(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記書き味向上層のタッチペンが接触する表面に対し、ペン先直径0.5mmのハードフェルト芯のタッチペンのペン先を荷重3.92Nの加圧条件で垂直方向に接触させ、前記書き味向上層の表面と平行な任意の一方向に速度100mm/分で移動させながらペン先抵抗力を測定し、得られた移動距離−ペン先抵抗力のチャートをフーリエ変換し、変換して得られた周波数−振幅チャートから取得される、周波数1〜2Hzの範囲における振幅のピーク数が、5以上、30以下であることを特徴とする請求項1に記載の書き味向上シート。
前記書き味向上層が、硬化性成分と、前記球状微粒子とを含有するコーティング組成物を硬化させてなる層であることを特徴とする請求項1または2に記載の書き味向上シート。
前記光拡散層が、硬化性成分と、光拡散微粒子とを含有するコーティング組成物を硬化させてなる層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の書き味向上シート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る書き味向上シートは、タッチペンが使用されるタッチパネルの最表層を構成するシートであり、基材と、タッチペンが接触する書き味向上層と、基材および書き味向上層の間に設けられた光拡散層とを備える。好ましくは、
図1に示すように、本実施形態に係る書き味向上シート1は、基材11と、光拡散層13と、書き味向上層12とをその順に積層してなる。
【0015】
上記書き味向上シート1のトータルヘイズは、12%以上、42%以下である。また、書き味向上層12は、球状微粒子を含有する。そして、書き味向上層12のタッチペンが接触する表面に対し、ペン先直径0.5mmのハードフェルト芯のタッチペンのペン先を荷重3.92Nの加圧条件で垂直方向に接触させ、書き味向上層10の表面と平行な任意の一方向に速度100mm/分で移動させながらペン先抵抗力(mN)を測定し、得られた移動距離(mm)−ペン先抵抗力(mN)のチャートをフーリエ変換し、変換して得られた周波数(Hz)−振幅チャート(−)から取得される、周波数1〜2Hzの範囲における振幅の平均値が、1.2以上、10以下である(このペン摺動試験による振幅に関する物性を、以下「書き味物性」という場合がある)。なお、フーリエ変換は、ソフトウエア(マイクロソフト社製,製品名「Excel」(登録商標))を使用して行うものとする。上記の構成および物性を有する書き味向上シート1は、タッチペンによる書き味に優れるとともに、当該書き味向上シート1に起因するギラツキの発生が抑制され、かつ表示画像の視認性および外観にも優れる。
【0016】
特に、光拡散層13が基材11と書き味向上層12の間に設けられており、書き味向上シート1のトータルヘイズが12%以上であり、書き味向上層12が球状微粒子を含有することにより、当該書き味向上シート1に起因するギラツキの発生が抑制される。また、上記トータルヘイズが42%以下であることにより、表示画像のボヤケを抑制することができ、表示画像の視認性を良好に維持することができる。さらに、書き味向上層12が球状微粒子を含有することにより、書き味向上シート1の白茶けを抑制することができ、外観を良好に維持することができる。なお、本実施形態における書き味向上シート1のトータルヘイズは、基材11、光拡散層13および書き味向上層12の積層体全体のヘイズ(内部ヘイズおよび外部ヘイズの合計)である。また、本明細書におけるヘイズは、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
【0017】
ギラツキ抑制の観点から、上記トータルヘイズは、14%以上であることが好ましく、特に16%以上であることが好ましく、さらには18%以上であることが好ましい。また、表示画像の視認性の観点から、上記トータルヘイズは、40%以下であることが好ましく、特に35%以下であることが好ましく、さらには30%以下であることが好ましい。
【0018】
また、特に、書き味向上層12が球状微粒子を含有するとともに、上記振幅の平均値が上記範囲にあることにより、タッチペンによる書き味に、好ましい抵抗感・摩擦感が付与される。これらの感覚が相俟って、タッチペンの書き味が、ペンで紙に書くときの感覚に近くなり、優れたものとなる。
【0019】
周波数1〜2Hzの範囲における振幅について規定するのは、筆記する際の振動を、様々な周波数を有する複数の振動の重ね合わせとしてとらえたときに、特に「書き味」として人が認識する特徴的な振動が周波数1〜2Hzの範囲の振動であることを、本発明者らが経験的に見出したことによるものである。
【0020】
なお、タッチペンとしては、例えば、ペン先直径が0.1〜5mmのハードフェルト芯のタッチペンの他、ポリアセタール芯のタッチペンなどを使用することができ、いずれのタッチペンを使用しても、上記の効果が得られる。また、本明細書において書き味の基準とする「ペン」には、ボールペン、フェルトペン、万年筆等が含まれるが、好ましくは万年筆を基準とする。
【0021】
ここで、「ペン先抵抗力」とは、上記の条件でタッチペンを移動させた際に、ペン先にかかる抵抗力をいう。また、上記「振幅の平均値」は、周波数1〜2Hzの範囲におけるピークの極大値および極小値の総和をとり、それらの個数で除した値をいう。さらに、上記「ピーク数」は、周波数1〜2Hzの範囲における振幅1.5以上のピーク数をいう。
【0022】
タッチペンによる書き味の観点から、上記振幅の平均値は、1.3以上であることが好ましく、特に1.5以上であることが好ましい。また、上記振幅の平均値は、4以下であることが好ましく、特に2.8以下であることが好ましく、さらには2.5以下であることが好ましい。
