.25mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)製モノフィラメントを、それぞれ使用する。
【0059】
導電性縦糸3bと導電性斜糸4bは、上記の導電性フィラメント5を4本、互いに平行に引き揃えた構成とする。
【0060】
非導電性斜糸4bは、上記の非導電性フィラメント6を4本、互いに平行に引き揃えた構成とする。
【0061】
上記の構成となるよう、導電性フィラメント5と非導電性フィラメント6を編組機の所定の場所に給線した後、平面状の編組体構造2を編む。編組密度は縦糸3、斜糸4を含めて70%とし、金属部分(導電性フィラメント5)の存在割合は50%とした。
【0062】
編み終わった平面状の編組体構造2を150℃に加熱し、直径15mmとなるよう長手方向に直交する方向に丸め、丸めた状態で冷却し、ラウンドアップスリーブ形状の電磁シールドスリーブ1を得た。
【0063】
[実施例2]
実施例2として、
図2に示した実施形態2のような、縦糸3が全て複合縦糸3cであり、斜糸4には導電性斜糸4bと非導電性斜糸4aが使用され、編組の同じ打ち方向において、導電性斜糸4bと非導電性斜糸4aが交互に現れるように構成された、ラウンドアップスリーブ形状の電磁シールドスリーブを作成する。
【0064】
導電性フィラメント5には、直径0.18mmのスズメッキ軟銅線を使用する。
【0065】
実施例2では、縦糸3に使用する非導電性フィラメント6の材料と、斜糸4に使用する非導電性フィラメント6の材料を異なるものとする。物性については、熱変形温度と耐摩耗性に注目して材料を選択する。
【0066】
縦糸3に使用する非導電性フィラメント6には、直径0.38mmの66ナイロン製モノフィラメントを使用する。使用する66ナイロンの熱変形温度は約70℃、曲げ弾性率は3200MPaである。
【0067】
斜糸4に使用する非導電性フィラメント6には、直径0.25mmのPET製モノフィラメントを使用する。使用するPETの熱変形温度は約40℃、曲げ弾性率は850MPaである。
【0068】
耐摩耗性の観点では、縦糸3に使用する非導電性フィラメントの曲げ弾性率(耐摩耗性)を、斜糸4に使用する非導電性フィラメントの曲げ弾性率よりも高くするのがより好ましいが、実施例2においては、斜糸4に使用する非導電性フィラメントの熱変形温度を、縦糸4に使用する非導電性フィラメントの熱変形温度よりも低くすることを優先した。
【0069】
この通り、実施例2の態様は、耐摩耗性の観点では必ずしも最適な態様であるとは言えないが、縦糸3にナイロン66を使用することで、電磁シールドスリーブ1の耐摩耗性の向上は期待できる。
【0070】
複合縦糸3cは、上記の導電性フィラメント5を3本と、上記の66ナイロン製モノフィラメント1本を、互いに平行に引き揃えた構成とする。なお、3本の導電性フィラメント5は隣り合うように構成する。
【0071】
導電性斜糸4bは、上記の導電性フィラメント5を4本、互いに平行に引き揃えた構成とする。
【0072】
非導電性斜糸4aは、上記のPET製モノフィラメントを3本、互いに平行に引き揃えた構成とする。
【0073】
上記の構成となるよう、導電性フィラメント5と2種類の非導電性フィラメント6を編組機の所定の場所に給線した後、平面状の編組体構造2を編む。
【0074】
編組密度は縦糸3、斜糸4を含めて70%とし、金属部分の存在割合は40%とした。
【0075】
編み終わった平面状の編組体構造2を150℃に加熱し、直径15mmとなるよう長手方向に直交する方向に丸め、丸めた状態で冷却し、ラウンドアップスリーブ形状の電磁シールドスリーブ1を得た。
【0076】
[比較例]
比較例として、直径0.1mmのニッケルメッキ軟銅線を導電性フィラメントとして用い、これを4本平行に引き揃えたものを導電性縦糸3bと導電性斜糸4bとして使用し、非導電性フィラメントは使用せずに閉じた筒状の電磁シールドスリーブを作成した。編組密度は60%とし、この値がそのまま金属部分の存在割合60%となる。
