(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移行領域は、フレーム部の立ち上がり側を上側としたとき、断面形状が前側に向けて円形状から上下方向に扁平な扁平形状へと移行して上下方向の寸法が徐々に小さくなり且つ左右方向の寸法が徐々に大きくなっていく扁平移行部を備えている請求項2記載の釣竿。
穂先竿体は、扁平移行部の前側に延設されて貫通孔に向けて徐々に左右方向の寸法を拡大させていく拡大部を備え、該拡大部の上面の左右両端部には、上側に突出した突条部がそれぞれ形成され、両突条部は、前側に向けて互いの間隔を広げつつ貫通孔の近傍まで延びている請求項3記載の釣竿。
竿部は、断面円形状であって竿部の主要部分を構成し、前端部が主要部分の最小径となる主部と、該主部の前側に延設され、断面円形状であって前側に向けて徐々に大径となる逆テーパ部とを備えている請求項1記載の釣竿。
逆テーパ部の前側に扁平移行部が延設されており、該扁平移行部は、フレーム部の立ち上がり側を上側としたとき、断面形状が前側に向けて円形状から上下方向に扁平な扁平形状へと移行して上下方向の寸法が徐々に小さくなり且つ左右方向の寸法が徐々に大きくなっていく請求項5記載の釣竿。
穂先竿体は、断面円形状であって竿部の主要部分を構成する主部と、該主部の後側に延設され、断面円形状であって後側に向けて徐々に小径となる逆テーパ部と、該逆テーパ部の後側に延設され、断面円形状であって穂先竿体の最後部を構成する径一定の継合部とを備え、穂先竿体の後側に、穂先竿体の継合部が前部の内側に連結一体化された中空部を備えている請求項1乃至6の何れかに記載の釣竿。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえに本発明は、トップガイドの脱落や糸絡みの発生を防止でき、耐久性に優れた釣竿及び穂先竿体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る釣竿は、貫通孔を有するフレーム部を備えたトップガイドが外側に位置する釣竿であって、釣竿の穂先部を構成する所定長さの竿部とトップガイドのフレーム部とが一つの部材として一体的に形成された穂先竿体を備え、該穂先竿体は、全体に亘って接合部のない一体連続形状となっていることを特徴とする。
【0007】
該構成の釣竿にあっては、竿部とトップガイドのフレーム部とが一体的に形成された穂先竿体を備えている。即ち、竿部とフレーム部は、同一材質からなる穂先竿体という一つの部材を構成している。従って、トップガイドが竿部から外れるおそれがない。また、竿部にトップガイドを取り付ける作業も不要となる。しかも、従来のようなトップガイドの筒体が穂先部に存在しないので、その筒体の端部において特に発生しやすい糸絡みも防止される。また、トップガイドのフレーム部が竿部と一体に形成されているので、強度を十分に確保しつつ軽量化できる。更に、トップガイドのフレーム部が竿部と一体に形成されているので、魚のあたりがロスなくトップガイドから竿部へとダイレクトに伝達されることになり、繊細なあたりであっても敏感に感じ取ることができ、極めて高感度な穂先が得られる。更に、穂先竿体は、全体に亘って接合部のない一体連続形状となっており、全体に亘って接合部のない断面形状を有している。従って、接合部において糸絡みや糸切れが発生するということがない。また、接合部が外れるということもなく耐久性に優れている。
【0008】
特に、穂先竿体は、竿部とフレーム部の境界部の近傍に、前側に向けて断面形状が徐々に円形状から非円形状へと移行する移行領域を備えていることが好ましい。尚、竿先側を前側とし、竿尻側を後側とする。このように穂先竿体が竿部とフレーム部の境界部の近傍に移行領域を備えていると、竿部からフレーム部へとスムーズに形状変化させることができ、竿部とフレーム部が無理なく連続することになる。そのため、竿部とフレーム部の境界部において発生しやすい破損も防止できて、高い強度の穂先竿体が得られ、また竿部とフレーム部の境界部での糸絡みの発生もより一層防止できる。
【0009】
