(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805061
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】巻き上げ装置
(51)【国際特許分類】
B66D 5/32 20060101AFI20201214BHJP
B66D 1/22 20060101ALI20201214BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
B66D5/32
B66D1/22 A
F16H1/28
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-81553(P2017-81553)
(22)【出願日】2017年4月17日
(65)【公開番号】特開2018-177488(P2018-177488A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−264943(JP,A)
【文献】
特開昭55−161791(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3150539(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00− 5/34
F16H 1/28− 1/48
A01K 89/00−89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に設けられ、回転駆動力を生起するための駆動力源と、
前記装置本体に回転可能に支持され、巻き上げ対象物を牽引するための牽引部材が巻回される回転体と、
前記駆動力源から駆動力が入力される入力部材と、
前記入力部材から駆動力を受けて該駆動力を前記回転体に出力する出力部材と、
一方向の回転のみが許容されて他方向の回転が阻止される回転規制部と、
前記入力部材と前記出力部材とを部分的な相対回動を可能にしつつ一体回転可能に連結し、前記出力部材に対する前記入力部材の第1の方向の前記相対回動によって軸方向に突出して前記回転規制部と係合することにより前記入力部材及び前記出力部材を前記回転規制部に一体回転可能に結合させるとともに、前記出力部材に対する前記入力部材の前記第1の方向と反対の第2の方向の相対回動によって前記回転規制部から軸方向に離間することにより前記入力部材と前記出力部材とを前記回転規制部から切り離すカム機構と、
を備え、
前記入力部材が内歯車を有することを特徴とする巻き上げ装置。
【請求項2】
前記駆動力源からの駆動力を減速して前記入力部材に伝える遊星歯車機構を備え、この遊星歯車機構を構成する遊星歯車が前記内歯車に噛み合うことを特徴とする請求項1に記載の巻き上げ装置。
【請求項3】
前記カム機構は、前記入力部材及び前記出力部材のうちの一方側に設けられるカム溝と、前記入力部材及び前記出力部材のうちの他方側に設けられて、前記カム溝に係合するとともに、径方向外側から前記他方側に取り付け可能なフォロワとを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の巻き上げ装置。
【請求項4】
装置本体に設けられ、回転駆動力を生起するための駆動力源と、
前記装置本体に回転可能に支持され、巻き上げ対象物を牽引するための牽引部材が巻回される回転体と、
前記駆動力源から駆動力が入力される入力部材と、
前記入力部材から駆動力を受けて該駆動力を前記回転体に出力する出力部材と、
一方向の回転のみが許容されて他方向の回転が阻止される回転規制部と、
前記入力部材と前記出力部材とを部分的な相対回動を可能にしつつ一体回転可能に連結し、前記出力部材に対する前記入力部材の第1の方向の前記相対回動によって軸方向に突出して前記回転規制部と係合することにより前記入力部材及び前記出力部材を前記回転規制部に一体回転可能に結合させるとともに、前記出力部材に対する前記入力部材の前記第1の方向と反対の第2の方向の相対回動によって前記回転規制部から軸方向に離間することにより前記入力部材と前記出力部材とを前記回転規制部から切り離すカム機構と、
を備え、
前記カム機構は、前記入力部材及び前記出力部材のうちの一方側に設けられるカム溝と、前記入力部材及び前記出力部材のうちの他方側に設けられて、前記カム溝に係合するとともに、径方向外側から前記他方側に取り付け可能なフォロワとを有し、
