(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
声質の特徴を表す得点ベクトルを音響モデルに変換するための第1変換モデルの逆変換モデルを用いて、予め登録された前記音響モデルを前記得点ベクトルに変換し、話者識別情報に対応づけて得点管理情報に登録する第1変換部と、
前記得点ベクトルの入力を受付ける受付部と、
前記得点管理情報から、受付けた前記得点ベクトルに類似する話者識別情報を検索する検索部と、
を備える話者検索装置。
前記音響特徴量を前記得点ベクトルに変換するための第3変換モデルを用いて、話者の前記音響特徴量を前記得点ベクトルに変換し、前記得点管理情報に登録する第3変換部、
を備える、請求項4に記載の話者検索装置。
声質の特徴を表す得点ベクトルを音響モデルに変換するための第1変換モデルの逆変換モデルを用いて、予め登録された前記音響モデルを前記得点ベクトルに変換し、話者識別情報に対応づけて得点管理情報に登録するステップと、
前記得点ベクトルの入力を受付けるステップと、
前記得点管理情報から、受付けた前記得点ベクトルに類似する話者識別情報を検索するステップと、
を含む話者検索方法。
声質の特徴を表す得点ベクトルを音響モデルに変換するための第1変換モデルの逆変換モデルを用いて、予め登録された前記音響モデルを前記得点ベクトルに変換し、話者識別情報に対応づけて得点管理情報に登録するステップと、
前記得点ベクトルの入力を受付けるステップと、
前記得点管理情報から、受付けた前記得点ベクトルに類似する話者識別情報を検索するステップと、
をコンピュータに実行させるための話者検索プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、話者検索装置、話者検索方法、および話者検索プログラムを詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態の話者検索装置10の一例を示す図である。
【0011】
話者検索装置10は、ユーザの所望の声質の話者を検索する装置である。話者検索装置10は、記憶部12と、処理部14と、音声出力部16と、UI(ユーザ・インターフェース)部18と、を備える。
【0012】
記憶部12、音声出力部16、およびUI部18と、処理部14と、は、バスなどを介してデータや信号を授受可能に接続されている。
【0013】
音声出力部16は、音声を出力する。音声出力部16は、例えば、スピーカである。
【0014】
UI部18は、入力部18Aと、表示部18Bと、を含む。入力部18Aは、ユーザの操作を受付ける。入力部18Aは、例えば、デジタルペン、マウス、またはトラックボール等のポインティングデバイスや、キーボード等の入力デバイスである。表示部18Bは、各種情報を表示する。表示部18Bは、例えば、LCDなどのディスプレイや、投影装置などである。なお、UI部18は、入力部18Aと表示部18Bとを一体的に備えた、タッチパネルであってもよい。
【0015】
記憶部12は、各種データを記憶する。記憶部12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。なお、記憶部12は、話者検索装置10の外部に設けられた記憶装置であってもよい。また、記憶部12は、記憶媒体であってもよい。具体的には、記憶媒体は、プログラムや各種情報を、LAN(Local Area Network)やインターネットなどを介してダウンロードして記憶または一時記憶したものであってもよい。また、記憶部12を、複数の記憶媒体から構成してもよい。
【0016】
本実施の形態では、記憶部12は、話者管理情報12Aと、第1変換モデル12Bと、得点管理情報12Cと、を記憶する。
【0017】
話者管理情報12Aは、話者の音声に関する情報である。話者管理情報12Aは、記憶部12に予め記憶されている。
図2は、話者管理情報12Aのデータ構成の一例を示す模式図である。
【0018】
話者管理情報12Aは、話者IDと、音声データと、音声のテキストと、音響特徴量と、言語特徴量と、音響モデルと、得点ベクトルと、を対応づけたデータベースである。なお、話者管理情報12Aのデータ形式は、データベースに限定されない。例えば、話者管理情報12Aは、テーブルであってもよい。
【0019】
話者IDは、話者を識別する識別情報(話者識別情報)である。話者IDは、話者を識別可能な情報であればよい。話者IDは、例えば、話者の名前などである。
【0020】
音声データは、対応する話者IDによって識別される話者の音声のデータである。話者管理情報12Aには、話者IDに対応づけて、複数の音声データ(例えばN個(Nは2以上の整数))が登録されている。音声データのデータフォーマットは限定されない。例えば、音声データのデータフォーマットは、WAV、AIFF、BWFなどである。
【0021】
音声のテキストは、音声データの収録原稿である。
【0022】
音響特徴量は、対応する音声データから抽出された、音声(音響)の特徴量である。
音響特徴量には、HMM(隠れマルコフモデル(hidden Markov model))音声合成で使われる音響特徴量を用いればよい。例えば、音響特徴量は、音韻や声色を表すメルケプストラム係数、メルLPC係数、メルLSP係数、声の高さを表す基本周波数(F0)、音声の周期・非周期成分の割合を表す非周期性指標(BAP)などである。話者管理情報12Aには、登録されている話者IDに対応する音響特徴量が予め導出され、予め話者管理情報12Aに登録されているものとする。
【0023】
言語特徴量は、対応する音声のテキストから抽出された、言語の特徴量である。例えば、言語特徴量は、前後の音素、発音に関する情報、句末位置、文長、アクセント句長、モーラ長、モーラ位置、アクセント型、品詞、係り受け情報などである。話者管理情報12Aには、登録されている話者IDに対応する言語特徴量が予め導出され、予め話者管理情報12Aに登録されているものとする。
【0024】
音響モデルは、話者の音声の言語特徴量から音声の音響特徴量への写像を統計的にモデル化したものである。例えば、音響モデルには、HMM音声合成における音響モデルを用いる。音響モデルは、入力を言語特徴量、出力を音響特徴量、とした決定木でモデル化される。出力である音響特徴量は、決定木の各リーフノードに割り当てられた多次元正規分布の平均ベクトルと共分散行列の集合によって、表現される。話者の音響特徴量と言語特徴量から、音響モデルのパラメータである上記平均ベクトルと共分散行列を推定することによって、音響モデルが生成される。
【0025】
本実施の形態では、音響モデルとして、HMM音声合成における決定木の音響モデルを用いる場合を説明する。しかし、音響モデルとして、HMM音声合成における決定木の音響モデルを用いる形態に限定されない。例えば、ニューラルネットワークなどの言語特徴量を音響特徴量に写像する任意のモデルを、音響モデルとして用いてもよい。
【0026】
