(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃料貯留部は、前記第1のシール部と前記第2のシール部とが少なくとも前記空間の下部で連結されることにより形成される、請求項1又は2に記載の燃料供給ポンプ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<1.エンジンの燃料供給装置の全体構成>
図1は、本実施形態に係る燃料供給ポンプ5を備えたエンジンの燃料供給装置100の全体構成の一例を示している。
図1に示す燃料供給装置100は、ディーゼルエンジンの気筒に設けられたインジェクタ13に燃料を供給する装置である。燃料供給装置100は、燃料タンク1と、低圧ポンプ2と、燃料供給ポンプ5と、コモンレール10と、インジェクタ13とを備えている。それぞれの構成要素は燃料通路で接続されている。
【0013】
低圧ポンプ2は、低圧燃料通路18a,18bを介して燃料供給ポンプ5の加圧室5aに向けて低圧の燃料を供給する。この低圧ポンプ2は、エンジンの駆動力を利用して駆動される機械式のギヤポンプであってもよく、バッテリーから供給される電流によって駆動される電動式のポンプであってもよい。低圧の燃料を燃料供給ポンプ5に導く低圧燃料通路18aの途中には、燃料中の異物を捕集するメインフィルタ4が備えられている。また低圧燃料通路18aには、圧力センサ21及び温度センサ25が設けられている。
【0014】
燃料供給ポンプ5内に送られる低圧の燃料は、一旦カム室16内に流れ込み、そこからさらに低圧燃料通路18bを介して加圧室5aに送られる。低圧燃料通路18bの途中には流量制御弁8が備えられている。流量制御弁8は、電子制御装置(ECU:Electrical Control Unit)40によって駆動が制御され、要求されるコモンレール圧及燃料噴射量に応じて加圧室5aに送る低圧の燃料の流量を調節する。流量制御弁8は、例えば電磁比例式の流量制御弁とすることができる。
【0015】
流量制御弁8よりも上流側の低圧燃料流路18bには、流量制御弁8と並列的に配置された圧力調整弁14が備えられている。圧力調整弁14には、燃料タンク1に通じる燃料還流路30aが接続されている。圧力調整弁14は、例えば前後の差圧、すなわち低圧燃料通路18b内の圧力と燃料還流路30a内の圧力との差が所定値を越えたときに開弁されるオーバーフローバルブであってもよい。燃料還流路30aには、圧力センサ23が設けられている。
【0016】
流量制御弁8によって流量が調節された低圧の燃料は、燃料吸入弁6を介して加圧室5aに導入される。加圧室5a内の低圧の燃料は、カム15の回転により進退動するプランジャ7によって加圧され、燃料吐出弁9及び高圧燃料通路37を介してコモンレール10に圧送される。
【0017】
コモンレール10は、燃料供給ポンプ5から圧送される高圧の燃料を蓄積し、高圧燃料通路39を介して接続されたインジェクタ13に対して高圧燃料を供給する。コモンレール10にはレール圧センサ(図示せず)及び圧力制御弁12が取り付けられている。圧力制御弁12は、制御装置40によって駆動が制御され、レール圧センサで検出される値が要求されるコモンレール圧となるようにコモンレール10からの燃料の排出量を調節する。圧力制御弁12は、例えば電磁比例式の流量制御弁とすることができる。圧力制御弁12によって排出される燃料は、燃料還流路30bを介して燃料タンク1に還流する。
【0018】
コモンレール10に接続されたインジェクタ13は、電子制御装置40によって駆動が制御され、コモンレール10から供給される高圧燃料をエンジンの気筒内に噴射する。インジェクタ13としては、例えば公知の電磁制御式のインジェクタやピエゾ式のインジェクタが用いられる。
【0019】
ここで、本実施形態の燃料供給装置100の例では、カム室16内に流れ込んだ低圧の燃料の一部が、燃料供給ポンプ5内の各部に浸透して潤滑剤としても用いられる。燃料供給ポンプ5を駆動するカム15が固定された図示しないカムシャフトはポンプハウジング内に備えられた軸受によって支持されている。カムシャフトと軸受との摺動部17a,17bは燃料還流路30aに連通しており、カム室16内の圧力と燃料還流路30a内の圧力との差が所定の大きさに維持されることによって低圧の燃料の一部が摺動部17a,17bに浸透する。これにより燃料が潤滑剤として機能し、当該摺動部17a,17bの潤滑性が確保される。
