特許第6805005号(P6805005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6805005-リーク電流補償回路及び半導体装置 図000002
  • 特許6805005-リーク電流補償回路及び半導体装置 図000003
  • 特許6805005-リーク電流補償回路及び半導体装置 図000004
  • 特許6805005-リーク電流補償回路及び半導体装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805005
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】リーク電流補償回路及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/094 20060101AFI20201214BHJP
   H03K 19/003 20060101ALI20201214BHJP
   H03F 1/30 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H03K19/094
   H03K19/003
   H03F1/30
   H01L27/04 H
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-14127(P2017-14127)
(22)【出願日】2017年1月30日
(65)【公開番号】特開2018-125588(P2018-125588A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】椎根 雄寿
(72)【発明者】
【氏名】中村 博高
【審査官】 渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−140299(JP,A)
【文献】 特開平08−088520(JP,A)
【文献】 特開平09−266418(JP,A)
【文献】 特開2015−153382(JP,A)
【文献】 特開平08−063247(JP,A)
【文献】 特開2007−109870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 19/003
H03K 19/094
H03F 1/30
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流源の電流を出力端子に出力する出力回路を構成するMOSトランジスタのリーク電流を補償するリーク電流補償回路であって、
ドレインとソースが接続され、バルクが接地端子に接続され、前記リーク電流に等しい補償電流を生成する補償MOSトランジスタと、
入力端子が前記補償MOSトランジスタの前記ドレインと前記ソースに接続され、出力端子が前記出力回路を構成するMOSトランジスタに接続されたカレントミラー回路と、を備え
前記補償MOSトランジスタは、ゲートが接地端子に接続され、ドレイン−バルク間の寄生ダイオードとソース−バルク間の寄生ダイオードのリーク電流によって、前記出力回路を構成するMOSトランジスタのドレイン−バルク間の寄生ダイオードの逆方向リーク電流に等しい補償電流を生成する
ことを特徴とするリーク電流補償回路。
【請求項2】
請求項1記載のリーク電流補償回路を備えた半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOSトランジスタのリーク電流を補償するリーク電流補償回路及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSトランジスタで構成される回路は、通常MOSトランジスタをリーク電流が無い理想素子としてモデル化した上で回路定数を定め電気特性を設計している。しかし、実際のMOSトランジスタには、ソースとバルク間及びドレインとバルク間に寄生ダイオードが存在する。特に高温時に寄生ダイオードの逆方向リーク電流が増加し、電気回路特性を悪化させる要因になる。また、MOSトランジスタのゲートのリーク電流も同様に電気回路悪化の要因になる。
【0003】
図4は、従来のリーク電流補償回路の回路図である。
従来のリーク電流補償回路は、ドレインに回路20が接続され、ゲートに回路30が接続されているMOSトランジスタ401の寄生ダイオード411の逆方向リーク電流ILを補償する回路である。
【0004】
MOSトランジスタ401の寄生ダイオード411は、NMOSトランジスタのドレイン・ソース間に逆バイアス電圧が印加されているため、逆方向リーク電流ILがバルクへ向けて流れ、回路20に流れる電流が逆方向電流ILだけ増加する。逆方向電流ILは、回路20の動作電流に対して電流誤差となる為、回路性能を悪化させる要因になる。
【0005】
