特許第6805055号(P6805055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンナイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6805055-フィンチューブ式熱交換器 図000002
  • 特許6805055-フィンチューブ式熱交換器 図000003
  • 特許6805055-フィンチューブ式熱交換器 図000004
  • 特許6805055-フィンチューブ式熱交換器 図000005
  • 特許6805055-フィンチューブ式熱交換器 図000006
  • 特許6805055-フィンチューブ式熱交換器 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805055
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】フィンチューブ式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/013 20060101AFI20201214BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20201214BHJP
   F28F 9/00 20060101ALI20201214BHJP
   F24H 9/00 20060101ALN20201214BHJP
【FI】
   F28F9/013 B
   F28D7/16 D
   F28F9/00 331
   !F24H9/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-75336(P2017-75336)
(22)【出願日】2017年4月5日
(65)【公開番号】特開2018-179333(P2018-179333A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】笠松 敬
(72)【発明者】
【氏名】西野 晃史
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 実開平4−82570(JP,U)
【文献】 実開平5−66466(JP,U)
【文献】 実開昭59−195386(JP,U)
【文献】 特開平2−268966(JP,A)
【文献】 特開平5−141889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/16
F28F 9/00, 9/013
F24H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のフィンと、これらフィンを収納する筐体と、これらフィンをフィン積層方向に貫通すると共に筐体のフィン積層方向両側の側板部を貫通する伝熱管とを備えるフィンチューブ式熱交換器であって、筐体のフィン積層方向の少なくとも片側の側板部に形成する伝熱管貫通孔は、筐体内に張出す筒状フランジ部を有するバーリング孔で構成され、各フィンに、各フィンに形成する伝熱管貫通孔に隣接してロウ材挿通孔が形成され、伝熱管が、片側の側板部に最寄りの最外側フィンのロウ材挿通孔から片側の側板部側に突出するロウ材の部分を溶融させることで、筒状フランジ部にロウ付けされるものにおいて、
筒状フランジ部に、ロウ材挿通孔が存在する方向を向く周方向部分に位置させて、筒状フランジ部の一部を切り抜いた切抜き部が形成されることを特徴とするフィンチューブ式熱交換器。
【請求項2】
前記筒状フランジ部の前記切抜き部の形成箇所を含む所定の周方向部分の前記筐体内への張出し高さを、筒状フランジ部の他の周方向部分の筐体内への張出し高さより大きくすることを特徴とする請求項1記載のフィンチューブ式熱交換器。
【請求項3】
前記切抜き部の面積と前記筒状フランジ部の板厚との積を切抜き部体積として、前記最外側フィンのロウ材挿通孔から前記片側の側板部側に突出するロウ材の部分の体積よりも切抜き部体積が小さいことを特徴とする請求項1又は2記載のフィンチューブ式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された複数のフィンと、これらフィンを収納する筐体と、これらフィンをフィン積層方向に貫通すると共に筐体のフィン積層方向両側の側板部を貫通する伝熱管とを備えるフィンチューブ式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフィンチューブ式熱交換器においては、各フィンに、各フィンに形成する伝熱管貫通孔に隣接してロウ材挿通孔を形成し、ロウ材挿通孔に挿通したロウ材を溶融させて、伝熱管を伝熱管貫通孔にロウ付けしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、筐体のフィン積層方向の少なくとも片側の側板部に形成する伝熱管貫通孔を、筐体内に張出す筒状フランジ部を有するバーリング孔で構成し、片側の側板部に最寄りの最外側フィンのロウ材挿通孔から片側の側板部側に突出するロウ材の部分を溶融させることで、筒状フランジ部に伝熱管をロウ付けしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ここで、最外側フィンのロウ材挿通孔から筐体の側板部側に突出するロウ材の多くは、溶融したときに、筒状フランジ部の周面を伝って流下してしまう。そして、筒状フランジ部の先端から筒状フランジ部と伝熱管との隙間に浸透して伝熱管のロウ付けに寄与するロウ材の割合は僅かになる。そのため、伝熱管のロウ付け不良を生じやすくなり、筐体内に流れる燃焼排ガスが筒状フランジ部と伝熱管との隙間から外部に漏れることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−141889号公報
