(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る耐熱離型シート10及び20の使用方法の一例を示す模式図である。
図1には、被圧着物30、被圧着物40、及び被圧着物50を、一対の金型(金型72及び74)によって圧着し、3つの被圧着物が積層した被圧着物の積層体を成形するときの積層形態が示されている。なお、被圧着物の基材と液晶樹脂シートとは、通常、密着している状態にて圧着成形される。
【0009】
本発明の耐熱離型シート10は、基材層12、多孔性樹脂層14及び離型層16をこの順に有する。耐熱離型シート20の基本構成は、耐熱離型シート10と同じである。
被圧着物30は、基材32上に液晶樹脂シート(熱硬化性樹脂層34)を有する。被圧着物40と被圧着物50は、被圧着物30と同じである。被圧着物の積層体の最外層のうち基材層側、すなわち基材層52の、金型74側の表面には、基材層52の金型74側表面に基材層52をパターニングするレジスト材料(熱硬化性樹脂層60)を有していてもよい。
【0010】
図1において、耐熱離型シート10と耐熱離型シート20は、被圧着物30、被圧着物40、及び被圧着物50を挟むように、耐熱離型シート10、被圧着物30、被圧着物40、被圧着物50、耐熱離型シート20の順に並んだ積層構造体を成している。更に、当該積層構造体が一対の金型(金型72及び74)の間に介在している。
ここで、耐熱離型シート10と被圧着物30とは、離型層16が熱硬化性樹脂層34と隣接するように積層され、耐熱離型シート20と被圧着物50とは、離型層26がレジスト材料(熱硬化性樹脂層60)と隣接するように積層されている。
【0011】
図1には、被圧着物として、被圧着物30と被圧着物40と被圧着物50との3つを示しているが、被圧着物は2つ以上あればよく、生産目的に合わせて、6〜12個の被圧着物が積層され、圧着成形される。
【0012】
既述のように、加熱した熱硬化性樹脂は粘着性を帯び易い。従って、熱プレス後に被圧着物の積層体となる該積層体の最外層のうち、熱硬化性樹脂層側、すなわち、熱硬化性樹脂層34に、耐熱離型シート10の離型層16が隣接するように、耐熱離型シート10が配置される。耐熱離型シート10の存在により、熱プレス後に熱硬化性樹脂層34が粘着性を帯びても、熱硬化性樹脂層34は金型72に接着しにくい。
被圧着物50の基材層52に塗布されたレジスト材料(熱硬化性樹脂層60)も、加熱により粘着性を帯びるが、耐熱離型シート20の離型層26が隣接するように、耐熱離型シート20が配置されることで、レジスト材料が熱プレスで加熱した後も、レジスト材料は金型74に接着しにくい。
【0013】
レジスト材料は、熱プレス後に被圧着物の積層体となる該積層体の最外基材層に塗布されないことがある。通常、被圧着物の基材層は、銅板等の金属層であり、加熱によっても粘着性を帯びない。しかし、被圧着物の積層体となる該積層体の最外基材層にも、耐熱離型シートを隣接させて、圧着成形することが好ましい。
耐熱離型シートが存在することにより、被圧着物の積層体の熱伝導が均一となり易く、また、熱離型シートがクッション材として機能することにより、熱プレス時の加圧に起因する液晶樹脂シートの皺よりを抑制することができる。
以下、本発明の耐熱離型シートの詳細を説明する。
既述のように、耐熱離型シート20の基本構成は、耐熱離型シート10と同じであるので、本明細書では、耐熱離型シート10を代表して説明する。
【0014】
<耐熱離型シート>
本発明の耐熱離型シート10は、基材層12、多孔性樹脂層14及び離型層16をこの順に有する。
耐熱離型シート10は、多孔性樹脂層14が、熱プレスにより被圧着物から生じたガスを、耐熱離型シート10の側面のうち、多孔性樹脂層14の露出面から孔に溜め込むことができる。そのため、ガスに起因する液晶樹脂シートの皺の発生を抑制することができる。また、表面に離型性がある離型層16を有するため、熱プレス後に被圧着物30の液晶樹脂シート(熱硬化性樹脂層34)が金型72に接着したり、被圧着物50の基材層52に塗布されたレジスト材料(熱硬化性樹脂層60)が金型74に接着することを防止することができる。
更に、基材層12、多孔性樹脂層14、及び離型層16のいずれの層も、溶融温度が280℃以上であるため、耐熱離型シート10は耐熱性がある。