前記入力部材及び前記出力部材のうちの一方側に設けられる突起と、これらの突起に対応する位置で前記入力部材及び前記出力部材のうちの他方側に設けられて前記カム機構の作用により前記突起が前記回転規制部側に対して突没できるようにする貫通穴とを更に備え、前記突起は、前記回転規制部と摩擦接触状態で係合可能な係合面を有することを特徴とする巻き上げ装置。
【請求項5】
前記駆動力源が電動モータであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の巻き上げ装置。
【請求項6】
前記電動モータが前記回転体の内側に収納されることを特徴とする請求項5に記載の巻き上げ装置。
【請求項7】
前記入力部材、前記出力部材、前記カム機構、及び、前記回転規制部が一体のユニットを構成することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の巻き上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引部材を電動又は手動により巻き上げて(巻き取って)及び/又は繰り降ろして(繰り出して)対象物を昇降させるための巻き上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動力や手動の力を利用して寝具、梱包類、仮設足場、建造物、漁労具等の対象物を所定位置まで巻き上げたり、降ろしたりする巻き上げ装置は従来から一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、魚釣りの分野でも、巻き上げ装置として魚釣用リールが多く使用されている現状にある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
このような様々なタイプの巻き上げ装置は、電動又は手動による駆動力を用いて対象物を最適な状態で巻き上げて降ろすことができるようにする様々な機構を組み込んでいる。
【0005】
例えば、特許文献1に開示される巻上げ機は、モータにより回転される駆動軸と、牽引部材を巻回するためのドラムを回転させる出力軸との間に、駆動軸側の駆動ギヤと出力軸側の従動ギヤとを噛合させて成る動力伝達歯車を介在させるとともに、従動ギヤをネジ機構により出力軸に対して相対回転且つ軸方向に移動可能に設けることにより駆動軸及び/又は出力軸の回転で従動ギアをブレーキ受材に対して接離可能にしてブレーキ力を選択的に生起させるブレーキ装置と、一方向の回転のみを許容するラチェット機構との組み合わせにより、モータの無通電時に過大な力によって対象物が落下してしまわないように対象物を所定位置に保持するようにしている(対象物の不要な落下を防止している)。
【0006】
一方、特許文献2に開示される電動リールは、モータの巻き取り動力を減速機構(遊星歯車機構)を介してスプールに伝達するモータ動力伝達経路と、モータからスプールへの動力の伝達を遮断してスプールをフリー回転状態とすることにより釣糸の繰り出しを可能にするモータ動力遮断経路との両経路を手動又は電動により切り換えるためのクラッチ機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−5972号
【特許文献2】特開平7−213203号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される巻上げ機は、モータの正逆回転により巻き上げ及び降ろし作業を可能にしつつ対象物の不要な落下を防止できるものの、駆動軸、出力軸、動力伝達歯車、及び、ブレーキ装置といった動力伝達機構がドラムの側方に並設されており、したがって、装置全体の軸方向寸法が大きくなる。そのため、例えば巻上げ機を必要とする様々な機器、装置等に対してコンパクトに組み込むことが難しい。
【0009】
これに対し、前述した特許文献2に開示される電動リールは、遊星歯車機構を利用しながら動力伝達機構を軸方向でコンパクトに収める構造を実現しているが、対象物(錘や仕掛け等)を巻き上げたり降ろしたりするためにクラッチ機構が手動又は電動により動力伝達状態と動力遮断状態とに切り換えられるこの電動リールにおいて、特許文献1に開示されるように対象物の不要な落下(スプールの逆転)を防止するためには、クラッチ機構に加えて逆止機構等を更に付加して設ける必要がある。そのため、電動巻き上げ装置全体が必然的に大型化及び重量化するだけでなく、構造も複雑化し、また、スペースに制約があるハウジング内に様々な前記機構を配設しなければならないことから、組み込み性及びメンテナンス性も悪くなる。
【0010】
