特許第6805044号(P6805044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6805044ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805044
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/06 20060101AFI20201214BHJP
   C23C 2/28 20060101ALI20201214BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20201214BHJP
   C22C 38/06 20060101ALI20201214BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20201214BHJP
   C22C 18/00 20060101ALI20201214BHJP
   C21D 9/46 20060101ALN20201214BHJP
【FI】
   C23C2/06
   C23C2/28
   C22C38/00 301T
   C22C38/06
   C22C38/58
   C22C18/00
   C22C38/00 301W
   !C21D9/46 J
   !C21D9/46 U
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-63372(P2017-63372)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-186663(P2017-186663A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2016-67083(P2016-67083)
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 剛
(72)【発明者】
【氏名】入江 広司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴敏
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−094006(JP,A)
【文献】 特開2014−224311(JP,A)
【文献】 特開2006−265706(JP,A)
【文献】 特開2014−159624(JP,A)
【文献】 特開2012−102359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00−2/40
B21D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板が、質量%で、
C:0.1〜0.5%、
Si:0.2〜2.5%、
Mn:0.5〜3%、および
Al:0.01〜0.5%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物であり、かつ
合金化溶融亜鉛めっき層を有する鋼板であって、
前記合金化溶融亜鉛めっき層は、
Al濃度:0.50質量%超1.50質量%以下、および
Fe濃度:6.0〜25.0質量%を満たし、かつ
めっき付着量が40〜120g/m2であることを特徴とするホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項2】
前記素地鋼板は、更に、質量%で、Bを0%超0.005%以下含む請求項1に記載のホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
前記素地鋼板は、更に、質量%で、Ti、Nb、ZrおよびVよりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を、合計で0%超0.1%以下含む請求項1または2に記載のホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項4】
前記素地鋼板は、更に、質量%で、Cr、Mo、CuおよびNiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を、合計で0%超1%以下含む請求項1〜3のいずれかに記載のホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関する。特には、ホットスタ
ンプ後に塗装を行ったときの塗膜密着性に優れるホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき
鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用部品の製造において、近年では、高強度化と複雑な形状の両立が可能な技術として、鋼板を高温でプレスして製造するホットスタンプが提案されている。以下では、ホットプレスに供する鋼板を「ブランク」ということがある。ホットスタンプは、熱間成形、ホットプレスなどとも呼ばれており、上記ブランクを、オーステナイト+フェライトの温度域、即ちAc3変態点以上の高温にまで加熱し、プレス加工する方法である。該ブランクの加熱工程と、これに続く該ブランクをプレス成形する部品成形工程とを、以下「ホットスタンプ工程」と総称する場合がある。このホットスタンプによれば、高強度でありながら、複雑な形状の自動車用部品等の鋼部品を得ることができる。以下、ホットスタンプにより得られる鋼部品を「ホットスタンプ成形品」ということがある。
【0003】
前記ブランクとして、熱間圧延後に酸洗して得られる鋼板、即ち熱延酸洗鋼板、または更に冷間圧延して得られる冷延鋼板が用いられる他、耐食性向上の観点から、上記熱延酸洗鋼板または冷延鋼板の少なくとも片面にめっきを施しためっき鋼板も使用される。前記めっき鋼板は、主に、亜鉛系めっき鋼板とアルミニウム系めっき鋼板に大別されるが、耐食性などを考慮し、亜鉛系めっき鋼板が汎用されている。よって、ホットスタンプにも亜鉛系めっき鋼板がブランクとして用いられる。
【0004】
上記亜鉛系めっき鋼板のめっき層を構成する亜鉛は、融点が419℃、沸点が907℃であり、ホットスタンプを行う温度域では液相または気相となる。ホットスタンプ工程では、大気中で加熱を行うことが一般的であるため、上記液相または気相の状態にある活性な亜鉛は酸化され易く、鋼板表面に酸化亜鉛膜が生じやすい。
【0005】
鋼部品として例えば自動車用部品を製造する場合、ホットスタンプ後に、化成処理及び電着塗装が施される。しかしホットスタンプ工程で上記酸化亜鉛膜が厚く形成されると、上記塗装により形成された塗膜がはがれ易い、即ち、塗膜密着性が低下するといった問題が生じる。以下、ホットスタンプ後に塗装を行ったときの塗膜密着性を「ホットスタンプ・塗装後の塗膜密着性」または単に「塗膜密着性」ということがある。
【0006】
塗膜密着性を向上させた技術として、特許文献1には、めっき層の表層に厚さが10〜100nmであって、かつFを含有するZr、Ti、Siの一種または二種以上の金属酸化物及び/または金属水酸化物の皮膜を形成することが示されている。しかしながら、該皮膜を形成するための塗装前処理は、一般的なリン酸塩処理でないため、処理液の変更を余儀なくされるなど製造工程の制約を受ける。その他の塗膜密着性を向上させる手法として、亜鉛酸化膜の成長を抑制すべく、加熱炉を二つ用いてホットスタンプ工程の加熱温度の制御・加熱時間を短縮する技術が挙げられる。しかしながら、通常1台の加熱炉を使用するホットスタンプ工程に2台の加熱炉が必要なため、ユーザーに装置導入・ホットスタンプ条件を強いる技術であり、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−56307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、上記特許文献1等の様なホットスタンプ工程及びその後の化成処理工程の制約を極力抑えつつ、ホットスタンプ・塗装後の塗膜密着性に優れたホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決できた本発明のホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、
素地鋼板が、質量%で、
C:0.1〜0.5%、
Si:0.2〜2.5%、
Mn:0.5〜3%、および
Al:0.01〜0.5%を含有し、かつ
合金化溶融亜鉛めっき層を有する鋼板であって、
前記合金化溶融亜鉛めっき層は、
Al濃度:0.50質量%超1.50質量%以下、および
Fe濃度:6.0〜25.0質量%を満たし、かつ
めっき付着量が40〜120g/m2であるところに特徴を有する。
【0010】
前記素地鋼板は、更に、質量%で、下記(a)〜(c)のうちの1以上を含んでいてもよい。
(a)Bを0%超0.005%以下
(b)Ti、Nb、ZrおよびVよりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を、合計で0%超0.1%以下
(c)Cr、Mo、CuおよびNiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を、合計で0%超1%以下
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ホットスタンプ工程及びその後の化成処理工程の制約を極力抑えつつ、ホットスタンプ・塗装後の塗膜密着性に優れたホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に対して、ホットスタンプおよび塗装を行ったときの塗膜密着性を高めるべく検討を重ねた。まず、ホットスタンプ・塗装後の塗膜密着性が劣化する原因に着目したところ、めっき層の表面に形成された表層酸化物が、ホットスタンプ加熱時に過剰に成長し、酸化物層とめっき表面の間に空隙が生じるため、ホットスタンプ・塗装後の塗膜密着性が劣化するのではないかと考えた。