話者管理情報12Aには、登録されている話者IDに対応する音響モデルが予め導出され、予め話者管理情報12Aに予め登録されているものとする。なお、本実施の形態では、話者管理情報12Aにおける、一部の話者IDには、音響モデルが対応付けて登録されていなくてもよい。
【0027】
得点ベクトルは、話者の声質の特徴を表す。本実施の形態では、得点ベクトルは、話者の声質の主観的な特徴を表す。
【0028】
図3は、得点ベクトルの一例を示す模式図である。得点ベクトルは、話者の声質の特徴の主観的な強さを、声質の特徴の種類ごとに得点(すなわち数値)で表したものである。声質の特徴の種類は、物理特徴量ではなく、声質を主観的に分類したものである。声質の特徴の種類は、予め定めればよい。例えば、声質の特徴の種類は、「性別」、「年齢」、「明るさ」、「硬さ」、「明瞭さ」、「流暢さ」、「かすれ」、などである。すなわち、得点ベクトルは、話者の主観的な特徴を、声質を表す主観的な種類に応じたラベルの付与された軸を用いて表した、ベクトルである。
【0029】
これらの特徴の種類に対応する得点は、これらの種類の特徴の強さを表す。得点は、例えば、数値で表される。
図3には、得点を、“0”から“1”の範囲で表した場合を示している。例えば、声質の特徴の種類「性別」は、得点“0”に近いほど女性的であり、得点“1”に近いほど男性的であることを示す。また、声質の特徴の種類「年齢」は、得点“0”に近いほど若く、得点“1”に近いほど年齢が高いことを示す。
【0030】
このため、
図3に示す例では、話者ID“A”に対応する得点ベクトルは、該話者ID“A”よって識別される話者の声質の特徴が、若い子供の声であることを示す。また、話者ID“B”に対応する得点ベクトルは、該話者ID“B”よって識別される話者の声質の特徴が、若い女性の声であることを示す。また、話者ID“D”に対応する得点ベクトルは、該話者ID“D”よって識別される話者の声質の特徴が、年老いた男性の声であることを示す。
【0031】
図2に戻り説明を続ける。話者管理情報12Aには、話者管理情報12Aに登録されている複数の話者IDの内、一部の話者IDに対応づけて、得点ベクトルが予め登録されているものとする。話者管理情報12Aの一部の話者IDには、該話者IDによって識別される話者の声質に関するアンケート調査によって、多くの人の主観的な声質の感じ方が反映されるように、予め得点ベクトルが付与されているものとする。
【0032】
なお、話者管理情報12Aに登録されている話者IDの数は、ユーザが所望の話者を話者管理情報12Aから手作業で検索することが困難な数以上であるものとする。
【0033】
図1に戻り、説明を続ける。次に、第1変換モデル12Bおよび得点管理情報12Cについて説明する。第1変換モデル12Bは、得点ベクトルを音響モデルに変換するためのモデルである。第1変換モデル12Bは、処理部14によって学習され、記憶部12へ記憶される(詳細後述)。
【0034】
得点管理情報12Cは、ユーザによる話者の検索時に用いられるデータベースである。得点管理情報12Cは、後述する処理部14によって登録される(詳細後述)。
【0035】
次に、処理部14について説明する。処理部14は、話者検索装置10を制御する。処理部14は、第1学習部14Aと、第1変換部14Bと、受付部14Cと、検索部14Dと、表示制御部14Eと、第2変換部14Fと、合成部14Gと、再生部14Hと、を含む。
【0036】
上記各部(第1学習部14A、第1変換部14B、受付部14C、検索部14D、表示制御部14E、第2変換部14F、合成部14G、再生部14H)は、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば上記各部は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。上記各部は、専用のIC(Integrated Circuit)などのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2以上を実現してもよい。
【0037】
また、上記各部の少なくとも1つは、クラウド上で処理を実行するクラウドサーバに搭載されていてもよい。
【0038】
第1学習部14Aは、話者管理情報12Aから第1変換モデル12Bを学習する。第1変換モデル12Bは、上述したように、得点ベクトルを音響モデルに変換するためのモデルである。
【0039】
第1学習部14Aは、話者管理情報12Aに登録されている複数の話者IDの内、得点ベクトルの登録されている複数の話者IDを特定する。そして、第1学習部14Aは、特定した複数の話者IDの各々に対応する音響モデルと、該話者IDの各々に対応する得点ベクトルと、を用いて、1つの第1変換モデル12Bを学習する。
【0040】
例えば、第1学習部14Aは、非特許文献2に開示されている重回帰HSMM(隠れセミマルコフモデル)や、非特許文献3に開示されているクラスタ適応学習などを用いて、話者管理情報12Aから第1変換モデル12Bを学習する。
【0041】
(非特許文献2)Tachibana et al. “A technique for controlling voice quality of synthetic speech using multiple regression HSMM,” in Proceedings of INTERSPEECH 2006, pp.2438-2441(2006)
(非特許文献3)大谷他、統計的音声合成におけるクラスタ適応学習を利用した知覚表現語による話者制御法の検討、音響学会(春)講演論文集(2016)
【0042】
本実施の形態では、第1学習部14Aは、重回帰HSMMを用いて第1学習部14Aを学習する場合を、一例として説明する。しかし、第1学習部14Aは、他の手法を用いて、話者管理情報12Aから第1変換モデル12Bを学習してもよい。例えば、第1学習部14Aは、ベクトルからベクトルへの写像を学習するアルゴリズム、たとえばニューラルネットワークなどを用いて、第1変換モデル12Bを学習してもよい。
【0043】
重回帰HSMMを用いる場合、第1変換モデル12Bは、下記式(1)で表される。
【0045】
式(1)は、第1変換モデル12Bを示す式である。式(1)中、μは、正規分布で表される音響モデルの平均ベクトルを示す。μは、スーパーベクトルと称される場合がある。スーパーベクトルは、正規分布で表される音響モデルの平均ベクトルを、決定木の全リーフノードの平均ベクトルをつなげたベクトルで表したものである。
【0046】
また、式(1)中、sは、得点ベクトルを示す。また、Hは、変換行列を示す。bは、バイアスベクトルを示す。s(得点ベクトル)は、下記式(2)で表される。
【0047】
s=(s1,s2,・・・sL) ・・・式(2)
【0048】
式(2)中、sは、得点ベクトルを表す。si(iは1以上L以下の整数)は、得点ベクトルのi番目の種類の声質の特徴の得点である。Lは、声質の特徴の種類の数である。
【0049】
