(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805065
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】水中ポンプおよびそれを用いた水中ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
F04D 13/08 20060101AFI20201214BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20201214BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20201214BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20201214BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
F04D13/08 F
F04D29/58 D
F04D15/00 L
H02K7/14 B
H02K9/19 Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-84626(P2017-84626)
(22)【出願日】2017年4月21日
(65)【公開番号】特開2018-178975(P2018-178975A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】長島 佑介
【審査官】
大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−162295(JP,A)
【文献】
特開昭61−118595(JP,A)
【文献】
特開2003−074490(JP,A)
【文献】
特開平9−250487(JP,A)
【文献】
特開平9−46974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/08
F04D 15/00
F04D 29/58
H02K 7/14
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車と、
該羽根車が支持され水の吸込口と吐出口を有するポンプケーシングと、
前記羽根車を駆動する電動機を有し、
前記電動機は、ハウジングとエンドブラケットを有し、
前記ハウジングと前記エンドブラケットは取付け面で金属接触しており、
前記エンドブラケットを貫通して前記電動機の内部を通過し前記エンドブラケットの内部に接するように注水冷却用配管を配置したことを特徴とする水中ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の水中ポンプであって、
前記エンドブラケットの前記注水冷却用配管が貫通する部分は密封した構造であることを特徴とする水中ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の水中ポンプであって、
前記エンドブラケットの前記注水冷却用配管が貫通する部分は、前記注水冷却用配管にゴムブッシュを取付けた構造であり、前記エンドブラケットを介して押え板で前記ゴムブッシュを締結し、前記ゴムブッシュの収縮により外部からの浸水を防止する構造であることを特徴とする水中ポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載の水中ポンプであって、
前記注水冷却用配管は、注水方向と排水方向の2つの管が連通されていることを特徴とする水中ポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載の水中ポンプと、
注水機構と、
前記注水機構と前記水中ポンプは前記注水冷却用配管で接続されており、
前記注水機構の前記水中ポンプへの注水をON/OFF制御する制御装置を有し、
前記注水冷却用配管を前記水中ポンプの内部を通過するように配置したことを特徴とする水中ポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中ポンプおよびそれを用いた水中ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚水や雑排水を処理する水中ポンプの運転及び停止は、水位によって決められている。すなわち、通常、ポンプ本体が水没する水位で運転し、その水位がポンプ吐出しケーシング上部の位置まで低下すると停止する。
【0003】
また、水槽内等で使用する一般的な水中ポンプの冷却は水槽内の排水を冷媒とし、水中ポンプ外部を冷却している。冷媒となる水の水位が低下すると、水中ポンプの電動機部が冷媒となる排水に沈まず気中にさらされた状態になる。以下この状態での運転を気中運転と記す。気中運転が続くと電動機部が加熱し温度上昇の原因となる。そして、電動機部の加熱状態が続くことにより電動機の焼損の可能性もある。そのため、温度リレーまたはオートカットリレーを取付け、加熱された電動機を停止させている。そのため、停止した水中ポンプの運転復帰まで排水が行われなくなる場合や、低水位での気中連続運転の影響で電動機の焼損に至ることがあり、低水位での水中ポンプ連続運転を可能とする構造が求められている。
【0004】
本技術分野における背景技術として、特開2002−310088号公報(特許文献1)や特開2009−293399号公報(特許文献2)がある。
【0005】
特許文献1には、モータフレームの外側にウォータージャケットを設け、且つオイルボックスとポンプケーシング間に1次冷媒として水を封入した熱交換器を配置すると共に、この熱交換器をウォータージャケットに連通し、且つ冷却水と揚液の間をシールするための下部軸封装置と、冷却水を循環させる冷却用羽根車を熱交換器内に設けたことを特徴とする乾式水中モータポンプが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、モータ部の両側に、それぞれ別々に流体を吸込、吐出する第1ポンプ部及び第2ポンプ部を一体に備えた電動ポンプであって、第1ポンプ部は、モータ部の駆動軸の一端に取り付けられる第1インペラと、この第1インペラが収容される第1液室を区画するとともに、第1吸込口及び第1吐出口が設けられた第1ケーシングとを備え、第2ポンプ部は、駆動軸の他端に取り付けられる第2インペラと、この第2インペラが収容される第2液室を区画するとともに、第2吸込口及び第2吐出口が設けられた第2ケーシングとを備え、モータ部に、第1液室と第2液室とに連通する連通路が設けられていて、駆動時に第1液室と第2液室との間で発生する差圧によって流体が連通路を流れるように構成された電動ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−310088号公報