【0013】
そこで塗膜密着性を高めることを目的に、ホットスタンプ工程での上記表層酸化物の成長を抑制すべく検討を行った。なお、前記「表層酸化物」とは、めっき層の表面に形成されるSi,Mn,Fe,Zn,Alなどの鋼中またはめっき層中の成分からなる単一または複合の酸化物を指す。
【0014】
その結果、めっき層中のAl濃度を一定以上に高めれば、優れた塗膜密着性を達成できることを見出した。その作用効果について次の通り考えられる。即ち、Alは易酸化性元素であり、めっき層中のAlがホットスタンプ工程の低温時に、まずめっき表層に濃化して安定なAl系酸化物を生成する。これにより、めっきの主成分であって上記Alよりも酸化されにくい元素であるZnの酸化物の成長が抑制され、その結果、上記Al、Znの酸化物を含めた表層酸化物全体の成長が抑制されて、塗膜密着性が高まると考えられる。本発明者らは、上記効果を十分に発現させることを最終目的に、めっき層表面に緻密かつ十分なAl系酸化物を生成すべく、めっき層中のAl濃度について検討を行った。その結果、合金化溶融亜鉛めっき層のAl濃度を0.50質量%超1.50質量%以下とすればよいことを見出した。
【0015】
前記めっき層中のAl濃度を0.50質量%超とすることによって、上記表層酸化物の生成を十分に抑制でき、塗膜密着性を格段に高めることができる。前記めっき層中のAl濃度は、好ましくは0.60質量%超、より好ましくは0.70質量%以上、更に好ましくは0.80質量%以上、より更に好ましくは0.90質量%以上である。一方、鋼板に塗装を施す場合、鋼板と塗膜との密着性及び耐食性を高める目的でリン酸塩処理を行うが、鋼部品の表層、即ちめっき層のAl濃度が高すぎると、リン酸塩処理性、具体的にはリン酸塩の付着量及び均一性が低下する。よって、前記めっき層中のAl濃度を1.50質量%以下とする。前記めっき層中のAl濃度は、好ましくは1.40質量%以下、より好ましくは1.30質量%以下、更に好ましくは1.20質量%以下、より更に好ましくは1.10質量%以下、特に好ましくは1.00質量%以下である。
【0016】
また本発明では、前記めっき層中のFe濃度を6.0〜25.0質量%の範囲に制御する。めっき層中のFe濃度が6.0質量%未満の場合、めっき表面の赤外線放射率が著しく低く、例えばホットプレス工程でAc3変態点以上の温度に加熱する場合、Ac3変態点に到達するまでの加熱時間が、めっき層中のFe濃度が6.0質量%以上のめっき鋼板に比べて著しく長くなる。上記加熱時間が長いと上記表層酸化物の生成・成長が促進され、所望の塗膜密着性が得られない。よって本発明では、優れた塗膜密着性を得るべく、めっき層中のFe濃度を6.0質量%以上とする。該めっき層中の好ましいFe濃度は6.5質量%以上、更には7.0質量%以上、更には7.5質量%以上、更には8.0質量%以上、更には9.0質量%以上、更には10.0質量%以上であり、特に好ましくは12.0質量%以上である。
【0017】
一方、めっき層中のFe濃度が高くなると相対的にめっき層中のZnの割合が減少し、その結果、めっき本来の性能である犠牲防食能が低下して、鋼部品の耐食性が劣化する。これらの観点から、合金化溶融亜鉛めっき鋼板におけるめっき層中のFe濃度を25.0質量%以下とする。該めっき層中の好ましいFe濃度は22.0質量%以下、更には20.0質量%以下、更には19.0質量%以下、更には18.0質量%以下、更には17.0質量%以下、更には16.0質量%以下、更には15.0質量%以下、特に好ましくは14.0質量%以下である。
【0018】
上記めっき層として、その成分組成が、上記濃度のAlおよびFeを含み、残部がZnおよび不可避不純物のものが挙げられる。該不可避不純物としてSi、Mn、Cr、Ni、Ti、Nb、Pb、P、Mg、Ca、S等が挙げられ、合計濃度で2質量%以下含みうる。尚、このうち、Mgは0.3質量%未満である。
【0019】
また、合金化溶融亜鉛めっき層のめっき付着量は、ホットスタンプ工程で生じる溶融亜鉛量を減少させ、表層酸化物の生成・成長を抑制する観点から少ない方が好ましい。この観点から本発明では、上記めっき付着量を120g/m2以下とする。めっき付着量は、好ましくは110g/m2以下、より好ましくは100g/m2以下、更に好ましくは95g/m2以下、より更に好ましくは90g/m2以下、特に好ましくは85g/m2以下である。一方、めっき層本来の性能である耐食性を発揮させる観点から、上記めっき付着量は40g/m2以上、好ましくは50g/m2以上、より好ましくは60g/m2以上、更に好ましくは70g/m2以上とする。上記めっき付着量は、片面あたりのめっき付着量をいう。以下同じである。
【0020】