【0023】
タッチペンによる書き味をより向上させる観点から、上記振幅のピーク数(振幅数)は、5以上であることが好ましく、特に6以上であることが好ましく、さらには7以上であることが好ましい。また、上記振幅数は、30以下であることが好ましく、特に20以下であることが好ましく、さらには15以下であることが好ましい。
【0024】
また、タッチペンによる書き味をさらに向上させる観点から、上記振幅の最大値(最大振幅値)は、1.3以上であることが好ましく、特に2.0以上であることが好ましく、さらには2.4以上であることが好ましい。また、上記最大振幅値は、10以下であることが好ましく、特に8以下であることが好ましく、さらには5以下であることが好ましい。
【0025】
上記の移動距離(mm)−ペン先抵抗力(mN)のチャートの具体的な取得方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0026】
1.各部材
(1)基材
基材11としては、タッチペンが使用されるタッチパネル用として適したものから適宜選択すればよく、好ましくは光拡散層13と親和性の良好なプラスチックフィルムを選択する。ただし、基材11は、ガラスであってもよい。
【0027】
かかるプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルぺンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリウレタン樹脂フィルム、ノルボルネン系重合体フィルム、環状オレフィン系重合体フィルム、環状共役ジエン系重合体フィルム、ビニル脂環式炭化水素重合体フィルム等のプラスチックフィルムまたはそれらの積層フィルムが挙げられる。中でも、前述した書き味向上層12との組み合わせにおいて、タッチペンの書き味を良好に維持することのできるポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系重合体フィルム等が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0028】
また、上記基材11においては、その表面に設けられる層(光拡散層13、後述する粘着剤層等)との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、プライマー処理、酸化法、凹凸化法等により表面処理を施すことができる。酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は基材11の種類に応じて適宜選ばれる。一例として、プライマー処理により易接着層を形成したプラスチックフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。
【0029】
基材11の厚さは、15〜300μmであることが好ましく、特に30〜200μmであることが好ましく、さらには90〜150μmであることが好ましい。
【0030】
(2)書き味向上層
(2−1)書き味向上層の材料
本実施形態における書き味向上シート1の書き味向上層12は、球状微粒子を含有し、かつ、前述した書き味物性を満たす材料からなれば、いかなる材料から形成されてもよいが、好ましくは、以下に説明するコーティング組成物C1を硬化させることにより形成される。コーティング組成物C1によれば、上記の書き味物性を満たす書き味向上層12を形成し易い。また、コーティング組成物C1によれば、球状微粒子を含有することで、ギラツキの発生が抑制されるとともに、白茶け等も抑制されて外観が良好なものとなる。
【0031】
本実施形態におけるコーティング組成物C1は、硬化性成分と、球状微粒子とを含有することが好ましい。
【0032】
(2−1−1)硬化性成分
硬化性成分は、活性エネルギー線や熱等のトリガーによって硬化する成分であり、例えば、活性エネルギー線硬化性成分、熱硬化性成分等が挙げられる。本実施形態では、形成される書き味向上層12の硬度や、基材11(プラスチックフィルム)の耐熱性等の観点から、活性エネルギー線硬化性成分を使用することが好ましい。
【0033】
活性エネルギー線硬化性成分としては、活性エネルギー線の照射により硬化して所定の硬度を発揮し、かつ球状微粒子との関係で前述した物性を達成できるものが好ましい。
【0034】
具体的な活性エネルギー線硬化性成分としては、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリレート系プレポリマー、活性エネルギー線硬化性ポリマー等が挙げられるが、中でも多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび/または(メタ)アクリレート系プレポリマーであることが好ましく、多官能性(メタ)アクリレート系モノマーであることがより好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび(メタ)アクリレート系プレポリマーは、それぞれ単独で使用してもよいし、両者を併用してもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0035】
多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
一方、(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等のプレポリマーが挙げられる。
【0037】
ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0038】
エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。
【0039】
ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0040】
ポリオールアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0041】
以上のプレポリマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
また、活性エネルギー線硬化性成分として、有機無機ハイブリッド樹脂を使用することも好ましい。有機無機ハイブリッド樹脂としては、シリカなどの無機微粒子に、シランカップリング剤などを介して、重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる物質が好ましく挙げられる。なお、有機無機ハイブリッド樹脂が含有するシリカ微粒子は、シリカゾルとしての機能を有すると共に、バインダーとしての機能も有しており、後述する球状微粒子には含まれないものとする。
【0043】
有機無機ハイブリッド樹脂を使用すると、シリカゾルとしての作用により、球状微粒子との関係で、前述した書き味物性が得られ易くなり、また、形成される書き味向上層12の表面硬度を向上させることができる。
【0044】
(2−1−2)球状微粒子
球状微粒子の形状は、球状であり、好ましくは真球状である。球状微粒子は、無機系微粒子および有機系微粒子のいずれであってもよいが、書き味向上層12の光学特性をより高くする観点からは、有機系微粒子が好ましい。
【0045】
有機系微粒子としては、例えば、シリコーン系微粒子、メラミン系樹脂微粒子、アクリル系樹脂微粒子(例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子等)、アクリル−スチレン系共重合体微粒子、ポリカーボネート系微粒子、ポリエチレン系微粒子、ポリスチレン系微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子などが挙げられる。それらの樹脂は、架橋されていてもよい。上記の中でも、光学特性および硬度の観点から、アクリル系樹脂微粒子が好ましく、特にポリメチルメタクリレート樹脂微粒子が好ましく、さらには架橋ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子が好ましい。
【0046】
球状微粒子の平均粒径は、1.7μm以上であることが好ましく、特に2.0μm以上であることが好ましく、さらには2.5μm以上であることが好ましい。また、球状微粒子の平均粒径は、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、特に8μm以下であることが好ましく、さらには5μm以下であることが好ましい。球状微粒子の平均粒径が上記の範囲にあることにより、前述した書き味物性を満たし易くなり、タッチペンの書き味がペンで紙に書くときの感覚により近くなる。
【0047】
なお、本明細書における微粒子の平均粒径は、レーザー回析法によって一次粒径を測定したものとする。レーザー回折法による平均粒径は、微粒子1.2gとイソプロピルアルコール98.8gとを十分に撹拌したものを測定用試料とし、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製,製品名「LA−920」)によって測定した値である。
【0048】
上記球状微粒子の粒度分布については、書き味向上層12が前述の書き味物性を得易くする観点から、下記の式で示される粒径の変動係数(CV値)が、3%以上であることが好ましく、特に5%以上であることが好ましく、さらには10%以上であることが好ましい。また、同様の観点から、上記CV値は、200%以下であることが好ましく、175%以下であることがより好ましく、特に150%以下であることが好ましく、さらには30%以下であることが好ましい。
粒径の変動係数(CV値)(%)=(標準偏差粒径/平均粒径)×100
なお、粒径の変動係数(CV値)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製,製品名「LA−920」)によって測定した値とする。
【0049】
コーティング組成物C1中における球状微粒子の含有量は、3質量%以上であることが好ましく、特に7質量%以上であることが好ましく、さらには10質量%以上であることが好ましい。また、上記球状微粒子の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、特に30質量%以下であることが好ましく、さらには15質量%以下であることが好ましい。球状微粒子の含有量が上記の範囲にあることにより、前述した書き味物性が得られ易い。
【0050】
(2−1−3)光重合開始剤
上記活性エネルギー線硬化性成分を硬化させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、コーティング組成物C1は、光重合開始剤を含有することが好ましい。このように光重合開始剤を含有することにより、活性エネルギー線硬化性成分を効率良く重合させることができ、また重合硬化時間および紫外線の照射量を少なくすることができる。
【0051】
このような光重合開始剤としては、例えば、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