また、移行領域は、フレーム部の立ち上がり側を上側としたとき、断面形状が前側に向けて円形状から上下方向に扁平な扁平形状へと移行して上下方向の寸法が徐々に小さくなり且つ左右方向の寸法が徐々に大きくなっていく扁平移行部を備えていることが好ましい。このような扁平移行部を備えていると、その扁平移行部において上下方向の寸法が前側に向けて徐々に小さくなっていく一方で左右方向の寸法が徐々に大きくなっていくので、強度低下を防止しつつも竿部からフレーム部へとスムーズに形状を変化させていくことができる。そして、釣糸が扁平移行部に沿ってスムーズに左右方向の外側に誘導されることになり、糸絡みがより一層発生しにくくなる。また、扁平移行部においては、前側に向けて左右方向の寸法が徐々に大きくなっていくものの上下方向の寸法は徐々に小さくなっていくので、重量増加も抑制できて軽量化できる。
【0010】
また、穂先竿体は、扁平移行部の前側に延設されて貫通孔に向けて徐々に左右方向の寸法を拡大させていく拡大部を備え、該拡大部の上面の左右両端部には、上側に突出した突条部がそれぞれ形成され、両突条部は、前側に向けて互いの間隔を広げつつ貫通孔の近傍まで延びていることが好ましい。このように扁平移行部の前側に拡大部を備えていることにより、貫通孔の周囲の部分へとスムーズに形状変化させていくことができ、また糸絡みの発生も防止できる。しかも、拡大部の上面の左右両端部に突条部がそれぞれ形成されて、両突条部が前側に向けて互いの間隔を広げつつ貫通孔の近傍まで延びていると、重量増加を最小限に抑制しつつ左右の突条部によって拡大部の強度を確保できると共に糸絡みの発生も防止できる。
【0011】
また、竿部は、断面円形状であって竿部の主要部分を構成し、前端部が主要部分の最小径となる主部と、該主部の前側に延設され、断面円形状であって前側に向けて徐々に大径となる逆テーパ部とを備えていることが好ましい。このように主部の前側に逆テーパ部を備えていると、釣糸が逆テーパ部に沿ってスムーズに外側へと誘導されることになり、糸絡みがより一層起こりにくくなる。
【0012】
特に、逆テーパ部の前側に上述の扁平移行部が延設されていることが好ましい。即ち、主部と扁平移行部との間に逆テーパ部を介在させることが好ましい。主部の前端部は小径となっているので、逆テーパ部を設けて主部の前端部よりも大径化したうえで扁平形状へと移行することでスムーズに形状移行できると共に強度も確保できる。
【0013】
また、穂先竿体は、断面円形状であって竿部の主要部分を構成する主部と、該主部の後側に延設され、断面円形状であって後側に向けて徐々に小径となる逆テーパ部と、該逆テーパ部の後側に延設され、断面円形状であって穂先竿体の最後部を構成する径一定の継合部とを備え、穂先竿体の後側に、穂先竿体の継合部が前部の内側に連結一体化された中空部を備えていることが好ましい。このように穂先竿体の後側に中空部が連結された構成では、継合部の前側に逆テーパ部を備えていることにより、穂先竿体と中空部との連結部において強度が高くなり過ぎることがなく、綺麗なベンディングカーブが得られる。
【0014】
また、本発明に係る釣竿の穂先竿体は、貫通孔を有するフレーム部を備えたトップガイドが外側に位置する釣竿の穂先部に用いられる穂先竿体であって、トップガイドのフレーム部と釣竿の穂先部を構成する所定長さの竿部とが一つの部材として一体的に形成されていて、全体に亘って接合部のない一体連続形状となっていることを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、竿部とトップガイドのフレーム部とが一つの部材として一体的に形成されていて穂先竿体が接合部のない一体連続形状となっているので、トップガイドの脱落や糸絡みの発生を防止することができ、トップガイドの取り付け作業が不要となって製造も容易になる。しかも、極めて高感度な穂先部が得られる。また、穂先竿体が全体に亘って接合部のない一体連続形状となっているので、長期に亘って安定した強度が得られて耐久性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る釣竿の穂先竿体とそれを用いた釣竿について
図1〜
図8を参酌しつつ説明する。本実施形態における穂先竿体1は、釣糸ガイドを外側に備える外ガイド式の釣竿の穂先部に用いられるものである。釣竿には釣糸ガイドが通常複数個用いられるが、最も穂先側に位置するものがトップガイドである。穂先竿体1は、中通し竿のようにトップガイドが内側に設けられた構成の釣竿に用いられるものではなく、トップガイドが外側に位置する構成の釣竿に用いられるものである。