上記のように本発明では、特に、めっき層中のAl濃度およびFe濃度、ならびにめっき付着量を適切に制御、中でもめっき層中のAl濃度を制御し、ホットスタンプ工程時に表層酸化物としてAl系酸化物を積極的に形成することによって、ホットスタンプ工程での表層酸化物の生成・成長を抑制し、塗装後の塗膜密着性を高めることができる。
【0021】
次に、本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を構成する素地鋼板の成分組成について説明する。以下、成分組成において、%は質量%を意味する。
【0022】
[C:0.1〜0.5%]
Cは、固溶強化元素であり、ホットスタンプ成形品の高強度化に寄与する。ホットスタンプにより、例えば980MPa以上の高強度を得るため、C量の下限を0.1%とする。C量は、好ましくは0.13%以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.17%以上である。一方、C量が過剰になると、ホットスタンプ成形品の溶接性が低下するため、その上限を0.5%とする。C量は、好ましくは0.40%以下、より好ましくは0.35%以下、更に好ましくは0.30以下である。
【0023】
[Si:0.2〜2.5%]
Siは、ホットスタンプ成形品のスポット溶接部の接合強度、即ち溶接強度の向上に寄与する元素である。スポット溶接を行ったときに1.5kN以上の溶接強度を得るため、Si量の下限を0.2%とする。Si量の好ましい下限は0.3%、更には0.4%、更には0.5%、更には0.60%、更には0.70%、更には0.80%、更には0.90%であり、最も好ましくは1.0%である。一方、Si量が過剰になると、強度が高くなり過ぎて、熱延酸洗鋼板または冷延鋼板、即ち素地鋼板の製造時に圧延負荷が増大する他、熱間圧延の際に、素地鋼板表面にSiO2を含むスケールが多く発生し、めっき後の鋼板の表面性状が悪化する。よってSi量の上限を2.5%とする。Si量は、好ましくは2.3%以下であり、より好ましくは2.1%以下である。
【0024】
[Mn:0.5〜3%]
Mnは、焼入れ性を高め、ホットスタンプ成形品の高強度バラツキを抑えるために有用な元素である。この効果を発揮させるため、Mn量の下限を0.5%とする。Mn量は、好ましくは1.0%以上、より好ましくは1.2%以上、さらに好ましくは1.5%以上、よりさらに好ましくは1.7%以上、特に好ましくは2.0%以上である。一方、Mn量が過剰になると、強度が高くなり過ぎて素地鋼板製造時の圧延負荷が増大する。よってMn量の上限を3%とする。Mn量は、好ましくは2.8%以下、より好ましくは2.5%以下である。
【0025】
[Al:0.01〜0.5%]
Alは脱酸のために必要な元素であり、そのため、Al量の下限を0.01%とする。Al量は好ましくは0.03%以上である。しかしながらAl量が過剰になると、上記効果が飽和するだけでなく、アルミナ等の介在物が増加して加工性が劣化するため、Al量の上限を0.5%とする。Al量は好ましくは0.3%以下である。
【0026】
本発明のホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板として、素地鋼板が上記成分を含み、残部が鉄および不可避的不純物のものが挙げられる。該不可避的不純物としては、例えばP、S、Nなどが挙げられる。
【0027】
Pは、スポット溶接部の接合強度に悪影響を及ぼす元素である。P量が過剰であると、スポット溶接で形成されるナゲットの最終凝固面に偏析してナゲットが脆化し、接合強度が低下する。従ってP量は、0.02%以下であることが好ましく、より好ましくは0.015%以下である。
【0028】
SもPと同様、スポット溶接部の接合強度に悪影響を及ぼす元素であり、その量が過剰であると、ナゲット内の粒界偏析による粒界破壊が助長され、接合強度が低下する。従ってS量は、0.01%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.008%以下である。
【0029】
Nは、Bと結合して固溶B量を減少させ、焼入れ性に悪影響を与える。またN量が過剰であると、窒化物の析出量が増大し、靱性に悪影響を与える。よって、N量は0.01%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.008%以下である。なお、製鋼上のコスト等を考慮すると、N量は、通常0.001%以上である。
【0030】
本発明では、上記成分のほか、更に下記の選択元素を必要に応じて含有させることができる。
【0031】
[B:0%超0.005%以下]
Bは鋼材の焼入れ性を向上させる元素である。この効果を発揮させるには、Bを0.0003%以上含有させることが好ましい。B量は、より好ましくは0.0005%以上、更に好ましくは0.0010%以上である。一方、B量が0.005%を超えると、ホットスタンプ成形品中に粗大なホウ化物が析出して該成形品の靭性が劣化する。よってB量は、好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.0040%以下とする。
