【実施例1】
【0016】
図1は、本実施例に係る車両用シート100の外観を示す斜視図である。本実施例に係る車両用シート100は、搭乗者が着座するシートクッション1、着座した搭乗者が背を凭れかけるシートバック2、着座した搭乗者の頭部を支持するヘッドレスト3を備えている。
【0017】
シートクッション1の下部には、シートクッション1の前後方向へのスライドをロック/アンロックするスライドロックレバー19、シートクッション1とシートバック2との間には、シートバック2の傾き角度を調整するリクライニング機構のロック/アンロックするリクライニングレバー37を装備している。
【0018】
図2には、本実施例に係る車両用シート100のフレーム200の外観を示す。これは、
図1に示した車両用シート100から、表皮やクッション材を外した状態に相当する。
【0019】
フレーム200は、シートクッション1の側のクッションフレーム部10、シートバック2の側のバックフレーム部20、及び、リクライニング機構部30を備えて構成されている。
【0020】
クッションフレーム部10は、中央部付近に所定の間隔で設置されて側面が略U字形状をしている1対のセンタクッションパイプ11及び12、センタクッションパイプ11とその前方の端部と後方(バックフレーム部20の側)の端部の両端部付近で接続しているサイドクッションパイプ13、センタクッションパイプ12とその両端部付近で接続しているサイドクッションパイプ14、センタクッションパイプ11と12の両端部付近でセンタクッションパイプ11と12を所定の間隔で接続する中間クッションパイプ15及び16、センタクッションパイプ11を載せて前後にスライド可能なスライドレール部17、センタクッションパイプ12を載せて前後にスライド可能なスライドレール部18、スライドレール部17の前後への移動をロック/アンロックするスライドロックレバー19を備えている。
【0021】
サイドクッションパイプ13と14は、平面視で略C型形状になるように折り曲げられており、左右対称にセンタクッションパイプ11と12から外側に延出している。
【0022】
1対のセンタクッションパイプ11と12のバックフレーム部20の側の後方の端部付近には、それぞれフランジ35,36が固定されている。
【0023】
バックフレーム部20は、中央部分にセンタバックパイプ21を備え、その両側にサイドバックパイプ22と23とが、それぞれセンタバックパイプ21の上端部付近(ヘッドレスト3を装着する側)と下端部付近(クッションフレーム部10に近い側)とで接合されている。
【0024】
サイドクッションパイプ13と14は、平面視で略C型形状になるように折り曲げられており、左右対称にセンタバックパイプ21から外側に延出している。
【0025】
センタバックパイプ21は、車両用シート100に着座した搭乗者の腰の高さに相当する部分が前方(搭乗者の側)に突き出し、背中の高さに相当する部分が後方に引っ込んでおり、側面がS字形状をしている。
【0026】
センタバックパイプ21の上端面には、ヘッドレスト3のステー(図示せず)を装着するための穴211が形成されている。また、センタバックパイプ21の下端部付近には、フランジ31及び32が固定されている。
【0027】
リクライニング機構部30は、一方の側がセンタクッションパイプ11に固定されたフランジ35と接続し、他方の側がセンタバックパイプ21に固定されたフランジ31と接続しているラウンドリクライニング機構部33、ラウンドリクライニング機構部33のフランジ31と接続する側に連結されたリクライニングレバー37、センタクッションパイプ12に固定されたフランジ36とセンタバックパイプ21に固定されたフランジ32とを接続するピン34、渦巻状の形状を有するリターンスプリング38(
図3参照)を備えている。
【0028】
上記構成において、1対のセンタクッションパイプ11と12とは、センタバックパイプ21とラウンドリクライニング機構部33とを挟むようにして、クッションフレーム部10の中央部に近い部分に設置されている。
【0029】
図2の矢印Bの方向(ピン34の軸に沿った方向)から見たリクライニング機構部30の構成を
図3に示す。渦巻状のリターンスプリング38は、
図3に示すように、渦巻状の中心部分381が、ピン34の先端部分に形成された溝341に埋設されて固定されている。ピン34は、センタバックパイプ21に固定されているフランジ32に支持されている。一方、リターンスプリング38の渦巻状の外周の先端部分382は、センタクッションパイプ12に固定されているフランジ32の側に支持されたピン321に係合して固定されている。
【0030】
なお、ラウンドリクライニング機構部33の具体的な構成は、例えば特開2002−177084号公報(特許文献4)に開示されているような構成、または特開2005−335636号公報(特許文献5)に開示されているような構成を用いればよい。
【0031】