重回帰HSMMを用いる場合、第1学習部14Aは、話者管理情報12Aに含まれる話者IDの内、得点ベクトルの対応付けられた話者IDを特定する。そして、第1学習部14Aは、話者管理情報12Aにおける、特定した話者IDに対応する音響モデルの平均ベクトルμと、該話者IDに対応する得点ベクトルsと、を学習データとして用いる。第1学習部14Aは、学習データを用いて、変換行列Hと、バイアスベクトルbと、を最尤推定により求める。
【0050】
これにより、第1学習部14Aは、式(1)によって示される第1変換モデル12Bを生成し、記憶部12へ登録する。すなわち、第1学習部14Aによって、変換行列Hとバイアスベクトルbの特定された式(1)が、第1変換モデル12Bとして記憶部12へ記憶される。
【0051】
第1変換モデル12Bを用いることで、得点ベクトルsから音響モデル(音響モデルの平均ベクトルμ)を導出することができる。すなわち、第1変換モデル12Bを用いることで、処理部14は、任意の得点ベクトルによって表される声質の音声を、合成可能となる。
【0052】
次に、第1変換部14Bについて説明する。第1変換部14Bは、第1変換モデル12Bを用いて、話者管理情報12Aに登録されている音響モデルを得点ベクトルに変換し、話者IDに対応づけて得点管理情報12Cへ登録する。第1変換モデル12Bは得点ベクトルを音響モデルへ変換するためのモデルである。このため、第1変換部14Bは、第1変換モデル12Bの逆変換モデルを用いて、話者管理情報12Aに登録されている音響モデルを得点ベクトルに変換し、得点管理情報12Cへ登録する。
【0053】
まず、得点管理情報12Cについて説明する。
図4は、得点管理情報12Cのデータ構成の一例を示す模式図である。
【0054】
得点管理情報12Cは、話者管理情報12Aと同様に、話者IDと、音声データと、音声のテキストと、音響特徴量と、言語特徴量と、音響モデルと、得点ベクトルと、を対応づけたデータベースである。なお、得点管理情報12Cのデータ形式は、データベースに限定されない。例えば、得点管理情報12Cは、テーブルであってもよい。
【0055】
得点管理情報12Cには、話者管理情報12Aに示されるデータの全てが登録されている。そして、得点管理情報12Cには、話者管理情報12Aにおける、得点ベクトルの未登録の話者IDに対応づけて、第1変換部14Bで変換された得点ベクトルが更に登録されている。
【0056】
このため、
図4に示すように、話者管理情報12A(
図2参照)において登録されていた得点ベクトル(Sa)は、得点管理情報12Cにそのまま反映される。一方、話者管理情報12Aにおいて、得点ベクトルの未登録の話者ID(例えば、話者ID“C”、“E”)については、得点管理情報12Cでは、第1変換部14Bで変換された得点ベクトル(Sb)が登録された状態となる。
【0057】
図1に戻り説明を続ける。本実施の形態では、第1変換部14Bは、話者管理情報12Aにおける、得点ベクトルの未登録の話者IDを特定する。
図2に示す話者管理情報12Aの構成の場合、第1変換部14Bは、得点ベクトルの未登録の話者ID(例えば、話者ID“C”、“D”、“E”)を特定する。
【0058】
そして、第1変換部14Bは、第1変換モデル12Bの逆変換モデルを用いて、特定した話者IDに対応する音響モデルを、該話者IDに対応する得点ベクトルに変換する。
【0059】
詳細には、第1変換部14Bは、第1変換モデル12Bを示す式(1)を変形し、逆変換モデルを示す下記式(3)を導出する。下記式(3)は、第1変換モデル12Bの逆写像の逆変換モデルを示す式である。
【0060】
s=(H
TH)
−1H
T(μ−b) ・・・式(3)
【0061】
式(3)中、s、H、μ、およびbの定義は、上記式(1)および式(2)と同様である。
【0062】
第1変換部14Bは、第1変換モデル12Bから、変換行列Hとバイアスベクトルbを特定する。そして、第1変換部14Bは、該変換行列Hとバイアスベクトルbをあてはめた式(3)を、第1変換モデル12Bの逆変換モデルとして用いる。そして、第1変換部14Bは、話者管理情報12Aにおける得点ベクトルの未登録の話者IDに対応する音響モデルの平均ベクトルμから、得点ベクトルS(
図4では得点ベクトルSb)を導出する。そして、第1変換部14Bは、導出した得点ベクトルを、対応する話者IDに対応づけて、得点管理情報12Cへ登録する。
【0063】
本実施の形態では、第1変換部14Bは、話者管理情報12Aに登録されているデータの全てを、得点管理情報12Cへ登録した後に、更に、第1変換部14Bで導出した得点ベクトルを、対応する話者IDに対応づけて、得点管理情報12Cへ登録する。
【0064】
このため、上述したように、話者管理情報12A(
図2参照)において登録されていた得点ベクトル(Sa)は、得点管理情報12Cにそのまま反映される(
図4参照)。一方、話者管理情報12Aにおいて、得点ベクトルの未登録の話者ID(例えば、話者ID“C”、“E”)に対して、得点管理情報12Cでは、第1変換部14Bで変換された得点ベクトルSbが登録された状態となる。なお、
図2および
図4に示す例では、話者ID“D”には、音響モデルが対応づけられていないため、第1変換部14Bは、得点ベクトルを導出できない。このため、本実施の形態では、話者ID“D”については、得点管理情報12Cには、得点ベクトルが登録されない。
【0065】
なお、得点管理情報12Cにおける得点ベクトルの全てが、第1変換部14Bで変換された得点ベクトルであってもよい。この場合、第1変換部14Bは、話者管理情報12Aに登録されている全ての話者IDの各々に対応する音響モデルを、第1変換モデル12Bの逆変換モデルを用いて得点ベクトルに変換し、得点管理情報12Cへ登録すればよい。
【0066】
なお、本実施の形態では、話者管理情報12Aと第1変換モデル12Bとが別々のデータベースである場合を一例として示した。しかし、話者管理情報12Aと第1変換モデル12Bとを、1つの管理情報(すなわち1つのデータベース)として構成してもよい。
【0067】
また、得点管理情報12Cには、少なくとも、話者IDに対応する得点ベクトルが登録されていればよく、音声データ、音声のテキスト、音響特徴量、言語特徴量、および、音響モデルの少なくとも1つが登録されていない形態であってもよい。
【0068】
なお、重回帰HSMMを用いる場合、第1変換部14Bは、上述したように、第1変換モデル12Bの逆変換モデルを用いて、音響モデルから得点ベクトルを導出することができる。一方、ニューラルネットワークのように解析的に逆写像が求められない手法を用いる場合、第1変換部14Bは、第1変換モデル12Bと同様に、音響モデルの平均ベクトルμから得点ベクトルへの写像をモデル化したモデルを別途学習すればよい。そして、第1変換部14Bは、このモデルを用いて、音響モデルから得点ベクトルを導出すればよい。
【0069】
図1に戻り説明を続ける。受付部14Cは、得点ベクトルの入力を受付ける。ユーザは、入力部18Aを操作することで、検索対象の話者の音声の特徴を示す、得点ベクトルを入力する。上述したように、得点ベクトルは、話者の主観的な特徴を、声質を表す主観的な種類に応じたラベルの付与された軸を用いて表した、ベクトルである。このため、ユーザは、物理的特徴量ではなく、声質を表す主観的なラベルを用いて、検索対象の所望の声質を入力することができる。