【0015】
溶融温度が280℃以上である成分としては、金属、融点(Tm)が280℃以上の樹脂等が挙げられる。融点を有しない樹脂であっても、ガラス転移温度(Tg)が280℃以上の樹脂は、溶融温度が280℃よりも高く、溶融温度が280℃以上である成分に包含される。
金属としては、銅、鉄、鋼、アルミニウム、及びこれらを含む合金等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
融点(Tm)が280℃以上である成分としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;Tm=327℃)に代表されるフッ素樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK;Tm=334)、ポリフェニレンサルファイド(PPS;Tm=285℃)等が挙げられる。
ガラス転移温度(Tg)が280℃以上の樹脂としては、ポリアミドイミド樹脂(PAI;Tg=280℃)、ポリイミド樹脂(PI;Tg=410℃)が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂は、融点を有しない。
【0016】
〔基材層〕
基材層12は、多孔性樹脂層14及び離型層16を支える層である。
基材層12は、耐熱性を有すると共に、多孔性樹脂層14及び離型層16を支える強度を有することから、金属及び溶融温度が280℃以上の樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
熱プレス時の熱伝導性の観点から、基材層12に用いる金属としては、銅、鋼(特に、ステンレス鋼)、及びアルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、アルミニウムがより好ましい。
【0017】
基材層12に用いる溶融温度が280℃以上の樹脂としては、耐熱性を有すると共に、多孔性樹脂層14及び離型層16を支える強度を有することから、ポリイミド樹脂を用いることが好ましい。
ポリイミド樹脂は、通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを有機極性溶媒中で反応させることにより得られるものが用いられる。
【0018】
更に、耐熱性と強度の観点から、基材層12の層厚は10〜200μmであることが好ましく、10〜170μmであることがより好ましい。
基材層12は、金属、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1つから成ることが好ましく、金属(特にアルミニウム)からなることがより好ましい。
【0019】
〔多孔性樹脂層〕
多孔性樹脂層14は、基材層12と離型層16との間に位置し、複数の被圧着物を加熱し、加圧したときに生じるガスを取り込む層である。
多孔性樹脂層14は、溶融温度が280℃以上であり耐熱性を有すると共に、無数の孔を有しており、耐熱離型シート10の側面のうち、多孔性樹脂層14の露出面からガスを取り込むことができる。更に、離型層16として、ガス透過性の成分を用いた場合は、離型層16を介して、被圧着物30の熱硬化性樹脂層34及び他の熱硬化性樹脂層44、54、及び60から生じたガスを吸収することができる。
【0020】
多孔性樹脂層14は、耐熱性を有し、多孔質の層とする観点から、樹脂成分として、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂としては、基材層12に用いるポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂が挙げられる。
【0021】
フッ素樹脂は、溶融温度が280℃以上のフッ素樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;Tm=327℃)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA;Tm=310℃)等が挙げられる。また、変性PTFE等の、機能性官能基を有する変性フッ素樹脂も用いることができる。フッ素樹脂は、1種または2種以上用いることができる。