【0020】
<2.燃料供給ポンプの構成例>
図2は、燃料供給ポンプ5の具体的な構成の一例を示している。この燃料供給ポンプ5は、ポンプハウジング51と、図示しない燃料吸入弁及び燃料吐出弁が備えられたシリンダヘッド52と、カム15が固定されたカムシャフト55と、カム15の回転によって進退動して図示しないプランジャを進退動させるタペット構造体53とを備えている。燃料供給ポンプ5において、燃料吸入弁を介して加圧室に流入した燃料は、加圧室内でプランジャによって加圧され、燃料吐出弁を介してコモンレールに圧送される。なお、
図2においては、上述の流量制御弁8及び圧力調整弁14の図示が省略されている。
【0021】
ポンプハウジング51は、カムシャフト55の軸線方向に延びるように形成され、軸線方向に連続して同軸上に設けられたシャフト支持孔51a及びフランジ支持孔51bを有する。シャフト支持孔51aとフランジ支持孔51bとの間の領域がカム室16を形成している。カム室16には、タペット構造体53及び図示しないプランジャ等が収容される円柱状の空間51cが開口している。
【0022】
シャフト支持孔51aは、軸受57aを介してカムシャフト55の一端側を回動可能に支持する。フランジ支持孔51bには、フランジ部材61が挿入されて固定される。フランジ部材61は、軸線方向に連続して同軸上に設けられたシャフト支持孔61a及び挿入部61bを有する。シャフト支持孔61a及び挿入部61bは、フランジ支持孔51bと同軸上に設けられている。本実施形態においてフランジ部材61は、本発明における挿入部材に相当する。シャフト支持孔61aは、軸受57bを介してカムシャフト55の他端側を回動可能に支持する。つまり、カムシャフト55は、一端側がポンプハウジング51のシャフト支持孔51aによって支持され、他端側がフランジ部材61のシャフト支持孔61aによって支持される。
【0023】
フランジ部材61は、燃料供給ポンプ5とは反対側において図示しないエンジンに隣接している。フランジ部材61の挿入部61bに挿入されたカムシャフト55のエンジン側の端部は、エンジンの内部に挿入される。この挿入部61bが臨むエンジンの内部には、エンジン内に形成された種々の摺動部の潤滑性を確保するための潤滑油が供給されている。エンジンの潤滑油は、燃料を潤滑剤として利用するものとは異なり、燃料に比べて粘度の高い潤滑油が用いられる。エンジン側に位置するフランジ部材61の挿入部61bの内周面とフランジ部材61の外周面との間には連通孔67が設けられている。挿入部61bには、カムシャフト55の他端部に設けられた小径部55aが配置されている。挿入部61bの内周面とカムシャフト55の小径部55aの外周面との間にはシール部材70が設けられている。
【0024】
シール部材70は、燃料供給ポンプ5内の燃料をシールする第1のシール部73aと、エンジン側からの潤滑油をシールする第2のシール部73bとを有する。第1のシール部73aと第2のシール部73bとは、カムシャフト55の軸線方向に互いに間隔を空けて設けられている。第1のシール部73aと第2のシール部73bとは外周部において連結部75により連結されている。第1のシール部73aと第2のシール部73bとの間には、連結部75により囲まれた空間79が形成されている。
【0025】
空間79は、第1のシール部73a、第2のシール部73b、連結部75の内周面及びカムシャフト55の小径部55aの外周面によって画成されている。第1のシール部73aと第2のシール部73bとを連結する連結部75には、孔部77が形成されている。また、シール部材70の連結部75の外周面と、フランジ部材61の挿入部61bの内周面との間には間隙63が形成されている。フランジ部材61に設けられた連通孔67は、間隙63に開口している。これにより、空間79は、孔部77及び間隙63を介して連通孔67に連通している。なお、本実施形態に係る燃料供給ポンプ5では、カムシャフト55の小径部55aにシール部材70が装着されているが、小径部55aが設けられない場合等、小径部55aとは異なる位置でシール部材70がカムシャフト55に装着されていてもよい。
【0026】