このようなリクライニング機構部30の構成で、リクライニングレバー37を操作してラウンドリクライニング機構部33のロックされた状態を解除(アンロック)し、バックフレーム部20を後方に押すと、バックフレーム部20は、ピン34及び図示していないラウンドリクライニング機構部33の中心軸を回転中心として回動し、後方に倒れる(ピン34の中心軸と図示していないラウンドリクライニング機構部33の中心軸とは、軸心が重なるように設定されている)。このとき、リターンスプリング38は、センタバックパイプ21と一緒に回転するピン34に巻きつく方向に変形して、ピン34を反対方向に回転させる力が蓄積される。
【0032】
この状態でリクライニングレバー37を元に戻すと、ラウンドリクライニング機構部33がロックされて、バックフレーム部20に後方に倒れた姿勢が維持される。
【0033】
次に、バックフレーム部20を後方に押す力を解除した状態でリクライニングレバー37を操作してラウンドリクライニング機構部33のロックされた状態を解除(アンロック)すると、ピン34を反対方向に回転させる力が蓄積されたリターンスプリング38により、バックフレーム部20は、ピン34及び図示していないラウンドリクライニング機構部33の中心軸を回転中心として前方に回動する。
【0034】
車両用シート100のフレーム200を上記に説明したような構成とし、1対のセンタクッションパイプ11と12とをクッションフレーム部10の中央部付近に配置したことにより、スライドレール部17及び18も中央部付近に配置することが出来る。その結果、クッションフレーム部10の左右の側面付近の下部には機構部品が配置されなくなる。これにより、従来シートクッションの側面に近い場所に配置されていたスライドレール部関連部品を覆うためのカバー部品(硬質樹脂で形成されたサイドフィニッシャー)を配置する必要がなくなる。
【0035】
また、クッションフレーム部10の左右の側面付近の構造を簡素化したことで、クッションフレーム部10の左右の側面付近を薄く形成することが出来る。本実施例では、1対のセンタクッションパイプ11と12を側面が略U字の形状となるように成形し、サイドクッションパイプ13及び14の側面をほぼ直線状に形成した。
【0036】
これにより、クッションフレーム部10の上に装着するシートクッション1のクッション部材101(
図4参照)は、搭乗者が着座する部分(側面を略U字形状に成形した1対のセンタクッションパイプ11と12の上部)の厚さは従来どおりに厚くし、両側の側面部分のクッション部分(サイドクッションパイプ13及び14の上部)を薄肉化するようにした。
【0037】
また、バックフレーム部20において、中央部にセンタバックパイプ21を配置してその脇にリクライニング機構部30の部品を配置する構成としたことにより、バックフレーム部20の中央部でセンタバックパイプ21の下端部付近にリクライニング機構部30を配置できるようになった。
【0038】
このように、従来クッションシートの外側に飛び出して配置していたリクライニング機構部品をバックフレーム部20の内側に配置する構成としたことにより、従来クッションシートの外側に配置されたリクライニング機構部品を覆うために用いていたカバー部品(硬質樹脂で形成されたサイドフィニッシャー)を配置する必要がなくなる。
【0039】
これにより、シートバック2の下部でシートクッションと接続する部分付近の幅寸法をバックフレーム部20の幅寸法とほぼ同じ程度まで狭くし、肉厚を薄くすることが出来、シートバック2を、従来のカバー部品を装着していたシートバックと比べて、スリム化することが出来るようになった。
【0040】
更に、シートクッション1の側面を覆うカバー部品を配置する必要がないので、シートクッション1の側面形状の設計上の制約条件が少なくなり、シートクッション1の側面のデザイン性を向上させることが出来る。
【0041】
この様に、本実施例によればリクライニング機構部品やシートクッションの側面を覆うカバー部品を配置する必要がなくなるが、シートバックやシートクッションの側面に、そのデザイン性を向上させる等の目的でデザイン性のあるカバーを配置したり、カバー部品を配置する必要がなくなったスペースに他の部品を配置する事までを除外するものではない。
【0042】
図1に示した車両用シート100のA−A断面矢視図を、
図4に示す。
シートクッション1では、略U字形状のセンタクッションパイプ12(11)の上部にクッション部材101が設置されている。センタクッションパイプ12(11)はスライドレール部18(17)の上に載っており、スライドレール部18(17)は、床50に固定された台座40に支持されている。
【0043】
一方、シートバック2では、センタバックパイプ21の前面にクッション部材201が設置され、センタバックパイプ21の後面はシートカバー202で覆われている。センタバックパイプ21は、車両用シート100に着座した搭乗者の腰の高さに相当する部分(シートクッション1に近い側)が前方(搭乗者の側)に突き出し、背中の高さに相当する部分(ヘッドレスト3に近い側)が後方に引っ込んでおり、側面がS字形状をしている。
【0044】