【0018】
尚、以下の説明において、竿先側を前側とし、竿尻側を後側とする。従って、釣竿の中心線の方向を前後方向と称する。また、トップガイドが立ち上がっている側を上側とし、それとは反対側を下側とする。更に、上側から見て前後方向と直交する方向を左右方向とする。
【0019】
図1及び
図2に示しているように、穂先竿体1は一つの部材として構成されていて、釣竿の穂先部の主要部材となるものである。穂先竿体1は、釣竿の穂先部を構成する所定長さの竿部10とトップガイドのフレーム部11とが同一の材質で一体的に形成されたものであり、全体に亘って接合部のない一体連続形状となっている。即ち、穂先竿体1は、何れの箇所の断面においても接合部が存在せずに連続した断面形状となっている。
【0020】
穂先竿体1は、主として金属から構成されるが、合成樹脂等であってもよく、繊維強化合成樹脂製としてもよく、例えば、鍛造や粉末射出成形、MIM(metal injection molding)、3Dプリンターによって製造できる。金属としては、例えば、ニッケルチタン系合金等の形状記憶合金や超弾性合金、ステンレス、チタン合金等が挙げられる。また、穂先竿体1は、中実状であることが好ましいが、部分的あるいは全体として中空状であってもよい。本実施形態の穂先竿体1は、一例として中実状の鍛造品である場合を説明する。
【0021】
<竿部10>
竿部10は、釣竿の穂先部を構成するものであってその長さは種々であって、少なくとも釣竿の穂先部としての調子を損なわない程度の長さが必要である。竿部10の長さは、例えば、30mm〜500mmであり、製造工程や釣竿の調子を考慮すれば好ましくは50mm〜200mmである。
【0022】
竿部10は、複数の領域に区画される。竿部10は、後側から順に、継合部20、第一の逆テーパ部21、主部22、第二の逆テーパ部23、及び、扁平移行部24とに区画される。尚、穂先竿体1は、竿部10とフレーム部11とが一体に形成されたものであるため、竿部10からフレーム部11にかけて連続しており、竿部10の先端部やフレーム部11の後端部は必ずしも明確とはならないが、本実施形態では、扁平移行部24までを竿部10とする。
【0023】
継合部20から第二の逆テーパ部23までは断面円形状である。継合部20は、竿部10の最後部を構成しており、従って、穂先竿体1の最後部を構成している部分である。継合部20は、径一定であって、
図8のようにその外側には穂先竿体1とは別体構成の中空状の竿体3が連結されて一体化される。本実施形態において中空状の竿体3の前部が中空部を構成している。穂先竿体1の継合部20とその後側の中空状の竿体3とは例えば接着により固定される。中空状の竿体3は例えば繊維強化樹脂製であって、マンドレルにプリプレグを巻回して加熱焼成して形成される。
【0024】
継合部20の前側に、第一の逆テーパ部21が延設されている。第一の逆テーパ部21は、継合部20よりも短い。第一の逆テーパ部21は、後側に向けて徐々に小径となる逆テーパ状である。第一の逆テーパ部21の前側に主部22が延設されている。主部22は、竿部10の主要部分を構成する部分であり、竿部10の全長のうち大部分の長さを占めている部分である。主部22は、径一定であってもよいが、好ましくは全体として後側に向けて大径となるテーパ状である。
【0025】
本実施形態では、主部22は、全体としてテーパ状となっているが、前後二つの領域に区分される。即ち、主部22は、前側部分である前側主部31と、後側部分である後側主部32とからなる。前側主部31は、相対的に小さいテーパ率で後側に向けて大径となり、後側主部32は、前側主部31に比して相対的に大きいテーパ率で後側に向けて大径となる。前側主部31の長さと後側主部32の長さの比率は任意であるが、本実施形態では前側主部31の方が長い。また、後側主部32の前端部(前側主部31の後端部)は、継合部20よりも小径である。後側主部32のテーパ率は、第一の逆テーパ部21のテーパ率(正負は逆)に比して小さい。後側主部32の長さは、第一の逆テーパ部21の長さよりも長い。尚、前側主部31を径一定としてもよい。何れにしても、主部22はその前端部において最も小径となっている。
【0026】