また、この特許文献2に開示される電動リールでは、前記クラッチ機構の動力の伝達/分離操作を介して対象物の巻き上げ及び降ろし作業が行なわれるため、現場状況に適した条件で、タイムリーに、連続的且つ迅速に巻き上げ及び降ろし作業を効率的に行なうことが難しい。
【0011】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、装置全体の構造の簡素化及び小型・軽量化を図りつつ、対象物の不要な落下を防止する或いは最小限に抑えることができるとともに、タイムリーに連続的且つ迅速に巻き上げ及び降ろし作業を効率的に行なえる巻き上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の巻き上げ装置は、装置本体に設けられ、回転駆動力を生起するための駆動力源と、前記装置本体に回転可能に支持され、巻き上げ対象物を牽引するための牽引部材が巻回される回転体と、前記駆動力源から駆動力が入力される入力部材と、前記入力部材から駆動力を受けて該駆動力を前記回転体に出力する出力部材と、一方向の回転のみが許容されて他方向の回転が阻止される回転規制部と、前記入力部材と前記出力部材とを部分的な相対回動を可能にしつつ一体回転可能に連結し、前記出力部材に対する前記入力部材の第1の方向の前記相対回動によって軸方向に突出して前記回転規制部と係合することにより前記入力部材及び前記出力部材を前記回転規制部に一体回転可能に結合させるとともに、前記出力部材に対する前記入力部材の前記第1の方向と反対の第2の方向の相対回動によって前記回転規制部から軸方向に離間することにより前記入力部材と前記出力部材とを前記回転規制部から切り離すカム機構とを備え
、前記入力部材が内歯車を有することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、駆動力源から第1の方向(回転方向)の回転駆動力が入力部材に入力されて入力部材が出力部材に対して第1の方向に相対回動されると、カム機構が軸方向に突出して回転規制部と係合し、入力部材及び出力部材が回転規制部と一体回転可能に結合される。そのため、この回転方向で回転規制部の回転が許容されるように設定しておく(この回転方向(第1の方向)を回転規制部の前記一方向に設定しておく)ことにより、入力部材及び出力部材が回転規制部と一体で回転して、出力部材の回転が回転体に伝わり、回転体を第1の方向に回転させることができる。
【0014】
一方、駆動力源から先と反対の第2の方向(回転方向)の回転駆動力が入力部材に入力されて入力部材が出力部材に対して第2の方向に相対回動されると、カム機構が回転規制部から軸方向に離間することにより入力部材と出力部材とが回転規制部から切り離されて回転されるため、この回転方向が回転規制部を回転不能な前記他方向に回転させようとする方向であるにもかかわらず、入力部材及び出力部材は、回転規制部とは無関係に自由に一体回転して、その回転を回転体に伝えて、回転体を第2の方向に回転させることができる。
【0015】
これに対し、駆動力源から入力部材への回転駆動力の入力が停止された状態で、回転体が第2の方向に回転して、出力部材が入力部材に対して第2の方向に相対回転されると、入力部材は出力部材に対して第1の方向に相対回動される形となることから、カム機構が軸方向に突出して回転規制部と係合し、入力部材及び出力部材が回転規制部と一体回転可能に結合される。このとき、回転規制部の先の回転設定によれば、回転規制部は第2の方向、すなわち、前記他方向に回転されようとするが、回転規制部はこの方向の回転が阻止されているため、出力部材及び回転体はそれ以上(すなわち、入力部材と出力部材との相対許容回動量以上)回転しない(入力部材と出力部材との相対許容回動量は、極力小さく設定されることが好ましい)。
【0016】
したがって、このような回転作動形態では、前記第1の方向を回転体の巻き取り方向(牽引部材を回転体に対して巻き取る方向)に設定し、前記第2の方向を回転体の繰り出し方向(牽引部材を回転体から繰り出す方向)に設定すれば、駆動力源側からの正逆回転に応じて回転体を牽引部材の巻き取り方向及び繰り出し方向に回転可能にするとともに、駆動力源側からの駆動力入力停止時に回転体の繰り出し方向の回転を阻止して対象物の不要な落下を防止する或いは最小限に抑えることができる。
【0017】
このため、上記構成では、入力部材から出力部材へ力が伝えられる状態でカム機構が回転規制部に係合すると、回転規制部に前記一方向で回転力が伝えられ、出力部材から入力部材へ力が伝えられる状態でカム機構が回転規制部に係合すると、回転規制部に前記他方向で回転力が伝えられるようになっていること好ましい。