コーティング組成物C1中における光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、下限値として0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましく、さらには1質量部以上であることが好ましい。また、上限値として20質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。
【0053】
(2−1−4)その他の成分
コーティング組成物C1は、前述した成分以外に、各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、分散剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等が挙げられる。上記の中でも分散剤を含有することにより、球状粒子の分散性が良好になり、前述した書き味物性が満たされ易くなる。
【0054】
分散剤としては、分子内にカルボキシ基、水酸基、スルホ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミド基、第4級アンモニウム塩基、ピリジウム塩基、スルホニウム塩基およびホスホニウム塩基からなる群から選ばれる1種または2種以上の極性基を有する化合物が好ましく、特に、カルボキシ基および水酸基の1種または2種以上の極性基を有する化合物が好ましい。上記の極性基は、分子内に1つ導入されていてもよく、複数導入されていてもよい。
【0055】
分散剤としての化合物が複数の極性基を有する場合、当該化合物の基本骨格は、エステル連鎖、ビニル連鎖、アクリル連鎖、エーテル連鎖、ウレタン連鎖等で構成されるものが好ましい。具体的には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂およびアルキド樹脂が好ましく、特にアクリル樹脂、ウレタン樹脂およびポリエステル樹脂が好ましく、さらにはアクリル樹脂が好ましい。
【0056】
上記極性基は、分子中にランダムに配置されていてもよいが、側鎖に配置されていることが好ましい。したがって、分散剤としての化合物は、側鎖にカルボキシ基および/または水酸基を有するアクリル樹脂が好ましい。
【0057】
分散剤としての化合物の重量平均分子量は特に限定されないが、100〜90万までの幅広いものの中から選択することができる。なお、分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
分散剤の配合量は、活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、0.01〜1質量部であることが好ましく、特に0.03〜0.5質量部であることが好ましい。
【0059】
(2−2)書き味向上層の厚さ
書き味向上層12の厚さは、下限値として、0.5μm以上であることが好ましく、特に1μm以上であることが好ましく、さらには3μm以上であることが好ましい。書き味向上層12の厚さの下限値が上記であることにより、前述した書き味物性が満たされ易くなるとともに、良好な耐擦傷性が得られる。また、書き味向上層12の厚さは、上限値として、20μm以下であることが好ましく、特に15μm以下であることが好ましく、さらには10μm以下であることが好ましい。書き味向上層12の厚さの上限値が上記であることにより、前述した書き味物性が満たされ易くなる。
【0060】
(2−3)書き味向上層のヘイズ
書き味向上シート1のトータルヘイズを上記範囲にするために、書き味向上層12のヘイズは、6%以上であることが好ましく、特に10%以上であることが好ましく、さらには16%以上であることが好ましい。また、書き味向上層12のヘイズは、43%以下であることが好ましく、特に40%以下であることが好ましく、さらには35%以下であることが好ましい。書き味向上層12のヘイズの測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0061】
(3)光拡散層
(3−1)光拡散層の材料
本実施形態における書き味向上シート1の光拡散層13は、書き味向上シート1のトータルヘイズが上記範囲となり、前述した書き味物性が満たされる材料からなれば、いかなる材料から形成されてもよいが、好ましくは、以下に説明するコーティング組成物C2を硬化させることにより形成される。コーティング組成物C2によれば、上記のトータルヘイズおよび書き味物性を満たす光拡散層13を形成し易い。また、コーティング組成物C2によれば、得られる書き味向上シート1の表面硬度(鉛筆硬度)が高くなり、書き味向上シート1が耐擦傷性に優れたものとなる。
【0062】
本実施形態におけるコーティング組成物C2は、硬化性成分と、光拡散微粒子とを含有することが好ましい。
【0063】
(3−1−1)硬化性成分
コーティング組成物C2における硬化性成分としては、前述したコーティング組成物C1における硬化性成分と同様のものを使用することができる。中でも、硬度向上やカール抑制の観点から、多官能性(メタ)アクリレート系モノマーまたは有機無機ハイブリッド樹脂を使用することが好ましい。
【0064】
多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、硬度向上やカール抑制の観点から、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能以上の非変性の多官能(メタ)アクリレート系モノマー、およびエチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルキレンオキシド変性の多官能(メタ)アクリレート系モノマーの1種または2種が好ましく、特に、それらを併用することが好ましい。それらを併用することにより、硬度向上およびカール抑制のそれぞれが良好に達成される。4官能以上の非変性の多官能(メタ)アクリレート系モノマーとアルキレンオキシド変性の多官能(メタ)アクリレート系モノマーとの質量比は、100:0〜10:90であることが好ましく、特に85:15〜25:75であることが好ましく、さらには70:30〜40:60であることが好ましい。