【0070】
得点ベクトルの入力時には、表示制御部14Eの制御によって、表示部18Bには、入力画面が表示される。
【0071】
表示制御部14Eは、各種画像や情報を表示部18Bへ表示する制御を行う。本実施の形態では、表示制御部14Eは、得点ベクトルの入力を受付けるための入力画面を表示部18Bへ表示する。
【0072】
図5は、入力画面30の一例を示す模式図である。入力画面30は、得点ベクトル入力欄30Aと、得点ベクトル表示欄30Bと、再生ボタン30Cと、決定ボタン30Dと、を含む。
【0073】
得点ベクトル入力欄30Aは、ユーザの所望の、検索対象の話者の声質の特徴を示す得点ベクトルを入力するための入力欄である。例えば、得点ベクトル入力欄30Aには、声質の特徴の種類ごとに、得点を入力するためのスライダーバー30Fが表示されている。ユーザは、入力画面30を参照しながら入力部18Aを操作し、スライダーバー30Fに示されるつまみ30Eの位置を調整する。この操作によって、ユーザは、声質の特徴の種類ごとに、得点を入力する。
【0074】
得点ベクトル表示欄30Bは、得点ベクトル入力欄30Aによって入力された得点ベクトルによって示される得点を、声質の特徴の種類ごとに表した表示欄である。
【0075】
再生ボタン30Cは、得点ベクトル表示欄30Bに表示されている得点ベクトルに応じて合成された音声の再生を指示するときに、ユーザによって操作指示される。決定ボタン30Dは、得点ベクトル表示欄30Bに表示されている得点ベクトルに応じた話者の検索実行を指示するときに、ユーザによって操作指示される。
【0076】
入力画面30の得点ベクトル入力欄30Aに、ユーザによる入力部18Aの操作指示によって得点ベクトルが入力され、再生ボタン30Cが操作指示される。
【0077】
すると、UI部18は、再生ボタン30Cが操作指示されたときに入力画面30に表示された得点ベクトル表示欄30Bに示される得点の得点ベクトルと、再生指示と、を処理部14へ出力する。
【0078】
これによって、処理部14の受付部14Cは、得点ベクトルと再生指示とを受付ける。
【0079】
図1に戻り説明を続ける。受付部14Cは、得点ベクトルと再生指示を入力部18Aから受付けると、受付けた得点ベクトルを、第2変換部14Fへ出力する。
【0080】
第2変換部14Fは、受付けた得点ベクトルを、第1変換モデル12Bを用いて音響モデルに変換する。すなわち、第2変換部14Fは、第1変換モデル12Bを用いることで、ユーザによる入力部18Aの操作指示によって入力された得点ベクトルを、該得点ベクトルの表す声質の話者の音響モデルに変換する。そして、第2変換部14Fは、変換した音響モデルを合成部14Gへ出力する。
【0081】
合成部14Gは、第2変換部14Fから受付けた音響モデルから音声を合成する。音響モデルから音声を合成する方法には、公知の方法を用いればよい。
【0082】
例えば、合成部14Gは、音響モデルを用いて、任意のテキストから抽出した言語特徴量を音響特徴量に変換し、ボコーダを用いて、音響特徴量から音声を合成する(例えば、参考文献1参照)。
【0083】
(参考文献1)Keiichi Tokuda “Speech Synthesis based on Hidden Markov Models,” in Proceedings of the IEEE, vol. 101, no.5, pp.1234-1252, 2013.
【0084】
ここで、従来手法では、メルケプストラム係数を太さ、F0を声の高さ、周期・非周期成分をかすれ、など、物理特徴量と得点を一対一に対応させることがよく行われていた。一方、本実施の形態では、第1学習部14Aが、専用の変換モデルである第1変換モデル12Bを、話者管理情報12Aから学習する。このため、合成部14Gは、第1変換モデル12Bを用いることで、任意の話者の音響モデルから、人が主観的に感じる特徴の声質の音声を合成できる。
【0085】
再生部14Hは、合成部14Gで合成された音声を再生するように音声出力部16を制御する。音声出力部16は、合成部14Gで合成された音声を再生する。このため、ユーザは、入力部18Aの操作指示によって入力した得点ベクトルに応じた音声を確認することができる。また、ユーザは、入力画面30の操作時に、再生ボタン30Cを操作することで、入力中の得点ベクトルに応じた音声を確認しながら、検索対象の所望の得点ベクトルを入力することができる。
【0086】
そして、ユーザは、検索対象として用いる得点ベクトルが定まったときに、入力画面30における決定ボタン30Dを操作指示すればよい。
【0087】
すなわち、入力画面30の得点ベクトル入力欄30Aに、ユーザによる入力部18Aの操作指示によって得点ベクトルが入力され、決定ボタン30Dが操作指示される。すると、UI部18は、決定ボタン30Dが操作指示されたときに入力画面30に表示された得点ベクトル表示欄30Bに示される得点の得点ベクトルと、検索実行指示と、を処理部14へ出力する。
【0088】
処理部14の受付部14Cは、得点ベクトルと検索実行指示とを受付ける。
【0089】
受付部14Cは、得点ベクトルと検索実行指示とをUI部18から受付けると、該得点ベクトルを検索部14Dへ出力する。
【0090】
検索部14Dは、得点管理情報12Cから、受付けた得点ベクトルに類似する得点ベクトルに対応する話者IDを、検索する。
【0091】
詳細には、検索部14Dは、ユークリッド距離などを用いて、入力部18Aから受付部14Cを介して受付けた得点ベクトルと、得点管理情報12Cに登録されている得点ベクトルの各々と、の距離を計算する。ユークリッド距離は、例えば、下記式(4)で表される。
【0093】
式(4)中、sは、受付部14Cを介して入力部18Aから受付けた、検索対象(すなわち、検索クエリ(キー))の得点ベクトルを示す。sは、上記式(2)で表される。
また、式(4)中、si(iは1以上L以下の整数)は、受付けた得点ベクトルのi番目の種類の声質の特徴の得点である。
【0094】
また、式(4)中、ti(iは1以上L以下の整数)は、得点管理情報12Cに登録されている得点ベクトルのi番目の種類の声質の特徴の得点である。なお、得点管理情報12Cに登録されている得点ベクトルと、受付部14Cで入力部18Aから受付けた得点ベクトルと、の声質の特徴の種類は同じであるものとする。
【0095】
また、式(4)中、tは、得点管理情報12Cに登録されている得点ベクトルを示す。tは、下記式(5)で表される。
【0096】
t=(t1,t2,・・・tL) ・・・式(5)
【0097】
式(5)中、Lは、上記と同様に、声質の特徴の種類の数である。
【0098】
そして、検索部14Dは、得点管理情報12Cに登録されている得点ベクトルの内、入力部18Aから受付部14Cを介して受付けた得点ベクトルとの距離の近い上位K個の得点ベクトルを特定する(Kは1以上の整数)。そして、検索部14Dは、得点管理情報12Cにおける、特定した該得点ベクトルに対応する話者IDを特定する。これによって、検索部14Dは、得点管理情報12Cから、受付部14Cで受付けた得点ベクトルに類似する話者IDを検索する。