主部22の前側に第二の逆テーパ部23が延設されている。第二の逆テーパ部23は短く、例えば10mm以下であって好ましくは5mm以下である。第二の逆テーパ部23は、前側に向けて徐々に大径となっている。第二の逆テーパ部23のテーパ率は、好ましくは第一の逆テーパ部21のテーパ率と同程度かそれよりも大きい。尚、第二の逆テーパ部23のテーパ率は一定でなくてもよく、例えば前側に向けて徐々にテーパ率が大きくなっていてもよい。尚、第二の逆テーパ部23の前端部は前側主部31の後端部(後側主部32の前端部)と略同一径である。
【0027】
第二の逆テーパ部23の前側に扁平移行部24が延設されている。扁平移行部24も第二の逆テーパ部23と同様に短く、例えば10mm以下であって好ましくは5mm以下であり、第二の逆テーパ部23と同程度の長さとされる。該扁平移行部24は、前側に向けて断面形状が徐々に円形状から非円形状へと移行する移行領域を構成している。扁平移行部24は、その後端部から前端部にかけて断面形状が円形状から上下方向に扁平な扁平形状へと移行していく部分である。扁平移行部24の後端部は第二の逆テーパ部23の前端部であり、従って、扁平移行部24の後端部の断面形状は、
図6(a)のように円形状である。一方、扁平移行部24の前端部の断面形状は、
図6(b)のように左右方向に長い角丸長方形状である。尚、扁平移行部24の前端部の中心と後端部の中心は一致している。
【0028】
扁平移行部24の上下方向の寸法は、後端部から前端部にかけて徐々に小さくなっていく。その一方、扁平移行部24の左右方向の寸法は、後端部から前端部にかけて徐々に大きくなっていく。従って、扁平移行部24の前端部における上下方向の寸法は、扁平移行部24の後端部の直径よりも小さい。また、扁平移行部24の前端部における左右方向の寸法は、扁平移行部24の後端部の直径よりも大きい。尚、扁平移行部24は、後端部から前端部にかけて上下に均等に押し潰されるようにして扁平形状となっていき、それに伴って、後端部から前端部にかけて左右対称に拡がっていく。この扁平移行部24までが竿部10であり、扁平移行部24の前端部より前側の部分がトップガイドのフレーム部11である。
【0029】
<トップガイド>
トップガイドは、釣糸をその内周面で直接案内するガイドリング2(
図5参照)と、該ガイドリング2を保持するためのフレーム部11とを備えている。フレーム部11は、ガイドリング2が装着される貫通孔40を有しており、該貫通孔40の壁面にガイドリング2の外周面が固着される。
図5において二点鎖線でガイドリング2を示している。ガイドリング2の固定方法は種々であってよいが、主として接着により固定される。
【0030】
ガイドリング2は例えば円形の環状である。但し、ガイドリング2の形状は任意であって楕円形や長円形等であってもよく、何れにしてもリング状(環状)であり、フレーム部11の貫通孔40はガイドリング2の形状に対応した形状とされる。本実施形態においてはガイドリング2が円形の場合について説明する。ガイドリング2は、例えばSiC(シリコンカーバイト)に代表されるセラミック等の耐摩耗性に優れた硬質材料からなり、釣糸が挿通する糸挿通孔を有しており、内周面を釣糸が摺動することで釣糸を直接案内する。
【0031】
ガイドリング2はフレーム部11の貫通孔40に挿入されて、貫通孔40の壁面に接着により固定される。貫通孔40の壁面には、ガイドリング2の保持力を向上させるため、及び、接着剤の接着溜まりを確保するために、複数の凸部41が形成されることが好ましい。該凸部41は、一定角度毎に形成されることが好ましい。貫通孔40の壁面に凸部41を周方向に間隔をおいて複数形成することにより、ガイドリング2の外周面を複数の凸部41によって確実に保持することができる。また、凸部41を設けることで貫通孔40の壁面が周方向に凹凸を繰り返す凹凸形状となり、凸部41同士の間の隙間を接着溜まりとすることができる。従って、ガイドリング2をフレーム部11に大きな接着力で確実に接着固定できる。
【0032】
フレーム部11は、竿部10の前側に一体となって延設されている。具体的には、フレーム部11は、
