特許第6805025号(P6805025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805025
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】筆記具の尾栓取付構造
(51)【国際特許分類】
   B43K 3/00 20060101AFI20201214BHJP
   B43K 24/12 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B43K3/00 K
   B43K24/12
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-34857(P2017-34857)
(22)【出願日】2017年2月27日
(65)【公開番号】特開2018-140512(P2018-140512A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2020年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 啓吾
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−031424(JP,A)
【文献】 特開2014−091239(JP,A)
【文献】 米国特許第05368405(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00− 8/24
B43K 21/00−21/26
B43K 24/00−24/18
B43K 27/00−27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の後端に尾栓を装着するようにした筆記具の尾栓取付構造において、
前記軸筒は、筒本体と、この筒本体の後端から、周方向において部分的に後方へ突出する係止部と、該係止部に対し軸筒周方向に間隙を置いて並ぶ保護壁とを一体に備え、
前記尾栓は、前記係止部及び前記保護壁に対し径方向の外側に嵌り合う筒状に形成されるとともに、前記係止部によって係止される被係止部を有することを特徴とする筆記具の尾栓取付構造。
【請求項2】
前記尾栓には、前記間隙に嵌り合う嵌合突部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の筆記具の尾栓取付構造。
【請求項3】
前記保護壁が軸筒後方へ突出する長さを、前記係止部が軸筒後方へ突出する長さよりも大きくしたことを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具の尾栓取付構造。
【請求項4】
前記係止部には、径外方向へ突出して前記被係止部に係止される爪部が設けられ、この爪部の径外方向の突端部は、前記筒本体の外径面よりも径内方向側に位置することを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の筆記具の尾栓取付構造。
【請求項5】
前記係止部は貫通孔を有し、この貫通孔は、所定の空気流通量を確保する大きさに形成されることを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の筆記具の尾栓取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具の軸筒後端側に構成される尾栓取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、後端側内周面に雌ネジ部を有する軸筒と、前方へ突出する雄ネジ部を有する尾栓とを備え、前記雌ネジ部に対し前記雄ネジ部を螺合させて、これら軸筒と尾栓とを接続するようにした筆記具がある。
ところで、このようなネジ部を用いた接続構造によれば、輸送時の振動や他の物との擦れ等に起因して、尾栓が緩んでしまう場合がある。
そこで、例えば、軸筒の後端側に爪部を設け、この爪部に対し尾栓を係止するようにした接続構造が提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−168748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したように爪部に対し尾栓を係止させる接続構造では、組立て作業中や部品輸送中等における他の部材との接触等に起因して、前記爪部が欠損してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
軸筒の後端に尾栓を装着するようにした筆記具の尾栓取付構造において、前記軸筒は、筒本体と、この筒本体の後端から、周方向において部分的に後方へ突出する係止部と、該係止部に対し軸筒周方向に間隙を置いて並ぶ保護壁とを一体に備え、前記尾栓は、前記係止部及び前記保護壁に対し径方向の外側に嵌り合う筒状に形成されるとともに、前記係止部によって係止される被係止部を有することを特徴とする筆記具の尾栓取付構造。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、尾栓の接続部分が損傷するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る尾栓取付構造を適用した筆記具の一例を示す斜視図であり、軸筒の長手方向の中途部分を省略している。