【0099】
すなわち、本実施の形態では、検索部14Dは、メルケプストラム係数やF0などの物理特徴量で話者の声間の類似度を求めるのではなく、これらの人の主観的な判断を反映した得点ベクトルを用いて、類似する話者IDを検索する。
【0100】
なお、検索部14Dは、声質の特徴の種類に対する重み付けを行った得点ベクトルを用いて、話者IDを検索してもよい。
【0101】
この場合、表示制御部14Eは、入力画面30に、声質の特徴の種類ごとに、得点を入力するための入力領域(
図5ではスライダーバー30F)と共に、重み付け値の入力欄を設け、表示部18Bへ表示すればよい。
【0102】
そして、ユーザは、入力画面30を参照しながら入力部18Aを操作することで、声質の特徴の種類ごとに、重み付け値を更に入力すればよい。この場合、受付部14Cは、声質の特徴の種類ごとの得点を示す得点ベクトルと、声質の特徴の種類に対する重み付け値と、検索実行指示と、を受付ける。
【0103】
そして、検索部14Dは、受付けた前記得点ベクトルに含まれる、声質の特徴の種類ごとの得点を、対応する重み付け値で重み付けした得点ベクトルを、検索クエリ(キー)として用いて、上記と同様にして、得点管理情報12Cから類似する話者IDを検索すればよい。
【0104】
詳細には、検索部14Dは、下記式(6)に示されるユークリッド距離を用いて、入力部18Aから受付部14Cを介して受付けた得点ベクトルと、得点管理情報12Cに登録されている得点ベクトルの各々と、の距離を計算する。
【0106】
式(6)中、s、si、t、tiは、上記式(4)と同様である。式(6)中、wは、重み付け値を示す。式(6)中、wiは、i番目の種類の声質の特徴に対する、重み付け値を示す。
【0107】
このように、検索部14Dは、声質の特徴の種類に対する重み付けを行った得点ベクトルを用いて、話者IDを検索してもよい。
【0108】
重み付けを行うことで、ユーザの所望の話者IDが検索されやすくなる。なお、処理部14は、人の主観的な声の類似尺度に合うように、声質の特徴の種類に対する最適化した重み付けを、予め行っておいてもよい。
【0109】
検索部14Dは、検索した話者ID、および、得点管理情報12Cにおける該話者IDに対応する得点ベクトルを、表示制御部14Eへ出力する。表示制御部14Eは、検索部14Dで検索された話者IDを含む表示画面を、表示部18Bへ表示する。
【0110】
図6は、表示画面32の一例を示す模式図である。表示画面32は、得点ベクトル表示欄32Aと、得点ベクトル表示欄32Bと、検索結果表示欄32Cと、再生ボタン32Dと、を含む。
【0111】
得点ベクトル表示欄32Aおよび得点ベクトル表示欄32Bは、検索クエリとして用いた得点ベクトルの表示欄である。検索結果表示欄32Cは、得点ベクトル表示欄32Aおよび得点ベクトル表示欄32Bに表示された得点ベクトルを用いて検索された、話者IDの検索結果の表示欄である。
【0112】
図6に示す例では、検索結果表示欄32Cには、検索部14Dで検索された話者IDの一覧と、各話者IDに対応する得点ベクトルと、が表示される。なお、
図6には、上記K(受付けた得点ベクトルとの距離の近い上位K個)が、“3”である場合を一例として示している。すなわち、
図6には、得点ベクトル表示欄32Aおよび得点ベクトル表示欄32Bに示される得点ベクトルに類似する、得点ベクトルに対応するK個の話者IDとして、3個の話者IDを検索した例を示している。
【0113】
検索結果表示欄32Cにおける、各話者IDの各々に対応する領域には、再生ボタン32D(32D1〜32D3)が表示されている。再生ボタン32Dは、対応する話者IDの得点ベクトルに応じて合成された音声の再生を指示するときに、ユーザによって操作指示される。
【0114】
ユーザは、入力部18Aを操作することで、再生ボタン32Dを操作指示する。すると、UI部18は、該再生ボタン32Dに対応する得点ベクトルと、再生指示と、を処理部14へ出力する。例えば、再生ボタン32D1が操作指示されたと仮定する。すると、UI部18は、該再生ボタン32D1に対応する、話者ID“A”に対応する得点ベクトル(検索結果表示欄32Cに表示されている得点ベクトル)と、再生指示と、を処理部14へ出力する。
【0115】
処理部14は、UI部18から、得点ベクトルと再生指示を受付けると、受付部14C、第2変換部14F、合成部14G、および再生部14Hが、上記と同様の処理を行う。このため、ユーザによって操作指示された再生ボタン32Dに対応する話者IDの得点ベクトルが、音響モデルに変換され、該音響モデルから合成された音声が、音声出力部16から再生される。
【0116】
このため、ユーザは、検索結果表示欄32Cに示される各話者IDの各々に対応する音声を確認することができる。
【0117】
なお、検索部14Dは、検索結果を、ネットワークなどの通信回線を介して外部装置へ送信してもよい。この場合、検索部14Dは、検索クエリとして用いた得点ベクトルと、検索した話者の話者IDと、該話者IDに対応する得点ベクトルと、を外部装置へ送信する。これにより、これらの情報を受付けた外部装置側で、入力した得点ベクトルに応じた話者の検索結果を確認することが可能となる。
【0118】
次に、話者検索装置10で実行する検索処理の手順の一例を説明する。
【0119】
図7は、検索処理の手順の一例を示す、フローチャートである。まず、第1学習部14Aが、話者管理情報12Aを用いて第1変換モデル12Bを学習する(ステップS100)。第1学習部14Aは、学習した第1変換モデル12Bを、記憶部12へ記憶する(ステップS102)。
【0120】
次に、第1変換部14Bが、話者管理情報12Aに登録されている音響モデルを、第1変換モデル12Bを用いて得点ベクトルに変換し(ステップS104)、得点管理情報12Cへ登録する(ステップS106)。次に、処理部14は、話者検索処理を実行する(ステップS108)。そして、本ルーチンを終了する。
【0121】
図8は、話者検索処理(
図7のステップS108)の手順の一例を示すフローチャートである。
【0122】
まず、処理部14は、記憶部12に記憶されている第1変換モデル12Bを読込む(ステップS200)。次に、表示制御部14Eが、入力画面30をUI部18に表示する(ステップS202)。ステップS202の処理によって、UI部18には、例えば、
図5に示す入力画面30が表示される。
【0123】
ユーザは、入力画面30を参照しながら入力部18Aを操作し、声質の特徴の種類ごとに得点を入力する。これによって、ユーザは、検索対象の話者の声質の特徴に応じた得点ベクトルを入力する。そして、ユーザは、再生ボタン30Cを操作指示する。
【0124】
次に、受付部14Cは、得点ベクトルの入力を受付けたと判断するまで(ステップS204:Yes)、否定判断を繰返す(ステップS204:No)。例えば、受付部14Cは、入力部18Aから得点ベクトルおよび再生指示を受付けたか否かを判別することで、ステップS204の判断を行う。