【0077】
以上のように作成した各実施例、比較例の電磁シールドスリーブに対して以下(a)〜(d)の試験を行い、性能を評価した。
【0078】
(a)吸収クランプ法によるシールド効果試験
社団法人自動車技術会規格「JASO D624」に規定された、高圧電線の電磁シールド効果評価方法を準用し、吸収クランプ法で試験を行った。
測定に当たっては、電磁シールドスリーブを同軸ケーブルの外部導体と見立てて、試験サンプルとする。
試験サンプルは、同軸ケーブルの内部導体と見立てたφ3.4mmの銅線に、同軸ケーブルの誘電層に見立てたシリコーンゴムをφ15mmとなるよう被覆したものに、各実施例、比較例の電磁シールドスリーブを被せたものとし、金属線と電磁シールドスリーブ間のインピーダンスを50Ω、全長を3500mmに設定した。
金属線に信号強度108dBμVの信号を流し、吸収クランプを動かしてシールドスリーブ外へ漏れるノイズV
0を測定する。
同様に、電磁シールドスリーブを取り外した状態の試験サンプルで同様の試験を行い、金属線から発生するノイズV
1を測定し、V
0−V
1の値をシールド効果とした。
信号の周波数範囲は30〜1000MHzとした。
【0079】
(b)耐摩耗性試験
スクレープ摩耗試験を行った。
具体的方法は、電磁シールドスリーブを750mmの長さに切り出して試験サンプルとし、ステンレス製、太さφ0.45mm、先端部曲げR0.125mm、の試験針を、試験サンプルの長さ方向中心に対して、荷重450gを与えた状態で、垂直に接触させた。
試験針を、試験サンプルに接触させた位置を起点に±10mmの範囲で、試験サンプルの長さ方向に60回/分の速さで往復させ、試験針の移動範囲において電磁シールドスリーブの縦糸、斜糸が全て断線した部分が現れるまでの試験芯の往復回数を測定した。
【0080】
(c)屈曲性試験
電磁シールドスリーブを0.7mの長さに切り出して試験片とし、
図6に示した屈曲試験機に取付け、以下の条件で試験を行った。
図6(b)におけるA−B−Aの動きを屈曲1回とし、屈曲部において電磁シールドスリーブの縦糸、斜糸が全て断線するまでの屈曲回数を測定した。
・曲げ半径:30mm
・曲げ角度:±90度
・荷重:500gf
・速度:30回/分
【0081】
(d)屈曲後のシールド効果試験
電磁シールドスリーブを4000mmの長さに切り出し、長さ方向の中心部が屈曲するように
図6に示した屈曲試験器に取付け、試験(c)と同じ条件で所定回数屈曲させた。
屈曲回数は、試験(c)の結果を参考に、最も耐屈曲性が劣る電磁シールドスリーブの縦糸、斜糸が、屈曲部において全て断線すると予想される屈曲回数に設定した。
所定回数屈曲後、屈曲部が長さ方向の中心部に来るよう電磁シールドスリーブの長さを調整の上、試験(a)と同様にシールド効果を測定した。
【0082】
各実施例、比較例の試験(a)の結果を
図7〜9に示す。試験(a)においては、ニッケルメッキ軟銅線(導電性フィラメント)のみで構成された比較例の電磁シールドスリーブのシールド効果(
図9)が基準となる。
【0083】
図7に示した実施例1の電磁シールドスリーブ1の電磁シールド効果は、比較例1と比べると導電性フィラメント5の使用量が減少しているため、比較例の電磁シールド効果より劣るものの、一定の電磁シールド効果が得られていることが確認できた。
【0084】
図8に示した実施例2の電磁シールドスリーブ1の電磁シールド効果は、実施例1よりも導電性フィラメント5の使用量が減少しているため、電磁シールド効果は更に減少しているが、一定の電磁シールド効果が得られていることが確認できた。
【0085】
各実施例、比較例の試験(b)、(c)の結果を表1に示す。
【表1】
【0086】