【0065】
アルキレンオキシド変性の多官能(メタ)アクリレート系モノマーにおけるアルキレンオキシドの付加量は、1モル以上であることが好ましく、特に3モル以上であることが好ましく、さらには5モル以上であることが好ましい。また、当該付加量は、35モル以下であることが好ましく、特に25モル以下であることが好ましく、さらには20モル以下であることが好ましい。
【0066】
(3−1−2)光拡散微粒子
光拡散微粒子としては、前述したトータルヘイズを上記の範囲にすることができるものであればよく、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、二酸化チタン等の無機系微粒子;ポリメタクリル酸メチル樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレン共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂等の有機系の透光性微粒子;シリコーン樹脂のような、無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のトスパールシリーズ)などが挙げられる。中でも、アクリル樹脂微粒子、ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレン共重合体微粒子、および無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子は、上記硬化性成分に対する分散性が優れ、均一な光学特性が得られることから好ましい。以上の光拡散微粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
光拡散微粒子の形状としては、光拡散が均一な球状、特に真球状の微粒子が好ましい。光拡散微粒子のレーザー回折法による平均粒径は、0.1μm以上であることが好ましく、特に1μm以上であることが好ましく、さらには2μm以上であることが好ましい。また、上記平均粒径は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、特に8μm以下であることが好ましく、さらには3μm以下であることが好ましい。平均粒径が上記の範囲内にあることで、光拡散層13の光透過性を妨げることなく、トータルヘイズ値を前述した範囲にし易くすることができる。
【0068】
上記光拡散微粒子の粒度分布については、前述したトータルヘイズを上記の範囲にし易くする観点から、粒径の変動係数(CV値)が、3%以上であることが好ましく、特に5%以上であることが好ましく、さらには10%以上であることが好ましい。また、同様の観点から、上記CV値は、100%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、特に60%以下であることが好ましく、さらには30%以下であることが好ましい。
【0069】
コーティング組成物C2中における光拡散微粒子の含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、特に1質量%以上であることが好ましく、さらには3質量%以上であることが好ましい。また、上記光拡散微粒子の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、特に20質量%以下であることが好ましく、さらには9質量%以下であることが好ましい。光拡散微粒子の含有量が上記の範囲にあることにより、前述したトータルヘイズ値が得られ易い。
【0070】
(3−1−3)光重合開始剤
上記活性エネルギー線硬化性成分を硬化させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、コーティング組成物C2は、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、前述したコーティング組成物C1における光重合開始剤と同様のものを使用することができる。また、好ましい含有量もコーティング組成物C1と同様である。
【0071】
(3−1−4)その他の成分
コーティング組成物C2は、前述した成分以外に、各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等が挙げられる。
【0072】
(3−2)光拡散層の厚さ
光拡散層13の厚さは、0.5μm以上であることが好ましく、0.7μm以上であることがより好ましく、特に1μm以上であることが好ましく、さらには2μm以上であることが好ましい。また、書き味向上層12の厚さは、20μm以下であることが好ましく、特に15μm以下であることが好ましく、さらには10μm以下であることが好ましい。光拡散層13の厚さが上記範囲にあることにより、前述したトータルヘイズ値が得られ易い。
【0073】
(3−3)光拡散層の内部ヘイズ
書き味向上シート1のトータルヘイズを上記範囲にするために、光拡散層13の内部ヘイズは、3%以上であることが好ましく、特に5%以上であることが好ましく、さらには7%以上であることが好ましい。また、光拡散層13の内部ヘイズは、45%以下であることが好ましく、特に40%以下であることが好ましく、さらには35%以下であることが好ましい。光拡散層13の内部ヘイズの測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0074】