図4のように扁平移行部24の前端部から前側に向けて所定長さ延びた後に上側に向けて所定角度で立ち上がっている。フレーム部11の立ち上がり角度は略90度であってもよいが、本実施形態では90度よりも小さい角度であり、従って、フレーム部11の貫通孔40の中心線及びガイドリング2の中心線は、竿部10の中心線と平行ではなく竿部10の中心線に対して前側に所定角度傾斜した状態にある。フレーム部11が立ち上がり始める部分を立ち上がり開始部42と称すると、フレーム部11は、扁平移行部24の前端部から立ち上がり開始部42までの区間と、立ち上がり開始部42から前側且つ上側の区間とに区分けできる。
【0033】
フレーム部11は、
図3及び
図5のように、扁平移行部24の前側に延設された拡大部43と、貫通孔40の壁面に沿って周方向に延びる円弧状部44とを備えている。フレーム部11の拡大部43は、扁平移行部24の前端部から前側に向けて徐々に左右方向の寸法を拡大させていく部分である。拡大部43は、扁平移行部24の前端部から前側に所定長さ延びた後に上側に向けて傾斜しつつ貫通孔40まで延びているが、扁平移行部24の前端部から貫通孔40まで徐々にその左右方向の寸法を拡大させている。拡大部43は、扁平移行部24の前端部から立ち上がり開始部42までの間においては左右方向の寸法の拡大率が相対的に小さく、立ち上がり開始部42よりも前側且つ上側の部分においては拡大率が相対的に大きくなっている。
【0034】
拡大部43の上面の左右両端部には、
図7のように上側に突出した突条部45がそれぞれ形成されている。左右両突条部45は、前側且つ上側に向けて互いの間隔を広げつつ貫通孔40の下部両側部まで逆ハの字状に延びている。このように拡大部43の上面の左右両端部に突条部45がそれぞれ形成されていることにより、拡大部43の上下方向の寸法は左右両端部において大きく左右方向中央部において小さくなっている。従って、フレーム部11の上面であって貫通孔40の直ぐ下側の部分には、相対的に凹んだ平面視略逆三角形状の凹部46が形成される。また、拡大部43における断面の面積は、
図6(b)〜
図7(b)のように、前側且つ上側に向けて徐々に大きくなっていく。
【0035】
フレーム部11の円弧状部44は、拡大部43の上側に延設されている。円弧状部44は、貫通孔40の開口縁部の全周のうち少なくとも上側半分の領域を構成していて、拡大部43の上部と共にガイドリング2を保持する。円弧状部44の軸線方向は、貫通孔40の中心線に沿った方向であるが、その方向の寸法は、円弧状部44の径方向の寸法(但し凸部41を除く)よりも大きい。
【0036】
以上のように構成された穂先竿体1は、上述したように中空状の竿体3の前部の内側に継合部20が差し込まれて接着により固定されて連結一体化される。尚、釣竿の仕様に応じて中空状の竿体3は一本の構成とされたり複数本の構成とされたりする。また、穂先竿体1の外側にプリプレグを一部あるいは全体に巻回してもよく、種々の形状のプリプレグを一枚あるいは複数枚巻回してもよい。また、穂先竿体1の外側にテープ状のプリプレグを螺旋状に巻回してもよい。穂先竿体1の外側にテープ状のプリプレグを巻回する場合、隣と重ね合わせながら密の状態で巻回してもよいし、隣と間隔をあけつつ巻回してもよいし、また、X状に巻回してもよい。更に、これらのプリプレグを穂先竿体1からその後側の中空状の竿体3にかけて巻回してもよい。更に、
図8では穂先竿体1を中空状の竿体3に直接挿入しているが、穂先竿体1の外側にプリプレグによる外層を設けて穂先竿体1を多層構造とし、その多層構造の穂先竿体1の最後部を中空状の竿体3に挿入固定してもよい。
【0037】
このようにして構成される釣竿の外周面には複数の釣糸ガイドが移動不能に固定されたり移動可能に装着されたりする。例えば、
図8において、穂先竿体1と中空状の竿体3との連結部分に釣糸ガイドを固定してもよい。また、穂先竿体1の外周面にも一つあるいは複数の釣糸ガイドを固定したり移動可能に設けたりしてもよい。無論、穂先竿体1がトップガイドのみを備える構成であってもよい。穂先竿体1の外周面に釣糸ガイドを接着等により固定する場合には、穂先竿体1の外周面にプリプレグを部分的にあるいは全体に亘って巻回したり、下糸を部分的にあるいは全体に亘って巻回したりした上に、釣糸ガイドの脚部等を載せて巻糸により固定すると共に接着することが好ましい。
【0038】