リーク電流補償回路は、補償ダイオード412の逆方向リーク電流ICを補償電流として生成するMOSトランジスタ402と、補償電流ICを入力電流とし出力電流をMOSトランジスタ401に供給するMOSトランジスタ403、404で構成されるカレントミラーを備えている。MOSトランジスタ401とMOSトランジスタ402は、プロセス構造上同種で同サイズのトランジスタになっており、MOSトランジスタ402のゲート電圧を接地端子VSSに接続して、MOSトランジスタ402がオフ状態になるように設定している。この為、補償ダイオード412のリーク電流ICと寄生ダイオード411のリーク電流ILが等しくなる。従って、MOSトランジスタ401で生じたリーク電流ILは、リーク電流補償回路によって補償されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−340246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のリーク電流補償回路において、補償対象のMOSトランジスタ401で生じるリーク電流ILと等しい大きさの補償電流ICを生成する為には、補償MOSトランジスタ402をMOSトランジスタ401と等しいトランジスタサイズにする必要があるため、レイアウトパターン面積の増加が大きく製造コスト面でデメリットが大きい。
また、補償するリーク電流の対象がダイオードの逆方向リーク電流に限定されており、製造プロセスの微細化に伴い増加する傾向にあるゲートのリーク電流を補償できない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、リーク電流補償用のMOSトランジスタの面積が小さく、且つゲートリーク電流を補償することができるリーク電流補償回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のリーク電流補償回路は、ドレインとソースが接続されバルクが接地端子に接続され、電流出力回路のMOSトランジスタのリーク電流に等しい補償電流を生成する補償MOSトランジスタと、入力端子が補償MOSトランジスタのドレインとソースに接続され、出力端子が電流出力回路のMOSトランジスタに接続されたカレントミラー回路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリーク電流補償回路によれば、ダイオードの逆方向リーク電流を補償する補償電流を生成する補償MOSトランジスタに於いて、ソース−バルク間寄生ダイオードとドレイン−バルク間寄生ダイオードの両方を利用することにより、従来方法の半分のレイアウトパターンの面積で補償MOSトランジスタを実現できる。
【0011】
また、ゲートを更にドレインとソースに接続することで、補償MOSトランジスタで寄生ダイオードの逆方向リーク電流の補償電流とゲートリーク電流の補償電流を同時に生成することとが可能となるため、補償対象MOSトランジスタのダイオードの逆方向リーク電流とMOSトランジスタのゲートリーク電流を同時に補償することでリーク電流補償を高精度化出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一の実施形態のリーク電流補償回路の回路図である。
図2】本発明の第二の実施形態のリーク電流補償回路の回路図である。
図3】本発明の第三の実施形態のリーク電流補償回路の回路図である。
図4】従来のリーク電流補償回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の本実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明のリーク電流補償回路は、端子109に電流源110の電流を精度よく供給するための回路である。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態のリーク電流補償回路の回路図である。
MOSトランジスタ101のドレイン−バルクの間には、寄生ダイオード111が存在する。寄生ダイオード111はMOSトランジスタ101のドレイン−ソース間電圧が印加される逆バイアス状態である。このため、寄生ダイオード111の逆方向リーク電流IL1が接地端子VSSに接続されているバルクへ向かって流れる。また、MOSトランジスタ101のドレインには、MOSトランジスタ101のゲートとMOSトランジスタ102のゲートが接続される回路構成のため、MOSトランジスタ101のゲートリーク電流ILG1とMOSトランジスタ102のゲートリーク電流ILG2が流れる。従って、端子109に流れる電流は、電流源110から供給された電流から上記リーク電流の合計した電流が減少する。第一の実施形態のリーク電流補償回路は、その電流を補償する機能を有する。
【0015】
第一の実施形態のリーク電流補償回路は、リーク電流の補償電流を生成する補償MOSトランジスタ103、リーク電流の補償電流をリーク電流補償対象のMOSトランジスタ101、102に供給するMOSトランジスタ105、106で構成する補償用のカレントミラー回路を備えている。
【0016】
補償MOSトランジスタ103は、ゲートとソースとドレインが接続され、バルクが接地端子VSSに接続され、ドレイン−バルク間の寄生ダイオード113とソース−バルク間の寄生ダイオード114を有している。
【0017】
補償MOSトランジスタ103は、補償対象MOSトランジスタ101及びMOSトランジスタ102と製造プロセス上同一構造のトランジスタになっている。さらに補償対象MOSトランジスタ101及び補償MOSトランジスタ103のトランジスタ構造はソースとドレインの拡散形状が同一になっており、寄生ダイオード113と寄生ダイオード114の構造が、寄生ダイオード111と同一になっている。従って、MOSトランジスタ101の寄生ダイオード111の拡散面積に対して、MOSトランジスタ103の寄生ダイオード113及び寄生ダイオード114の拡散面積をそれそれ1/2に設定した場合、寄生ダイオード113に流れるリーク補償電流をIC11、寄生ダイオード114に流れるリーク補償電流をIC21とすると、式1の関係が成り立つ。