【0018】
このように、上記構成では、カム機構が、入力部材と出力部材とを連結させる(入力部材と出力部材との間で回転力を伝達する)機能、並びに、入力部材及び出力部材と回転規制部とを係脱可能に係合させる(対象物の不要な落下を防止する)機能の両方の機能を兼ね備えているため、部品点数を少なくして巻き上げ装置のコンパクト化を容易に図ることができる(巻き上げ装置全体の構造の簡素化及び小型・軽量化を図ることができる)。しかも、カム機構のこのような兼用構造によれば、コンパクト化に影響を及ぼすことなく入力部材に内歯車を形成してそこに遊星歯車を組み込むことも可能になるため、巻き上げ装置の軸方向寸法を小さく抑えて、巻き上げ装置を必要とする様々な機器、装置等に対してコンパクトに組み込むことも可能になる。
【0019】
なお、このようなカム機構による装置の小型化を有効に図るとともに、組み立て性の向上も図るため、カム機構は、入力部材及び出力部材のうちの一方側に設けられるカム溝と、入力部材及び出力部材のうちの他方側に設けられて、カム溝に係合するとともに、径方向外側から他方側に取り付け可能なフォロワとを有することが好ましい。
【0020】
また、上記構成によれば、前述したように駆動力源側からの正逆回転に応じて回転体を牽引部材の巻き取り方向及び繰り出し方向に回転可能にするとともに、駆動力源側からの駆動力入力停止時に回転体の回転を阻止して牽引部材の繰り出しを防止するため、動力伝達状態を切り換えるクラッチ機構を不要としながらも、両回転方向の駆動力を利用する巻き上げ及び繰り出しの動力伝達の効果的制御の実現を図って、対象物の不要な落下を防止できる。また、クラッチ機構による動力伝達状態の切り換え操作が不要になるため、タイムリーに連続的且つ迅速に巻き上げ及び降ろし作業を効率的に行なえる。
【0021】
なお、上記構成の巻き上げ装置は、寝具、梱包類、仮設足場、建造物、漁労具等の対象物を所定位置まで巻き上げたり、降ろしたりするために使用できるほか、魚釣用のリールとして使用することもでき、更には、ドローンに搭載してドローンから荷物を降ろし或いは上空のドローンへと荷物を巻き上げるなど、その適用分野は限定されない。また、駆動力源は、電動及び手動の両方を含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、装置全体の構造の簡素化及び小型・軽量化を図りつつ、対象物の不要な落下を防止する或いは最小限に抑えることができるとともに、タイムリーに連続的且つ迅速に巻き上げ及び降ろし作業を効率的に行なえる巻き上げ装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る巻き上げ装置の分解斜視図である。
【
図2】
図1の巻き上げ装置を動力伝達機構側から見た側面図である。
【
図5】
図1の巻き上げ装置の動力伝達機構の要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る巻き上げ装置の一実施形態について具体的に説明する。
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る巻き上げ装置1は、回転駆動力を生起するための駆動力源としての電動モータ2と、巻き上げ対象物を牽引するための牽引部材(図示せず)が巻回される筒状の回転体4とを収容保持する装置本体としてのハウジング6を備える。この場合、回転体4は、軸受8を介してハウジング6に回転可能に支持され、また、電動モータ2は、モータハウジング2Aに収容された状態で筒状の回転体4の内側に回転不能に支持固定されており、例えばハウジング6に着脱自在な図示しないバッテリ等により駆動されてもよい。
【0025】
なお、前記牽引部材としては、巻き上げ装置1の用途に応じて、ワイヤ、チェーン、ロープ、釣糸等を挙げることができる。また、回転体4は、例えば巻き上げ装置1が魚釣用電動リールとして使用される場合には、釣糸が巻回されるスプールに対応する。
【0026】
また、電動モータ2及び回転体4は、動力伝達機構(動力伝達経路)10によって互いに動力伝達可能に連結されている。この場合、動力伝達機構10は、電動モータ2の回転を回転体4側に伝達するが回転体4の回転を電動モータ2側に伝達しないようになっており、電動モータ2から回転駆動力が入力される入力部材40と、入力部材40から駆動力を受けて該駆動力を回転体4に出力する出力部材50と、一方向の回転のみが許容されて他方向の回転が阻止される例えばラチェット部材である回転規制部60(以下、ラチェット部材60と称する)と、入力部材40と出力部材50とを部分的な相対回動を可能にしつつ一体回転可能に連結する後述するカム機構と、電動モータ2からの駆動力を減速して入力部材40に伝える減速機構12とを備える。また、本実施形態では、減速機構12が遊星歯車機構として構成される。