このようにして釣竿の穂先部に穂先竿体1が使用される。そして、穂先竿体1においては竿部10とトップガイドのフレーム部11とが一体的に形成されているので、トップガイドが竿部10から外れるということがない。また、竿部10にトップガイドを取り付ける作業も不要となり製造工程を簡素化できる。しかも、従来のようなトップガイドの筒体が穂先部に存在しないので、その筒体の端部において発生しやすい糸絡みも防止できる。また、トップガイドのフレーム部11が竿部10と一体に形成されているので、強度を十分に確保しつつ軽量化でき、しかも伝達効率に優れている。即ち、トップガイドのフレーム部11が竿部10と一体に形成されているので、魚のあたりがロスなくトップガイドから竿部10へとダイレクトに伝達されることになり、繊細なあたりであっても敏感に感じ取ることができ、極めて高感度な穂先が得られる。更に、穂先竿体1は、全体に亘って接合部のない一体連続形状となっており、全体に亘って接合部のない断面形状を有している。従って、従来のように接合部において糸絡みや糸切れが発生するということがなく、また、接合部が外れるということもない。
【0039】
また、竿部10とフレーム部11の境界部の近傍に移行領域としての扁平移行部24を備えているので、竿部10からフレーム部11へとスムーズに形状変化させることができ、竿部10とフレーム部11とが無理なく連続することになる。そのため、竿部10とフレーム部11の境界部において発生しやすい破損も防止できて、高い強度の穂先竿体1が得られ、竿部10とフレーム部11の境界部で発生しやすい糸絡みもより一層防止できる。しかも、扁平移行部24においては、断面形状が前側に向けて円形状から上下方向に扁平な扁平形状へと移行していて、上下方向の寸法が徐々に小さくなる一方、左右方向の寸法が徐々に大きくなっていくので、強度低下を防止しつつ竿部10からフレーム部11へとスムーズに形状を変化させていくことができる。また、扁平移行部24に沿って釣糸がスムーズに外側に向けて誘導されることになるので、糸絡みがより一層発生しにくくなる。更に、扁平移行部24においては、前側に向けて左右方向の寸法が徐々に大きくなっていくものの上下方向の寸法は徐々に小さくなっていくので、重量増加も抑制できて軽量化できる。
【0040】
また、扁平移行部24の前側に、貫通孔40の開口縁部まで徐々に左右方向の寸法を拡大させていく拡大部43が設けられているので、フレーム部11へとより一層スムーズに形状を変化させていくことができ、糸絡みの発生をより一層確実に防止できる。しかも、拡大部43の上面の左右両端部に突条部45がそれぞれ形成されていて、その左右の突条部45が前側に向けて互いの間隔を広げつつ貫通孔40の開口縁部の両側部まで延びているので、全体の肉厚を厚くしなくても拡大部43の強度を十分に確保することができる。特に、フレーム部11の前後方向の曲げ強度を飛躍的に高めることができる。しかも、左右の突条部45によって糸絡みの発生を効果的に防止できる。
【0041】
更に、竿部10の主部22と扁平移行部24との間に第二の逆テーパ部23を備えているので、釣糸が第二の逆テーパ部23から扁平移行部24へとスムーズに誘導されて左右方向の外側に移動することになり、糸絡みがより一層起こりにくくなる。そして、扁平移行部24の後側に第二の逆テーパ部23が設けられていて、主部22の前側において直径を一旦大きくしたうえで扁平移行部24へと移行している。そのため、扁平移行部24において強度低下を防止しつつ断面形状を円形状から上下方向の扁平形状へと変化させることができて、竿部10からフレーム部11へとスムーズに連続変化させることができる。
【0042】
一方、主部22の後側には第一の逆テーパ部21を介して径一定の継合部20が設けられているので、穂先竿体1と中空状の竿体3との連結部において強度が大きくなり過ぎることがなく、綺麗なベンディングカーブが得られる。
【0043】
尚、本実施形態では、トップガイドのフレーム部11の貫通孔40にガイドリング2が装着された構成について説明したが、ガイドリング2を備えずにフレーム部11の貫通孔40の壁面が釣糸を直接案内する構成であってもよい。そのようにフレーム部11が直接釣糸を案内する場合には、主としてフレーム部11に穂先竿体1の材質よりも耐熱性、耐摩耗性に優れた被膜を形成しておくことが好ましい。この被膜としては例えばクロムめっき被膜やホウ化チタン被膜等が挙げられる。