特許第6805007号(P6805007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナホーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6805007-住宅 図000002
  • 特許6805007-住宅 図000003
  • 特許6805007-住宅 図000004
  • 特許6805007-住宅 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805007
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】住宅
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20201214BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   E04B1/76 200C
   E04B1/70 E
   E04B1/76 400M
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-15098(P2017-15098)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-123514(P2018-123514A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】池田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】南祇 真司
(72)【発明者】
【氏名】下川床 和尊
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−211444(JP,A)
【文献】 特開2010−095951(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3207304(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/70,1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁、屋根及び小屋裏を有する住宅であって、
前記外壁は、前記外壁内に上下にのびる通気層を有し、前記通気層は、下端側が建物外部に連通しかつ上端側が前記小屋裏に連通しており、
前記通気層が、上向きに前記屋根の小屋裏側を向く屋根内面に投影された第1領域の少なくとも一部に、調湿材が配置されている住宅。
【請求項2】
前記調湿材の少なくとも一部が、前記屋根内面を構成する野地板に固着されている請求項1記載の住宅。
【請求項3】
前記屋根は、軒天井を有し、前記軒天井には、前記小屋裏の空気を排出するための小屋裏排気口が形成されており、
前記小屋裏排気口が、上向きに前記屋根の小屋裏側を向く屋根内面に投影された第2領域の少なくとも一部に、調湿材が配置されている請求項1又は2記載の住宅。
【請求項4】
前記小屋裏が、断熱区画外とされている請求項1乃至3のいずれかに記載の住宅。
【請求項5】
前記調湿材の調湿性能は、15g/m2・12Hr以上である請求項1乃至4のいずれかに記載の住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅に関し、詳しくは、屋根内面での結露の発生を効果的に抑制しうる住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、外壁の内部に、上下にのびる通気層を設けた住宅が提案されている。通気層は、下端側が建物外部に連通しており、かつ、上端側が、例えば、小屋裏に連通している。通気層の下端から導入された外気は、通気層の上端から小屋裏に進入し、屋根内面に沿って向きを変え、例えば、軒天井に設けられた排出口から建物外部へと排出されている。これにより、外壁内部が換気され、外壁の結露や劣化等を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−245475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冬期には、放射冷却などにより、明け方に急激に冷え込むことがある。