一方、実施例1と比較例を比べると、実施例1では比較例に比較して耐摩耗性と耐屈曲性が向上しており、導電性斜糸4a、非導電性斜糸4b、導電性縦糸3aで構成された実施例1の電磁シールドスリーブ1は耐久性に優れている。したがって、比較例では摩耗と屈曲による劣化によって電磁シールド効果が低減されるおそれがあるが、実施例1ではこのような心配はなく、長期間にわたって一定の電磁シールド効果を有する電磁シールドスリーブであると推測できる。
【0087】
同様に、実施例2と実施例1を比べると、実施例2では実施例1に比較して更に耐摩耗性と耐屈曲性が向上しており、特に耐摩耗性の向上が著しい。導電性斜糸4a、非導電性斜糸4b、複合縦糸3cで構成された実施例2の電磁シールドスリーブ1は、特に耐久性に優れている。したがって、実施例1と同様に耐摩耗性と耐屈曲性の劣化によって電磁シールド効果が低減されるおそれがなく、さらに長期間にわたって一定の電磁シールド効果を有する電磁シールドスリーブであると推測できる。
【0088】
各実施例、比較例の試験(d)の結果を
図10〜12に示す。屈曲回数は、試験(c)における比較例の屈曲回数が8590回であることを受け、9000回に設定した。
9000回屈曲後、実施例1、2は屈曲部における断線は確認されなかったが、比較例は屈曲部において全ての縦糸、斜糸の断線が確認された。
【0089】
試験(d)においては、ニッケルメッキ軟銅線(導電性フィラメント)のみで構成された比較例の電磁シールドスリーブの屈曲前の電磁シールド効果(
図9)と、屈曲後の電磁シールド効果(
図12)の差が基準となる。
【0090】
比較例の結果である
図9と
図12を比較すると、屈曲前は30〜45dBμm程度、多くの周波数範囲において35dBμm以上あった電磁シールド効果が、屈曲後は25〜40dBμm程度となり、特に100MHz以上の周波数範囲では30dBμmを下回ることが多くなり、屈曲に伴う断線による電磁シールド効果の低減が確認された。
【0091】
一方、実施例1の結果である
図7と
図10を比較すると、屈曲前は25〜40dBμm程度、多くの周波数範囲において30dBμm以上あった電磁シールド効果は、屈曲後も概ね同等の値を示しており、特に100MHz以上の周波数では屈曲後の比較例1よりも高い値となった。このため、実施例1の電磁シールドスリーブは、屈曲が発生してもシールド効果は低減しにくく、長期間にわたって一定の電磁シールド効果を有する電磁シールドスリーブであることが確認できた。
【0092】
実施例2の結果である
図8と
図11を比較すると、屈曲前は15〜35dBμm程度、多くの周波数範囲において25dBμm以上あった電磁シールド効果は、屈曲後も概ね同等の値を示しており、100MHz以上の周波数では屈曲後の比較例1と同等の値となった。
導電性フィラメント5の使用量の関係から、電磁シールド効果自体については実施例2は比較例より優れているとは言い難いが、屈曲よる電磁シールド効果の低減については実施例2は比較例よりも小さい。このため、実施例2の電磁シールドは、屈曲が発生しても電磁シールド効果は低減しにくく、長期間にわたって一定の電磁シールド効果を有する電磁シールドスリーブであることが確認できた。
【0093】
本発明の電磁シールド効果をより高めたい場合は、編組密度を高めることで、電磁シールド効果を高めることができる。
【0094】
以上の例は、本発明の一例に過ぎず、本発明の思想の範囲内であれば、種々の変更および応用が可能であり、適宜変更されて供されることは言うまでもない。
本発明の電磁シールドは、ケーブルより発生する電磁ノイズを遮蔽する電磁シールドスリーブに適用されるのみでなく、電子機器の内部で発生した電磁ノイズが外部に放射されないように遮蔽し、あるいは外部の電磁ノイズが電子機器の内部に進入しないように遮蔽するための電磁シールドとしても適用できる。