2.書き味向上シートの製造方法
本実施形態に係る書き味向上シート1は、次のようにして製造することが好ましい。すなわち、光拡散層13形成用のコーティング組成物、好ましくはコーティング組成物C2と、所望により溶剤とを含有する塗工液を基材11に対して塗布し、硬化させて光拡散層13を形成する。その後、書き味向上層12形成用のコーティング組成物、好ましくはコーティング組成物C1と、所望により溶剤とを含有する塗工液を光拡散層13に対して塗布し、硬化させて書き味向上層12を形成する。
【0075】
溶剤は、塗工性の改良、粘度調整、固形分濃度の調整等のために使用することができ、硬化性成分等が溶解し、微粒子等が分散するものであれば、特に限定なく使用できる。
【0076】
溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソロブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソロブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類などが挙げられる。
【0077】
コーティング組成物の塗工液の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法によって行えばよい。コーティング組成物の塗工液を塗布したら、塗膜を40〜120℃で30秒〜5分程度乾燥させることが好ましい。
【0078】
コーティング組成物C1,C2のようにコーティング組成物が活性エネルギー線硬化性の場合、コーティング組成物の硬化は、コーティング組成物の塗膜に対して紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することによって行う。紫外線照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度50〜1000mW/cm
2、光量50〜1000mJ/cm
2程度が好ましい。一方、電子線照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10〜1000krad程度が好ましい。
【0079】
3.物性
本実施形態に係る書き味向上シート1の書き味向上層12側の鉛筆硬度は、3H以上であることが好ましい。これにより、書き味向上シート1は、耐擦傷性に優れたものとなる。なお、鉛筆硬度は、JIS K5600に準拠して測定した値とする。
【0080】
4.その他の構成
本実施形態に係る書き味向上シート1は、書き味向上層12が最表面となり、かつ光拡散層13が基材11と書き味向上層12との間に存在すれば、さらに他の層を有していてもよい。例えば、基材11における光拡散層13とは反対側の面には粘着剤層が形成されてもよいし、さらには粘着剤層に剥離シートが積層されてもよい。
【0081】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、光学用途として通常使用されるものを使用することができ、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、所望の粘着性を発現し、光学特性や耐久性に優れたアクリル系粘着剤が好ましい。
【0082】
粘着剤層の厚さは、5〜1000μmであることが好ましく、特に7〜500μmであることが好ましく、さらには10〜250μmであることが好ましい。
【0083】
5.書き味向上シートの使用
本実施形態に係る書き味向上シート1は、タッチペンが使用されるタッチパネル(位置検出機能付き画像表示装置)の最表層を構成するシートである。具体的には、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール等の表示体モジュールやタッチセンサーなどを有するタッチパネルにおけるカバー材上に積層されて使用されることが好ましい。書き味向上シート1のカバー材への積層は、前述したような粘着剤層を介して貼付することにより行うことが好ましい。
【0084】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0085】
例えば、書き味向上シート1における基材11と光拡散層13との間、光拡散層13と書き味向上層12との間には、他の層が介在してもよい。
【実施例】
【0086】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0087】
〔実施例1〕
(1)光拡散層の形成
硬化性成分としての有機無機ハイブリッド樹脂(荒川化学工業社製,製品名「オプスターZ7530」,シリカ微粒子にアクリロイル基を結合させてなる物質と多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとの混合品)100質量部(固形分換算値を表す。以下、その他の成分についても同様とする。)と、平均粒径2.5μmの真球状ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレン共重合体微粒子(屈折率:1.55,CV値:28%)6質量部とを混合し、光拡散層用のコーティング組成物C2を得た。そのコーティング組成物C2をプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、塗工液を調製した。
【0088】