図2】本発明に係る尾栓取付構造を適用した筆記具の一例について、軸筒から尾栓を取り外した状態を示す斜視図である。
図3図1の(III)-(III)線に沿う断面図である。
図4】尾栓の一例を内側から示す斜視図である。
図5】軸筒の後端部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、軸筒の後端に尾栓を装着するようにした筆記具の尾栓取付構造において、前記軸筒は、筒本体と、この筒本体の後端から、周方向において部分的に後方へ突出する係止部と、該係止部に対し軸筒周方向に間隙を置いて並ぶ保護壁とを一体に備え、前記尾栓は、前記係止部及び前記保護壁に対し径方向の外側に嵌り合う筒状に形成されるとともに、前記係止部によって係止される被係止部を有する。
【0009】
第2の特徴は、前記尾栓には、前記間隙に嵌り合う嵌合突部が設けられている(図4参照)。
【0010】
第3の特徴は、前記保護壁が軸筒後方へ突出する長さを、前記係止部が軸筒後方へ突出する長さよりも大きくした(図2参照)。
【0011】
第4の特徴は、前記係止部には、径外方向へ突出して前記被係止部に係止される爪部が設けられ、この爪部の径外方向の突端部は、前記筒本体の外径面よりも径内方向側に位置する。
【0012】
第5の特徴は、前記係止部は貫通孔を有し、この貫通孔は、所定の空気流通量を確保する大きさに形成される。
【0013】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
本明細書中、軸方向とは、軸筒の中心線の延びる方向を意味する。また、「前」とは、前記軸方向の一方側であって筆記部が突出する方向を意味する。また、「後」とは、前記一方側に対する逆方向側を意味する。また、「径方向」とは、前記軸方向に対し直交する方向を意味する。また、「径外方向」とは、前記径方向に沿って軸心から離れる方向を意味する。「径内方向」とは、前記径方向に沿って軸心へ近づく方向を意味する。
【0014】
図1及び図2に示す筆記具1は、軸筒10と、軸筒10後端側の操作駒21の操作により軸筒10の前端から筆記部22aを出没させる出没機構20と、軸筒10の後端開口部を閉鎖する尾栓30とを備え、軸筒10の後端側と尾栓30によって尾栓取付構造Aを構成している。
【0015】
軸筒10は、図2に示すように、筒状の筒本体11と、この筒本体11の後端から、周方向において部分的に後方へ突出する係止部12と、係止部12に対し軸筒周方向に間隙sを置いて並ぶように筒本体11の後端から後方へ突出する保護壁13とを一体に具備している。
【0016】
筒本体11は、前端側を先細に形成した長尺筒状の部材であり、前後端部をそれぞれ開口している。この筒本体11は、例えば、単数の円筒状部材から構成してもよいし。複数の円筒状部材を長手方向に接続して構成してもよい。
この筒本体11は、硬質合成樹脂材料によって形成される。
【0017】
係止部12は、周方向に間隔を置いて複数設けられ、図示する好ましい一例によれば、等間隔に2つ設けられる。これら二つの係止部12,12は線対称の関係にある。
各係止部12は、図3に示すように、軸筒中心線と略平行に後方へ延設された基部12aと、該基部12aの後端側から軸筒径外方向へ突出する爪部12bとから一体に構成される。
【0018】
基部12aは、円弧状の横断面を軸筒軸方向に延設している。この基部12aの基端側には、基部12aの肉厚を後方へゆくにしたがって増大する補強部12cが設けられる。この補強部12cは、図3に示すように、R面取り状の外径面を有し、基部12aが径方向へ撓んで折れるようなことを防ぐ。
【0019】
なお、基部12aの内面は、図示しない軸筒10内の構成(例えば、複数の係止部12の後端部を受ける受け部材等)と干渉しないように平坦面状に形成される。
【0020】
爪部12bは、基部12aの外径面よりも径外方向へ突出しており、その突端部を、保護壁13の外径よりも若干径外方向側であって、かつ筒本体11の外径面よりも径内方向側に位置している(図5参照)。
この爪部12bにおける径外方向の突端面と、同爪部12bの後端面との交差部分には、C面取り状の傾斜面部12dが設けられる(図3参照)。この傾斜面部12dは、爪部12bが尾栓30の被係止部33に係止される際に、尾栓30内壁面に摺接する。
【0021】
保護壁13は、軸筒周方向において、複数の係止部12の間にそれぞれ位置するようにして複数(図示例によれば二つ)設けられる(図2参照)。これら複数の保護壁13は線対称の関係にある。
各保護壁13は、筒本体11の周方向に沿う横断面円弧状に形成され、筒本体11の後端面から軸筒後方へ延設されている。
各保護壁13の周方向の端面と、該端面に対向する係止部12の端面との間には、所定幅の間隙sが確保されている。
【0022】
この保護壁13の内径は、係止部12における基部12aの内径と略同径である。
そして、保護壁13の外径は、係止部12おける基部12aの外径よりも若干大きい。
すなわち、保護壁13の壁厚が、基部12aの壁厚よりも大きくなっている。
【0023】
また、保護壁13が軸筒後方へ突出する長さは、係止部12が軸筒後方へ突出する長さよりも若干大きく設定される。
【0024】