センタバックパイプ21をこのような形状としたことにより、センタバックパイプ21の前面に装着するクッション部材201のうち、車両用シート100に着座した搭乗者の腰が当たる部分のクッション部材201の肉厚は、車両用シート100に着座した搭乗者の背中が当たる部分のクッション部材201の肉厚よりも薄く形成されている。
【0045】
これにより、車両用シート100に着座した搭乗者は、腰の部分を比較的薄いクッション部材201で支持され、背中の部分を比較的厚いクッション部材201で支持されることになり、着座した搭乗者の座姿勢が改善され、快適な座り心地を得ることが出来る。
【0046】
本実施例によれば、クッションフレーム部10のセンタクッションパイプ11,12、サイドクッションパイプ13,14及びバックフレーム部のセンタバックパイプ21、サイドバックパイプ22,23を、それぞれ中空のパイプを折り曲げて成形する構成としたので、それらを平板状の板金から専用の成形型を用いてプレス加工により成形する場合と比べて、比較的安価な設備で成形することができる。
【0047】
また、本実施例によれば、最高速度を落として市街地走行を主体にしたいわゆるシティ・コミュータに区分されるような、比較的遅い速度で走行するような車両において、リクライニング機構部30とスライドレール部17,18とを、それぞれクッションフレーム部10、バックフレーム部20の中央部付近に配置したので、クッションフレーム部10の周囲のサイドクッションパイプ13及び14の下部には機構部品が存在しなくなり、シートクッション1の側面を覆うカバー部品を配置する必要がなくなった。これにより、車両用シート100の構成を簡素化し、軽量化することが可能になった。
【実施例2】
【0048】
実施例1においては、ラウンドリクライニング機構部33を備えたリクライニング機構部30を用いてシートバック2の傾きを調整する構成であったが、本実施例では、ラウンドリクライニング機構部33を備えたリクライニング機構部30に代えて、ガススプリングを用いた構成について説明する。
【0049】
図5は、本実施例に係る車両用シート500の外観を示す斜視図である。本実施例に係る車両用シート500は、搭乗者が着座するシートクッション51、着座した搭乗者が背を凭れかけるシートバック52、着座した搭乗者の頭部を支持するヘッドレスト53を備えている。
【0050】
シートクッション51の下部には、シートクッション51の前後方向へのスライドをロック/アンロックするスライドロックレバー519、シートバック52の傾き角度を調整するリクライニング機構をロック/アンロックするリクライニングレバー537を装備している。
【0051】
図6には、本実施例に係る車両用シート500のフレーム600の外観を示す。これは、
図5に示した車両用シート500から、表皮やクッション材を外した状態に相当する。
【0052】
フレーム600は、シートクッション51の側のクッションフレーム部510、シートバック52の側のバックフレーム部520、及び、リクライニング機構部530備えて構成されている。
【0053】
クッションフレーム部510は、中央部付近に所定の間隔で設置されて側面が略U字形状をしている1対のセンタクッションパイプ511及び512、センタクッションパイプ511の前方(リクライニングレバー537の側)の端部と後方(バックフレーム部520の側)の端部の両端部付近でセンタクッションパイプ511と接続しているサイドクッションパイプ513、センタクッションパイプ512とその両端部付近で接続しているサイドクッションパイプ514、1対のセンタクッションパイプ511と512の前方(リクライニングレバー537の側)の先端部付近でセンタクッションパイプ511と512を所定の間隔で接続する中間クッションパイプ515、センタクッションパイプ511を載せて前後にスライド可能なスライドレール部517、センタクッションパイプ512を載せて前後にスライド可能なスライドレール部518、スライドレール部517の前後への移動をロック/アンロックするスライドロックレバー519を備えている。
【0054】
サイドクッションパイプ13と14は、平面視で略C型形状になるように折り曲げられており、左右対称にセンタクッションパイプ11と12から外側に延出している。
【0055】
センタクッションパイプ511と512のバックフレーム部520の側の後方の端部付近には、それぞれフランジ5111,5121が固定されている。
【0056】
バックフレーム部520は、中央部分にセンタバックパイプ521を備え、その両側にサイドバックパイプ522と523とが、それぞれセンタバックパイプ521の上端部付近(ヘッドレスト53を装着する側)と下端部付近(クッションフレーム部510に近い側)とで接合されている。
【0057】
サイドクッションパイプ13と14は、平面視で略C型形状になるように折り曲げられており、左右対称にセンタバックパイプ21から外側に延出している。
【0058】
センタバックパイプ521は、車両用シート500に着座した搭乗者の腰の高さに相当する部分が前方(搭乗者の側)に突き出し、背中の高さに相当する部分が後方に引っ込んでおり、側面がS字形状をしている。
【0059】