このような場合、外壁に通気層を設けた住宅にあっては、通気層を上昇して屋根内面に接した空気が、この屋根内面で急激に冷却され、屋根内面で結露が発生するという新たな課題があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、外壁に通気層を設けた住宅において、前記通気層に起因した屋根内面での結露を効果的に抑制することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外壁、屋根及び小屋裏を有する住宅であって、前記外壁は、前記外壁内に上下にのびる通気層を有し、前記通気層は、下端側が建物外部に連通しかつ上端側が前記小屋裏に連通しており、前記通気層が、上向きに前記屋根の小屋裏側を向く屋根内面に投影された第1領域の少なくとも一部に、調湿材が配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記住宅において、前記調湿材の少なくとも一部が、前記屋根内面を構成する野地板に固着されていてもよい。
【0008】
本発明に係る前記住宅において、前記屋根は、軒天井を有し、前記軒天井には、前記小屋裏の空気を排出するための小屋裏排気口が形成されており、前記小屋裏排気口が、上向きに前記屋根の小屋裏側を向く屋根内面に投影された第2領域の少なくとも一部に、調湿材が配置されていてもよい。
【0009】
本発明に係る前記住宅において、前記調湿材は、外壁通りに沿って配置されていてもよい。
【0010】
本発明に係る前記住宅において、前記小屋裏が、断熱区画外とされていてもよい。
【0011】
本発明に係る前記住宅において、前記調湿材の調湿性能は、15g/m2・12Hr以上であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通気層が上向きに屋根内面に投影された第1領域の少なくとも一部に、調湿材が配置されている。従って、外壁の通気層を上昇した空気の水蒸気は、第1領域に配された調湿材によって吸着され、屋根内面での結露が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の住宅の一例を示す部分断面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3図1のA−A端面図である。
図4】本発明の他の実施形態の調湿材の外壁通りに沿った端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本発明の住宅の一例を示す部分断面図である。図2は、図1の部分拡大図である。図3は、図1のA−A端面図である。なお、各図面は、発明の内容の理解を高めるためのものであり、誇張された表示が含まれる他、各図面間において、縮尺等は厳密に一致していない点が予め指摘される。
【0015】
図1に示されるように、本実施形態の住宅1は、外壁2、屋根3、及び、小屋裏4を有している。
【0016】
本実施形態の外壁2は、例えば、パネル状に形成されている。外壁2は、屋根梁6と、土台7との間に固定されている。外壁2は、例えば、枠体11、外装材12、断熱材13、防湿気密層14、及び、内装材15を含んで構成されている。
【0017】
枠体11は、例えば、下の枠材11A、上の枠材11B、左の枠材(図示省略)、及び、右の枠材(図示省略)を含んで構成される。下の枠材11Aは、外壁2の下端側を水平にのびている。上の枠材11Bは、外壁2の上端側を水平にのびている。左の枠材及び右の枠材は、外壁2の左右両端側において、下の枠材11Aと上の枠材11Bとの間を継いでいる。枠体11は、例えば、木質材や金属材等によって形成されている。
【0018】
外装材12は、パネル状に形成されている。外装材12は、枠体11の建物外部D1側に配置されている。外装材12としては、例えば、ALC等の発泡コンクリートパネルや、窯業系外装パネルなどが採用される。
【0019】
本実施形態の外装材12は、枠体11の建物外部D1側に設けられたスペーサ(図示省略)を介して、枠体11に固定されている。これにより、外装材12は、断熱材13から建物外部D1側に離間して配置される。
【0020】
断熱材13は、例えば、枠体11の内部に配置されている。断熱材13としては、例えば、ロックウールや、グラスウール等の繊維材や、ポリスチレンフォーム等の樹脂材等が採用されうる。
【0021】
防湿気密層14は、例えば、居室D2側で暖房が行われる冬期において、居室D2から建物外部D1側に向かって流れる空気や湿気Mを遮断するためのものである。本実施形態の防湿気密層14は、例えば、シート状に形成されており、断熱材13の居室D2側に配置されている。
【0022】
防湿気密層14の透湿抵抗は、例えば、800m2・s・Pa/ng以上に設定されている。本明細書において、透湿抵抗は、JIS A 1324、又は、JIS Z 0208のカップ法に準拠して測定された値である。防湿気密層14としては、上記透湿抵抗を有するものであれば、特に限定されない。本実施形態の防湿気密層14としては、例えば、ポリエチレンシートが採用される。