多孔性樹脂層14を構成する樹脂成分は、(1)ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂のいずれか一方又は両方、並びに(2)フッ素樹脂を含むことが好ましく、(1)ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂のいずれか一方又は両方、並びに(2)フッ素樹脂からなることが好ましい。
【0022】
多孔性樹脂層14は、更に、無機フィラー、及びカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含むフィラーを含有することが好ましい。多孔性樹脂層14がフィラーを含有することで、多孔性樹脂層14の強度を高めることができる。
無機フィラーとしては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物が挙げられる。
以上の中でも、フィラーは、酸化ケイ素、酸化チタン及びカーボンブラックがより好ましい。
多孔性樹脂層14中のフィラーの含有量は、0質量%を超え、5質量%未満であることが好ましく、1〜4質量%であることがより好ましい。
フィラーの平均粒径は、0.1〜10μmであることが好ましく0.5〜5μmであることがより好ましい。フィラーの平均粒径は、レーザー回折散乱法に基づいて測定された粒度分布において、累積質量百分率が50%に相当する粒径(D50)として求められる。
【0023】
多孔性樹脂層14は層厚が1〜15μmであることが好ましい。かかる範囲であることで、多孔性樹脂層14に被圧着物から発生するガスを取り込み易くなる。多孔性樹脂層14の層厚は1〜10μmであることがより好ましい。
多孔性樹脂層14は、樹脂成分及びフィラーからなるか、樹脂成分からなることが好ましい。
【0024】
多孔性樹脂層14の多孔性は、例えば走査電子顕微鏡(SEM)で多孔性樹脂層14の表面を写真観察することにより確認する事ができる。
具体的には、多孔性樹脂14の表面を、SEMを用いて、例えば、2000倍で観察する事で多孔性樹脂層14の内部に連通性を持つφ0.2〜φ5μmの微細孔が存在する事を確認し、また、空孔数、空孔径等を測定することができる。
表面観察において写真を撮影し、得られたSEM写真中の任意の3箇所において、100μm
2当たりの空孔を数え、その個数を平均したとき、空孔数が50個/100μm
2以上である場合、多孔性樹脂層14は多孔性であるといえる。
図2に、本発明の一実施形態に係る耐熱離型シートの多孔性樹脂層14の表面を、SEMを用いて2000倍で観察したときの、SEM写真の一例を示す。
図2のSEM写真に示されるN1〜N3の3つの黒枠(いずれも100μm
2)には、N1において99個、N2において77個、N3において72個の空孔が把握される。この3つの黒枠内の空孔数の平均は83個/100μm
2であり、多孔性樹脂層14が多孔性であることがわかる。
【0025】
〔離型層〕
離型層16は、溶融温度が280℃以上であり耐熱性を有すると共に、被圧着物の粘着質の表面に隣接して積層されることで、被圧着物の金型への接着、及び被圧着物同士の接着を防止する層である。
離型層16は、耐熱性と離型性の観点から、フッ素樹脂を含むことが好ましい。
フッ素樹脂としては、多孔性樹脂層14が含み得るフッ素樹脂が挙げられる。中でも、耐熱性と離型性に優れ、ガス透過性も優れることから、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。
離型層16がガス透過性に優れるPTFEであることで、多孔性樹脂層14は、多孔性樹脂層14の露出面からのみならず、離型層16で覆われている面からも、離型層16を介して、被圧着物から生じるガスを層内に取り込むことができる。
離型層16の層厚は、強度の観点から、0.5〜15μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。
離型層16はフッ素樹脂からなることがより好ましい。
【0026】
耐熱離型シート10は、基材層12、多孔性樹脂層14、及び離型層16以外の層を更に有していてもよいし、基材層12、多孔性樹脂層14、及び離型層16から成っていてもよい。
以下、符号を省略して説明する。
【0027】
<耐熱離型シートの製造方法>
耐熱離型シートの製造方法は特に制限されない。