図3は、シール部材70の構成例を示す説明図であり、シール部材70を軸線方向に切断した半体の斜視図を示している。図示したシール部材70において、第1のシール部73a及び第2のシール部73bはそれぞれ断面U字状に形成されている。U字の底部が互いに対向するようにして第1のシール部73aと第2のシール部73bとが互いに間隔を空けて配置されている。第1のシール部73aのU字の底部と第2のシール部73bのU字の底部とは、外周部において連結部75により連結されている。第1のシール部73aと第2のシール部73bと連結部75とにより、軸心方向に開放された断面U字状の空間79が形成されている。
【0027】
シール部材70がカムシャフト55の外周面に装着されることによって、第1のシール部73a及び第2のシール部73bの内周面がカムシャフト55の外周面に接して、空間79がカムシャフト55により閉じられる。シール部材70は、連結部75に、空間79をシール部材70の外周部に連通する孔部77を有する。連結部75の外周面は、フランジ部材61の挿入部61bの内周面とシール部材70の外周面とにより形成される間隙63に面する。このため、空間79は、孔部77を介して間隙63に連通する。
【0028】
図3に示したシール部材70は、例えばPTFE(Polytetrafluoroethylene)等の樹脂材料の成形体であってもよい。PTFEからなるシール部材70は、耐低温性に優れ、かつ、カムシャフト55の摺動性に優れている。ただし、シール部材70の構成材料はPTFEに限られない。また、シール部材70は、一体成形された成形体でなくてもよく、複数の成形体が接合された構造体であってもよい。さらに、シール部材70は、金属プレート等からなるベースプレートに対してPTFE等の成形体を接合した複合体であってもよい。
【0029】
図4は、
図2中のI−I断面を矢印方向に見た断面図であって、燃料供給ポンプ5がエンジンに取り付けられて車両に搭載された状態を示している。
図4には、シール部材70の連結部75の断面が示されている。燃料供給ポンプ5がエンジンに取り付けられて車両に搭載された状態において、フランジ部材61の連通孔67は、挿入部61bの内周面のうちの鉛直方向最下部に開口して設けられている。また、シール部材70の孔部77は、連結部75のうちの鉛直方向最下部以外の位置に設けられている。
図4に示した例では、シール部材70は、連結部75の鉛直方向最下部を挟んで左右両側に設けられた2つの孔部77を有する。このため、空間79の下方には、燃料を貯留可能な燃料貯留部81が形成されている。
【0030】
燃料を貯留可能な燃料貯留部81の上端の位置は、孔部77によって規定される。つまり、燃料貯留部81に貯留される燃料の液面が孔部77に到達すると、燃料は孔部77を介して間隙63に流出する。
図4に示した例では、燃料貯留部81の上端の位置H1が、第2のシール部73bとカムシャフト55の小径部55aとにより形成されるシール部分の位置H2よりも低い位置に設定されている。したがって、燃料貯留部81内に貯留される燃料が、カムシャフト55の小径部55aと第2のシール部73bとにより形成されるシール部分に到達することがないように、孔部77の位置が設定されている。
【0031】
<3.シール部材の作用>
次に、シール部材70の作用について説明する。本実施形態に係る燃料供給ポンプ5において、カム室16に流入する低圧の燃料は、カム15とタペット構造体53との潤滑剤として機能する。また、カム室16内の低圧の燃料の一部は、円柱状の空間51cにも浸透し、空間51cの内周面とタペット構造体53の外周面との摺動部や、図示しないプランジャの摺動部等に行き渡り、潤滑剤として機能する。さらに、カム室16内の低圧の燃料の一部は、カムシャフト55と軸受57a,57bとの間の摺動部17a,17bに浸透して、潤滑剤として機能する。
【0032】
エンジンの運転時に燃料供給ポンプ5が駆動している状態では、カムシャフト55が回転して、シール部材70の第1のシール部73a及び第2のシール部73bの内周面とカムシャフト55の小径部55aとにより形成されるシール部分に空気のポンプ作用が生じる。空気のポンプ作用とは、カムシャフト55の回転によって、連通孔67、間隙63及び孔部77を介して、空気をシール部分に吸い込む作用を意味する。
【0033】