【0023】
内装材15は、パネル状に形成されている。内装材15は、防湿気密層14の居室D2側に配置され、枠体11に固定されている。内装材15としては、例えば、石膏ボードが採用される。
【0024】
屋根3は、垂木21、野地板22、屋根葺材23、及び、軒天井24を有している。
【0025】
垂木21は、例えば、屋根梁6に固定されており、棟側から軒側に向かって下降する勾配を有している。図3に示されるように、垂木21は、外壁通りSに沿って屋根勾配に直交する方向に、例えば200〜500mmの間隔W1で、隔設されている。
【0026】
図1に示されるように、野地板22は、パネル状に形成されている。本実施形態の野地板22としては、例えば、強度の高い構造用合板が採用される。野地板22は、例えば、垂木21の勾配に沿って固定されている。野地板22の内面22iは、屋根3の小屋裏4側を向く屋根内面26を構成している。本実施形態の野地板22の外面には、例えば、雨水の進入を防ぐための防水シート層(図示省略)が敷設されている。
【0027】
屋根葺材23は、野地板22の上に配置されている。屋根葺材23としては、例えば、瓦、金属板葺、又は、スレート葺等が採用されている。
【0028】
軒天井24は、垂木21の下方側で、外壁2から軒側(建物外部D1側)に突出する面材24Aによって形成されている。面材24Aは、例えば、垂木21の端部に固定される鼻隠し(図示省略)と、外壁2の外装材12との間に固定される。軒天井24には、小屋裏4の空気を排出するための小屋裏排気口27が形成されている。小屋裏排気口27は、小屋裏4と建物外部D1との間で、面材24Aを貫通する開口として形成されている。
【0029】
小屋裏4は、屋根3と天井31との間の空間、及び、屋根3と軒天井24との間の空間によって構成されている。
【0030】
天井31は、外壁2の居室D2側において、屋根3と居室D2との間に配置されている。本実施形態の天井31は、パネル状に形成された天井材33、天井材33の上方に配置された断熱材34、及び、天井材33と断熱材34との間に配置された防湿気密層35を含んで構成されている。
【0031】
天井材33としては、例えば、外壁2の内装材15と同様に、石膏ボードが採用される。断熱材34としては、外壁2の断熱材13と同様のものが採用される。防湿気密層35としては、外壁2の防湿気密層14と同様のものが採用される。
【0032】
天井31及び外壁2で囲まれる居室D2は、天井31の断熱材34及び外壁2の断熱材13によって覆われる。このため、居室D2は、断熱区画とされている。他方、小屋裏4は、天井31の断熱材34の外側に配置されている。このため、小屋裏4は、断熱区画外とされている。
【0033】
本実施形態の外壁2には、外壁2内に上下にのびる通気層40が設けられている。通気層40は、外装材12と断熱材13との間の空隙によって形成されている。通気層40の下端側は、下側開口部41Aを介して、建物外部D1に連通している。通気層40の上端側は、上側開口部41Bを介して、小屋裏4に連通している。
【0034】
通気層40は、通気層40の下端(下側開口部41A)から導入された外気Foを外壁2内に通過させ、通気層40の上端(上側開口部41B)から小屋裏4に進入させることができる。小屋裏4に浸入した空気Fs(外気Fo)は、屋根内面26に沿って向きを変え、軒天井24に設けられた小屋裏排気口27から建物外部D1へと排出される。このような通気層40により、防湿気密層14で遮断しきれずに外壁2内に浸入した居室D2の湿気Mを、通気層40を上昇する空気Fsの流れによって、建物外部D1に排出することができる。従って、通気層40は、外壁2の内部を換気でき、外壁2での結露や外壁2の劣化等を抑制するのに役立つ。
【0035】
本実施形態の通気層40は、外壁通りS(図3に示す)に沿って形成されている。このため、通気層40は、外壁通りSの全域において、外壁2での結露や外壁2の劣化等を効果的に抑制することができる。
【0036】
ところで、通気層40を上昇する空気Fsは、防湿気密層14で遮断しきれなかった湿気Mを吸収するため、相対湿度が高くなる。また、空気Fsが接する屋根内面26は、例えば、冬期の明け方において、放射冷却等によって温度が急激に低下することがある。このため、屋根内面26に接した空気Fsは、屋根内面26で急激に冷却され、屋根内面26で結露が発生しやすい。とりわけ、小屋裏4が断熱区画外とされている住宅1において、結露が発生しやすい。
【0037】