【0125】
ステップS204で肯定判断すると(ステップS204:Yes)、ステップS206へ進む。ステップS206では、第2変換部14Fが、ステップS204で受付けた得点ベクトルを、第1変換モデル12Bを用いて音響モデルに変換する(ステップS206)。次に、合成部14Gが、ステップS206で変換された音響モデルから音声を合成する(ステップS208)。そして、再生部14Hが、ステップS208で合成された音声を出力するように、音声出力部16を再生制御する(ステップS210)。
【0126】
ステップS210の処理によって、ユーザの操作によって入力された得点ベクトルに応じた音声が、音声出力部16から出力される。
【0127】
次に、受付部14Cは、検索実行指示を受付けたか否かを判断する(ステップS212)。ステップS212では、受付部14Cは、得点ベクトルおよび検索実行指示を、入力部18Aから受付けたか否かを判別することで、ステップS212の判断を行う。なお、ステップS204で否定判断した場合、ステップS212の判断を行ってもよい。
【0128】
ステップS212で否定判断すると(ステップS212:No)、上記ステップS204へ戻る。一方、ステップS212で肯定判断すると(ステップS212:Yes)、ステップS214へ進む。
【0129】
ステップS214では、検索部14Dが、得点管理情報12Cから、ステップS212で受付けた得点ベクトルに類似する得点ベクトルに対応する話者IDを検索する(ステップS214)。
【0130】
次に、表示制御部14Eが、ステップS214で検索された話者IDを含む表示画面32を、表示部18Bへ表示する(ステップS216)。ステップS216の処理によって、例えば、表示部18Bには、
図6に示す表示画面32が表示される。
【0131】
次に、受付部14Cが、入力部18Aから再生指示を受付けたか否かを判断する(ステップS218)。ステップS218で否定判断すると(ステップS218:No)、後述するステップS226へ進む。一方、ステップS218で肯定判断すると(ステップS218:Yes)、ステップS220へ進む。
【0132】
ステップS220では、第2変換部14Fが、ステップS218で再生指示と共に受付けた得点ベクトルを、第1変換モデル12Bを用いて音響モデルに変換する(ステップS220)。次に、合成部14Gが、ステップS220で変換された音響モデルから音声を合成する(ステップS222)。そして、再生部14Hが、ステップS222で合成された音声を出力するように、音声出力部16を再生制御する(ステップS224)。
【0133】
ステップS224の処理によって、ユーザの操作によって入力された得点ベクトルに応じた音声が、音声出力部16から出力される。
【0134】
次に、処理部14は、処理を終了するか否かを判断する(ステップS226)。処理部14は、例えば、ユーザによる入力部18Aの操作指示によって、処理終了を指示するための予め定められたボタンが操作されたか否かを判別することで、ステップS226の判断を行う。ステップS226で否定判断すると(ステップS226:No)、上記ステップS218へ戻る。なお、ステップS226で否定判断した場合、上記ステップS202へ戻ってもよい。ステップS226で肯定判断すると(ステップS226:Yes)、本ルーチンを終了する。
【0135】
以上説明したように、本実施の形態の話者検索装置10は、第1変換部14Bと、受付部14Cと、検索部14Dと、を備える。第1変換部14Bは、声質の特徴を表す得点ベクトルを音響モデルに変換するための第1変換モデル12Bの逆変換モデルを用いて、予め登録された音響モデルを得点ベクトルに変換し、話者ID(話者識別情報)に対応づけて得点管理情報12Cに登録する。受付部14Cは、得点ベクトルの入力を受付ける。検索部14Dは、得点管理情報12Cから、受付けた得点ベクトルに類似する話者ID(話者識別情報)を検索する。
【0136】
ここで、従来では、ユーザ所望の話者の音声データを、検索クエリとして用いて、ユーザ所望の音声の話者を検索していた。このため、従来では、ユーザ所望の話者の音声データを事前に登録しておかなければ、話者を検索することができなかった。
【0137】
一方、本実施の形態の話者検索装置10は、声質の特徴を表す得点ベクトルを検索クエリとして用いて、得点管理情報12Cから、受付けた得点ベクトルに類似する話者IDを検索する。また、本実施の形態の話者検索装置10は、声質の特徴を表す得点ベクトルを音響モデルに変換するための第1変換モデル12Bを用いて、予め登録された音響モデルを得点ベクトルに変換し、話者ID(話者識別情報)に対応づけて得点管理情報12Cに登録する。
【0138】
従って、本実施の形態の話者検索装置10は、声質類似度の高い話者を検索することができる。
【0139】
また、従来では、膨大な話者の各々に対応する音声データを、予めカテゴリごとに分類し、所望の話者を検索する手法がとられていた。しかし、登録する話者の数が膨大になるほど、分類作業の負荷やコストも膨大となっていた。
【0140】
一方、本実施の形態の話者検索装置10は、声質の特徴を表す得点ベクトルを検索クエリとして用いて、得点管理情報12Cから、受付けた得点ベクトルに類似する話者IDを検索する。
【0141】
このため、本実施の形態の話者検索装置10は、検索の母体となるデータベースに登録されている話者の音声を予め分類する負荷やコストの増大を招くことなく、声質類似度の高い話者を検索することができる。
【0142】
また、従来では、話者間の類似度を、メル周波数ケプストラム係数、基本周波数(F0)などの基本的な物理特徴量間の比較によって導出していた。このため、従来では、これらの物理特徴量間の類似度と人が主観的に感じる話者間の近さが一致しない場合があった。
【0143】
一方、本実施の形態の話者検索装置10において、検索クエリとして用いる得点ベクトルは、話者の声質の主観的な特徴を表す。このため、本実施の形態の話者検索装置10は、上記効果に加えて、主観的な声質類似度の高い話者を検索することができる。
【0144】
(第2の実施の形態)
上記実施の形態では、得点管理情報12Cには、話者管理情報12Aに登録されている全てのデータと、第1変換部14Bで登録された得点データと、が登録されている場合を示した。
【0145】
すなわち、上記実施の形態では、得点管理情報12Cには、予め話者管理情報12Aに登録されていた得点データと、第1変換部14Bによって音響モデルから導出された得点データと、が登録されている場合を示した。
【0146】
本実施の形態では、得点管理情報12Cに、音響特徴量から導出した得点ベクトルを更に登録する形態を説明する。
【0147】
図9は、本実施の形態の話者検索装置10Aの一例を示す図である。
【0148】
話者検索装置10Aは、記憶部13と、処理部15と、音声出力部16と、UI部18と、を備える。記憶部13、音声出力部16、およびUI部18と、処理部15と、は、バスなどを介してデータや信号を授受可能に接続されている。音声出力部16およびUI部18は、第1の実施の形態と同様である。