【特許文献2】特開2006−200830号公報(段落0015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、筐体側板部の伝熱管貫通孔の筒状フランジ部に伝熱管を良好にロウ付けできるようにしたフィンチューブ式熱交換器を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、積層された複数のフィンと、これらフィンを収納する筐体と、これらフィンをフィン積層方向に貫通すると共に筐体のフィン積層方向両側の側板部を貫通する伝熱管とを備えるフィンチューブ式熱交換器であって、筐体のフィン積層方向の少なくとも片側の側板部に形成する伝熱管貫通孔は、筐体内に張出す筒状フランジ部を有するバーリング孔で構成され、各フィンに、各フィンに形成する伝熱管貫通孔に隣接してロウ材挿通孔が形成され、伝熱管が、片側の側板部に最寄りの最外側フィンのロウ材挿通孔から片側の側板部側に突出するロウ材の部分を溶融させることで、筒状フランジ部にロウ付けされるものにおいて、筒状フランジ部に、ロウ材挿通孔が存在する方向を向く周方向部分に位置させて、筒状フランジ部の一部を切り抜いた切抜き部が形成されることを特徴とする。
【0008】
ここで、ロウ付けは、熱交換器のサブアッセンブリをロウ材挿通孔が伝熱管貫通孔の上方に位置する姿勢で加熱炉に投入して行う。本発明によれば、筐体側板部の伝熱管貫通孔の筒状フランジ部に形成した切抜き部が上方に位置するロウ材挿通孔側を向くことになる。そのため、最外側フィンのロウ材挿通孔から筐体側板部側に突出するロウ材の部分が溶融すると、その多くが切抜き部に流下することになる。そして、溶融ロウ材が切抜き部のエッジから筒状フランジ部と伝熱管との隙間に浸透するため、筒状フランジ部に伝熱管を良好にロウ付けすることができる。
【0009】
また、本発明においては、上記筒状フランジ部の切抜き部の形成箇所を含む所定の周方向部分の筐体内への張出し高さを、筒状フランジ部の他の周方向部分の筐体内への張出し高さより大きくすることが望ましい。これによれば、切抜き部の周方向両側のエッジを長くすることができる。そのため、筒状フランジ部と伝熱管との隙間へのエッジからの溶融ロウ材の浸透量が多くなり、ロウ付けの確実性が向上する。
【0010】
更に、本発明においては、上記切抜き部の面積と上記筒状フランジ部の板厚との積を切抜き部体積として、最外側フィンのロウ材挿通孔から筐体側板部側に突出するロウ材の部分の体積よりも切抜き部体積を小さくすることが望ましい。これによれば、最外側フィンのロウ材挿通孔から筐体側板部側に突出するロウ材が溶融して切抜き部に流下したときに、溶融ロウ材が切抜き部の中央部に留まらずに切抜き部から溢れるようにしてそのエッジに達する。従って、溶融ロウ材が確実にエッジから筒状フランジ部と伝熱管との隙間に浸透し、ロウ付けの確実性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態のフィンチューブ式熱交換器の斜視図。
図2】実施形態のフィンチューブ式熱交換器の切断側面図。
図3図2のIII−III線で切断した断面図。
図4】実施形態のフィンチューブ式熱交換器で用いるフィンの斜視図。
図5】実施形態のフィンチューブ式熱交換器の要部のロウ付け時の状態を示す切断側面図。
図6】実施形態のフィンチューブ式熱交換器の要部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図2を参照して、本発明の実施形態のフィンチューブ式熱交換器は、積層された複数のフィン1と、これらフィン1を収納する、バーナからの燃焼排ガスが内部に流れる筐体2と、これらフィン1をフィン積層方向に貫通すると共に筐体2のフィン積層方向両側の側板部21,22を貫通する複数の伝熱管3とを備えている。以下、フィン積層方向を前後方向として説明する。
【0013】
図3も参照して、伝熱管3は、下側の♯1から♯4までの4本と、上側の♯5から♯7までの3本の計7本設けられている。そして、♯2と♯3の伝熱管3,3と、♯4と♯5の伝熱管3,3と、♯6と♯7の伝熱管3,3は、夫々筐体2の前側の側板21の外側で折り返された1本の管で構成されている。また、筐体2の後側の側板22の外側で、♯1と♯2の伝熱管3,3と、♯3と♯4の伝熱管3,3と、♯5と♯6の伝熱管3,3を、夫々Uベント4を介して接続している。これにより、♯1から♯7までの伝熱管3が直列に接続され、♯1の伝熱管3から流入する冷水が燃焼排ガスとの熱交換で温水となって♯7の伝熱管3から出湯する。