【0032】
[Ti、Nb、ZrおよびVよりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素:合計で0%超0.1%以下]
Ti、Nb、Zr、Vは、組織を微細化する効果を有しており、組織が微細化することで部品の延性を向上させる効果を有する。これらの元素は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。この効果を得るには、Ti、Nb、ZrおよびVよりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を、合計で0.01%以上含有させることが好ましく、より好ましくは合計で0.02%以上である。一方、これらの元素の合計量が過剰になると、鋼板の延性がかえって劣化するため、その上限を合計で0.1%とすることが好ましく、より好ましくは合計で0.08%、更に好ましくは合計で0.070%である。
【0033】
[Cr、Mo、CuおよびNiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素:合計で0%超1%以下]
Cr、Mo、Cu、Niは、素地鋼板の焼入れ性を向上させるために有効な元素であり、これらの元素を含有させることによって、ホットスタンプ成形品における硬さばらつきの低減が期待できる。これらの元素は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。この効果を得るには、Cr、Mo、CuおよびNiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を、合計で0.01%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上である。しかしながら、これらの元素が過剰に含まれると、上記効果が飽和すると共に、コストも上昇するため、合計で1%以下とすることが好ましい。上記元素は、合計で0.5%以下とすることがより好ましく、更に好ましくは合計で0.3%以下である。
【0034】
上記合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、例えば、所定成分の鋼を鋳造→加熱→熱間圧延→酸洗→必要に応じて冷間圧延→焼鈍工程→溶融亜鉛めっき工程→合金化工程を経て製造することができる。特に上述しためっき層中のAl濃度を規定の範囲内とするには、下記に詳述する通り、めっき浴中のAl濃度を制御する。また、特に上述しためっき層中のFe濃度を規定の範囲内とするには、下記に詳述する通り、上記焼鈍工程における焼鈍の条件およびめっき後の合金化工程の条件を適切に制御する。
【0035】
以下、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の推奨される製造方法について下記に説明する。
【0036】
まず、上記成分を満足する鋼を鋳造し、加熱する。加熱条件は特に限定されず、通常用いられる条件を適宜採用することができるが、おおむね1100〜1300℃の温度で行うことが好ましい。
【0037】
次いで熱間圧延を行う。熱間圧延条件は特に限定されず、通常用いられる条件を適宜採用することができる。好ましい条件は、おおむね以下のとおりである。
仕上げ圧延温度(Finisher Delivery Temperature、FDT):800〜950℃
巻き取り温度(Coiling Temperature、CT):500〜700℃
【0038】
上記熱間圧延により得られる熱延鋼板の好ましい板厚の上限は3.5mm以下である。
該板厚は、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.5mm以下であり、下限はおおよそ1.0mmである。
【0039】
熱間圧延した後、酸洗し、熱延酸洗鋼板を作製する。この酸洗工程では、酸洗により、少なくとも熱延スケールが除去できればよい。例えば熱延巻取り温度の高いコイルでは、熱延スケールと鋼板の界面近傍にSi、Mnの酸化物による粒界酸化層が形成していることがある。しかし、上記粒界酸化層が残存しても、不めっきなどのめっき処理性に悪影響を及ぼさないため、当該酸性工程において、必ずしも上記粒界酸化層まで除去する必要はない。但し、外観、粗さなどの表面性状安定化の観点からは、上記粒界酸化層を出来るだけ除去することが好ましく、粒界酸化層除去のために通常用いられる酸洗方法を適宜採用することができる。該酸洗方法として、例えば、80〜90℃に加熱した塩酸などを用い、20〜300秒酸洗することが挙げられる。このとき、塩酸中には適量の例えばメルカプト基を有する化合物等の酸洗促進剤及び/または例えばアミン系有機化合物等のインヒビターを加えることが好ましい。
【0040】
このようにして得られた熱延酸洗鋼板の好ましい厚さも、上記熱延鋼板と、おおむね同じである。
【0041】