例えば、(a)基材層上に、多孔性樹脂層形成用塗布液を塗布し、加熱、乾燥して、多孔性樹脂層を形成してから、離型層形成用塗布液を塗布し、加熱、乾燥して、離型層を形成することができる。また、(b)基材層上に、多孔性樹脂層形成用塗布液を塗布し、加熱し、半硬化状の塗膜aを形成した後、塗膜a上に、離型層形成用塗布液を塗布し、加熱し、半硬化状の塗膜bを形成し、その後、塗膜aと塗膜bからなる積層体を焼成して、多孔性樹脂層と離型層を形成してもよい。
以上の製造工程は、ロール・トゥ・ロールにて行ってもよく、基材層をベルト搬送しながら各種塗布液を塗布し、耐熱離型シートを製造してもよい。
【0028】
〔多孔性樹脂層形成用塗布液〕
多孔性樹脂層形成用塗布液は、少なくとも、溶融温度が280℃以上の樹脂と分散媒とを含み、必要に応じて、フィラー、界面活性剤等を含むことができる。これらの成分を混合することで、多孔性樹脂層形成用塗布液を調製することができる。
【0029】
(溶融温度が280℃以上の樹脂)
溶融温度が280℃以上の樹脂としては、多孔性樹脂層に好適な樹脂として説明したポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びフッ素樹脂を用いることができ、既述のように、(1)ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂のいずれか一方又は両方、並びに(2)フッ素樹脂を含むことが好ましい。
多孔性樹脂層形成用塗布液中の溶融温度が280℃以上の樹脂の含有量は、10〜30質量%であることが好ましい。溶融温度が280℃以上の樹脂として、(1)ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂のいずれか一方又は両方、並びに(2)フッ素樹脂を含む場合、(1)ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂のいずれか一方又は両方は1〜10質量%(両方含む場合は合計量)であることが好ましく、(2)フッ素樹脂は9〜20質量%であることが好ましい。
【0030】
(分散媒)
多孔性樹脂層形成用塗布液の分散媒としては、有機溶剤、水等が挙げられ、有機溶剤は、溶融温度が280℃以上の樹脂を溶解し得る溶剤であることが好ましい。例えば、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。分散媒は1種で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。本発明においては、有機溶剤と水とを混合して用いることが好ましい。
多孔性樹脂層形成用塗布液中の分散媒の含有量は、溶融温度が280℃以上の樹脂(並びに必要に応じて含まれる界面活性剤及びフィラー)の含有量を除く残部である。有機溶剤と水とを混合して用いる場合は、例えば、有機溶剤を、多孔性樹脂層形成用塗布液中15〜25質量%、水を40〜50質量%として用いることができる。
【0031】
(フィラー)
多孔性樹脂層は、補強のため、無機フィラー、及びカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含むフィラーを含有することが好ましく、好ましい態様については既述のとおりである。
多孔性樹脂層形成用塗布液中のフィラー(特に、酸化ケイ素、酸化チタン、カーボンブラック)の含有量は、0質量%を超え5質量%未満であることが好ましい。
【0032】
(界面活性剤)
多孔性樹脂層形成用塗布液は、分散媒中の溶融温度が280℃以上の樹脂の分散性を高めるために、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等に代表される界面活性剤を含んでいることが好ましい。
多孔性樹脂層形成用塗布液中の界面活性剤の含有量は、0質量%を超え5質量%未満であることが好ましい。
【0033】
〔離型層形成用塗布液〕
離型層形成用塗布液は、少なくとも、離型性のある溶融温度が280℃以上の樹脂と分散媒とを含み、必要に応じて、界面活性剤等を含むことができる。これらの成分を混合することで、離型層形成用塗布液を調製することができる。
【0034】
(離型性のある溶融温度が280℃以上の樹脂)
離型性のある溶融温度が280℃以上の樹脂としては、フッ素樹脂が挙げられる。