【0027】
具体的には、電動モータ2の出力軸2aは、2段式の第1の遊星歯車機構(第1の減速機構)12Aを介して入力部材40側に連結され、この場合、出力軸2aには、これと一体回転可能に第1の遊星歯車機構12Aの一対の太陽歯車18,19が、互いに軸方向に隣接して出力軸2aと同軸的に固定され、また、これらの太陽歯車18,19の周囲にはそれぞれ対応する複数の遊星歯車20,21が噛み合っている。また、これらの遊星歯車20,21は、遊星キャリア25によって回転可能に一体に支持されるとともに、出力軸2aと同心的に配置されてモータハウジング2Aに回転不能に固定される内歯車27とも噛み合っている。すなわち、遊星歯車20,21は、同心的に配置される太陽歯車18,19と内歯車27との間でこれらの両方の歯車18(19),27と噛み合いつつ、太陽歯車18,19の回転に伴って内歯車27の内周に沿って太陽歯車18,19の周りで公転するようになっている。なお、遊星キャリア25は、軸受30を介して出力軸2aに回転可能に支持されつつ、その中心で軸部25aが軸方向に延びている。
【0028】
また、遊星キャリア25の軸部25aは、軸受32を介して、ハウジング6に一体的に取り付けられる後述するユニットハウジング70に回転可能に支持されるとともに、この軸部25aにはこれと一体回転可能に第2の遊星歯車機構(第2の減速機構)12Bの太陽歯車35が同軸的に固定され、また、この太陽歯車35の周囲には、モータハウジング2Aに回転不能に固定される遊星キャリア37によって回転可能に一体に支持される複数の遊星歯車39が噛み合っている。
【0029】
また、第2の遊星歯車機構12Bの前述した複数の遊星歯車39は、遊星キャリア25の軸部25aと同心的に配置されるとともに、環状の入力部材40の内周面を形成する内歯車40aとも噛み合って入力部材40を回転可能に支持している。すなわち、遊星歯車39は、同心的に配置される太陽歯車35と内歯車40aとの間でこれらの両方の歯車35,40aと噛み合いつつ、太陽歯車35及び/又は内歯車40aの回転に伴って内歯車40aの内周に沿って太陽歯車35の周りで公転するようになっている。
【0030】
また、遊星歯車39と噛み合う内歯車40aを有する入力部材40は、前述したようにカム機構を介して出力部材50と連結される。出力部材50は、軸受57を介してユニットハウジング70に回転可能に支持されるとともに、その外周フランジ部50aが締結部材52を介して回転体4に一体回転可能に結合固定される。出力部材50は、筒状の本体部50b内で入力部材40を嵌合状態で受けるとともに、電動モータ2とは反対の側で軸方向に突出する軸方向突出部50cの外周面によりラチェット部材60を回転可能に支持している。
【0031】
ラチェット部材60は、その外周のラチェット歯60Aがユニットハウジング70に回動可能に取り付けられたストッパ90と係合することにより、一方向(本実施形態では
図1の反時計回り方向A)の回転のみが許容されて他方向(本実施形態では
図1の時計回り方向B)の回転が阻止されている。そのため、本実施形態のラチェット部材60の外周のラチェット歯60Aは、
図5に明確に示されるように、一方向A(反時計回り)で斜めに下がって低くなるテーパ面60aとこのテーパ面60aの下端で垂直に径方向に立ち上がる段差60bとの組を周方向に連続して有する。
【0032】
また、本実施形態に係る巻き上げ装置1には、回転体4に対して牽引部材を平行に巻回するためのレベルワインド装置87が設けられる。このレベルワインド装置87は、電動モータ2が回転駆動されると、それに連動して、すなわち、第1及び第2の歯車80,82及び図示しないウォームギアを介して、回転体4から繰り出される牽引部材を挿通する案内体88が左右に往復移動するよう構成されており、牽引部材の巻き取り動作に伴って、回転体4に対して牽引部材を均等に巻回する機能を有する。ここで、連動機構を構成する第1の歯車80は、締結部材86(
図1参照)を介して出力部材50に一体回転可能に固定され、また、第1の歯車80と噛み合う第2の歯車82はユニットハウジング70に回転可能に支持されている。
【0033】
また、本実施形態に係る巻き上げ装置1では、