このような屋根内面26での結露を抑制するために、本実施形態の住宅1では、屋根内面26の少なくとも一部に、調湿材36が配置されている。本実施形態の調湿材36は、屋根内面26を構成する野地板22に固着されている。
【0038】
調湿材36は、空気中に含まれる水分量に応じて、水分(水蒸気)の吸着(吸湿)、及び、水分の放出(放湿)を行う調湿機能を有するものである。本実施形態の調湿材36は、パネル状に形成されている。調湿材36の厚さW2(図2に示す)は、例えば、1.0〜10.0mm程度に設定される。
【0039】
調湿材36には、例えば、表面が多孔質構造を有する調湿材料(図示省略)が配合されている。調湿材料としては、例えば、珪藻土、珪質頁岩、アロフェン、イモゴライト、酸性白土、セオイオライト、ゼオライト、珪酸カルシウム、シリカゲル、ベントナイト、モンモリロナイト、又は、炭類等が採用されうる。これらの調湿材料が複数組み合わされて、調湿材36が形成されてもよい。
【0040】
調湿材36の調湿性能については、適宜設定することができる。本実施形態の調湿性能は、15g/m2・12Hr以上に設定されている。このような調湿材36は、概ね60%RH〜70%RHの相対湿度域で、良好な吸放湿性能を有している。ここで、調湿性能は、JIS A 1470−1(調湿建材の吸放湿性試験方法)に準拠して、温度23±0.5℃、相対湿度50%RH〜75%RHで測定された透湿度として定義される。この調湿性能は、上記調湿材料(図示省略)の組み合わせや配合量に応じて適宜設定することができる。
【0041】
図2に示されるように、調湿材36は、通気層40(上側開口部41B)が、上向きに屋根3の小屋裏4側を向く屋根内面26に投影された第1領域T1の少なくとも一部に配置されている。これにより、第1領域T1の少なくとも一部に配置された調湿材(以下、単に「第1領域T1の調湿材36」ということがある。)36は、通気層40を上昇した空気Fsに確実に接することができる。従って、第1領域T1の調湿材36は、空気Fsに含まれる水蒸気を吸着することができる。
【0042】
このように、本実施形態の住宅1は、通気層40を上昇した空気Fs(図1に示す)の水蒸気を、第1領域T1の調湿材36に吸着させることができるため、空気Fsの相対湿度を低下させることができる。従って、本実施形態の住宅1は、屋根内面26での結露を抑制することができる。しかも、本実施形態の調湿材36は、上記した調湿性能を有しているため、小屋裏4が断熱区画外とされている本実施形態の住宅1において、空気Fsを効果的に吸着できるため、屋根内面26での結露を確実に抑制することができる。
【0043】
さらに、本実施形態の調湿材36は、屋根内面26を構成する野地板22に固着されているため、屋根内面26(野地板22の内面22i)での結露を効果的に抑制することができる。従って、本実施形態の住宅1は、野地板22(屋根3)の腐食を効果的に防ぐことができる。
【0044】
調湿材36に吸着された水蒸気は、小屋裏4内の温度上昇とともに相対湿度が低下する日中において、小屋裏4に放出される。小屋裏4に放出された水蒸気は、通気層40を上昇する空気Fs(図1に示す)の流れと共に、小屋裏排気口27から建物外部D1に排出される。従って、本実施形態の住宅1は、調湿材36に吸着された水蒸気を取り除く装置等(図示省略)を別途設けなくても、屋根内面26での結露を継続して防ぐことができる。しかも、本実施形態の小屋裏4は、断熱区画外とされているため、日中において、小屋裏4内の温度が上昇しやすく、相対湿度がより低下しやすい。このため、住宅1は、調湿材36に吸着された水蒸気を小屋裏4に効果的に放出することができる。
【0045】
このような作用を効果的に発揮させるために、調湿材36は、第1領域T1の全域に配置されるのが望ましい。また、調湿材36の調湿性能は、より好ましくは29g/m2・12Hrであり、さらに好ましくは50g/m2・12Hr以上である。
【0046】
また、調湿材36は、小屋裏排気口27が、上向きに屋根3の小屋裏4側を向く屋根内面26に投影された第2領域T2の少なくとも一部にも配置されるのが望ましい。このような第2領域T2の調湿材36は、第1領域T1で向きが変えられ、かつ、小屋裏排気口27に向かう空気Fs(図1に示す)に確実に接することができる。従って、第2領域T2の調湿材36は、第1領域T1の調湿材36で吸着しきれなかった空気Fsの水蒸気を吸着できるため、屋根内面26での結露を効果的に抑制することができる。このような作用を効果的に発揮させるために、第2領域T2の少なくとも一部に配置された調湿材36(以下、単に「第2領域T2の調湿材36」ということがある。)は、第1領域T1の調湿材36と同一範囲の調湿性能を有するのが望ましい。さらに、調湿材36は、第2領域T2の全域に配置されるのが望ましい。