【特許文献2】特開2009−293399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や特許文献2では、電動機の外側に循環させる外部フレーム構成または配管が必要であり、構造が複雑になり高価となる欠点があった。また、吸入した汚水や雑排水を使用するため、異物が絡み冷却水の循環が不十分となり冷却効果が十分に発揮できない可能性がある。
【0009】
本発明は、簡単な構造で冷却水の循環を確保できる、水中ポンプおよびそれを用いた水中ポンプシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、水中ポンプであって、羽根車と、羽根車が支持され水の吸込口と吐出口を有するポンプケーシングと、羽根車を駆動する電動機を有し、電動機は、ハウジングとエンドブラケットを有し、エンドブラケットを貫通して電動機の内部を通過するように注水冷却用配管を配置した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な構造で、水中ポンプが加熱する状態となる低水位での長時間気中運転を可能にできる、水中ポンプおよびそれを用いた水中ポンプシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例における水中ポンプと注水機構と制御盤からなる水中ポンプシステムの構成模式図である。
【
図2】実施例における水中ポンプの構造断面図である。
【
図3】実施例における水中ポンプのエンドブラケット上面図である。
【
図4】実施例における注水冷却用配管のエンドブラケット貫通部および側面図である。
【
図5】実施例における注水冷却用配管のエンドブラケット内の上面配置図である。
【
図6】実施例における注水冷却用配管のエンドブラケット貫通部の詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本実施例におけるポンプシステムの構成模式図である。
図1において、20は水中ポンプ、30は水中ポンプ20に外部から配管を介して水冷効果を与える注水機構、40は注水機構30の水中ポンプ20への注水をON/OFFするバブルを制御する制御盤(制御装置)である。本実施例では、ポンプ設備外部に水冷効果を与える注水機構を設け、ポンプ内部を通過する配管と接続することでポンプ本体の内部冷却効果を実現する。
【0015】
図1において、水中ポンプ20の運転スイッチがONの状態では、実線で示すように、制御盤40は注水機構30のバブルを開とするように注水機構30を制御し、注水機構30は冷却水を水中ポンプ20に注水する。また、水中ポンプ20の運転スイッチがOFFの状態では、破線で示すように、制御盤40はバブルを閉とするように注水機構30を制御し、注水機構30は水中ポンプ20への冷却水の注水を停止する。
【0016】
図2は、本実施例における水中ポンプの構造断面図である。
図2において、水中ポンプ20は、ポンプケーシング6に水を送水する羽根車5を固定子3と回転子2で構成された乾式水中電動機で駆動するポンプである。8は電動機であり、4はハウジング、11は汚水の吸込口、12は吐出口である。また、1はエンドブラケットであって、13は電源ケーブル、14は吊りボルトを示している。なお、電源ケーブル13や吊りボルト14の配置はこれに限定されるものでない。そして、
図1に示した水中ポンプ20の外部に設けた注水機構30と水中ポンプ20を接続する注水冷却用配管7を有する。
【0017】
図3に、本実施例におけるエンドブラケット1の上面図を示す。また、
図4に、本実施例における注水冷却用配管7のエンドブラケット貫通部および側面図を示す。
図3、
図4に示すように、注水冷却用配管7はエンドブラケット1を貫通し、電動機8内部を通過する構成となっている。
【0018】
また、
図5は、
図4におけるA―A断面図であり、本実施例における注水冷却用配管7のエンドブラケット1内の上面配置図である。
図5において、注水冷却用配管7はエンドブラケット1内部に接する構造であり、外部の注水機構30から流入する冷却水が注水冷却用配管7を通ることで注水冷却用配管7と接触するエンドブラケット1を冷却する効果がある。また、
図5に示すように、エンドブラケット1とハウジング4は取付け面が金属接触しているため、熱伝導によりハウジング4も冷却する。なお、
図3から
図5に示すように、注水冷却用配管7は、注水方向と排水方向の2つの管からなり、電動機8内部で注水方向と排水方向の2つの管が連通されており、注水冷却用配管内の冷却水が循環する構成となっている。
【0019】
図6に、本実施例における注水冷却用配管7のエンドブラケット貫通部の詳細断面図を示す。
図6は、
図3、
図4における注水冷却用配管7のエンドブラケット貫通部である破線で示した円B部分の詳細図である。
図6において、上図は上面図、下図は側面断面図である。水中ポンプ20は吸込口11を除いて密封構造になる。そのため注水冷却用配管7を設ける場合、注水冷却用配管7のエンドブラケット貫通部に隙間が無い構造とする。すなわち、
図6に示すように、注水冷却用配管7の冷却用配管注水方向a、冷却用配管排水方向bにゴムブッシュ9を取付けた構造とし、エンドブラケット1上部より押え板10を締結し、エンドブラケット1を介して押え板10でゴムブッシュ9を締結する。
【0020】
以上のように、本実施例は、ポンプ設備外部に水冷効果を与える注水機構を設け、注水機構とポンプを接続する配管を有し、その配管をポンプのエンドブラケットを貫通してポンプ内部を通過する配管となるように接続するだけであるので、簡単、安価な構成とでき、また外部注水機構とすることで、異物が絡み冷却水の循環が不十分となることもなく、冷却効果が十分に発揮できる。これによりポンプが加熱する状態となる低水位での長時間気中運転を可能にする水中ポンプおよびそれを用いた水中ポンプシステムを提供することができる。
【符号の説明】
【0021】
1:エンドブラケット、2:回転子、3:固定子、4:ハウジング、5:羽根車、6:ポンプケーシング、7:注水冷却用配管、8:電動機、9:ゴムブッシュ、10:押え板、11:吸込口、12:吐出口、13:電源ケーブル、14:吊りボルト、20:水中ポンプ、30:注水機構、40:制御盤、a:冷却用配管注水方向、b:冷却用配管排水方向