センタバックパイプ521の上端面には、ヘッドレスト53のステー(図示せず)を装着するための穴611が形成されている。また、センタバックパイプ521の下端部付近には、フランジ5211及び5212が固定されている。センタバックパイプ521の下端面には、ブラケット525が固定されている。
【0060】
クッションフレーム部510とバックフレーム部520との接続の状態を、
図6のD矢視図として
図7に示す。
図7は、本実施例に係る車両用シートのリクライニング機構部530のクッションフレーム部510の後方側との接続部分の詳細を示す図である。
【0061】
クッションフレーム部510の側のセンタクッションパイプ511に固定されたフランジ5111とセンタクッションパイプ512に固定されたフランジ5121との間に固定した軸524に、バックフレーム部520の側のセンタバックパイプ521の下端部付近に固定されたフランジ5211及び5212が回動自在に取り付けられている。フランジ5211及び5212は、図示していない手段により、軸524に対する軸方向の位置が規制されている。
【0062】
また、
図7に示すように、バックフレーム部520の側のセンタバックパイプ521の下端部に固定されたブラケット525にリクライニング機構部530が接続されている。
【0063】
リクライニング機構部530は、ガススプリング531を備えている。ガススプリング531の一方の端部に形成された取り付け部534が、センタバックパイプ521の下端面に固定されたブラケット525にピン526を介して回動自在に取り付けられている。
【0064】
ガススプリング531の他方の端部からは、
図8に示すようにロッド532が伸びている。ロッド532は、ブラケット535に固定されている。ブラケット535は、両端部をセンタクッションパイプ511と512とに固定された軸536に支持されている。このブラケット535に固定されたロッド532の先端部分からは、ロッド532の内部に伸びるプッシュロッド533が突出している。
【0065】
プッシュロッド533が突出した状態で、ガススプリング531はロックされてロッド532は、ガススプリング531の軸方向の位置が固定される。一方、プッシュロッド533をロッド532の内部の側に押し込むと、ガススプリング531はロックが解除されて(アンロック)、ロッド532は、ガススプリング531の軸方向に自由に動くことが出来る。
【0066】
ブラケット535には、先端部分に取っ手539を装着したリクライニングレバー537が、ブラケット535に固定したピン538に回動自在に取り付けられている。ピン538に取り付けられた状態で、リクライニングレバー537は、取っ手539の側がピン538を中心にして下向きに回動し、先端近傍部分5371が軸536に当接して止まっている。
【0067】
このようなリクライニング機構部530の構成で、リクライニングレバー537の取っ手539を持ち上げる(
図8で上方に引き上げる)と、リクライニングレバー537はピン538の周りに回転して、先端近傍部分5371がプッシュロッド533に当接して、プッシュロッド533を押し下げる(プッシュロッド533が、ロッド532の軸方向に動いて、ロッド532の内部に押し込まれる)。
【0068】
プッシュロッド533が押し下げられると、ガススプリング531のロック状態が解除され、ガススプリング531の軸方向への力のかかり具合に応じて、ロッド532がガススプリング531に対して軸方向に伸縮する。
【0069】
即ち、プッシュロッド533を押し下げてガススプリング531のロックを解除した状態で、車両用シート500に着座した搭乗者がシートバック52に背を凭れ掛かると、シートバック52は、軸524を中心に後方に倒れる(軸524を中心に回動する)。
【0070】
また、ガススプリング531のロックを解除した状態で、搭乗者がシートバック52から背を離すと、ガススプリング531に対してロッド532が軸方向に伸びてセンタバックパイプ521の下端部が押され、シートバック52は、軸524を中心に前方に倒れる(軸524を中心に回動する)。
【0071】
ガススプリング531のロックを解除してシートバック52の傾きを調整した状態でリクライニングレバー537の取っ手539を開放すると、リクライニングレバー537はピン538の周りに回転して、先端近傍部分5371が軸536に当接して止まる。この状態で、プッシュロッド533は、リクライニングレバー537による押し付けから開放されてロッド532から突出した状態となり、ガススプリング531はロックされ、ガススプリング531の軸方向に対するロッド532の位置が固定された状態となる。これにより、シートバック52の傾きが固定される。
【0072】
車両用シート500のフレーム600を上記に説明したような構成とし、1対のセンタクッションパイプ511と512とを、センタバックパイプ521を挟んでクッションフレーム部510の中央部付近に配置したことにより、スライドレール部517,518も中央部付近に配置することが出来、クッションフレーム部510の左右の側面付近の下部には機構部品が配置されなくなる。これにより、従来シートクッションの側面に近い場所に配置されていたスライドレール部関連部品を覆うためのカバー部品(硬質樹脂で形成されたサイドフィニッシャー)を配置する必要がなくなる。