図1に示されるように、カム機構を含む入力部材40及び出力部材50、ラチェット部材60、並びに、レベルワインド装置87に繋がる歯車80,82が前述したユニットハウジング70内に収容されて一体のユニットUとして構成されている。このように、これらの構成要素をユニット化することにより、巻き上げ装置1の組み立て性が向上する。
【0034】
なお、以上説明してきた動力伝達機構10のこれらの構成要素は、本実施形態では、電動モータ2を内部に収納した回転体4の内側及び側部に隣接して同軸的に且つ軸方向にコンパクトにハウジング6内に収容され、回転体4の径方向寸法の範囲内に収められる。このようなハウジング6内へのコンパトな収納は、減速機構12A,12Bとして遊星歯車機構を採用するとともに、これらを入力部材40及び出力部材50と共に同軸的に配設することにより、デッドスペースを伴うことなく実現し得るものである。
【0035】
また、本実施形態において、入力部材40と出力部材50とを部分的な相対回動を可能にしつつ一体回転可能に連結する前述したカム機構は、出力部材50に対する入力部材40の第1の方向(本実施形態では、
図1の反時計回り方向a)の相対回動によって軸方向に突出してラチェット部材60の表面と摩擦係合することにより入力部材40及び出力部材50をラチェット部材50に一体回転可能に結合させるとともに、出力部材50に対する入力部材40の第1の方向aと反対の第2の方向(本実施形態では、
図1の時計回り方向b)の相対回動によってラチェット部材60から軸方向に離間することにより入力部材40と出力部材50とをラチェット部材60から切り離すようになっている。
【0036】
具体的には、
図1に示されるように、本実施形態のカム機構は、出力部材50の本体部50bの側面に設けられる複数のカム溝78と、これらのカム溝78に係合する円柱状のフォロワ79とを有する。カム溝78は、所定の角度間隔(本実施形態では120°の間隔)を隔てて複数(本実施形態では3つ)設けられ、出力部材50の本体部50bの側面に沿ってラチェット部材60側からモータ2側へ向けて斜めに螺旋状に延びている(
図5参照)。フォロワ79は、カム溝78に対応する位置で同数(本実施形態では3つ)設けられ、カム溝78を貫通して径方向外側に放射状に突出するとともに、出力部材50の本体部50bの内側面と対向する入力部材40の外側面に設けられるフォロワ取り付け穴(図示せず)に例えば着脱自在に固定される。したがって、このような構成のカム機構によれば、入力部材40と出力部材50とが部分的に回動可能となり、入力部材40と出力部材50との相対的な回動が相対的な軸方向移動へと変換される。なお、本実施形態において、フォロワ79は、組み付け段階では、カム溝78を通じて径方向外側(出力部材50の外側)から入力部材40に取り付けられるようになっている。このようなフォロワ79は、回転角度規制が可能であり、前述した特許文献1に開示されるネジ機構で必要とされるような別体の回転規制部材を不要にすることができる。また、このようなフォロワ79によれば、組み立ての順番や設計の自由度が増え、また、ねじ込み作業の必要性もなくなるため、部品点数の減少に加えて組み立て性も向上できる。
【0037】
また、本実施形態において、入力部材40は、出力部材50と対向するその対向面40aに周方向に所定の角度間隔(本実施形態では120°の角度間隔)を隔てて設けられる複数(本実施形態では3つ)の円弧状の突起74を有する。また、出力部材50の本体部50bの軸方向に面する主面には、これらの突起74と対応する位置に、突起74が係合する貫通穴(円弧状の長穴)72が設けられる。この場合、突起74は、前述したカム機構78,79の作用により、出力部材50に対する入力部材40の第1の方向aの相対回動に応じて貫通穴72を通じてラチェット部材60側に対して突出するとともに、反対の第2の方向bの相対回動に応じて貫通穴72の内側に没するようになっている(この意味で、突起74及び貫通穴72はカム機構に伴って動作するカム機構の一部を構成する)。なお、突起74は、ラチェット部材60側に対して突出されることによりラチェット部材60の対向面と摩擦接触状態で係合可能な係合面74aを有する。そして、この係合面74aは、ラチェット部材60の対向面と略平行な平坦面として形成されてもよいが、例えば第1の方向a(反時計回り方向)に向かって高さが高くなる(軸方向突出量が増大する)ようになっていても構わない。
【0038】