上記酸洗の後、必要に応じて冷間圧延し、冷延鋼板を作製してもよい。本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、特に、自動車の軽量化などを目的として自動車用部品に好適に用いられ、該自動車用部品に要求される寸法精度及び平坦度を高める観点から、素地鋼板は、冷延鋼板であることが好ましい。
【0042】
前記冷間圧延における冷延率は、工場での生産性などを考慮すると、おおむね40〜95%の範囲内に制御することが好ましい。このようして得られる冷延鋼板の好ましい板厚の上限は2.5mm以下である。より好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.8mm以下であり、下限はおおよそ0.3mmである。
【0043】
次いで、上記のようにして得られた熱延酸洗鋼板または冷延鋼板、即ち原板を還元炉方式の連続めっき工程に付す。一般に、還元炉方式の溶融亜鉛めっきラインで行われる工程は、前処理工程、焼鈍工程、亜鉛めっき及び合金化処理を行うめっき処理工程に分かれている。溶融亜鉛めっきラインの焼鈍工程は、通常、還元炉と、冷却帯とから構成されており、本発明では、還元炉における焼鈍条件、具体的には還元雰囲気下での熱処理温度と時間を適切に制御することが好ましい。勿論、本発明の方法は、上記態様に限定する趣旨ではなく、例えば、上記溶融亜鉛めっきラインを、無酸化炉方式の連続焼鈍ラインにて行うこともできる。以下では、上記還元雰囲気下で熱処理を行う態様について説明する。
【0044】
まず、上記原板に前処理を行う。前処理は、原板表面のオイル(油脂)及び汚れを除去するために通常行われるものであり、代表的には、アルカリ脱脂によって行われる。アルカリ脱脂に用いられるアルカリは、油脂などを水溶性石鹸として除去できるものであれば特に限定されないが、例えば、苛性ソーダ及び/またはケイ酸塩が好ましく用いられる。また、脱脂性を向上させるために、電解洗浄、スクラバー処理、脱脂液中への界面活性剤・キレート剤の添加処理を行うこともできる。本発明では、原板表面が適切に脱脂されれば前処理の方法は限定されず、上述した処理をどのように組み合わせてもよい。前処理としてアルカリ脱脂を行ったときは、原板に付着した脱脂液を落とすため、ホットリンス(湯洗)され、ドライヤーなどで乾燥する。
【0045】
次に、前処理された上記原板を還元炉に投入し、還元炉で焼鈍、具体的には還元雰囲気下での熱処理を行う。このときの焼鈍条件は、焼鈍温度を500〜900℃、かつ該焼鈍温度での滞在時間、即ち焼鈍時間を30〜270秒間とすることが好ましい。上記温度域での焼鈍処理を均熱処理とも呼ぶ。焼鈍温度の下限は、より好ましくは530℃、更に好ましくは560℃、より更に好ましくは600℃である。焼鈍温度の上限は、鋼中Si濃度によって制御する範囲が異なる。一般に鋼中Siは、焼鈍過程で鋼板表面に濃化して酸化物となり、合金化処理性の低下、不めっきを発生させる。しかし鋼中のSi濃度と焼鈍温度によって表面の濃化程度が異なるため、これらを適正に制御することで上記問題を回避できる。鋼中Si量が0.7%以上のとき、前記焼鈍温度は、より好ましくは680℃以下、更に好ましくは660℃以下である。一方、鋼中Si量が0.7%未満のとき、前記焼鈍温度は、より好ましくは880℃以下、更に好ましくは860℃以下である。焼鈍時間はSi量に関係なく、60秒以上であることがより好ましく、更に好ましくは90秒以上であり、より好ましくは240秒以下、更に好ましくは210秒以下である。なお、省エネルギーの観点から、還元炉に入る前に、排ガスを用いた還元性雰囲気の予熱炉にて、前処理後の鋼板を予熱してもよい。このときの予熱条件は、還元性雰囲気であれば特に限定されない。
【0046】
上記の焼鈍条件は、(1)素地鋼板表面へのSiの濃化、即ちSi系酸化物の生成を抑
制し、合金化処理性を確保すること;及び(2)素地鋼板表面へのSiの濃化、即ちSi系酸化物の生成を抑制し、素地鋼板表面に形成される極薄いFe系酸化物を還元して不めっきをなくす;との観点から、多くの基礎実験によって決定されたものである。
【0047】
上記(1)の観点から、上限を超えて焼鈍温度が高過ぎたり、焼鈍時間が長過ぎると、素地鋼板表面にSi系酸化物が表面に形成され易い。このSi系酸化物が、還元されずに素地鋼板表面に存在すると、めっき処理中の合金化過程を阻害するため、所望のめっき層中Fe濃度が得られない。
【0048】
上記(2)の観点からは、焼鈍温度の上限・下限、焼鈍時間の上限・下限のそれぞれが、上記範囲を外れる場合は、不めっきが発生しやすくなる。特に、焼鈍温度が高過ぎたり、焼鈍時間が長過ぎると、Si系酸化物が表面に形成され易くなり、不めっきが発生し易くなる。一方、焼鈍温度が低過ぎたり、焼鈍時間が短過ぎると、Fe系酸化物が残存し易くなり、この場合も不めっきが発生し易くなる。具体的には、上記焼鈍条件は、不めっきが発生しないように、焼鈍時の温度と時間とのバランスによって適切に制御することが好ましい。例えば、焼鈍温度が高い場合は焼鈍時間を短くすることができ、一方、焼鈍温度が低い場合は、焼鈍時間を長くすることができる。