基材としての易接着層付きポリエステルフィルム(東洋紡社製,製品名「コスモシャインA4300」,厚さ:125μm)の易接着層側の面に、上記で得られた光拡散層用の塗工液を塗布し、70℃で1分間乾燥させた。次いで、大気下にて、紫外線照射装置(ジーエスユアサコーポレーション社製,製品名「窒素パージ小形コンベア式UV照射装置CSN2−40」)により下記の条件で紫外線を照射して、厚さ3μmの光拡散層を形成した。
[紫外線照射条件]
・光源:高圧水銀灯
・ランプ電力:1.4kW
・コンベアスピード:1.2m/min
・照度:100mW/cm
2
・光量:240mJ/cm
2
【0089】
なお、上記光拡散層の厚さは、定圧厚さ計(ニコン社製,製品名「MH−15M」)を使用して、基材および光拡散層の総厚を測定し、当該総厚から基材の厚さを差し引くことにより算出した。
【0090】
(2)書き味向上層の形成
硬化性成分としての有機無機ハイブリッド樹脂(荒川化学工業社製,製品名「オプスターZ7530」,シリカ微粒子にアクリロイル基を結合させてなる物質と多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとの混合品)100質量部と、平均粒径3μmの真球状架橋ポリメチルメタクリレート(屈折率:1.49,CV値:28%)5質量部と、分散剤としての、側鎖にカルボキシ基および水酸基を有するアクリル樹脂(共栄社化学社製,製品名「フローレンG700」)0.2質量部とを混合し、書き味向上層用のコーティング組成物C1を得た。そのコーティング組成物C1をプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、塗工液を調製した。
【0091】
上記基材上に形成された光拡散層の露出面に、上記で得られた書き味向上層用の塗工液を塗布し、70℃で1分間乾燥させた。次いで、光拡散層の形成と同様の条件で紫外線を照射して、厚さ4μmの書き味向上層を形成し、書き味向上シートを得た。
【0092】
なお、上記書き味向上シートにおける書き味向上層の厚さは、定圧厚さ計(ニコン社製,製品名「MH−15M」)を使用して、書き味向上シートの総厚を測定し、当該総厚から基材および光拡散層の厚さを差し引くことにより算出した。
【0093】
〔実施例2〜3,比較例1〜4〕
コーティング組成物C1,C2の材料および配合比、ならびに光拡散層および書き味向上層の厚さを表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして書き味向上シートを作製した。
【0094】
ここで、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
A:有機無機ハイブリッド樹脂(荒川化学工業社製,製品名「オプスターZ7530」,シリカ微粒子にアクリロイル基を結合させてなる物質と多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとの混合品)
B:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
C:エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(エチレンオキシド12モル)
D:多官能ウレタンアクリレート(荒川化学工業社製,製品名「ビームセット575CB」)
E:平均粒径2.5μmの真球状ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレン共重合体微粒子(屈折率:1.55,CV値:28%)
F:平均粒径2μmの真球状シリコーン微粒子(無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール120」,屈折率:1.42,CV値:20%)
G:平均粒径3μmの真球状架橋ポリメチルメタクリレート(屈折率:1.49,CV値:28%)
H:平均粒径5μmの真球状架橋ポリメチルメタクリレート(屈折率:1.49,CV値12%)
I:平均粒径4.5μmの不定形シリカ微粒子(屈折率:1.46,CV値:35%)
J:側鎖にカルボキシ基および水酸基を有するアクリル樹脂(共栄社化学社製,製品名「フローレンG700」)(分散剤)
K:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(光重合開始剤)
【0095】
〔試験例1〕(ヘイズの測定)
実施例および比較例で製造した書き味向上シートのトータルヘイズ(%)を、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH−5000」)を用い、JIS K7136:2000に準拠して測定した。結果を表2に示す。
【0096】
実施例および比較例で使用した基材のヘイズを上記と同様にして測定した。また、透明粘着剤層の両面に剥離フィルムを有する光学粘着シート(リンテック社製,製品名「OPTERIA MO−T015」)の一方の剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤層を、実施例および比較例における製造途中で得た、基材および光拡散層の積層体における光拡散層の上に貼付した。次いで、当該光学粘着シートにおける他方の剥離フィルムを剥離し、得られた積層体のヘイズを上記と同様にして測定し、当該積層体の内部ヘイズを取得した。そして、当該積層体の内部ヘイズから上記基材のヘイズを差し引いて、光拡散層の内部ヘイズ(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0097】