離型層形成用塗布液中の離型性のある溶融温度が280℃以上の樹脂の含有量は、15〜60質量%であることが好ましい。
【0035】
(分散媒)
離型層形成用塗布液の分散媒としては、有機溶剤、水等が挙げられ、これらを1種で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。本発明においては、水を1種で用いることが好ましい。
離型層形成用塗布液中の分散媒の含有量は、離型性のある溶融温度が280℃以上の樹脂(及び必要に応じて含まれる界面活性剤)の含有量を除く残部であり、例えば、35〜80質量%とすることができる。
【0036】
(界面活性剤)
離型層形成用塗布液は、分散媒中の離型性のある溶融温度が280℃以上の樹脂の分散性を高めるために、界面活性剤を含んでいることが好ましい。界面活性剤は、多孔性樹脂層形成用塗布液に用いる界面活性剤と同種のものを用いることができる。
離型層形成用塗布液中の界面活性剤の含有量は、0質量%を超え5質量%未満であることが好ましい。
なお、既述の(a)の製造方法では、先に形成する多孔性樹脂層中のフッ素樹脂量が多いと、多孔性樹脂層が撥水撥油性を示し、その上にオーバーコートしにくくなるため、多孔性樹脂層形成用塗布液中のフッ素樹脂量を減らしつつ、離型層形成用塗布液中の界面活性剤量を増やすことが好ましい。
【0037】
多孔性樹脂層の孔は、次のような過程で形成されると考えられる。
既述の(a)のように、基材層上に多孔性樹脂層を形成してから、離型層を順次形成する製法においては、(a1)または(a2)の過程で孔が形成されるものと考えられる。
【0038】
(a1)溶融温度が280℃以上の樹脂を溶解する良溶媒(有機溶媒)と貧溶媒との混合物を、溶融温度が280℃以上の樹脂の溶剤として使用すると、比較的低沸点の良溶媒が先に蒸発し易い。良溶媒の蒸発の進行に伴い、多孔性樹脂層形成用塗布液中の樹脂相と残存する貧溶媒相とが相分離し、280℃以上の樹脂がゲル化し、他方、貧溶媒は該樹脂中に分散した粒子の形態をとるようになる。更に乾燥が進むことで、この粒子形態の高沸点の貧溶媒の蒸発が進行し、孔が形成されると考えられる。
【0039】
(a2)基材上に多孔性樹脂層形成用塗布液を塗布した後、塗膜を60〜80%程度の湿度雰囲気下で乾燥させることで、塗膜表面から気泡が5個前後連続した連続気泡状の孔が形成されると考えられる。
【0040】
また、既述の(b)のように、多孔性樹脂層形成用塗布液の半硬化塗膜(塗膜a)と離型層形成用塗布液の半硬化塗膜(塗膜b)とを形成してから、焼成する製法においては、(b1)の過程で孔が形成されるものと考えられる。
【0041】
(b1)(b)の製造方法においては、例えば、多孔性樹脂層形成用塗布液を130〜170℃で0.5〜5分間加熱して塗膜aを得て、離型層形成用塗布液を130〜170℃で0.5〜5分間加熱して塗膜bを得て、更に350〜380℃で焼成することができる。塗膜aと塗膜bを得る過程で、分散媒の水が蒸発し、塗膜aと塗膜bの焼成で、蒸発し切れなかった水の他、有機溶媒、及び界面活性剤が蒸発すると考えられる。焼成時に残留した分散媒が突沸することで、分散媒が存在していた部分が細孔となると考えられる。同時に、焼成とその後の冷却により、樹脂とフィラーとの熱膨張差から、間隙が助長されて多孔性樹脂層が得られると考えられる
【0042】
以上により、基材上に多孔性樹脂層及び離型層を有する耐熱離型シートを製造することができる。
【0043】
被圧着物が有する熱硬化性樹脂層を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、液晶樹脂が挙げられるが、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、エステル樹脂等であってもよい。
また、被圧着物は、通常、電子部品であり、基材は導電性があることが求められることから、基材層としては、耐熱離型シートの基材層が含み得る金属が用いられる。
なお、熱プレスで圧着成形される被圧着物は、通常、基材上に熱硬化性樹脂の樹脂シートが積層された構成であることから、
図1には、被圧着物として、それぞれ、基材層上に、熱硬化性樹脂層が積層された構造の積層体を示したが、耐熱離型シートは、表面が粘着性を帯びる被圧着物であれば特に制限なく適用することができる。