【0049】
なお、ホットスタンプ用途とは離れて、一般に、本発明のように多量のSiを含む鋼を亜鉛めっきする場合、不めっきの発生を防止するため、例えば、焼鈍工程の前にプレめっきを行う方法、還元炉での還元焼鈍の前に酸化を行う酸化還元法を行う方法などが採用されている。これらの方法は、コストアップにつながるが本発明でも適用可能である。
【0050】
還元時の雰囲気及び露点は、不めっきが発生されない範囲であれば特に限定されない。例えば、H2−N2混合ガスでH2濃度が1〜30%、−10〜−60℃の露点範囲とすることが好ましい。具体的には、前述した焼鈍時の温度及び時間との関係で、焼鈍時間を適切に制御することが推奨される。
【0051】
次に、還元炉を出た素地鋼板は、冷却帯で冷却される。通常、冷却帯は徐冷帯、急冷帯、保持帯とも呼ばれる調整帯で構成されるが、冷却方法は、不めっきが発生しないよう、通常用いられる条件で行えばよく、例えば、還元性雰囲気の気体を鋼板に吹き付けて冷却するなどの方法が挙げられる。
【0052】
このようにして連続焼鈍工程を行った後、亜鉛めっきを行う。詳細には、溶融亜鉛めっき処理工程および合金化処理工程により合金化溶融亜鉛めっき鋼板を作製する。
【0053】
上記溶融亜鉛めっき処理工程において、めっき層中のAl濃度を規定の範囲内に制御するには、めっき浴中のAl濃度を制御する。具体的には、めっき浴中のAl濃度を0.2質量%以上、1.4質量%以下とする。めっき浴中のAl濃度の下限は、好ましくは0.3質量%、より好ましくは0.4質量%である。また、めっき浴中のAl濃度の上限は、好ましくは1.2質量%、より好ましくは1.0質量%である。また、上記めっき層中のAl濃度を規定の範囲内に容易に制御するには、上記めっき浴中のAl濃度の均一化等が挙げられる。また溶融亜鉛めっき浴の温度は、例えば430〜500℃程度に制御すればよい。合金化溶融亜鉛めっき層のめっき付着量は、前述の通りであり、このめっき付着量の調整は、例えばガスワイピングにおいて、ガス流量調整等により行うことができる。
【0054】
上記合金化処理工程では、合金化を促進することにより前記めっき層中のFe濃度を高める。この観点から、合金化温度を500〜700℃の範囲とする。前記合金化温度は、より好ましくは560℃以上、更に好ましくは600℃以上、より更に好ましくは650℃以上である。一方、合金化温度が高すぎると、めっきが蒸発したり、表面が酸化しすぎるといった不具合が生じるため、合金化温度は700℃以下とする。合金化温度は、好ましくは680℃以下である。
【0055】
このようにして得られた合金化亜鉛めっき鋼板は、ホットスタンプ用鋼板として好適に用いられる。
【0056】
本発明では、ホットスタンプ工程を特に限定するものではなく、通常、用いられる方法を採用することができる。例えば、通常の方法に従って、上記鋼板をAc3変態点以上の温度に加熱してオーステナイト化した後、例えば、成形完了、即ち、金型が下死点位置に到達した時点を、約450℃以上とする方法が挙げられる。前記加熱の方法として、炉加熱、通電加熱、誘導加熱等を採用することができる。
【0057】
上記加熱の条件は、Ac3変態点以上の温度での保持時間を、好ましくは30分以下、より好ましくは15分以下、更に好ましくは7分以下に制御することにより、オーステナイトの粒成長が抑制され、熱間の絞り性、ホットスタンプ成形品の靭性などの特性が向上する。上記保持時間の下限は特に限定されず、Ac3変態点以上に到達すればよい。現実的には、上記保持時間の厳密な制御は難しいが、例えば、炉加熱の場合1分以上、通電加熱、誘導加熱の場合数秒以上であればよい。
【0058】
前記Ac3変態点は、「レスリー鉄鋼材料学」(丸善株式会社、1985年5月31日発行、273頁)に記載されている下記式(3)を用いて求めることができる。下記式(3)において、含まれない元素はゼロとして計算すればよい。
Ac3変態点(℃)=910−203×[C]0.5−15.2×[Ni]+44.7×[Si]+104×[V]+31.5×[Mo]+13.1×[W]−30×[Mn]−11×[Cr]−20×[Cu]+700×[P]+400×[Al]+400[Ti]
・・・(3)
上記式(3)において、[元素]は、各元素の質量%での鋼中含有量を示す。
【0059】
また前記ホットスタンプ成形品を例えば自動車用部品に用いる場合、ホットスタンプ成形品に対し、リン酸塩処理、電着塗装を施すが、これらの処理の条件は特に限定されず、通常行われている条件を採用すればよい。本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いれば、上記電着塗装後の塗膜密着性に優れた自動車用部品が得られる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0061】
[合金化溶融亜鉛めっき鋼板の作製]