【0073】
また、クッションフレーム部510の左右の側面付近の構造を簡素化したことで、クッションフレーム部510の左右の側面付近を薄く形成することが出来る。本実施例では、1対のセンタクッションパイプ511と512を側面が略U字の形状となるように成形し、サイドクッションパイプ513及び514の側面をほぼ直線状に形成した。
【0074】
これにより、クッションフレーム部510の上に装着するシートクッション51のクッション部材5101(
図9参照)は、搭乗者が着座する部分(側面を略U字形状に成形した1対のセンタクッションパイプ511と512の上部)の厚さは従来どおりに厚くし、両側の側面部分のクッション部分(サイドクッションパイプ513及び514の上部)を薄肉化するようにした。
【0075】
また、バックフレーム部520において、中央部にセンタバックパイプ521を配置する構成としたことにより、バックフレーム部520の中央部でセンタバックパイプ521の下端部付近にリクライニング機構部530を配置できるようになった。
【0076】
このように、従来クッションシートの外側に飛び出して配置していたリクライニング機構部品をバックフレーム部520及びクッションフレーム部510の内側に配置する構成としたことにより、従来クッションシートの外側に配置されたリクライニング機構部品を覆うために用いていたカバー部品(硬質樹脂で形成されたサイドフィニッシャー)を配置する必要がなくなる。
【0077】
これにより、シートバック52の下部でシートクッション51と接続する部分付近の幅寸法を、バックフレーム部520の幅寸法で規定される寸法程度まで狭くすることが出来、シートバック52を、従来のカバー部品を装着していたシートバックと比べて、スリム化することが出来るようになった。
【0078】
更に、シートクッション51の側面を覆うカバー部品を配置する必要がないので、シートクッション51の側面形状の設計上の制約条件が少なくなり、シートクッション51の側面のデザイン性を向上させることが出来る。
【0079】
図5に示した車両用シート100のC−C断面矢視図を、
図9に示す。
シートクッション51では、略U字形状のセンタクッションパイプ512(511)の上部にクッション部材5101が設置されている。センタクッションパイプ512(511)はスライドレール部518(517)の上に載っており、スライドレール部518(517)は、床550に固定された台座540に支持されている。
【0080】
一方、シートバック52では、センタバックパイプ521の前面にクッション部材5201が設置され、センタバックパイプ521の後面はシートカバー5202で覆われている。センタバックパイプ521は、車両用シート500に着座した搭乗者の腰の高さに相当する部分(シートクッション51に近い側)が前方(搭乗者の側)に突き出し、背中の高さに相当する部分(ヘッドレスト53に近い側)が後方に引っ込んでおり、側面がS字形状をしている。
【0081】
センタバックパイプ521をこのような形状としたことにより、センタバックパイプ521の前面に装着するクッション部材5201のうち、車両用シート500に着座した搭乗者の腰が当たる部分のクッション部材5201の肉厚は、車両用シート500に着座した搭乗者の背中が当たる部分のクッション部材5201の肉厚よりも薄く形成されている。
【0082】
これにより、車両用シート500に着座した搭乗者は、腰の部分を比較的薄いクッション部材5201で支持され、背中の部分を比較的厚いクッション部材5201で支持されることになり、腰部の負担が少なく背中のクッション性が良い、快適な座り心地を得ることが出来る。
【0083】
本実施例によれば、クッションフレーム部510のセンタクッションパイプ511,512、サイドクッションパイプ513,514及びバックフレーム部のセンタバックパイプ521、サイドバックパイプ522,523を、それぞれ中空のパイプを折り曲げて成形する構成としたので、それらを平板状の板金から専用の成形型を用いてプレス加工により成形する場合と比べて、比較的安価な設備で成形することができる。
【0084】
また、本実施例によれば、最高速度を落として市街地走行を主体にしたいわゆるシティ・コミュータに区分されるような、比較的遅い速度で走行するような車両において、リクライニング機構部530とスライドレール部517,518とを、それぞれクッションフレーム部510、バックフレーム部520の中央部付近に配置したので、クッションフレーム部510の周囲のサイドクッションパイプ513及び514の下部には機構部品が存在しなくなり、シートクッション51の側面を覆うカバー部品を配置する必要がなくなった。これにより、車両用シート500の構成を簡素化し、軽量化することが可能になった。
【0085】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。