なお、本実施形態では、前述したカム機構による入力部材40及び出力部材50の部分的な回動を阻害しないように、突起74の周方向の長さ寸法よりも貫通穴72の周方向の長さ寸法の方が大きく設定されている(この周方向の寸法の差分(すなわち、カム溝78に沿うフォロワ79の移動可能量)が回動許容範囲(相対許容回動量)となる)。また、突起74の係合面とラチェット部材60の対向面との摩擦接触力は、入力部材40及び出力部材50とラチェット部材60との回転結合力を決定付けるが、前記摩擦接触力はカム溝78の傾きに依存し得る。すなわち、カム溝78の傾き(周方向に対する角度)を大きくすればするほど回転方向の力を効率的に軸方向の力に変換することができ、突起74によりラチェット部材60に大きな摩擦力を働かせることができる。一方、カム溝78の傾きを周方向に近づけると、突起74を軸方向に動かすために必要な回転角度が大きくなり、その結果、必要なカム溝78の長さが大きくなって、突起74の周方向の長さが小さくなる。したがって、本実施形態では、望ましいカム作用を実現するようにカム溝78の傾斜度合いや長さ、突起74の突出量などの設計パラメータが設定されている。
【0039】
以上のように構成される巻き上げ装置1において、図示しないバッテリ等から電力を電動モータ2に印加して電動モータ2の出力軸2aを正回転させる、すなわち、第1の方向aに回転させると、その回転は、第1及び第2の遊星歯車機構(減速機構)12A,12Bにより減速されて入力部材40に伝えられる。このようにして回転駆動力が入力部材40に入力されると、入力部材40が出力部材50に対して第1の方向aに相対回動され、前述したカム機構78,79の作用により入力部材40の突起74が出力部材50の貫通穴72を通じてラチェット部材60へ向けて軸方向に突出する。そして、貫通穴72内に係合する突起74がこの貫通穴72の第1の方向aの端部72aに当接すると、入力部材40と出力部材50とが第1の方向aに一体回転されるとともに、軸方向に突出する突起74がラチェット部材60と摩擦接触状態で係合して入力部材40及び出力部材50をラチェット部材60に一体回転可能に結合する。したがって、入力部材40、出力部材50、及び、ラチェット部材60が第1の方向a(一方向A)に一体で回転し、出力部材50の回転が回転体4に伝わって、回転体4を第1の方向aに回転させることができる。その結果、例えば、図示しない牽引部材を適切な速度で例えば回転体4に巻き付けることができる(牽引部材に結合された対象物を巻き上げる(上昇させる)ことができる)。
【0040】
一方、電動モータ2の出力軸2aを逆回転させる、すなわち、第2の方向bに回転させると、この回転も、第1及び第2の遊星歯車機構12A,12Bにより入力部材40に減速して伝えられる。このようにして回転駆動力が入力部材40に入力されると、入力部材40が出力部材50に対して第2の方向bに相対回動されて、前述したカム機構78,79の作用により突起74がラチェット部材60から軸方向に離間するように貫通穴72の内側に没するとともに、突起74が貫通穴72の第2の方向bの端部72bに当接した時点で、入力部材40と出力部材50とが第2の方向bに一体回転される。この第2の方向bでは、前述したように突起74がラチェット部材60から軸方向に離間することにより入力部材40及び出力部材50がラチェット部材60から切り離されて回転されるため、この回転方向bがラチェット部材60を回転不能な他方向Bに回転させようとする方向であるにもかかわらず、入力部材40及び出力部材50は、ラチェット部材60とは無関係に自由に一体回転して、その回転を回転体4に伝えて、回転体4を第2の方向bに回転させることができる。その結果、例えば、図示しない牽引部材を適切な速度で例えば回転体4から繰り出すことができる(牽引部材に結合された対象物を下降させることができる)。
【0041】
これに対し、電動モータ2を停止させた無通電時に、牽引部材に過大な力が作用して、これを巻回する回転体4が第2の方向bに回転しようとすると、すなわち、回転体4と一体回転する出力部材50が入力部材40に対して第2の方向bに相対回転されると、入力部材40は出力部材50に対して第1の方向aに相対回動される形となることから、前述したカム機構78,79の作用により突起74が軸方向に突出してラチェット部材60と係合し、入力部材40及び出力部材50がラチェット部材60と一体回転可能に結合される。このとき、ラチェット部材60は第2の方向b、すなわち、他方向Bに回転されようとするが、ラチェット部材60はこの方向の回転がストッパ90により阻止されているため、出力部材50及び回転体4はそれ以上(すなわち、入力部材40と出力部材50との前述した相対許容回動量以上)回転しない。