表1に記載の成分組成を有する鋼からなるスラブを、1200℃に加熱した後、表1に記載の仕上げ圧延温度(FDT)および巻取温度(CT)の条件で熱間圧延→酸洗工程によるデスケーリング処理→冷延率40%の冷間圧延を行い、めっき処理に供する原板として冷延鋼板を得た。この冷延鋼板を100mm×150mmに切断し、60℃の3%オルト珪酸ナトリウム水溶液中で20A、20秒間電解脱脂した後、水道水中で5秒間流水にて水洗した。このようにしてアルカリ脱脂した後、めっきシミュレータにて、5%H2−N2、露点−45℃の還元雰囲気下、鋼中Si量が0.7%以上の場合は650℃で60秒間、鋼中Si量が0.7%未満の場合は800℃で60秒間の焼鈍を行い、その後、当該均熱温度から460℃まで冷却した。次いで、表2に記載の濃度のAlを含み、残部がZnからなり、浴温が460℃の亜鉛めっき浴に浸漬させて溶融亜鉛めっきを施し、ワイピングを行った後、550〜650℃で合金化処理を行って合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。ただし、実験No.9については合金化処理を行わなかった。
【0062】
得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層中のAl濃度およびFe濃度を、下記の通り測定すると共に、めっき付着量を求めた。更に、得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用い、下記の通り、プレス成形して鋼部品を得た後、リン酸塩処理と電着塗装を施して塗膜密着性の評価を行った。これらの結果を表2に示す。
【0063】
[めっき層中のAl濃度およびFe濃度の測定]
得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層の成分組成、特にめっき層中のAl濃度とFe濃度は、次の様にして分析した。即ち、18%塩酸にヘキサメチレンテトラミンを加えた溶液中に、前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板を浸漬してめっき層のみを溶解し、その溶解液を、島津製作所製のICP発光分光分析装置ICPS−7510を用いて、ICP発光分光分析法で分析した。
【0064】
[めっき付着量の測定]
18%塩酸にヘキサメチレンテトラミンを加えた溶液中に、前記めっき鋼板を浸漬してめっき層のみを溶解し、溶解前後の質量変化から、めっき付着量を求めた。
【0065】
[塗膜密着性の評価]
(供試材の作製)
サイズ100mm×150mm×厚さ1.4mmに切断した合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、表2の各例につき3枚ずつ用意し、これらに対し、大気中で900℃に保持した加熱炉内に3〜6分保持した後に加熱炉より取り出し、750〜800℃のプレス開始温度となるまで空冷し、平板金型でプレスして室温付近まで冷却した。得られた鋼部品に対し、日本ペイント製SD6350を用い、付着量が3g/m2となるようにリン酸塩処理を行った。このリン酸塩処理をした鋼板に対して更に、関西ペイント製カチオンED GT10HTグレーを用い、200Vの通電下で電着させ、150℃で20分焼き付けることにより、厚さ15μmの塗膜を形成し、供試材を得た。
【0066】
(塗膜密着性の評価)
上記供試材を、水温が50℃の5質量%の塩水に500時間浸漬させた後、サイズが100mm×150mmの評価面全面に、ニチバン社製「セロテープ(登録商標)CT405AP−24」を貼り付け、すぐに手で剥がし、塗膜が剥離した部分の面積率を測定した。そして、表2の各例につき、測定された3枚の供試材の面積率の平均値を求め、当該平均値を塗膜剥離面積率として求めた。そして下記の基準で塗膜密着性を評価し、本実施例ではA、BおよびCを合格とした。より好ましいのはAおよびB、特に好ましいのはAである。
A:塗膜剥離面積率が5%以下
B:塗膜剥離面積率が5%超10%以下
C:塗膜剥離面積率が10%超15%以下
D:塗膜剥離面積率が15%超
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表1および表2から次のことがわかる。実験No.1〜6は、本発明で規定する成分組成およびめっき層の要件を満たしているため、優れた塗膜密着性を示す合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られた。
【0070】
これに対してNo.7〜9は、本発明で規定する成分組成とめっき層の要件の少なくとも1つを満たしていないため、塗膜密着性に劣った。詳細にはNo.7および8は、めっき層中のAl濃度が不足したため、塗膜密着性に劣る結果となった。No.9は、めっき層中のFe濃度が下限値をかなり下回ったため、塗膜密着性が著しく劣った。No.10は、めっき層中のAl濃度が過剰であったため、塗膜密着性に劣る結果となった。