さらに、書き味向上シートのトータルヘイズから上記基材のヘイズおよび上記光拡散層の内部ヘイズを差し引くことにより、書き味向上層のヘイズ(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0098】
〔試験例2〕(ペン摺動試験)
実施例および比較例で製造した書き味向上シートを、書き味向上層側を上にしてガラス基板上に載置した。その書き味向上層表面に対し、ペン先直径0.5mmのハードフェルト芯のタッチペン(ワコム社製,製品名「ACK−2003」)のペン先を、荷重3.92Nの加圧条件で垂直方向(ペン先の軸心が書き味向上層の表面に対して垂直となる方向)に接触させながら、書き味向上シートの表面と平行な任意の一方向に速度100mm/分で移動させた。なお、上記タッチペンは測定専用台車に取り付け、当該台車を移動させることにより、タッチペンを書き味向上層上にて摺動させた。
【0099】
移動時のペン先抵抗力を万能試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用いて測定し、移動距離(mm)−ペン先抵抗力(mN)のチャートを得た。そして、得られた移動距離(mm)−ペン先抵抗力(mN)のチャートを、ソフトウエア(マイクロソフト社製,製品名「Excel」(登録商標))によってフーリエ変換し、周波数(Hz)−振幅(−)チャートを得た。当該周波数(Hz)−振幅(−)チャートから、周波数1〜2Hzの範囲における振幅の平均値、最大値(最大振幅値)およびピーク数(振幅数)を求めた。結果を表2に示す。
【0100】
〔試験例3〕(書き味の官能評価)
実施例および比較例で製造した書き味向上シートを、書き味向上層側を上にしてガラス基板上に載置した。その書き味向上層表面に対し、パネラーが、ペン先直径0.5mmのハードフェルト芯のタッチペン(ワコム社製,製品名「ACK−2003」)を使用して模擬的に所定の筆記作業をして、以下の書き味を評価した。結果を表2に示す。なお、各書き味の評価は、5枚重ねの紙(コクヨS&T社製,製品名「キャンパスノートA罫 ノ−201A」)に、万年筆(S.T.デュポン社製,製品名「ラインD 410674 ブラックラッカー&パラディウム」)を用いて書いた際の書き味を基準として行った。
【0101】
(1)抵抗感
書き味としての抵抗感を、下記基準に沿って評価した。
◎:筆記時に適度な抵抗感があり、ペンが滑りにくい
○:筆記時に多少の抵抗感があり、ペンの滑りは許容できる範囲
×:筆記時の抵抗感が小さすぎ、ペンが滑る
【0102】
(2)滑らかさ
書き味としての滑らかさを、下記基準に沿って評価した。
◎:筆記時のペンの摺動が非常に行い易い
○:筆記時のペンの摺動が行い易い
×:筆記時のペンの摺動に支障がある
【0103】
〔試験例4〕(ギラツキの評価)
実施例および比較例で製造した書き味向上シートを、書き味向上層側を上にして、全面緑色表示(RGB値(R,G,B)=0,255,0)にしたタブレット端末(アップル社製,製品名「iPad(登録商標)」,解像度:264ppi)の表示画面の表面に載置し、以下の基準にて、目視によりギラツキの評価を行った。結果を表2に示す。
〇:書き味向上シートに起因するギラツキが確認されなかった。
×:書き味向上シートに起因するギラツキが確認された。
【0104】
〔試験例5〕(外観の評価)
実施例および比較例で製造した書き味向上シートを、書き味向上層側を上にして、透明な両面粘着シート(リンテック社製,製品名「OPTEIA MO−T015」)を介して、黒色のアクリル板(三菱レイヨン社製,製品名「アクリライトL502」)の片面に貼付した。そして、3波長蛍光灯下で書き味向上シートの外観を目視して、以下の基準で外観を評価した。結果を表2に示す。
◎:白茶け等が殆ど見られなかった。
〇:白茶け等が僅かに見られた。
×:白茶け等が強く見られた。
【0105】
〔試験例6〕(表示画像視認性の評価)
実施例および比較例で製造した書き味向上シートを、書き味向上層側を上にして、タブレット端末(アップル社製,製品名「iPad(登録商標)」,解像度:264ppi)の表示画面の表面に載置した。タブレット端末に各種画像を表示させ、評価者5人により画像のボヤケを観察した。その結果に基づいて、以下の基準にて表示画像視認性の評価を行った。結果を表2に示す。
◎:評価者5人全員が画像のボヤケなしと判断した。
〇:評価者5人中3〜4人が画像のボヤケなしと判断した。
×:評価者5人中3人以上が画像のボヤケありと判断した。
【0106】
〔試験例7〕(鉛筆硬度の測定)
実施例および比較例で製造した書き味向上シートにおける書き味向上層側の面の鉛筆硬度を、鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(東洋精機製作所社製,製品名「NP」)を用い、JIS K5600に準拠して測定した。結果を表2に示す。
【0107】
〔試験例8〕(スチールウール硬度試験)
実施例および比較例で製造した書き味向上シートにおける書き味向上層側の表面(書き味向上層の表面)について、#0000のスチールウールを用いて、250g/cm
2の荷重で10cm、10往復擦った。その書き味向上層の表面を、3波長蛍光灯下で目視により確認し、以下の基準でスチールウール硬度(耐擦傷性)を評価した。結果を表2に示す。
〇:傷が確認されなかった。
×:傷が確認された。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
表2から明らかなように、実施例で製造した書き味向上シートは、タッチペンによる書き味に優れるとともに、当該書き味向上シートに起因するギラツキの発生が抑制されていた。また、実施例で製造した書き味向上シートは、表示画像の視認性および外観が良好であるとともに、表面硬度も比較的高かった。