その結果、過大な力によって対象物が落下してしまわないように対象物を所定位置に保持することができる(対象物の不要な落下を防止できる)。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の巻き上げ装置1では、カム機構が、入力部材40と出力部材50とを連結させる(入力部材40と出力部材50との間で回転力を伝達する)機能、並びに、突起74を用いて入力部材40及び出力部材50とラチェット部材60とを係脱可能に係合させる(対象物の不要な落下を防止する)機能の両方の機能を兼ね備えているため、部品点数を少なくして巻き上げ装置1のコンパクト化を容易に図ることができる(巻き上げ装置1全体の構造の簡素化及び小型・軽量化を図ることができる)。しかも、カム機構のこのような兼用構造によれば、本実施形態のようにコンパクト化に影響を及ぼすことなく入力部材40に内歯車40aを形成してそこに遊星歯車39を組み込むことも可能になるため、巻き上げ装置1の軸方向寸法を小さく抑えて、巻き上げ装置1を必要とする様々な機器、装置等に対してコンパクトに組み込むことも可能になる。
【0043】
また、本実施形態によれば、前述したように電動モータ2側からの正逆回転に応じて回転体4を牽引部材の巻き取り方向及び繰り出し方向に回転可能にするとともに、電動モータ2側からの駆動力入力停止時に回転体4の回転を阻止して牽引部材の繰り出しを防止するため、動力伝達状態を切り換えるクラッチ機構を不要としながらも、両回転方向の駆動力を利用する巻き上げ及び繰り出しの動力伝達の効果的制御の実現を図って、対象物の不要な落下を防止できる。また、クラッチ機構による動力伝達状態の切り換え操作が不要になるため、タイムリーに連続的且つ迅速に巻き上げ及び降ろし作業を効率的に行なえる。
【0044】
なお、本実施形態の巻き上げ装置1は、寝具、梱包類、仮設足場、建造物、漁労具等の対象物を所定位置まで巻き上げたり、降ろしたりするために使用できるほか、魚釣用のリールとして使用することもでき、更には、ドローンに搭載してドローンから荷物を降ろし或いは上空のドローンへと荷物を巻き上げるなど、その適用分野は限定されない。
【0045】
以上、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明は、前述した実施形態に限定される、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態では、回転駆動力を生起するための駆動力源が電動モータであったが、回転駆動力が手動で生起されても構わない。また、前述した実施形態では、カム機構のカム溝及びフォロワ(関連する突起及び貫通穴)が3つ存在したが、これらのカム溝及びフォロワ(突起及び貫通穴)の数、形態等は任意に設定される。また、前述した実施形態では、出力部材にカム溝が設けられ、入力部材にフォロワが設けられているが、この逆の配置形態、すなわち、出力部材にフォロワを設け、入力部材にカム溝を設けて、フォロワを径方向内側に突出させてもよい。また、カム溝及びフォロワ(突起及び貫通穴)の配置形態は、前述した形態に限定されず、カム機構がカム溝及びフォロワから成る必要もない。要は、前述したカム機構の作用を実現できる形態であれば、カム機構の構造はどのようなものであってもよい。
【0046】
また、前述した実施形態では、第1の方向(一方向)が反時計回り方向に設定されるとともに、第2の方向(他方向)が時計回り方向に設定されているが、この方向設定が逆であってもよい。また、前述した実施形態では、電動モータの駆動が、携帯電話、WiFi通信端末などを利用して遠隔制御されてもよい。また、前述した実施形態では、回転規制部がラチェット部材により構成されているが、一方向クラッチななど、他の逆転防止構造によって回転規制部を構成しても構わない。また、前述した実施形態では、減速機構として遊星歯車機構が採用されたが、減速機構としては、波動歯車装置、例えばハーモニックドライブ(登録商標)や、平歯車が採用されてもよい。また、前述した実施形態では、電動モータが回転体内に収容されているが、電動モータが回転体の外部に設けられても構わない。
【符号の説明】
【0047】
1 電動巻き上げ装置
2 電動モータ(駆動力源)
4 回転体
6 ハウジング(装置本体)
12A 第1の減速機構(遊星歯車機構)
12B 第2の減速機構(遊星歯車機構)
40 入力部材
40a 内歯車
50 出力部材
60 ラチェット部材(回転規制部)
72 貫通穴(カム機構)
74 突起(カム機構)
78 カム溝(カム機構)
79 フォロワ(カム機構)
87 レベルワインド装置