具体的には、第1のシール部73aにより形成されるシール部分においては、燃料供給ポンプ5内部のカム室16側に向かって空気が吸い込まれる。また、第2のシール部73bにより形成されるシール部分においては、エンジン内部に向かって空気が吸い込まれる。このような空気のポンプ作用が発生すると、シール部材70の空間79内に負圧が形成され、孔部77、間隙63及び連通孔67を介して燃料供給ポンプ5外部の空気が空間79内に導入される。したがって、第1のシール部73aとカムシャフト55の小径部55aとにより形成されるシール部分からの燃料供給ポンプ5内の燃料の漏出及び第2のシール部73bとカムシャフト55の小径部55aとにより形成されるシール部分からのエンジンの潤滑油の漏出に対するシール性がより高められている。なお、エンジンの停止時に燃料供給ポンプ5の駆動が停止している状態では、上記のような空気のポンプ作用は生じない。
【0034】
ここで、第1のシール部73a及び第2のシール部73bにより形成されるシール部分に異物が侵入したり、異物の侵入によってシール部分が劣化したりすると、シール部分のシール性が低下するおそれがある。このシール性の低下が著しい場合で、さらにエンジンが停止し空気のポンプ作用が期待できない状態においては、エンジンの潤滑油に比べて粘度が低い燃料供給ポンプ5内の燃料が、第1のシール部73aとカムシャフト55の小径部55aとにより形成されるシール部分から第1のシール部73aと第2のシール部73bとの間の空間79内に浸み出すおそれが考えられる。このとき、本実施形態に係る燃料供給ポンプ5では、凝縮した燃料が空間79の下部に形成された燃料貯留部81に貯留されるため、燃料供給ポンプ5の外部への燃料の漏出が抑制される。
【0035】
図5は、
図4に示した燃料供給ポンプ5のシール部材70の空間79の下部に形成された燃料貯留部81に燃料Fが貯留されている様子を示している。空間79内に浸み出して凝縮した燃料は、燃料貯留部81に貯留されることにより、連通孔67を介して燃料供給ポンプ5の外部に漏出しにくくなる。この場合、貯留された燃料は、時間の経過あるいは温度の上昇とともに気化して、孔部77、間隙63及び連通孔67を介して燃料供給ポンプ5の外部に気体の状態で放出されやすくなる。また、燃料が気化して空間79内に保持されている場合には、エンジンが始動して燃料供給ポンプ5の駆動が開始されて空気のポンプ作用が生じたときに、燃料供給ポンプ5内に吸い込まれやすくなる。
【0036】
一方、
図6は、燃料貯留部を有しない参考例を示す説明図である。第1のシール部と第2のシール部との間の空間179に燃料貯留部を有しない場合、第1のシール部173aとカムシャフト155とにより形成されるシール部分から浸み出して凝縮した燃料は、空間179の下部に開口する連通孔167を介して燃料供給ポンプ5の外部に漏出する。燃料貯留部を設けることなく燃料供給ポンプ5の外部への燃料の漏出を避けるには、空気を吸い込むための連通孔167を、フランジ部材161の挿入部161bの最下部ではなく上方に設けることが考えられる。
【0037】
図7は、フランジ部材161の挿入部161bの上方に連通孔167を設けた参考例を示す説明図である。
図7に示す参考例では、第1のシール部173aとカムシャフト155とにより形成されるシール部分から浸み出して凝縮した燃料が空間179内に貯留し続けることにより、貯留される燃料の液面が、第2のシール部173bとカムシャフト155とにより形成されるシール部分に到達する。このため、エンジンが始動して燃料供給ポンプ5の駆動が開始されて生じるポンプ作用によって、燃料がエンジン側に吸い込まれて潤滑油が希釈されるおそれがある。
【0038】
これに対して、
図5に示したように、本実施形態に係る燃料供給ポンプ5では、燃料貯留部81に燃料が貯留されている場合であっても、孔部77は開放状態で維持される。このため、エンジンが始動して燃料供給ポンプ5が駆動し始めた場合においても、空気のポンプ作用による孔部77、間隙63及び連通孔67を介して燃料供給ポンプ5の外部からの空気の吸込みが阻害されにくくなっている。
【0039】
また、燃料貯留部81の上端の位置H1が、第2のシール部73bとカムシャフト55の小径部55aとにより形成されるシール部分の位置H2よりも低い位置にある。このため、燃料供給ポンプ5の駆動時にポンプ作用が生じた場合であっても、燃料貯留部81に貯留された燃料がエンジン側に吸い込まれることを抑制することができる。したがって、エンジンの潤滑油の粘度が低下するおそれを低減することができる。