【0018】
IL1=IC11+IC21・・・(1)
このように、ダイオードの逆方向リーク電流IL1と等しいリーク補償電流IC11+IC21を補償MOSトランジスタ103で生成する場合、補償MOSトランジスタのドレイン−バルク間寄生ダイオードをのみを利用する従来方式と比較して、本方式ではドレイン−バルク間寄生ダイオードとソース−バルク間寄生ダイオードの両方を利用するため、補償MOSトランジスタ103のレイアウトパターン面積を1/2に縮小することができる。
【0019】
補償MOSトランジスタ103は、ゲートをドレインとソースに接続することにより、ダイオードの逆方向リーク電流に加えて、ゲートリーク電流ICG1を生成している。
従って、MOSトランジスタ105、106で構成された補償用のカレントミラー回路の入力電流I01と出力電流I11の大きさの比を1対1に設定した場合、MOSトランジスタ101の寄生ダイオード111の逆方向リーク電流IL1及びゲートリーク電流ILG1、MOSトランジスタ102のゲートリーク電流ILG2、ダイオードの逆方向リーク電流の補償電流IC11、IC21、ゲートリーク電流の補償電流ICG1について、式2の関係が成り立つ。
【0020】
IC11+IC21+ICG1=IO1=I11=IL1+ILG1+ILG2・・・(2)
即ち、第一の実施形態のリーク電流補償回路は、逆方向リーク電流IL1及びゲートリーク電流ILG1、ILG2の補償を同時に実現している。
【0021】
(第二の実施形態)
図2は、本発明の第二の実施形態のリーク電流補償回路の回路図である。
第二の実施形態のリーク電流補償回路は、MOSトランジスタ102のドレイン−バルク間の寄生ダイオード112の逆方向リーク電流IL2のみを補償する回路である。
【0022】
第二の実施形態のリーク電流補償回路は、リーク電流の補償電流を生成する補償MOSトランジスタ104、リーク電流の補償電流をリーク電流補償対象のMOSトランジスタ102に供給するMOSトランジスタ107、108で構成する補償用のカレントミラー回路を備えている。補償MOSトランジスタ104は、ドレイン−バルク間に寄生ダイオード115、ソース−バルク間に寄生ダイオード116を有している。
【0023】
この場合のリーク電流の補償電流の生成は、ゲートリーク電流を含まないダイオード112の逆方向リーク電流IL2の補償電流のみを生成する。従って、補償MOSトランジスタ104のゲートを接地端子VSSに接続する。
【0024】
寄生ダイオード115の逆方向リーク電流をIC12、寄生ダイオード116の逆方向リーク電流をIC22、補償電流を供給するカレントミラーの入力電流をI02、出力電流をI12とすると、式3が成り立つ。
IC12+IC22=IO2=I12=IL2・・・(3)
以上のことから、第二の実施形態のリーク電流補償回路は、MOSトランジスタ102で生じた寄生ダイオード112の逆方向リーク電流IL2を補償することができる。
【0025】
なお、第二の実施形態のリーク電流補償回路に於いても、補償MOSトランジスタ104は、ドレイン−バルク間の寄生ダイオード115とソース−バルク間の寄生ダイオード116の両方を利用して補償電流を生成するので、補償MOSトランジスタのレイアウトパターン面積を従来方法の1/2に縮小できること。
【0026】
(第三の実施形態)
図3は、本発明の第三の実施形態のリーク電流補償回路の回路図である。
第三の実施形態のリーク電流補償回路は、第一の実施形態と第二の実施形態を組み合わせて適用したものである。
【0027】
第三の実施形態のリーク電流補償回路は、MOSトランジスタ101のダイオード111の逆方向リーク電流とMOSトランジスタ101及びMOSトランジスタ102のゲートリーク電流を補償する第一のリーク電流補償回路と、MOSトランジスタ102のダイオード112の逆方向リーク電流を補償する第二のリーク電流補償回路を備えている。
第一のリーク電流補償回路と第二のリーク電流補償回路は、夫々第一の実施形態と第二の実施形態のリーク電流補償回路と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0028】
第三の実施形態のリーク電流補償回路は、第一のリーク電流補償回路と第二のリーク電流補償回路によってMOSトランジスタ101及びMOSトランジスタ102のリーク電流を補償することにより、端子109に電流源110の電流をより精度よく供給することが可能である。
以上説明したように、本発明のリーク電流補償回路によれば、リーク電流補償用のMOSトランジスタの面積が小さく、且つゲートリーク電流を補償することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
例えば、リーク電流補償対象のトランジスタは、NチャンネルMOSトランジスタとして説明したが、PチャンネルMOSトランジスタで構成した場合であっても、本発明のリーク電流補償回路を適用することは可能であり、同様の効果を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0030】
101、102 補償対象MOSトランジスタ
103、104 補償MOSトランジスタ
109 端子
110 電流源
111、112 寄生ダイオード
図1
図2
図3
図4