【0149】
記憶部13は、各種データを記憶する。記憶部13は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。なお、記憶部13は、話者検索装置10Aの外部に設けられた記憶装置であってもよい。また、記憶部13は、記憶媒体であってもよい。また、記憶部13を、複数の記憶媒体から構成してもよい。
【0150】
本実施の形態では、記憶部13は、話者管理情報12Aと、第1変換モデル12Bと、得点管理情報13Cと、第3変換モデル13Dと、音声管理情報13Eと、を記憶する。話者管理情報12Aおよび第1変換モデル12Bは、第1の実施の形態と同様である。
【0151】
音声管理情報13Eは、話者の音声に関する情報である。音声管理情報13Eは、第3変換モデル13Dの学習に用いるための音声に関する情報が登録されている。音声管理情報13Eは、記憶部13に予め記憶されている。
【0152】
図10は、音声管理情報13Eのデータ構成の一例を示す模式図である。音声管理情報13Eは、話者IDと、音声データと、を対応づけたデータベースである。なお、音声管理情報13Eのデータ形式は、データベースに限定されない。例えば、音声管理情報13Eは、テーブルであってもよい。
【0153】
話者IDは、第1の実施の形態と同様に、話者を識別する識別情報(話者識別情報)である。なお、音声管理情報13Eには、話者管理情報12A(
図2参照)に登録されている話者IDの内、少なくとも音響モデルの対応付けられていない話者ID(例えば、話者ID“D”)が登録されている。また、音声管理情報13Eには、話者管理情報12Aに登録されていない話者の話者ID(例えば、話者ID“X”、“Y”、“Z”)が登録されている。
【0154】
なお、音声管理情報13Eには、上記話者IDに加えて、更に、話者管理情報12Aに登録されている話者IDの少なくとも一部も登録されていてもよい。
【0155】
音声管理情報13Eには、話者IDに対応づけて、複数の音声データが登録されている。なお、音声管理情報13Eにおける、各話者IDに対応して登録されている音声データの数は、話者管理情報12Aの各話者IDに対応して登録されている音声データの数(N個)より少ない数であって、且つ、1より多い数であればよい。
【0156】
図9に戻り説明を続ける。第3学習部15Jは、話者管理情報12Aから第3変換モデル13Dを学習する。第3変換モデル13Dは、音響特徴量を得点ベクトルに変換するためのモデルである。
【0157】
第3学習部15Jは、話者管理情報12Aに登録されている話者IDの各々に対応する音響特徴量と、該話者管理情報12Aにおける話者IDの各々に対応する得点ベクトルと、を用いて、第3変換モデル13Dを学習する。
【0158】
第3学習部15Jは、音響特徴量のベクトルから得点ベクトルへの写像を学習する公知の手法を用いて、第3変換モデル13Dを学習すればよい。例えば、第3学習部15Jは、線形回帰モデル、カーネル回帰モデル、ニューラルネットワークなどを用いて、第3変換モデル13Dを学習する。なお、第3学習部15Jは、これらのモデルのパラメータを、話者管理情報12Aに含まれる話者IDの各々に対応する音響特徴量および得点ベクトルを用いて、推定すればよい。
【0159】
そして、第3学習部15Jは、学習した第3変換モデル13Dを、記憶部13へ記憶する。
【0160】
特徴抽出部15Kは、音声管理情報13Eに登録されている音声データから、音響特徴量を抽出する。詳細には、特徴抽出部15Kは、音声管理情報13Eに登録されている話者IDごとに、音声データから音響特徴量を抽出する。音響特徴量は、ベクトルで表される。なお、特徴抽出部15Kは、公知の方法を用いて、音声データから音響特徴量を抽出すればよい。
【0161】
なお、音響特徴量は、音響モデルの生成に比べて、少ない数の音声データから抽出することできる。このため、上述したように、音声管理情報13Eにおける、各話者IDに対応して登録されている音声データの数は、話者管理情報12Aの各話者IDに対応して登録されている音声データの数(N個)より少ない数であって、且つ、1より多い数であればよい。
【0162】
第3変換部15Lは、第3変換モデル13Dを用いて、話者の音響特徴量を得点ベクトルに変換し、得点管理情報13Cへ登録する。
【0163】
詳細には、第3変換部15Lは、音声管理情報13Eから特徴抽出部15Kによって、話者IDごとに抽出された音声特徴量を、第3変換モデル13Dを用いて得点ベクトルに変換する。そして、第3変換部15Lは、音声管理情報13Eに登録されている話者IDと、変換した得点ベクトルと、を対応付けて、得点管理情報13Cへ登録する。
【0164】
得点管理情報13Cは、得点管理情報12Cと同様に、ユーザによる話者の検索時に用いられるデータベースである。得点管理情報13Cは、第1変換部14Bおよび第3変換部15Lによって登録および更新される。
【0165】
図11は、得点管理情報13Cのデータ構成の一例を示す模式図である。得点管理情報13Cは、話者管理情報12Aおよび第1の実施の形態の得点管理情報12Cと同様に、話者IDと、音声データと、音声のテキストと、音響特徴量と、言語特徴量と、音響モデルと、得点ベクトルと、を対応づけたデータベースである。なお、得点管理情報13Cのデータ形式は、データベースに限定されない。例えば、得点管理情報13Cは、テーブルであってもよい。
【0166】
得点管理情報13Cは、話者管理情報12Aにおける、得点ベクトルの未登録の話者IDに対応づけて、第1変換部14Bで変換された得点ベクトルと、第3変換部15Lで変換された得点ベクトルと、を更に登録したものである。
【0167】
ここで、第1の実施の形態で用いた得点管理情報12C(
図4参照)には、予め話者管理情報12Aに登録されていた得点ベクトルSaと、第1変換部14Bによって音響モデルから変換された得点ベクトルSbと、が登録されている。このため、得点管理情報12Cには、話者管理情報12Aにおいて音響モデルの未登録の話者ID(例えば、話者ID“D”)については、得点ベクトルが登録されていなかった(
図4参照)。
【0168】
一方、本実施の形態で用いる得点管理情報13Cには、
図11に示すように、第1の実施の形態における得点管理情報12C(
図4参照)に登録されている得点ベクトル(得点ベクトル(Sa)、(Sb)に加えて、音響特徴量から変換された得点ベクトル(Sc)が登録されている。このため、得点管理情報13Cには、話者管理情報12Aにおいて音響モデルが未登録であった話者ID(例えば、話者ID“D”)に対する、得点ベクトルも、登録される。
【0169】
また、音声管理情報13Eには、話者管理情報12Aに未登録の話者IDに対応する音声データが登録されている。そして、第3変換部15Lは、この音声管理情報13Eから特徴抽出部15Kによって抽出された音響特徴量を用いて、得点ベクトルを導出し、得点管理情報13Cへ登録する。
【0170】