【0040】
また、
図8に示したように、シール部材70が空間79の下部に燃料貯留部81を有することにより、フランジ部材61の挿入部61bに開口する連通孔67の開口位置が、孔部77によって規定される燃料貯留部81の上端の位置よりも下方に位置する限りにおいて連通孔67の配置の自由度が高められる。つまり、車種等によってエンジンに取り付けられる燃料供給ポンプ5の姿勢が異なる場合であっても、シール部材70の配置(カムシャフト55の軸線回りの回転位相)を適合することによって、燃料供給ポンプ5の外部への燃料の漏出を抑制することができる。また、燃料貯留部81に貯留した燃料がエンジンの内部に吸い込まれることを抑制することができる。すなわち、すべての車種ごとに連通孔67の位置を異ならせて燃料供給ポンプを用意することなく、共通の燃料供給ポンプを用いる場合であっても、外部への燃料の漏出を抑制可能な燃料供給ポンプ5の姿勢の許容範囲を拡大させることができる。
【0041】
また、本実施形態に係る燃料供給ポンプ5は、従来の燃料供給ポンプに備えられた第1のシール部及び第2のシール部をシール部材70に置き換えるだけで構成することも可能になっている。このため、生産コストの増加を抑制しつつ、外部への燃料の漏出を抑制可能な燃料供給ポンプ5を得ることができる。
【0042】
<4.効果>
以上説明したように、本実施形態に係る燃料供給ポンプ5は、第1のシール部73aと第2のシール部73bとの間の空間79の下方に、少なくともフランジ部材61の連通孔67の開口部よりも高い位置で燃料を貯留する燃料貯留部81が設けられている。このため、第1のシール部73aとカムシャフト55とにより形成されるシール部分を介して燃料供給ポンプ5内から浸み出して凝縮した燃料が、燃料供給ポンプ5の外部に漏出することを抑制することができる。
【0043】
また、燃料貯留部81の上端の位置が、第2のシール部73bとカムシャフト55の外周面とにより形成されるシール部分の位置よりも下方に設定されていることにより、燃料供給ポンプ5が駆動して空気のポンプ作用が生じる場合に、燃料供給ポンプ5の外部の空気の空間79内への導入が阻害されにくくなっている。また、燃料貯留部81の上端の位置が、第2のシール部73bとカムシャフト55の外周面とにより形成されるシール部分の位置よりも下方に設定されていることにより、燃料貯留部81に貯留された燃料が第2のシール部73bとカムシャフト155とにより形成されるシール部分を介してエンジン側に吸い込まれることが抑制される。したがって、エンジンの内部の潤滑油の希釈を抑制することができる。
【0044】
そして、本実施形態に係る燃料供給ポンプ5は、カムシャフト55の軸線回りのシール部材70の位置を適切に調整することによって、エンジンに取り付けられた状態で燃料供給ポンプ5の外部への燃料の漏出を抑制可能な燃料供給ポンプ5の姿勢の許容範囲を拡大することができる。したがって、車種ごとに連通孔67の位置を異ならせた燃料供給ポンプ5を用意することなく、燃料供給ポンプ5の共有可能範囲を拡大させることができる。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0046】
例えば、上記実施形態に係る燃料供給ポンプ5では、シール部材20に2つの孔部77が設けられることにより燃料貯留部81の上端の位置が規定されていたが、本発明は係る例に限定されない。燃料貯留部81の上端の位置を規定する孔部77は1つのみであってもよい。あるいは、例えば軸線回りに90度毎に4つの孔部77を設けることにより、カムシャフト55へのシール部材20の組付けの自由度を高めることもできる。なお、孔部77は、スリットであってもよい。
【0047】
また、上記実施形態に係る燃料供給ポンプ5では、第1のシール部73a及び第2のシール部73bが外周部において全周に亘って連結部75により連結されて燃料貯留部81が形成されるとともに、当該連結部75に孔部77を設けることにより燃料貯留部81の上端の位置が規定されていたが、本発明は係る例に限定されない。例えば、燃料貯留部は、第1のシール部73aと第2のシール部73bとが空間79の下部のみで連結されることにより形成され得る。かかる構成を有するシール部材を採用した場合であっても、上記実施形態に係る燃料供給ポンプ5と同様の効果を得ることができる。