出没機構20は、軸筒10の後端側から径外方向へ略放射状に突出し前後方向へスライド可能な複数の操作駒21、前端側に筆記部22aを有するリフィール22(図示例によればボールペンリフィール)、リフィール22を後方へ付勢する付勢部材(例えば図示しないコイルスプリング)等を具備し、選択的に操作される操作駒21の進退に応じて、軸筒10前端から筆記部22aを出没させる。
なお、この出没機構20は、図示例のものに限定されず、例えば、単数のリフィールの筆記部を出没させる機構や、回転操作によりリフィールの筆記部を出没させる機構等、他の周知の出没機構を適用してもよい。
【0025】
また、尾栓30は、係止部12及び保護壁13に対し径方向の外側に嵌って重なり合う筒状に形成されるとともに、係止部12に係止される被係止部33を有し、硬質合成樹脂材料から一体に形成される。
詳細に説明すれば、この尾栓30は、短尺筒状の筒部31と、この筒部31の後端に接続された後端壁32とを有する有底筒状に形成され、筒部31と後端壁32の交差部分の近傍に、被係止部33を有し、筒部31の内周面には、筒本体11側の間隙sに嵌り合う嵌合突部34を有する。
【0026】
筒部31は、保護壁13の外周面に嵌って重なり合う略円筒状に形成される。
後端壁32は、保護壁13の後端部を閉鎖する略円板状に形成される。
【0027】
被係止部33は、係止部12に対応するように、周方向に間隔を置いて複数(図示例によれば二つ)設けられる。
各被係止部33は、爪部12bが挿入される貫通孔33aと、貫通孔33aに挿入された爪部12bを係止する段部33bと、爪部12bを貫通孔33aへ導くガイド斜面33cとを具備している(図3及び図4参照)。
【0028】
貫通孔33aは、筒部31と後端壁32の交差部分を厚み方向へ貫通する孔であり、所定の空気流量を確保する大きさに形成される、前記空気流量は、尾栓30が万が一誤飲されて喉等に詰まらせた場合でも十分な呼吸が確保されるように適宜に定められている。
【0029】
段部33bは、貫通孔33a内面における前端側の部分により形成された段部であり、図3に示すように、筒部31の後部側に軸筒軸方向に対し略直交する面を有する。
【0030】
ガイド斜面33cは、筒部31の内周面を軸筒後方へ向かって徐々に縮径するようにして形成された傾斜面である。
このガイド斜面33cは、尾栓30が軸筒10後端に装着される際に、係止部12前端側の傾斜面部12dに摺接して、係止部12を径内方向へ弾性変形させる。
【0031】
嵌合突部34は、図5に示すように、係止部12の周方向両側の間隙s,sに対応して、各貫通孔33aの両側に二つ設けられる。各嵌合突部34は、間隙s内の保護壁13寄りに位置する。
この嵌合突部34は、図4に示すように、尾栓30内の筒部31と後端壁32が交差する部分において、後端壁32内面から軸筒後方へ所定量突出し、かつ筒部31の内周面から径内方向へ所定量突出している。
嵌合突部34の軸筒後方側の突端部34a(図4参照)は、間隙sにスムーズに挿入されるように、前方へゆくにしたがって周方向の厚みを徐々に減らす断面凸曲状に形成される。
【0032】
次に、上記構成の尾栓取付構造Aについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
筆記具1を組み立てる際、図2に示すように、軸筒10側の係止部12と、尾栓30側の被係止部33との周方向位置を合わせるようにして、係止部12に対し、その後方側から尾栓30が覆い被せられる。
すると、尾栓30側の複数の嵌合突部34が、それぞれ、軸筒10後端側の間隙sに嵌り合う。
そして、軸筒10に相対し尾栓30が前進すると、係止部12が、その後端側の傾斜面部12dを尾栓30側のガイド斜面33cに摺接させて(図3参照)、軸筒径外方向へ弾性的に撓む。
さらに、尾栓30が前進すると、爪部12bが貫通孔33aに位置した際に弾性的に復元して、爪部12bを貫通孔33a内にて段部33bに係止する。
したがって、係止部12と被係止部33の係合により、尾栓30が軸筒10後端側に固定される。
【0033】
前記組立て作業中や、部品としての軸筒10の搬送中に、仮に軸筒10の後端側が意図しない物体に当接した場合でも、係止部12が該物体からの衝撃により損傷するようなことを、係止部12両側の保護壁13によって防ぐことができる。
また、前記組立て作業中に、意図せずに尾栓30に回転方向の力が加わった場合でも、尾栓30側の各嵌合突部34が軸筒10側の間隙sに嵌り合って保護壁13に近接するため(図5参照)、前記回転方向の力が係止部12に加わるのを防いで、係止部12の損傷を防ぐことができる。
【0034】
なお、上記実施の形態によれば、出没式筆記具について尾栓取付構造Aを適用したが、他例としては、筆記部が出没不能に固定された筆記具について尾栓取付構造Aを適用することも可能である。
【0035】
また、上記実施の形態によれば、特に好ましい一例として、被係止部33が貫通孔33aを有する構成としたが、この被係止部33の他例としては、貫通孔33aを有さずに、凹部によって爪部12bを係止する構造とすることも可能である。
【0036】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
1:筆記具
10:軸筒
11:筒本体
12:係止部
12b:爪部
11:筒本体
13:保護壁
30:尾栓
33:被係止部
33a:貫通孔
34:嵌合突部
A:尾栓取付構造
s:間隙
図1
図2
図3
図4
図5