このため、得点管理情報13Cには、第1の実施の形態で用いた得点管理情報12Cに比べて、より多い話者の話者IDに対応する得点ベクトルが登録され、類似話者検索の対象とすることができる。
【0171】
また、第1の実施の形態における、第1変換部14Bによって登録された得点ベクトル(Sb)は、音響モデルから導出されたものである。このため、音響モデルから導出された得点ベクトルを用いて、第2変換部14Fおよび合成部14Gによって合成される音声は、合成音(実際の話者の肉声ではない合成された音声)である。
【0172】
一方、第3変換部15Lによって登録される得点ベクトルは、音声管理情報13Eから特徴抽出部15Kによって抽出された音響特徴量から、第3変換モデル13Dを用いて導出されたものである。このため、音響特徴量から導出された得点ベクトルを用いて、第2変換部14Fおよび合成部14Gによって合成される音声は、実際の話者の肉声または肉声により近い音声となる。
【0173】
このため、検索部14Dが、得点管理情報12Cに代えて得点管理情報13Cから、受付部14Cで受付けた得点ベクトルに類似する、得点ベクトルに対応する話者IDを検索することで、検索部14Dは、合成音に加えて肉声の音声の話者を検索することができる。
【0174】
また、本実施の形態の話者検索装置10Aでは、共通の得点ベクトルを用いて、合成音および肉声の双方の音声の話者を検索することができる。このため、合成音と肉声を横断的に検索することができる。
【0175】
このため、例えば、ユーザは、所望の合成音の音質に満足できれば、音響モデルを使用する。そして、音質に不満であれば、ユーザは、入力した得点ベクトルに類似する肉声の声質の話者IDの検索結果を用いて、該話者IDによって識別される話者に収録を依頼する、といった使用方法も可能である。
【0176】
次に、話者検索装置10Aで実行する検索処理の手順の一例を説明する。
図12は、話者検索装置10Aが実行する検索処理の手順の一例を示す、フローチャートである。
【0177】
まず、処理部15は、ステップS300〜ステップS306の処理を実行する。ステップS300〜ステップS306の処理は、第1の実施の形態のステップS100〜ステップS106と同様である(
図7参照)。
【0178】
具体的には、まず、第1学習部14Aが、話者管理情報12Aを用いて第1変換モデル12Bを学習する(ステップS300)。第1学習部14Aは、学習した第1変換モデル12Bを、記憶部13へ記憶する(ステップS302)。
【0179】
次に、第1変換部14Bが、話者管理情報12Aに登録されている音響モデルを、第1変換モデル12Bを用いて得点ベクトルに変換し、得点管理情報13Cへ登録する(ステップS306)。
【0180】
次に、第3学習部15Jが、話者管理情報12Aを用いて第3変換モデル13Dを学習する(ステップS308)。そして、第3学習部15Jは、学習した第3変換モデル13Dを記憶部13へ記憶する(ステップS310)。
【0181】
次に、特徴抽出部15Kが、音声管理情報13Eに登録されている音声データの各々に対応する音響特徴量を抽出する(ステップS312)。次に、第3変換部15Lが、ステップS312で話者IDごとに抽出された音響特徴量の各々を、第3変換モデル13Dを用いて得点ベクトルに変換する(ステップS314)。
【0182】
次に、第3学習部15Jは、ステップS314で変換した得点ベクトルを、該得点ベクトルに対応する話者IDに対応づけて、得点管理情報13Cへ登録する(ステップS316)。
【0183】
次に、処理部15は、話者検索処理を実行する(ステップS316)。ステップS316の処理は、第1の実施の形態(
図7のステップS108、および
図8参照)と同様である。そして、本ルーチンを終了する。
【0184】
以上説明したように、本実施の形態の話者検索装置10Aは、第1の実施の形態の構成に加えて、第3変換部15Lを備える。第3変換部15Lは、音響特徴量を得点ベクトルに変換するための第3変換モデル13Dを用いて、話者の音響特徴量を得点ベクトルに変換し、得点管理情報13Cへ登録する。
【0185】
このため、本実施の形態の話者検索装置10Aでは、合成音に加えて肉声の音声の話者についても、検索対象とすることができる。
【0186】
従って、本実施の形態の話者検索装置10Aは、第1の実施の形態の効果に加えて、更に、声質類似度の高い話者を検索することができる。
【0187】
また、本実施の形態の話者検索装置10Aでは、第3変換部15Lが、メルケプストラムや基本周波数などの言語に存しない音響特徴量のみを用いて、第3変換モデル13Dを学習する。このため、話者検索装置10Aでは、言語に依存せずに、類似する話者を検索することが可能になる。
【0188】
次に、本実施の形態の話者検索装置10、10Aのハードウェア構成を説明する。
図13は、本実施の形態の話者検索装置10、10Aのハードウェア構成例を示す説明図である。
【0189】
本実施の形態の話者検索装置10、10Aは、CPU86などの制御装置と、ROM(Read Only Memory)88やRAM(Random Access Memory)90などの記憶装置と、ネットワークに接続して通信を行う通信I/F82と、音声を出力するスピーカ80と、表示部98と、入力部94と、HDD92と、各部を接続するバス96を備えている。
【0190】
本実施の形態の話者検索装置10、10Aで実行されるプログラムは、ROM88等に予め組み込まれて提供される。
【0191】
本実施の形態の話者検索装置10、10Aで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD−R(Compact Disk Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるように構成してもよい。
【0192】
さらに、本実施の形態の話者検索装置10、10Aで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施の形態にかかる話者検索装置10、10Aで実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0193】
本実施の形態の話者検索装置10、10Aで実行されるプログラムは、コンピュータを上述した話者検索装置10、10Aの各部として機能させうる。このコンピュータは、CPU86がコンピュータで読取可能な記憶媒体からプログラムを主記憶装置上に読み出して実行することができる。
【0194】
なお、上記実施の形態では、話者検索装置10、10Aの各々が、単体の装置として構成されていることを想定して説明した。しかし、話者検索装置10、10Aの各々は、物理的に分離されてネットワークを介して接続された複数の装置により構成されていてもよい。また、上記実施の形態の話者検索装置10、10Aは、クラウドシステム上で動作する仮想マシンとして実現されていてもよい。
【0195】
なお、上記には、本発明の実施の形態を説明したが、上記実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。