【0014】
各フィン1に形成する各伝熱管貫通孔11は、図4図5に明示する如く、筒状フランジ部12を有するバーリング孔で構成されている。筒状フランジ部12の先端の周方向複数個所には、隣接するフィン1に当接してフィン1,1間の間隔を一定にする当接部12aが設けられている。また、各フィン1には、各伝熱管貫通孔11の下方に隣接してロウ材挿通孔13が形成されている。そして、熱交換器のサブアッセンブリを、各ロウ材挿通孔13が各伝熱管貫通孔11の上方に位置するように、上下反転した図5に示す姿勢で加熱炉に入れ、複数のフィン1のロウ材挿通孔13に予め挿通した棒状のロウ材5を溶融させて、溶融ロウ材を伝熱管貫通孔11の筒状フランジ部12と伝熱管3との隙間に浸透させることにより、筒状フランジ部12に伝熱管3をロウ付けする。
【0015】
また、筐体2の前側の側板部21に形成する各伝熱管貫通孔211は、筐体2内に張出す筒状フランジ部212を有するバーリング孔で構成されている。そして、前側の側板部21に最寄りの最外側フィン1Aのロウ材挿通孔13から前側の側板部21側に突出するロウ材5の部分を溶融させることで、伝熱管貫通孔211の筒状フランジ部212に伝熱管3がロウ付けされるようにしている。
【0016】
また、筐体2の後側の側板22に形成する各伝熱管貫通孔221は、筐体2外に張出す筒状フランジ部222を有するバーリング孔で構成されている。そして、伝熱管3の後端部にUベント4を内嵌させると共に、Uベント4にリング状のロウ材6(図2参照)を外挿し、このロウ材を溶融させることで、Uベント4を伝熱管3にロウ付けすると共に、伝熱管3を筒状フランジ部222にロウ付けしている。
【0017】
ここで、前側の側板部21の各伝熱管貫通孔211の筒状フランジ部212には、フィン1の各ロウ材挿通孔13が存在する方向を向く周方向部分に位置させて、図6に明示する如く、筒状フランジ部212の一部を切り抜いた切抜き部213が形成されている。熱交換器のサブアッセンブリを、各ロウ材挿通孔13が各伝熱管貫通孔11の上方に位置するように、上下反転した姿勢にすると、切抜き部213が上方に位置するロウ材挿通孔13側を向くことになる。そのため、最外側フィン1Aのロウ材挿通孔13から前側の側板部21側に突出するロウ材5の部分が溶融すると、その多くが切抜き部213に流下することになる。そして、溶融ロウ材が切抜き部213の周方向両側のエッジ213aと前端のエッジ213bとから筒状フランジ部212と伝熱管3との隙間に浸透するため、筒状フランジ部212に伝熱管3を良好にロウ付けすることができる。
【0018】
尚、ロウ付けに際しては、熱交換器のサブアッセンブリを上記の如く上下反転させると共に若干前下がりに傾斜した姿勢にしている。これによれば、ロウ材5の前端が前側の側板部21に当接して、最外側フィン1Aのロウ材挿通孔13からのロウ材5の突出長さを一定に管理でき、更に、伝熱管3の上面に流下した溶融ロウ材も伝熱管3の上面を伝って切抜き部213に流入し、筒状フランジ部212への伝熱管3のロウ付けに寄与するようになる。
【0019】
また、本実施形態では、筒状フランジ部212の切抜き部213の形成箇所を含む所定の周方向部分の筐体2内への張出し高さH1を、筒状フランジ部212の他の周方向部分の筐体2内への張出し高さH2より大きくしている。これによれば、切抜き部213の周方向両側のエッジ213aを長くすることができる。そのため、筒状フランジ部212と伝熱管3との隙間へのエッジ213aからの溶融ロウ材の浸透量が多くなり、ロウ付けの確実性が向上する。
【0020】
更に、本実施形態では、切抜き部213の面積と筒状フランジ部212の板厚との積を切抜き部体積として、最外側フィン1Aのロウ材挿通孔13から前側の側板部21側に突出するロウ材5の部分の体積よりも切抜き部体積を小さくしている。これによれば、最外側フィン1Aのロウ材挿通孔13から前側の側板部21側に突出するロウ材5が溶融して切抜き部213に流下したときに、溶融ロウ材が切抜き部213の中央部に留まらずに切抜き部213から溢れるようにしてそのエッジ213a,213bに達する。従って、溶融ロウ材が確実にエッジ213a,213bから筒状フランジ部212と伝熱管3との隙間に浸透し、ロウ付けの確実性が向上する。
【0021】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、切抜き部213が切欠き部で構成されているが、切抜き部213を穴で構成することも可能である。また、上記実施形態では、前側の側板部21にのみ筐体2内に張出す筒状フランジ部212を設けているが、熱交換器の構成によっては、後側の側板部22にも筐体2内に張出す筒状フランジ部を設けて、この筒状フランジ部に上記実施形態の切抜き部213と同様の切抜き部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0022】
1…フィン、1A…最外側フィン、11…伝熱管貫通孔、13…ロウ材挿通孔、2…筐体、21…片側の側板部、211…伝熱管貫通孔、212…筒状フランジ部、213…切抜き部、3…伝熱管、5…ロウ材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6