【0047】
第2領域T2の調湿材36は、垂木21の勾配方向において、第1領域T1の調湿材36とは独立して設けられてもよいし、第1領域T1の調湿材36と一体に形成されてもよい。本実施形態では、第1領域T1の調湿材36と、第2領域T2の調湿材36とが一体に形成されている。これにより、住宅1は、一つの調湿材36で、第1領域T1及び第2領域T2の双方に配置できるため、施工性を高めることができる。しかも、調湿材36は、第1領域T1で向きが変えられた空気Fs(図1に示す)の水蒸気を、垂木21の勾配方向の広範囲で吸着できるため、屋根内面26での結露を効果的に抑制することができる。本実施形態の調湿材36は、垂木21の勾配方向の長さL1が、例えば、300〜600mm程度に設定されている。
【0048】
調湿材36(第1領域T1の調湿材36)の棟側の一端36sは、第1領域T1よりも棟側に配置されるのが望ましい。さらに、調湿材36(第2領域T2の調湿材36)の軒側の他端36tは、第2領域T2よりも軒側に配置されるのが望ましい。これにより、調湿材36は、屋根内面26に沿って向きが変えられた空気Fs(図1に示す)の水蒸気を、垂木21の勾配方向の広範囲で吸着できるため、屋根内面26での結露をより効果的に抑制することができる。垂木21の勾配方向において、調湿材36の棟側の一端36sと第1領域T1の棟側の端部との距離L2、及び、調湿材36の軒側の他端36tと第2領域T2の軒側の端部との距離L3は、例えば50〜300mm程度に設定されるのが望ましい。
【0049】
図3に示されるように、調湿材36は、外壁通りSに沿って配置されるのが望ましい。これにより、調湿材36は、外壁通りSにおいて、通気層40を上昇した空気Fsの水蒸気を広範囲に吸着できるため、屋根内面26での結露をより確実に防ぐことができる。
【0050】
調湿材36は、屋根内面26を構成する野地板22において、外壁通りSに隔設された垂木21、21間に隙間なく固着されるのが望ましい。これにより、調湿材36は、通気層40を上昇した空気Fs(図1に示す)の水蒸気を、より広範囲に吸着できるため、屋根内面26での結露が効果的に抑制される。
【0051】
図4は、本発明の他の実施形態の調湿材36の外壁通りSに沿った端面図である。この実施形態において、前実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0052】
この実施形態の調湿材36は、第1調湿材36Aと、第2調湿材36Bとを含んでいる。第1調湿材36Aは、図3に示した調湿材36と同様に、屋根内面26を構成する野地板22において、外壁通りSに隔設された垂木21、21間に隙間なく固着されている。第2調湿材36Bは、垂木21を挟んで隔設される第1調湿材36A、36Aを継ぐように、垂木21の外面(下面21d、及び、一対の側面21s、21s)に固定されている。
【0053】
このような調湿材36は、通気層40を上昇した空気Fs(図1に示す)の水蒸気を、さらに広範囲に吸着でき、屋根内面26での結露だけでなく、垂木21の外面での結露が効果的に抑制される。
【0054】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0055】
図1に示した外壁、屋根、小屋裏及び通気層を有する住宅が、コンピュータで取り扱い可能なモデルとして作成された(実施例、及び、比較例)。実施例の住宅には、屋根内面の第1領域に配置された調湿材が設定された。他方、比較例の住宅には、実施例の調湿材が省略された。
【0056】
実施例及び比較例のモデルを用いて、通気層に外気を導入して外壁内部を換気するシミュレーションが実施された。そして、実施例及び比較例のモデルにおいて、屋根内面で結露するか否かが確認された。共通仕様は、次のとおりである。
通気層に外気を導入する時間:60分
調湿材:
調湿性能:15g/m2・12Hr
外気:
気温:5℃、相対湿度:80.0%RH
居室:
気温:20℃、相対湿度:40.0%RH
小屋裏:
気温:5℃、相対湿度:80.0%RH
床下:
気温:14℃、相対湿度:58.5%RH
【0057】
テストの結果、実施例及び比較例の屋根内面の温度は、通気層を上昇する空気の露点以下になった。比較例では、調湿材が配置されていないため、屋根内面での結露の発生を抑制できなかった。他方、実施例では、調湿材が配置されているため、屋根内面での結露の発生を抑制できた。
【符号の説明】
【0058】
1 住宅
2 外壁
3 屋根
4 小屋裏
26 屋根内面
30 建物外部
36 調湿材
40 通気層
図1
図2
図3
図4